特許第6190789号(P6190789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190789湿り顔料、これを用いたカラーマスターバッチ、湿り顔料の製造方法及びマスターバッチの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190789
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】湿り顔料、これを用いたカラーマスターバッチ、湿り顔料の製造方法及びマスターバッチの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/88 20060101AFI20170821BHJP
   C09B 67/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B29B7/88
   C09B67/02 B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-209294(P2014-209294)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-78257(P2016-78257A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 信夫
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−172136(JP,A)
【文献】 特開平07−233275(JP,A)
【文献】 特開2014−185273(JP,A)
【文献】 特開昭54−065731(JP,A)
【文献】 特開2010−138381(JP,A)
【文献】 特開2010−090375(JP,A)
【文献】 特開2006−022143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/88
C09B 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の直径が1000nm未満であるカラーの有機顔料を含む複数の顔料が均一に混合されており、且つ、その混合顔料が、質量基準で、乾燥状態の前記複数の顔料100部に対し、0.5部以上4部未満の量のミスト状態の水で湿り気を帯びた状態にされていることを特徴とする湿り顔料。
【請求項2】
前記水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されている請求項1に記載の湿り顔料。
【請求項3】
前記複数の顔料が、白色顔料を含む請求項1又は2に記載の湿り顔料。
【請求項4】
前記複数の顔料が、前記カラーの有機顔料を複数種含む請求項1又は2に記載の湿り顔料。
【請求項5】
可塑性樹脂中に、有機顔料を含む顔料が均一に分散されてなるマスターバッチを製造する際の着色剤に用いるためのものである請求項1〜のいずれか1項に記載の湿り顔料。
【請求項6】
分散剤及びワックス類を含有せず、熱可塑性の結着樹脂及び請求項1〜5のいずれか1項に記載の湿り顔料を含有し、前記熱可塑性の結着樹脂中にカラーの有機顔料が均一に分散されてなることを特徴とするカラーマスターバッチ。
【請求項7】
予め顔料を分散剤或いはワックス類による分散処理することなく、一次粒子の直径が1000nm未満である、カラーの有機顔料を含む、複数の乾燥顔料を混合機内で高速で混合し、さらに、高速で混合している混合状態の顔料にミスト状態の水を吹き付けて、質量基準で、乾燥した混合顔料100部に0.5部以上4部未満の量の水で乾燥顔料に湿り気を与え、均一に混合されたまとまりのある湿り顔料を得る工程を有することを特徴とする湿り顔料の製造方法。
【請求項8】
前記ミスト状態の水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されている請求項に記載の湿り顔料の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥顔料が、白色顔料を含む請求項又はに記載の湿り顔料の製造方法。
【請求項10】
更に、前記ミスト状態の水を吹き付ける際の前記混合機内の温度が50〜70℃である請求項のいずれか1項に記載の湿り顔料の製造方法。
【請求項11】
前記混合機が、ヘンシェルミキサーである請求項10のいずれか1項に記載の湿り顔料の製造方法。
【請求項12】
熱可塑性の結着樹脂を溶融してカラーの有機顔料を分散させたカラーマスターバッチの製造方法であって、分散剤及びワックス類を使用することなく、熱可塑性の結着樹脂からなる粉体樹脂又はペレット樹脂と、請求項1〜のいずれか1項に記載の湿り顔料とを二軸押出混練機で混練する工程を有することを特徴とするカラーマスターバッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿り顔料、これを用いたカラーマスターバッチ、乾燥顔料の混合方法及びカラーマスターバッチの製造方法に関する。本発明は、特に、分散性に劣るカラーの有機顔料を、分散剤やワックス類を使用することなく、高濃度で、しかも溶融した結着樹脂中に凝集することなく均一に分散した状態のカラーマスターバッチを簡便に製造することを可能にできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂に対し、染・顔料等の着色剤を用いて着色をする目的で、溶融した熱可塑性の結着樹脂中に、最終製品中の着色剤濃度よりも高濃度の染・顔料が分散させてなる着色用の樹脂組成物(マスターバッチ)を使用することが広く行われている。このため、これまでにもマスターバッチの製造方法については様々の検討がなされているが、染・顔料の分散加工に使用されるミキサーや押出し機の進化と共に、その技術が変遷してきている経過がある。例えば、白色や黒色の単色を除く、所謂カラーマスターバッチ加工の草創期においては、顔料分散の担い手は低融点微粉末の分散剤であり、この場合には、顔料100部に対して分散剤を70〜80部程度と大量に配合することが一般的であるため、カラーマスターバッチ中の顔料の濃度を高めることができないという問題があった。これに対し、近年では、少しずつ押出し機の分散能力が向上してきていることもあり、その過程で、使用する分散剤に最適な分散処理する顔料のタイプの絞り込みや、カラーマスターバッチ中における分散剤の配合量の低減が行われてきている。
【0003】
しかしながら、顔料混合の段階で、比較的粒子径が小さくて帯電による偏りの生じやすいカラーの有機顔料を用いた場合、分散剤による分散処理によって製造されたカラーマスターバッチは、高い分散性が得られないため下記のような用途制限が生じていた。具体的には、射出成形品等の、厚みを持った樹脂成形品においては問題がなく使用できるものの、フィルムやブローボトルのような、樹脂を薄く成形して高い意匠性を実現し、しかも中身の保護を行うような用途の場合は、表面及び透過色の色調の変化や、発色の不安定性が生じてしまい、更には、マスターバッチ中のカラーの有機顔料の添加量を上げても、透過色濃度に反映しにくい等の不具合がみられるため、薄物成形品には使用できなかった。このため、薄物成形品の用途に用いるカラーマスターバッチの製造には、概して、分散剤の代わりにポリエチレンワックスのようなポリオレフィンワックス等のワックス類と混合・分散処理を施した有機顔料半製品を使わなければならないことが多かった。この場合にも顔料と同量程度のワックスが用いられており、顔料濃度を高くできないという点については、分散剤を使用する場合と同様の課題がある。
【0004】
そして、上記の場合、ポリエチレンワックス等のワックス類と有機顔料とを混合・分散処理して有機顔料半製品とする工程では、3本ロールやボールミル等の、重装備で且つ生産性の低い工程でその目的とする顔料分散レベルを達成させるしかなく(例えば、特許文献1参照)、関連してスチーム等のインフラも必要とすることが殆どであり、製造コストがかかるという問題があった。この問題は、有機顔料半製品の製造にかかるコストが製品コストに跳ね返って製品のコスト高を招き、競争力のない商品づくりになるばかりでなく、この技術を利用した新規なカラーマスターバッチ生産が開発されたとしても、できるだけ設備投資を抑えた生産方法が要望されている状況の中では採用しにくく、工業的な利用が図れないといった大きな課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−21201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した課題に対し、本発明者らは、より簡便にカラーマスターバッチを製造するためには、分散剤やワックス類を使用することなく、比較的粒子径が小さくて帯電による偏りの生じやすいカラーの有機顔料を、より高い顔料濃度で含有した新規なカラーマスターバッチを生産できる技術を開発できれば、工業上、極めて有効であるとの認識を持つに至った。より具体的には、まず、従来技術では、通常、顔料に対して大量の分散剤やワックス類を使用して処理顔料とし、これをマスターバッチの製造に用いているため、マスターバッチ中の顔料濃度を高くできず、分散剤やワックス類を使用することなく顔料の分散性を向上させることができれば、より高い顔料濃度の着色力に優れるものにでき、さらに、分散剤やワックス類を使用したことによって生じるおそれのあるマスターバッチの品質に影響をおよぼすという問題を解消でき、その実用価値は高い。また、カラーマスターバッチに使用されているカラーの有機顔料は、顔料粒径が1000nm未満の超微粉末顔料であるため、マスターバッチを製造の問題とは別に、混練時における周囲への飛散の問題や、帯電による貼り付き(片寄り)等の問題があり、その取り扱い性に劣り、この点を改善できれば、作業環境の改善を含めて、実用上、極めて有用であるとの認識を持つに至った。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記したカラーの有機顔料に特有の問題を解決して、取扱い性に優れた状態のものにするとともに、さらに、分散剤やワックス類を用いることなく簡便な方法でカラーの有機顔料を高濃度で良好な状態に分散したカラーマスターバッチの製造を実現できる技術を提供することにある。本発明の別の目的は、特に、特殊な装置の使用や、スチーム等の特殊な関連設備を要さず、汎用の二軸押出混練機を用い、溶融した熱可塑性樹脂に、従来、取り扱い性に問題のあったカラーの有機顔料を含む着色剤を混練させてマスターバッチとすることで、従来のマスターバッチに比べて含有されている顔料の濃度を高くでき、しかも、着色剤が、凝集することなく、均一に分散された良好な状態のマスターバッチにできる、工業性に有用な簡便なカラーマスターバッチの製造技術を提供することにある。このようにできれば、カラーマスターバッチの性能がより高まり、前記したような用途制限を生じることなく、各種の熱可塑性樹脂製の製品の着色剤組成物として多様な使用ができるようになるので、その工業的な価値は極めて高い。より具体的には、本発明の目的は、カラーマスターバッチの簡易な製造技術を新たに開発することで、薄物成形品についても、安価で優れた品質の製品の提供を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、一次粒子の直径が1000nm未満である、カラーの有機顔料を含む複数の乾燥顔料が均一に混合されており、且つ、質量基準で、乾燥した混合顔料100部が、0.5部以上4部未満の量の水で湿り気を帯びた状態にされていることを特徴とする湿り顔料を提供する。
【0009】
本発明の好ましい形態の湿り顔料としては、下記のものが挙げられる。前記水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されている前記湿り顔料;前記乾燥顔料が、白色顔料を含む前記湿り顔料;有機顔料を含む顔料が、熱可塑性樹脂中に均一に分散されてなるマスターバッチを製造する際の着色剤に用いるためのものである前記湿り顔料;が挙げられる。
【0010】
また、本発明は、別の実施形態として、分散剤及びワックス類を含有せず、熱可塑性の結着樹脂中にカラーの有機顔料が均一に分散されてなるカラーマスターバッチであって、前記着色剤が、前記湿り顔料であることを特徴とするカラーマスターバッチを提供する。
【0011】
また、本発明は、別の実施形態として、予め顔料を分散剤或いはワックス類による分散処理することなく、一次粒子の直径が1000nm未満である、カラーの有機顔料を含む、複数の乾燥顔料を混合機内で高速で混合し、さらに、高速で混合している混合状態の顔料にミスト状態の水を吹き付けて、質量基準で、乾燥した混合顔料100部に0.5部以上4部未満の量の水で乾燥顔料に湿り気を与え、均一に混合されたまとまりのある湿り顔料を得る工程を有することを特徴とする乾燥顔料の混合方法を提供する。
【0012】
本発明の好ましい形態の乾燥顔料の混合方法としては、下記のものが挙げられる。前記水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されている前記乾燥顔料の混合方法;前記乾燥顔料が、白色顔料を含む前記乾燥顔料の混合方法;更に、前記ミスト状態の水を吹き付ける際の混合機内の温度が50〜70℃である前記乾燥顔料の混合方法;前記混合機が、ヘンシェルミキサーである前記乾燥顔料の混合方法;が挙げられる。
【0013】
また、本発明は、別の実施形態のとして、熱可塑性の結着樹脂を溶融してカラーの有機顔料を分散させたカラーマスターバッチの製造方法であって、分散剤及びワックス類を使用することなく、熱可塑性の結着樹脂からなる粉体樹脂又はペレット樹脂と、上記いずれかの湿り顔料とを二軸押出混練機で混練する工程を有することを特徴とするマスターバッチの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分散剤及びワックス類を用いることなく、簡便な方法で、カラーマスターバッチの製造に使用するカラーの有機顔料を含む混合顔料の状態を分散性に優れたものにでき、この顔料を用いることで、熱可塑性樹脂用の着色剤組成物であるカラーマスターバッチを、より簡便に製造することができるようになる。また、本発明によれば、性能に優れる熱可塑性樹脂用のカラーマスターバッチを、特殊な装置の使用や、スチーム等のインフラを要さず、汎用の二軸押出混練機を利用するだけで、より簡便に製造することが可能になるので、その経済的な効果は大きく、従来にない、工業上、極めて有用な技術の提供が可能になる。より具体的には、本発明によれば、分散剤及びワックス類を用いることなく、簡便な方法で、熱可塑性の結着樹脂中にカラーの有機顔料が均一に分散したカラーマスターバッチが得られるので、下記に挙げる優れた効果が得られる。
【0015】
(1)従来、カラーの有機顔料を溶融した熱可塑性の結着樹脂中に分散させるためには、大量の分散剤やワックス類を使用して分散性を向上させる必要があったのに対し、本発明では、これらの分散剤やワックス類を用いることなく、熱可塑性の結着樹脂中における良好な顔料の分散性を達成できるため、マスターバッチ中の顔料濃度を上げることができ、着色力の高いカラーマスターバッチの提供が実現される。
(2)カラーマスターバッチの製造には、1次粒径が1000nm未満である超微粉末顔料のカラーの有機顔料が用いられているが、本発明によれば、超微粉末顔料の取り扱い性が向上し、製造時等に生じていた超微粉末顔料の周囲への飛散や、帯電による張り付き(片寄り)等の問題を低減した湿った状態の湿り顔料が提供され、さらに、この湿り顔料を用いることで、超微粉末顔料を結着樹脂中に均一な状態に分散させることが可能になる。
(3)従来のカラーマスターバッチには、顔料の分散に使用した分散剤やワックス類が混入しているのに対し、本発明ではこれらを使用しないので、これらの成分の混入による製品への影響をなくすことができる。具体的には、本発明によって提供されるカラーマスターバッチは、これらの成分に起因する、内部滑性・外部滑性の影響や、ブルーミング(分散剤の表面浮き出し)や、例えば、使用する樹脂がポリエステル樹脂等である場合に生じることがあった加水分解等の樹脂の劣化の問題を生じることがない。
(4)分散剤やワックス類にかかっていた原料コストを抑えることができる。
(5)本発明では、水のミストのみで顔料の表面状態を、マスターバッチを構成する樹脂中において高度な分散性を示すものにできるので、得られたマスターバッチを用いて展開される樹脂成形品は、従来の製品と比べて、成形外観上の不具合や、衝撃強度、引張・曲げモジュラス等の強度の指標での劣化が少ない良好なものになる。
(6)また、乾燥した超微粉末顔料を水で湿らせた状態としたことで、超微粉末であるカラーの有機顔料の取扱い性を向上させると共に、超微粉末顔料を溶融した結着樹脂中へ均一に分散させることを可能にした本発明の技術は、熱可塑性のあらゆる樹脂からなるマスターバッチに応用が可能であり、高い凡用性を有する実用性に優れた技術である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の湿り顔料を得る際に使用する装置の概略図である。
図2】本発明のマスターバッチの製造方法を実施する場合の装置の概略図である。
図3】マスターバッチの顔料の分散性を評価する際に用いたスコアのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明を特徴づける湿り顔料は、一次粒子の直径が1000nm未満である、カラーの有機顔料を含む複数の乾燥顔料が均一に混合されており、且つ、質量基準で、混合顔料100部が、0.5部以上4部未満の量の水で湿り気を帯びた状態にされていることを特徴とする。より好ましい形態は、水に、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤が含有されていることが挙げられる。
【0018】
先に述べたように、カラーの有機顔料は、一次粒径が1000nm未満の超微粉末顔料であるため取扱い性に劣り、例えば、ポリエチレンワックス等のワックス類と顔料とを1:1で混ぜて有機顔料半製品を使わなければならないといった問題があった。さらに、有機顔料半製品の調製の際には、3本ロールやボールミル等の、重装備で且つ生産性の低い工程を必要とし、経済性に劣るという問題があった。これに対し、本発明者らは、例えば、いずれも乾燥顔料の状態である、カラーの有機顔料と酸化チタン等の無機顔料とを、或いは、複数種のカラーの有機顔料を、予め混合して調色して混合顔料とする場合に、従来の技術常識では混合する際に水を含有させることは分散性を悪くする原因となるとされていた技術常識に反して、ワックス類等で処理することなく、水を含有させて混合した場合における混合顔料についての詳細な検討を行った。その結果、水をミスト状にして顔料に湿り気を与え、しかも、本発明で規定する特定の少ない量で使用して混合させると、乾燥した混合顔料が、湿った状態の取扱い易いものになると同時に、驚くべきことに、得られた湿り顔料を用いることで、超微粉末顔料に混入させた水分が分散効果を果たし、顔料を分散剤やワックス類による処理をすることなく、良好な状態で均一に混合され、これを用いることで簡便に、マスターバッチ用樹脂中に均一に良好な状態に分散できることを見出して本発明を達成した。
【0019】
具体的には、乾燥状態の混合顔料を混合機で混合させる際に、混合顔料に含有させる水の量を、質量基準で、混合顔料100部に対して、4部さらに10部と多くすると、従来の技術常識の通り、分散性が明らかに劣り、例えば、酸化チタンからなる白色顔料にカラーの有機顔料を混合させた場合、カラーの顔料が凝集した状態となって、白色の中に濃い色の粒々が散見された状態になったのに対し、乾燥した混合顔料100部に対して添加する水を4部未満と僅かな量にして混合機で混合させると、粒のない全体に色調が均一な、光沢をもった状態の混合顔料になり、マスターバッチの製造に用いた場合に良好な分散性が達成できるという新たな知見を得た。さらに、この水の添加は、後述するように、混合機で混合させている状態の顔料にミスト状の水にして添加することが好ましいこともわかった。また、混合機内の温度を50〜70℃に加温してミスト状の水にして添加するとより効果的に分散混合できることもわかった。本発明者らは、微量な水を混合顔料に添加することで本発明の顕著な効果が得られ、ミスト状にして添加したとしても4部以上(4%以上)含有させると、均一な混合状態とならなかった理由について、以下のように考えている。水が多過ぎると、混合機を稼働して混合機内が昇温状態になると、混合顔料中に含有させた水がガス化し、その結果、混合機によるせん断力が顔料粉末に十分にかからない状態になってしまい均一な分散混合ができなかったのに対し、少量の水を含有させた場合は、ガス化した水によって顔料微粉同士の距離を適度な位置に保つことができ、その結果、良好な分散混合が達成できたものと考えている。本発明で、乾燥した混合顔料100部に対して4部未満の量で含有させた水は、混合機で顔料を混合させる工程中に一部揮散し、得られる混合顔料中には、水が混合顔料100部に対して3部(3%)以内、さらには1〜2部(1〜2%)程度になり、得られる混合顔料の外観は、全体として均一な色調の、しっとりとまとまった状態の湿り顔料になる。後述するが、得られた湿り顔料は、二軸押出混練機を用いてマスターバッチを製造する際に好適に使用できる湿式顔料半製品となる。
【0020】
本発明者らは、さらなる検討の結果、上記したミスト状で添加する水にアセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤を併用させることで、水だけを含有させた場合と比べて、より効果的に、均一に混合した状態の湿り顔料が得られることを確認した。この場合の上記非イオン界面活性剤の使用量としては、質量基準で、水1部に対して0.001〜0.005部程度、より好ましくは、水1部に対して0.001〜0.003部程度の範囲で併用すれば、混合状態をより効果的に良好なものにできる。使用する非イオン界面活性剤としては、アセチレン骨格を有する構造のものが好ましい。アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤には、動的界面活性に優れることに加え、170℃〜200℃程度の温度で昇華してしまうという利点がある。すなわち、このような特性を有するアセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤は、粉体顔料の混合工程の後、樹脂との混練・造粒過程で、二軸押出し機での加工温度下で昇華してしまうので、得られる湿り顔料(湿式顔料半製品)中に残留することがない。このため、マスターバッチの製造に湿り顔料を使用し、このマスターバッチを用いて製品とした場合に、界面活性剤が残留することによる製品への影響が生じない。
【0021】
本発明で提供する湿り顔料(湿式顔料半製品)は、これをそのまま使用し、二軸押出混練機でマスターバッチ用樹脂と混練することで、顔料が均一に分散した良好なカラーマスターバッチを容易に製造することができる。先に述べたように、従来のマスターバッチの製造方法では、分散剤やワックス類を使用して乾燥した混合顔料を予め処理し、処理した顔料を着色剤としてマスターバッチ用樹脂と混練してカラーマスターバッチを得ているが、両者を比較すると下記に挙げる違いがある。すなわち、本発明のマスターバッチの製造方法は、従来のマスターバッチの製造方法に比較し、極めて簡便な設備や条件等でマスターバッチが得られることに加え、得られるカラーマスターバッチが、従来方法で製造したマスターバッチと比べて、結着樹脂中におけるカラーの有機顔料の分散性において、同等或いはそれ以上に優れるものとなる。しかも、本発明のカラーマスターバッチの製造方法では分散剤やワックス類を使用することがないので、得られるカラーマスターバッチが、顔料濃度の高い、着色性に優れたものとなり、しかも、顔料の分散性に優れた均一なものになる。このため、本発明で提供されるカラーマスターバッチは、厚みのある成形品用途には勿論のこと、薄物成形品の用途にも使用可能なものになる。さらに、本発明のカラーマスターバッチの製造方法は、従来のマスターバッチの製造方法と異なり、湿り顔料を調製するためのヘンシェルミキサー等の混合機と、該混合機内に、顔料を混合している間にミスト状の水を少量混入させることができる手段と、汎用の二軸押出混練機があれば足り、製造設備や製造条件や製造原料等にかかる費用を削減でき、製造コストの大幅な削減、ひいては、カラーマスターバッチを使用して得られた製品コストの削減が可能になる、という工業上の極めて大きなメリットがある。
【0022】
本発明で使用できる原料及び装置について述べる。
(顔料)
本発明で混合して使用する顔料は、少なくともカラーの有機顔料を含有すればよく、特に、一次粒子の直径が1000nm未満の微粉体であるカラーの有機顔料を複数混合して調色する場合や、このような粒径のカラーの有機顔料と白色の白色顔料とを複数混合して調色して使用する場合に、特に本発明の顕著な効果が得られる。本発明で使用するカラーの有機顔料は、特に限定されず、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、ペリレン系、キノフタロン系、ペリノン系等が挙げられる。これらに分類される染料を併用してもよい。また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンなどの白色顔料を併用してもよい。
【0023】
(マスターバッチ用樹脂)
本発明で使用するマスターバッチ用樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合樹脂(AES樹脂)等の汎用の樹脂をいずれも使用することができる。
【0024】
(水、界面活性剤)
水は、水道水でもよいが、イオン交換水を用いることが好ましい。水と併用して界面活性剤を使用する場合の界面活性剤は、先に述べたように、アセチレン骨格を有する非イオン界面活性剤であることが好ましく、種々の特性のものが市場から入手できる。中でも、水に可溶で、ミスト状にして水とともに添加できるものが好ましくこのようなものとしては、例えば、サフィノール465、サフィノール485、サフィノール82等(商品名、日信化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0025】
(混合機)
本発明の湿り顔料の製造には、カラーの有機顔料を含む複数の顔料を分散混合するための混合機を用いるが、迅速に、均一な混合を達成するためには、特に、高速回転する羽根によって強力な混合力を発揮するヘンシェルミキサーのような高性能流動式混合機を用いることが好ましい。ヘンシェルミキサーによれば、混合槽内で、微粉体の混合顔料は、下羽根によって回転力が与えられて上方に流動し、上羽根によって強力に剪断される結果、短時間での分散混合が可能になる。また、混合槽内の温度を上昇させる加熱手段を有するものを用いることが好ましい。例えば、混合機槽内の温度を50℃〜70℃に確実に上昇させて、複数種の顔料を強力な剪断力で分散混合させながらミスト状の水を添加することで、より確実に水を気化させることができ、その結果、気化(ガス化)した水によって顔料微粉同士の距離を適度な位置に保つことができ、分散に寄与し、より効果的な分散混合ができる。なお、ヘンシェルミキサーは、従来より顔料の処理に用いられている3本ロールやボールミル等の、重装備で且つ生産性の低い装置に比べて、小型で簡易な装置であるので、装置や設備にかかる費用の低減される。
【0026】
(ミストの添加手段)
図2に、乾燥した混合顔料に、ミスト状の水を添加するための方法の概略図を示した。注入タンク内には水が入っており、この注入タンク内には、液注入口から、先に述べたような界面活性剤を適宜に添加できる構造となっている。さらに、図2に示した装置では、注入タンク内に圧力をかけることができる構造をしており、適宜に圧力をかけることで、ミストノズルから、水、或いは、界面活性剤を添加した水をミスト状にして、所望する量、混合槽内の混合している状態の顔料に水を添加することで、乾燥した混合顔料に湿り気を与えて、複数の顔料が均一に分散混合された湿り顔料とすることができる。図1は、図2に示した装置を使用してミスト状にした水を、ヘンシェルミキサーのような混合機の混合槽内に添加している状態を示す概略図である。
【0027】
(二軸押出混練機)
本発明のマスターバッチは、マスターバッチの製造に一般的に用いられている二軸押出混練機を用い、上記で説明した、乾燥した混合顔料にミスト状の水を添加して混合機で分散混合した本発明を特徴づける湿り顔料と、通常のマスターバッチ用の樹脂とを、二軸押出混練機のホッパーから導入して混練することで容易に製造できる。すなわち、本発明のマスターバッチの製造方法は、着色剤として本発明の湿り顔料を用いた以外、何ら異なることはない。したがって、本発明のマスターバッチは、簡易なヘンシェルミキサーのような混合機と、混合槽内にミスト状で水を添加するための手段と、汎用の二軸押出混練機とを用意するだけで、簡便に得られるので、工業上、極めて有用である。先に述べたように、しかも、従来の製造方法で得たカラーマスターバッチと比較して、顔料濃度が高く、着色力を高めることができ、しかも分散剤やワックス類の残留による製品への影響についての問題も生じない。
【実施例】
【0028】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
下記に示したそれぞれの配合で、青色マスターバッチと赤色マスターバッチを製造した。その際に、マスターバッチ用の樹脂には、ペレット状の低密度ポリエチレン樹脂(サンテックLDPE 2270(商品名)、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
【0029】
<マスターバッチの配合組成>
(1)青色マスターバッチ
・低密度ポリエチレン樹脂 76部
・白色顔料:TiO2ルチル型(R820 石原産業社製) 20部
・青色顔料:PB−15:3(4920Blue 大日精化工業社製) 4部
【0030】
(2)赤色マスターバッチ
・低密度ポリエチレン樹脂 81部
・キナクリドンレッド(シンカシャレッドYRT759D BASF社製) 18部
・縮合アゾレッド(クロモフタールレッドR BASF社製) 1部
【0031】
(実施例1〜7)
<本発明で規定する湿式の分散混合方法>
一次粒子の直径が70〜200nmである、上記した青色のマスターバッチと赤色のマスターバッチの配合中にそれぞれ記載した2種の乾燥した顔料を、上記した配合でそれぞれに用意し、図1に示した、大きさが20Lの混合槽を有するヘンシェルミキサーを有する装置を用い、下記のようにして混合試験を行った。
【0032】
混合槽内に、用意した2種類の乾燥した顔料を入れて、ヘンシェルミキサーを稼働させて混合した。一方、表1に示した条件で、それぞれ混合試験を行った。混合試験の際、混合顔料にミスト状の水を添加する方法は、以下のようにして行った。予め、表1に示した要件となるように、水を単体で、若しくは、水にアセチレン系界面活性剤を所定量添加した水溶液をそれぞれ用意した。そして、混合試験毎に、用意した水溶液をそれぞれに用い、図1に示した装置の、ミキサー(混合機)近傍に設置した圧力タンク内に、混合顔料100質量部に対して表1に示した必要量となる部数を充填して、これを用い、下記のようにして水溶液をミスト状にして混合槽内の混合顔料に添加して混合試験した。
【0033】
まず、圧力タンク内に、コンプレッサーによるエアーを、水分、油分を除いた状態で注入して、0.3MPa〜0.5MPa程度の加圧状態を形成させた。そして、混合顔料が入ったヘンシェルミキサーを、高速で回転させながら、圧力タンクより伸びたホース先端に装着した、混合槽内に配置させたミストノズルより、0.3MPaの圧力を掛けて、先に準備し、圧力タンク内に充填した水溶液を所望量、混合槽内の顔料混合物に噴霧させた。さらに、所定の時間混合して、実施例1〜6のそれぞれの、湿った状態の本発明の湿り顔料である湿式の顔料半製品を得た。なお、ヘンシェルミキサーは、稼働させる前に予め50〜70℃に加温した場合と、加温することなく室温で稼働させた場合とで試験を行い、加温したことによる効果を調べた。その結果、乾燥顔料に湿り気を与える水の量や、必要に応じて水に添加させる界面活性剤の量に比べて影響は少ないが、予め加温した方が、分散混合状態が安定した良好になることが確認できた。
【0034】
(比較例1〜9)
<従来の乾式の分散混合方法>
実施例で用いたと同様の乾燥した2種の顔料を混合する際に、比較例では、混合顔料100質量部に対し、表2に示した各量の分散剤或いはワックス類を配合して、実施例で用いたと同様の20Lヘンシェルミキサー(高速混合機)のみ、或いは、アトマイザー(高速粉砕機)にて分散混合して、比較例の乾式の顔料半製品をそれぞれに得た。
【0035】
<マスターバッチの製造方法>
上記で得た実施例1〜6の湿り顔料である湿式の顔料半製品と、比較例1〜9の乾式の顔料半製品をそれぞれに用いて、下記の手順でカラーマスターバッチをそれぞれ製造した。
(a)まず、先に示したペレット状の低密度ポリエチレン樹脂と、上記で得たそれぞれの顔料半製品とを、先に示した所定の配合(顔料濃度)となるようにして50Lタンブラーに入れ、約15分間混合して、マスターバッチ組成の混合物を得た。
(b)次に、上記で得たマスターバッチ組成混合物を二軸押出混練機(26φ、L/D=42、東芝機械社製)に、重量式フィーダー(定量供給装置)から15kg/Hの供給速度で注入して、加工温度160〜200℃の下で混練して、顔料分散加工、脱気、造粒を行って、それぞれのカラーマスターバッチサンプルを得た。
【0036】
<顔料の分散状態の評価方法と基準>
(a)顔料の分散状態を正確に評価するために、質量基準で、上記で得たカラーマスターバッチ1に対し、マスターバッチの製造に用いたと同じ低密度ポリエチレン樹脂が4となる1:4の比率で混合して、約220℃に設定した25t射出成型機にて、バックプレッシャーを0.5MPa以下の条件下で希釈混合して、顔料濃度を1/5に落とした樹脂成形物を得た。
(b)そして、上記で得たマスターバッチを樹脂で希釈した樹脂成形物の同じ位置から、それぞれ0.05gの評価用の試料をカッターナイフで切り出した。
(c)切り出した評価用の試料をそれぞれ、約270℃のホットプレートで加熱したスライドグラス上において溶融した後、更にもう一枚のスライドグラスで押しつけて、未分散の顔料粒子が顕微鏡で見えるレベルまで薄く引き延ばして、結着樹脂中の顔料の分散状態を評価するための評価用試料を、それぞれに得た。
(d)スライドグラス上に展開した、マスターバッチを樹脂で希釈した評価用試料を、それぞれCCD付きマイクロスコープ(キーエンス社製)に掛けて、下記のようにして顔料の分散状態を評価した。具体的には、視野中に確認される粗粒子の数を、基準とする粗粒子サイズ(50μm、20μm)の基準に照らしてカウントして、0〜5の間の指標に換算して比較し、評価した。図3に換算に用いたスコアを示した。表1および2に、上記のようにして、評価用試料について測定して得た分散指標の結果を示した。この指標が5に近い方が分散に優れていることを示し、0に近いほど分散性に劣ることを示している。
【0037】
なお、図3に示した顔料分散スコアと視野中の粗粒子のカウント数との関係は、下記の通りであった。
Y=4.93−0.054X
[Y:顔料分散スコア X:視野中の粗粒子数]
【0038】
<色調の評価方法と評価基準>
表1、2に示した色調*1は、下記のようにして評価した。
まず、実施例及び比較例のカラーマスターバッチをそれぞれ使って、質量基準で、カラーマスターバッチ1に対し、マスターバッチの製造に用いたと同じ低密度ポリエチレン樹脂が9となるように1:9の比率で混合して希釈してカラーの樹脂を調製した。上記で調製したそれぞれのカラー樹脂を用い、製膜してカラーフィルムを作製し、色調を調べるための試験用の樹脂製フィルムとした。そして、この樹脂製フィルムを、目視による官能試験で、従来法によって得た樹脂製フィルムと比べて明らかに色の差が認められるか否かで、「正常」と「色変化」を判断したのに加えて、客観的な判断を下記の方法により行った。透過色カラーコンピュータ(コニカミノルタ製、商品名:CM3600d)を使って試験用フィルムを透過した光の、各波長毎の透過率、色差を測定してL*、a*、b*の数値で、従来法によって得た樹脂製フィルムと比べて5ポイント以上の差があった場合を「色変化」があると判断し、差が無い場合を「正常」と判定した。そして、官能試験の結果と、客観的な判断結果とを総合して判定した評価結果を表1、2に示した。評価基準を下記に示した。上記で比較のために用いた従来法によって得た樹脂製フィルムには、使用する顔料を同様にし、乾燥顔料100部に対してポリエチレンワックス50部を使用して予め分散処理した処理顔料を使用すること以外は同様の方法でマスターバッチを得、これを用いて上記と同様にして得た試験用フィルムを用いた。
【0039】
(評価基準)
正常:使用する顔料が同様である従来法によって得た、従来の樹脂製フィルムと比較して、目視、色差、各波長毎の光線透過率がいずれも遜色ない状態であった。
色変有:従来の樹脂製フィルムと比較して、目視で明らかに色が異なり、色差、各波長毎の光線透過率の数値も大きく基準からはずれている。
【0040】
<押出加工性の評価基準>
表1、2に示した押出加工性は、先に述べたようにしてマスターバッチを作製する過程で、二軸押出混練機で押し出す際の様子を観察し、「良好」と「不良」とを下記の基準で評価した。
良好:二軸押出混練機の加工で何の異常も無く加工ができる。
不良:二軸押出混練機による押出し加工の中で、ベントアップ(ベント部からの吹き出し)、押出し量の変動、原料の供給不良等の製造継続に障害となるいずれかが生じる。
【0041】
表1、2に示した通り、本発明の湿り顔料である実施例の湿式の顔料半製品を使用して得たカラーマスターバッチは、比較例の乾式の顔料半製品を使用して得たカラーマスターバッチと比較して、明らかに分散性に優れるものであった。さらに、実施例の湿式の顔料半製品は、ワックス類等を使用せず、水を添加したものでありながら、高い分散性を示したが、比較例7〜9との比較から、水の添加量が4%以上と多くなると、本発明の顕著な効果は達成できないことが確認できた。また、色調や押出加工性については、ワックス類で処理した顔料を使用する従来法による場合と遜色のない色調の樹脂製カラーフィルムが得られ、また、マスターバッチを得る際の押出し加工においても何らの問題もなかったことから、分散性に優れるカラーマスターバッチを簡便な方法で得ることができるという本発明の顕著な効果が確認できた。
【0042】
【0043】
図1
図2
図3