特許第6190762号(P6190762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190762
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】融合織物及び製織方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 19/00 20060101AFI20170821BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20170821BHJP
   D03D 13/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   D03D19/00
   D03D11/00 Z
   D03D13/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-116521(P2014-116521)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-229811(P2015-229811A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】309042783
【氏名又は名称】大喜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳由
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−072578(JP,U)
【文献】 特開平03−136651(JP,A)
【文献】 特開2000−256939(JP,A)
【文献】 特開2001−336668(JP,A)
【文献】 国際公開第90/008213(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャカード織物とカラミ織物を融合した織物であって、ジャカード織物は経糸と緯糸を互いに織製された織組織を有し、カラミ織物は緯糸を複数本が捻じれて紐状に構成した経糸にて挟み込み、そしてジャカード織組織の経糸がカラミ織組織の一部緯糸と交差し合って融合することで、カラミ織組織をジャカード織組織の裏面に配置する2重織組織としたことを特徴とする融合織物。
【請求項2】
ジャカード織物とカラミ織物を融合して所定の大きさ・形状に裁断した場合に切口がほつれ分解したり、目ズレを起こさない融合織物を製織する方法において、経糸用ビームから複数本の経糸を巻き戻し、ジャカード織機のジャカード開口装置によって上記経糸を開口して緯糸と交差し、また複数本が一組としてカラミ織装置によって捻じることで紐状経糸を構成すると共に緯糸を挟み込み、そして、上記ジャカード織組織の経糸をカラミ織組織の緯糸と交差し合っ
て融合することで、カラミ織組織をジャカード織組織の裏面に配置する2重織組織として製織することを特徴とする融合織物の製織方法。
【請求項3】
2本の経糸を対にして捻じって紐状経糸を構成した請求項2記載の融合織物の製織方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジャガード織とからみ織を組み合せた融合織物、及び該融合織物を製織する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日では車の種類も多く、その為にカーシート用生地としては色々なものが使用されている。大きく分けて布系の生地と革系の生地があるが、何れの場合であってもカーシートとしての機能、例えば安全性、乗り心地、運転し易さ、乗降性などが損なわれないような生地でなくてはならない。また、カーシートの表面を被覆するために耐久性が必要であり、さらに耐退色性や耐光性も要求される。
【0003】
特開2011−231439号に係る「太陽光による光輝性劣化に耐性を持つ金属蒸着スリット糸と布地とカーシート」は、日光による金属蒸着糸の金属光沢を5年以上変化させず、その装飾性を維持できる金属蒸着糸を素材構成の一部とするカーシート用生地である。
そこで、金属蒸着面を少なくとも一層持ち、プラスティックフィルムで両面を保護されたスリット糸の積層最外部に紫外線吸収剤を含む合成樹脂層をコーティングで設けられた糸をレーザースリッターで得て、その素材構成の一部としている。
【0004】
特開2001−214340号に係る「カーシート用撚糸及びこれを使用したカーシート用生地」は、加工上のロスを少なく、しかも低コストで製造可能なカーシート用生地及びその製造に用いる撚糸である。
伸縮糸B(例えば、ポリエステル)の上に2本の糸をX状に交差させてダブルカバリングしてなり、その交差糸のうち少なくとも1本を低融点糸B(例えば、ナイロン)としたことを特徴とする。Aを芯にしてBをS撚り、CをZ撚りで巻き付けるので、BとCが交差してX状となる。本発明のカーシート生地はこの撚糸を全緯糸の5%以上使用して織成してなる。
【0005】
このように、カーシート用生地は色々存在しているが、織物生地を使用する場合、カーシートの大きさ及び形状に合わせて裁断するならば、切口がほつれ分解し、また中間工程での経糸並びに緯糸の目ズレが発生する。
裁断した生地の切口のほつれ分解及び目ズレを防止する為の技術として、特表2006−518421号に係る「平織及び絡み織で織物を製織する方法及び方法の実施のための織機」が知られている。
【0006】
すなわち、製織される1つの織物で平織(ジャカード織)と絡み織を1製織サイクルで得ることが出来、こうして費用のかかる開口部材に関して節約することである。この目的を達成するために、この発明に基づき平織と絡み織が織物で1製織サイクルで同時に形成される。
平織を形成するために、上口及び下口の形成のために使用される隣接するたて糸が同じブレード・ニードルフレームによって交互に下口位置から上口位置へ引き上げられ、上口位置から下口位置へ引き下げられる。絡み織を形成するために、上口を形成するたて糸だけが既知のようにブレード・ニードルフレームによって下口位置から上口位置へ引き上げられ、上口位置から下口位置へ引き下げられる。
【0007】
しかし、カーシート用の生地は、単に切口のほつれ分解及び目ズレを防止することが出来る機能性のみならず、外観が良好となるデザイン性も要求される。そのために、上記特表2006−518421号に係る織物はカーシート用生地には適さない。
【特許文献1】特開2011−231439号に係る「太陽光による光輝性劣化に耐性を持つ金属蒸着スリット糸と布地とカーシート」
【特許文献2】特開2001−214340号に係る「カーシート用撚糸及びこれを使用したカーシート用生地」
【特許文献3】特表2006−518421号に係る「平織及び絡み織で織物を製織する方法及び方法の実施のための織機」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、織物で構成するカーシート用生地には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、裁断した生地の切口のほつれ分解や眼ズレがなく、また、外観のデザインが好ましい融合織物を提供する。ただし、融合織物の用途をカーシート用生地に限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る融合織物は、ジャカード織物とカラミ織物を互いに融合して構成している。ここで、ジャカード織物は経糸と緯糸が交互に織製された織組織を有し、カラミ織物は緯糸に対して経糸は複数が組を成し、複数本の経糸は互いに捻れながら緯糸と絡み合う織組織を有している。
本発明は上記ジャカード織物とカラミ織物が、同一織機上で織製されて融合した織組織を構成することが出来る。
【0010】
ところで、ジャカード織物はジャカード装置を用いて織製され、カラミ織物はドビー装置が使用されるが、カラミ用綜絖とジャカード用綜絖を同一織機に装着し、経糸を制御して製織する。ここで、2重織物又はそれに準じた組織形態で意匠紙を作成し、経糸を操作して緯糸を挿入する。カラミ織物の特異性からくる織機構造上の相違点を克服すべく同一織機上に配置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の融合織物は、ジャカード織物とカラミ織物が互いに融合した織組織を備え、そのために、所定の大きさ・形状に裁断した場合に切口がほつれ分解したり、目ズレを起こすことはない。すなわち、織り込まれた経糸と緯糸は生地内部に構成されるカラミ織が有効に作用して目ズレが防止される。
したがって、ほつれ分解及び目ズレを防止する為に生地裏面に樹脂コーティングを施す必要はなく、生地の耐久性は高くなり、例えばシートカバーの生地に使った場合、その寿命は大きく向上する。
【0012】
そして、本発明の融合織物生地は、ジャカード織組織によって経糸と緯糸が各種図形や模様にデザインされ、このジャカード織組織はカラミ織組織によって保持され、そのために融合織物の外観は良好で、しかも耐久性は向上する。したがって、カーシート用生地としても適している。
更に、本発明の融合織物は同一織機にてジャカード織物とカラミ織物が互いに絡み合って織製されるために生産性は高い。
一方、ほつれ分解や目ズレを防止するために従来のような裏面に樹脂をコーティングしないことで生地は軽くなり、また製造コストは安くなり、樹脂を使わないことで環境問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一般的なジャカード織組織を示す具体例。
図2】カラミ織組織を示す具体例。
図3】本発明の融合織組織を示す具体例。
図4】融合織物を製織する織機を示す実施例。
図5】融合織物を織製する装置の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はジャカード織物の織組織を示す具体例であり、1は緯糸、2は経糸を表している。複数の経糸2,2・・・は一定間隔をおいて配列し、これら各経糸2,2・・・に対して緯糸1,1・・・が交差し合って織製されている。経糸2,2・・・はそれぞれ上方及び下方へ移動して開口した状態で緯糸1,1・・・が順次挿通して織製されるが、各々の経糸2,2・・・の上下動を制御することで織組織は色々変化することが出来る。すなわち、ジャカード織組織は色々な図形や模様を形成することが可能である。
【0015】
図2はカラミ織物の織組織を示す具体例であり、3は緯糸、4は経糸をそれぞれ表わしている。このカラミ織物の織組織は、2本の経糸4,4が対を成して互いに捻れた状態で両経糸4,4の間に緯糸3が挟まれた構造としている。すなわち、2本の経糸4,4・・・が互いに捻れることで紐構造と成り、2本の経糸4,4の間に緯糸3が挟まれた状態で絡み合う組織としている。
【0016】
このようなカラミ織組織は、互いに捻れた2本の経糸4,4にて緯糸3を挟み込むことで、経糸4,4と緯糸3は位置ズレすることなく所定の位置に拘束される。ここで、緯糸3と絡み合う経糸4の本数は2本に限定するものではなく、また経糸4,4の捻れ構造に関しても限定はしない。
【0017】
図3は本発明に係る融合織物の織組織を示す具体例である。この融合織物の織組織は前記図1に示すジャカード織物の織組織と図2に示すカラミ織物の織組織を融合した組織を構成している。同図に示す融合織物の織組織は、カラミ織組織を構成する3本の緯糸3,3,3とジャガー織組織を構成する6本の緯糸1,1・・・を有し、各緯糸3,3の間には2本の緯糸1,1を介在している。
そして、経糸2は上記緯糸1,1・・・に交差し合うと共に、緯糸3,3・・・とも交差し合って組織している。また、2本の経糸4,4が対を成して捻れた捻れ経糸5は上記緯糸3,3・・・を両経糸4,4にて挟み込んでいるが、ジャガード織組織を構成する上記緯糸1,1・・・とは絡み合っていない。
【0018】
すなわち、カラミ織組織はジャガード織組織の下面側に配置され、そして該カラミ織組織がジャガード織組織と融合して一体化するために、ジャガード織組織の経糸2,2・・・がカラミ織組織の緯糸3,3・・・と所々で交差し合って組織している。
例えば図3において、ジャガード織組織の経糸2aはカラミ織組織の緯糸3aの下側に位置すると共に、その他の緯糸3b,3cの上側に位置している。一方、ジャガード織組織の経糸2bはカラミ織組織の緯糸3bの下側に位置すると共に、その他の緯糸3a,3cの上側に位置している。
【0019】
ここで、カラミ織組織の緯糸3,3の間に配列するジャガード織組織の緯糸1の本数は限定せず、また同図の織組織では対を成して捻れた経糸4,4で構成する捻れ経糸5,5の間には2本の経糸2a,2bを配列している。しかし、これら捻れ経糸5,5、及び経糸2a,2bの配列本数に関しても特に限定しないことにする。カラミ組織、織組織、さらには融合の仕方についても本発明は実施例に説明した場合に限定するものではない。
ところで、この新しい融合織物は2重織りの組織構造と成っていて、裏面にカラミ組織を付加することで、表面にはカラミ組織は表れず、従来のデザイン性に優れたジャカード織物の表情が維持される。
【0020】
例えば、ジャカード織物において10本の経糸2,2・・・間の1箇所に2本の経糸4,4で構成するカラミ組織を付加することが出来る。そして、これをボイルするとカラミ組織の経糸4,4が収縮し、ジャカード織物の経糸2,2・・・が緩み、そのために膨らみ凹凸感のある風合いの柔らかい心地良いカーシート生地に適した融合織物生地が出来上がる。
【0021】
カラミ組織の経糸4,4・・・が収縮する為にストレッチ性が増し、緯糸3,3・・・に経糸4,4・・・が絡んでいるために、ほつれ分解、及び目ズレが軽減される。
そして、このカラミ織組織の経糸4,4・・・は緯糸3,3・・・を自由に選択指示が出来るが、またジャガード織組織の経糸2,2・・・が絡むことが出来るカラミ織組織の緯糸3,3・・・も自由に選択指示して融合織物を構成することが可能である。
【0022】
また、さらに従来のジャカード織物のデザイン性に付け加えて、表面にカラミ組織を見せれば、カラミ組織の斜めに流れる新しい見え方が表現出来、今までにない新規のデザイン性を持ち合わせた織組織が形成される。従来のジャカード織物は、経糸と緯糸が直角に交わる平面的な連なり生地だが、カラミ組織を融合することで丸く曲がった経糸が表面化し、異なったデザイン性を備えることが可能となる。
【0023】
図4は本発明に係る融合織物(ジャカード織物とカラミ織物を融合した織物)を製織する織機を示す外観図であり、ジャカード織機にカラミ織装置6を付加して構成している。該織機は既存のレピア織機7とジャカード開口装置8にサーボモータ付ドビー開口装置9とカラミ綜絖装置10、そしてジャカード用通じ糸綜絖11を備えて構成している。
【0024】
この新しい融合織物は、製織方法の異なる2種類の組織形態を持つ織物を同一織機上で同時に製織される。
同一織機で従来のジャカード織物とカラミ織物を同時に製織するには、既存のジャカード開口装置8にカラミ綜絖を操作するドビー開口装置9を付加装着している。カラミ綜絖は、経糸4,4・・・を特別に左右方向に動かして緯糸3,3・・・に絡ませるため、開口タイミングを個別に変えることが出来、経糸4,4・・・が緯糸3,3・・・に絡んだり、上口や下口で絡まなかったり、自由に選択指示出来る装置でないと目的の融合した織物を製織することが出来ない。
【0025】
そこで、既存のレピア織機7とサーボモータ付ドビー開口装置9が特殊な動作で個別に稼働して製織するためには、これらを個別に動作するように制御し、またトータルで管理するためのソフトを備えている。
【0026】
図5は前記図4に示す織機の概略図を示している。経糸用ビーム12に巻き付いている経糸2,2・・・、4,4・・・は右方向へ移動し、途中で緯糸1,1・・・、3,3・・・が通されて製織され、反物ローラ13に巻き取られる。ところで、上記経糸用ビーム12と反物ローラ13との間にはジャカード装置14とカラミ織装置6が配置され、ジャカード織とカラミ織を同時に製織することが出来る。カラミ織装置6はジャカード装置14の前方(反物ローラ側)に装着され、該カラミ織装置6と反物ローラ13の間に筬15を有している。
【0027】
カラミ織装置6のカラミ綜絖枠10,10・・・は、経糸4,4・・・を左右に動かして緯糸3,3・・・を絡ませるため、経糸4,4・・・の開口タイミングを個別に変えることが出来、経糸4,4・・・が緯糸1,1・・・に絡んだり、上口や下口で絡まなかったり、自由に選択指示出来るように制御している。
【符号の説明】
【0028】
1 緯糸
2 経糸
3 緯糸
4 経糸
5 捻れ経糸
6 カラミ織装置
7 レピア織機
8 ジャカード開口装置
9 ドビー開口装置
10 カラミ綜絖枠
11 ジャカード用通じ糸綜絖
12 経糸用ビーム
13 反物ローラ
14 ジャカード装置
15 筬
図1
図2
図3
図4
図5