特許第6190799号(P6190799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190799
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】塗抹標本染色装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20170821BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20170821BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G01N1/28 L
   G01N1/30
   G01N1/28 U
   G01N33/48 Q
   G01N1/28 V
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-239038(P2014-239038)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-99324(P2016-99324A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】品部 誠也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 謙治
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−237323(JP,A)
【文献】 特開2005−181245(JP,A)
【文献】 特開昭60−171431(JP,A)
【文献】 特開平03−033655(JP,A)
【文献】 実開昭61−173062(JP,U)
【文献】 米国特許第02623301(US,A)
【文献】 米国特許第03701201(US,A)
【文献】 米国特許第05215718(US,A)
【文献】 米国特許第02257394(US,A)
【文献】 特開2012−112963(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/101777(WO,A1)
【文献】 特開昭55−107957(JP,A)
【文献】 米国特許第06133548(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、33/48〜33/98、F26B1/00〜25/00、G02B21/00〜21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドガラスを保持して移送する移送部と、
前記移送部により移送された前記スライドガラスを挿入するための挿入開口と、風を送り込むための送込開口と、が設けられた収納部と、
前記送込開口を介して前記収納部に収納された前記スライドガラスに風を送るための送風部と、を備え、
前記収納部には、前記送風部から前記送込開口を介して送り込まれた風を送り出すための送出開口が前記挿入開口とは別個に設けられており、
前記収納部は、前記送風部から前記送込開口を介して送り込まれた風が、前記送出開口および前記挿入開口の両方から送り出されるように構成されており、
前記挿入開口は、前記収納部の上端部に設けられ、
前記送込開口は、前記収納部の第1側部に設けられ、
前記送出開口は、前記収納部の前記第1側部とは反対側の第2側部に設けられ、
前記送風部は、前記収納部に収納された前記スライドガラスの側面に向けて風を送る、塗抹標本染色装置。
【請求項2】
前記送出開口は、前記第2側部の下部近傍に設けられている、請求項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項3】
前記収納部は、前記スライドガラスを複数収納できるように構成され、
前記移送部は、所定時間が経過した前記スライドガラスから順に前記スライドガラスを抜き出して移送する、請求項1または2に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項4】
前記収納部は、前記送風部から前記送込開口を介して送り込まれた風が側方から前記スライドガラスの塗抹部に当たり、前記挿入開口から送り出されるように構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項5】
前記送込開口の少なくとも一部は、上下方向において、前記挿入開口と前記送出開口との間の位置に配置されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項6】
前記送風部は、前記収納部の第1側部側に配置され、
前記収納部のうち前記第1側部とは反対の第2側部側における前記送込開口と対向する領域には、内壁面が設けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項7】
前記内壁面の下部は、前記内壁面から外壁面に向けて窪んだ窪み部を含み、
前記窪み部の下端部は、前記送出開口と隣接し、
前記窪み部は、前記収納部に前記スライドガラスが収納された状態で、前記スライドガラスの側面と離間するように構成されている、請求項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項8】
前記収納部は、前記第1側部の前記内壁面に設けられた傾斜部を備え、
前記傾斜部は、前記送風部から前記送込開口を介して送り込まれた風が前記送出開口に向けてガイドされるように下方に向けて傾斜している、請求項またはに記載の塗抹標本染色装置。
【請求項9】
前記送出開口は、前記収納部に前記スライドガラスが収納された状態で、前記スライドガラスの下端部を露出させる位置に設けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項10】
前記収納部は、前記スライドガラスを複数収納できるように構成され、
前記送出開口は、前記収納部に前記複数のスライドガラスが収納された状態で、前記複数のスライドガラスが配列される方向において、一方端の前記スライドガラスと他方端の前記スライドガラスとの間隔よりも広い幅を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項11】
前記収納部は、前記スライドガラスを複数収納できるように構成され、
前記送込開口は、前記収納部に前記複数のスライドガラスが収納された状態で、前記複数のスライドガラスが配列される方向において、一方端の前記スライドガラスと他方端の前記スライドガラスとの間隔よりも広い幅を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項12】
前記収納部は、前記スライドガラスを複数収納できるように構成され、
前記収納部は、収納された前記複数のスライドガラスの下端部を支持するためのシャフトを備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項13】
前記送込開口は、前記収納部に前記スライドガラスが収納された状態で、前記スライドガラスと重なる位置に配置されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項14】
前記送込開口と前記送風部との間に配置されるヒータをさらに備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項15】
前記収納部における前記スライドガラスの収納状況に基づいて、前記送風部の動作を制御する制御部をさらに備える、請求項1〜14のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項16】
検体が塗抹された前記スライドガラスを浸せるように染色液を溜めるための染色槽をさらに備える、請求項1〜15のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項17】
前記移送部は、前記染色槽から前記収納部に前記スライドガラスを1枚ずつ移送するように構成されている、請求項16に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項18】
前記送風部により乾燥された前記スライドガラスを格納する格納部をさらに備える、請求項1〜17のいずれか1項に記載の塗抹標本染色装置。
【請求項19】
前記移送部は、前記収納部から前記格納部に前記スライドガラスを1枚ずつ移送するように構成されている、請求項18に記載の塗抹標本染色装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗抹標本染色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スライドガラスが挿入されたカセットを搬送するためのカセット搬送部と、ファンとを備えた塗抹標本染色装置が開示されている。カセットには、検体が塗抹されたスライドガラスが挿入される。カセットは、スライドガラスを上方から挿入するための挿入開口を上端部に備えている。ファンは、カセットに挿入されたスライドガラスを乾燥させるために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−162784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の塗抹標本染色装置では、スライドガラスの乾燥に時間がかかるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一の局面による塗抹標本染色装置は、スライドガラスを保持して移送する移送部と、移送部により移送されたスライドガラスを挿入するための挿入開口と、風を送り込むための送込開口と、が設けられた収納部と、送込開口を介して収納部に収納されたスライドガラスに風を送るための送風部と、を備え、収納部には、送風部から送込開口を介して送り込まれた風を送り出すための送出開口が挿入開口とは別個に設けられており、収納部は、送風部から送込開口を介して送り込まれた風が、送出開口および挿入開口の両方から送り出されるように構成されており、挿入開口は、収納部の上端部に設けられ、送込開口は、収納部の第1側部に設けられ、送出開口は、収納部の第1側部とは反対側の第2側部に設けられ、送風部は、収納部に収納されたスライドガラスの側面に向けて風を送る。

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スライドガラスの乾燥に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による塗抹標本染色装置における乾燥機構の概要を示した模式図である。
図2】一実施形態による塗抹標本染色装置における乾燥機構の分解斜視図である。
図3図2のIII−III線に沿った断面図である。
図4】一実施形態による塗抹標本染色装置における乾燥機構をX2側から見た斜視図である。
図5】一実施形態による塗抹標本染色装置の移送部、染色槽、洗浄槽、および乾燥機構を示した斜視図である。
図6】一実施形態による塗抹標本染色装置の全体構成を説明するための模式的な平面図である。
図7】塗抹標本染色装置の染色動作を説明するためのフロー図である。
図8】塗抹標本染色装置の乾燥処理を説明するためのフロー図である。
図9】収納部内部における風の流れのシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1図6を参照して、本実施形態による塗抹標本染色装置10の構成について説明する。
【0010】
[塗抹標本染色装置の概要]
塗抹標本染色装置10は、検体に対して染色が施されたスライドガラス900を乾燥し、塗抹標本を自動的に作製するための装置である。検体は、たとえば血液である。
【0011】
[乾燥機構の概要]
図1に示すように、塗抹標本染色装置10は、乾燥機構20と、移送部50とを備えている。乾燥機構20は、収納部30と、送風部40とを備えている。乾燥機構20は、後述する染色処理および洗浄処理が実施された後のスライドガラス900を乾燥させるために設けられている。
【0012】
収納部30は、スライドガラス900を収納するために設けられている。収納部30は、内部に空間を有する箱状の部材である。収納部30は、3つの開口を備えている。具体的には、収納部30には、移送部50により移送されたスライドガラス900を挿入するための挿入開口31が形成されている。収納部30には、風を送り込むための送込開口32が設けられている。収納部30には、送風部40から送込開口32を介して送り込まれた風を送り出すための送出開口33が設けられている。
【0013】
挿入開口31と送出開口33とは、収納部30の上下方向における中心面510に対して、非対称の位置関係になるように配置されている。挿入開口31と送出開口33との配置位置は、様々な配置位置を採用できる。たとえば、挿入開口31と送出開口33とは、収納部30のZ方向における中心面510に対して、対称の位置関係になるように配置されていてもよい。
【0014】
収納部30は、スライドガラス900の上端部を収納部30の上端部よりも上方に露出させるようにスライドガラス900を収納する。収納部30の材料は、様々な材料を採用できる。収納部30の材料には、樹脂や金属などを採用できる。
【0015】
送風部40は、筺体41と、ファン42と、ファン収納孔43とを備えている。送風部40は、収納部30の内部に空気を強制的に送り込める電動式のファンである。ファン42は、X軸に平行な回転軸520を中心に回転可能なように円筒状のファン収納孔43に収納されている。送風部40は、送込開口32を介して収納部30に収納されたスライドガラス900に風を送るために設けられている。
【0016】
移送部50は、収納部30の上方に配置され、収納部30の上方を移動できる。移送部50は、スライドガラス900を保持して移送するために設けられている。移送部50は、挿入開口31を介して収納部30にスライドガラス900を出し入れするために設けられている。
【0017】
以上の構成により、送風部40により収納部30の内部に送り込まれた風が、挿入開口31および送出開口33の両方から収納部30の外部に吹き抜けることができる。これにより、収納部30の内部において風を効率よく通過させることができる。その結果、スライドガラス900の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0018】
好ましくは、挿入開口31は、収納部30の上端部に設けられている。挿入開口31には、スライドガラス900が上方から挿入される。送込開口32は、収納部30の第1側部30aに設けられている。収納部30には、送込開口32を介してX1側からX2側に風が送り込まれる。送出開口33は、収納部30における送風部40側の第1側部30aとは異なる第2側部30bに設けられている。なお、送出開口33は、収納部30の下端部に設けられていてもよい。これにより、送込開口32から送り込まれた風を送出開口33から効率よく送り出すことができる。
【0019】
なお、本明細書において、収納部30において第1側部30aが設けられている方向が、各図のX1方向に対応し、第2側部30bが設けられている方向が、各図のX2方向に対応する。また、本明細書において、上方向は、各図のZ1方向に対応し、下方向は、各図のZ2方向に対応する。
【0020】
より好ましくは、送出開口33は、第2側部30bの下部近傍に設けられている。これにより、送出開口33および挿入開口31により、収納部30の下部および上部からそれぞれ効率よく風を送り出すことができる。
【0021】
より好ましくは、送出開口33は、第1側部30aとは反対側の第2側部30bに設けられている。これにより、送込開口32から送り込まれた風が、収納部30内部で複雑に曲がることなく送出開口33からスムーズに送り出される。
【0022】
送風部40は、収納部30の第1側部30a側の位置に配置され、送風部40側から収納部30側に向けて風を送る。送風部40は、収納部30に収納されたスライドガラス900の側面900aに向けて風を送る。側面900aは、スライドガラス900の厚み方向に沿って延びる面である。送風部40は、スライドガラス900のX1側の側面900aに向けて風を送る。
【0023】
好ましくは、収納部30は、送風部40から送込開口32を介して送り込まれた風が側方からスライドガラス900の塗抹部910に当たり、挿入開口31から送り出されるように構成されている。スライドガラス900のY2側における表面に検体が塗抹された部分が、塗抹部910である。収納部30には、塗抹部910がY2側を向くようにスライドガラス900が収納されている。これにより、スライドガラス900の塗抹部910側における表面および塗抹部910とは反対側の表面の両表面を同時に乾燥させることができる。その結果、スライドガラス900の一方の表面にのみ風が当たる場合よりも乾燥に要する時間をさらに短縮することができる。なお、本明細書において、送風部40におけるファン42の回転軸520が延びる方向に垂直な方向で、かつ、水平方向に平行な方向がY方向に対応する。また、スライドガラス900の表面はY軸に直交する。
【0024】
好ましくは、送出開口33は、収納部30の第1側部30aとは反対の第2側部30bの下部に設けられている。より好ましくは、送出開口33は、収納部30の下端部33aに設けられている。これにより、収納部30の内部における上下方向の中央近傍において風が通過しにくくなるのを抑制できる。その結果、収納部30の内部全体において風を効率よく通過させることができる。
【0025】
好ましくは、送込開口32の少なくとも一部は、上下方向において、挿入開口31と送出開口33との間の位置に配置されている。これにより、収納部30の内部における中央近傍に風を送り込み、挿入開口31および送出開口33により、収納部30の上部および下部の両方から風を均等に送り出せる。
【0026】
好ましくは、収納部30のうち第1側部30aとは反対の第2側部30b側における送込開口32と対向する領域には、内壁面30cが設けられている。送風部40は、スライドガラス900の側面900aおよびX2側の内壁面30cに向けてX1方向から風を送り込む。これにより、収納部30の内部に送り込んだ風を内壁面30cに当て、風の向きを変えて挿入開口31および送出開口33に送ることができる。その結果、収納部30の内部において風を効率よく通過させることができる。
【0027】
好ましくは、送込開口32は、収納部30にスライドガラス900が収納された状態で、スライドガラス900と重なる位置に配置されている。送込開口32は、X方向から見て、収納部30に収納されたスライドガラス900と重なる位置に配置されている。これにより、送風部40から送られた風をスライドガラス900の側面900aに直接当てることができる。
【0028】
[乾燥機構の詳細な構成]
以下、図2以降を参照して、図1に示した乾燥機構20の好ましい実施形態の構成について具体的に説明する。
【0029】
好ましい実施形態においては、図2に示すように、乾燥機構20は、収納部30と、送風部40と、ヒータ60とを備えている。
【0030】
収納部30は、スライドガラス900を複数収納できるように構成されている。収納部30は、Y方向に沿って、7枚のスライドガラス900を収納できる。収納部30には、塗抹部910側の表面がY2側を向くようにスライドガラス900が収納される。
【0031】
スライドガラス900の収納枚数は、特に限定されない。収納部30は、スライドガラス900を1〜6枚、または、8枚以上収納できるように構成してもよい。
【0032】
挿入開口31は、複数のスライドガラス900を互いにY方向に離間させた状態で収納部30に挿入できるように構成されている。挿入開口31は、平面視において、櫛歯状に形成されている。
【0033】
送込開口32は、概略的には矩形状に形成されている。送込開口32は、好ましくは、収納部30に複数のスライドガラス900が収納された状態で、複数のスライドガラス900が配列される方向において、一方端のスライドガラス900と他方端のスライドガラス900との間隔W1よりも広い幅W2を有する。これにより、収納部30に収納されている全てのスライドガラス900に送風部40から送り込まれた風を当てることができる。その結果、全てのスライドガラス900を均一に乾燥させることができる。
【0034】
好ましくは、収納部30は、収納された複数のスライドガラス900の下端部を支持するためのシャフト34を備える。シャフト34は、収納部30のY1側の内面からY2側の内面までY方向に延びている棒状部材である。シャフト34は、収納部30の底面30eから離間し、底面30e(図3参照)に平行に配置されている。シャフト34は、収納部30に収納されている各スライドガラス900に線接触するように下方から各スライドガラス900を支持している。これにより、スライドガラス900の下方に空間を設けることができる。その結果、風を効率よく通過させることができる。
【0035】
スライドガラス900の下端部を支持する構成は、シャフト34以外の様々な構成を採用できる。たとえば、収納部30の底面30e(図3参照)にスライドガラス900の下端部を支持する支持部を形成して、スライドガラス900を支持してもよい。
【0036】
好ましくは、ヒータ60は、送風部40と収納部30の送込開口32との間に配置されている。ヒータ60は、送風部40と収納部30とに挟み込まれている。送風部40から送風された風は、ヒータ60を通過する際に熱を受け取り、温風の状態で収納部30内に送られる。これにより、スライドガラス900の乾燥に要する時間をさらに短縮することができる。
【0037】
詳細には、ヒータ60は、筺体61と、発熱部62とを備えている。筺体61は、送風部40側に孔部61aを備え、収納部30側に孔部61bを備えている。発熱部62は、筺体61に収納されている。発熱部62は、孔部61aおよび61bを介して、筺体61の外部と通じている。
【0038】
孔部61aは、X方向から見て、円形状を有している。孔部61aは、Y方向から見て、送風部40のファン収納孔43と対応する位置に配置されている。孔部61aは、X1方向から見て、送風部40のファン収納孔43と重なるように配置されている。また、孔部61bは、X方向から見て、矩形状である。孔部61bは、Y方向から見て、収納部30の送込開口32と対応する位置に配置されている。孔部61bは、X1方向から見て、収納部30の送込開口32と重なるように配置されている。
【0039】
図3に示すように、好ましくは、収納部30のX2側における内壁面30cの下部は、内壁面30cから外壁面30dに向けて窪んだ窪み部35を含んでいる。窪み部35の下端部は、送出開口33と隣接している。窪み部35は、収納部30にスライドガラス900が収納された状態で、スライドガラス900の側面900aと離間する位置にある。すなわち、窪み部35は、スライドガラス900の側面900aと接触しない。これにより、窪み部35が形成されていない構成と異なり、内壁面30cと、スライドガラス900の側面900aとが接触しない。その結果、窪み部35に対向するスライドガラス900の側面900aに、風を当てることができる。
【0040】
より好ましくは、窪み部35は、内壁面30cの下端部に設けられている。窪み部35の上部35aは、Y方向から見て、下方に向けて傾斜している。窪み部35のうち上部35a以外の部分35bは、Y方向から見て、収納部30に収納されたスライドガラス900の側面900aに対して平行に形成されている。
【0041】
また、好ましくは、収納部30は、第1側部30aのX1側における内壁面30cに傾斜部36を備えている。傾斜部36は、送風部40から送込開口32を介して送り込まれた風が送出開口33に向けてガイドされるように下方に向けて傾斜している。これにより、収納部30の内部で効率よく風を通過させることができる。
【0042】
より好ましくは、傾斜部36は、スライドガラス900と離間する位置に設けられている。傾斜部36は、X2方向から見て、送出開口33と重なるように配置されている。
【0043】
シャフト34は、X方向において、収納部30に収納されたスライドガラス900の中心部よりもX1側に配置されている。シャフト34は、X方向から見て、送出開口33と重なるように配置されている。シャフト34の断面における直径は、Y方向から見て、送出開口33のZ方向における長さよりも小さい。
【0044】
図4に示すように、好ましくは、送出開口33は、収納部30にスライドガラス900が収納された状態で、スライドガラス900の下端部を露出させる位置に設けられている。これにより、後述するシミュレーション結果(図9参照)に示されるように風の流速が速い領域をスライドガラス900の下端部に形成できる。その結果、スライドガラス900の下端部を効率よく乾燥させることができる。
【0045】
好ましくは、送出開口33は、X方向から見て、矩形状である。送出開口33は、収納部30に複数のスライドガラス900が収納された状態で、Y方向において、一方端のスライドガラス900と他方端のスライドガラス900との間隔W1よりも広い幅W3を有する。これにより、収納部30に収納されている全てのスライドガラス900が配置された領域から送出開口33を介して風を送り出すことができる。
【0046】
送出開口33の開口面積は、収納部30にスライドガラス900が7枚収納された状態の挿入開口31の開口面積と略等しい。収納部30にスライドガラス900が7枚収納された状態において、送出開口33から送り出される風の量は、挿入開口31から送り出される風の量と等しい。これにより、送出開口33および挿入開口31から、バランスよく風を送り出すことができる。
【0047】
送出開口33および挿入開口31の開口面積は、それぞれ、送込開口32の開口面積よりも小さい。これにより、送出開口33および挿入開口31から送り出される風の流速を大きくできる。
【0048】
[塗抹標本染色装置の主要部の構成]
図5に示すように、塗抹標本染色装置10は、塗抹された検体に染色処理、洗浄処理および乾燥処理を行う染色部101を備えている。染色部101は、乾燥機構20と、移送部50と、染色槽70と、洗浄槽80と、流体回路部90と、制御部91とを備えている。染色槽70は、第1染色槽70a、第2染色槽70b、第3染色槽70c、第4染色槽70dおよび第5染色槽70eを備えている。第1染色槽70aには、第1の染色液を溜めることができる。第2染色槽70bには、第2の染色液を溜めることができる。第3染色槽70cには、第3の染色液を溜めることができる。第4染色槽70dおよび第5染色槽70eには、第4の染色液を溜めることができる。洗浄槽80は、仕切部材14aによって仕切られた第1洗浄槽80aと第2洗浄槽80bとを備えている。これにより、染色槽70により染色処理されたスライドガラス900を、同一の装置の乾燥機構20に移送し、迅速に乾燥処理できる。
【0049】
また、塗抹標本染色装置10は、様々な構成を採用できる。たとえば、塗抹標本染色装置10は、染色処理の前工程としてスライドガラス900に検体を塗抹する塗抹処理をさらに行うが、塗抹処理を行わないように構成してもよい。
【0050】
移送部50は、検体が塗抹されたスライドガラス900を掴んで移送するために設けられている。移送部50は、第1移送部50aと第2移送部50bとを含む。移送部50の第1移送部50aおよび第2移送部50bは、共に染色槽70および洗浄槽80の上方に配置される。第1移送部50aおよび第2移送部50bは、移動機構52によってそれぞれ、X方向およびY方向に移動できる。
【0051】
移動機構52は、Y方向のY軸レール53aおよびY軸スライダ53bと、X方向のX軸レール54aおよびX軸スライダ54bと、Y軸モータ53cおよびX軸モータ54cとを含む。X軸モータ54cおよびY軸モータ53cには、たとえばステッピングモータまたはサーボモータなどを採用できる。
【0052】
Y軸レール53aは、Y方向に直線状に延び、支持部材53dの下面に固定される。支持部材53dは、塗抹標本染色装置10の筐体の天井部または支持用の梁部材などである。Y軸スライダ53bは、Y軸レール53aのZ2側に取り付けられ、Y軸レール53aに沿って移動できる。Y軸モータ53cは、図示しない伝達機構を介してY軸スライダ53bをY方向に移動させる。
【0053】
X軸レール54aは、X方向に直線状に延び、Y軸スライダ53bの下面に固定されている。X軸スライダ54bは、X軸レール54aのZ2側に取り付けられ、X軸レール54aに沿って移動できる。X軸モータ54cは、図示しない伝達機構を介してX軸スライダ54bをX方向に移動させる。
【0054】
Y軸スライダ53b、X軸レール54a、X軸スライダ54b、X軸モータ54cおよびY軸モータ53cは、それぞれ一対設けられている。一対のX軸スライダ54bの下面側に、それぞれ、第1移送部50aと第2移送部50bとが取り付けられている。これにより、第1移送部50aおよび第2移送部50bは、個別のX軸レール54aに沿って互いに独立してX方向に移動できる。また、第1移送部50aおよび第2移送部50bは、共通のY軸レール53aに沿って互いに独立してY方向に移動できる。
【0055】
第1移送部50aおよび第2移送部50bの構成は、共通である。第1移送部50aおよび第2移送部50bは、それぞれ、ハンド51を昇降させるためのZ軸モータ55aと、伝達機構55bとを含む。Z軸モータ55aは、伝達機構55bを介してハンド51を昇降させる。
【0056】
ハンド51は、1枚のスライドガラス900を把持できる。ハンド51は、一対の把持板51aによってスライドガラス900を厚み方向に挟んで把持できる。
【0057】
第1移送部50aは、Y2側の第1染色槽70a、第2染色槽70b、第3染色槽70cおよび第1洗浄槽80aの各上方位置に移動できる。第1移送部50aは、後述する第1染色槽70a、第2染色槽70b、第3染色槽70cおよび第1洗浄槽80aの各々に対して、スライドガラス900を1枚ずつ挿入および抜き出しできる。
【0058】
また、第2移送部50bは、Y1側の第2洗浄槽80b、第5染色槽70e、第4染色槽70dおよび第1洗浄槽80aの各上方位置と、乾燥機構20の上方位置と、後述する格納部106(図6参照)の位置に移動できる。したがって、第2移送部50bは、第4染色槽70dおよび第5染色槽70eと、第1洗浄槽80aおよび第2洗浄槽80bとの各々に対して、スライドガラス900を1枚ずつ挿入および抜き出しできる。
【0059】
第1移送部50aと第2移送部50bとは、それぞれ並行して別々のスライドガラス900を移送できる。第1移送部50aと第2移送部50bとは、第1洗浄槽80aにおいて動作範囲が重複しており、この第1洗浄槽80aにおいてスライドガラス900の受け渡しが行われる。
【0060】
第2移送部50bは、染色が完了したスライドガラス900を順次、染色槽70から収納部30に1枚ずつ移送する。これにより、染色処理が完了したスライドガラス900を、順次、乾燥機構20に移送できる。
【0061】
具体的には、第2移送部50bは、スライドガラス900を各染色槽70および各洗浄槽80を経由させた後、収納部30に移送する。第2移送部50bは、挿入開口31を介して収納部30にスライドガラス900を1枚ずつ移送する。
【0062】
また、第2移送部50bは、所定時間が経過し乾燥が完了したスライドガラス900から順に、収納部30からスライドガラス900を1枚ずつ抜き出して格納部106(図6参照)に移送する。これにより、乾燥処理が完了したスライドガラス900を、順次、格納部106に移送でき、染色処理の処理効率を上げることができる。
【0063】
染色槽70は、検体が塗抹されたスライドガラス900を浸せるように染色液11を溜めるために設けられている。染色槽70は、内部に染色液11を溜められる容器である。染色槽70は、スライドガラス900を保持するように構成された第1保持部71を複数含む。染色槽70に挿入されるスライドガラス900は、Y方向に沿って配置される。染色槽70内で第1保持部71に保持されたスライドガラス900を染色液11に所定時間浸しておくことにより、染色処理が行われる。
【0064】
洗浄槽80は、スライドガラス900を浸せるように洗浄液13を溜めるために設けられる。洗浄槽80は、染色槽70の第1保持部71と同様の第2保持部81を複数含んでいる。洗浄槽80のその他の構成は、染色槽70と共通の構成を有している。
【0065】
そして、第1染色槽70a〜第5染色槽70eの5つの染色槽70と、第1洗浄槽80aおよび第2洗浄槽80bの2つの洗浄槽80とは、仕切部材14aによって各槽が仕切られた状態で、単一の構造体14に一体形成されている。第2洗浄槽80bのY1方向側の位置には、構造体14と隣接するように乾燥機構20が配置されている。
【0066】
各染色槽70および各洗浄槽80は、Y2側から順に、第1染色槽70a、第2染色槽70b、第3染色槽70c、第1洗浄槽80a、第4染色槽70dおよび第5染色槽70e、第2洗浄槽80bの順で配列されている。スライドガラス900は、Y2側の第1染色槽70aから順に各槽に移送され、所定の設定時間の間、それぞれの槽に溜められた染色液11または洗浄液13に漬けられて処理される。また、染色槽70および洗浄槽80の各々には、液体を供給するための供給ポート15aと液体を排出するための排出ポート15bとが個別に設けられている。
【0067】
流体回路部90は、供給ポート15aを介して、各染色槽70に染色液11を供給する。流体回路部90は、供給ポート15aを介して、各洗浄槽80に洗浄液13を供給する。流体回路部90は、排出ポート15bを介して、各染色槽70から染色液11を排出する。流体回路部90は、排出ポート15bを介して、各洗浄槽80から洗浄液13を排出する。
【0068】
制御部91は、移送部50および乾燥機構20などの制御を行う。制御部91は、図示しないCPUおよびメモリを備えている。好ましくは、制御部91は、収納部30におけるスライドガラス900の収納状況に基づいて、送風部40の動作を制御する。これにより、スライドガラス900を乾燥させる必要がある場合にのみ送風部40を駆動させることができる。その結果、消費電力を削減できる。
【0069】
[塗抹標本染色装置のその他の構成]
次に、図6を参照して、塗抹標本染色装置10のその他の構成について説明する。
【0070】
好ましい実施形態では、塗抹標本染色装置10は、さらに、スライド供給部102、印刷部103、検体塗抹部104、乾燥部105および格納部106を備える。
【0071】
スライド供給部102は、検体の塗布前の未使用状態のスライドガラス900(図3参照)を多数収納している。スライド供給部102は、塗布前のスライドガラス900を1枚ずつ印刷部103に供給できる。
【0072】
印刷部103は、スライドガラス900における上端部近傍のフロスト部920(図3参照)に、検体情報などの各種情報を印字できる。印刷部103は、印字したスライドガラス900を検体塗抹部104に移送できる。
【0073】
検体塗抹部104は、図示しない検体吸引機構により検体を吸引して、印刷部103から送られたスライドガラス900の塗抹部910(図3参照)に検体を塗抹できる。検体塗抹部104は、塗抹処理後のスライドガラス900を乾燥部105に移送できる。
【0074】
乾燥部105は、検体が塗抹されたスライドガラス900を検体塗抹部104から受け取り、塗抹部910を乾燥させるためにスライドガラス900に送風できる。乾燥部105は、乾燥させたスライドガラス900を染色部101に移送できる。
【0075】
染色部101では、各染色槽70および洗浄槽80で染色処理および洗浄処理が実施される。その後、乾燥機構20で乾燥処理が行われる。その後、乾燥済みのスライドガラス900が格納部106に1枚ずつ移送される。これらの各部間のスライドガラス900の移送が、移送部50によって実施される。
【0076】
格納部106は、送風部40により乾燥されたスライドを格納する。
【0077】
以上の構成によって、塗抹標本染色装置10は、スライドガラス900への印字、検体の塗抹、検体の染色および乾燥の各処理を実施して塗抹標本を自動作製できる。
【0078】
[塗抹標本染色装置の染色動作]
次に、図5図7を参照して、塗抹標本染色装置10の染色動作について説明する。ステップS1の処理は、流体回路部90が行い、ステップS2〜S7の処理は、制御部91が行う。
【0079】
図7のステップS1において、流体回路部90は、染色槽70および洗浄槽80のそれぞれに、染色液11および洗浄液13を溜める処理を行う。
【0080】
ステップS2において、移送部50が、スライドガラス900を第1染色槽70a、第2染色槽70bおよび第3染色槽70c(図5参照)に順次移送し、各染色槽において染色処理が行われる。
【0081】
具体的には、移送部50が、1枚のスライドガラス900を第1染色槽70aに移送する。移送されたスライドガラス900は、所定の設定時間T1の間、第1の染色液11に漬けられる。その後、移送部50がスライドガラス900を第2染色槽70bに移送し、所定の設定時間T2の間、第2染色槽70bにおいて染色処理が行われる。その後、移送部50がスライドガラス900を第3染色槽70cに移送し、所定の設定時間T3の間、第3染色槽70cにおいて染色処理が行われる。
【0082】
ステップS3において、移送部50が、スライドガラス900を第1洗浄槽80a(図5参照)へ移送し、第1洗浄槽80aにおいて洗浄処理が行われる。具体的には、移送部50が、第3染色槽70cから1枚のスライドガラス900を第1洗浄槽80aに移送し、所定の設定時間T4の間、第1洗浄槽80aにおいて洗浄処理が行われる。
【0083】
ステップS4において、移送部50が、スライドガラス900を第4染色槽70dまたは第5染色槽70e(図5参照)へ移送し、移送先の第4染色槽70dまたは第5染色槽70eで染色処理が行われる。
【0084】
具体的には、移送部50が、第1洗浄槽80aから1枚のスライドガラス900を、第4染色槽70dまたは第5染色槽70eに移送し、所定の設定時間T5の間、第4の染色液11に漬ける。
【0085】
ステップS5において、移送部50が、スライドガラス900を第2洗浄槽80b(図5参照)へ移送し、第2洗浄槽80bにおいて洗浄処理が行われる。具体的には、移送部50は、第4染色槽70dまたは第5染色槽70eから1枚のスライドガラス900を第2洗浄槽80bに移送し、所定の設定時間T6の間、第2洗浄槽80bにおいて洗浄処理が行われる。
【0086】
ステップS6において、移送部50が、スライドガラス900を乾燥機構20(図5参照)へ移送し、乾燥機構20においてスライドガラス900が乾燥される。スライドガラス900は、所定の設定時間T7の間、乾燥機構20において乾燥される。これにより、1枚のスライドガラス900に対する塗抹標本の染色処理が完了する。
【0087】
ステップS7において、移送部50が、乾燥機構20から染色処理が完了した1枚のスライドガラス900を取り出し、格納部106(図6参照)に移送する。以上のようにして、塗抹標本染色装置10の染色動作が行われる。
【0088】
[乾燥処理]
次に、図5および図8を参照して、乾燥処理について説明する。乾燥処理は、制御部91が行う。
【0089】
図8のステップS11において、制御部91は、第2洗浄槽80b(図5参照)に設定時間T6を経過したスライドガラス900があるか否かを判断する。第2洗浄槽80bに設定時間T6を経過したスライドガラス900がある場合、制御部91は、処理をステップS12に進める。一方、第2洗浄槽80bに設定時間T6を経過したスライドガラス900がない場合、制御部91は、処理をステップS15に進める。
【0090】
ステップS12において、制御部91は、送風部40が停止しているか否かを判断する。制御部91は、送風部40が停止している場合、処理をステップS13に進める。一方、制御部91は、送風部40が停止していない場合、処理をステップS14に進める。
【0091】
ステップS13において、制御部91は、送風部40を駆動させる。
【0092】
ステップS14において、制御部91は、スライドガラス900を第2洗浄槽80bから収納部30に1枚ずつ移動させる。
【0093】
ステップS15において、制御部91は、収納部30に設定時間T7を経過したスライドガラス900があるか否かを判断する。収納部30に設定時間T7を経過したスライドガラス900がある場合、制御部91は、処理をステップS16に進める。一方、収納部30に設定時間T7を経過したスライドガラス900がない場合、制御部91は、処理をステップS17に進める。
【0094】
ステップS16において、制御部91は、スライドガラス900を収納部30に移動させる。
【0095】
ステップS17において、制御部91は、第2洗浄槽80bにスライドガラス900があるか否かを判断する。第2洗浄槽80bにスライドガラス900がある場合、制御部91は、処理をステップS11に戻す。一方、第2洗浄槽80bにスライドガラス900がない場合、制御部91は、処理をステップS18に進める。
【0096】
ステップS18において、制御部91は、収納部30にスライドガラス900があるか否かを判断する。収納部30にスライドガラス900がある場合、制御部91は、処理をステップS15に戻す。一方、収納部30にスライドガラス900がない場合、制御部91は、処理をステップS19に進める。
【0097】
ステップS19において、制御部91は、送風部40を停止させる。
【0098】
以上のようにして、乾燥処理が行われる。
[風の流れのシミュレーション結果]
【0099】
次に、図4および図9を参照して、収納部30の内部における風の流れのシミュレーション結果について説明する。
【0100】
シミュレーション条件は、以下のように設定された。室温は20℃、湿度は30%に設定された。収納部30は、スライドガラス900を7枚収納されるように設定された。図9に示すスライドガラス900のうち染色液に浸される領域Rwには、0.1mmの厚さの水膜が存在するように設定された。なお、領域Rwは、塗抹部910を含む領域である。これらの条件下において、送風部40を5分間動作させ、スライドガラス900の乾燥状態を評価した。なお、図9では、矢印が太いほど流速が大きく、細いほど流速が小さいことを示している。また、ファン42は、シミュレーションのため、矩形状に図示されている。
【0101】
ヒータ60から収納部30の送込開口32に送り込まれる風は、ヒータ60と収納部30との接続部近傍において上下方向の全体に亘って、概ね均一な流速分布を有していることが確認された。
【0102】
収納部30に送り込まれた風は、X2側の内壁面30cに当たり、上方に向けた流れと下方に向けた流れとの二手に分岐することが確認された。
【0103】
挿入開口31では、風の流速が、X1側よりもX2側において大きいことが確認された。
【0104】
送出開口33では、風の流速が、上下方向の全体に亘って概ね均一であることが確認された。送出開口33における風の流速は、挿入開口31のX2側近傍における風の流速と概ね同じであることが確認された。
【0105】
窪み部35の近傍においても、X2側の内壁面30cと、スライドガラス900の側面900aとが接触しないことにより、風が通過することが確認された。
【0106】
傾斜部36の近傍では、送風部40から送込開口32を介して送り込まれた風が送出開口33に向けてガイドされることが確認された。
【0107】
シャフト34の近傍でも、風が通過しており、シャフト34により風の通過が阻害されないことが確認された。
【0108】
また、送風部40を5分間動作させると、7枚のスライドガラス900(図4参照)のうち、Y2側から1番目〜4番目および7番目のスライドガラス900は完全に乾燥することが確認された。7枚のスライドガラス900のうち、Y2側から5番目および6番目のスライドガラス900には、液だれしない極微量の水分が残っていることが確認された。確認された水分の残量は、スライドガラス900を格納部106に収納した場合にも、格納部106に液体が付着しない程度の残量である。
【0109】
以上から、スライドガラス900は、5分間の乾燥処理により、概ね乾燥することが確認された。
【0110】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0111】
10:塗抹標本染色装置、11:染色液、30:収納部、30a:第1側部、30b:第2側部、30c:内壁面、30d:外壁面、31:挿入開口、32:送込開口、33:送出開口、34:シャフト、35:窪み部、36:傾斜部、40:送風部、50:移送部、60:ヒータ、70、70a〜70e:染色槽、91:制御部、106:格納部、900:スライドガラス、900a:側面、910:塗抹部、W1:間隔、W2:幅、W3:幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9