【文献】
The Journal of Biological Chemistry ,2010年,vol.285,no.51,p.40362-40372
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ZAPは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドに特異的に結合し、及びセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドを活性化させる、請求項1から5の何れか一項に記載の単離されたZAP。
担体は、生分解性ポリマー(例えば、PEG、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらの共重合体、炭水化物、デンプン、セルロース、キチン、及びリグニン又はポリペプチド担体(例えば、Fc及び血清アルブミン))である、請求項10に記載のZAP融合体。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】HGFタンパク質。N末端のRANドメイン(N)、4つのクリングルドメイン(K1−K4)及びC末端のトリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメイン(SP)を示すHGFドメインのトポロジーの模式図。プロHGFのArg
494−Val
495ペプチド結合の切断は活性化された二本鎖HGFを生じる。切断不可能な変異を含む組換えタンパク質は反転した黒三角で示されている。
【
図2】プロHGFの活性化のモデル。正常な状況下では、プロHGFはHGFの2本鎖活性形態へとタンパク質分解性切断を受ける(「タンパク質分解活性化」経路)。HGFの正常なタンパク質分解活性化が損なわれた疾患では、活性様形態(プロHGF*)をアロステリックに誘導することができるプロHGFに結合する分子(スティックと「+」を含む円)は、プロHGFの可逆的活性化(「アロステリック活性化」経路)を提供する有用な治療薬である。
【
図3】Metと複合体形成したHGFのβ鎖の構造の表面表示((Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35), PDB 1SHY)。スティック表示で示されるのは、活性化ポケットに挿入したHGFのβ鎖のN末端の最初の8残基(VVNGIPTR)(配列番号30)であり、酸素、窒素、及び炭素が描かれている。Val
495のN末端は、活性化ポケットへの挿入によりAsp
672の側鎖と塩橋を形成し;これらはキモトリプシノーゲンの番号付けでそれぞれ残基19及び194に相当する。
【
図4】scHGFβアロステリック活性化(A)遺伝子−VIIIペプチド(配列番号117)ファージライブラリー設計のためのライブラリーの設計及びコンセンサス配列。(B)scHGFβのファージング(phaging)後に得られたコンセンサス配列プロファイルはロゴ表示として要約される(http://weblogo.threeplusone.com/create.cgi)。(C)scHGFβの活性化因子ペプチド配列モチーフ(配列番号114)。
【
図5】scHGFβのMetへの結合を活性化する合成ペプチドの結合親和性。(A)scHGFβのアロステリック活性化を示すペプチドの滴定(B)scHGFβのアロステリック活性化を失ったペプチドの滴定。
【
図6】BxPC−3細胞生存アッセイ。(A)HGF(400ng/mlの)を強力に細胞生存を刺激することができるが、一方scHGF(400ng/mlの)は全く活性を有さない。(B)scHGFのペプチド滴定はscHGFのアロステリック活性化を示し、IVGG.14(黒)、IVdG.14(濃いグレー)、及びIVDG.14(ライトグレー)の細胞の生存を誘発する。IVGG.14及びIVdG.14の両方がパネル(A)中のHGFと同様のレベルまでscHGFを活性化することができる。
【
図7】プロHGF活性化因子ペプチドの修飾されたコンセンサスモチーフ(配列番号111)。最初の4つの位置は、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインのN末端で通常見出される残基を含むように伸長された。位置5は、同様の疎水性残基を含むように修飾されている。
【
図8】HGFβV495Gの活性化ポケット(ライトグレー)と結合したIVGG.14活性化因子(濃いグレー)の結晶構造。(A)IVGG.14の全体の「S字」構造が2つの逆向ターンモチーフによって作られ、活性化ポケットへの侵入及びタンパク質の表面への結合を可能とする。(B)静電(N−term.塩橋)、疎水性(Ile1及びval2)、水素結合(点線黒線)及びファンデルワールス(PWWMモチーフ)相互作用の組み合わせが、特異的な結合及びアロステリック活性化に寄与している。
【
図9】構造に誘導されたライブラリー設計及び活性に基づくファージ選別。(A)ファージ遺伝子VIIIのN末端に融合し及び構造的情報及び選択的ランダム化に基づいて設計された、最適化された15量体ペプチドライブラリー。(B)対照の溶液選別から96ファージクローン(直接結合選別)、又は活性に基づいた選別からの96個のクローン(活性に基づく選別)の2次元のELISAの結果。scHGFβに対するファージの特異的結合からのELISAシグナルは、y軸に沿ってプロットされ、一方scHGFβ依存性Met捕捉からのELISAシグナルは、x軸に沿ってプロットされる。(C)活性に基づく選別から派生したユニークな線状及び環状配列。
【
図10】MetへのscHGFβの結合を活性化する最適化された15量体の線形(ZAP.01、菱形)および環状(ZAP.03、四角)合成ペプチドの見かけの結合親和性。ZAP.03の高親和性結合はN末端のイソロイシンのグリシンへの置換(ZAP.03G、円)、又はジスルフィドを除去するシステインのセリンへの置換(ZAP.03S、三角形)何れかの際に損なわれている。
【
図11】BxPC−3細胞生存アッセイ。(A)HGF(200ng/ml)を強力に細胞生存を刺激することができるが、一方scHGF(200ng/ml)は全く活性を有さない。(B)scHGFのペプチド滴定はscHGFのアロステリック活性化を示し、ZAP.03(黒)、ZAP.01(濃いグレー)、及びIVGG.14(ライトグレー)の細胞の生存を誘発する。低マイクロモル濃度のペプチドでさえも、ZAP.03は、パネル(A)中のHGFと同様のレベルまでscHGFを活性化することができる。
【
図12】チモーゲンセリンプロテアーゼのペプチド活性化。IVGG.147Aの滴定は、2mMのトリペプチド基質Ile−Pro−Arg−pNAの存在下でプレトロンビン2(白丸)及びプロテインC(黒丸)の基質加水分解の速度を高める。
【
図13】HGFβV495Gの活性化ポケット(ライトグレー)と結合したZAP.03活性化因子(濃いグレー)の結晶構造。(A)新規環状モチーフは、以前はIVGG.14においてチロシンであった、位置5に対してZAP.03のC末端を連結するジスルフィド結合によって安定化される。(B)ZAP.03は、IVGG.14と類似の静電(N−末端、塩橋)、疎水性(Ile1及びIlel2)、及び水素結合(点線黒線)相互作用を共有するが(
図8)、しかし、より高い結合親和性及び強化された拡張因子の機能に寄与する環状モチーフによって提供される付加的水素結合を含む。
【0022】
詳細な説明
本明細書に提供されるのは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に結合することができ、そしてセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を活性化させる、チモーゲン活性化分子(例えば、チモーゲン活性化ペプチド(ZAP))、及びチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を同定し使用するための方法である。例えば、本明細書に提供されるのは、HGFにより、特にプロHGFのβ鎖ドメインと相互作用することによりc−Metの活性化を調節することができる、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)、及びチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を同定し使用するための方法である。1つの態様において、これらのチモーゲン活性化分子は、様々な親和性で、プロHGFのβ鎖ドメインと相互作用し、c−Metシグナル伝達を活性化することができるチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の同定をもたらすコンビナトリアルアプローチによって生成される。これらのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の同定、及びプロHGFのβ鎖ドメイン及びチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)との間の結合相互作用の構造ダイナミックスは、本明細書に広く記載されるように、更に、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメイン及び/又はトリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドと相互作用することができる他のモジュレーターを同定する手段を提供する。様々な細胞及び生理学的プロセスにおける、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼ及びトリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼ様タンパク質、例えばHGFの重要性の観点から、これらのモジュレーターは、例えば予防的、治療的及び/又は診断の設定において、非常に有用である可能性がある。
【0023】
一般的な技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内である(組換え技術を含む)分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来技術を使用するであろう。そのような技術は文献、例えば、“Molecular Cloning: A Laboratory Manual", second edition (Sambrook et al., 1989); “Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait, ed., 1984); “Animal Cell Culture" (R. I. Freshney, ed., 1987); “Methods in Enzymology" (Academic Press, Inc.); “Current Protocols in Molecular Biology" (F. M. Ausubel et al., eds., 1987, 及び定期的な更新);“PCR: The Polymerase Chain Reaction", (Mullis et al., ed., 1994); “A Practical Guide to Molecular Cloning" (Perbal Bernard V., 1988)に完全に説明がなされている。
【0024】
本発明に用いられ及び記載されるオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド及び小分子は、当技術分野で公知の標準的な技術を用いて生成することができる。
【0025】
定義
「単離される」とは、分子に対して言及される場合、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収された分子を指す。その自然環境の汚染成分は、診断又は治療的使用を妨害する物質である。
【0026】
本明細書使用される「制御配列」は、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現を可能にするDNA配列である。原核生物の制御配列は、プロモーター、オペレーター配列、及びリボソーム結合部位が含まれる。真核生物の制御配列は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーが含まれる。
【0027】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係に分類されるときに「作動可能に連結」している。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に作動可能に連結され、またはリボソーム結合部位は翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結」とは、連結するDNA配列が近接しており、及び分泌リーダーの場合には、近接しており読み段階にあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。
【0028】
「活性」ポリペプチド又はその断片は、活性ポリペプチドの天然又は天然に存在する対応物の生物学的活性を保持する。生物学的活性は、活性ポリペプチドの天然又は天然に存在する対応物によって媒介される機能を指す。例えば、結合又はタンパク質−タンパク質相互作用は、生物学的活性を構成する。
【0029】
「親和性」とは、分子の単一の結合部位(例えば、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP))とその結合パートナー(例えば、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメイン、例えば、HGFのβ鎖ドメインを含むポリペプチド)との間の非共有相互作用の総和での強さを指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、ZAP及びHGFのβ鎖ドメイン)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例示であって典型的な実施態様は、以下で説明される。
【0030】
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。幾つかの実施態様において、抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化、及び/又は親和性成熟型であり得る。
【0031】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原を結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0032】
参照抗体として「同一のエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいて50%以上、参照抗体のその抗原への結合をブロックする抗体、逆に競合アッセイにおいて50%以上、その抗体のその抗原への結合をブロックするその参照抗体を指す。典型的な競合アッセイが、本明細書において提供される。
【0033】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種から由来し、一方重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる起源又は種から由来する抗体を指す。
【0034】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラスがあり:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、及びこれらの幾つかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2に、IgG
3、IgG
4、IGA
1、及びIgA
2に分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0035】
任意の脊椎動物種からの抗体の軽鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
【0036】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、即ち、例えば、天然に生じる変異を含み、又はモノクローナル抗体製剤の製造時に発生し、一般的に少量で存在している変異体などの、可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を一般的に含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。従って、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作成され、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0037】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種から由来し、一方重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる起源又は種から由来する抗体を指す。
【0038】
「ヒト化」抗体は、非ヒト超可変領域(HVR)由来のアミノ酸残基、及びヒトプレームワーク領域(FR)由来アミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。所定の実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、HVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体のものに対応し、全てまたは実質的にFRの全てが、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を遂げた抗体を指す。
【0039】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞により産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー又は他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のそれに対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0040】
「親和性成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じせしめる、その一又は複数のHVRにおいて一又は複数の改変を持つものである。
【0041】
「エピトープタグ」ポリペプチドは、「タグポリペプチド」に融合したキメラポリペプチドを指す。そのようなタグは、抗体が作ることができるか又は利用可能であるが、しかし、実質的にポリペプチド活性を妨害しないエピトープを提供する。内因性のエピトープとの抗タグ抗体反応性を低減するために、タグポリペプチドは通常固有である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基、好ましくは8から20のアミノ酸残基を有する。エピトープタグ配列の例には、インフルエンザAウイルスからのHA、GD、及びc−myc、ポリHis及びFLAGを含む。
【0042】
本明細書において交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体(アナログ)、又はDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、もしくは合成応答によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質とすることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組立ての前又は後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されていてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば標識との結合など、合成後に更に修飾され得る。他のタイプの修飾には、例えば「キャップ(caps)」、類似体との自然に生じたヌクレオチドの一又は複数の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダート、カルバマート等)及び荷電連結(ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート等)を有するもの、ペンダント部分、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リジン等)を含むもの、インターカレータ(intercalators)を有するもの(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された連結を含むもの(例えばアルファアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態が含まれる。更に、糖類中に通常存在する任意のヒドロキシル基は、例えばホスホナート基、ホスファート基で置き換えられてもよく、標準的な保護基で保護されてもよく、又は付加的なヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化されてもよく、もしくは固体又は半固体担体に結合していてもよい。5’及び3’末端のOHはホスホリル化可能であり、又は1〜20の炭素原子を有する有機キャップ基部分又はアミンで置換することもできる。また他のヒドロキシルは標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のものをさらに含み得、これらには例えば2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ又は2’−アジド−リボース、炭素環式糖の類似体、α−アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び非塩基性ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドが含まれる。一又は複数のホスホジエステル連結は代替の連結基で置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されるものではないが、ホスフェート(phosphate)がP(O)S(「チオアート(thioate)」)、P(S)S(「ジチオアート(dithioate)」)、「(O)NR
2(「アミダート(amidate)」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH
2(「ホルムアセタール(formacetal)」)と置き換えられた実施態様のものが含まれ、ここでそれぞれのR及びR’は独立してH又は、エーテル(−O−)結合を含んでいてもよい置換もしくは未置換のアルキル(1−20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記述は、RNA及びDNAを含むここで引用される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0043】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは、短く、一般的に単鎖であり、また必ずしもそうではないが、一般的に約200未満のヌクレオチド長さの、一般的に合成のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、相互に排他的なものではない。ポリヌクレオチドについての上述した記載はオリゴヌクレオチドと等しく、十分に適用可能である。
【0044】
本明細書で使用する「チモーゲン活性化分子」とは、直接的または間接的に、実質的に、完全に又は部分的に、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の生物学的活性、又はセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメイン(例えば、c−Met)を含むポリペプチドの標的の活性化を誘導、促進、又は増強することが可能である任意の分子を含む。
【0045】
本明細書で使用する「チモーゲン活性化ペプチド」又は「ZAP」とは、直接的または間接的に、実質的に、完全に又は部分的に、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の生物学的活性、又はセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメイン(例えば、c−Met)を含むポリペプチドの標的の活性化を誘導、促進、又は増強することが可能である任意のペプチドを含む。
【0046】
「小分子」は、例えば、約5kD未満、4kD未満、及び0.6kD未満の分子量を有する組成物を指す。
【0047】
用語「ペプチド」は、一般に、ペプチジル結合によって結合したアミノ酸の連続する比較的短い配列を指す。典型的には、必ずしもそうではないが、ペプチドは、約2から約50アミノ酸、約4から40アミノ酸、又は約10から30個のアミノ酸の長さを有する。用語「ポリペプチド」は、一般に、ペプチドの長い形態を指すが、2つの用語は、本明細書の幾つかの文脈において互換的に使用することができる。
【0048】
用語「アミノ酸」及び「残基」は、本明細書において互換的に使用される。
【0049】
ポリペプチドの「領域」は、2又はそれ以上のアミノ酸の連続配列である。他の実施態様において、領域は、少なくとも約3、5、10、15の連続するアミノ酸の何れかである。「C末端領域」又はその変異体は、ポリペプチドのC末端の最近接に位置する1−5の残基を含むポリペプチドの領域を言う。「N末端領域」又はその変異体は、ポリペプチドのN末端の最近接に位置する1−5の残基を含むポリペプチドの領域を言う。ポリペプチドの「内部」領域は、ポリペプチドのN末端又はポリペプチドのC末端のいずれも配置されていないポリペプチドの領域を指す。
【0050】
用語「肝細胞増殖因子」、「散乱因子」及び「HGF」は、天然配列HGFポリペプチド、ポリペプチド変異体及び天然配列HGFポリペプチド及びポリペプチド変異体の断片を言う(これは更に本明細書に定義される)。本明細書に記載のHGFポリペプチドは、例えば、ヒト組織型又は他の供給源からなど種々の供給源から単離されるもの、又は組換え又は合成方法によって調製されるものであって良い。「天然配列HGFポリペプチド」は、天然由来の対応するHGFポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。一実施態様において、天然配列HGFポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。GenBank:AAA64239.1及びUniprot:P14210も参照。HGFは、一般的に、プロHGF及び成熟型HGFを含むHGFのいずれかの形態を本明細書では指す。
【0051】
配列番号1
MWVTKLLPALLLQHVLLHLLLLPIAIPYAEGQRKRRNTIHEFKKSAKTTLIKIDPALKIKTKKVNTADQCANRCTRNKGLPFTCKAFVFDKARKQCLWFPFNSMSSGVKKEFGHEFDLYENKDYIRNCIIGKGRSYKGTVSITKSGIKCQPWSSMIPHEHSFLPSSYRGKDLQENYCRNPRGEEGGPWCFTSNPEVRYEVCDIPQCSEVECMTCNGESYRGLMDHTESGKICQRWDHQTPHRHKFLPERYPDKGFDDNYCRNPDGQPRPWCYTLDPHTRWEYCAIKTCADNTMNDTDVPLETTECIQGQGEGYRGTVNTIWNGIPCQRWDSQYPHEHDMTPENFKCKDLRENYCRNPDGSESPWCFTTDPNIRVGYCSQIPNCDMSHGQDCYRGNGKNYMGNLSQTRSGLTCSMWDKNMEDLHRHIFWEPDASKLNENYCRNPDDDAHGPWCYTGNPLIPWDYCPISRCEGDTTPTIVNLDHPVISCAKTKQLRVVNGIPTRTNIGWMVSLRYRNKHICGGSLIKESWVLTARQCFPSRDLKDYEAWLGIHDVHGRGDEKCKQVLNVSQLVYGPEGSDLVLMKLARPAVLDDFVSTIDLPNYGCTIPEKTSCSVYGWGYTGLINYDGLLRVAHLYIMGNEKCSQHHRGKVTLNESEICAGAEKIGSGPCEGDYGGPLVCEQHKMRMVLGVIVPGRGCAIPNRPGIFVRVAYYAKWIHKIILTYKVPQS
【0052】
「HGFポリペプチド変異体」、又はその変異体は、本明細書に定義されるように、本明細書に開示される天然配列HGFポリペプチド配列のいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する、HGFポリペプチド、一般に活性なHGFポリペプチドを意味する。そのようなHGFポリペプチド変異体は、例えば、天然アミノ酸配列のN−又はC−末端で、一又は複数のアミノ酸残基が付加又は欠失したHGFポリペプチドを含む。通常、HGFポリペプチド変異体は、本明細書に開示された天然配列のHGFポリペプチド配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。通常、HGF変異体ポリペプチドは、長さが少なくとも約10アミノ酸であり、あるいは長さが少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600アミノ酸又はそれ以上である。任意で、天然のHGFポリペプチド配列と比較して、HGF変異体ポリペプチドは、一以下の保存的アミノ酸置換を有し、あるいは天然のHGFポリペプチド配列と比較して、2、6、5、4、3、2、7、8、9、又は10以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0053】
「プロHGF」又は「単鎖HGF」は本明細書において、HGFの分泌された単鎖チモーゲン様の前駆体形態を指す。プロHGFは、HGF細胞内シグナル伝達が生物学的に実現される、HGFに対する既知の受容体であるc−Metに結合することが可能であるが、しかしc−Metを活性化することはできない。プロHGFはα鎖ドメインとβ鎖ドメインを含む。用語「プロHGFのα鎖ドメイン」は、プロHGFのN末端残基の1から494を指す。プロHGFのα鎖ドメインは、4つのクリングルドメイン(K1−K4)が後に続くN末端ドメイン(N−ドメイン)からなる。N−ドメインはヘパリン結合部位を含有し、プラスミノーゲンのN末端事前活性化ペプチド(PAP)に相同である。用語「プロHGFのβ鎖ドメイン」はプロHGF内のC末端残基495から728を指す。β鎖ドメインは、セリンプロテアーゼ様領域のチモーゲン形態を含む。
【0054】
「成熟HGF」又は「2本鎖HGF」は残基494と残基495との間のプロHGFのタンパク質分解変換から生じるジスルフィド結合したα/βヘテロ二量体を指す。用語「HGFのα鎖」、「「HGFα」、「「HGFα鎖」又は「α鎖」は、タンパク質分解切断後のプロHGFのC末端残基の1から494を含んでなるHGFの断片を指す。用語「HGFのβ鎖」は、タンパク質分解切断後のプロHGFのN末端残基の495から728を含んでなるHGFの断片を指す。
【0055】
用語「セリンプロテアーゼ」又は「セリンプロテアーゼ様」は、トリプシン/キモトリプシンファミリーのポリペプチドを指す。セリンプロテアーゼ及びプロテアーゼ様タンパク質のトリプシン/キモトリプシンファミリーはClan PAに属し、ファミリーS1(ファミリーS01とも呼ばれる)と言及され、及び/又はMEROPSデータベースに記載されている (http://merops.sanger.ac.uk) (Rawlings, N. D. et al. (2010) Nucleic Acids Res 38: D227-33)。
【0056】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用することによって生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2もまた、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニアから公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIXのV4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され変動しない。
【0057】
アミノ酸配列比較にALIGN−2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して所定の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍。
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN−2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一と一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値が、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落で説明したように得られる。
【0058】
「融合タンパク質」は、各々の部分が異なるタンパク質から由来し、共有結合で一緒に結合した2つの部分を有するポリペプチドを指す。2つの部分は単一のペプチド結合によって、又は一以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを介して直接連結されてもよい。一般に、二つの部分とリンカーはお互いにリーディングフレーム内にあり、組換え技術を用いて生成されるであろう。
【0059】
「障害」又は「病理学的状態」は本明細書に記述される物質/分子又は方法による治療から利益を得る任意の状態である。これには、哺乳動物に問題の疾患に罹らせる病的状態を含む慢性及び急性の障害又は疾患が含まれる。本明細書において治療されるべき障害の非限定的な例としては、組織再生、組織修復、及び創傷治癒、慢性肝硬変などの肝硬変、線維症、肺線維症などが含まれる。
【0060】
本明細書で用いられるように、「治療」(及び「治療する(treat)」または「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の過程においてのいずれかで実行できる。治療の望ましい効果は、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0061】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での有効な量を指す。本発明の物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、及び物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に従って変化し得る。治療的有効量はまた、治療上の有益な効果が、物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの任意の毒性又は有害作用を上回るものである。「予防的有効量」は、所望の予防結果を達成するために必要な用量及び期間において有効な量を指す。一般的には必ずしもそうではないが、予防的用量は、疾患の初期段階で又は前に被験体に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないであろう。
【0062】
用語「薬学的製剤」は、その中に有効で含有される活性成分の生物学的活性を許容するような形態であって、製剤を投与する被検体にとって許容できない毒性である他の成分を含まない調製物を指す。
【0063】
「薬学的に許容される担体」は、被検体に非毒性であり、有効成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤を含む。
【0064】
「個体」又は「被検体」は、哺乳動物である。哺乳動物は、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む。所定の実施態様において、個体又は被検体はヒトである。
【0065】
用語「パッケージ挿入物」は、効能、用法、用量、投与、併用療法、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0066】
当業者によって理解されるように、本明細書における値又はパラメータの「約」への言及は、その値又はパラメータそれ自体を対象としている実施態様を含む(及び説明する)例えば、「約X」を言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0067】
本明細書に記載の発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様「からなる」及び/又は「本質的になる」を含む。本明細書で使用される単数形の「a」、「an」、及び「the」は、特に指示がない限り、複数の参照が含まれる。
【0068】
セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインの活性化とシグナル伝達のモジュレーター
本明細書に提供されるのは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に結合することができ、そしてセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を活性化させる、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)、及びチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を同定し使用するための方法である。例えば、本明細書に提供されるのは、HGFにより、特にプロHGFのβ鎖ドメインと相互作用することによりc−Metの活性化を調節することができる、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)、及びチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を同定し使用するための方法である。セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)とその標的(例えば、c−Met)の間の相互作用を調節する一つの方法は、セリンプロテアーゼドメイン、又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を活性化することである。セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を活性化する任意の分子は、候補のチモーゲン活性化分子であり得る。当業者に周知のスクリーニング技術は、これらの分子を同定することができる。チモーゲン活性化分子の例としては、(1)小さな有機及び無機化合物、(2)小ペプチド、(3)抗体及びその誘導体、(4)セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)と密接に関連したペプチド、(5)核酸アプタマーが挙げられる。
【0069】
チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の何れか、及びチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を同定し用いる方法の幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドは、HGFの何れかのチモーゲン又はチモーゲン様形態、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、FVII、FIX、FX、FXI、FXII、Glu−プラスミノーゲン、Lys−プラスミノーゲン、プロテインC、プロトロンビン、プラズマカリクレイン、プロスタシン、エンテロキナーゼ、トリプシン2、トリプシン1、キモトリプシンB、ヘプシン、HGFA、マトリプターゼ、テスチシン、トリプターゼアルファ1、トリプターゼベータ1、トリプターゼベータ2、トリプターゼガンマ、ニューロトリプシン、アポリポタンパク質A、MASP1、MASP2、PSA KLK3、ハプトグロビン、補体C1r、補体C1s、ウロキナーゼuPA、tPA、又は補体因子Dである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドは、HGF、MSP、ヘプシン、HGFA、又はマトリプターゼである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドはHGFである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、プレトロンビン2又はプロトロンビンである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、プロテインCである。
【0070】
小分子チモーゲン活性化分子
幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子は小分子である。小分子は、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を結合し、活性化することによって、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の有用なモジュレーターであることができる。例えば、本明細書で提供されるのは、HGFによって、特に、プロHGFのβ鎖ドメインと相互作用することによりc−Metの活性化を調節することが可能な小分子である。小分子モジュレーターの例としては、小ペプチド、ペプチド様分子、可溶性、及び合成、非ペプチジル有機又は無機化合物が挙げられる。小分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、炭水化物、脂質又は他の有機若しくは無機分子であり得る。幾つかの実施態様において、小分子はZAPである。例えば、真菌、細菌、又は藻類抽出物の化学的及び/又は生物学的混合物のライブラリーは、当技術分野で公知であり、何れかのアッセイを用いてスクリーニングすることができる。分子ライブラリーの合成方法の例が説明されている(Carell et al., Angewandte Chemie International Edition. 33:2059-2061 (1994); Carell et al., Angewandte Chemie International Edition. 33:2061-2064 (1994); Cho et al., Science. 261:1303-5 (1993); DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 90:6909-13 (1993); Gallop et al., J Med Chem. 37:1233-51 (1994); Zuckermann et al., J Med Chem. 37:2678-85 (1994)。
【0071】
化合物のライブラリーは、溶液中(Houghten et al., Biotechniques. 13:412-21 (1992)) 又はビーズ上(Lam et al., Nature. 354:82-84 (1991))、チップ上(Fodor et al., Nature. 364:555-6 (1993))、細菌、胞子(Ladner et al., US Patent No. 5,223,409, 1993)、フ゜ラスミト゛(Cull et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 89:1865-9 (1992))又はファージ上(Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 87:6378-82 (1990); Devlin et al., Science. 249:404-6 (1990); Felici et al., J Mol Biol. 222:301-10 (1991); Ladner et al., US Patent No. 5,223,409, 1993; Scott and Smith, Science. 249:386-90 (1990))に提示され得る。無細胞アッセイは、アッセイ混合物を形成するために(例えば、本明細書に記載の一以上のZAPなどの)既知のチモーゲン活性化分子とセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を接触させ、アッセイ混合物とチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)とを接触させ、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)又はチモーゲン活性化分子(例えば、本明細書に記載の一以上のZAPなど)と相互作用する候補化合物の能力を決定することを含み、ここで、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)又はチモーゲン活性化分子(例えば、本明細書に記載の一以上のZAPなど)と相互作用する試験化合物の能力を決定することは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)/チモーゲン活性化分子(例えば、本明細書に記載の一以上のZAPなど)の複合体の検出可能な特徴が調節されるかどうか決定することを含む。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を活性化するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の能力を更に分析する。例えば、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)のチモーゲン活性化分子(例えば、本明細書に記載の一以上のZAPなど)との結合相互作用は、形成される複合体の量によって決定されるように、試験化合物が、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)のチモーゲン活性化分子(例えば、本明細書に記載の一以上のZAPなど)との間の相互作用を調節できるかどうかを示すことができる。複合体の量は、当技術分野で公知の方法によって評価することができ、そのうち幾つかは、例えばELISA(競合結合ELISAを含む)、酵母ツーハイブリッド及び近接(例えば、蛍光共鳴エネルギー移動、酵素基質)アッセイなどは本明細書に記載されている。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を活性化するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の能力を実施例3に記載されるように更に分析する。
【0072】
チモーゲン活性化ペプチド(ZAP)、ポリペプチド、及び抗体チモーゲン活性化分子
幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子は、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)とその細胞及び/又は生理学的標的(例えば、c−Met)との間の生物学的活性を調節するZAP、ポリペプチド、又抗体である。
【0073】
一態様において、提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号2)を含み、X
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N、Q、D−Gly、D−Asp、D−Glu、D−Asn,又はD−Glnであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。また本明細書に提供されるのは、ZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号31)からなり、X
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N、又はQであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(即ち、X
3はG、D、E又はQである)(配列番号32)。
【0074】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンである(配列番号4)。幾つかの実施態様において、X
1はL、I、又はVである(配列番号5)。幾つかの実施態様において、X
1はI又はVである(配列番号6)。幾つかの実施態様において、X
1はIである(配列番号7)。
【0075】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
2はM、L、I、V又はノルロイシン、F、又はYである(配列番号8)。幾つかの実施態様において、X
2はI、V、L又はFである(配列番号9)。幾つかの実施態様において、X
2はI又はVである(配列番号10)。
【0076】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
3はG、D、又はNである(配列番号11)。幾つかの実施態様において、X
3はGである(配列番号12)。
【0077】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
4はGである(配列番号13)。
【0078】
例えば本明細書に提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号33)を含み、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンであり、X
2はM、L、I、V、ノルロイシン、Fであり、X
3はG、D、E、N、又はQであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。また本明細書に提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号33)を含み、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンであり、X
2はM、L、I、V、ノルロイシン、Fであり、X
3はG、D、E、N、又はQであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(即ち、X
3はG、D、E又はQである)(配列番号32)。
【0079】
本明細書に提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号34)を含み、X
1はL、I、又はVであり、X
2はL、I、V、又はFであり、X
3はG、D、又はNであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。また本明細書に提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号34)からなる、又はから本質的になり、X
1はL、I、又はVであり、X
2はL、I、V、又はFであり、X
3はG、D、又はNであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(即ち、X
3はG、D、E又はQである)(配列番号35)。
【0080】
本明細書に更に提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号36)を含み、X
1はIであり、X
2はI又はVであり、X
3はGであり、X
4はGであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。本明細書に更に提供されるのはZAPであり、ここでZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号36)からなる、又はから本質的になり、X
1はIであり、X
2はI又はVであり、X
3はGであり、X
4はGであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。
【0081】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号2)を含む、からなる、又はから本質的になり、X
1−X
2−X
3−X
4(配列番号14)はIVGG(配列番号15)、IVDG(配列番号16)、IVdG、IVGG(配列番号17)、IIGG(配列番号18)、VVNG(配列番号19)、VVGG(配列番号20)、IVGG(配列番号21)、LIDG(配列番号22)、IVEG(配列番号23)、ITGG(配列番号24)、IVNG(配列番号25)、IFNG(配列番号26)、IYGG(配列番号27)、ILGG(配列番号28)、又はIKGG(配列番号29)であり、ここでdはDアスパラギン酸である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X1−X2−X3−X4−Bn(配列番号2)を含む、からなる、又はから本質的になり、X
1−X
2−X
3−X
4(配列番号14)はIVGG(配列番号15)、IVDG(配列番号16)、IVdG、IVGG(配列番号17)、IIGG(配列番号18)、VVGG(配列番号20)、IVGG(配列番号21)、LIDG(配列番号22)、IVEG(配列番号23)、ITGG(配列番号24)、IVNG(配列番号25)、IFNG(配列番号26)、IYGG(配列番号27)、ILGG(配列番号28)、又はIKGG(配列番号29)であり、ここでdはDアスパラギン酸である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X1−X2−X3−X4−Bn(配列番号2)を含む、からなる、又はから本質的になり、X
1−X
2−X
3−X
4(配列番号14)はIVGG(配列番号15)、IVDG(配列番号16)、IVdG、IVGG(配列番号17)、又はIIGG(配列番号18)であり、ここでdはDアスパラギン酸である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはVVNG(配列番号19)を含まない、からならない又はから本質的にならない。
【0082】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11,(配列番号37)を更に含む、からなる、又はから本質的になり、ここでX
5はY又はFであり、X
6はPであり、X
7はWであり、X
8はWであり、X
9はM、I、又はV、X
10はD又はEであり、X
11はV又はAである。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11(配列番号119)を更に含む、からなる、又はから本質的になり、ここでX
5はY、C、D、又はFであり、X
6はY又はPであり、X
7はW又はYであり、X
8はW又はDであり、X
9はM、I、又はVであり、X
10はD、P又はEであり、X
11はV、H、R、I又はAである。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11−X
12−X
13−X
14−X
15(配列番号120)を更に含む、からなる、又はから本質的になり、ここでX
5はY、C、D、又はSであり、X
6はPであり、X
7はW又はYであり、X
8はWであり、X
9はM、I、又はVであり、X
10はP、D又はEであり、X
11はH、R、V又はAであり、X
12は欠失、P、又はEであり、X
13はG又はEであり、X
14はD、C、又はSであり、及びX
15はA又はIである。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−X
10−X
11(配列番号121)、X
12−X
13−X
14−X
15(配列番号122)を更に含む、からなる、又はから本質的になり、ここでX
5は任意のアミノ酸であり、X
6はPであり、X
7は任意のアミノ酸であり、X
8はWであり、X
9−X
15は任意のアミノ酸である。幾つかの実施態様において、X
5はCである。幾つかの実施態様において、X
14はCである。
【0083】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、nは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約15、約20、約25、又は約30の何れかよりも大きい数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、nは約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約20、約25、又は約30の何れかよりも小さい数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、nは約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15である。幾つかの実施態様において、nは約5、6、7、又は8である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、nは約3−約15の間、約3−約7の間、約3−約10の間、約3−約12の間、約5−約12の間、又は約5−約10の間の何れかである。
【0084】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列IVGGYPWWMDV(配列番号38)、IVDGYPWWMDV(配列番号39)、IVdGYPWWMDV、IVGGYhyPWWMDV(配列番号40)、IIGGYhyPWWMDV(配列番号41)、VVNGIPTRTNI(配列番号42)、VVGGHPGNSPW(配列番号43)、IVGGKVCPKGE(配列番号44)、VVGGEDAKPGQ(配列番号45)、IVGGQECKDGE(配列番号46)、IVGGTASVRGE(配列番号47)、VVGGLVALRGA(配列番号48)、VVGGCVAHPHS(配列番号49)、VVGGCVAHPHS(配列番号50)、LIDGKMTRRGD(配列番号51)、IVEGSDAEIGM(配列番号52)、IVGGTNSSWGE(配列番号53)、ITGGSSAVAGQ(配列番号54)、IVGGSNAKEGA(配列番号55)、IVGGYICEENS(配列番号56)、IVGGYNCEENS(配列番号57)、IVNGEDAVPGS(配列番号58)、IVGGRDTSLGR(配列番号59)、IIGGSSSLPGS(配列番号60)、VVGGTDADEGE(配列番号61)、IVGGEDAELGR(配列番号62)、IVGGQEAPRSK(配列番号63)、IVGGQEAPRSK(配列番号64)、IVGGQEAPRSK(配列番号65)、IVGGHAAPAGA(配列番号66)、IIGGKNSLRGG(配列番号67)、IVGGCVAHPHS(配列番号68)、IFNGRPAQKGT(配列番号69)、IYGGQKAKPGD(配列番号70)、IVGGWECEKHS(配列番号71)、ILGGHLDAKGS(配列番号72)、IIGGQKAKMGN(配列番号73)、IIGGSDADIKN(配列番号74)、IIGGEFTTIEN(配列番号75)、IKGGLFADIAS(配列番号76)、及び/又はILGGREAEAHA(配列番号77)を含む、からなる、又はから本質的になり、ここでdは、D−アスパラギン酸であり、hyPはヒドロキシプロリンである。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列IVGGYPWWMDV(配列番号38)、IVDGYPWWMDV(配列番号39)、IVdGYPWWMDV、IVGGYhyPWWMDV(配列番号40)、IIGGYhyPWWMDV(配列番号41)、VVGGHPGNSPW(配列番号43)、IVGGKVCPKGE(配列番号44)、VVGGEDAKPGQ(配列番号45)、IVGGQECKDGE(配列番号46)、IVGGTASVRGE(配列番号47)、VVGGLVALRGA(配列番号48)、VVGGCVAHPHS(配列番号49)、VVGGCVAHPHS(配列番号50)、LIDGKMTRRGD(配列番号51)、IVEGSDAEIGM(配列番号52)、IVGGTNSSWGE(配列番号53)、ITGGSSAVAGQ(配列番号54)、IVGGSNAKEGA(配列番号55)、IVGGYICEENS(配列番号56)、IVGGYNCEENS(配列番号57)、IVNGEDAVPGS(配列番号58)、IVGGRDTSLGR(配列番号59)、IIGGSSSLPGS(配列番号60)、VVGGTDADEGE(配列番号61)、IVGGEDAELGR(配列番号62)、IVGGQEAPRSK(配列番号63)、IVGGQEAPRSK(配列番号64)、IVGGQEAPRSK(配列番号65)、IVGGHAAPAGA(配列番号66)、IIGGKNSLRGG(配列番号67)、IVGGCVAHPHS(配列番号68)、IFNGRPAQKGT(配列番号69)、IYGGQKAKPGD(配列番号70)、IVGGWECEKHS(配列番号71)、ILGGHLDAKGS(配列番号72)、IIGGQKAKMGN(配列番号73)、IIGGSDADIKN(配列番号74)、IIGGEFTTIEN(配列番号75)、IKGGLFADIAS(配列番号76)、及び/又はILGGREAEAHA(配列番号77)を含む、からなる、又はから本質的になり、ここでdは、D−アスパラギン酸であり、hyPはヒドロキシプロリンである。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはアミノ酸配列IVGGYPWWMDV(配列番号38)、IVDGYPWWMDV(配列番号39)、IVdGYPWWMDV、IVGGYhyPWWMDV(配列番号40)、及び/又はIIGGYhyPWWMDV(配列番号41)を含む、からなる、又はから本質的になり、ここでdは、D−アスパラギン酸であり、hyPはヒドロキシプロリンである。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPはVVNGIPTRTNI(配列番号42)を含まない、からならない又はから本質的にならない。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IIGGDPYWVPHPGDA(配列番号123)を含む、からなる、又はから本質的になる。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IIGGCPYWMDREECI(配列番号124)を含む、からなる、又はから本質的になる。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IIGGSPYWMDREESI(配列番号125)を含む、からなる、又はから本質的になる。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IVGGCYWWVPI(配列番号126)を含む、からなる、又はから本質的になる。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IVGGDPYWVPHPGDA(配列番号127)を含む、からなる、又はから本質的になる。
【0085】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IVGGDYWWVPI(配列番号128)、IVGGDFYSSYW(配列番号129)、IVGGDGMPWWI(配列番号130)、IVGGYPWWMDV(配列番号38)、IVGGDPVYVLY(配列番号131)、IVGGYPWWITG(配列番号132)、IVGGYPWWVDV(配列番号133)、IVGGYPAWMEY(配列番号134)、IVGGSDFPWWV(配列番号135)、IVGGLWEMWVT(配列番号136)、IVGGEPAYWYW(配列番号137)、IVGGHPMSPFS(配列番号138)、IVGGDPWWFVS(配列番号139)、IVGGPHKAFLL(配列番号140)、IVGGEPVWYVW(配列番号141)、IVGGYPVYFLN(配列番号142)、IVGGEPVYYVT(配列番号143)、IVGGCKRSYWE(配列番号144)、IVGGTRCNDWI(配列番号145)、IVGGSACLIAM(配列番号146)、IVGGVRCWVSN(配列番号147)、IVGGLDVEYEL(配列番号148)、IVGGMRLCGYI(配列番号149)、IVGGNKIWSVS(配列番号150)、IVGGDYYWVVQ(配列番号151)、IVGGKWQRKRV(配列番号152)、及び/又はIVGGFVFWCDQ(配列番号153)を含む、からなる、又はから本質的になる。
【0086】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IIGGDPVWDITYTYA(配列番号174)、IIGGDPYWYPHPGTV(配列番号154)、IVGGDPYWVPHPGDA(配列番号127)、IIGGEPAWVWYEDCM(配列番号155)、IIGGDPWWTPHPSFV(配列番号156)、IVGGDPWWVDHMYLT(配列番号157)、IVGGEPVWVPWCVYD(配列番号158)、IIGGDPVWVLSTECG(配列番号159)、IIGGEPWWVDFVEDY(配列番号160)、IIGGCPYWMDREECI(配列番号124)、及び/又はIVGGCPYWMDREECL(配列番号161)を含む、からなる、又はから本質的になる。
【0087】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列IIGGCPTYCMSTGCA(配列番号162)、IIGGCPLDDGVARCL(配列番号163)、IIGGCPIDGRVWACG(配列番号164)、IIGGCPAAVSNSVCY(配列番号165)、IIGGCPAGSELAVCT(配列番号166)、及び/又はIIGGCPLYCMITGCA(配列番号167)を含む、からなる、又はから本質的になる。
【0088】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは線形である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは環状である。幾つかの実施態様において、ZAPはジスルフィド結合を含む。幾つかの実施態様において、ZAPは分子内ジスルフィド結合を含む。幾つかの実施態様において、ZAPはCys5とCys14の間に分子内ジスルフィド結合を含む。
【0089】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドに特異的に結合し、及びセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドを活性化させる。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドは、HGFの何れかのチモーゲン又はチモーゲン様形態、MSP、FVII、FIX、FX、FXI、FXII、Glu−プラスミノーゲン、Lys−プラスミノーゲン、プロテインC、プロトロンビン、プラズマカリクレイン、プロスタシン、エンテロキナーゼ、トリプシン2、トリプシン1、キモトリプシンB、ヘプシン、HGFA、マトリプターゼ、テスチシン、トリプターゼアルファ1、トリプターゼベータ1、トリプターゼベータ2、トリプターゼガンマ、ニューロトリプシン、アポリポタンパク質A、MASP1、MASP2、PSA KLK3、ハプトグロビン、補体C1r、補体C1s、ウロキナーゼuPA、tPA、又は補体因子Dである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドは、HGF、MSP、ヘプシン、HGFA、又はマトリプターゼである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、プレトロンビン2又はプロトロンビンである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、プロテインCである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、MSPである。幾つかの実施態様において、ZAPは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドをアロステリックに活性化する。
【0090】
何れかのZAPの幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドはHGFである。幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインに特異的に結合し、c−Metを介したHGFシグナル伝達を活性化する。幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインの活性化ポケットに特異的に結合する。幾つかの実施態様において、ZAPはアロステリックにHGFを活性化させる。
【0091】
何れかのZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドに対する約1.0mM、約500μM、約100μM、約50μM、約25μM、約10μM、約5μM、又は約1μM未満の何れかのKdによって決定される結合親和性を有する。何れかのZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、HGFに対する約1.0mM、約500μM、約100μM、約50μM、約25μM、約10μM、約5μM、又は約1μM未満の何れかのKdによって決定される結合親和性を有する。何れかのZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインに対する約1.0mM、約500μM、約100μM、約50μM、約25μM、約10μM、約5μM、又は約1μM未満のKdによって決定される結合親和性を有する。幾つかの実施態様において、Kdにより決定される結合親和性は、当技術分野で公知の任意の方法、特に実施例2に記載の方法により決定される。
【0092】
任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは単離され得る。任意のZAPの幾つかの実施態様において、ZAPは、合成ZAP、化学合成を介して作成されたポリペプチド鎖である。
【0093】
幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えばZAPなど)は、標準的なタンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームによって細胞又は組織源から単離することができる。幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えばZAPなど)は組換えDNA技術により生成される。組換え発現の別法として、チモーゲン活性化分子(例えばZAPなど)は標準的なペプチド合成技術により化学的に合成することができる。
【0094】
また提供されるのは、変異体又は変異体(variant)のチモーゲン活性化分子(例えばZAPなど)であり、それらの残基の何れかはこれらのチモーゲン活性化分子(例えばZAPなど)の対応する残基から変更されうるが、モジュレーター活性を維持するペプチドをなおコードしている。一実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の変異体/セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメイン(例えばHGF)を含むポリペプチド/標的(例えばc−Met)は、参照の結合剤ペプチド/ポリペプチド/リガンドの配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%のアミノ酸配列同一性を有する。一般に、変異体は、参照のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)/セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテーゼ様ドメイン(例えばHGF)を含むポリペプチド/標的(例えばc−Met)と実質的に同一か又はそれより大きい結合親和性、例えば、当該技術分野で認められた結合アッセイ定量化ユニット/メトリックに基づいて、参照のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)/セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテーゼ様ドメイン(例えばHGF)を含むポリペプチド/標的(例えばc−Met)の少なくとも0.75倍、0.8倍、0.9倍、1.0倍、1.25倍又は1.5倍の結合親和性を示す。
【0095】
一般に、本明細書における変異体は、配列中の特定の位置の残基が他のアミノ酸によって置換され、親タンパク質/ペプチドの二つの残基の間に追加の残基又は残基を挿入する可能性、並びに親配列から一又はそれ以上の残基を欠失させ又は親配列に一以上の残基を付加する可能性を更に含む変異体を含む。任意のアミノ酸置換、挿入、又は欠失が本発明に包含される。好ましい状況では、置換は、本明細書に記載されるような保存的置換である。
【0096】
幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は単離されたポリペプチドである。混入成分は、ポリペプチドの診断的又は治療的用途を典型的には妨害するであろう物質を含み、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含み得る。所望されない汚染物質(汚染物質(contaminant))の乾燥重量で好ましくは約30%未満、好ましくは約20%、約10%未満、そして好ましくは約5%未満の汚染物質を有する調製物は実質的に単離されたと見なされる。単離され、組換え的に産生されるペプチド/ポリペプチドまたはその生物学的に活性なその一部は、好ましくは実質的に培養培地を含まず、すなわち、培養培地は、ペプチド/ポリペプチド調製物の体積の好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満、好ましくは約5%未満を示す。汚染物質の例としては、細胞破片、培養培地、及びペプチド/ポリペプチドのインビトロ合成の最中に使用され産生された物質が挙げられる。
【0097】
ペプチド/ポリペプチドの保存的置換は、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示されている。そのような置換が生物活性の変化を生じるならば、表1において「例示的置換」と命名され、又はアミノ酸クラスを参照して以下に更に記載されるより実質的な変化が導入され、その産物がスクリーニングされる。
【0098】
ペプチド/ポリペプチドの生物学的性質の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋コンホメーション、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持して、それらの効果において有意に異なる置換基を選択することにより達成される。非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。アミノ酸は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe.
(7)大きな疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
【0099】
更なる実施態様において、本発明のペプチド又はポリペプチドは、一以上の非天然型アミノ酸又は修飾されたアミノ酸含むことができる。「非天然型アミノ酸残基」とは、上に列挙される天然に生じるアミノ酸残基以外のもので、ポリペプチド鎖中で隣接するアミノ酸残基に共有結合することができる残基を意味する。非天然アミノ酸は、限定されないが、ホモ−リシン、ホモアルギニン、ホモ−セリン、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、第三級ブチルグリシン、2,4−ジアミノイソ酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N−メチルアラニン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルペンチルグリシン、N−メチルバリン、ナフタラニン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、シトルリン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸及びチオプロリンを含む。修飾されたアミノ酸は、化学的に可逆的または不可逆的にブロックされ、又はそれらのN−末端アミノ基又はそれらの側鎖基上で修飾された天然及び非天然アミノ酸、例えばNメチル化D及びLアミノ酸、化学的に別の官能基に修飾された側鎖官能基を含む。例えば、修飾されたアミノ酸は、メチオニンスルホキシド;メチオニンスルホン;アスパラギン酸−(ベータ−メチルエステル)、アスパラギン酸の修飾アミノ酸;N−エチルグリシン、グリシンの修飾アミノ酸;又はアラニンカルボキサミド及びアラニンの修飾されたアミノ酸を含む。更なる非天然及び修飾されたアミノ酸、及びタンパク質及びペプチドにそれらを組み込む方法は、当技術分野において公知である(例えば、Sandberg et al., (1998) J. Med. Chem. 41: 2481-91; Xie and Schultz (2005) Curr. Opin. Chem. Biol. 9: 548-554; Hodgson and Sanderson (2004) Chem. Soc. Rev. 33: 422-430を参照)。
【0100】
セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)のZAPモジュレーター及び/又は抗体の変異体はまた、実質的に抗体及び/又はZAPの活性に影響を与えることなく、当該分野で公知の情報に基づいて作成することができる。例えば、抗体変異体及び/又はZAP変異体は、異なる残基によって置換された抗体分子及び/又はZAPにおいて少なくとも一のアミノ酸残基を有することができる。抗体については、置換変異誘発について最も関心ある部位は、一般に、超可変領域を含むが、フレームワーク領域(FR)の改変もまた考慮される。
【0101】
置換変異体の一つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化又はヒト抗体など)の一以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、更なる開発のために得られた変異体は、それらが生成された親抗体と比較して改善された生物学的特性を有しているであろう。そのような置換変異体を生成するための便利は方法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟を含む。簡潔には、幾つかの超可変領域部位(例えば6−7部位)を変異させ、各部位において全ての可能なアミノ酸置換を生成する。このようにして生成された抗体は、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物への融合体として、繊維状ファージ粒子から示される。ファージディスプレイされた変異体は、その後、本明細書に開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。代わりに、又は更に、抗体と抗原との接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析することは有益であり得る。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書中で詳述した技術に従った置換の候補である。そのような変異体がいったん生成されると、本明細書に記載されるように、変異体パネルがスクリーニングに供され、そして一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体が更なる開発のために選択され得る。
【0102】
抗体及び/又はZAPのアミノ酸配列変異体をコードしている核酸分子は当該分野で知られている様々な方法により調製される。これらの方法は、限定されないが、天然源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、そして抗体及び/又はZAPの以前に調製された変異体又は非変異体バージョンのカセット変異誘発による調製を含む。
【0103】
本発明の免疫グロブリンポリペプチドのFc領域に一以上のアミノ酸修飾を導入し、それにより、Fc領域変異体を生成することが望まれ得る。Fc領域の変異体は、ヒンジシステインの位置を含む一又は複数のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば置換)を含んでなるヒトFc領域の配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0104】
一実施態様において、Fc領域変異体は、改変された新生児Fc受容体(FcRn)結合親和性を示し得る。そのような変異体Fc領域は、Fc領域のアミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439又は447の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。FcRnへの結合が低下したFc領域変異体は、Fc領域のアミノ酸位置252、253、254、255、288、309、386、388、400、415、433、435、436、439又は447の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。あるいは、上述したFc領域変異体は、FcRnへの結合の増加を示し、Fc領域のアミノ酸位置238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434 の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。
【0105】
FcγRへの結合が低下したFc領域変異体は、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438又は439の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。
【0106】
例えば、Fc領域変異体は、FcγRIへの結合の低下を示し、Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、327 又は329の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。
【0107】
Fc領域変異体は、FcγRIIへの結合の低下を示し、Fc領域のアミノ酸位置238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438又は439の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。
【0108】
目的のFc領域変異体は、FcγRIIIへの結合の低下を示し、Fc領域のアミノ酸位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435又は437の何れか一又はそれ以上でアミノ酸修飾を含むことができ、ここでFc領域における残基の番号付けは、Kabatにある通りのEUインデックスのものである。
【0109】
改変された(即ち、改善され又は減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を有するFc領域変異体は、国際公開第99/51642号に記載されている。このような変異体は、Fc領域のアミノ酸270、322、326、327、329、331、333又は334の一又は複数の位置でのアミノ酸置換を含んでもよい。Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988); 米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及び、Fc領域の変異体の他の例に関しては国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0110】
チモーゲン活性化ペプチド融合体
更に本明細書で提供されるのは、担体にコンジュゲートした本明細書に記載されるチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の何れかを含むチモーゲン活性化融合体である。
例えば、幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化融合体の何れかのZAPは、アミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号2)を含み、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N、Q、D−Gly、D−Asp、D−Glu、D−Asn,又はD−Glnであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化融合体の何れかのZAPは、アミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号31)からなり、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N又はQであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(X
3はG、D、E又はQである)(配列番号32)。幾つかの実施態様において、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンである(配列番号4)。幾つかの実施態様において、X
1はL、I、又はVである(配列番号5)。幾つかの実施態様において、X
1はIである(配列番号7)。幾つかの実施態様において、X
2はM、L、I、V、ノルロイシン、F、又はYである(配列番号8)。幾つかの実施態様において、X
2はI、V、L又はFである(配列番号9)。幾つかの実施態様において、X
2はI又はVである(配列番号10)。幾つかの実施態様において、X
3はG、D、又はNである(配列番号11)。幾つかの実施態様において、X
3はGである(配列番号12)。幾つかの実施態様において、X
4はGである(配列番号13)。幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインに結合し、c−Metシグナル伝達を活性化する。幾つかの実施態様において、ZAPは約100μM未満(例えば約25μM未満)のKdにより測定されるような結合親和性を有する。
【0111】
チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)がコンジュゲートする担体は生分解性ポリマーである。生分解性又は生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、PEG、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、炭水化物、ポリペプチド、コラーゲン、デンプン、セルロース、キチン、リグニン、及びそれらの共重合体などを使用することができる。このような物質は、ALZAコーポレーション (Mountain View, CA) 及びNOVA製薬(Lake Elsinore, CA)から商業的に入手するか、当業者によって調製することができる。リポソーム懸濁液も薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは当業者に公知の方法に従って(Eppstein等、米国特許第4522811号、1985)調製することができる。幾つかの実施態様において、担体はポリペプチドである。幾つかの実施態様において、ポリペプチドはアルブミンである。幾つかの実施態様において、ポリペプチドはFcである。幾つかの実施態様において、担体はPEGである。
【0112】
幾つかの実施態様において、担体は安定性と半減期を改善する。幾つかの実施態様において、担体はタンパク質である。幾つかの実施態様において、タンパク質担体は、血清アルブミン、及び抗体の定常領域(Fc)である。幾つかの実施態様において、タンパク質担体は、チモーゲン活性化ペプチド配列のC末端に連結している(例えば組換えで融合している)。幾つかの実施態様において、担体は化学的にコンジュゲートしている。幾つかの実施態様において、担体は、インビボでより長い半減期を有することが知られているポリエチレングリコール(PEG)化合物、ペグ化ペプチド、及びタンパク質である。更に、例えば、Ig様タンパク質フォールドなどの小型のモジュールタンパク質もまた、結合親和性強化のため更なるタンパク質表面を提供するため、ZAPのC末端に融合されてもよい。
【0113】
チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、担体はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)のC末端へコンジュゲートする。チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、担体はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)のN末端へコンジュゲートする。
【0114】
チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、担体はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)に共有結合でコンジュゲートする。チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、担体はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)に直接コンジュゲートする。チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、担体はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)にリンカー配列を介して共有結合でコンジュゲートする。幾つかの実施態様において、担体はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)との融合タンパク質としてコンジュゲートする。
【0115】
チモーゲン活性化融合体の何れかの幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の担体へのコンジュゲーションは、担体にコンジュゲートしていないチモーゲン活性化分子(例えばZAP)と比較して、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の半減期及び/又は生物学的利用能を増大させる。
【0116】
ベクターの構築
本明細書に記載の抗体、ペプチド、及び/又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な合成技術及び/又は組換え技術を用いて得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列を、適切な供給源細胞から単離し、配列決定することができる。抗体、ペプチド、及び/又はポリペプチドの源細胞は、抗体、ペプチド、及び/又はポリペプチドを産生する細胞、例えばハイブリドーマ細胞を含むであろう。あるいは、ポリヌクレオチドをヌクレオチド合成装置又はPCR技術を使用して合成することができる。一たび得られると、抗体、ペプチド、及び/又はポリペプチドをコードする配列は、宿主細胞において異種ポリヌクレオチドを複製し発現することができる組換えベクターに挿入される。入手可能で当該技術分野で公知のベクターが本発明の目的用に使用することができる。適切なベクターの選別はベクターに挿入される核酸の大きさ及びそのベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅又は発現、或いは両方)、及びそれが属する特定の宿主細胞との適合性に依存して、様々な成分を含有する。ベクターの成分は、限定されないが、一般的に、複製起点(特に、ベクターが原核細胞に挿入されたとき)、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入及び転写終結配列を含む。
【0117】
一般に、宿主細胞と適合した種に由来するレプリコン及び制御配列を含むプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは通常、複製部位、並びに形質転換細胞の表現型選択を提供することができるマーキング配列を運ぶ。例えば、大腸菌は典型的には、大腸菌種から由来したプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、したがって、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージはまた、内因性タンパク質の発現のために微生物によって使用することができるプロモーター含むことができ又は含むように改変することができる。
【0118】
更に宿主微生物と適合するレプリコン及び制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主と関連して形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、γGEM.TM.−11などのバクテリオファージは、例えば大腸菌LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターをの作成に利用することができる。
【0119】
当業者によって確認することができる特定の状況の必要に応じて、構成的又は誘導性プロモーターの何れかを、本発明において使用することができる。様々な潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが知られている。選択したプロモーターは、機能制限酵素消化を介して供給源のDNAからプロモーターを除去し、選択したベクターに単離したプロモーター配列を挿入することにより、本明細書に記載のポリペプチドをコードするDNAをシストロンに作動可能に連結することができる。天然プロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両方が、標的遺伝子の直接増幅及び/又は発現に用いることができる。しかしながら、一般的に、天然の標的ポリペプチドプロモーターに比べて、発現された標的遺伝子のより大きな転写と高収量を可能にするので異種プロモーターが好ましい。
【0120】
原核生物宿主での使用に適したプロモーターは、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びtac又はtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。細菌内で機能している他のプロモーター(例えば、他の既知の細菌又はファージプロモーター)も適している。それらのヌクレオチド配列は公表されており、それによって、当業者が、任意の必要な制限部位を供給するためのリンカー又はアダプターを使用して、標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロン (Siebenlist et al. (1980) Cell 20: 269)にそれらを作動可能に連結することを可能にする。
【0121】
幾つかの実施態様において、組換えベクター内の各シストロンは、膜を貫通して発現されるポリペプチドの転位を指示する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、又はベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識され処理される(即ち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識せずプロセスしない原核生物宿主細胞では、シグナル配列は、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp又は熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から例えば選択される原核生物シグナル配列によって置換されている。
【0122】
ポリペプチドを発現させるための適切な原核生物宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物などが含まれる。有用な細菌の例としては、大腸菌(例えば、大腸菌)、桿菌(例えば、枯草菌)、腸内細菌、シュードモナス種(例えば、緑膿菌)、ネズミチフス菌、セラチア・マルセスキャンス(Serratia marcescans)、クレブシエラ、プロテウス、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ、又はパラコッカスを含む。好ましくは、グラム陰性細胞が使用される。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、更なるプロテアーゼ阻害剤を、望ましくは、細胞培養物に組み込むことができる。
【0123】
チモーゲン活性化分子の産生
宿主細胞は、上記の発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされ、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0124】
トランスフェクションは、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かによらず、宿主細胞による発現ベクターの受け入れを指す。トランスフェクションの多くの方法、例えば、CaPO
4沈殿及び電気穿孔が、当業者に知られている。このベクターの作動の兆候が宿主細胞内で発生したときに、トランスフェクションの成功が一般的に認識される。
【0125】
形質転換は、DNAが、染色体外要素として、又は染色体組み込みによってのいずれか、複製可能であるように、原核生物の宿主内にDNAを導入することを意味する。使用される宿主細胞に依存して、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を用いて行われる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は、一般に、実質的な細胞壁障壁を含む細菌細胞で使用される。形質転換について別の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用される別の手法は、電気穿孔である。
【0126】
本発明のポリペプチドを産生するために使用される原核生物細胞は当該分野で既知であり、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖させる。適切な培地の例には、ルリア培地(LB)プラス必須栄養分サプリメントが含まれる。好ましい実施態様において、培地は、発現ベクターを含む原核生物細胞の増殖を選択的に可能にする発現ベクターの構成に基づいて選択される選択剤を含有する。例えば、アンピシリンは、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用培地に加えられる。
【0127】
炭素、窒素及び無機リン酸源の他に任意の必要な補充物質もまた、単独で、または複合窒素源等の他のサプリメント又は培地との混合物として導入される適切な濃度で含まれてもよい。任意で、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール及びジチオスレイトールからなる群から選択される一以上の還元剤を含有することができる。
【0128】
原核生物宿主細胞は適切な温度で培養される。大腸菌の増殖では、例えば、好ましい温度は、約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲であり、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、宿主生物に主に依存して、約5から約9の範囲の任意のpHであってもよい。大腸菌では、pHは好ましくは約6.8から約7.4であり、より好ましくは約7.0である。
【0129】
誘導性プロモーターが発現ベクターで使用される場合、タンパク質の発現はプロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。例えば、PhoAプロモーターが転写を制御するために使用される場合、形質転換される宿主細胞は、誘導のためにリン酸限定培地で培養することができる。当技術分野で知られているように、用いられるベクター構築物に応じて、様々な他の誘導因子を使用することができる。
【0130】
微生物で発現される本明細書に記載のポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズム中に分泌され、回収することができる。タンパク質の回収は、典型的には微生物を、一般的には浸透圧ショック、超音波処理又は溶解のような手段により破壊することを含む。ひとたび細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞は、遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって、更に精製することができる。あるいは、タンパク質は培養培地に運搬され、そこから単離することができる。細胞は、培養物から除去することができ、培養上清は濾過され、生成したタンパク質の更なる精製のため濃縮される。発現されたポリペプチドは、更に単離して、免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はDEAEなどの陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、セファデックスG−75を用いたゲル濾過;疎水性アフィニティー樹脂、マトリックス上に固定化された適切な抗原を用いたリガンド親和性及びウエスタンブロットアッセイなど一般的に知られている方法を用いて同定することができる。
【0131】
原核生物宿主細胞に加えて、真核宿主細胞系もまた、当技術分野において十分に確立されている。適切な宿主は、例えば、CHOなどの哺乳動物細胞株、及び下に記載されるような昆虫細胞が含まれる。
【0132】
ポリペプチド/ペプチドの精製
生成されるポリペプチド/ペプチドは、更なるアッセイと使用のため実質的に均質な調製物を得るために精製することができる。当技術分野で知られている標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の手順は適切な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどのカチオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、例えば、セファデックスG−75を用いたゲル濾過。
【0133】
チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の同定及び特徴付け−一般的なアプローチ
候補のチモーゲン活性化分子、例えばZAPは、当技術分野で公知の任意の数の方法によって同定することができる。モジュレーターの調節特性は、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)と標的(例えば、c−Met)(例えば、本明細書に記載のZAP等)との間の相互作用を調節するモジュレーターの能力を測定することにより評価することができる。重要な特性の一つは結合親和性である。目的である候補のモジュレーター(例えばペプチド)の結合特性は、当技術分野で公知の多数の方法の何れかで評価することができる。
【0134】
プロセスの最初の工程は、目的の配列を含むチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の一以上の候補を生成することを含むことができ、それらは次いで、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン結合特性を備えるそれらのポリペプチド(例えば、HGF、具体的には、プロHGFのβ鎖ドメイン)を決定するのに適切な条件下で表示される。例えば、候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)は、p3又はp8のようなコートタンパク質との融合タンパク質を用いて、ファージ又はファージミド、例えば、繊維状ファージ(中期)の表面上にペプチドのカルボキシル末端(C−末端)ディスプレイライブラリーとして表示することができる。C−末端ディスプレイは、当該技術分野において知られている。例えば、Jespers et al., Biotechnology (N Y). 13:378-82及び国際公開第00/06717号を参照。これらの方法は、本明細書に記載される、融合遺伝子、融合タンパク質、ベクター、組換えファージ粒子、宿主細胞、及びそれらのライブラリーを調製するために使用され得る。本明細書に記載のように、幾つかの実施態様において、ファージ又はファージミドの表面上にペプチドのアミノ末端(N−末端)ディスプレイライブラリーとして、候補チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)をディスプレイすることが有用であり得る。N−末端ファージ(中期)ディスプレイの方法は、本明細書に記載されるもの、及び当技術分野で周知されているもの、例えば、米国特許第5,750,373号(及びそこに引用される参考文献)に記載されるものが挙げられる。これらの方法により得られた結合剤分子を特徴付ける方法もまた、上記に引用した参考文献に開示されたもの(Jespersら、国際公開第00/06717号&米国特許第5,750,373号)及び本明細書に記載されるように当技術分野で知られている。
【0135】
(i)結合ファージの単離
ディスプレイされた候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)によるファージディスプレイライブラリーは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)に結合するライブラリーのメンバーを決定するために、インビトロでセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)、又はまたは融合タンパク質と接触させる。当業者に公知の任意の方法は、インビトロ結合タンパク質をアッセイするために使用することができる。例えば、1、2、3又は4回またはそれ以上の結合選択を行うことができ、その後個々のファージを単離し、任意でファージELISAで分析される。セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)を含む固定化ポリペプチドに対するペプチド提示ファージ粒子の結合親和性は、ファージELISAを用いて決定することができる(Barrett et al., Anal Biochem. 204:357-64 (1992))。
【0136】
候補が、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にβ鎖プロHGFのドメイン)を含むポリペプチドへの結合について既知のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)と競合する能力について評価されている状況において、適切な結合競合条件が提供される。例えば、一実施態様において、一以上の濃度の既知のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の存在下で、スクリーニング/選別/バイオパニングを行うことができる。別の実施態様において、ライブラリーから単離されたチモーゲン活性化分子(例えばZAP)が、続いて、既知のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の存在下で競合的ELISAアッセイで評価することができる。
【0137】
(II)セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)の調製
セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)は、従来の合成又は組換え技術を用いて、ドメインを含むタンパク質断片として、又は融合ポリペプチドとして簡便に生成することが可能である。融合ポリペプチドは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)が、発現研究、細胞局在化、バイオアッセイ、ELISA(競合的結合アッセイを含む)等において標的であるファージ(中期)ディスプレイに有用である。「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、第二のポリペプチドに融合したセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含む。第二のポリペプチドは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)に実質的に相同ではない。融合タンパク質は、任意の数の生物学的に活性な部分を含むセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインの全体に対して任意の部分(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むことができる。融合タンパク質は、次いで、アフィニティークロマトグラフィー及び第二のポリペプチドに特異的に結合する捕捉試薬を用いて既知の方法に従って精製することができる。セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)は親和性配列、例えばGST(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)配列のC末端に融合されてもよい。このような融合タンパク質は、例えば、固体支持体に結合したグルタチオン及び/又は固体支持体へのアタッチメント(例えば、ペプチドスクリーニング/選択/バイオパニングのためのマトリクス)を用いて、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含む組換えポリペプチドの精製を容易にする。更なる例示的な融合体は、このような融合のための幾つか一般的な用途を含め、表2に示す。
【0138】
融合タンパク質は、組換え法を使用して容易に作成することができる。セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)(又はその一部)をコードする核酸は、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にHGFプロHGFのβ鎖)のN末端、C末端又は内部で、核酸をコードする第二のドメインとインフレームで融合することができる。幾つかの実施態様において、第二のドメインは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)のC末端で融合する。融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成することができる。続いてキメラ遺伝子配列を生成するためにアニーリングして再増幅されうる二つの連続した遺伝子断片の間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いたPCR増幅もまた有用である。セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を融合タンパク質へインフレームにサブクローニングすることを容易にする多くのベクターが市販に入手できる。
【0139】
融合タンパク質の例として、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むGST−ポリペプチドの融合体は、以下のように目的の遺伝子から調製することができる。鋳型として目的の完全長遺伝子とともに、PCRは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むポリペプチドをコードするDNA断片を、サブクローニングを容易にするのに好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位を導入するプライマーを用いて増幅するために使用される。各増幅断片を適切な制限酵素で消化し、同様に消化したプラスミド、例えばGSTを含み、サブクローン化された断片がGSTとともにインフレームにあり、プロモーターに作動可能に連結するように設計されたpGEX6P−3又はpGEX−4T−3などにクローニングし、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むGSTポリペプチドをコードするプラスミドを得る。
【0140】
融合タンパク質を生成するために、適切な発現プラスミドを有する大腸菌の培養物は、一般に、LBブロスなどで対数期中期(A600=1.0)まで約37℃で増殖させ、IPTGで誘導することができる。細菌は、遠心分離によってペレット化し、PBSに再懸濁し、超音波処理により溶解される。懸濁液を遠心分離し、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むGST−ポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)は、グルタチオン−セファロース0.5mlのアフィニティークロマトグラフィーによって上清から精製される。
【0141】
多くの変法が、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含む単離されたポリペプチドの目標を達成し、本発明で使用することができることは当業者には明らかであろう、例えば、エピトープタグへ融合したセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)は上述の通りに構築することができ、タグは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にHGFプロHGFのβ鎖)の親和性精製に使用される。セリンプロテアーゼチモーゲンドメインまたはセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)は任意の融合体を含まずに調製することができ;加えて、タンパク質を産生する微生物ベクターを使用する代わりに、インビトロ化学合成を使用することができる。他の細菌、哺乳動物細胞(例えば、COSなど)、又はバキュロウイルス系などの他の細胞を、セリンプロテアーゼチモーゲンドメインまたはセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むポリペプチドを産生するために使用することができる。様々な融合体を生産する多種多様のポリヌクレオチドベクターも利用可能である。セリンプロテアーゼチモーゲンドメインまたはセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むポリペプチドの最終精製は、一般的に融合体のパートナーに依存し;例えば、ポリヒスチジンタグ融合体は、ニッケルカラムで精製することができる。
【0142】
(iii)ディスプレイされたペプチドの配列を決定する
所望の特性(および必要に応じて関連しない配列に結合しない)を持つセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を含むポリペプチドに結合するファージ(中期)を配列分析に供することができる。候補のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)を表示するファージ(中期)粒子が宿主細胞中で増幅され、DNAが単離され、(候補のペプチドをコードする)ゲノムの適切な部分が任意の適切な既知の配列決定法を用いて配列決定される。
【0143】
セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)−リガンド相互作用のモジュレーターを同定するための他のアプローチ
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)を同定する別のアプローチは、合理的な薬物設計を組み込むことである;つまりセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)の生物学を理解し利用することである。このアプローチにおいては、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の重要な残基が、そのままの状態で、必要に応じて、最適なペプチドの長さで決定される。次いで、小分子が手元のこの情報により設計される;例えばチロシンが、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)への結合に重要な残基であることが見いだされる場合、チロシン残基を含有する小分子を調製して試験する。一般に、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸残基が結合に重要であると決定され、候補の小分子活性化剤は、これらの残基又は残基の側鎖を含んで調製される。次いで、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)に結合し及び/又は活性化するそれらの能力について、例えば、実施例2及び3に記載される当技術分野で周知のプロトコールを使用してスクリーニングされる。
【0144】
1.チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)中の重要な残基を決定する
(a)アラニンスキャニング
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)のアラニンスキャニングは、セリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えばHGF)の結合及び/又は活性化における各残基の相対的寄与を決定するために用いることができる。チモーゲン活性化分子(例えばHGF)における重要な残基を決定するために、残基は単一アミノ酸と、典型的にはアラニンと置換と置換され、セリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えばHGF)の結合及び/又は活性化における影響が評価される。米国特許第5,580,723号;米国特許第5,834,250号;及び実施例を参照。
【0145】
(b)切断(欠損シリーズ)
チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の切断は、結合に重要な残基を解明するだけでなく、結合を達成するためのペプチドの最小の長さを決定することができる。場合によっては、切断は天然のリガンドよりもより強固に結合するリガンドを明らかにし;このようなペプチドは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)を調節するのに有用である。
【0146】
好ましくは、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の切断のシリーズが調製される。幾つかの実施態様において、切断はカルボキシ末端で開始される。アラニンスキャニングの場合、ペプチドは、インビトロで合成又は組換え法によって調製することができる。
【0147】
(c)合理的なモジュレーターの設計
アラニンスキャニング及び切断解析から得られた情報に基づいて、当業者は、小分子を設計し、合成することができ、又は結合を調節する可能性がある化合物が濃縮されている小分子ライブラリーを選択することができる。例えば、実施例に記載される情報に基づいて、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は適切な間隔を空けられた疎水性部分を含むように設計することができる。
【0148】
(d)結合アッセイ
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)とセリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えばHGF)の複合体の形成は、複合体形態のその非複合体形態からの及び不純物からの分離を促進する。セリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖):チモーゲン活性化分子(例えばZAP)融合体は溶液中で形成され又は片方の結合パートナーが不溶性支持体へ結合した場所で形成され得る。複合体は溶液から、例えばラムクロマトグラフィーを用いて分離することができ、周知の技術を用いて、濾過、遠心分離などにより固体支持体に結合させつつ分離することができる。セリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)又はそのためのチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の固体支持体への結合はハイスループットアッセイを容易にする。
【0149】
試験化合物は、候補の結合化合物の存在下および非存在下で、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)のセリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)との相互作用および/または活性を調節する(例えば、増加する)能力についてスクリーニングすることができ、スクリーニングは、例えば、マイクロタイタープレート、試験管、及び微小遠心管などの任意の適切な容器内で達成することができる。融合タンパク質が一又は両方のタンパク質がマトリックスに結合するのを可能にする追加のドメインを含む場合、融合タンパク質はまた試験または分離を容易にするために調製することもできる。例えば、GST−チモーゲン活性化分子(例えばZAP)融合タンパク質、又はセリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含むGST−ポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(SIGMA Chemical, St. Louis, MO) 上に又はグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着することができ、次いで試験化合物と、又は試験化合物及びセリンプロテーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテーゼ様チモーゲンドメインを含む非吸着ポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ鎖)又はチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の何れかと組み合わされ、その混合物は複合体形成を可能にする条件下で(例えば、塩及びpHの生理学的条件で)インキュベートされる。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄し、任意の未結合成分を除去し、ビーズの場合はマトリックスを固定化し、そして複合体は直接的又は間接的に決定される。あるいは、融合体をマトリックスから解離することができ、結合又は活性のレベルは、標準的な技術を用いて決定することができる。
【0150】
マトリックス上にタンパク質を固定化するための他の融合ポリペプチド技術は、スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。チモーゲン活性化分子(例えばZAP)又はセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)は、ビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジンシステムを使用して固定化することができる。ビオチン化は、多くの試薬、例えばビオチン−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS; PIERCE Chemicals, Rockford, IL)などを用いて達成され、ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルウェルプレート(Pierce Chemical)に固定化することができるあるいは、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)又はセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)を含むポリペプチドと反応するが、結合ペプチドのその標的分子に対する結合を妨げない抗体は、プレートのウェルに誘導体化することができ、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含む未結合ポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)は、抗体コンジュゲーションによってウェルに捕捉することができる。GST−固定化融合体において説明されたものに加えて、そのような融合体を検出する方法は、結合剤ペプチド又はセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)と反応する抗体を用いた融合体の免疫検出を含む。
【0151】
(e)結合についてアッセイ:ELISA
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の結合親和性を評価するために、競合結合アッセイを用いることができ、ここで、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)のセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメイン(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)を含むポリペプチドへ結合する能力(及び望まれる場合、結合親和性)が評価され、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)、例えば、本明細書に記載されるファージディスプレイによって決定される高親和性結合ペプチドへ結合することが知られている化合物のそれと比較される。
【0152】
多くの方法が知られており、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)(例えば、ペプチド、タンパク質、小分子)の結合親和性を同定するために使用することができ;例えば実施例2で定義されるように、例えば、結合親和性はELISAを用いてKd値として決定することができる。例えば、固相アッセイにおいて、アッセイプレートはマイクロウェルプレート(好ましくは、効率的にタンパク質を吸着するように処理された)をニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングすることによって調製することができる。非特異的結合部位は、その後、ウシ血清アルブミン(BSA)又は他のタンパク質(例えば、無脂肪乳)の溶液の添加によりブロックされ、次いで、好ましくは、例えば、Tween−20等の界面活性剤を含有する緩衝液で洗浄される。既知のビオチン化チモーゲン活性化分子(例えばZAP)(例えば、精製及び検出を容易にするために、GST又は他のそのような分子との融合体としてのファージペプチド)を調製し、プレートに結合させる。セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)により試験されるべき分子の段階希釈物が調製され、結合したチモーゲン活性化分子(例えばZAP)と接触させる。ウェルにそれぞれの結合反応物を加える前に、固定化された結合剤でコーティングされたプレートを洗浄し、短時間インキュベートした。更に洗浄した後、多くの場合、融合パートナーを認識する抗体により、及び標識化された(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)又はフルオレセインのような蛍光タグ)、一次抗体を認識する二次抗体により結合反応を検出した。次いで、プレートを(標識に応じて)適切な基質を用いて開発し、そしてシグナルは、分光光度プレートリーダーを使用するなどして定量化する。吸収シグナルは、最小二乗法適合を用いて、結合曲線に適合され得る。セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)に結合する様々な分子の能力は、既知のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の結合から測定することができる。
【0153】
当業者には明らかなのは、上記のアッセイの多くの変法である。例えば、アビジン−ビオチンベースのシステムの代わりに、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)は、基質に化学的に結合されてもよく、又は単に吸着されても良い。
【0154】
2.ファージディスプレイ中に発見されたチモーゲン活性化分子(例えばZAP)
チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)は、実施例に記載のものを含み、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)を含むポリペプチドの潜在的に有益な活性化因子である。
【0155】
ELISAは、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、特にプロHGFのβ−鎖ドメイン)を含むポリペプチドに結合するファージディスプレイされた各チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の有効性を決定する有用な手段である。
【0156】
3.アプタマー
アプタマーは、ほぼすべての分子を認識し特異的に結合するために使用することができる短いオリゴヌクレオチド配列及びペプチド配列を含む。指数関数的濃縮(SELEX)工程によるリガンドの系統的進化は(例えば、Ellington and Szostak, Nature. 346:818-22 (1990); Tuerk and Gold, Science. 249:505-10 (1990)を参照)、そのようなアプタマーを見つけるために使用することができる。アプタマーは、多くの診断及び臨床用途があり;抗体が臨床的又は診断的に使用されるほぼすべての使用において、アプタマーを使用することができる。更に、アプタマーは、ひとたびそれらが同定されると製造することが安価であり、薬学的組成物、バイオアッセイ及び診断試験における投与を含み、様々な形態で容易に適用することができる(Jayasena, Clin Chem. 45:1628-50 (1999))。
【0157】
上述の競合的ELISA結合アッセイにおいて、候補のアプタマーのスクリーニングは、そのアッセイにアプタマーを組み込み、セリンプロテアーゼドメインまたはセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、具体的にはプロHGFのβ鎖)を活性化する能力を決定することを含む。
【0158】
4.抗体(Ab(複数))
セリンプロテアーゼドメインまたはセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF、具体的にはプロHGFのβ鎖)を調節し(又は活性化する)任意の抗体は、セリンプロテアーゼドメインまたはセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)のモジュレーターであり、相互作用(例えばc−Met)を標的とし得る。好適な抗体の例には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体、またはそのような抗体のヒト化バージョン又はその断片が挙げられる。抗体は、合成起源および免疫応答を上昇させることができる任意の種を含む、任意の適切な供給源からであってもよい。
【0159】
スクリーニング方法
本発明は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を調節するものを同定する化合物をスクリーニングする方法を包含する。一態様では、本明細書で提供されるのは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドに特異的に結合し、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドを活性化することが可能なチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を同定する方法であり、前記方法は、(a)プロ形態のセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド又はその断片を含む第一のサンプルを候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)と接触させ、(b)成熟形態のセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド又はその断片を含む第二のサンプルを候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)と接触させ、(c)(a)と(b)の中の候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の結合の量を測定することを含み、ここで(b)と比較して(a)中の候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)のより強い結合は、候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)がセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドに特異的に結合し、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドを活性化するすることが可能であることを示している。
【0160】
幾つかの実施態様において、本方法は、候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)及び標的の存在下でプロ形態にあるセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド又はその断片の活性をアッセイすることを更に含み、ここで活性は、候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)が、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドを特異的に結合し、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドを活性化することができることを示している。
【0161】
スクリーニングの任意の方法の幾つかの実施態様において、チモーゲン活性化分子はZAPである。スクリーニングの任意の方法の幾つかの実施態様において、候補のZAPは、本明細書に記載の一以上のZAP又はZAP融合体である。
【0162】
スクリーニングの任意の方法の幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドは、HGF、MSP、FVII、FIX、FX、FXI、FXII、Glu−プラスミノーゲン、Lys−プラスミノーゲン、プロテインC、プロトロンビン、プラズマカリクレイン、プロスタシン、エンテロキナーゼ、トリプシン2、トリプシン1、キモトリプシンB、ヘプシン、HGFA、マトリプターゼ、テスチシン、トリプターゼアルファ1、トリプターゼベータ1、トリプターゼベータ2、トリプターゼガンマ、ニューロトリプシン、アポリポタンパク質A、MASP1、MASP2、PSA KLK3、ハプトグロビン、補体C1r、補体C1s、ウロキナーゼuPA、tPA、又は補体因子Dである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチドは、HGF、MSP、ヘプシン、HGFA、又はマトリプターゼである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、プレトロンビン2又はプロトロンビンである。幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドは、プロテインCである。
【0163】
スクリーニングの任意の方法の幾つかの実施態様において、標的はc−Metである。スクリーニングの任意の方法の幾つかの実施態様において、セリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチドはHGFであり、プロ形態でセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含ポリペプチド又はその断片はプロHGFであり、成熟形態のセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド又はその断片は成熟HGFである。
【0164】
スクリーニングアッセイは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)と結合し又は複合体形成する化合物、又はさもなければセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)及び細胞因子を活性化する化合物を同定するために設計されている。モジュレーターであるべき候補のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の能力を決定するための一つのアプローチは、例えば、本明細書に開示されるチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)(例えば、実施例に記載の高親和性結合剤)の何れかなど、分子(例えば、ZAP)を活性化する既知のチモーゲンの存在下における競合アッセイにおいて候補のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の活性を評価することである。このようなスクリーニングアッセイは、化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングに適したアッセイを含み、それらを小分子薬剤候補の同定に特に適したものとしている。
【0165】
アッセイは多様な形式で行うことができ、当該分野で良く特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、及び細胞ベースのアッセイを含む。
【0166】
結合アッセイでは、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)とセリンプロテアーゼチモーゲンドメイン又はセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)間の相互作用は結合であり、反応混合物中で形成された複合体は単離され又は検出することができる。特定の実施態様において、候補の物質又は分子は、共有結合または非共有結合により、固相上、例えばマイクロタイタープレート上に固定化される。非共有結合は、一般に、物質/分子の溶液で固体表面をコーティングすることによって又は乾燥によって達成される。あるいは、固定化すべき物質/分子に特異的な抗体、例えばモノクローナル抗体等の固定化親和性分子は、固体表面に係留させるために使用することができる。アッセイは、検出可能な標識によって標識されていてもよい非固定化成分を、固定化された成分に、例えば、係留成分を含むコーティング表面に加えることにより行われる。反応が完了したとき、未反応成分は例えば洗浄することによって除去され、固体表面に係留された複合体が検出される。もとの非固定化成分が検出可能な標識を持つ場合、表面上に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示している。元々の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識化抗体を用いることによって、検出することができる。
【0167】
候補化合物が、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)と相互作用する場合、ポリペプチドとの相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するための公知の方法によってアッセイすることができる。このようなアッセイは、例えば、架橋、共免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーカラムによる同時精製等の伝統的なアプローチを含む。更に、タンパク質−タンパク質相互作用は、記載された酵母系の遺伝子系を用いることによってモニタリングすることができる。例えば、Chevray and Nathans, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 5789-5793 (1991)により開示されるように、Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:9578-9582 (1991)) を参照。酵母菌GAL4などのの多くの転写活性化因子は、一方がDNA結合ドメインとして作用し、他方が転写活性化ドメインとして機能する2つの物理的に別個のモジュラードメインからなる。上述の出版物に記載の酵母発現系(一般に「2−ハイブリッド系」と呼ばれる)はこの特性を利用しており、一方が標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合され、他方が候補の活性化タンパク質が活性化ドメインに融合された、二つのハイブリッドタンパク質を用いている。GAL4活性化プロモーターの制御下でのGAL1−lacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β−ガラクトシダーゼに対する発色基質で検出される。ツーハイブリッド技術を用いた2つの特異的タンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER
TM)は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に関与するタンパク質ドメインをマッピングするため、並びにこれらの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定のために拡張することができる。
【0168】
上記スクリーニング方法のいずれかにおいて、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)への結合能力を測定することにより、候補化合物の、及び公知の高親和性チモーゲン活性化分子(例えばZAP)(例えば、本明細書に記載されるものの一つなど)の調節能力を評価することがしばしば所望される。
【0169】
候補化合物は、本明細書に記述された情報、特にセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の結合への寄与及び重要性、及びリガンド又はセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)配列それ自体の内の個々の残基及び部分の活性化相互作用に関する情報に基づいて、既知のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)のコンビナトリアルライブラリー及び/又は変異によって生成することができる。
【0170】
本明細書に記載されるように、チモーゲン活性化分子は、ZAPとすることができる。このようなペプチドを得る方法は、当技術分野で知られており、ペプチドライブラリーのスクリーニングが含まれる。ペプチドのライブラリーは、当技術分野で知られており、また、従来の方法に従って調製することができる。例えば、Clarkらによる米国特許第6,121,416号を参照。ファージコートタンパク質などの異種タンパク質成分に融合されたペプチドのライブラリーは、上掲のClarkらに記載されているように当技術分野で知られている。一実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に結合し、活性化する能力を持つZAPは、本明細書に開示されたZAPのいずれかのアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に結合し、活性化する能力を持つZAPは、上記のようにモジュレータースクリーニングアッセイから得られたZAPのアミノ酸配列を含む。一実施態様において、ZAPは、本明細書に開示されたZAPの一又は複数と、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に対する結合について競合する能力を有する。第一のZAPの変異体は、目的の特性(例えば、標的結合親和性を高める、強化された薬物動態、毒性の減少、改善された治療指数など)を得るために、ペプチドの変異体をスクリーニングすることによって生成することができる。突然変異誘発技術は、当該技術分野において周知である。更に、スキャニング変異誘発技術(例えば、アラニンスキャニングに基づくもの)は、ペプチド内の個々のアミノ酸残基の構造及び/又は機能的重要性を評価するために特に有用であり得る。
【0171】
本明細書に開示されたZAPなどのチモーゲン活性化分子の、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)活性を調節する能力の決定は、インビトロ又はインビボアッセイにおいて物質/分子の調節能力を試験することによって行うことができ、それらは Martins et al. (J. Biol. Chem. 278(49):49417-49427 (2003))及びFaccio et al. (J. Biol. Chem. 275(4):2581-2588 (2000)) に開示されるように、当該技術分野で良く確立されている。
【0172】
使用例
本明細書に記述されるチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の同定及び特徴づけは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の細胞機能に価値ある洞察を提供し、この重要な細胞タンパク質とその結合パートナーとの間のインビボでの相互作用を調節するための組成物及び方法を提供する。例えば、これらのチモーゲン活性化分子(例えばZAP)及びそのホモログは、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)のインビボの結合相互作用及び活性化を高めるために利用することができる。ホモログは本明細書で提供される、十分に特徴付けられたチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)に対するそれらの結合及び/又は機能的特性に基づいて好都合に生成することができる。これらのチモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、さらに、インビボの複合体でセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を構成する細胞性及び生理学的ポリペプチドを解明するために利用することができる。
【0173】
本明細書に記載されるように、十分に特徴付けられた中程度から高度親和性のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)そのものの重要な構造的特徴を解明するために更に使用することができる。そのような知識は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の修飾に基づいたチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の開発を提供する。本発明は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の標的に結合し及び/又は活性化する能力が強化された本明細書に記載されるセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)を提供する。他の変異体も同様に同定することができる。
【0174】
本明細書に記載されるチモーゲン活性化分子(例えばZAP)に基づいて開発されたチモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、目的の調節作用を達成するために使用することができる。例えば、そのような操作は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)及びその同族結合タンパク質(例えば、c−Met)間の会合の活性化を含み得る。別の例において、そのような操作は、例えば、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の結合の結果として細胞機能の誘導を通じた、又はモジュレーターによる、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)及びその同族結合タンパク質(例えば、c−Met)間の会合の強化を通じたアゴニスト作用を含み得る。
【0175】
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の他の使用は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)及びその会合パートナーに関連する疾患の診断アッセイ、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)及び精製のハンドル及び基質に対する係留としての融合タンパク質中のパートナーの使用が含まれる。
【0176】
本明細書に記載されるように、様々な親和性で、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に結合可能なチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の同定は、生体内での生物学的に重要な相互作用を調節するのに有用な手段を提供する。当技術分野で十分に確立されているように、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメイン(例えば、HGF)は、細胞増殖および細胞遊走の調節を含む重要な生物学的プロセスに関与している。セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)は、タンパク質の機能に必須であると報告されたドメインである。これらの相互作用を調節することが可能であるチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の同定は、治療及び/又は診断的適用の道、及びこのような分子と相互作用の知識無くしては不可能である戦略を指し示す。特定の組織、細胞、器官、又は病理学的状態においてセリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の相互作用の生理学的重要性を調節し、場合によっては検証するために、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、セリンプロテアーゼドメイ又はセリンプロテアーゼ様ドメイン(例えば、HGF)を含むポリペプチド特異的チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)として機能するために、当該分野で公知の適切な投与経路を使用して、例えばマイクロインジェクション、アンテナペディアペプチドまたは脂質トランスフェクション試薬を通じて、生きた細胞内に送達することができる。
【0177】
セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の相互作用、及び該相互作用のモジュレーションの生理学的作用をモニターするための好適なアッセイが存在する。このことは、セリンプロテアーゼドメイン又セリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の生理的リガンドは、ファージディスプレイによって発見されることを必要とせず、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)が、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)に対して、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)により前記リガンドの活性化を促進するのに十分な親和性で結合するだけである。最後に、疾患プロセスと連動する任意のタンパク質と同様に、薬物が治療上の利益を達成するために、いかにタンパク質に影響を及ぼすかを確立する必要がある。目的のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)による、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)−リガンド相互作用の活性化が治療上の利益の期待と一致して結果を与えるかどうかを判断するために、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)は又は疾患のモデルである(すなわち疾患の特定の特性を模倣した)動物モデル生きた細胞に送達され得る。
【0178】
インビボでのタンパク質−タンパク質(又はペプチド)の相互作用を検出する方法は、当該分野で公知である。例えば、Michnickらにより米国特許第6,270,964B1号&第6,294,330B1号に記載される方法は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)(本明細書に記載される任意を含む)及び同族リガンド又は合成ZAP(本明細書に記載される任意を含む)の相互作用及び/又は活性を分析するために用いることができる。更に、これらの方法は、セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインタンパク質を含むポリペプチド(例えば、HGF)及びその同族のリガンドのインビボでも結合相互作用及び/又は活性を調節する合成ZAPなどの分子の能力を評価するために使用することができる。
【0179】
薬学的製剤
本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の薬学的製剤は、所望の程度の純度を有するチモーゲン活性化分子(例えばZAP)と一以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.: Williams and Wilkins PA, USA (1980))とを、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で混合することによって調製される。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに毒性でなく、そしてこれには、限定しないが、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。本明細書における典型的な薬学的に許容される担体は、介在性薬物分散剤、例えば、水溶性の中性アクティブヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を更に含む。所定の典型的なsHASEGP及び使用法は、rHuPH20を含み、米国特許出願公開第2005/0260186号及び第2006/0104968に開示されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加のグルコサミノグリカンと組み合わされる。
【0180】
任意の薬学的製剤の幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号2)を含み、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N、Q、D−Gly、D−Asp、D−Glu、D−Asn,又はD−Glnであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列 X
1−X
2−X
3−X
4−B
n (配列番号31)からなり、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N又はQであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(即ち、X
3はG、D、E又はQである)(配列番号32)。幾つかの実施態様において、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンである(配列番号4)。幾つかの実施態様において、X
1はL、I、又はVである(配列番号5)。幾つかの実施態様において、X
1はIである(配列番号7)。幾つかの実施態様において、X
2はM、L、I、V、ノルロイシン、F、又はYである(配列番号8)。幾つかの実施態様において、X
2はI、V、L又はFである(配列番号9)。幾つかの実施態様において、X
2はI又はVである(配列番号10)。幾つかの実施態様において、X
3はG、D、又はNである(配列番号11)。幾つかの実施態様において、X
3はGである(配列番号12)。幾つかの実施態様において、X
4はGである(配列番号13)。幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインに結合し、c−Metシグナル伝達を活性化する。幾つかの実施態様において、ZAPは約100μM未満(例えば約25μM未満)のKdにより測定されるような結合親和性を有する。
【0181】
本明細書の製剤はまた、治療を受けている特定の徴候のために必要な一以上の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものが含まれる場合がある。このような活性成分は、意図した目的のために有効な量で組み合わされ適切に存在する。
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合法によって、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル、コロイド薬物送達系で(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロ・エマルジョンで調製されたマイクロカプセルに封入されてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示される。
【0182】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例は、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスが成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形をしている。
【0183】
インビボ投与に使用される製剤は、一般的に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、達成することができる。
【0184】
治療/予防方法及び/又は使用
セリンプロテアーゼドメイン又はセリンプロテアーゼ様ドメインを含むポリペプチド(例えば、HGF)の活性を増加させる特性を有する化合物は有用である。この活性の増加は、種々の方法で、例えば、本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)のうちの1つ以上の有効量を、それを必要とする被験者に投与することにより、起こることがある。
【0185】
本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の何れかは、治療方法に使用することができる。
【0186】
一態様では、医薬として使用するためのチモーゲン活性化分子(例えばZAP)が提供される。更なる態様において、組織修復及び/又は組織再生を促進する方法において使用するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)が提供される。ある実施態様において、本発明は、組織修復及び/又は組織再生を促進するチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を個体に投与することを含む、個体における組織修復及び/又は組織再生を促進する方法において使用するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を提供する。ある実施態様において、治療の方法で使用するためのチモーゲン活性化分子(例えばZAP)が提供される。ある実施態様において、チモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を個体に投与することを含む、線維症及び/又は肝硬変を有する個体を治療する方法において使用のためのチモーゲン活性化分子(例えばZAP)が提供される。一つのそのような実施態様において、本方法は、例えば後述するように、少なくとも1つのさらなる治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。更なる実施態様において、本発明は、創傷治癒を促進するのに使用するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を提供する。ある実施態様において、本発明は、創傷治癒を促進するチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を個体に投与することを含む、個体における創傷治癒を促進する方法において使用するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を提供する。更なる実施態様において、本発明は、創傷治癒を促進するのに使用するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を提供する。ある実施態様において、本発明は、細胞増殖及び/又は細胞遊走を促進するチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を個体に投与することを含む、個体における細胞増殖及び/又は細胞遊走を促進する方法において使用するためのチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)を提供する。上記実施態様のいずれかに記載の「個体」は、好ましくはヒトである。
【0187】
更なる態様にて、本発明は、医薬の製造または調製におけるチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の使用を提供する。一実施態様において、医薬は線維症及び/又は肝硬変の治療のためである。更なる実施態様において、医薬は、線維症及び/又は肝硬変を有する個体に、医薬の有効量を投与することを含む、線維症及び/又は肝硬変を治療する方法において使用するためのものである。一つのそのような実施態様において、本方法は、例えば後述するように、少なくとも1つの更なる治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。更なる実施態様では、医薬は、組織再生及び/又は組織修復を促進するためのものである。更なる実施態様にて、医薬は、組織再生及び/又は組織修復を促進するために本医薬の有効量を個体に投与することを含む、個体における組織再生及び/又は組織修復を促進する方法で使用するためのものである。更なる実施態様では、医薬は、創傷治癒を促進するためのものである。更なる実施態様にて、医薬は、創傷治癒を促進するために本医薬の有効量を個体に投与することを含む、個体における創傷治癒を促進する方法で使用するためのものである。更なる実施態様では、医薬は、細胞増殖及び/又は細胞遊走を促進するためのものである。更なる実施態様にて、医薬は、細胞増殖及び/又は細胞遊走を促進するために本医薬の有効量を個体に投与することを含む、個体における細胞増殖及び/又は細胞遊走を促進する方法で使用するためのものである。上記実施態様の何れかに記載の「個体」は、ヒトであり得る。
【0188】
更なる態様にて、本発明は、線維症及び/又は肝硬変を治療する方法を提供する。一実施態様において、本方法はそのような線維症および/または肝硬変。を有する個体に、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の有効量を投与することを含む。一つのそのような実施態様において、この方法は、後述するように、少なくとも1つのさらなる治療剤の有効量を個体に投与することを更に含む。上記実施態様の何れかに記載の「個体」は、ヒトであり得る。
【0189】
更なる態様において、本発明は個体において組織再生又は組織修復の促進のための方法を提供する。一実施態様において、本方法は、組織再生又は組織修復を促進するために個体にチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は個体において創傷治癒の促進のための方法を提供する。一実施態様において、本方法は、創傷治癒を促進するために個体にチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は個体において細胞遊走及び/又は細胞増殖の促進のための方法を提供する。一実施態様において、本方法は、細胞遊走および/または細胞増殖を促進するために個体にチモーゲン活性化分子(例えば、ZAP)の有効量を投与することを含む。一実施態様において、「個体」はヒトである。
【0190】
本明細書に記載の使用及び/又は方法の何れかの幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列 X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号2)を含み、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N、Q、D−Gly、D−Asp、D−Glu、D−Asn,又はD−Glnであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号31)からなり、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG、D、E、N又はQであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(即ち、X
3はG、D、E又はQである)(配列番号32)。幾つかの実施態様において、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンである(配列番号4)。幾つかの実施態様において、X
1はL、I、又はVである(配列番号5)。幾つかの実施態様において、X
1はIである(配列番号7)。幾つかの実施態様において、X
2はM、L、I、V、ノルロイシン、F、又はYである(配列番号8)。幾つかの実施態様において、X
2はI、V、L又はFである(配列番号9)。幾つかの実施態様において、X
2はI又はVである(配列番号10)。幾つかの実施態様において、X
3はG、D、又はNである(配列番号11)。幾つかの実施態様において、X
3はGである(配列番号12)。幾つかの実施態様において、X
4はGである(配列番号13)。幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインに結合し、c−Metシグナル伝達を活性化する。幾つかの実施態様において、ZAPは約100μM未満(例えば約25μM未満)のKdにより測定されるような結合親和性を有する。
【0191】
更なる態様において、本発明は、例えば、上記の治療法のいずれかに使用のための、本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一実施態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供されるチモーゲン活性化分子(例えばZAP)のいずれか、及び薬学的に許容される担体を含む。その他の実施態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供されるチモーゲン活性化分子(例えばZAP)のいずれかと、少なくとも1つの更なる治療剤を、例えば後述するように含む。
【0192】
本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、治療において、単独で、または他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)が少なくとも1つのさらなる治療剤と同時投与することができる。
【0193】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一または別々の製剤に含まれている)、及び、本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の投与が、追加の治療剤の投与の前、同時、及び/又はその後に起きうる分離投与を包含する。
【0194】
本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、任意の適切な手段によって投与することができ、経口、肺内、および鼻腔内、及び局所治療が所望される場合、病巣内投与、局所投与、又は眼内投与病巣内投与が含まれる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存し、任意の適切な経路、例えば、静脈内または皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、様々な時間点にわたる、単一または複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書で考えられている。
【0195】
チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、良好な医療行為に一致した形で処方され、投与量が決められ、投与される。この観点において考慮すべき要因は、治療すべき特定の障害、治療すべき特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を包含する。チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は必要ではないが、任意で、問題となる障害の予防又は治療のために現在使用中の一又は複数の薬剤ともに処方される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは一般的には本明細書に記載されるのと同じ用量及び投与経路において、又は、本明細書に記載された用量の1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の用量及び任意の経路により使用される。
【0196】
疾患の予防又は治療のためには、本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の適切な用量(単独で使用されるか、又は、一以上の更なる治療的薬剤との組み合わされる場合)は治療すべき疾患の種類、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)の種類、疾患の重症度及び経過、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)を予防又は治療目的のいずれにおいて投与するか、以前の治療、患者の臨床的履歴及びチモーゲン活性化分子(例えばZAP)に対する応答性、及び担当医の判断に依存する。チモーゲン活性化分子(例えばZAP)は、患者に対して、単回、又は一連の治療に渡って適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、チモーゲン活性化分子(例えばZAP)約10ng/kgから100mg/kg(例えば0.01mg/kgから50mg/kg)が患者への投与のための初期候補用量となり得る。好ましくは、投与量レベルは、1日あたり約0.1から約250mg/kg;より好ましくは1日あたり約0.5から約100mg/kgであろう。適切な投与量レベルは、1日あたり約0.01から約250mg/kg、1日あたり約0.05から約100mg/kg、又は1日あたり約0.1から約50mg/kgであり得る。この範囲において、投与量は1日あたり約0.05から0.5mg/kg、0.5から5mg/kg又は5から50mg/kgの何れかであり得る。経口投与の場合、組成物は、好ましくは、活性成分の約1.0から約1000ミリグラムを、具体的には治療される患者への投薬量の症候に応じた調節のため、活性成分を約1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0、及び1000.0ミリグラムの何れかを含有する錠剤の形態で提供される。化合物は1日あたり1から4回のレジメンで、好ましくは1日あたり1回又は2回投与されうる。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者がチモーゲン活性化分子(例えばZAP)の約2から約20投与量、又は例えば約6投与量を受けるように)投与してよい。初期の高負荷投与量の後に一以上の低投与量が投与され得る。しかしながら、他の投与量レジメンも有益であり得る。この治療の進行は、従来技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0197】
製造品
別の実施態様において、上述した疾患及び障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器とラベルまたは容器上にある又は容器に付属するパッケージ挿入物を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグ等を含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な物質から形成されうる。容器は、疾患及び/又は障害の治療、予防、及び/又は診断に有効である、それ自体か、又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針による穴あきストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は、本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)である。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が選択した疾患及び/又は障害の治療のために使用されることを示している。更に、製造品は、(a)組成物が本明細書に記載のチモーゲン活性化分子(例えばZAP)を包含する組成物を含む第一の容器;および(b)組成物が更なる治療的薬剤を包含する組成物を含む第2の容器を含み得る。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の疾患及び/又は障害を治療することに用いることができることを示すパッケージ挿入物をさらに含んでいてもよい。別法として、または加えて、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含む第二(または第三)の容器をさらに含んでもよい。これは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザーの立場から望まれる他の物質のさらに含んでもよい。
【0198】
任意の製造品の幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列X
1−X
2−X
3−X
4−B
n(配列番号2)を含み、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG,、D,、E,、N,、Q,、D−Gly,、D−Asp,、D−Glu,、D−Asn,又はD−Glnであり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。幾つかの実施態様において、ZAPは、アミノ酸配列、X
1−X
2−X
3−X
4−B
n、(配列番号3)からなり、ここでX
1は大きな疎水性アミノ酸であり、X
2は大きな疎水性アミノ酸又は芳香族アミノ酸であり、X
3はG,、D,、E,、N、Q又はDアミノ酸であり、X
4はG又はAであり、Bは任意のアミノ酸であり、nは0−46の数字である。任意のZAPの幾つかの実施態様において、X
1はVであり、X
3はNではない(即ち、X
3はG、D、E又はQである)(配列番号32)。幾つかの実施態様において、X
1はM、L、I、V又はノルロイシンである(配列番号4)。幾つかの実施態様において、X
1はL、I、又はVである(配列番号5)。幾つかの実施態様において、X
1はIである(配列番号7)。幾つかの実施態様において、X
2はM、L、I、V、ノルロイシン、F、又はYである(配列番号8)。幾つかの実施態様において、X
2はI、V、L又はFである(配列番号9)。幾つかの実施態様において、X
2はI又はVである(配列番号10)。幾つかの実施態様において、X
3はG、D、又はNである(配列番号11)。幾つかの実施態様において、X
3はGである(配列番号12)。幾つかの実施態様において、X
4はGである(配列番号13)。幾つかの実施態様において、ZAPは、プロHGFのβ鎖ドメインに結合し、c−Metシグナル伝達を活性化する。幾つかの実施態様において、ZAPは約100μM未満(例えば約25μM未満)のKdにより測定されるような結合親和性を有する。
【0199】
以下の実施例が、本発明の好ましい実施態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施のための好ましい様式の構成要素となる考えることができると当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が、開示され、本発明の要旨を逸脱しない範囲で同様又は類似の結果が得られる具体的な態様で行うことができることを理解するべきである。
【実施例】
【0200】
実施例の材料と方法
組換えタンパク質の産生及びペプチド合成
完全長の組換えHGFタンパク質は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の1リットルの発酵培養で発現させ、前述のように精製した (Peek, M. et al. (2002) J Biol Chem 277: 47804-9)。全ての突然変異は、QuikChange
TM部位特異的突然変異誘発法(Stratagene)を用いて導入し、DNA配列決定により確認した。タンパク質は、記載されるように、HiTrap−セファロースSPカチオン交換クロマトグラフィーを用いて精製した (Peek, M. et al. (2002) J Biol Chem 277: 47804-9)。還元条件下でのSDS−PAGE(4−20%勾配ゲル)分析は、タンパク質が>95%の純度であることを明らかにした。
【0201】
使用したHGFβ鎖構築物(残基Val
495からSer
728)はC604S変異を含み、scHGFβ鎖(残基Asn
479からSer
728)はR494E変異を含んでおり;両方とも以前に記述されている(Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35)。タンパク質は、昆虫細胞でpAcGP67ベクター(BD Biosciences)からC末端His−タグ融合物として発現させ、前述のように精製した(Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35)。ペプチドは、C末端アミドとして合成し、前述のように精製した (Lowman, H. B. et al. (1998) Biochemistry 37: 8870-8)。
【0202】
クローニング、発現及び昆虫細胞からのMetのAviTagセマ(Sema)/PSIドメインの精製は記載されている (Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35; Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。精製されたセマ/PSI断片を、製造者のプロトコルに従ってAviTagインビトロビオチン化キット(GeneCopoeia)を用いてビオチン化した。
【0203】
ファージライブラリーの構築及びパンニング
pfamデータベース(Finn, R. D. et al. (2010) Nucleic Acids Res 38: D211-22) を、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼのコンセンサス配列を導出し、N−末端IVGGモチーフを同定するために使用した。ペプチドライブラリーは、M13ファージの遺伝子VIIIコートタンパク質との融合体として合成され、前述のようにscHGFβに対してパニングした(Tonikian, R. et al. (2007) Nat Protoc 2: 1368-86; Sidhu, S.S. et al. (2000) Methods Enzymol. 328:333-63)。4ラウンドの溶液分類後、ファージ力価の5倍の濃縮が、バックグランドを上回るscHGFβについて観察された。単一ファージのクローンを拾い、一晩増殖させ、標準的なファージELISAを標的特異的結合を確認するために使用した。ひとたびIVGG.14配列が同定されると、遺伝子VIIIのソフトランダム化が位置X
2−X
11について行われた。4ラウンドのパニング後に、340倍濃縮が観察され、最終モチーフは、36のユニークな配列のアラインメントにより生成された(表3)。
【0204】
活性に基づく選別が行なわれる場合、ファージライブラリーは0.5μMのscHGFβ溶液中で4℃でインキュベートされ、次いで、この混合物を、活性化複合体を捕捉するために、5μg/mlのMetセマPSI ECDタンパク質でコーティングされたMaxi−Sorpプレートに適用した。活性に基づく選別からのファージクローンを分析するために、2回のELISAを、結合及び活性を分析するために別々に行った。1回目のELISAは、BSA対照に対して、5μg/mlのscHGFβでコーティングされたウェルへの直接的ファージ結合を測定した。2回目の活性ELISAは、溶液中で0.5μMscHGFβの存在下又は非存在下(陰性対照)で5μg/mlのMetでコーティングしたウェルへのファージ結合を測定した。これらの2回のELISAからのデータは、y軸上に直接結合を、x軸上にMet捕獲(活性)がプロットされた。
【0205】
scHGFβの活性化/Met結合アッセイ
Met結合アッセイは、既報の通りOctetRed
TMバイオレイヤー干渉測定器(ForteBio, Inc.) を利用した(Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。ビオチン化Met ECD(セマ/PSI−AviTag)は、ストレプトアビジン光学センサーチップ(SA biosensors, ForteBio, Inc.)の表面に捕捉され、増加する濃度の示されたペプチドの存在下で、0.5μMのscHGFβ鎖変異体を含有する緩衝液に移した。会合及び解離反応を、scHGFβとMet間の可逆的な結合を確実にするために監視した。結合は、会合反応からの表面応答の定常状態レベルを用いて定量した。平衡定数は、単一部位結合の式に対する滴定データの最小二乗フィッティングにより誘導された。報告される誤差は、n=3の独立実験の±標準偏差である。
【0206】
細胞生存アッセイ
BxPC−3細胞をATCCから入手し、細胞培養培地(RPMI、10%FBS(Sigma)、50U/mlのペニシリン/50μg/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミン)中で維持した。生存アッセイのために、細胞は、50μlのアッセイ希釈液(RPMI、0.1%BSA(Sigma) 50U/mlのペニシリン/50μg/mlのストレプトマイシン、2mMのグルタミン)中で96ウェル組織培養プレート(Falcon353072)中に10,000細胞/ウェルで播種した。細胞は、37℃のCO
2インキュベーター中で1−2時間付着させた。ヒトHGFタンパク質(HGF、scHGF又はscHGF+ペプチド滴定)は、アッセイ希釈液中、室温でプレインキュベートした。HGF/ペプチド混合物を、ウェル当り50μlで三通りマイクロタイタープレート中の細胞に添加し、プレートをCO
2インキュベーター中で37℃でインキュベートした。HGF変異体の最終濃度は400ng/mlであり、ペプチド濃度はそれに基づいて滴定した。72時間後、25μlのアラマーブルー(Serotec, BUF012B)を各ウェルへ添加し、更に2時間、CO
2インキュベーター中で37℃でインキュベートした。プレートを室温で10分間勢いよく攪拌し、蛍光を蛍光プレートリーダーにで530−590nmで読み出した。
【0207】
構造決定
HGFβV495G及びMetセマ−PSI ECDタンパク質を、前述のように精製した (Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35)。100%DMSO中の純粋な100mMのIVGG.14ペプチドが、10mMのHepes、150mMのNaCl、pH7.2の中で、総タンパク質が10mg/mlに予め濃縮されたHGFβV495G及びMetセマPSI ECDの1:1の化学量論混合物に添加された。最終のペプチド及びDMSO濃度は、それぞれ、1mM及び1%であった。回折品質の結晶は、リザーバ(0.1MのTris、pH8.5、10%のP6000、0.8MのNaCl、0.4Mのトリメチルアンモニウムオキシド)で希釈された等量のシードストックと混合した上記複合体を含有する2μLのドロップ中で3日間で成長した。結晶は、リザーバ溶液に加えたPEG400の濃度を増加させて、結晶を順次移すことにより脱水した。脱水溶液の最終濃度は35%のP400であり、この同じ溶液をクライオプロテクタントとして使用し、結晶を液体窒素中に浸することによって保存した。
【0208】
3Åに至る回折データを、Advanced Photon Source (APS)のビームライン21−IDFで、110Kで、プリミティブ斜方格子中で、Shamrock Biostructures LLCによって収集した(表6)。構造は、PDBエントリー1SHYにあるHGFβ/Met複合体を用いて、PHASER (McCoyら、2007)を用いて空間群P2
12
12
1において分子置換により解かれた。初期電子密度マップは、Met PSIドメイン(残基517から564)の大きな剛体シフトを、及びHGFβのN末端領域において著しい変化を示した。PSIドメイン及びHGFβの残基Val495−Trp507の欠損の手動適合、そしてphenix.refine(Adamsら、2010)を使用したシミュレーテッドアニーリングによる精密化の後、HGFβのN末端領域の差の電子密度は、変異体HGFβのN末端セグメントよりもペプチドのそれとして明白に割り当てられた。Trp−Trp−Metトリペプチドは特に明瞭であった。Coot (Emsleyら、2010) を用いた更なる変化及びREFMAC5 (Murshudovら、1997)を用いた精密化は、表6に表示される統計により特徴づけられる最終モデルをもたらした。
【0209】
チモーゲンセリンプロテアーゼ活性アッセイ
チモーゲンセリンプロテアーゼであるプレトロンビン2及びプロテインCは、Haematologic Technologies, Inc. (Essex Junction, VT)から購入した。速度論的アッセイは、20mMのHepes、150mMのNaCl、5mMのCaCl
2、0.01%のトリトンX−100、pH7.2の中で行った。全ての反応は、100nMの酵素と2mMのIle−Pro−Arg−pNA基質を含んでいた。IVGG.147Aを滴定し、基質加水分解の初期速度を、SpectraMax Plus (Molecular Devices, Inc.)上で405nmの吸光度を用いて透明底の96−ウェルプレート中で測定した。
【0210】
実施例1:活性化ポケット特異的ペプチドライブラリーを用いたチモーゲン様scHGFβのファージングは、高度に保存された配列モチーフを生じる。
HGFβ(scHGFβ)のチモーゲン様形態の活性ポケットに高い親和性で結合することができるペプチドを同定するために、ファージペプチドライブラリーを、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインのN末端残基内に見いだされる構造及び配列相同性に基づいて操作した。興味深いことに、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインの活性化ポケットとHGFβとの間の高い構造的相同性が存在し(Kirchhofer, D. et al. (2004) J Biol Chem 279: 39915-24; Kirchhofer, D. et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104: 5306-11)、N末端挿入機構の機能の保存を明確に強調している。構造的相同性に加え、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインでしばしば見出されるN末端残基のpfam(Finn, R. D. et al. (2010) Nucleic Acids Res 38: D211-22) コンセンサス配列プロフィールは、挿入されたN−末端の、IVGG(配列番号15)の最初の4アミノ酸内に保存されたモチーフを明らかにし、これらの残基は、活性化ポケットを特異的に標的とし、チモーゲン状態から活性状態への遷移を仲介するペプチドの機能に重要である可能性があることを示している。従って、遺伝子VIII融合ペプチドライブラリーの設計において(
図4A)、ペプチドライブラリーの最初の4残基のアミノ酸(X
1−X
4)の多様性は、I−V−G−G(配列番号15)に制限され、続いて7つのランダムな位置(X
5−X
11)が続く。これは、最初の4つのコドンが配列IVGG(配列番号15)をコードし、続く7つのコドンはそれぞれNNKであり、20種類の天然アミノ酸の何れかをコードするオリゴヌクレオチド配列を提供することによって達成される。このように、ライブラリーの全てのメンバーは、セリンプロテアーゼ様活性化ポケットへと挿入される高い傾向を持つ、保存された、遊離のN末端を含んでおり、それにより活性化因子ペプチドを見いだす確率を高めている。これらのペプチドライブラリーは、チモーゲン活性化因子ペプチド(ZAP)ライブラリーと称される。
【0211】
ZAPtideライブラリーによるscHGFβの4ラウンドのパニング後、HGFβのプロテアーゼ様形態と比較してチモーゲン様形態に特異的であるペプチドが見いだされた(表4B)。続いて位置X
2−X
11上で親和性成熟を行い、明瞭な11マーのコンセンサスペプチド配列が明らかにされたI−(V/I)−(D/G)−(D/G)−Y−P−W−W−(M/I/V)−(D/E)−(V/A)(配列番号114)(
図4B及び4C)。興味深いことに、コンセンサス配列内の最初の6つの位置は、天然型HGFβのN−末端の最初の6つの位置(V−V−N−G−I−P)(配列番号115)と直接類似性又は同一性を示した。具体的には、モチーフ:I−(V/I)−(D/G)−(D/G)−Y−Pは、3つの同一残基(X
1−V−X
3−G−X
5−P)、及び3つの類似残基(I−X
2−D−X
4−I−X
6)を共有する。ペプチド配列:X
7−X
11(W−W−(M/I/V)−(D/E)−(V/A))内の残りの5残基は、天然型HGFβの配列との保存性を示さず、けれどもファージペプチド配列でのその高頻度を考慮すると結合親和性に重要である可能性がある。
【0212】
実施例2:高親和性を有するscHGFβに結合するファージ由来のコンセンサスモチーフに基づく合成ペプチドは、scHGFβのMetへの結合を活性化する
コンセンサスZAPは、活性ポケットに結合し挿入することと一致する特徴を含むという知見に基づいて、幾つかの関連するペプチドが合成され、それらの親和性及び活性なMetへの結合能を評価するための以前に確立されたscHGFβ活性化アッセイで利用された(Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。scHGFβは、活性なHGFβ形態に比べて、Metセマ−PSIドメインと僅かに相互作用することができるのみであるため、バイオレイヤー干渉法が活性化アッセイで用いられ、scHGFβの、ビオチン化されたMetでコーティングされたストレプトアビジンでセンサー表面への結合親和性を直接増強するペプチドの能力を測定した(Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。従って、活性化因子ペプチドの滴定は、MetへのscHGFβの結合の亢進に起因する、表面の応答シグナルの有意な増加をもたらすはずである。
【0213】
このアッセイを用いて、IVGG.14ペプチドは、34±3μMのK
D(
図5A、表4A)を有し、Met結合を活性化するその能力は、活性化ポケットにより作られた静電相互作用及び疎水性相互作用に厳密に依存していた。IVGG.14ペプチド及びscHGFβのD672N変異体(静電相互作用の欠如)で観察された活性の欠如があった。GVGG.14ペプチド及びscHGFβ(疎水性相互作用の欠如)で観察された活性の欠如があった(
図5B)。重要なのは、IVGG.14ペプチドは、HGFのβ鎖の天然型N末端由来のペプチドよりも約60倍より強力であった(Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。注目すべきことに、位置3及び/又は4にアスパラギン酸残基を含有するペプチド変異体は、活性がほとんどもしくは全くないことを示した。IVDG.14ペプチド変異体は、弱い結合親和性を持し(K
Dが85±23μM、表4A)、一方IVGD.14とIVDD.14変異体は検出可能な結合を示さなかった(
図5B)。この結果は、位置4のAspが、scHGFβタンパク質と立体衝突を受け、N−末端挿入を防止し、ペプチドを不活性化するであろうという観察に基づく可能性がある(
図1)。しかし、位置3のAspで観察される活性の一部は、天然型の配列は、高度に類似のAsn残基を含有するが、N−末端挿入中にAspを収容するのに必要な歪んだ主鎖コンフォメーションがエネルギー的に不利であろうという事実と一致している。このデータに基づいて、この不利な主鎖と側鎖の立体配置を緩和することにより、結合親和性及び活性を回復することができることを仮定して、非天然のD−アスパラギン酸が位置3に取り込まれた。IVdG.14ペプチドは、活性及び結合親和性の明らかな回復を示し、前述のペプチドより100倍良好である、21±4μMのK
Dをもたらした(
図5A、表4a) (Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。加えて、IVDG.14変異体と比較して増加した活性を維持しつつ、このペプチド変異体の溶解度は、極性のアスパラギン酸側鎖によって増強される。
【0214】
最初の4残基のN末端挿入の性質を調べることのほか、2つの疎水性の位置を変更することによって、結合親和性の増強を評価した。まず、溶解性を向上させ、可能ならば追加の水素結合相互作用を得るのを促進するために、位置6のProのヒドロキシプロリンへの置換が行われた。IVhyP.14変異体は、IVGG.14ペプチドに比較してわずか2倍の増強である、14±3μMのK
Dを示した(表4A)。更に、HGFのβ鎖の最初の二つの残基の疎水性の性質は、N−末端挿入のために重要であるので (Kirchhofer, D. et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104: 5306-11)、位置2のValは、ヒドロキシプロリン置換との関連でIleに変更された。得られた変異体、IIhyP.14は、親和性の有意な改善を示し(5±1μM、表4A)、IVGG.14よりも7倍良好で先に説明したペプチド活性化剤より>400倍である(Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。
【0215】
まとめると、これらの知見は、本明細書に記載のファージ由来のペプチドは、チモーゲンscHGFβの活性ポケットに特異的に結合し、アロステリックにMet結合を活性化することを明らかに実証している機構的には、この活性は、N末端残基と活性化ポケットとの間の静電的および疎水性相互作用に決定的に依存することが示され、それはトリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインのアロステリック活性化並びに位置6の保存されたProとの相互作用の特徴である。更に、新規な活性化因子ペプチドIVGG.14及び非天然アミノ酸変異体、IVhyP.14及びIIhyP.14は、劇的に改善された結合親和性を示し;それによって、活性化因子ペプチドを同定するための、活性化ポケットに特異的なファージライブラリーを使用するアプローチを検証する。
【0216】
表面に固定されたMet ECDTitrationsへのzHGFβ結合のペプチド依存性活性化を測定するために利用されたバイオレイヤー干渉法は、ZAP.09は、42μMの見かけの活性化定数(AC50)を有するが、一方、IVGG.14は、以前の活性化因子に対して>90倍の改善を表す、21μMのAC50を有することを明らかにしている。注目すべきは、690nMの親和性でMetと結合するZAP.14−zHGFβの複合体は、HGFβそれ自体のそれとほぼ同一である。IVGG.14のの活性化のメカニズムは、zHGFβの活性化ポケット内の重要なAsp672のAsnへ変異させる(D672N)又はとIVGG.14のIle1をGlyで置換する(GVGG.14)かの何れかにより更に検証され、そして、これらの摂動は活性を完全に消失させたことを示し、IVGG.14が活性化ポケットに結合し、活性コンホメーションにzHGFβを安定させることを強く示唆している。
【0217】
実施例3:合成ペプチドは、プロHGFを活性化し、細胞の生存を刺激する
これらの新規な、より強力なペプチド活性化剤はまた、プロHGFの全長形態を活性化し、Metシグナル伝達を刺激することができるかどうかを試験するために、ペプチドは、細胞生存アッセイで活性についてスクリーニングした。Metリガンドとして不活性であるプロHGF(scHGF)の非切断形態は、血清飢餓培地条件下で細胞生存を刺激しないことが示されている;しかしながら、scHGFと組み合わせた活性化因子ペプチドは、Metを介してシグナル伝達可能で、タンパク質分解で活性化されたHGFリガンドのそれと類似して細胞生存を劇的に増強することができた(Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。Bx−PC3細胞を用いて、scHGFの存在下でのペプチドの滴定が行われ、観察された強い活性化が、Metを介したscHGFのシグナル伝達で見られ、それはHGF誘導シグナル伝達と同等にレベルに達した。
【0218】
IVGG.14とIVdG.14ペプチドは、EC
50が〜20μMのペプチドでscHGFの用量依存的活性化を示し(
図6B)、生化学的結合データと良好に一致した(K
Dがそれぞれ、34±3μMおよび21±4μM)。対照的に、GVGG.14変異体は、検出可能な活性を示さず、疎水性のN末端残基の重要な役割を強調している。更に、IVDG.14の滴定は、結合アッセイからのデータと一致して、部分的なscHGFシグナル伝達活性をもたらした。まとめると、これらのデータは、活性化因子ペプチドが、HGF(scHGFまたはプロHGFのいずれか)の単鎖チモーゲン様形態の活性化ポケットに結合する場合には、HGFの2本鎖形態と本質的に機能的に同等であるHGFの形態への直接的アロステリック活性化を誘導し、従ってMetを介したシグナル伝達が可能であるというモデルを支持している。重要なことに、ペプチド活性化scHGFリガンドは、HGFリガンドの正常な活性化形態と同一の細胞生存活性を示し(
図6A)、プロHGFのアロステリック活性化は2本鎖HGFと同じ生理的な効果をもたらすことができ、従って、同一の治療用途を有することができることを示唆している。
【0219】
実施例4:IVGG.14活性化因子ペプチドの構造の特徴づけ
天然および非天然アミノ酸置換を用いて生成されたZAP類似体(上)がIVGG.14ペプチドに比較して結合親和性のほんのわずかな改善を示したことを考慮して、効力の増強を操作することに向けた取り組みを導くために、活性化因子複合体の構造を決定した。これを行うため、過剰のIVGG.14ペプチドが、HGFβのチモーゲン様形態(HGFβV495G)およびMetセマ−PSI ECDの化学量論的な混合物に添加され、結晶化のためにスクリーニングした。V495GはscHGFβに類似した特性を有するが(すなわち、活性化因子ではない)、そのサイズはチモーゲンscHGFβより小さく、活性化されたHGFのβ/Metの複合体の構造を生成するために以前に使用されたHGFβと本質的に同じであるため、V495G変異体をscHGFβの代わりに使用した(Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35)。回折品質の結晶を単離し、Metと複合体のHGFβV495Gと結合したIVGG.14の3.0Åの構造が解明され、そのアロステリック活性化の分子機構の詳細が明らかとなった。
【0220】
全体的に、ペプチド活性化複合体は、以前に解かれたHGFのβ/Met複合体への構造アラインメントと事実上同一であった(全共通原子のRMSDは0.9Å、Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35)。これは、チモーゲン様HGFのβのアロステリック活性化は、切断されたHGFβに類似した高親和性Met結合を生じることを示す生化学的データと一致していた。しかし、この構造では決定的な違いは、HGFβV495Gの天然のN末端の代わりにIVGG.14により完全に占有されたHGFのβドメイン内の標準的なトリプシン様活性化ポケットであった(
図8A)。結合活性化因子の最初の9残基の中に(最後の2つのC末端残基は観察されなかった)2つのターンモチーフがあった;(i)のN末端II型リバースターン、および(ii)C末端I型リバーズターン。このグローバルな”S字”活性化因子の構造は、C末端部分はタンパク質表面上の浅い結合パッチに到達しつつ、N末端がHGFβ活性化ポケットを貫通するのを許容した。結合状態を安定させるように思われた主な分子間相互作用には以下が含まれる:IVGG.14のN末端アミンおよびβ鎖のD672残基間の埋もれた塩橋、活性化ポケットを満たし、塩橋を溶媒から保護する位置1のIleと位置2のValにより提供されるN末端疎水性相互作用、活性化因子とHGFβの間のバックボーンバックボーン水素結合ネットワーク、及び、リバースターンを含み、タンパク質表面に対するパッキングを支えるPWWM(配列番号170)(またYPWWM(配列番号171))モチーフ内のファンデルワールス相互作用(
図8B)。これらの機能はすべて、活性化結合ポケットに寄与し、分子擬態メカニズムをもたらし、それによってIVGG.14は、構造的および機能的に以前に観察された天然のN末端挿入を再現する(
図3、Stamos, J. et al. (2004) EMBO J 23: 2325-35)。
【0221】
注目すべきことに、IVGG.14骨格は、活性化されたHGFβ並びに複数の活性化されたセリンプロテアーゼの構造の最初の6個のN末端残基を密接に模倣し、標準的なトリプシン様活性化ポケットの中でN末端の挿入を安定させる保存された水素結合の保存されたネットワークを満たすように正確に配置されている。ユニークなYPWWM(配列番号171)ターンモチーフのアラニンスキャニングは、P6AとW8Aの置換は、それぞれ活性の25倍及び10倍の損失をもたらしたことを示し、ファージ由来の配列中の保存と一致している。これらのデータは、IVGG.14は、N末端擬態メカニズムを採用し、結合活性化因子の結合を安定化するためのXPXWX逆ターンモチーフ、IVGG.14の最適化中に我々が保持するように努めた2つの重要な機能を利用することを明らかにしている。
【0222】
実施例5:構造誘導型ライブラリーの活性に基づく選別を用いた高親和性環状ペプチド活性化因子の発見
構造的および機能的な情報を用いて、ライブラリーに積極的な多様性を導入しつつ、活性化因子モチーフの重要な要素を保持する、新規な15量体の第二世代のZAPライブラリーを設計した。また、scHGFβの結合と活性化のための同時2パラメーター選択を可能にする、新規活性に基づくファージ選別戦略が採用された。活性に基づく選別を実行するためにファージライブラリーを事前結合の溶液中でscHGFのβと共にインキュベートし、次いでMetコーティング表面を使用して捕捉段階に供した。結合したファージクローンによって適切に活性化されたチモーゲン様scHGFβ分子は、Metに非常に弱く結合するscHGFβ単独よりもMetに非常に大きな親和性を有するため、この2パラメーター選別は、活性化因子である結合剤について高度に濃縮した。活性化因子ではありえない直接結合剤の選別だけののより伝統的なアプローチに固有の落とし穴を避けつつ、アロステリック活性化因子に対する選択を導くために、ファージライブラリー上での特定の機能圧が適用された。構造誘導型ライブラリー設計および活性に基づく選別の全体的な組み合わせのアプローチは、より強力なZAPの発見をもたらした。
【0223】
新しい15量体のZAP−遺伝子VIIIファージライブラリーは、ハードランダム化から優先的に遮蔽された二つの主要な領域、活性化ポケットに挿入されたN−末端モチーフ及び結合した状態でタンパク質表面に対してパックするリバースターンモチーフの一部を含んでいた(
図8A)。得られた設計は4残基のN末端モチーフ内に制限された多様性を含んでおり(位置2だけは、選択的に疎水性コドン、NTTを使って変えることができる)位置6と8にぞれぞれプロリン残基及びトリプトファン残基を固定し、一方配列の残りの部分でハードランダム化した位置を再導入している(
図9A)。このライブラリーは前の11量体ZAPライブラリーと同様に、scHGFβに対して4ラウンドの溶液選別を受け、その後、ライブラリーは2つのプールに分割された:一つのプールは対照として5回目の溶液選別に供され、一方他のプールは更なる3ラウンド活性に基づく選別に供された(合計7ラウンド)。溶液選別及び活性に基づく選別からのファージクローンを配列決定し、2次元のELISA分析を行い、一方クローンは、直接scHGFβ結合及び(ii)scHGFβの存在下でのみMetによって捕捉されるファージクローンの能力について分析した。驚くべきことに、2次元のELISAを比較すると、直接相互作用のために選択されただけのクローンは、scHGFβに明らかに特異的に結合したが、Met捕捉のためにscHGFβを活性化する能力を完全に欠いており、一方活性に基づく選択は、Met捕捉ELISAにおいて有意な結合と活性を持つクローンをもたらした(
図9(B))。活性に基づくクローンの配列は、活性化因子ペプチドの2つのタイプ、線状及び環状のバージョンに収束を示した(
図9C)。
【0224】
scHGFのβ活性化結合アッセイ並びに細胞生存アッセイの両方における代表的な線状及び環状ZAP(ZAP.01とZAP.03、表1)の機能的特徴は、活性化因子の効力全体で劇的な改善を実証している。結合アッセイでは、環状ZAP.03と線状ZAP.01活性化因子は、それぞれ0.3±0.1および6±1μMの親和性を示している(
図9、表1)。これは、我々の最初のペプチド活性化因子IVGG.14に対して100倍もの改善を示している(34±3μMのK
D、
図5A、表4)。重要なのは、環状活性化因子(ZAP.03G、
図10、表4)の単一のIleからGlyへの置換は有意にその結合を損ない、そのことはscHGFβ活性化ポケットへのN末端の挿入と一致し、そしてIVGG.14と同様の活性の保存されたメカニズムを示唆している。システイン残基のセリンへの置換(ZAP.03S)は親和性の大きな減少を生じるので(59±30μMのK
D、
図10、表4)、ZAP.03活性化因子の新機能は、ペプチドを環化し、結合親和性の増強に重要であると思われるCys−5とCys−14間の分子内ジスルフィド結合である。また、BX−PC3細胞生存アッセイにおいて、新しいZAPはscHGFを活性化し、切断されたHGFと同程度に細胞生存を刺激する。ここでは活性はIVGG.14よりも有意に強力であり、ZAP.03とZAP.01の用量滴定はscHGFを活性化し、それぞれナノモル及びマイクロモルのEC
50値を有する(
図11A、B)。まとめると、これらの結果は、新しいペプチド配列空間を機能的に調べ、結合親和性および細胞ベースの活性が大きく増強されたZAPを操作するために、構造誘導型ライブラリー設計および活性ベースのファージ選別の使用を示す。
【0225】
ZAP.03の改善された活性の構造的基盤を理解するために、
図13A−Bに示すようにMetセマ PSIとの複合体中のHGFβV495Gに結合した活性化因子の3.04Åの構造が解明された。使用される結晶化の方法は、わずかな違いを含むが実施例4で説明した。回折品質の結晶は、リザーバ(0.1MのHepes、pH7、8%のP8000)で希釈された等量のシードストックと混合した活性化複合体を含有する2μLのドロップ中で成長した。結晶は、0.1MのHepes緩衝液pH7、8%のP8000中でグリセロール濃度の増加(15−25%、5%刻み)を介して移され、凍結保存された。結晶の脱水は使用しなかった。
【0226】
HGFβV495GおよびMetセマ−PSIに結合したZAP.03の結晶構造は、IVGG.14について観察された水素結合ネットワークを満足する位置にZAP2.3を固定し、また、バックボーンカルボニルとの新しい極性接触を作るためにArg11を用いてHGFβ鎖のHis633をキャップするCys5、14ジスルフィド結合を示す分子の詳細を明らかにした。ZAPtide構造の重ね合わせは、ZAP.03は、更なる極性相互作用に対応するために環状足場を進化させつつ、IVGG.14の構造をいかにして保持しているのかを強調している。まとめると、2つのZAPtide活性化三次元複合体は、標準的なトリプシン様N末端挿入「分子のセクシュアリティ」メカニズムを奪う構造誘導型ファージディスプレイ選別を検証する。
【0227】
細胞アッセイは、最適化されたZAPtidesがプロHGFのアロステリック活性化因子として作用するかどうか、細胞の生存および遊走の生物学的に関連する設定においてMetシグナル伝達を刺激するかどうかを対処するために使用された。ここで、変異した切断部位(scHGF)を含む不活性なプロHGFの開裂不可能な形態が、細胞培養における内因性のセリンプロテアーゼによる活性化を回避するために使用した。注目すべきことに、IVGG.14及びZAP.03の両方の滴定は、Metを発現するBxPC3細胞の血清飢餓の間に細胞生存を誘導するためにscHGFを活性化し、ここでZAP2.3は0.4μMのEC50を示し、野生型2本鎖HGFと同程度にscHGF活性化した。重要なのは、ZAPtidesはscHGFの存在並びにHGF−ブロッキング抗Met抗体により拮抗される誘導されたHeLa細胞の生存を必要とし、各々はMet経路の選択性を確認する。さらに、インビトロ創傷閉鎖アッセイにおいて、ZAP.−3はscHGFの存在下でのみHeLa細胞の遊走を活性化し、EC50が0.06μMで遊走反応の滴定可能な制御を示した。ZAP.03 zHGFβ活性化定数(0.3μM)および細胞の生存と遊走アッセイの両方でのその活性(それぞれ0.4及び0.06μM)との間の著しい相関関係は、Ile1のGlyへの単一変異(ZAP.03G)は劇的にその活性を妨げたとする観察と合わせて、ZAPtidesが、セリンプロテアーゼ様β鎖の活性化ポケットを直接通じてプロHGFをアロステリックに活性化することを実証し、HGF依存性Metシグナル伝達を制御するための新しい薬理学的パラダイムを確立している。
【0228】
実施例6:改善された溶解性を有するIVGG.14のZAP変異体は、プレトロンビン2及びプロテインCチモーゲンセリンプロテアーゼのアミド分解活性を活性化する
プロHGFのIVGG.14ペプチド活性化因子は、プロHGF内のセリンプロテアーゼ様ドメインのMetへの結合をアロステリックに活性化するために、標準的なトリプシン様活性化機構を利用する。この活性化機構はセリンプロテアーゼのトリプシン様ファミリーのチモーゲン間で高度に保存され、これらのタンパク質は、セリンプロテアーゼ様ドメインならびに活性化ポケット内の高度な構造的相同性を共有するという事実を所与として、プロHGFのZAPは、他のチモーゲンセリンプロテアーゼをアロステリックに活性化する能力について分析された。7位のアラニン置換は例外的に可溶性であることが判明したある特定のIVGG.14変異体(IVGG.147A、IVGGYPAWMDV(配列番号172))は、小さなトリペプチド基質Ile−Pro−Arg−p−ニトロアニリン(IPR−PNA)に対する、チモーゲンプレトロンビン2及びプロテインCのアミド分解活性をアロステリックに活性化することができた。動態データは、プレトロンビン2およびプロテインCチモーゲンの両方において基質の加水分解の初速度(Vi)は、反応へのIVGG.147Aの滴定の際に有意に増加することを示した(
図12)。プレトロンビン2及びプロテインCの両方が、活性化因子の非存在下で非常に低い又は検出不可能な活性を有しており、このZAP変異体は、これらの2つのセリンプロテアーゼのチモーゲンをアロステリックに活性化することができたことを示唆している。
【0229】
この仕事で本明細書において明らかになったZAPは、プロHGFに桁違いにより特異的であるように見える一方、ZAPファージングアプローチは、高度に保存されたトリプシン様N末端挿入機構を通じて働くチモーゲンセリンプロテアーゼのより強力かつ選択的な活性化因子を設計するために使用することができる。
【0230】
ファージアプローチは、別のプラスミノーゲン関連増殖因子であって、タンパク質分解切断後、RON受容体を介してシグナル伝達し、炎症や癌において重要な役割を持つプロマクロファージ刺激タンパク質(プロ−MSP)に対しても試験された。ZAP.03(ZAPtide3ライブラリー)に基づいた新しい環状ライブラリー及び説明した選択方法を使用してZAPtideが発見され、ZAP3.2は134μMのAC50でRONに結合するためにチモーゲン様プロMSPβ鎖(zMSPβ)の活性化に特異的であった。
【0231】
プロHGF及びPro−MSPの両方に対するZAPtidesは、試験されたいくつかのセリンプロテアーゼチモーゲンの活性化を回避しながらそれらの同族セリンプロテアーゼ様ドメイン標的を活性化するために特異的であり、プラスミノーゲン関連増殖因子経路の選択的活性化の可能性を実証する。
【0232】
実施例の考察
我々の知る限り、プロHGFのセリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインの活性化ポケットに特異的に結合し、そしてMetシグナル伝達を誘発するアロステリック活性化因子として作用する、高い親和性を有するペプチドを設計するには優先順位はない。標準的なトリプシン/キモトリプシン様活性ポケットの存在が知られており、セリンプロテアーゼフォールドのアロステリック活性化におけるその役割が以前に調べられた(Bode, W. et al. (1978) J Mol Biol 118: 99-112; Khan, A. R. et al. (1998) Protein Sci 7: 815-36; Hedstrom, L. (2002) Chem Rev 102: 4501-24)。本研究では、新規ファージペプチドディスプレイライブラリーを、トリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼドメインで見出されるN末端配列の相同性に基づいて開発し、部位特異的にscHGFβの活性化ポケットを標的にするためにこれらのライブラリーを利用した。典型的には、多様なファージペプチドライブラリーが、高親和性ペプチド結合剤ための標的をパンするために使用されるが、標的上に生じる結合部位は非常に予測不可能である(Lowman, H. B. (1997) Annu Rev Biophys Biomol Struct 26: 401-24; Sidhu, S. S. et al. (2000) Methods Enzymol 328: 333-63)。
【0233】
構造誘導型ライブラリー設計および活性に基づくファージ選別は、ナノモルの親和性でチモーゲンHGFβのセリンプロテアーゼ様活性化ポケットに結合し、アロステリックにMet結合を活性化する高親和性ZAPを操作するために利用される。注目すべきことに、強力なコンセンサスペプチド配列が発見され、この配列に関連する新規なペプチドは、我々の前述のペプチドよりも>400倍より強力であることが示されている (Landgraf, K. E. et al. (2010) J Biol Chem 285: 40362-72)。Metと複合体のHGFβのチモーゲン形態に結合したZAPの3.0Åの構造は、ZAPが活性化ポケットに結合し、活性なHGFβ及び他のトリプシン様セリンプロテアーゼについて観察される天然型N末端の挿入を密接に模倣する分子機構を明らかにしている。これらの構造の詳細は、ナノモルの結合親和性を有する新規環状ペプチド活性化因子を得る、活性に基づく選別戦略に供される、第二のファージペプチドライブラリーの設計を容易にした。ファージライブラリーに由来ZAPは、天然型HGFβのN末端の最初の7−10残基由来のペプチドよりも最大で5000倍強力である。更に、これらの新規のペプチドは、結合親和性を高めただけでなく、scHGFβのMetへの結合をアロステリックに活性化する能力を保持し、細胞生存アッセイにおいて、全長scHGFを活性化する。驚くべきことに、プロHGFを活性化したZAPは、細胞生存アッセイにおいてタンパク質分解的に活性化した二本鎖HGFと同様のシグナル伝達活性を示す。これらの操作されたZAPは、プロHGFをアロステリックに活性化し、通常のタンパク質分解活性化工程を迂回して、慢性創傷の適応症のためのHGF依存性Metシグナル伝達を誘発する新規な治療戦略を明らかにする。
【0234】
scHGFβに対するこれらの標的ペプチドファージライブラリーを使用することに加えて、この方法は、トリプシン/キモトリプシンスーパーファミリーを含んでなる他のセリンプロテアーゼチモーゲン及びセリンプロテアーゼチモーゲン様の標的のペプチド活性化因子を発見するための一般的な有用性を有する。セリンプロテアーゼ及びプロテアーゼ様タンパク質のトリプシン/キモトリプシンファミリーはClan PAに属し、ファミリーS1(S01とも呼ばれる)と言及され、及びMEROPSデータベースに記載されている (http://merops.sanger.ac.uk) (Rawlings, N. D. et al. (2010) Nucleic Acids Res 38: D227-33)。本明細書のデータは、高溶解性ZAP変異体は、トリプシン様チモーゲンプロテアーゼであるプレトロンビン2及びプロテインCを活性化することができ、このことは、セリンプロテアーゼ様チモーゲンドメインの標準的な活性化ポケットに対してペプチドファージライブラリーを導くための新規な戦略を示し、セリンプロテアーゼとプロテアーゼ様チモーゲンをアロステリックに調節する新規ZAPの発見への扉を開くことを実証した。
【0235】
これらの例は、プロHGFのセリンプロテアーゼ様活性化機構の、プロHGFのアロステリック活性化因子として作用するユニークなペプチド配列及びモチーフを明らかにするプロHGFを部位特異的に標的とする新規ファージペプチドライブラリーの発見への適用を実証する。
図4Cに記載されたペプチドモチーフに加えて、これらの分子の活性を増強するために用いられ得る幾つかの配列変異及び合成による(組換え)改変がある。
【0236】
多くのトリプシン/キモトリプシン様セリンプロテアーゼで存在する広範な配列情報及びセリンプロテアーゼ又はプロテアーゼ様ドメインのN末端での高度な配列類似性を考えると(表5)、より包括的なコンセンサス配列は、プロHGFの結合およびアロステリック活性化と互換性である可能性がある(表7)。I−V−G−G(配列番号15)はコンセンサス配列であるが、同じ活性化ポケット標的化戦略を実行するために十分であろうX
1−X
4の他の配列が知られることは明らかである。例えば、X
1−X
4において、HGF自身の天然型N末端配列(V−V−N−G)(配列番号19)を使用することができる。従って、ペプチドライブラリーは、最初の4残基(X
1−X
4)がV−V−N−G(配列番号19)に制限され、続く7つの位置は7つのランダムな残基(X
5−X
11)を含む。あるいは、ペプチドライブラリーは、最初の4残基(X
1−X
4)がI−I−G−G(配列番号18)に制限され、続く7つの位置は7つのランダムな残基(X
5−X
11)を用いることができる。実際には、位置X
1−X
4について、続く7つの位置が7つのランダム残基(X
5−X
11)を含む場合、
図6で説明したコンセンサスモチーフを含む残基の任意の組み合わせを使用することができる。
【0237】
11量体ペプチドを超えた配列を探索し、長い15量体活性化因子ペプチドを発見するために、特定のファージライブラリーの設計における構造情報並びに活性に基づくファージ選別の使用を組み合わせた最適化戦略が実施された(
図9C)。新しい配列は、結合親和性に寄与する可能性のあるC末端に追加の残基を有する直鎖ペプチド又は結合親和性のための重要な分子内ジスルフィド結合を含有する環状ペプチドのいずれかであった(
図10、表4)。15量体活性化因子ペプチドについて、両方の場合において、位置X
1−X
4は、
図7に記載されたコンセンサスモチーフと一致し得るが、位置X
5−X
15の残基は、より長いペプチドの活性化因子におけるそれらの残基においてはほとんど可変性が無かったため、
図9Cに見られるものに密接に似ている可能性がある。位置X
1−X
4に保存されたN末端モチーフを含んでなる15残基又は更に長いペプチドは、分子内ジスルフィド結合を形成するシステイン残基の異なる配置を有し更に強力な活性化因子として作用する場合がある。
【0238】
参考文献のリストの一部
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