(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって、本発明に係る各実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、上部旋回体と、当該上部旋回体の駆動源として油圧旋回モータ及び電動旋回モータの両方を備えた建設機械全般に適用が可能であり、本発明の適用対象は、以下で説明に用いるクローラ式の油圧ショベルに限定されない。例えば、ホイール式の油圧ショベルやクレーンをはじめとする他の建設機械にも適用可能である。
【0016】
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド式油圧ショベルの側面図である。この図に示すハイブリッド式油圧ショベルは、下部走行体40と、上部旋回体50と、フロント作業装置60とを備えている。
【0017】
下部走行体40は、一対のクローラ41a,41b及びクローラフレーム45a,45b(片側のみ図示)、各クローラ41a,41bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ46,47及びその減速機構(図示せず)を備えている。
【0018】
上部旋回体50は、原動機としてのエンジン51と、アシスト発電モータ52と、油圧ポンプ1と、油圧旋回モータ3と、電動旋回モータ14と、蓄電装置54と、減速機構59と、これらの装置が搭載される旋回フレーム58とを備えている。
【0019】
アシスト発電モータ52は、エンジン51に機械的に連結されており、蓄電装置54に電力が残存している場合にはエンジン51をアシストし、電力が残存していない場合にはエンジン51によって駆動されて発電を行う。油圧ポンプ1は、エンジン51に機械的に連結されており、タンク(図示せず)内の作動油を汲み上げて各油圧アクチュエータに作動油を供給する。
【0020】
油圧旋回モータ3及び電動旋回モータ14は、ともに上部旋回体50の駆動源であり、減速機構59を介して上部旋回体50を旋回駆動する。油圧旋回モータ3は、油圧ポンプ1からの作動油で上部旋回体50を旋回駆動する。電動旋回モータ14は、蓄電装置54又はアシスト発電モータ52からの電力によって上部旋回体50を旋回駆動する。上部旋回体50の駆動源として油圧旋回モータ3及び電動旋回モータ14をどのように使用するか(例えば、油圧旋回モータ3と電動旋回モータ14の双方又はいずれか一方を使用するか)は、他の油圧アクチュエータの動作状態や蓄電装置54の蓄電残量等によって適宜変更される。電動旋回モータ14と油圧旋回モータ3の駆動力は減速機構59を介して伝達され、その駆動力により下部走行体40に対して上部旋回体50(旋回フレーム58)が旋回駆動される。
【0021】
蓄電装置54は、アシスト発電モータ52及び電動旋回モータ14への給電と、これらのモータ52,14が発生した電力の蓄電を行う。蓄電装置54としては、例えば、電気二重層キャパシタが利用可能である。
【0022】
上部旋回体50の前方部分にはフロント作業装置60(ショベル機構)が取り付けられている。フロント作業装置60は、ブーム61と、ブーム61を駆動するためのブームシリンダ16と、ブーム61の先端部分に回転可能に取り付けられたアーム62と、アーム62を駆動するためのアームシリンダ63と、アーム62の先端部分に回転可能に取り付けられたバケット65と、バケット65を駆動するためのバケットシリンダ66とを備えている。
【0023】
上部旋回体50の旋回フレーム58上には、上述した走行用油圧モータ46,47、油圧旋回モータ3、ブームシリンダ16、アームシリンダ63、バケットシリンダ66等の油圧アクチュエータの駆動を制御するためのバルブブロック(図示せず)が搭載されている。
【0024】
図2は本発明の第1の実施の形態に係る油圧ショベル(建設機械)に備えられるオープンセンタ方式の油圧システムの概略構成図である。ここでは上部旋回体50と同時に動作する油圧アクチュエータはブームシリンダ16とする。また、対象動作としては、アームとバケットの結合部の近傍に取り付けられたフック等を介して行われる「吊り荷作業」を想定して説明する。そのため、
図2においては、
図1に示した油圧ショベルに搭載された各油圧アクチュエータのうち油圧旋回モータ3とブームシリンダ16の駆動制御に関わる部分のみを図示している。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付し説明を省略することがある(後の図についても同様)。
【0025】
図2に示す油圧システムは、センタバイパス油路72に配置され、油圧旋回モータ3に供給される作動油の方向及び流量を制御する方向制御弁28(以下、旋回用の第1方向制御弁という)と、センタバイパス油路72以外の油路に配置され、油圧旋回モータ3からの排出される作動油の流量を制御するための方向制御弁29(以下、旋回用の第2方向制御弁という)と、ブームシリンダ16に供給される作動油の方向及び流量を制御する方向制御弁15(以下、ブーム用の方向制御弁)と、上部旋回体50の旋回動作を操作するための油圧操作信号(パイロット圧)を出力する旋回操作装置10と、ブーム61の回動動作(ブームシリンダ16の伸縮動作)を操作するための油圧操作信号(パイロット圧)を出力するブーム操作装置19と、電磁減圧弁30,31と、電動旋回モータ14及び電磁減圧弁30,31等の制御を含む油圧ショベル全般に係る制御を行うコントローラ13と、コントローラ13から出力される制御信号に基づいて電動旋回モータ14を制御するためのインバータ装置103と、リリーフ弁24とを備えている。
【0026】
油圧ポンプ1から吐出された作動油が流れる圧油供給油路71には、センタバイパス油路72が接続され、かつ、センタバイパス油路72に並列にメータイン油路73が接続されている。
【0027】
センタバイパス油路72は、まず旋回用の第1方向制御弁28のセンタバイパス開口を通り、次にブーム用の方向制御弁15のセンタバイパス開口を通って、タンク4へと至っている。すなわち、センタバイパス油路72には、2つの方向制御弁28,15が直列に接続されている。
【0028】
メータイン油路73は、油圧ポンプ1から吐出された作動油を方向制御弁28,15のメータイン開口を介して各油圧アクチュエータ(油圧旋回モータ3及びブームシリンダ16)に導入するもので、本実施の形態では2つの方向制御弁28,15(2つの油圧アクチュエータ3,16)は、メータイン油路73を介して並列に接続されている。
【0029】
メータイン油路73が方向制御弁28,15に接続される直前には、チェック弁22,23がそれぞれ設けられている。チェック弁22,23は、油圧ポンプ1の吐出圧(ポンプ圧)が油圧アクチュエータ3,16の負荷圧よりも高い場合にのみ、メータイン油路73から油圧アクチュエータ3,16への作動油の流れを許容するものである。
【0030】
上部旋回体50を低速駆動するとき(旋回操作装置10の操作レバー10aの操作量が比較的小さいとき)とブーム61を低速駆動するとき(ブーム操作装置19の操作レバー19aの操作量が比較的小さいとき)とを比較すると、油圧旋回モータ3の負荷圧(旋回によるポンプ負荷)の方がブームシリンダ16の負荷圧(ブーム上げによるポンプ負荷)より小さい。そのため、2つの方向制御弁28,15におけるセンタバイパス絞りの開口面積を、同じレバー操作量で比較した場合にブーム上げ操作時のポンプ圧の方が旋回操作時のポンプ圧より高くなるよう、ブーム用の方向制御弁15の方が、旋回用の第1方向制御弁28よりもセンタバイパス絞りの開口面積が相対的に小さくなるように設定されている(絞り量が相対的に大きい)。
【0031】
リリーフ弁24は、圧油供給油路71に接続されており、ポンプ圧がリリーフ圧に達したときに圧油供給油路71の作動油をタンク4に逃がす。
【0032】
旋回操作装置10には、エンジン51によって駆動されるパイロットポンプ(図示せず)を備えたパイロット油圧源9から、パイロット一次圧が導入される。旋回操作装置10は、操作レバー10aの操作量に応じてパイロット油圧源9からのパイロット一次圧を減圧し、操作レバー10aの操作方向に応じてパイロット圧PS1又はPS2を生成する。旋回操作装置10で生成されたパイロット圧PS1又はPS2は、パイロット油路81R1,81R2又は81L1,81L2を介して旋回用の第1方向制御弁28の受圧部28b又は28aに導かれるとともに、パイロット油路81R1又は81L1からそれぞれ分岐したパイロット油路82R又は82Lを介して旋回用の第2方向制御弁29の受圧部29b又は29aに導かれる。パイロット油路81R1と81R2の間、及びパイロット油路81L1と81L2の間にはそれぞれ電磁減圧弁30,31が介在しており、電磁減圧弁30,31が図示の位置(A位置及びC位置)にあるとき、第1方向制御弁28及び第2方向制御弁29は、同じパイロット圧PS1又はPS2によって同時に切り換え操作される。
【0033】
旋回操作装置10の操作レバー10aが右旋回方向に操作されると、パイロット油路81R1及び82Rを介して導かれるパイロット圧PS1により、第2方向制御弁29が右位置に(左方向へ)切り換え操作され、アクチュエータ油路74Lを圧油排出油路75に連通させるメータアウト開口が広がり、油圧旋回モータ3からの戻り油がタンク4に排出される(メータアウト制御が行われる)。さらに、電磁減圧弁30がA位置にあるときは、パイロット油路81R1及び81R2を介して導かれるパイロット圧PS1により第1方向制御弁28が右位置に(左方向へ)切り換え操作され、センタバイパス開口が絞られる(センタバイパス油路72を介して油圧ポンプ1からタンク4に戻る圧油の流量を減少させる)とともに、メータイン油路73をアクチュエータ油路74Rに連通させるメータイン開口が広がり、油圧旋回モータ3に圧油の供給される(メータイン制御が行われる)。これにより、油圧旋回モータ3は出力トルクを発生し、旋回体50は右旋回駆動される。
【0034】
一方、旋回操作装置10の操作レバー10aが左旋回方向に操作されると、パイロット油路81L1及び油路82Lを介して導かれるパイロット圧PS2により、第2方向制御弁29が左位置に(右方向へ)切り換え操作され、アクチュエータ油路74Rを圧油排出油路75に連通させるメータアウト開口が広がり、油圧旋回モータ3からの戻り油がタンク4に排出される(メータアウト制御が行われる)。さらに、電磁減圧弁31のC位置にあるときは、パイロット油路81L1及び81L2を介して導かれるパイロット圧PS2により第1方向制御弁28が左位置に(右方向へ)切り換え操作され、センタバイパス開口が絞られる(センタバイパス油路72を介して油圧ポンプ1からタンク4に戻る圧油の流量を減少させる)とともに、メータイン油路73をアクチュエータ油路74Lに連通させるメータイン開口が広がり、油圧旋回モータ3に圧油の供給される(メータイン制御が行われる)。これにより、油圧旋回モータは出力トルクを発生し、旋回体50は左旋回駆動される。
【0035】
このように、油圧旋回モータ3に供給される圧油の流れを制御するメータイン制御及び油圧旋回モータ3からの戻り油の流れを制御するメータアウト制御は、2つの方向制御弁28,29によって別々に行われる。
【0036】
パイロット油路81R1及び81L1には、それぞれ圧力センサ11(以下、右旋回パイロット圧センサという)及び圧力センサ12(以下、左旋回パイロット圧センサという)が設けられており、右左旋回パイロット圧センサ11,12によって検出されたパイロット圧PS1,PS2は、コントローラ13に出力される。
【0037】
アクチュエータ油路74Lには、リリーフ弁5及びメイクアップ弁7が接続されており、アクチュエータ油路74Rには、リリーフ弁6及びメイクアップ弁8が接続されている。リリーフ弁5,6は、リリーフ圧まで達した作動油をタンク4に逃がすためのもので、旋回の加減速時等に発生する異常圧をカットして回路を保護する機能を有する。メイクアップ弁7,8は、油路の作動油が不足してその圧力がタンク圧よりも低くなったときに、タンク4から作動油を吸い込むためのものであり、回路のキャビテーションを防止する機能を有する。
【0038】
油圧旋回モータ3には電動旋回モータ14が同軸上に接続されており、電動旋回モータ14の駆動および制動はインバータ装置103によって制御される。旋回単独動作時(他のアクチュエータは停止させて旋回体50のみを動作させる時)には、上部旋回体50は、油圧旋回モータ3と電動旋回モータ14の合計出力トルクによって旋回駆動される。なお、電動旋回モータ14と油圧旋回モータ3は、必ずしも機械的に直結する必要はなく、共通の駆動対象である旋回体50を駆動可能な構成であれば機械的機構などを介して間接的に接続しても良い。
【0039】
ブーム操作装置19には、旋回操作装置10と同様に、パイロット油圧源9からパイロット一次圧が導入されている。ブーム操作装置19は、操作レバー19aの操作量に応じてパイロット一次圧を減圧し、操作レバー19aの操作方向に応じてパイロット圧PB1又はPB2を生成する。ブーム操作装置19で生成されたパイロット圧PB1又はPB2は、パイロット油路83D又は83Uを介してブーム用の方向制御弁15の受圧部15a又は15bに導かれ、ブーム用の方向制御弁15を切り換え操作する。
【0040】
ブーム操作装置19の操作レバー19aをブーム上げ方向に操作することによりパイロット圧PB2(以下、ブーム上げパイロット圧という)が発生するパイロット油路83Uには、圧力センサ20(以下、ブーム上げパイロット圧センサという)が設置されている。ブーム上げパイロット圧センサ20によって検出されたブーム上げパイロット圧PB2は、コントローラ13に出力される。
【0041】
ブーム用の方向制御弁15は、メータイン油路73を介して導入される作動油をブームシリンダ16に供給する。
【0042】
ブーム操作装置19の操作レバー19aをブーム上げ方向に操作すると、ブーム用の方向制御弁15が図中の右位置に(左方向へ)移動し、ブームシリンダ16のボトム側油圧室に油圧ポンプ1から作動油が供給されるとともに、ブームシリンダ16のロッド側油圧室から排出される作動油は方向制御弁15を介してタンク4に戻され、ブームシリンダ16は伸長動作する。
【0043】
一方、ブーム操作装置19の操作レバー19aをブーム下げ方向に操作すると、方向制御弁15が図中の左位置に(右方向へ)移動し、ブームシリンダ16のロッド側油圧室に油圧ポンプ1から作動油が供給されるとともに、ブームシリンダ16のボトム側油圧室から排出される作動油が方向制御弁15を介してタンク4に戻され、ブームシリンダ16は縮小動作する。
【0044】
電磁減圧弁30は、右旋回パイロット油路81R1と81R2を連通するA位置と、パイロット油路81R1と81R2を遮断するとともにパイロット油路81R2をタンク4に連通させるB位置との間で切換可能であり、コントローラ13から入力される電気信号(ON/OFF信号)によって切換制御される。コントローラ13からOFF信号が入力されると、電磁減圧弁30はA位置に切り換わり、旋回操作装置10が生成したパイロット圧PS2が第1方向制御弁28の受圧部28bに導かれることで、第1方向制御弁28の右位置(左方向)への切り換え操作が可能となる。一方、コントローラ13からON信号が入力されると、電磁減圧弁30はB位置に切り換わり、パイロット圧PS2が受圧部28bに導かれなくなることで、第1方向制御弁28の右位置(左方向)への動作が不能となる。
【0045】
電磁減圧弁31は、パイロット油路81L1と81L2を連通するC位置と、パイロット油路81L1と81L2を遮断するとともにパイロット油路81L2をタンク4に連通させるD位置との間で切換可能であり、コントローラ13から入力される電気信号(ON/OFF信号)によって切換制御される。コントローラ13からOFF信号が入力されると、電磁減圧弁31はC位置に切り換わり、旋回操作装置10が生成したパイロット圧PS2が第1方向制御弁28の受圧部28aに導かれることで、第1方向制御弁28の左位置(右方向)への切り換え操作が可能となる。一方、コントローラ13からON信号が入力されると、電磁減圧弁31はD位置に切り換わり、パイロット圧PS2が受圧部28bに導かれなくなることで、第1方向制御弁28の左位置(右方向)への動作が不能となる。
【0046】
〜制御〜
図3は、電磁減圧弁30,31及びインバータ装置103の制御ブロック図である。コントローラ13は、ブーム上げパイロット圧センサ20及び右左旋回パイロット圧センサ11,12の出力値に基づいてブーム操作装置19の操作レバー19aがブーム上げ方向に操作されたかどうか(ブーム上げ操作の有無)及び旋回操作装置10の操作レバー10aが操作されたかどうか(旋回操作の有無)を判定し、その判定結果に応じて電磁減圧弁30,31及びインバータ装置103を制御するための電気信号を出力する処理を実行する。旋回操作及びブーム上げ操作の有無の具体的な判定方法としては、例えば、各操作装置10,19の操作レバー10a,19aが操作されたときに生成される最小パイロット圧P0(例えば、1.0MPa)を閾圧とし、各圧力センサ11,12,20で検出したパイロット圧PS1,PS2,PB2が閾圧P0を超えたか否かによって操作の有無を判定するという方法がある。
【0047】
図4は、上記の判定方法を用いた場合の電磁減圧弁30,31の制御フロー図である(インバータ装置103の制御については後述)。当該制御フローを構成する各ステップの処理内容を、
図4を用いて順に説明する。
【0048】
まず、ステップS100でブーム上げパイロット圧PB2が閾圧P0より高い(ブーム上げ操作有り)かどうかを判定する。ステップS100でブーム上げ操作無し(NO)と判定された場合は、電磁減圧弁30にOFF信号を出力して電磁減圧弁30をA位置に切り換え(ステップS110)、電磁減圧弁31にOFF信号を出力して電磁減圧弁31をC位置に切り換える(ステップS120)。これにより、メータイン制御用の第1方向制御弁28の切り換え操作が可能となり、油圧旋回モータ3はパイロット圧PS1,PS2に応じて出力トルクを発生する。
【0049】
ステップS100でブーム上げ操作有り(YES)と判定された場合は、右旋回パイロット圧PS1が閾圧P0より高い(右旋回操作有り)かどうかを判定する(ステップS130)。ステップS130で右旋回操作有り(YES)と判定された場合は、電磁減圧弁30にON信号を出力して電磁減圧弁30をB位置に切り換え(ステップS140)、電磁減圧弁31にOFF信号を出力して電磁減圧弁31をC位置に切り換える(ステップS150)。これにより、右旋回駆動時にメータイン制御用の第1方向制御弁28の右位置(左方向)への動作が不能となり、油圧旋回モータ3は出力トルクを発生しない。
【0050】
ステップS130で右旋回操作無し(NO)と判定された場合は、左旋回パイロット圧PS2が閾圧P0より高い(左旋回操作有り)かどうかを判定する(ステップS160)。ステップS160で右旋回操作有り(NO)と判定された場合は、電磁減圧弁30にOFF信号を出力して電磁減圧弁30をA位置に切り換え(ステップS170)、電磁減圧弁31にON信号を出力して電磁減圧弁31をD位置に切り換える(ステップS180)。これにより、左旋回駆動時にメータイン制御用の第1方向制御弁28の左位置(右方向)への動作が不能となり、油圧旋回モータ3は出力トルクを発生しない。
【0051】
ステップS160で左旋回操作無し(NO)と判定された場合は、電磁減圧弁30,31の切換制御は行わない。このとき、パイロット圧PS1,PS2はともに閾圧P0よりも低く、電磁減圧弁30,31がいずれの位置にあってもメータイン制御用の第1方向制御弁28は切り換え操作されないため、油圧旋回モータ3は出力トルクを発生しない。
【0052】
なお、
図4に示す制御フローでは、右旋回操作の有無を判定した後に左旋回操作の有無を判定することとしたが(ステップS130→S140)、左旋回操作の有無を先に判定しても良い。その場合の制御フローは、ステップS130,S140,S150とステップS160,S170,S180とをそれぞれ入れ替えたものとなる。
【0053】
このように電磁減圧弁30,31及びコントローラ13は、メータイン制御用の第1方向制御弁28の動作を規制する規制装置を構成しており、ブーム上げ操作と旋回操作が同時に行われたとき(ブームシリンダ16と旋回体50が同時に動作するとき)、メータイン制御用の第1方向制御弁28の動作を不能とする。
【0054】
また、コントローラ13は、
図4に示した電磁減圧弁30,31の制御と平行して、旋回以外の操作の有無に関わらず旋回操作装置10の操作レバー10aの操作方向及び操作量(すなわち、右左旋回パイロット圧センサ11,12の出力値)に応じて上部旋回体50が旋回するように、インバータ装置103が電動旋回モータ14を制御するための制御信号を生成し、当該制御信号をインバータ装置103に出力する処理を行っている。コントローラ13から出力された制御信号に基づいてインバータ装置103は電動旋回モータ14を制御する。コントローラ13によるインバータ装置103を介した電動旋回モータ14の制御は公知の方法を利用すれよれば良い。例えば、旋回操作装置10の操作レバー10aの操作量から決定される目標速度に上部旋回体50の速度が近づくように、油圧旋回モータ3の不足トルク分を補うために電動旋回モータ14をフィードバック制御するものや、電動旋回モータ14と油圧旋回モータ3の合計出力トルクが操作レバー10aの操作量から算出される目標旋回トルクに等しくなるように両者の出力トルクを適宜調整するトルク制御等がある。
【0055】
図5は、トルク制御を採用した場合のインバータ装置103の制御フロー図である。当該制御フローを構成する各ステップの処理内容を、
図5を用いて順に説明する。
【0056】
まず、ステップS200で右左旋回パイロット圧PS1,PS2に応じた目標旋回トルクを算出し、ブーム上げパイロット圧PB2が閾圧P0より高い(ブーム上げ操作有り)かどうかを判定する(ステップS210)。
【0057】
ステップS210でブーム上げ操作有り(YES)と判定された場合は、油圧旋回モータ3が
図4に示す制御により出力トルクを発生しないため、電動旋回モータ14の出力トルクが目標旋回トルクと等しくなるようインバータ装置103を制御する(ステップS220)。これにより、旋回体50は、電動旋回モータ14単独の出力トルク(=目標旋回トルク)によって旋回駆動される。
【0058】
ステップS210でブーム上げ操作無し(NO)と判定された場合は、油圧旋回モータ3が
図4に示す制御により出力トルクを発生するため、電動旋回モータ14の出力トルクが、目標旋回トルクから油圧旋回モータ3の出力トルクを差し引いたトルクと等しくなるようインバータ装置103を制御する(ステップS230)。これにより、旋回体50は、油圧旋回モータ3と電動旋回モータ14の合計出力トルク(=目標旋回トルク)によって旋回駆動される。
【0059】
〜動作〜
ここで、従来型の油圧システムの動作について説明し、それとの比較に基づいて本実施の形態に係る油圧システムの動作を説明する。なお、本実施の形態に係る油圧システム(
図2に示す)がオープンセンタ方式であるので、従来型の油圧システムについてもオープンセンタ方式のものを例に説明する。
【0060】
図6は、従来型の油圧ショベルに搭載される油圧システムの概略構成図である。オープンセンタ方式の油圧システムにおける旋回用の方向制御弁2及びブーム用の方向制御弁15は、ともにタンク4に通じるセンタバイパス開口と、油圧アクチュエータ3,16に供給される作動油が通るメータイン開口と、油圧アクチュエータ3,16から戻ってきた作動油が通るメータアウト開口とを備えている。
【0061】
各操作装置10,19の操作レバー10a,19aを操作し、図示中立位置にある方向制御弁2,15を左右いずれかの方向に操作すると、メータイン開口が広がり、油圧アクチュエータ3,16に圧油が流入するとともに、メータアウト開口が広がり、油圧アクチュエータ3,16からの戻り油がタンク4に戻される。
【0062】
また、図示中立位置にある方向制御弁2,15を左右いずれかの方向に移動させるとセンタバイパス開口が絞られる。これによりセンタバイパス開口の通過前後における作動油の差圧が大きくなり、油圧ポンプ1の吐出圧(ポンプ圧)が上昇する。ポンプ圧が油圧アクチュエータの駆動に必要な圧力(アクチュエータ負荷圧)を超えて上昇すれば、油圧ポンプ1からの圧油が当該油圧アクチュエータに流入して当該油圧アクチュエータが駆動される。また、センタバイパス開口面積は、油圧ポンプ1からの圧油が油圧アクチュエータ3又は16に流入するときに、油圧アクチュエータ3又は16とセンタバイパス油路72とに分流する作動油の割合を決定することにより、油圧アクチュエータ3又は16の動作速度も制御する。
【0063】
上記のように、方向制御弁2,15のセンタバイパス開口は、駆動対象の油圧アクチュエータ3,16に作用する負荷の程度や、各操作装置10,19の操作レバー10a,19aの操作量(パイロット圧)に対するアクチュエータ速度に応じて最適に設定されている。
【0064】
例えば、旋回用の方向制御弁2のセンタバイパス開口は次のように設定されている。オペレータが旋回操作装置10の操作レバー10aをいずれかの方向に少しだけ操作した場合、オペレータは低速度での旋回を要求していることになる。また、油圧ショベルの上部旋回体を低速で旋回させるときの負荷は低く、ポンプ圧を大きく上昇させる必要はないため、旋回用の方向制御弁2のセンタバイパス開口は比較的大きく設定されている(絞り量が比較的小さい)。
【0065】
また、例えば、ブーム用の方向制御弁15のセンタバイパス開口は次のように設定されている。オペレータがブーム操作装置19の操作レバー19aをブーム上げ方向に少しだけ操作した場合、オペレータは低速度でのブーム上げを要求していることになる。しかし、吊り荷作業時はバケットに負荷が掛かるためブーム負荷が高く、ブームを駆動するためにはポンプ圧を大きく上昇させる必要がある。そのため、ブームシリンダ16のボトム側油圧室に作動油を供給するために、ブーム用の方向制御弁15のブーム上げ方向(図示右位置)のセンタバイパス開口は比較的小さく設定されている(絞り量が比較的大きい)。
【0066】
このように、レバー操作量が同じでも、操作対象の油圧アクチュエータの負荷や速度によって、操作性と効率を両立できる最適なセンタバイパス開口の設定は異なる。さらに、一般に、油圧ショベル等に搭載される油圧システムは、1つの油圧ポンプから吐出される作動油が、複数の油圧アクチュエータを駆動するために複数の方向制御弁によって適宜分流されるよう構成されている。上記のオープンセンタ方式では、各方向制御弁2,15はセンタバイパス油路72を介して直列に接続されており、各方向制御弁2,15のセンタバイパス開口の合成によって、ポンプ圧と、油圧アクチュエータ3,16に流れ込む流量とが決定される。
【0067】
図6に示す従来型の油圧システムは、
図2に示した本実施の形態に係る油圧システムから電磁減圧弁30,31を省略し、第1方向制御弁28及び第2方向制御弁29を単一の方向制御弁2に置き換えたものに相当する。本実施の形態に係る油圧システムでは、旋回複合動作時には、上部旋回体50は電動旋回モータ14単独の出力トルクによって駆動されるのに対し、従来型の油圧システムでは、上部旋回体50は油圧旋回モータ3と電動旋回モータ14の合計出力トルクによって駆動される。
【0068】
図6に示したオープンセンタ方式の油圧システムでは、旋回用の方向制御弁2とブーム用の方向制御弁15が同一のセンタバイパス油路72に配置されていることにより、例えば吊り荷作業において次のような現象が発生する。
【0069】
まず、オペレータがブーム上げ単独操作によって低速で荷を持ち上げようとしたとする。ブーム用の方向制御弁15のセンタバイパス開口は、高い負荷でもブームシリンダ16に圧油を供給できるように大きく絞られているため、ブーム操作装置19の操作レバー19aをブーム上げ方向に小さく操作した場合でもポンプ圧はブーム負荷圧を超えて上昇し、ブームシリンダ16が伸長して荷は持ち上がる。目的の高さまで荷が上がったら、オペレータは、操作レバー19aを中立位置に戻し、ブーム上げ動作を停止する。
【0070】
次に、オペレータは旋回単独操作によって低速で荷を水平移動させようとしたとする。旋回用の方向制御弁2のセンタバイパス開口は、ブーム方向制御弁15のセンタバイパス開口に比べて広く設定されているが、荷を吊っている状態でも旋回負荷は高くならないため、旋回操作装置10の操作レバー10aを小さく操作した場合でも旋回体50は旋回を開始する。このように、吊り荷作業であっても、旋回とブーム上げをそれぞれ単独で行う限りは、旋回用の方向制御弁2とブーム用の方向制御弁15のセンタバイパス絞りはそれぞれ適切に設定されているため、ポンプ圧および油圧アクチュエータ3,16に流入する流量は意図通りに制御される。
【0071】
これに対し、荷を斜め上方向に移動させるため、旋回単独操作をしている状態でブーム上げ操作を行い、旋回複合動作(旋回ブーム上げ動作)をさせたとする。旋回用の方向制御弁2とブーム用の方向制御弁15は同一のセンタバイパス油路72に配置されているため、ブーム用の方向制御弁15のセンタバイパス開口は旋回用の方向制御弁2のセンタバイパス開口としても機能する。すなわち、ブーム上げ操作によってブーム用の方向制御弁15のセンタバイパスが絞られることにより、旋回用の方向制御弁2のセンタバイパスが絞られた状態と等しくなり、旋回用の方向制御弁2におけるセンタバイパス流量とメータイン流量のバランスが変化する。さらに、ブーム上げ負荷は旋回負荷よりも大きいため、油圧旋回モータ3に圧油が流れ込み易い状態となり、オペレータの意図に反して油圧旋回モータ3に圧油が流れ込んで旋回が加速することがある。吊り荷移動中に、オペレータの意図に反して旋回が加速してしまうことは、荷が揺れてしまう原因となり望ましいことではない。
【0072】
〜効果〜
このような課題に対して、上記のように構成された本実施の形態に係る油圧システムによれば、旋回ブーム上げ動作時にポンプ圧が上昇したとしても、メータイン制御用の第1方向制御弁28の動作を不能とすることで、油圧旋回モータ3への作動油の流入が阻止されるので、オペレータの意図に反して旋回体50が加速することを防止できる。あるいは、ブーム上げ操作中に旋回操作を開始した場合に、油圧旋回モータ3に作動油が流れ込むことがないため、ブーム上げ速度が意図せず減速することを防止できる。このようにブーム上げ操作と旋回操作を独立させることにより、旋回複合動作時のオペレータの操作フィーリングが良好に保持され、特に旋回ブーム上げ動作によりバケット65を目標位置に停止させる吊り荷作業での操作が容易になる。
【0073】
さらに、旋回複合動作時に、メータイン制御用の第1方向制御弁28の動作を不能とする一方で、メータアウト制御用の第2方向制御弁29の切り換え操作を行い、油圧旋回モータ3の制動トルクを旋回体50に作用させることで、油圧旋回モータ3を駆動しない旋回複合動作時の旋回に係る操作フィーリングを、油圧旋回モータ3を駆動する旋回単独動作時の操作フィーリングに近づけることができる。
【0074】
<第2の実施の形態>
図7は、第2の実施の形態に係る油圧システムの概略構成図である。本実施の形態に係る油圧システムの、第1の実施の形態に係る油圧システム(
図2に示す)との相違点は、第2方向制御弁29(
図2に示す)に代えて、センタバイパス開口を有する第2方向制御弁32をセンタバイパス油路72上に配置した点である。
【0075】
第2方向制御弁32のセンタバイパス開口は、第2方向制御弁が左右いずれの方向に切り換え操作された場合でもセンタバイパス油路72を絞らないよう設定されている。すなわち、メータアウト制御用の第2方向制御弁32は、センタバイパス油路72において油圧ポンプ1からタンク4に戻る圧油の流量を制御する機能を備えない。これにより、ブーム用の方向制御弁15の切り換え操作によってブームシリンダ16とタンク4とに分配される圧油の流量は、第1の実施の形態と同様、第2方向制御弁32の切り換え操作によって変化しないため、旋回ブーム上げ操作における旋回操作とブーム上げ操作の独立性を保つことができる。
【0076】
なお、本実施の形態に係るコントローラ13が実行する電磁減圧弁30,31及びインバータ装置103の制御は、第1の実施の形態と同様である。
【0077】
上記のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0078】
さらに、第2方向制御弁32にセンタバイパス開口を設けたことにより、方向制御弁32を他の方向制御弁28,15とともに一つのバルブブロックにまとめて配置することが可能となり、第2方向制御弁32及びその周辺油圧回路の製作が容易となる。
【0079】
<第3の実施の形態>
図8は、第3の実施の形態に係る油圧システムの概略構成図である。本実施の形態に係る油圧システムの、第2の実施の形態に係る油圧システム(
図7に示す)との相違点は、第1方向制御弁28(
図7に示す)に代えて第1方向制御弁33を備え、第2方向制御弁32(
図7に示す)に代えて第2方向制御弁34を備えている点である。
【0080】
第1方向制御弁33及び第2方向制御弁34は、ともにメータイン開口、センタバイパス開口、及びメータアウト開口を有し、油圧ポンプ1から吐出された作動油をアクチュエータ油路74R,74Lを介して油圧旋回モータ3に供給するために、それぞれチェック弁22,25を介してメータイン油路73に接続されており、また、油圧旋回モータ3からアクチュエータ油路74R,74Lに排出される作動油をタンク4に戻すために、それぞれ圧油排出油路75に接続されている。
【0081】
第1方向制御弁33は、右位置に(左方向へ)切り換え操作されたときは、センタバイパス開口を絞り、メータイン油路73をアクチュエータ油路74Rに連通させるメータイン開口を広げ、アクチュエータ油路74Rを圧油排出油路75に連通させるメータアウト開口を開かないよう構成されている。一方、左位置に(右方向へ)切り換え操作されたときは、センタバイパス開口を絞らず、メータイン開口を開かず、アクチュエータ油路74Rを圧油排出油路75に連通させるメータアウト開口を広げるように構成されている。
【0082】
第2方向制御弁34は、左位置に(右方向へ)切り換え操作されたときは、センタバイパス開口を絞り、メータイン油路73をアクチュエータ油路74Lに連通させるメータイン開口を広げ、アクチュエータ油路74Rを圧油排出油路75に連通させるメータアウト開口を開かないよう構成されている。一方、右位置に(左方向へ)切り換え操作されたときは、センタバイパス開口を絞らず、メータイン開口を開かず、アクチュエータ油路74Lを圧油排出油路75に連通させるメータアウト開口を広げるように構成されている。
【0083】
旋回操作装置10で生成されたパイロット圧PS1又はPS2は、パイロット油路81R1,81R2又は81L1,81L2を介して旋回用の第1方向制御弁33の受圧部33b又は第2方向制御弁34の受圧部34aに導かれるとともに、パイロット油路81R1又は81L1からそれぞれ分岐したパイロット油路82R又は82Lを介して第2方向制御弁34の受圧部34b又は第1方向制御弁33の受圧部33aに導かれる。
【0084】
旋回操作装置10の操作レバー10aが右旋回方向に操作され、パイロット油路81R1にパイロット圧PS1が発生すると、パイロット油路81R1から分岐したパイロット油路82Rを介して導かれるパイロット圧PS1により、第2方向制御弁34が右位置に(左方向へ)切り換え操作され、油圧旋回モータ3からの戻り油の流れが制御される(メータアウト制御が行われる)。さらに、電磁減圧弁30がA位置にあるときは、パイロット圧PS1により第1方向制御弁33が右位置に(左方向へ)切り換え操作され、油圧旋回モータ3へ供給される圧油の流れが制御される(メータイン制御が行われる)。これにより、旋回体50は、油圧旋回モータ3の出力トルクによって右旋回駆動される。
【0085】
一方、旋回操作装置10の操作レバー10aが左旋回方向に操作され、パイロット油路81L1にパイロット圧PS2が発生すると、パイロット油路81L1から分岐したパイロット油路82Lを介して導かれるパイロット圧PS2により、第1方向制御弁33が左位置に(右方向へ)切り換え操作され、油圧旋回モータ3からの戻り油の流れが制御される(メータアウト制御が行われる)。さらに、電磁減圧弁31のC位置にあるときは、パイロット圧PS2により第2方向制御弁34が左位置に(右方向へ)切り換え操作され、油圧旋回モータ3へ供給される圧油の流れが制御される(メータイン制御が行われる)。これにより、旋回体50は、油圧旋回モータ3の出力トルクによって左旋回駆動される。
【0086】
このように、旋回体50が油圧旋回モータ3によって右旋回駆動されるときは、第1方向制御弁33がメータイン制御用の方向制御弁を構成し、第2方向制御弁34がメータアウト制御用の方向制御弁を構成する。一方、旋回体50が油圧旋回モータ3によって左旋回駆動されるときは、第2方向制御弁34がメータイン制御用の方向制御弁を構成し、第1方向制御弁33がメータアウト制御用の方向制御弁を構成する。すなわち、本実施の形態においても、油圧旋回モータ3への圧油の流れを制御するメータイン制御及び油圧旋回モータ3からの戻り油の流れを制御するメータアウト制御は、2つの方向制御弁33,34によって別々に行われる。
【0087】
また、ブーム用の方向制御弁15の切り換え操作によってブームシリンダ16とタンク4とに分配される圧油の流量は、第1方向制御弁33の左位置への切り換え操作及び第2方向制御弁34の右位置への切り換え操作によって変化しない。すわなち、メータアウト制御用の方向制御弁33又は34は、センタバイパス油路72において油圧ポンプ1からタンク4に戻る圧油の流量を制御する機能を備えない。これにより、第1及び第2の実施の形態と同様、旋回ブーム上げ操作における旋回操作とブーム上げ操作の独立性を保つことができる。
【0088】
なお、本実施の形態に係るコントローラ13が実行する電磁減圧弁30,31及びインバータ装置103の制御は、第1及び第2の実施の形態と同様である。
【0089】
上記のように構成した本実施の形態においても、第1及び第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0090】
<変形例>
ところで、上記の各実施の形態では旋回とブーム上げの複合動作について記述したが、本発明が課題とする旋回複合動作時の旋回加速(速度変化)が起こる条件は、油圧旋回モータ以外の油圧アクチュエータを操作することにより油圧ポンプの吐出圧(ポンプ圧)が上昇することであるので、ブーム61との複合操作に対してだけではなく、他の油圧アクチュエータとの複合操作に対しても本発明は有効である。
【0091】
また、上記の各実施の形態では、全ての方向制御弁に油圧ポンプが接続されたパラレル回路で構成された油圧システムを例に挙げて説明したが、本発明は、油圧旋回モータと他の油圧アクチュエータがオペレータによって同時に操作された場合に、負荷の小さい油圧旋回モータにより多くの作動油が流れるという特徴を有する油圧システムであれば適用可能である。すなわち、ブームシリンダを含む他の油圧アクチュエータよりも優先して油圧旋回モータに作動油が供給されるタンデム回路で構成された油圧システムについても同様に適用可能である。さらに、オープンセンタ方式だけでなく、クローズドセンタ方式の油圧システムについても同様に適用可能である。
【0092】
また、上記の各実施の形態では、旋回操作装置10から出力されるパイロット圧PS1,PS2(油圧操作信号)を圧力センサ11,12で検出して電気信号に変換し、コントローラ13に出力する構成を採用しているが、旋回操作装置10の操作レバー10aの操作量に応じた電気操作信号をコントローラ13に出力する構成を採用しても良い。この場合には、旋回操作装置10の操作レバー10aの回転変位を検出する位置センサ(例えば、ロータリーエンコーダ)を利用することができる。
【0093】
また、各実施の形態では、方向制御弁として、パイロット圧を作用させて位置を制御するパイロット弁を用いているが、電気信号によって位置を制御する電磁弁を用いても良く、各実施の形態における電磁減圧弁30,31は、パイロット油路81R1と81R2との間及びパイロット油路81L1と81L2との間を遮断する開閉弁であっても良い。
【0094】
さらに、本実施の形態では、圧力センサ11,12のみで旋回操作装置10の操作レバー10aの操作量を検出しているが、例えば、圧力センサ11,12と上記位置センサの双方で検出する等、検出方式の異なるセンサを組み合わせて検出しても良い。このようにすれば、一方のセンサに不具合が生じた場合でも他方のセンサで操作量を検出することができるため、システムの信頼性を向上できる。
【0095】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。