【実施例】
【0028】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
下記に示したそれぞれの配合で、青色マスターバッチと赤色マスターバッチを製造した。その際に、マスターバッチ用の樹脂には、ペレット状の低密度ポリエチレン樹脂(サンテックLDPE 2270(商品名)、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
【0029】
<マスターバッチの配合組成>
(1)青色マスターバッチ
・低密度ポリエチレン樹脂 76部
・白色顔料:TiO
2ルチル型(R820 石原産業社製) 20部
・青色顔料:PB−15:3(4920Blue 大日精化工業社製) 4部
【0030】
(2)赤色マスターバッチ
・低密度ポリエチレン樹脂 81部
・キナクリドンレッド(シンカシャレッドYRT759D BASF社製) 18部
・縮合アゾレッド(クロモフタールレッドR BASF社製) 1部
【0031】
(実施例1〜7)
<本発明で規定する湿式の分散混合方法>
一次粒子の直径が70〜200nmである、上記した青色のマスターバッチと赤色のマスターバッチの配合中にそれぞれ記載した2種の乾燥した顔料を、上記した配合でそれぞれに用意し、
図1に示した、大きさが20Lの混合槽を有するヘンシェルミキサーを有する装置を用い、下記のようにして混合試験を行った。
【0032】
混合槽内に、用意した2種類の乾燥した顔料を入れて、ヘンシェルミキサーを稼働させて混合した。一方、表1に示した条件で、それぞれ混合試験を行った。混合試験の際、混合顔料にミスト状の水を添加する方法は、以下のようにして行った。予め、表1に示した要件となるように、水を単体で、若しくは、水にアセチレン系界面活性剤を所定量添加した水溶液をそれぞれ用意した。そして、混合試験毎に、用意した水溶液をそれぞれに用い、
図1に示した装置の、ミキサー(混合機)近傍に設置した圧力タンク内に、混合顔料100質量部に対して表1に示した必要量となる部数を充填して、これを用い、下記のようにして水溶液をミスト状にして混合槽内の混合顔料に添加して混合試験した。
【0033】
まず、圧力タンク内に、コンプレッサーによるエアーを、水分、油分を除いた状態で注入して、0.3MPa〜0.5MPa程度の加圧状態を形成させた。そして、混合顔料が入ったヘンシェルミキサーを、高速で回転させながら、圧力タンクより伸びたホース先端に装着した、混合槽内に配置させたミストノズルより、0.3MPaの圧力を掛けて、先に準備し、圧力タンク内に充填した水溶液を所望量、混合槽内の顔料混合物に噴霧させた。さらに、所定の時間混合して、実施例1〜6のそれぞれの、湿った状態の本発明の湿り顔料である湿式の顔料半製品を得た。なお、ヘンシェルミキサーは、稼働させる前に予め50〜70℃に加温した場合と、加温することなく室温で稼働させた場合とで試験を行い、加温したことによる効果を調べた。その結果、乾燥顔料に湿り気を与える水の量や、必要に応じて水に添加させる界面活性剤の量に比べて影響は少ないが、予め加温した方が、分散混合状態が安定した良好になることが確認できた。
【0034】
(比較例1〜9)
<従来の乾式の分散混合方法>
実施例で用いたと同様の乾燥した2種の顔料を混合する際に、比較例では、混合顔料100質量部に対し、表2に示した各量の分散剤或いはワックス類を配合して、実施例で用いたと同様の20Lヘンシェルミキサー(高速混合機)のみ、或いは、アトマイザー(高速粉砕機)にて分散混合して、比較例の乾式の顔料半製品をそれぞれに得た。
【0035】
<マスターバッチの製造方法>
上記で得た実施例1〜6の湿り顔料である湿式の顔料半製品と、比較例1〜9の乾式の顔料半製品をそれぞれに用いて、下記の手順でカラーマスターバッチをそれぞれ製造した。
(a)まず、先に示したペレット状の低密度ポリエチレン樹脂と、上記で得たそれぞれの顔料半製品とを、先に示した所定の配合(顔料濃度)となるようにして50Lタンブラーに入れ、約15分間混合して、マスターバッチ組成の混合物を得た。
(b)次に、上記で得たマスターバッチ組成混合物を二軸押出混練機(26φ、L/D=42、東芝機械社製)に、重量式フィーダー(定量供給装置)から15kg/Hの供給速度で注入して、加工温度160〜200℃の下で混練して、顔料分散加工、脱気、造粒を行って、それぞれのカラーマスターバッチサンプルを得た。
【0036】
<顔料の分散状態の評価方法と基準>
(a)顔料の分散状態を正確に評価するために、質量基準で、上記で得たカラーマスターバッチ1に対し、マスターバッチの製造に用いたと同じ低密度ポリエチレン樹脂が4となる1:4の比率で混合して、約220℃に設定した25t射出成型機にて、バックプレッシャーを0.5MPa以下の条件下で希釈混合して、顔料濃度を1/5に落とした樹脂成形物を得た。
(b)そして、上記で得たマスターバッチを樹脂で希釈した樹脂成形物の同じ位置から、それぞれ0.05gの評価用の試料をカッターナイフで切り出した。
(c)切り出した評価用の試料をそれぞれ、約270℃のホットプレートで加熱したスライドグラス上において溶融した後、更にもう一枚のスライドグラスで押しつけて、未分散の顔料粒子が顕微鏡で見えるレベルまで薄く引き延ばして、結着樹脂中の顔料の分散状態を評価するための評価用試料を、それぞれに得た。
(d)スライドグラス上に展開した、マスターバッチを樹脂で希釈した評価用試料を、それぞれCCD付きマイクロスコープ(キーエンス社製)に掛けて、下記のようにして顔料の分散状態を評価した。具体的には、視野中に確認される粗粒子の数を、基準とする粗粒子サイズ(50μm、20μm)の基準に照らしてカウントして、0〜5の間の指標に換算して比較し、評価した。
図3に換算に用いたスコアを示した。表1および2に、上記のようにして、評価用試料について測定して得た分散指標の結果を示した。この指標が5に近い方が分散に優れていることを示し、0に近いほど分散性に劣ることを示している。
【0037】
なお、
図3に示した顔料分散スコアと視野中の粗粒子のカウント数との関係は、下記の通りであった。
Y=4.93−0.054X
[Y:顔料分散スコア X:視野中の粗粒子数]
【0038】
<色調の評価方法と評価基準>
表1、2に示した色調*1は、下記のようにして評価した。
まず、実施例及び比較例のカラーマスターバッチをそれぞれ使って、質量基準で、カラーマスターバッチ1に対し、マスターバッチの製造に用いたと同じ低密度ポリエチレン樹脂が9となるように1:9の比率で混合して希釈してカラーの樹脂を調製した。上記で調製したそれぞれのカラー樹脂を用い、製膜してカラーフィルムを作製し、色調を調べるための試験用の樹脂製フィルムとした。そして、この樹脂製フィルムを、目視による官能試験で、従来法によって得た樹脂製フィルムと比べて明らかに色の差が認められるか否かで、「正常」と「色変化」を判断したのに加えて、客観的な判断を下記の方法により行った。透過色カラーコンピュータ(コニカミノルタ製、商品名:CM3600d)を使って試験用フィルムを透過した光の、各波長毎の透過率、色差を測定してL
*、a
*、b
*の数値で、従来法によって得た樹脂製フィルムと比べて5ポイント以上の差があった場合を「色変化」があると判断し、差が無い場合を「正常」と判定した。そして、官能試験の結果と、客観的な判断結果とを総合して判定した評価結果を表1、2に示した。評価基準を下記に示した。上記で比較のために用いた従来法によって得た樹脂製フィルムには、使用する顔料を同様にし、乾燥顔料100部に対してポリエチレンワックス50部を使用して予め分散処理した処理顔料を使用すること以外は同様の方法でマスターバッチを得、これを用いて上記と同様にして得た試験用フィルムを用いた。
【0039】
(評価基準)
正常:使用する顔料が同様である従来法によって得た、従来の樹脂製フィルムと比較して、目視、色差、各波長毎の光線透過率がいずれも遜色ない状態であった。
色変有:従来の樹脂製フィルムと比較して、目視で明らかに色が異なり、色差、各波長毎の光線透過率の数値も大きく基準からはずれている。
【0040】
<押出加工性の評価基準>
表1、2に示した押出加工性は、先に述べたようにしてマスターバッチを作製する過程で、二軸押出混練機で押し出す際の様子を観察し、「良好」と「不良」とを下記の基準で評価した。
良好:二軸押出混練機の加工で何の異常も無く加工ができる。
不良:二軸押出混練機による押出し加工の中で、ベントアップ(ベント部からの吹き出し)、押出し量の変動、原料の供給不良等の製造継続に障害となるいずれかが生じる。
【0041】
表1、2に示した通り、本発明の湿り顔料である実施例の湿式の顔料半製品を使用して得たカラーマスターバッチは、比較例の乾式の顔料半製品を使用して得たカラーマスターバッチと比較して、明らかに分散性に優れるものであった。さらに、実施例の湿式の顔料半製品は、ワックス類等を使用せず、水を添加したものでありながら、高い分散性を示したが、比較例7〜9との比較から、水の添加量が4%以上と多くなると、本発明の顕著な効果は達成できないことが確認できた。また、色調や押出加工性については、ワックス類で処理した顔料を使用する従来法による場合と遜色のない色調の樹脂製カラーフィルムが得られ、また、マスターバッチを得る際の押出し加工においても何らの問題もなかったことから、分散性に優れるカラーマスターバッチを簡便な方法で得ることができるという本発明の顕著な効果が確認できた。
【0042】
【0043】