(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の駆動源である原動機と駆動輪との間の動力伝達系に設けられたトルクコンバータにおいて係合状態および解放状態ならびにスリップ係合状態の何れかの状態を達成可能なロックアップクラッチと、
前記動力伝達系に設けられた回転軸の回転数を検出する回転数センサと、
前記回転数センサにより検出された回転数が振動しているか否かを判定する振動判定手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記ロックアップクラッチを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記ロックアップクラッチが係合状態の場合に、前記走行状態検出手段により検出される走行状態が前記振動の発生しうる状態として予め設定された第1の走行状態にあるとともに前記振動判定手段により回転数が振動していると判定されることを開始条件に第1制御を実施し、
前記振動判定手段により回転数が振動していないと判定され、且つ、前記走行状態検出手段により検出される走行状態が前記第1の走行状態のうちで更に前記振動の発生しやすい状態として予め設定された第2の走行状態であることを開始条件に第2制御を実施し、
前記第1制御では、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における第1のスリップ係合状態に移行させ、その後、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における前記第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない前記第1制御における第2のスリップ係合状態に移行させ、前記第1制御における前記第2のスリップ係合状態において前記振動判定手段により回転数が振動していないと判定されると、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における前記第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない前記第1制御における第3のスリップ係合状態に移行させる第1制御を実施し、
前記第2制御では、前記ロックアップクラッチを前記第2制御における第1のスリップ係合状態に移行させ、その後、前記ロックアップクラッチを前記第2制御における前記第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない前記第2制御における第2のスリップ係合状態に移行させる
自動変速機の制御装置。
前記制御手段は、前記走行状態検出手段により検出される走行状態が前記第1の走行状態でないことを終了条件に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態から係合状態に移行させる終了移行制御を実施する
請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
前記制御手段は、前記第1制御において前記開始条件が成立した場合には、予め設定された第1の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる第1開始移行制御を実施する
請求項1〜3の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。
前記制御手段は、前記第2制御において前記開始条件が成立した場合には、前記第1の解放度合いよりも小さい第2の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる第2開始移行制御を実施する
請求項4に記載の自動変速機の制御装置。
前記制御手段は、前記第2開始移行制御において前記第2の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる最中に、前記振動判定手段により回転数が振動していると判定されて前記第1制御の開始条件が成立すると、前記第2の解放度合いを前記第1の解放度合いに変更して前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる前記第1開始移行制御に移行する
請求項5に記載の自動変速機の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の自動変速機の制御装置にかかる実施の形態を説明する。本実施形態では、自動変速機としてベルト式無段変速機(「ベルト式CVT」や単に「CVT」とも称される)が適用されたものを例示する。ただし、自動変速機として、トロイダルCVTやチェーン式CVTなどその他の無段変速機や、有段変速機を適用することもできる。なお、本実施形態でいう「回転数」とは、単位時間あたりの回転量であり、回転速度に対応する。また、「回転数の振動」とは角速度の変動を意味する。
【0015】
〔I.一実施形態〕
以下、一実施形態にかかる自動変速機の制御装置について説明する。
〔1.構成〕
自動変速機の制御装置は、車両の動力伝達系に設けられたベルト式無段変速機を制御対象とする。
【0016】
〔1−1.動力伝達系〕
はじめに、
図1を参照して、車両の動力伝達系の構成を説明する。
車両の動力伝達系には、エンジン(原動機)1と、ベルト式無段変速機(CVT)100と、終減速機構5と、駆動輪6,6と、が設けられている。ベルト式無段変速機100には、トランスミッションケース内に、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とベルト式無段変速機構(「バリエータ」とも称される)4とが収容されている。
【0017】
〔1−1−1.エンジン〕
エンジン1は、車両の駆動源である。ここでは、エンジン1として内燃機関を適用している。なお、エンジン1に替えて、例えば電動モータおよびエンジンを併せもつハイブリッド型の駆動源や電動モータ単体の電動の駆動源といった他の駆動源を適用してもよい。
【0018】
〔1−1−2.トルクコンバータ〕
トルクコンバータ2は、トルク増大機能を有する発進要素であり、トルク増大機能を必要としないときに、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21とを直結可能なロックアップクラッチ20が設けられている。このトルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたポンプインペラ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたタービンランナ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26とを構成要素とする。
【0019】
ロックアップクラッチ20は、車両の走行状態や運転状態に応じて係合状態(クラッチ完全係合状態)と、解放状態(クラッチ完全解放状態)と、スリップ係合状態(クラッチ滑り係合状態、つまり、ロックアップクラッチ20の入力側の回転部材の回転数と出力側の回転部材とに回転数の差があるものの入力側から出力側へトルクが伝達されている状態)との何れかの状態を達成可能である。
ロックアップクラッチ20は、スリップ係合状態であれば一部の動力がトルクコンバータ2を介して伝達されるので、入出力軸間に回転差が生じた状態で動力を伝達する。このため、スリップ係合状態のロックアップクラッチ20は、動力伝達系においてダンパーとして機能する。
【0020】
ロックアップクラッチ20への供給油圧を制御することで、ロックアップクラッチ20の状態が切り替え制御される。また、この供給油圧を制御することで、ロックアップクラッチ20の各状態でのクラッチ係合力、即ち、クラッチのトルク伝達容量も制御される。ここでいう供給油圧(以下、「ロックアップ係合圧」とも称する)は、ロックアップクラッチ20の前後の図示しない二つの油室の差圧、即ち、アプライ室のトルクコンバータ供給圧Paとレリーズ室のトルクコンバータ解放圧Prの差圧(ロックアップ差圧)ΔP(=Pa−Pr)である。
【0021】
〔1−1−3.前後進切替機構〕
前後進切替機構3は、ベルト式無段変速機構4の変速機構入力軸40への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向とで切り替える機構である。この前進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、複数のクラッチプレートからなる前進クラッチ31および後退ブレーキ32と、を有する。
【0022】
前進クラッチ31は、Dレンジ(ドライブレンジ)などの前進走行レンジの選択時に前進クラッチ圧Pfcにより係合される。また、後退ブレーキ32は、後退走行レンジであるRレンジ(後退レンジ)の選択時に後退クラッチ圧Prbにより係合される。なお、Nレンジ(ニュートラルレンジ,非走行レンジ)の選択時には、前進クラッチ圧Pfcおよび後退ブレーキ圧Prbの何れもがドレーンされ、前進クラッチ31および後退ブレーキ32の何れもが解放される。
なお、前後進切替機構3として、前進側に複数の変速段を達成しうる副変速機構としての機能を有するものを適用してもよい。
【0023】
〔1−1−4.無段変速機構〕
ベルト式無段変速機構4は、ベルト接触径の変更により変速比を無段階に変化させる無段変速機能を有する。このベルト式無段変速機構4は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、ベルト44と、を有する。プライマリプーリ42は、固定プーリ42aおよびスライドプーリ42bを有し、スライドプーリ42bがプライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriによって軸方向に移動する。同様に、セカンダリプーリ43は、固定プーリ43aおよびスライドプーリ43bを有し、スライドプーリ43bがセカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecによって軸方向に移動する。
【0024】
プライマリプーリ42の固定プーリ42aおよびスライドプーリ42bの各対向面であるシーブ面と、セカンダリプーリ43の固定プーリ43aおよびスライドプーリ43bの各対向面であるシーブ面とは、何れもV字形状をなしている。これらの各シーブ面とベルト44の両側の各フランク面とが接触する。スライドプーリ42b,43bの軸方向移動に応じて、プライマリプーリ42およびセカンダリプーリ43へのベルト44の巻付き半径が変更されることにより変速比が変更される。
【0025】
〔1−1−5.終減速機構〕
終減速機構5は、ベルト式無段変速機構4の変速機構出力軸41からの出力回転を減速するとともに差動可能に左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、変速機構出力軸41と駆動輪6,6に連結された左右のドライブ軸51,51との間に介装され、変速機構出力軸41に設けられた第1ギヤ52と、アイドラ軸50に設けられた第2ギヤ53および第3ギヤ54と、最終減速機ギヤ55を介して連結されており差動機能を有するディファレンシャルギヤ56とを有する。
【0026】
〔1−2.制御系〕
次に、車両の制御系の構成を説明する。ここでは、ベルト式無段変速機100を制御する制御系に着目して説明する。
車両の制御系には、油圧コントロールユニット7と、CVT電子コントロールユニット(以下、「CVTECU」という。制御手段)8と、が設けられている。この油圧コントロールユニット7は、CVTECU8から出力される指示圧に応じた油圧を作り出す。また、CVTECU8と情報を授受するエンジン電子コントロールユニット(以下、「エンジンECU」という)9が装備されている。このエンジンECU9は、エンジン1に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを制御する。なお、各電子コントロールユニット(ECU:Electric Control Unit)8,9は、入出力装置,多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU),タイマカウンタなどを備えて構成される。
【0027】
〔1−2−1.油圧コントロールユニット〕
油圧コントロールユニット7は、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriと、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecと、前進クラッチ31への前進クラッチ圧Pfcと、後退ブレーキ32への後退ブレーキ圧Prbと、ロックアップコントロールバルブ78へのソレノイド圧Psolと、を作り出す制御ユニットである。この油圧コントロールユニット7はオイルポンプ70と油圧制御回路71とを備えている。
【0028】
油圧制御回路71は、ライン圧ソレノイド72と、プライマリ圧ソレノイド73と、セカンダリ圧ソレノイド74と、前進クラッチ圧ソレノイド75と、後退ブレーキ圧ソレノイド76と、ロックアップソレノイド77と、を有する。
ライン圧ソレノイド72は、CVTECU8から出力されるライン圧指示に応じ、オイルポンプ70から圧送される作動油を、指示されたライン圧PLに調圧する。
プライマリ圧ソレノイド73は、CVTECU8から出力されるプライマリ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示されたプライマリ圧Ppriに減圧調整する。
【0029】
セカンダリ圧ソレノイド74は、CVTECU8から出力されるセカンダリ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示されたセカンダリ圧Psecに減圧調整する。
前進クラッチ圧ソレノイド75は、CVTECU8から出力される前進クラッチ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示された前進クラッチ圧Pfcに減圧調整する。
後退ブレーキ圧ソレノイド76は、CVTECU8から出力される後退ブレーキ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示された後退ブレーキ圧Prbに減圧調整する。
【0030】
ロックアップソレノイド77は、CVTECU8からの指示により、ロックアップコントロールバルブ78への指示信号圧としてのソレノイド圧Psolを作り出す。ロックアップコントロールバルブ78は、ソレノイド圧Psolを作動信号圧として、ロックアップクラッチ20のクラッチ前後油室の差圧であるロックアップ差圧ΔP(ΔP=Pa−Pr)がCVTECU8からの指示に基づく値となるようにトルクコンバータ供給圧とトルクコンバータ排出圧とを調整する。
【0031】
〔1−2−2.CVTECU〕
CVTECU8は、上記したようにCVT100に関する各指示圧を出力してCVT100にかかる広汎なシステムを制御するが、以下の説明では、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ20の制御に着目して、CVTECU8の構成を詳述する。
このCVTECU8には、CANやFlexRayなどの通信ラインを介して各種のセンサ類が接続されている。各種センサ類による検出情報はCVTECU8に伝達される。
【0032】
〔1−2−2−1.センサ類〕
まず、CVTECU8に接続される各種のセンサ類について説明する。
ライン圧センサ80はライン圧PLを検出し、プライマリ圧センサ81はプライマリ圧Ppriを検出し、セカンダリ圧センサ82はセカンダリ圧Psecを検出するものである。これらのセンサ80,81,82の検出情報に基づいて、CVTECU8は各油圧の指示圧を演算し出力する。
【0033】
エンジン回転数センサ83はエンジン出力軸11の回転数を検出し、プライマリ回転数センサ84(走行状態検出手段)はプライマリプーリ42の回転数(=変速機構入力軸40の回転数)を検出し、セカンダリ回転数センサ85(走行状態検出手段)はセカンダリプーリ43の回転数(=変速機構出力軸41の回転数)を検出するものである。なお、プライマリ回転数センサ84は、プライマリプーリ42の回転数を検出するのに替えて、タービンランナ24の回転数を検出してもよい。
【0034】
CVTECU8は、プライマリ回転数センサ84により検出されたプライマリプーリ42の回転数とセカンダリ回転数センサ85により検出されたセカンダリプーリ43の回転数との比である変速比を算出(検出)する変速比検出手段として機能する。また、CVTECU8は、算出された変速比とプライマリ回転数センサ84により検出された回転数とから車速も算出している。なお、ここではエンジン回転数センサ83により検出されたエンジン出力軸11の回転数の情報がエンジンECU9を介してCVTECU8に伝達される。
【0035】
インヒビタスイッチ(インヒビタSW)86は、ドライバのシフトレバー操作によって選択されているレンジ位置(Pレンジ,Rレンジ,Nレンジ,Dレンジ等)を検出するセンサである。
アクセル開度センサ87は、図示省略するアクセルペダルの踏込量を検出するものである。また、アイドルスイッチ(アイドルSW)88は、アクセルペダルが踏込み操作されているか否かを検出するものである。このアイドルスイッチ88は、アクセルペダルの踏込み操作がされていればOFF信号を出力し、アクセルペダルの踏込み操作がされていなければON信号を出力する。
【0036】
ブレーキスイッチ(ブレーキSW)89は、図示省略するブレーキペダルの踏込み操作がされているか否かを検出するものである。このブレーキスイッチ89は、ブレーキペダルの踏込み操作がされていればON信号を出力し、ペダルの踏込み操作がされていなければOFF信号を出力する。
【0037】
〔1−2−2−2.CVTECUの各機能要素〕
次に、CVTECU8によって実施されるロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする制御(以下、「LUC制御」という)について説明する。ここでは、LUC制御のうち、動力伝達系の振動が判定(検出)されたときに実施される第1LUC制御(第1制御)と動力伝達系の振動が発生するおそれがあるときに実施される第2LUC制御(第2制御)との二つの制御について説明する。これら第1LUC制御および第2LUC制御は、動力伝達系の振動を抑えるために実施される。
【0038】
CVTECU8は、第1LUC制御および第2LUC制御のための機能要素として、前提条件判定部8Aと、振動判定部(振動判定手段)8cおよび走行状態判定部(走行状態判定手段)8dを有する開始条件判定部8Bと、第1LUC制御部8Eと、第2LUC制御部8Fと、終了条件判定部8Gと、を備えている。
このCVTECU8は、前提条件判定部8Aにより前提条件の成立が判定されたうえで、開始条件判定部8Bにより開始条件の成立が判定されると、第1LUC制御部8Eまたは第2LUC制御部8Fにより第1LUC制御または第2LUC制御を択一的に実施し、終了条件判定部8Gにより終了条件の成立が判定されると第1LUC制御または第2LUC制御を終了する。
【0039】
第1LUC制御または第2LUC制御では、ロックアップ係合圧P
LU(=ロックアップ差圧ΔP)を制御するが、ロックアップクラッチ20のトルク伝達容量である係合容量の指示値T
LU(以下、単に、係合容量T
LUとも記す)を周期的に求めて、この係合容量T
LUに応じてオープンループ制御によりロックアップクラッチの係合圧の指示値P
LU(以下、単に、係合圧P
LUとも記す)を制御する。
【0040】
なお、ロックアップクラッチ20の係合容量T
LUと係合圧P
LUとは、係合圧P
LUが増大するに連れて係合容量T
LUが増大(例えば線形に増大)する関係があるので、この関係に基づくマップを用意しておくことにより、変換マップを参照して、係合容量T
LUを係合圧P
LUに変換することができる。そして、得られた係合圧P
LUをロックアップソレノイド77の指令値(ロックアップデューティ)に変換し、指令値によりロックアップソレノイド77を制御し、ロックアップクラッチ20の状態を制御する。
【0041】
〔前提条件判定部〕
前提条件判定部8Aは、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれを実施するうえで前提となる条件(前提条件)を判定する。なお、ここでいう前提条件は、CVTECU8による第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの実施を許可する条件(許可条件)の一部ともいえる。
【0042】
〈第1LUC制御の前提条件〉
まず、第1LUC制御の前提条件(以下、「第1前提条件」という)について説明する。
第1前提条件は、例えば下記(A1)〜(A4)のすべてに当てはまるときに成立する。
(A1)各種センサ類のすべてが正常であること。
(A2)アクセル操作がされていること。
(A3)Dレンジが選択されていること。
(A4)ロックアップクラッチ20が係合状態であること。
【0043】
上記(A1)は、各種センサ類からフェール信号や異常出力値が出力されていなければ成立する。
上記(A2)は、アイドルスイッチ88がOFF信号を出力されていれば成立する。この(A2)は、アクセル開度センサ87からアクセルペダルの踏込量がゼロ近傍の所定量よりも大きいときに成立するものとしてもよい。また、(A2)に加えて、ブレーキスイッチ89がOFF信号を出力していることを盛り込んでもよい。
【0044】
上記(A3)は、インヒビタスイッチ86により検出されるレンジ位置がDレンジである場合に成立する。
上記(A4)は、CVTECU8からの指示信号圧であるソレノイド圧Psolに基づいて判定することができる。また、(A4)は、エンジン回転数センサ83により検出された回転数とプライマリ回転数センサ84により検出された回転数との差が所定回転数よりも小さいときに成立したと判定することができる。これは、各センサ83,84等の検出誤差等を考慮したためであり、このときのロックアップクラッチ20は実質的に係合状態となっている。
【0045】
なお、第1前提条件には、下記(A5)や(A6)などが付加されてもよい。
(A5)アクセル開度が所定開度以上であること。
(A6)動力伝達系に副変速機構が設けられていれば(A61)副変速機構が1速段あるいは2速段であること、(A62)副変速機構の入力側の回転と出力側の回転との差回転が所定回転数よりも小さいこと、(A63)副変速機構が変速中(架け替え中)でないこと。
【0046】
〈第2LUC制御の前提条件〉
第2LUC制御の前提条件(以下、「第2前提条件」という)は、第1前提条件と同様である。
【0047】
〔開始条件判定部〕
開始条件判定部8Bは、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの開始条件を判定する。なお、ここでいう開始条件は、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれを開始するトリガーとなる。
この開始条件は、開始条件判定部8Bの振動判定部8cおよび走行状態判定部8dを用いて判定される。
【0048】
振動判定部8cは、動力伝達系に設けられた回転軸の回転数が振動(動力伝達系の振動)しているか否かを判定する。例えば、セカンダリ回転数センサ85により検出されたセカンダリプーリ43の回転数(=変速機構出力軸41の回転数)やプライマリ回転数センサ84により検出されたプライマリプーリ42の回転数(=変速機構入力軸40の回転数=タービンランナ24の回転数)が振動しているか否かが判定される。このとき、振動判定部8cは動力伝達系の振動周波数も算出する。
【0049】
振動判定部8cによる振動の判定手法としては、検出された回転数にバンドパス処理を用いる手法などが挙げられる。例えば、検出された回転数にバンドパス処理を施し、このバンドパス処理した値(以下、「バンドパス処理値」という)が予め設定された所定の回転数の変化域、即ち、所定の回転数帯(以下、「第1の所定回転数変化域」という)に入っているか否かを判定し、バンドパス処理値が第1の所定回転数変化域に入っていなければ、即ち、第1の所定回転数変化域をはみ出すように回転数の振れ幅が大きければ、振動していると判定する。また、バンドパス処理値が第1の所定回転数変化域を高速側および低速側に超えたタイミングをそれぞれ検知し、このタイミングに基づいて変動する回転数の周波数を振動周波数として算出することができる。この算出された振動周波数が検出時の変速比に対応する固有共振周波数から所定周波数範囲内にあれば、動力伝達系が共振(振動)していると判定することができる。動力伝達系が共振していると判定されれば、振動判定部8cは、動力伝達系に設けられた回転軸の回転数が振動していると判定してもよい。
【0050】
走行状態判定部8dは、車両の走行状態が所定の走行状態にあるかを判定する。ここでは、車両の走行状態をあらわすパラメータとして、変速比と動力伝達系に設けられた回転軸の回転数(ここではタービンランナ24の回転数,以下、「タービン回転数」という)Nとを用いる。
【0051】
ところで、車両の動力伝達系には、変速比と一対一に対応する固有の共振周波数がある。動力伝達系が直結状態の際には、固有の共振周波数またはその周辺周波数で振動が発生するおそれがある。特に、タービン回転数Nが所定回転数範囲内にある場合に、その固有共振周波数あるいはその周辺周波数で動力伝達系に振動が発生しやすい。また、変速比が所定変速比範囲内にあるときには更に動力伝達系の振動が発生しやすい。
【0052】
このため、
図2のマップに示すように、タービン回転数Nが所定範囲内(N
1<N<N
2)であって、変速比rが所定範囲内(r
1<r<r
4)の領域B(第1の走行状態)において、動力伝達系の振動が発生しやすい。さらには、領域Bのうちで変速比範囲内(r
2<r<r
3)の領域A(第2の走行状態)において、動力伝達系の振動が更に発生しやすい。これらの領域AおよびBは、予め実験的または経験的に設定されている。
すなわち、走行状態判定部8dは、プライマリ回転数センサ84により検出されたタービン回転数Nと算出された変速比rとに基づいて、車両の走行状態が領域Aまたは領域Bに含まれるか否かを判定する。
【0053】
〈第1LUC制御の開始条件〉
まず、第1LUC制御の開始条件(以下、「第1開始条件」という)について説明する。
第1開始条件は、例えば下記(B1)および(B2)に当てはまるときに成立する。
(B1)動力伝達系の振動が判定されること。
(B2)車両の走行状態が領域Bにあること。
【0054】
上記(B1)は振動判定部8cにより判定され、上記(B2)は走行状態判定部8dにより判定される。
なお、第1開始条件の上記(B1)には、下記(B3)などが付加されていてもよい。
(B3)上記(B1)で検出された振動の周波数が、検出時の変速比に対応する固有共振周波数から所定周波数範囲内にあること。
【0055】
上記(B3)に当てはまれば、上述したように動力伝達系が共振(振動)していると判定することができる。この(B3)が上記(B1)に付加されることで、検出された振動の周波数が動力伝達系の固有共振周波数に起因するものでない(動力伝達系の共振ではない)場合に、不要なLUC制御の実施を防ぐことができ、燃費の低下を抑え、ロックアップクラッチ20のフェーシングの耐久性を確保することができる。
【0056】
〈第2LUC制御の開始条件〉
次に、第2LUC制御の開始条件(以下、「第2開始条件」という)について説明する。
第2開始条件は、少なくとも下記(C1)および(C2)に当てはまるときに成立する。
(C1)車両の走行状態が領域Aにあること。
(C2)第1開始条件が成立していないこと。
【0057】
このように、第2開始条件には動力伝達系の振動があることを要件としない。なお、上記(C1)は走行状態判定部8dにより判定される。
上記(C2)が第2開始条件に含まれることから、第1LUC制御は第2LUC制御に優先して実施される。
【0058】
〔第1LUC制御部〕
第1LUC制御部8Eは、第1LUC制御を実施する。この第1LUC制御では、制御開始時の第1開始移行制御と、ロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする第1スリップ制御と、制御終了時の第1終了移行制御と、が実施される。
【0059】
〈第1開始移行制御〉
第1開始移行制御は、第1開始条件が成立すると実施される。この第1開始移行制御では、トルク変動の急変を抑えるため、係合状態のロックアップクラッチ20をスリップ係合状態へ向けて徐々に移行させる。
【0060】
詳細に言えば、第1開始移行制御は、
図3に示すように、時点t
11において、係合圧P
LUに初期値(スムースオフ初期値)を与えてステップ状に減少させ、その後ランプ状に漸減(スムースオフ)させる。スムースオフ初期値は、係合状態のロックアップクラッチ20がスリップ係合状態に移行する直前の状態となる程度の大きさに設定される。
【0061】
時点t
11〜t
12における係合圧P
LUをランプ状に漸減させる過程(ランプ制御)では、トルクコンバータ2の差回転が目標差回転として予め設定された第1差回転αとなるように、ロックアップクラッチ20を予め設定された第1の解放度合いで徐々に第1のスリップ係合状態にさせる。
なお、第1の解放度合いは、単位時間あたりの係合圧P
LUの減少量(
図3のランプ制御中における係合圧P
LUの傾き)に対応する。
【0062】
第1のスリップ係合状態とは、トルクコンバータ2の差回転が第1差回転αの状態である。この状態の係合圧P
LUは、係合状態とスリップ係合状態との境界に対応する基準係合圧P
LUSよりも低い油圧となる。ロックアップクラッチ20が第1のスリップ係合状態になると第1開始移行制御が完了する。
【0063】
〈第1スリップ制御〉
第1スリップ制御は、第1開始移行制御の完了後に実施される。この第1スリップ制御では、第1ドライブスリップ制御と第1マイクロスリップ制御とが実施される。
【0064】
〈第1ドライブスリップ制御〉
第1ドライブスリップ制御は、第1開始移行制御が完了すると実施される。この第1ドライブスリップ制御では、
図3の時点t
12〜t
13に示すように、ロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない第2のスリップ係合状態に移行させる。
第1ドライブスリップ制御では、トルクコンバータ2の差回転が上記の第1差回転αよりも小さく予め設定された第2差回転β(<α)となるように、係合圧P
LUをフィードバック制御する。このとき、トルクコンバータ2の差回転の変化率が予め設定された差回転変化率Δβを越えないように制御される。
【0065】
第2のスリップ係合状態とは、トルクコンバータ2の差回転が予め設定された第2差回転βとなる状態である。この状態の係合圧P
LUは、基準係合圧P
LUSよりも低く、第1のスリップ係合状態の係合圧P
LUよりも高い。
第1ドライブスリップ制御は、振動判定部8cにより動力伝達系の振動が検出されない(振動していないと判定される)状態となったとき、即ち、トルクコンバータ2の差回転が安定すると完了する。具体的には、検出された回転数のバンドパス処理値が第1の所定回転数変化域よりも小さく予め設定された所定の回転数の変化域、即ち、所定の回転数帯(以下、「第2の所定回転数変化域」という)に入っているか否かを判定し、バンドパス処理値が第2の所定回転数変化域に入っていれば振動していない、つまり、振動が検出されずに第1ドライブスリップ制御が完了する。
【0066】
〈第1マイクロスリップ制御〉
第1マイクロスリップ制御は、第1ドライブスリップ制御が完了すると開始される。この第1マイクロスリップ制御では、
図3の時点t
13〜t
14に示すように、ロックアップクラッチ20を第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない第3のスリップ係合状態に移行させる。
【0067】
第1マイクロスリップ制御では、トルクコンバータ2の差回転が第2差回転βよりも小さく設定された第3差回転γとなるように、係合圧P
LUをフィードバック制御する。このとき、トルクコンバータ2の差回転の変化率が予め設定された差回転変化率Δγを越えないように制御される。
【0068】
第3のスリップ係合状態とは、トルクコンバータ2の差回転が予め設定された第3差回転γとなる状態である。この状態の係合圧P
LUは、基準係合圧P
LUSよりもやや低く、第2のスリップ係合状態の係合圧P
LUよりも高い。
第1マイクロスリップ制御は、後述する第1終了条件が成立すると終了する。仮に、第1マイクロスリップ制御の実施中に振動判定部8cにより動力伝達系の振動が検出された状態となったときは、第1マイクロスリップ制御を終了して再び第1ドライブスリップ制御が実施される。
【0069】
〈第1終了移行制御〉
第1終了移行制御は、後述する第1終了条件が成立すると実施される。この第1終了移行制御では、
図3の時点t
14〜t
15に示すように、トルク変動の急変(係合ショック)を抑えるため、スリップ係合状態のロックアップクラッチ20を係合状態へ向けて徐々に移行(スムースオン)させる。すなわち、係合圧P
LUをランプ状に漸増させ、トルクコンバータ2の差回転が無くなるまたは略無くなるロックアップクラッチ20の係合状態に移行させる。
【0070】
〔第2LUC制御部〕
第2LUC制御部8Fは、第2LUC制御を実施する。この第2LUC制御では、制御開始時の第2開始移行制御と、ロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする第2スリップ制御と、制御終了時の第2終了移行制御と、が実施される。
【0071】
〈第2開始移行制御〉
第2開始移行制御は、第2開始条件が成立すると実施される。この第2開始移行制御は、上記の第1開始移行制御に対してランプ制御における解放度合いが異なる点を除いては同様の制御内容である。
第2開始移行制御では、
図4の時点t
21〜時点t
22に示すように、ランプ制御においてロックアップクラッチ20を予め設定された第2の解放度合いで徐々にスリップ係合状態にさせる。この第2の解放度合いは、第1の解放度合いよりも小さく設定されている。すなわち、
図4のランプ制御中における単位時間あたりの係合圧P
LUの減少量(
図4のランプ制御中における係合圧P
LUの傾き)が、第1開始移行制御のランプ制御における単位時間あたりの係合圧P
LUの減少量(
図4に二点鎖線で示す)よりも小さい。
【0072】
ここでは、第2開始移行制御におけるトルクコンバータ2の目標差回転として差回転α′を用いている。この第1差回転α′は、第1開始移行制御の第1差回転αと同様とするが、これよりも大きくても小さくてもよい。
この第2開始移行制御は、第1開始移行制御と同様に、トルクコンバータ2の差回転が第1差回転α′となる第1のスリップ係合状態になると完了する。
【0073】
〈第2スリップ制御〉
第2スリップ制御は、
図4の時点t
22〜時点t
23に示すように、第2開始移行制御の完了後に実施される。この第2スリップ制御では、第2ドライブスリップ制御が実施される。なお、第2スリップ制御では、上記の第1マイクロスリップ制御に対応する制御は実施されない。
【0074】
〈第2ドライブスリップ制御〉
第2ドライブスリップ制御は、後述する第2終了条件が成立すると終了する。この第2ドライブスリップ制御は、上記の第1ドライブスリップ制御と同様の制御内容とすることができる。ただし、ここでは、第2ドライブスリップ制御において、トルクコンバータ2の目標差回転に上記の第1差回転α′よりも小さく且つ上記の第2差回転βよりも小さい第2差回転β′(<α′)を用いており、また、第2差回転β′に対応して予め設定された差回転変化率Δβ′を越えないように係合圧P
LUを減少させている。
【0075】
トルクコンバータ2の目標差回転に第2差回転βよりも小さい第2差回転β′を用いているのは、第2ドライブスリップ制御が動力伝達系の振動を要件としないことに基づいている。つまり、第2ドライブスリップ制御が実施される状況においては、動力伝達系に振動が発生していないため、目標差回転を小さくしても振動により差回転が急変動してロックアップクラッチ20が急係合してしまうなどのおそれが少ない。このため、動力伝達効率の低下を抑えるとともにロックアップクラッチ20のフェーシングの劣化を抑えることができ、さらには、動力伝達系の振動を確実に抑えることにも寄与する。
この第2ドライブスリップ制御は、第1ドライブスリップ制御と同様に、トルクコンバータ2の差回転が第2差回転β′となる第2のスリップ係合状態になると完了する。
【0076】
〈第2終了移行制御〉
第2終了移行制御は、
図4の時点t
23〜時点t
24に示すように、第2スリップ制御が終了後に実施される。この第2終了移行制御は、上記の第1終了移行制御と同様の制御内容とすることができる。ただし、第1終了移行制御とは異なる係合圧P
LUの漸増度合いを採用することも可能である。
【0077】
〔終了条件判定部〕
終了条件判定部8Gは、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの終了条件を判定する。なお、ここでいう終了条件は、CVTECU8による第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの実施を禁止する条件(禁止条件)ともいえる。
【0078】
〈第1LUC制御の終了条件〉
第1LUC制御の終了条件(以下、「第1終了条件」という)について説明する。
第1終了条件は、例えば下記(D1)〜(D3)の少なくも何れかに当てはまるときに成立する。
(D1)第1前提条件が成立しないこと。
(D2)第1開始条件が成立しないこと。
(D3)第1開始条件成立時の変速比が予め設定された所定量以上に変動したこと。
【0079】
上記の第1前提条件の何れかひとつでも成立しなくなると上記(D1)に当てはまり、同様に、上記の第1開始条件の何れかひとつでも成立しなくなると上記(D2)に当てはまる。例えば、第1開始条件の一つである上記(B2)にかかる走行状態が領域Bにあることに当てはまるか否かの判定は、ハンチング防止のためヒステリシスを持たせることが好ましい。
【0080】
上記(D3)の所定量は、変速比に一対一で対応する固有共振周波数あるいはその周辺の周波数で振動しているか否かを判定する閾値であり、上記(B3)の所定周波数範囲の量を採用することができる。例えば、縦軸に周波数を横軸に変速比を取ったマップを設定して、第1開始条件が成立した時の周波数に所定周波数範囲を設定し、その所定周波数範囲の上限および下限に対応する変速比の範囲を外れたら、変速比が所定量以上に変動したと判定することができる。
なお、第1終了条件には下記(D4)などが付加されてもよい。
(D4)第1LUC制御が開始されてから所定時間以上経過したこと。
この(D4)は、制御滞留を抑えるために有効である。
【0081】
〈第2LUC制御の終了条件〉
次に、第2LUC制御の終了条件(以下、「第2終了条件」という)について説明する。
第2終了条件は、少なくとも下記(E1)または(E2)の何れかに当てはまるときに成立する。
(E1)第2前提条件が成立しないこと。
(E2)第2開始条件が成立しないこと。
【0082】
上記の第2前提条件の何れかひとつでも成立しなくなると上記(E1)に当てはまり、同様に、上記の第2開始条件の何れかひとつでも成立しなくなると上記(E2)に当てはまる。例えば第2開始条件の一つである上記(C1)の走行状態が領域Aにあることに当てはまるか否かの判定は、ハンチング防止のためヒステリシスを持たせることが好ましい。
なお、第2終了条件には、第1終了条件の(D4)と同様に、(E3)第2LUC制御が開始されてから所定時間以上経過したことなどが加えられてもよい。
【0083】
〈終了条件成立時の制御移行〉
第1LUC制御中に、例えば上記(D3)に当てはまり第1終了条件が成立したものの、車両の走行状態が領域Aにあって第2終了条件が成立しない場合(第2開始条件が成立した場合)には、第1LUC制御から第2LUC制御に移行する。例えば、第1LUC制御の第1開始移行制御の実施中に第1終了条件が成立するものの第2終了条件が成立していなければ(第2開始条件が成立すれば)、ロックアップクラッチ20の解放度合いを第1の解放度合いからこれよりも小さい第2の解放度合いに変更して、第2開始移行制御に移行する。
【0084】
また、第2LUC制御中に、第2終了条件が成立したものの第1終了条件が成立しない場合(例えば振動判定して第1開始条件が成立した場合)には、第2LUC制御から第1LUC制御に移行する。例えば、
図5に示すように、時点t
31から第2LUC制御の第2開始移行制御が実施されている場合に、時点t
32において第2終了条件が成立するものの第1終了条件が成立しなければ、時点t
32〜t
33においてロックアップクラッチ20の解放度合いを第2の解放度合いからこれよりも大きい第1の解放度合いに変更し、第1LUC制御の第1開始移行制御に移行する。
【0085】
なお、第2スリップ制御の実施中には、ロックアップクラッチ20がスリップ係合状態であることから、動力伝達系の振動は略発生しない。このため、第2スリップ制御から第1スリップ制御へ移行しないものとしてもよい。
【0086】
〔2.フローチャート〕
次に、
図6〜
図9のフローチャートを参照して、CVTECU8により実施される制御手順について説明する。このフローチャートは、第1前提条件および第2前提条件の成立下で開始(スタート)する。このフローは、所定の制御周期で繰り返し実施される。また、フローチャート中の各ステップは、CVTECU8のハードウェアに割り当てられた各機能がソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することで実施される。
【0087】
以下に説明するフローチャート中のフラグF
1は、初期値が「0」に設定され、第1開始条件(振動判定を含む)が成立していると「1」となり、第1終了条件が成立すると「0」となるフラグである。フラグF
2は、初期値が「0」に設定され、第2開始条件が成立していると「1」となり、第2終了条件が成立すると「0」となるフラグである。
また、フラグF
11は、第1LUC制御における各制御に対応するフラグである。このフラグF
11は、初期値が「1」に設定され、第1開始移行制御が実施されていると「1」が維持され、第1スリップ制御が実施されていると「2」が維持され、第1終了移行制御が実施されていると「3」が維持されるフラグである。同様に、フラグF
21は、第2LUC制御における各制御に対応するフラグである。初期値が「1」に設定され、第2開始移行制御が実施されていると「1」が維持され、第2スリップ制御が実施されていると「2」が維持され、第2終了移行制御が実施されていると「3」が維持されるフラグである。
なお、フラグFに付記された「(n)」は制御周期を意味する。例えば、「(n−1)」は前回の制御周期を意味し、「(n)」は今回の制御周期を意味し、「(n+1)」は次回の制御周期を意味する。
【0088】
図6に示すように、ステップS1〜S7で開始条件および終了条件をそれぞれ判定してフラグF
1,F
2を設定する。
ステップS1では、第1開始条件が成立したか否かを判定する。第1開始条件が成立すればステップS2へ移行し、第1開始条件が成立していなければステップS4へ移行する。なお、上記(D2)に示すように、第1開始条件が成立しなければ第1終了条件は成立する。
ステップS2では、今回の制御周期のフラグF
1を「1」に設定する。そして、ステップS3へ移行する。
【0089】
ステップS3では、第1終了条件が成立したか否かを判定する。このステップS3には、第1開始条件が成立したと判定されてから移行するが、上記(D3)に示すように第1開始条件成立時の変速比が予め設定された所定量以上に変動すれば、第1開始条件の成立に優先して第1終了条件が成立する。第1終了条件が成立すればステップS4へ移行し、第1終了条件が成立していなければステップS7へ移行する。
ステップS4では、今回の制御周期のフラグF
1を「0」に設定する。そして、ステップS5へ移行する。
【0090】
ステップS5では、第2開始条件が成立したか否かを判定する。第2開始条件が成立すればステップS6へ移行し、第2開始条件が成立していなければステップS7へ移行する。なお、上記(E2)に示すように、第2開始条件が成立しなければ第2終了条件は成立する。
ステップS6では、今回の制御周期のフラグF
2を「1」に設定する。そして、ステップS10へ移行する。
ステップS7では、今回の制御周期のフラグF
2を「0」に設定する。そして、ステップS10へ移行する。このステップS7には、例えば第1開始条件が成立するとともに第1終了条件が成立していない場合に第2開始条件や第2終了条件が判定されることなく移行する。これは、上記(C2)および(E2)に示すように、第1開始条件の成立時には、第2開始条件は成立しないと同時に第2終了条件は成立するためである。
【0091】
次に、ステップS10〜S20で各フラグFを参照する。
ステップS10では、前回の制御周期におけるフラグF
1が「1」か否かを判定する。このフラグF
1が「1」であればステップS11へ移行し、そうでなければ(フラグF
1が「0」であれば)ステップS16へ移行する。
ステップS11では、今回の制御周期におけるフラグF
1が「1」か否かを判定する。このフラグF
1が「1」であればステップS12へ移行し、そうでなければ(フラグF
1が「0」であれば)ステップS14へ移行する。
【0092】
ステップS12では、今回の制御周期におけるフラグF
11が「1」か否かを判定する。このフラグF
11が「1」であればステップS30へ移行し、そうでなければステップS13へ移行する。
ステップS30では、
図7に示す第1開始移行制御のサブルーチンが実行される。
【0093】
図7のステップS32では、係合圧P
LUをステップ状に減少させる。そして、ステップS34へ移行する。
ステップS34では、係合圧P
LUを第1の解放度合いで序々に減少させる。そして、本制御に戻って(リターンして)
図6のステップS36へ移行する。
【0094】
ステップS36では、トルクコンバータ2の差回転が第1差回転α以上か否かを判定する。この差回転が、第1差回転α以上であればステップS38へ移行し、第1差回転α未満であれば本制御周期を終了(エンド)する。
ステップS38では、次回の制御周期で用いるフラグF
11およびフラグF
21を何れも「2」に設定する。そして本制御周期を終了(エンド)する。
【0095】
また、ステップS13では、今回の制御周期におけるフラグF
11が「2」か否かを判定する。このフラグF
11が「2」であればステップS40へ移行し、そうでなければステップS50へ移行する。
ステップS40では、
図8に示す第1スリップ制御のサブルーチンが実行される。
【0096】
図8のステップS42では、動力伝達系が振動しているか否かを判定する。このステップS42では、第1ドライブスリップ制御が完了したかを判定しており、動力伝達系の振動が第2所定回転数変化域に入っているか否かを判定する。第2の所定回転数変化域は、ステップS1で判定される第1開始条件にかかる第1の所定回転数変化域よりも小さく設定されているため、ステップS42で肯定判定がなされたからといって第1開始条件が成立しなくなる(第1終了条件が成立する)とは限らない。
【0097】
ステップS44では、トルクコンバータ2の差回転が第2差回転β(以下)になるように係合圧P
LUを例えば増加させてフィードバック制御する。このステップS44は、第1ドライブスリップ制御に対応する。そして、本制御に戻って本制御周期を終了する。
ステップS46では、トルクコンバータ2の差回転が第3差回転γ(以下)になるように係合圧P
LUを例えば増加させてフィードバック制御する。このステップS46は、第1マイクロスリップ制御に対応する。そして、本制御に戻って本制御周期を終了する。
【0098】
また、ステップS14では、今回の制御周期におけるフラグF
2が「1」か否かを判定する。このフラグF
2が「1」であればステップS15へ移行し、そうでなければ(フラグF
2が「0」であれば)ステップS18へ移行する。
ステップS15では、次回の制御周期で用いるフラグF
11およびフラグF
21を何れも「3」に設定する。そして、ステップS50へ移行する。
ステップS50では、終了移行制御(第1終了移行制御,第2終了移行制御)のサブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、係合圧P
LUをランプ状に漸増させてロックアップクラッチ20を係合状態に移行させる。そして、ステップS52へ移行する。
【0099】
ステップS52では、トルクコンバータ2の差回転が無いまたは略無い(≒0)か否かを判定する。この差回転が、無いまたは略無ければステップS54へ移行し、そうでなければ(差回転が有れば)本制御周期を終了する。
ステップS54では、次回の制御周期で用いるフラグF
11およびフラグF
21を何れも「1」に設定する。そして本制御周期を終了する。
【0100】
また、ステップS16では、前回の制御周期におけるフラグF
2が「1」か否かを判定する。このフラグF
2が「1」であればステップS17へ移行し、そうでなければ(フラグF
2が「0」であれば)本制御周期を終了する。
ステップS17では、ステップS14と同様に、今回の制御周期におけるフラグF
2が「1」か否かを判定する。このフラグF
2が「1」であればステップS18へ移行し、そうでなければ(フラグF
2が「0」であれば)ステップS20へ移行する。
【0101】
ステップS18では、今回の制御周期におけるフラグF
21が「1」か否かを判定する。このフラグF
21が「1」であればステップS60へ移行し、そうでなければステップS19へ移行する。
ステップS60では、
図9に示す第2開始移行制御のサブルーチンが実行される。
【0102】
図9のステップS62では、係合圧P
LUをステップ状に減少させる。そして、ステップS64へ移行する。
ステップS64では、係合圧P
LUを第2の解放度合いで序々に減少させる。そして、本制御に戻って(リターンして)
図6のステップS66へ移行する。
【0103】
ステップS66では、トルクコンバータ2の差回転が第1差回転α′以上か否かを判定する。この差回転が、第1差回転α′以上であればステップS68へ移行し、第1差回転α′未満であれば本制御周期を終了(エンド)する。
ステップS68では、次回の制御周期で用いるフラグF
11およびフラグF
21を何れも「2」に設定する。そして本制御周期を終了(エンド)する。
【0104】
また、ステップS19では、今回の制御周期におけるフラグF
21が「2」か否かを判定する。このフラグF
21が「2」であればステップS70へ移行し、そうでなければステップS50へ移行する。
ステップS70では、トルクコンバータ2の差回転が第2差回転β′になるように係合圧P
LUを例えば増加させてフィードバック制御する。そして、本制御周期を終了する。
【0105】
また、ステップS20では、ステップS11と同様に、今回の制御周期におけるフラグF
1が「1」か否かを判定する。このフラグF
1が「1」であればステップS12へ移行し、そうでなければ(フラグF
1が「0」であれば)ステップS50へ移行する。
【0106】
例えば、第2開始移行制御中に、第2終了条件が成立するとともに第1終了条件が成立しなくなった場合(例えば振動判定して第1開始条件が成立した場合)には、ステップS66で否定判定されて制御周期を終了し、次の制御周期において、ステップS1で肯定判定されてステップS2で今回の制御周期のフラグF
1が「1」に設定され、ステップS3で否定判定されてステップS7でフラグF
2が「0」に設定される。そして、ステップS10で否定判定され、ステップS16で肯定判定され、ステップS17で否定判定され、ステップS20で肯定判定され、ステップS12で肯定判定されてステップS30の第1開始移行制御に移行する。この際の第1開始移行制御では、その前に実施されていた第2開始移行制御において係合圧P
LUがステップ状に減少されているため、ステップS32を省略してステップS34へ移行する。このようにして、第2の解放度合いでロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態に移行させる最中に、振動判定手段8cにより動力伝達系の振動が判定されると、第2の解放度合いを第1の解放度合いに変更して徐々にロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態に移行させる。
【0107】
逆に、第1開始移行制御の実施中に、第1終了条件が成立したものの第2終了条件が成立しなくなった場合(第2開始条件が成立した場合)には、ステップS36で否定判定されて制御周期を終了し、次の制御周期において、ステップS1で否定判定されてステップS4で今回の制御周期のフラグF
1が「0」に設定され、ステップS5で肯定判定されてステップS6で今回の制御周期のフラグF
2が「1」に設定される。そして、ステップS10で肯定判定され、ステップS11で否定判定され、ステップS14で肯定判定され、ステップS18で肯定判定されてステップS60の第2開始移行制御に移行する。この際の第2開始移行制御も、その前に実施されていた第1開始移行制御において係合圧P
LUがステップ状に減少されているため、ステップS62を省略してステップS64へ移行する。このようにして、第1の解放度合いを第2の解放度合いに変更して徐々にロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態に移行させる。
【0108】
また、第1スリップ制御の実施中に、第1終了条件が成立するとともに第2開始条件が成立した場合には、ステップS1で否定判定されてステップS4で今回の制御周期のフラグF
1が「0」に設定され、ステップS5で肯定判定されてステップS6で今回の制御周期のフラグF
2が「1」に設定される。そして、ステップS10で肯定判定され、ステップS11で否定判定され、ステップS14で肯定判定され、ステップS18で否定判定され、ステップS19で肯定判定されてステップS70の第2スリップ制御に移行する。この際、ランプ制御で係合圧P
LUの急変を抑えつつ、第2スリップ制御へ移行することが好ましい。
なお、第2スリップ制御は、振動が発生していないときに振動を予防する制御といえ、制御実施中に振動が発生することは想定し得ない。よって、第2スリップ制御の実施中に第2終了条件が成立するとともに第2開始条件が成立することも想定し得ない。
【0109】
〔3.作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
CVTECU8は、振動判定部8cにより動力伝達系の振動があると判定されると、ロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態に移行させる第1開始移行制御を実施するため、動力伝達系の振動をダンパーとして機能するロックアップクラッチ20において確実に吸収することができる。これにより、速やかに動力伝達系の振動を抑えることができる。
【0110】
第1開始移行制御の後、CVTECU8は、第1のスリップ係合状態のロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない第2のスリップ係合状態に移行させる第1ドライブスリップ制御を実施するため、動力伝達効率の低下を抑えながら動力伝達系の振動を吸収することができる。
そして、CVTECU8は、振動判定部8cにより動力伝達系の振動が判定されない、即ち、トルクコンバータ2の差回転が安定したと判定されると、第2のスリップ係合状態のロックアップクラッチ20を第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない第3のスリップ係合状態に移行させる第1マイクロスリップ制御を実施するため、動力伝達効率の低下を抑えるとともにロックアップクラッチ20のフェーシングの劣化を抑えることができ、さらには、動力伝達系の振動を確実に抑えることにも寄与する。
【0111】
このように、CVTECU8は、第1,第2,第3のスリップ係合状態の順にロックアップクラッチ20のスリップ量を徐々に低減させる第1LUC制御を実施するため、ロックアップクラッチ20の急係合やダイレクト感の低下などによるドライバビリティの低下を抑えることができ、動力伝達系の振動を確実に吸収することができる。
【0112】
ロックアップクラッチ20を第1〜第3のスリップ係合状態に移行させる第1LUC制御による動力伝達系の振動吸収は、ロックアップクラッチ20が係合状態の場合に、上記(B2)に示すように動力伝達系の振動が発生しうる状態として予め設定され領域Bに車両の走行状態があることを第1LUC制御の開始条件に実施され、適切に動力伝達系の振動を抑えることができる。
【0113】
第1終了条件には、上記(B2)および(D2)に示すように、領域Bに車両の走行状態でないことが含まれるため、動力伝達系の振動が発生しにくい領域に車両の走行状態がある場合には、第1LUC制御および第2LUC制御が実施されず、不要な動力伝達効率の低下や、ロックアップクラッチ20のフェーシングの磨耗等による耐久性の低下を防ぐことができる。
【0114】
例えば領域Bが車両の採りうる走行状態の大部分をカバーしていれば、車両の走行状態が領域Bから外れることによっては第1終了条件が成立しにくいが、上記(D3)のように変速比の変動量の要件が加えられることで、第1LUC制御の頻発を抑え、ロックアップクラッチ20の耐久性の低下や動力伝達効率の低下を抑えることができる。よって、動力伝達系の振動を適切に抑えることができる。
【0115】
第2LUC制御の第2開始条件は、上記(B1),(C1)および(C2)に示すように、車両の走行状態が領域Aであることが含むが、動力伝達系の振動があることを要件としていない。このため、動力伝達系の振動が発生していないとしても、領域Bよりも動力伝達系の振動が発生しやすい領域Aにおいて、ロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする第2LUC制御により、動力伝達系の振動を未然に防ぐことができる。
【0116】
第1LUC制御の第1開始移行制御では、ロックアップクラッチ20を第1の解放度合いで徐々に第1のスリップ係合状態にさせるため、ロックアップクラッチ20を円滑にスリップ係合状態に移行させることができ、ロックアップクラッチ20の耐久性やドライバビリティの確保に寄与する。
【0117】
この第1の解放度合いは、第2LUC制御の第2開始移行制御における第2の解放度合いよりも大きいため、動力伝達系の振動を速やかに抑えることができる。
一方、第2LUC制御の第2開始移行制御では、ロックアップクラッチ20を第1の解放度合いよりも小さい第2の解放度合いで徐々に第1のスリップ係合状態にさせる。この際、動力伝達系の振動があると判定されていないため、ロックアップクラッチ20のスリップ係合状態への円滑な移行を優先させ、ドライバビリティの低下を更に抑えることができる。
【0118】
CVTECU8は、第2LUC制御の第2開始移行制御が実施されている場合に、第2終了条件が成立するものの第1終了条件が成立しなければ、ロックアップクラッチ20の解放度合いを第2の解放度合いからこれよりも大きい第1の解放度合いに変更し、第1LUC制御の第1開始移行制御に移行させるため、動力伝達系の振動を要件としない第1LUC制御の実施中に動力伝達系の振動が発生したとしても、その振動を速やかに抑えることができる。
【0119】
第1前提条件に上記(A5)のアクセル開度が所定開度以上であることが付加されれば、燃費の低下を抑え、ロックアップクラッチ20のフェーシングの耐久性を確保することができる。
また、第1前提条件に上記(A6)の副変速機構の入力側の回転と出力側の回転との差回転が所定回転数よりも小さいことや副変速機構が変速中(架け替え中)でないことなどが付加されれば、変速比の変更中、即ち固有共振周波数が変化している際の第1LUC制御を禁止することができ、不要な第1LUC制御の実施を回避することができる。
【0120】
第1開始条件に上記(B3)の検出振動周波数がその検出時の変速比に対応する固有共振周波数から所定周波数範囲内にあることが付加されれば、動力伝達系の固有共振周波数に起因して動力伝達系の振動していない場合に、不要な第1LUC制御の実施を防ぐことができる。
このように、不要な第1LUC制御の実施を抑えることで、燃費を向上させることができ、ロックアップクラッチ20の耐久性を確保することができる。
【0121】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述の一実施形態では、領域Bのうちで所定の変速比範囲内の領域を領域Aとしたが、このうえ更に振動の発生しやすい所定タービン回転数範囲内にある領域を領域Aとしてもよい。
また、第2LCU制御の第2ドライブスリップ制御では、第1マイクロスリップ制御に対応する制御は実施されないものを説明したが、第2LUC制御において第2ドライブスリップ制御の後に第1マイクロスリップ制御と同様の第2マイクロスリップ制御が実施されてもよい。このように、第2LCU制御を第1LCU制御と同様の制御としてもよい。
【0122】
また、第1LCU制御が第2LCU制御に優先して実施されるものを説明したが、逆に、第2LCU制御が第1LCU制御に優先して実施されてもよい。例えば、車両の走行状態が領域Aにあれば、第2LCU制御を実施し、動力伝達系の振動が検出されていたとしても第1LCU制御を実施しない構成としてもよい。また、車両の走行状態が領域Aにないものの領域Bにあるときにはじめて動力伝達系の振動が判定され、この領域Bに車両の走行状態があるとともに振動判定がなされたときに第1LCU制御を実施する構成としてもよい。
また、第1LUC制御または第2LUC制御の途中で第2LUC制御または第1LUC制御に移行するものを説明したが、第1終了条件および第2終了条件が成立してから何れか一方が成立した際に、第1LUC制御または第2LUC制御の全制御(開始移行制御、スリップ制御,終了移行制御)を実施したのち第2LUC制御または第1LUC制御に移行してもよい。この場合、動力伝達系の振動吸収が速やかになされないおそれがあるものの、制御アルゴリズムを簡素化することができる。
【0123】
また、第1開始移行制御の第1の解放度合いは、第2開始移行制御の第2の解放度合いよりも大きいものを説明したが、第2解放度合いよりも小さく設定されてもよいし等しく設定されてもよい。この場合、第1開始移行制御における係合圧P
LUがより円滑に変動することから、ドライバビリティを向上させることができる。
【0124】
また、第1LUC制御または第2LUC制御において、第1開始移行制御,第2開始移行制御,第1終了移行制御,第2終了移行制御の何れかまたは全てを省略してもよい。この場合、ドライバビリティの低下を招くものの、制御アルゴリズムを簡素化することができる。
また、少なくとも第1LUC制御が実施されればよい。すなわち、第2LUC制御は省略してもよい。この場合、動力伝達系の振動を未然に防ぐことはできないものの制御アルゴリズムを簡素化することができる。
【0125】
さらに、第1開始条件に上記(B2)を要件としなくてもよい。上記(B1)に示すように、動力伝達系の振動が判定されていれば、車両の走行状態にかかわらず、第1LUC制御が実施される。この場合、第1LUC制御が頻繁に実施されるおそれがあるものの、動力伝達系の振動を確実に抑えることができる。
また、車両の動力伝達系に、上述したように副変速機構が設けられてもよいし、この副変速機構の配設箇所は、変速機の動力伝達方向上流側に限られず、変速機の動力伝達方向下流側であってもよい。