(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂100重量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30重量部と、レーザーマーキング用添加剤0.1〜10重量部とを含み、
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、アルミニウムおよび亜鉛を含み、アルミニウムと亜鉛の合計量を100モル%としたとき、アルミニウムの含有量が15モル%以下である酸化物、あるいは、酸化錫を70重量%以上含み、かつ、アンチモンおよび錫を含む酸化物から選択される少なくとも1種を含み、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、無機繊維を10〜200重量部含み、
前記レーザーマーキング用添加剤は、銅とモリブデンとを含む酸化物、ならびに、ビスマスと、ガリウムおよび/またはネオジムとを含む酸化物から選択される少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本願明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0011】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂100重量部に対し、LDS添加剤1〜30重量部と、レーザーマーキング用添加剤0.1〜10重量部とを含み、LDS添加剤が、酸化錫を70重量%以上含むことを特徴とする。
【0012】
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂のアロイ、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂のアロイ、熱可塑性ポリエステル樹脂、メチルメタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂、メチルメタアクリレート/スチレン共重合樹脂、メチルメタアクリレート樹脂、ゴム強化メチルメタアクリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0013】
本発明では、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく用いられ、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
ポリアミド樹脂は、その分子中に酸アミド基(−CONH−)を有する、加熱溶融できるポリアミド重合体である。具体的には、ラクタムの重縮合物、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物との重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、またはこれらの共重合ポリアミド樹脂やブレンド物等である。
【0015】
ポリアミド樹脂の重縮合の原料であるラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
【0016】
ジアミン化合物としては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、(2,2,4−または2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環式、芳香族のジアミン等が挙げられる。
【0017】
ジカルボン酸化合物としては、例えば、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環式、芳香族のジカルボン酸等が挙げられる。
【0018】
ω−アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸が挙げられる。
【0019】
これらの原料から重縮合されてなるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT等が挙げられる。本発明においては、これらポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0020】
上述のようなポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、またはα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とキシリレンジアミンとの重縮合で得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(MXナイロン)がより好ましく使用される。これらの中でも、さらにMXナイロンが、耐熱性、難燃性の観点から好ましい。また、ポリアミド樹脂が混合物である場合には、ポリアミド樹脂中のMXナイロンの比率が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。
【0021】
MXナイロンは、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド9T等の脂肪族系ポリアミド樹脂に比べ結晶化速度がやや遅いため、MXナイロンを使用する場合は、成形サイクルを短縮するために、MXナイロンに脂肪族系ポリアミド樹脂を配合して用いることが好ましい。成形サイクル短縮の目的で配合する場合に用いられる脂肪族系ポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド9T等の結晶化速度の速いポリアミド樹脂や、ポリアミド66/6T、66/6T/6I等の高融点のポリアミド樹脂が挙げられ、経済性の観点からポリアミド66またはポリアミド6が好ましい。成形性および物性のバランスから、その脂肪族系ポリアミド樹脂の含有率は、全ポリアミド樹脂中の50重量%未満が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。脂肪族系ポリアミド樹脂の含有率を50重量%未満にすることにより、耐熱性をより良好に保つことができる。
【0022】
MXナイロンの原料であるα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸の中では、炭素数6〜20のα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸等が好適に使用できる。これらのα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸の中でも、成形性、成形品性能等のバランスを考慮すると、セバシン酸が特に好適である。
【0023】
MXナイロンのもうひとつの原料に使用するキシリレンジアミンとは、メタキシリレンジアミン、もしくはパラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンとの混合キシリレンジアミンである。混合キシリレンジアミン中のメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)は55/45〜100/0が好ましく、70/30〜100/0がより好ましい。パラキシリレンジアミンのモル比率を45モル%未満とすることにより、ポリアミド樹脂の融点を低く保ち、MXナイロンの重合やMXナイロンを含む組成物の成形加工が容易になるため好ましい
【0024】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、特開2010−174223号公報の段落番号0013〜0016の記載を参酌することができ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。例えば、ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が60重量%以上、好ましくは80重量%以上を占める混合物が挙げられる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中における熱可塑性樹脂の配合量は、合計で35重量%以上とすることが好ましく、40重量%以上とすることがより好ましい。
【0026】
<LDS添加剤>
本発明におけるLDS添加剤は、熱可塑性樹脂(例えば、後述する実施例で合成しているポリアミド樹脂)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を10重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力13W、周波数20kHz、スキャン速度2m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製MIDCopper100XB Strikeのメッキ槽にて実施し、該レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品は、LDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。
【0027】
本発明で用いるLDS添加剤の第1の実施形態は、酸化錫を主成分とし、酸化錫を70重量%以上含むものであり、酸化錫を75重量%以上含むものが挙げられる。
【0028】
第1の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンおよび/またはリンと、錫とを含む酸化物、好ましくはアンチモンと錫とを含む酸化物である。このようなLDS添加剤を用いることにより、樹脂成形品のメッキ特性を向上させることができるため、樹脂成形品の表面にメッキを適切に形成することができる。LDS添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
第1の実施形態のLDS添加剤は、錫の配合量がリンおよび/またはアンチモンの配合量よりも多いものがより好ましく、錫とリンとアンチモンの合計量に対する錫の量が、80重量%以上であることがより好ましい。
【0030】
特に、第1の実施形態のLDS添加剤としては、アンチモンと錫とを含む酸化物が好ましく、錫の配合量がアンチモンの配合量よりも多いものがより好ましく、錫とアンチモンの合計量に対する錫の量が、80重量%以上であることがより好ましい。
【0031】
具体的には、第1の実施形態のLDS添加剤としては、例えば、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、リン酸化物がドープされた酸化錫が挙げられ、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化アンチモンがドープされた酸化錫が好ましく、酸化アンチモンがドープされた酸化錫がより好ましい。例えば、リンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、1〜20重量%であることが好ましい。また、アンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、アンチモンの含有量は、1〜20重量%であることが好ましい。また、リンとアンチモンと酸化錫とを含むLDS添加剤において、リンの含有量は、0.5〜10重量%、アンチモンの含有量は、0.5〜10重量%であることが好ましい。
【0032】
本発明の第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×10
3Ω・cm以下の導電性酸化物を含むことが好ましい。導電性酸化物の抵抗率は、8×10
2Ω・cm以下が好ましく、7×10
2Ω・cm以下がより好ましく、5×10
2Ω・cm以下がさらに好ましい。下限については特に制限はないが、例えば、1×10
1Ω・cm以上とすることができ、さらには、1×10
2Ω・cm以上とすることができる。
本発明における導電性酸化物の抵抗率は、通常、粉末抵抗率をいい、導電性酸化物の微粉末10gを、内面にテフロン加工を施した内径25mmの円筒内へ装入して100kg/cm
2に加圧し(充填率20%)、横河電機製の「3223型」テスターで測定することができる。
【0033】
第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、抵抗率が5×10
3Ω・cm以下の導電性酸化物を含んでいれば特に制限されないが、少なくとも2種類の金属を含むことが好ましく、具体的には、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属とn+1族の金属を含むことが好ましい。nは10〜13の整数が好ましく、12または13がさらに好ましい。
第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中における、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属の含有量とn+1族の金属の含有量の合計を100モル%としたとき、一方の金属の含有量が15モル%以下であることが好ましく、12モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることが特に好ましい。下限については特に制限はないが、0.0001モル%以上である。2種類以上の金属の含有量をこのような範囲とすることで、メッキ性を向上させることができる。本発明では特に、n+1族の金属がドープされたn族の金属酸化物が好ましい。
さらに、第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中に含まれる金属成分の98重量%以上が、上記周期表のn族の金属の含有量とn+1族の金属で構成されることが好ましい。
【0034】
周期表のn族の金属としては、例えば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(同、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、スズなど)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)、これらの金属酸化物などが挙げられる。中でも、12族(n=12)の金属または金属酸化物が好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0035】
周期表のn+1族の金属としては、例えば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(同、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、スズなど)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)、これらの金属酸化物などが挙げられる。中でも、13族(n+1=13)の金属または金属酸化物が好ましく、アルミニウムまたはガリウムがより好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
【0036】
第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、導電性金属酸化物以外の金属を含有していてもよい。導電性酸化物以外の金属としては、アンチモン、チタン、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、LDS添加剤に対してそれぞれ0.01重量%以下が好ましい。
なお、第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、L値を向上させる観点から、アンチモンの含有量は、LDS添加剤に対して3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以下であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。実質的に含まないとは、本発明の効果に影響を与える範囲内で含まないことを意味する。
【0037】
本発明で用いるLDS添加剤の平均粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることがより好ましい。このような平均粒子径とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性をより良好にすることができる。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、LDS添加剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、1〜30重量部であり、好ましくは2〜25重量部であり、より好ましくは10〜22重量部である。LDS添加剤の配合量をこのような範囲にすることによって、メッキ特性をより良好にすることができる。また、後述するように、LDS添加剤とともにタルクを用いることにより、LDS添加剤の添加量を少なくした場合にも、メッキ形成をすることが可能になる。
【0039】
<レーザーマーキング用添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、レーザーマーキング用添加剤を含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、LDS添加剤とともにレーザーマーキング用添加剤を配合することによって、レーザーマーキング用添加剤を含まない熱可塑性樹脂組成物と比較して、レーザーを容易に吸収する。そのため、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成形品としたときに、レーザーが照射された樹脂成形品の表面部分の樹脂が除去され、LDS添加剤を表出させることができる。表出されたLDS添加剤はレーザーが照射されやすくなり、結果として、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来よりも幅広いレーザーの照射条件でも、樹脂成形品の表面に適切にメッキ層を形成することができるようになる。特に、レーザーの照射量が少なくてもメッキを形成できることから、生産性を向上させることが可能になる。
【0040】
本発明で用いるレーザーマーキング用添加剤は、特に限定されるものではない。例えば、後述する実施例で採用するPAMP6樹脂にレーザーマーキング添加剤と思われる添加剤を2重量部添加し、200μmの厚さのフィルムをプレスで成形し、得られたフィルムの下にカーボンブラックを添加したプレートを敷いて、所定条件のレーザーを当てた際、フィルム表面に印字が可能で、カーボンブラックを添加したプレートに印字がされないことを達成できるものが挙げられる。
このようなレーザーマーキング用添加剤としては、具体的には、銅とモリブデンとを含む酸化物や、ビスマスと、ガリウムおよび/またはネオジムとを含む酸化物や、雲母の薄片状基質に、アンチモン、砒素、ビスマス、銅、ガリウム、ゲルマニウムまたはそれらの酸化物をドープした酸化錫を被覆した顔料や、水酸化銅一燐酸塩または酸化モリブデンを添加した高分子物質が挙げられる。また、レーザーマーキング用添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
これらのレーザーマーキング用添加剤のなかでも、銅とモリブデンとを含む酸化物、ならびに、ビスマスと、ガリウムおよび/もしくはネオジムとを含む酸化物から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましく、特に、銅とモリブデンとを含む酸化物が好ましい。銅とモリブデンとを含む酸化物としては、CuMoO
4が好ましい。また、ビスマスと、ガリウムおよび/またはネオジムとを含む酸化物としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
Bi
(1-x)M
xO
y 一般式(1)
((1)式中、Mはガリウムおよび/またはネオジムであり、xおよびyはそれぞれ0.001<x<0.5、1<y<2.5の関係を有する値である。)
【0042】
上述の他、本発明で用いるレーザーマーキング用添加剤としては、特開2007−146059号公報、特開2008−045051号公報、特開2009−102541号公報、特開2010−095396号公報、特開2010−194906号公報などに記載のものが挙げられ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明で用いるレーザーマーキング用添加剤の平均粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、レーザーマーキング用添加剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常0.05〜10重量部であり、好ましくは0.1〜8重量部であり、より好ましくは0.5〜6重量部である。
【0045】
<無機繊維>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、無機繊維をさらに含んでいてもよい。無機繊維を配合することによって、機械的強度をより向上させることができる。また、無機繊維を配合することによって、寸法精度もより向上させることができる。無機繊維は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、ミルドファイバー、アルミナ繊維、チタン酸カリウムウィスカー等、金属繊維として、スチール繊維、ステンレス繊維等が挙げられるが、特に、ガラス繊維が好ましい。
【0047】
本発明で好ましく使用されるガラス繊維は、平均直径が20μm以下のものが好ましく、さらに1〜15μmのものが、物性バランス(強度、剛性、耐熱剛性、衝撃強度)をより一層高める点、並びに成形反りをより一層低減させる点で好ましい。また、通常断面形状が円形のガラス繊維が一般的に用いられることが多いが、本発明では、特に限定されず、例えば断面形状がまゆ形、楕円形、矩形の形状においても同様に使用できる。
【0048】
ガラス繊維の長さは特に限定されず、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)等から選択して用いることができる。このようなタイプのガラス繊維における集束本数は、100〜5000本程度であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物を混練した後の熱可塑性樹脂組成物中のガラス繊維の長さが平均0.1mm以上で得られるならば、いわゆるミルドファイバー、ガラスパウダーと呼ばれるストランドの粉砕品でもよく、また、ガラス繊維は、連続単繊維系のスライバーのものでもよい。
【0049】
原料ガラスの組成は、無アルカリのものが好ましく、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス等が挙げられるが、本発明では、Eガラスが好ましい。ガラス繊維は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましく、その付着量は、通常、ガラス繊維重量の0.01〜1重量%である。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウンム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、無機繊維の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常10〜200重量部であり、好ましくは20〜180重量部であり、より好ましくは30〜150重量部である。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物では、熱可塑性樹脂と、無機繊維とで、全成分の80重量%以上を占めることが好ましい。
【0051】
<タルク>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、タルクをさらに含んでいてもよい。タルクを配合することによって、寸法安定性、製品外観を良好にすることができ、また、LDS添加剤の添加量を減らしても、樹脂成形品のメッキ特性を良好にすることができ、樹脂成形品に適正なメッキを形成することができる。タルクは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類およびオルガノポリシロキサン類から選択される化合物の少なくとも1種で表面処理されたものを用いてもよい。この場合、タルクにおけるシロキサン化合物の付着量は、タルクの0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、タルクの配合量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜50重量部であることが好ましく、1〜30重量部であることがより好ましく、5〜15重量部であることがさらに好ましい。また、タルクがシロキサン化合物で表面処理されている場合には、シロキサン化合物で表面処理されたタルクの配合量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0053】
<エラストマー>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エラストマーさらに含んでいてもよい。このように、エラストマーを含有することによって、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることができる。
【0054】
本発明に用いるエラストマーは、ゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0055】
ゴム成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−α−オレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
【0056】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0057】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。なお、本発明におけるコア/シェル型とは必ずしもコア層とシェル層が明確に区別できるものでは無なくてもよく、コアとなる部分の周囲にゴム成分をグラフト重合して得られる化合物を広く含む趣旨である。
【0058】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるエラストマーの含有量は、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜25重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。
【0060】
<離型剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤をさらに含有していてもよい。離型剤は、主に、樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド系、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの離型剤の中では、特に、カルボン酸アミド系化合物が好ましい。
【0061】
脂肪族カルボン酸アミド系としては、例えば、高級脂肪族モノカルボン酸および/または多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が挙げられる。
【0062】
高級脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0063】
多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0064】
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0065】
カルボン酸アミド系化合物としては、ステアリン酸とセバシン酸とエチレンジアミンを重縮合してなる化合物が好ましく、ステアリン酸2モルとセバシン酸1モルとエチレンジアミン2モルを重縮合させた化合物がさらに好ましい。また、N,N'−メチレンビスステアリン酸アミドやN,N'−エチレンビスステアリン酸アミドのようなジアミンと脂肪族カルボン酸とを反応させて得られるビスアミド系化合物の他、N,N'−ジオクタデシルテレフタル酸アミド等のジカルボン酸アミド化合物も好適に使用し得る。
【0066】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0067】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0068】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0069】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0070】
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5000以下である。
【0071】
離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂とガラス繊維との合計100重量部に対して、通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上であり、また、通常2重量部以下、好ましくは1.5重量部以下である。離型剤の含有量を、熱可塑性樹脂とガラス繊維との合計100重量部に対して、0.001重量部以上とすることによって、離型性を良好にすることができる。また、離型剤の含有量を、熱可塑性樹脂とガラス繊維との合計100重量部に対して、2重量部以下とすることによって、耐加水分解性の低下を防止することができ、また、射出成形時の金型汚染を防止することができる。
【0072】
<アルカリ>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらにアルカリを含んでいてもよい。本発明で用いるLDS添加剤が酸性物質(例えば、pH6以下)の場合に、組み合わせによって自身が還元することで色目がまだら模様となる場合があるが、アルカリを添加することによって、得られる樹脂成形品の色あいをより均一にすることができる。
【0073】
アルカリの種類は、特に限定されず、例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)や水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)を用いることができる。アルカリは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、アルカリの配合量は、LDS添加剤の種類及びアルカリの種類にもよるが、好ましくはLDS添加剤の配合量の0.01〜15重量%であり、より好ましくはLDS添加剤の配合量の1〜10重量%である。
【0075】
<その他の添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、熱安定剤、難燃剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、などが挙げられる。これらの成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、熱可塑性樹脂と、LDS添加剤と、ガラス繊維とをV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調整した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、ガラス繊維以外の成分等を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットとガラス繊維を混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
【0077】
さらに、ガラス繊維以外の成分等を、V型ブレンダー等で十分混合したものを予め調整しておき、この混合物をベント付き二軸押出機の第一シュートより供給し、ガラス繊維は押出機途中の第二シュートより供給して溶融混練、ペレット化する方法が挙げられる。
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
【0078】
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
【0079】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常180〜360℃の範囲から適宜選択することができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。そのため、剪断発熱等を考慮したスクリュー構成を選定することが望ましい。また、混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する観点から、酸化防止剤や熱安定剤を使用することが望ましい。
【0080】
樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
【0081】
<メッキ層付樹脂成型品の製造方法>
次に、本発明のメッキ層付樹脂成型品の製造方法、具体的には、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形した樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を
図1に従って説明する。
【0082】
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。
図1において、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品1には、最終製品に限定されず、各種部品も含まれる。
【0083】
本発明における樹脂成形品1としては、携帯電子機器部品が好ましい。携帯電子機器部品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいという特徴を有し、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物及び筐体として極めて有効である。特に、成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の携帯電子機器用部品に適しており、中でも筐体として特に適している。
再び
図1に戻り、本発明のメッキ層付樹脂成型品の製造方法においては、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。
【0084】
レーザー2は、特に限定されるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、特にYGAレーザーが好ましい。また、レーザー2の波長も特に限定されるものではない。好ましいレーザー2の波長範囲は、200nm〜1200nmであり、特に好ましくは800〜1200nmである。
【0085】
レーザー2が樹脂成型品1に照射されると、レーザー2が照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。このように活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
【0086】
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に限定されないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品1は、レーザー2を照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
【0087】
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。かかる回路は携帯電子機器部品のアンテナとして好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂成形品1の好ましい実施形態の一例として、携帯電子機器部品の表面に設けられたメッキ層が、アンテナとしての性能を保有する樹脂成形品が挙げられる。
【0088】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0090】
<ポリアミド樹脂>
(ポリアミド(PAMP10)の合成)
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP10」という。
【0091】
(ポリアミド(PAMP6)の合成)
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP6」という。融点は、256℃であった。
【0092】
<LDS添加剤>
T−1−20L:錫−アンチモン酸化物(SnO
2:80%、Sb
2O
5:20%、アンチモン含有量:15.1重量%)、水分率1.5%、pH=3.4)(三菱マテリアル(株)社製)
23K:ハクスイテック製、アルミニウムドープ酸化亜鉛、抵抗率(製品規格値)100〜500Ω・cm
【0093】
<レーザーマーキング用添加剤>
42−903A:銅とモリブデンとを含む酸化物(CuMoO
4)、粒径1.5μm(東罐マテリアル・テクノロジー(株)製)
42−920A:ビスマスとネオジムとを含む酸化物(Bi
2O
3:98〜99%、Nd
2O
3:0.3〜1%)、粒径1.0μm(東罐マテリアル・テクノロジー(株)製)
【0094】
<無機繊維>
03T−296GH:ガラス繊維(日本電気硝子製)
【0095】
<タルク>
ミクロンホワイト5000S(林化成製)
【0096】
<エラストマー>
SEBS:FT1901GT(クレイトン製)
【0097】
<離型剤>
CS8CP(日東化成工業製)
【0098】
<アルカリ>
Ca(OH)
2【0099】
<タルク>
MW5000S:タルク、林化成製
【0100】
<コンパウンド>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、無機繊維を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、無機繊維をサイドフィードして樹脂ペレットを作成した。押出機の温度設定は、280℃にて実施した。
【0101】
<メッキ特性(実施例1〜3、比較例1)>
金型として60×60mmで厚みの2mmのキャビティに、樹脂温280℃、金型温度110℃で、幅60mmが1.5mm厚みのファンゲートから樹脂を充填して成形を行った。ゲート部分をカットし、プレート試験片を得た。
得られたプレート試験片の10×10mmの範囲に、Trumpf製、VMc1のレーザー照射装置(波長1064nmのYAGレーザー最大出力15W)を用い、出力(Power)6Wまたは8Wで、周波数(Frequency)60kHzまたは80kHz、スキャン速度4m/sにて照射した。その後のメッキ工程は無電解のEnthone社製、ENPLATE LDS CU 400 PCの48℃のメッキ槽にて実施した。メッキ性能は20分間にメッキされた銅の厚みを目視にて判断した。
【0102】
メッキ特性は、レーザー条件幅およびPlating外観について以下の通り評価した。結果を下記表1に示す。
<<レーザー条件幅>>
○:どの条件でも均一にメッキが乗る
△:一部の条件で均一にメッキが乗らない(実用レベル)
×:半分以上の条件で均一にメッキが乗らない
<<Plating外観>>
上記の4条件(レーザー照射条件の出力および周波数について、出力6Wで周波数60kHz、出力6Wで周波数80kHz、出力8Wで周波数60kHz、出力8Wで周波数80kHz)の中から最も外観が良いものについて以下の通り評価した。
○:良好な外観(銅の色も濃くメッキが厚く乗っている様子が確認された)
△:メッキは乗っているが若干薄い様子(実用レベル)
×:全くメッキが乗らない様子
【0103】
<メッキ特性(実施例4、5、比較例2)>
金型として60×60mmで厚みの2mmのキャビティに、樹脂温280℃、金型温度110℃で、幅60mmが1.5mm厚みのファンゲートから樹脂を充填して成形を行った。ゲート部分をカットし、プレート試験片を得た。
上記2mmtのプレート試験片を用いてメッキ性を評価した。5mm×5mmの範囲に、SUNX(株)製LP−Z SERIESのレーザー照射装置(波長1064nmのYAGレーザー最大出力13W)を用い、(1)出力20%、パルス周期20μs(マイクロ秒)、(2)出力20%、パルス周期50μs、(3)出力80%、パルス周期20μs、(4)出力80%、パルス周期50μs、スキャン速度2m/sにて照射した。その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製、MIDCopper100XB Strikeを用い、60℃のメッキ槽にて60分間実施した。
上記と同様にレーザー条件幅およびPlating外観を評価した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表1の結果から明らかな通り、実施例1〜3で得られた熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂100重量部に対し、LDS添加剤1〜30重量部と、レーザーマーキング用添加剤0.1〜10重量部とを含み、LDS添加剤が酸化錫を70重量%以上含むため、幅広い照射条件でメッキが形成でき、優れたPlating外観を達成していることがわかる。
【0107】
一方、比較例1で得られた熱可塑性樹脂組成物は、レーザーマーキング用添加剤を含んでいないため、実施例1〜3と比較して、メッキが適切に形成できる照射条件の制限が大きいことがわかる。
【0108】
表2の結果から明らかなとおり、実施例4、5で得られた熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂100重量部に対し、LDS添加剤1〜30重量部と、レーザーマーキング用添加剤0.1〜10重量部とを含み、LDS添加剤が酸化錫を70重量%以上含むため、比較的幅広い照射条件でメッキが形成でき、優れたPlating外観を達成していることがわかる。
【0109】
一方、比較例2で得られた熱可塑性樹脂組成物は、レーザーマーキング用添加剤を含んでいないため、実施例4、5と比較して、メッキが適切に形成できる照射条件の制限が大きいことがわかる。
【0110】
このように、本発明によれば、より幅広い照射条件で、樹脂成形品の表面にメッキ層を適切に形成することができる熱可塑性樹脂組成物を提供できることがわかった。したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面にメッキ層を形成する際の生産性を向上させることができる。