(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190797
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】壁面緑化パネル及び壁面緑化設備
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20060101AFI20170821BHJP
A01G 27/06 20060101ALI20170821BHJP
A01G 1/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
A01G9/02 B
A01G9/02 F
A01G27/06
A01G1/00 303E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-234925(P2014-234925)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-96754(P2016-96754A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】303067353
【氏名又は名称】株式会社岩や
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】岩川 和弘
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−222015(JP,A)
【文献】
特開2013−192516(JP,A)
【文献】
特開2001−320968(JP,A)
【文献】
特開2014−195416(JP,A)
【文献】
特開2009−183253(JP,A)
【文献】
特開平7−274729(JP,A)
【文献】
特開2012−100595(JP,A)
【文献】
特開2001−346459(JP,A)
【文献】
実開平3−91754(JP,U)
【文献】
特開平8−70718(JP,A)
【文献】
特開2002−186359(JP,A)
【文献】
実開平5−4860(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3134687(JP,U)
【文献】
特開2012−19714(JP,A)
【文献】
特開2011−182680(JP,A)
【文献】
特開平3−221759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 1/00
A01G 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体が、底板と、該底板の外周縁に沿って立設された上枠、下枠及び両側枠によって形成され、
前記底板上に、下層から樹皮層、樹脂メッシュ、ロックウール層の順で積層固定され、
前記パネル本体内に、前記上枠に沿って灌水パイプが配設され、
前記灌水パイプの側面部に複数の貫通孔が形成され、
各前記貫通孔に導水用紐状物が挿通され、
前記導水用紐状物によって前記灌水パイプ内の水を前記ロックウール層及び前記樹皮層に供給することを特徴とする壁面緑化パネル。
【請求項2】
前記貫通孔が前記灌水パイプの両側面部に各々形成され、
相対する一対の前記貫通孔に前記導水用紐状物が挿通され、
前記導水用紐状物の一方を前記ロックウール層に接触させ、前記導水用紐状物の他方を前記樹皮層に接触させ、前記導水用紐状物の中間部を前記灌水パイプ内の底部に固定してなることを特徴とする請求項1に記載の壁面緑化パネル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の壁面緑化パネルを複数並べて形成される壁面緑化設備であって、
前記壁面緑化パネルの上枠及び下枠に、それぞれ複数の上側通水孔及び下側通水孔が形成され、
前記灌水パイプの上面部に複数の導水孔が形成されていることを特徴とする壁面緑化設備。
【請求項4】
複数並べられた前記壁面緑化パネルの最上部に灌水手段を備え、
該灌水手段が、複数並べられた前記壁面緑化パネルの横手方向に沿って配設される導水パイプと、該導水パイプの下面部に形成された開口に挿通される複数の給水パイプと、を含んで構成され、
前記給水パイプの一端開口が前記導水パイプ内に位置し、前記給水パイプの他端開口が、最上部に位置する前記壁面緑化パネルに接続され、
前記導水パイプ内の底部に位置する前記給水パイプの側面部に通水小孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の壁面緑化設備。
【請求項5】
前記導水パイプ内に砂利が敷設されていることを特徴とする請求項4に記載の壁面緑化パネル。
【請求項6】
前記導水パイプの一端側に給水手段が接続され、
複数の前記給水パイプの各前記一端開口の位置が、前記導水パイプの一端側から他端側にかけて徐々に低くなっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の壁面緑化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面緑化パネル及び当該壁面緑化パネルを複数並べて形成される壁面緑化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物等の壁面に植栽を施すべく、種々の壁面緑化設備(壁面緑化システム)が種々開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示された壁面緑化システムは、植栽が施される培土基盤と該培土基盤を保持する枠部材を備える緑化ユニットを、構造物の壁面に沿って設置して該構造物に緑化を施すための壁面緑化システムであって、断面略凹状を呈する複数の樋部材が、それぞれ開口部側を上方に向けた状態で略水平方向に延設され、上下方向に所定の間隔をあけつつ前記構造物の壁面に支持されており、前記枠部材が前記樋部材に着脱可能に支持されて前記上下方向に隣り合う一対の前記樋部材の間に前記緑化ユニットが設置されることを特徴とする。また、前記緑化ユニットを設置した状態で、前記培土基盤と、該培土基盤の上方に位置する前記樋部材との間には、該培土基盤に灌水するための灌水部材が設けられていることを特徴とする。
【0003】
上記の特徴を備える特許文献1に開示された壁面緑化システムによって、構造物の壁面に緑化を施すデザインの自由度を高めると共に、個々の緑化ユニットを個別にメンテナンスすることを可能としている。また、樋部材と緑化ユニットからなるシンプルな構成であるため、緑化に掛かるコストの低減が図られている。
【0004】
更に、緑化ユニットの培土基盤と、この緑化ユニットの上方に位置する樋部材との間に灌水部材が設けられていることによって、緑化ユニットの培土基盤にその上端側から灌水することができ、これに植生した植物の好適な生育が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−222015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
壁面緑化においては、維持管理の容易化、灌水効率の向上を低コストで実現できることが非常に重要であり、これらが高次元で実現できれば、ヒートアイランド現象の緩和、大気汚染物質の吸収・吸着、景観の向上等を図る上で効果的な壁面緑化をより普及させることが可能となる。
【0007】
この点、特許文献1に開示された壁面緑化システムによると、壁面緑化システムにおけるメンテナンスの容易化、低コスト化、灌水効率の向上が図られている。しかしながら、未だ壁面緑化が世間一般に普及するまでには至っておらず、更なる維持管理の容易化、灌水効率の向上、低コスト化が要求されている。
【0008】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、維持管理を容易化しつつ灌水効率を高めて植栽の生育向上を図ると共に、導入コスト及び維持管理コストの低減を可能とする壁面緑化パネル及び当該壁面緑化パネルを利用した壁面緑化設備を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、パネル本体が、底板と、該底板の外周縁に沿って立設された上枠、下枠及び両側枠によって形成され、前記底板上に、下層から樹皮層、樹脂メッシュ、ロックウール層の順で積層固定され、前記パネル本体内に、前記上枠に沿って灌水パイプが配設され、前記灌水パイプの側面部に複数の貫通孔が形成され、各前記貫通孔に導水用紐状物が挿通され、前記導水用紐状物によって前記灌水パイプ内の水を前記ロックウール層及び前記樹皮層に供給することを特徴とする壁面緑化パネルである。
【0010】
また、本発明の壁面緑化パネルにおいて、前記貫通孔が前記灌水パイプの両側面部に各々形成され、相対する一対の前記貫通孔に前記導水用紐状物が挿通され、前記導水用紐状物の一方を前記ロックウール層に接触させ、前記導水用紐状物の他方を前記樹皮層に接触させ、前記導水用紐状物の中間部を前記灌水パイプ内の底部に固定してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記壁面緑化パネルを複数並べて形成される壁面緑化設備であって、前記壁面緑化パネルの上枠及び下枠に、それぞれ複数の上側通水孔及び下側通水孔が形成され、前記灌水パイプの上面部に複数の導水孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の壁面緑化設備において、複数並べられた前記壁面緑化パネルの最上部に灌水手段を備え、該灌水手段が、複数並べられた前記壁面緑化パネルの横手方向に沿って配設される導水パイプと、該導水パイプの下面部に形成された開口に挿通される複数の給水パイプと、を含んで構成され、前記給水パイプの一端開口が前記導水パイプ内に位置し、前記給水パイプの他端開口が、最上部に位置する前記壁面緑化パネルに接続され、前記導水パイプ内の底部に位置する前記給水パイプの側面部に通水小孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の壁面緑化設備において、前記導水パイプ内に砂利が敷設されていることを特徴とする。
【0014】
更にまた、本発明の壁面緑化設備において、前記導水パイプの一端側に給水手段が接続され、複数の前記給水パイプの各前記一端開口の位置が、前記導水パイプの一端側から他端側にかけて徐々に低くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、灌水効率が高く、植栽の生育向上が図られた壁面緑化パネルを低コストで提供することができる。特に、樹皮層を設けることによって植栽の生育向上が図られると共に、灌水効率を高めることによって植栽枯れも防止でき、結果として維持管理の容易化、低コスト化が図られる。
【0016】
また、本発明の壁面緑化パネルを複数並べることによって、維持管理の容易化、灌水効率の向上、植栽の生育向上が図られると共に、導入コスト及び維持管理コストの低減が図られた壁面緑化設備を提供することができる。特に、簡単な構成で効率よく灌水を可能とすることによって、維持管理コストの低減、植栽の生育向上が図られる。
【0017】
更に、本発明の壁面緑化設備において、導水パイプと複数の給水パイプとを含んで構成される灌水手段を設けることによって、灌水効率の更なる向上を図ることができ、維持管理の容易化、植栽の生育向上を低コストで実現することができる。
【0018】
また、本発明の壁面緑化設備において、前記導水パイプ内に砂利が敷設されていることによって、壁面緑化パネルに灌水する水を濾過することができ、導水、通水用の各種の孔の目詰まりを防止することができる。
【0019】
更にまた、本発明の壁面緑化設備において、前記導水パイプの一端側に給水手段が接続され、複数の前記給水パイプの各前記一端開口の位置を前記導水パイプの一端側から他端側にかけて徐々に低くすることによって、導水パイプの一端側と他端側とにおける灌水ムラの防止が図られ、他端側に配設された壁面緑化パネルにも十分な灌水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る壁面緑化パネルの正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる壁面緑化設備の正面図である。
【
図4】
図2に示した壁面緑化設備の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の壁面緑化パネルの一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る壁面緑化パネル10を示す正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。当該
図1に示すように、本実施形態に係る壁面緑化パネル10は、パネル本体12と、パネル本体12内に配設される灌水パイプ20とによって主に構成されている。
【0022】
本実施形態の壁面緑化パネル10に係るパネル本体12は、底板13と、底板13の外周縁に沿って立設された上枠14、下枠15及び両側枠16,16によって形成されている。そして
図1(b)に示すように、パネル本体12に係る底板13上に、下層から樹皮層B、樹脂メッシュM、ロックウール層Rの順で積層されており、支持プレート17を介して底板13に突設されたボルト18とナット19によって樹皮層B及び樹脂メッシュMが一体に固定され、その上にロックウール層Rが敷設されている。
【0023】
本実施形態の壁面緑化パネル10では、ロックウール層Rに植物の種子を播種することによって植栽される。ロックウール層Rに播種された種子から伸びた根は、樹脂メッシュMを介して樹皮層Bにまで到達して植栽を支持すると共に、ロックウール層R及び樹皮層Bから水分や養分を吸収する。
【0024】
また、本実施形態に係るパネル本体12内には、上枠14に沿って灌水パイプ20が配設されている。灌水パイプ20の側面部には複数の貫通孔21が形成され、各貫通孔21に導水用紐状物22が挿通されている。この導水用紐状物22による毛細管現象によって、灌水パイプ20内に供給された水がロックウール層Rや樹皮層Bに供給されるように構成されている。
【0025】
ここで、本実施形態の壁面緑化パネル10に係る灌水パイプ20においては、貫通孔21が灌水パイプ20の両側面部に各々形成され(
図1(b)参照)、相対する一対の貫通孔21,21に一の導水用紐状物22が挿通される。そして、導水用紐状物22の一方をロックウール層Rに接触させ、導水用紐状物22の他方を樹皮層Bに接触させる。また、導水用紐状物22の中間部は、灌水パイプ20内の底部に固定棒23によって固定されている。従って、灌水パイプ20内に供給された水は、毛細管現象によって導水用紐状物22を介してロックウール層R及び樹皮層Bにそれぞれ供給されることとなる。
【0026】
なお、本実施形態の壁面緑化パネル10において、符号30で示すのはパネル本体12に係る上枠14に形成された複数の上側通水孔、符号31で示すのは、パネル本体12に係る下枠15に形成された複数の下側通水孔、符号32で示すのは、灌水パイプ20の上面部及び上方に形成された複数の導水孔である。これら上側通水孔30、下側通水孔31、導水孔32については、本発明の壁面緑化設備の説明において詳述する。
【0027】
以上のように、本実施形態によると、構造が単純でありながら、灌水効率が高く、植栽の生育が非常に良好な壁面緑化パネル10を提供することができる。特に、導水用紐状物22を介した毛細管現象による灌水方法を採用することによって、一旦、灌水パイプ20内に水を供給することによって長時間掛けて少しずつ灌水することが可能となる。従って、従来の灌水方法、例えば所定量の水を断続的に供給する方法等に比べて灌水効率が高く、また低コストでの灌水が可能となるため、植栽の生育向上が図られた壁面緑化パネル10を低コストで提供することができる。
【0028】
また、本実施形態の壁面緑化パネル10において、パネル本体12内に樹皮層Bを設けることによって植栽の根張りが良好になると共に、灌水効率の向上も図られているため、植栽枯れの防止効果も高く、結果として維持管理の容易化、低コスト化が図られる。
【0029】
なお、本実施形態の壁面緑化パネル10に係る灌水パイプ20では、貫通孔21が灌水パイプ20の両側面部に各々形成されているが、少なくとも一方の側面部に貫通孔21が形成され、この貫通孔21に一の導水用紐状物22が挿通されてもよい。この場合は、導水用紐状物22の一方をロックウール層R又は樹皮層Bに接触させ、導水用紐状物22の他方を灌水パイプ20内の底部に固定棒23によって固定することによって、毛細管現象によって灌水パイプ20内に供給された水をロックウール層R又は樹皮層Bに供給することができる。
【0030】
また、本実施形態の壁面緑化パネル10では、複数の導水用紐状物22が灌水パイプ20内の底部において、灌水パイプ20の長手方向に沿って配設された長尺の固定棒23によってまとめて固定されているが、導水用紐状物22の固定方法は特に限定されず、複数の導水用紐状物22を灌水パイプ20内の底部に各々固定してもよい。
【0031】
次に、本発明の壁面緑化パネルを複数並べて形成される壁面緑化設備の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る壁面緑化設備11を示す正面図、
図3は、
図2におけるB−B断面図、
図4は、
図2に示した壁面緑化設備11の部分拡大図、
図5は、
図4におけるC−C断面図である。これら
図2から
図5に示すように、本実施形態に係る壁面緑化設備11は、上記実施形態に係る壁面緑化パネル10を複数並べて形成される。
【0032】
より具体的には、本実施形態の壁面緑化設備11は、複数の壁面緑化パネル10が上下方向及び左右方向に複数並べられている。各壁面緑化パネル10は、壁面等に設けられた柱材41及び横架材42によって形成された支持枠体40に着脱自在に固定されている。なお、支持枠体40への固定方法は特に限定されないが、例えば、横架材42に予め配設されたフック43に壁面緑化パネル10に係る下枠15を嵌合し、押圧片44によって上側に位置する壁面緑化パネル10の下枠15と、下側に位置する壁面緑化パネル10の上枠14とを押圧した状態で、ボルト45で横架材42に締結する方法等が挙げられる。このような壁面緑化パネル10の固定方法によると、壁面緑化設備11における任意の壁面緑化パネル10のみを交換することが可能となり、維持管理の低コスト化が図られる。
【0033】
本実施形態の壁面緑化設備11に係る複数の壁面緑化パネル10には、
図1に示したとおり、まず壁面緑化パネル10の上枠14及び下枠15に、それぞれ複数の上側通水孔30及び下側通水孔31が形成されている。
【0034】
壁面緑化パネル10が備える灌水パイプ20の上面部及び上方には、複数の導水孔32が形成されている。なお、灌水パイプ20の上面部の導水孔32は、上枠14に形成された複数の上側通水孔30に相対する位置に形成されることが好ましい。
【0035】
つまり、上側に位置する壁面緑化パネル10に係るパネル本体12内と、下側に位置する壁面緑化パネル10に係る灌水パイプ20内とは、上側に位置する壁面緑化パネル10に係る下側通水孔31、下側に位置する壁面緑化パネル10に係る上側通水孔30及び灌水パイプ20に係る導水孔32を介して連通されている。つまり、上側に位置する壁面緑化パネル10に係る灌水パイプ20に供給された水は、毛細管現象により導水用紐状物22を介してロックウール層R等に導水されて下方へと移動し、下側通水孔31から下側に位置する壁面緑化パネル10に係る上側通水孔30及び灌水パイプ20に係る導水孔32を経て、下側に位置する壁面緑化パネル10に係る灌水パイプ20内に供給されることとなる。従って、最上部に位置する壁面緑化パネル10が備える灌水パイプ20内に水を供給することによって、上下方向に並べられた複数の壁面緑化パネル10に係る最下部に位置する壁面緑化パネル10にまで灌水することができる。
【0036】
本発明の壁面緑化パネルを複数並べて形成される壁面緑化設備において、各壁面緑化パネルが備える灌水パイプへの水の供給方法は特に限定されず、各壁面緑化パネルが備える灌水パイプに対してそれぞれ水を供給する構成とすることも可能であるが、簡易な構成によって灌水効率を高めつつ低コストで水の供給を可能とするべく、本発明の壁面緑化設備においては、複数並べられた壁面緑化パネルの最上部に灌水手段を備えることが特に好ましい。
【0037】
本実施形態の壁面緑化設備11に係る灌水手段50は、複数並べられた壁面緑化パネル10の横手方向に沿って配設される導水パイプ51と、導水パイプ51の下面部に形成された開口52に挿通される複数の給水パイプ53と、を含んで構成されている。そして、各給水パイプ53の一端開口53aが導水パイプ51内に位置し、給水パイプ53の他端開口53bと、複数並べられた壁面緑化パネル10のうち最上部に位置する壁面緑化パネル10が備える上側通水孔30とがチューブ56によって接続されている。また、導水パイプ51内の底部に位置する給水パイプ53の側面部には通水小孔54が形成されている。
【0038】
更に、本実施形態の壁面緑化設備11に係る灌水手段50では、複数の給水パイプ53の各一端開口53aの位置が、導水パイプ51の一端51a側から他端51b側にかけて徐々に低くなっていることを特徴とする。即ち、導水パイプ51の一端51a側の給水パイプ53に係る一端開口53aの位置と他端51b側の給水パイプ53に係る一端開口53aの位置との間に高低差tが設けられている。なお、導水パイプ51の一端51a側には不図示の給水手段が接続されている。給水手段は主に水タンクとポンプとを含んで構成され、水タンク内の水がポンプでくみ上げられて導水パイプ51の一端51a側から導水パイプ51内へ供給されることとなる。更に、タイマーを備えることで、一定時間毎に水を供給することも可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る導水パイプ51内には砂利55が敷設されている。砂利55の敷設高は特に限定されず、
図2から
図5に示した実施形態においては、給水パイプ53の一端開口53aの高さより若干低い位置としているが、給水パイプ53の一端開口53aから給水パイプ53内への砂利55の進入を防止する手段、例えばメッシュ等を備えていれば、一端開口53aの位置より上方まで砂利55が敷設されてもよい。
【0040】
以上の構成を備える本実施形態の壁面緑化設備11によると、低コストで灌水効率の向上を図ることが可能である。特に、導水パイプ51の一端51a側と他端51b側とにおける灌水ムラの防止が図られ、他端51b側に配設された壁面緑化パネル10にも十分な灌水を行うことができる。即ち、不図示の給水手段によって導水パイプ51の一端51a側から導水パイプ51内へ供給された水は、給水パイプ53の一端開口53aから他端開口53bを経て壁面緑化パネル10内へと導水される。導水パイプ51への水の供給を停止すると、導水パイプ51内に供給された水の水位は徐々に下がり、給水パイプ53の一端開口53aの位置より下方となった時点で一端開口53aへの水の流入も停止する。その後は、給水パイプ53の側面部に形成された通水小孔54から少しずつ導水パイプ51内の水が下方へと通水されることとなり、長時間掛けて少しずつ各壁面緑化パネル10へ灌水することが可能となる。
【0041】
ここで、複数の給水パイプ53の各一端開口53aの位置を同じ高さとすると、導水パイプ51の他端51b側に位置する給水パイプ53の一端開口53aへの流入量が、一端51a側に近い給水パイプ53の一端開口53aへの流入量と比べて少なくなる。従って、壁面緑化設備11の横手方向の長さが長くなればなるほど、導水パイプ51の一端51a側に位置する壁面緑化パネル10と、他端51b側に位置する壁面緑化パネル10との間に灌水ムラが生じるおそれがある。そこで、導水パイプ51の一端51a側と他端側51b側とで給水パイプ53の一端開口53aに高低差tを設け、導水パイプ51の他端側51bに位置する給水パイプ53の一端開口53aを、導水パイプ51の一端51a側に比べて低くすることによって、灌水ムラの防止が図られ、壁面緑化設備11全体における灌水効率の向上を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態の壁面緑化設備11において、灌水手段50は非常に簡単な構成であると共に、灌水手段50に係る導水パイプ51へ水を供給するのみで、各壁面緑化パネル10へ灌水することができ、維持管理の容易化、植栽の生育向上を低コストで実現することができる。
【0043】
更に、本実施形態の壁面緑化設備11に係る灌水手段50おいて、導水パイプ51内に砂利55が敷設されていることによって、壁面緑化パネル10に灌水する水を濾過することができ、壁面緑化パネル10に係る上側通水孔30や下側通水孔31、導水孔32等の導水、通水用の各種孔の目詰まりを防止することができる。
【0044】
以上、本発明の壁面緑化パネル及び当該壁面緑化パネルを複数並べて形成される壁面緑化設備の実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。
【0045】
例えば、
図2及び
図3に示すように、壁面緑化設備11に係る最下部において、複数並べられた壁面緑化パネル10の横手方向に沿って集水樋57が配設されてもよい。集水樋57を配設することによって、壁面緑化設備11に係る最下部に位置する壁面緑化パネル10が備える下側通水孔31から漏出した水を容易に回収することができる。集水樋57によって回収された水を再び給水手段に係る水タンク(不図示)に戻すことによって、灌水用水の循環利用が可能となる。以上、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0046】
10:壁面緑化パネル
12:パネル本体
13:底板
14:上枠
15:下枠
16:側枠
20:灌水パイプ
21:貫通孔
22:導水用紐状物
30:上側通水孔
31:下側通水孔
32:導水孔
50:灌水手段
51:導水パイプ
52:開口
53:給水パイプ
54:通水小孔
55:砂利
56:チューブ
B:樹皮層
M:樹脂メッシュ
R:ロックウール層