(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190814
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】高圧インジェクター用シリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20170821BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
A61M5/31 510
A61M5/315 512
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-536207(P2014-536207)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2014-530692(P2014-530692A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】EP2012070514
(87)【国際公開番号】WO2013057119
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】102011054605.7
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514097819
【氏名又は名称】メドトロン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】ハノ アルトマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ゴットヒルフ メーナー
【審査官】
田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−522608(JP,A)
【文献】
特表2009−511237(JP,A)
【文献】
特表2002−527150(JP,A)
【文献】
特開平03−168154(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/007644(WO,A1)
【文献】
米国特許第5795337(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大83バールの注入圧で液体を注入する高圧インジェクターの接続されたチューブを有するシリンジであって、患者に近い方の端部(10)に配置された前記チューブ用のチューブ接続部(11)を有するシリンジシリンダ(2)と、前記シリンジシリンダ(2)内で前進方向(V)に案内され、前記シリンジシリンダ(2)の内壁(13)に対し封止された態様で静止するための封止表面(302)を設けられたプランジャ(3)を有し、前記プランジャ(3)は、より硬いプラスチックからなる芯部材(31)と、前記芯部材(31)に取り付けられる、比較的柔らかい材料からなる被覆層(30)を有する熱可塑性プラスチックを基材とする2成分射出成形部材として具現化され、前記被覆層(30)は、少なくとも前記プランジャ(3)の前記シリンジシリンダの患者に近い方の前記端部(10)に向けられたプランジャ表面(301)および前記封止表面(302)を構成する、シリンジにおいて、前記プランジャ(3)には先端(300)および先端300を囲むプランジャ表面(301)が設けられ、前記プランジャ(3)はそのプランジャ表面(301)の領域にリセス(308)を設けられており、前記プランジャ表面(301)の前記リセス(308)の体積が、少なくとも前記チューブ接続部(11)に接続され得る前記チューブの容積に対応し、前記封止表面(302)が、前記シリンジシリンダ(2)の前記内壁(13)に対して配置され得、かつ前進方向(V)に突き出す少なくとも1つの封止リップ(303a)を含み、封止リップ(303a)が、前進方向Vに開いた溝様の自由空間(304)によってプランジャ表面(301)から分離されており、前記高圧インジェクターによって前記プランジャ(3)を前記前進方向(V)に前進させると、液体が前記自由空間(304)に移動し、前記シリンジシリンダ(2)の前記内壁(13)に対する前記封止リップ(303a)の表面圧力を前記注入圧に正比例して増大させることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
2つの封止リップ(303a、303b)が設けられ、溝(305)により互いに離間されていることを特徴とする、請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記プランジャ(3)の前記芯部材(31)がポリカーボネートまたはアクリルブタジエンスチレンで作製されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記被覆層(30)が、前記芯部材(31)に接着的に取り付けられ得、ショアー硬さ60〜90Aを有する熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項5】
インジェクターのプランジャロッド用の連結アダプタ(311)が前記芯部材(31)上に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記芯部材(31)が、前記前進方向(V)から離れる方向の端部に基部プレート(32)を備えていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に近い方の端部に配置されたチューブ用チューブ接続部を有するシリンジシリンダを有し、シリンジシリンダの中を前進方向に案内され、シリンジシリンダの内壁に対して封止された態様で静止するための封止表面を設けられたプランジャを有する、高圧インジェクター用シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のシリンジは、患者に投与される液体、例えば造影剤を収容するのに使用され、例えば画像診断手順の間、この液体を次に患者に注入するインジェクターに挿入される。そのような画像診断手順の一例は血管造影法であり、調製された液体、例えば造影剤をこのために準備されたシリンジから最大1200PSIまたは83バールの圧力で患者に注入する高圧インジェクターを必要とする。
【0003】
以前使用されていた高圧インジェクター用シリンジは現在、高圧注入中に漏出なしに最大83バールの高作用圧力に耐えるために、少なくとも2つの高くされた封止リングを有する柔性の可撓性のあるプラスチックのキャップが上に形成されているか、少なくとも2つの封止リングが内部に挿入されている、硬性の相応に寸法安定性のあるプラスチック製のシリンジシリンダ内で案内される、プランジャを有する。
【0004】
独国特許出願公開第10006560号明細書は、より硬い材料からなる内部構成要素と、内部構成要素と一体に接合されてシリンジシリンダ内で封止を生成する、より柔らかい材料からなる被覆層の2つの構成要素からなるプランジャストッパを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10006560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
良好な封止に加えて、そのようなシリンジの不適切な使用、特に患者に空気を注入してしまうと生命にかかわる合併症につながり得るが、そのような不適切な使用を回避するために相当な注意も払わなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、効率的に生産でき、生じ得る高注入圧下でも確実な封止を確保し、プランジャとシリンジシリンダ間の圧力の作用としての摩擦を調節することにより圧力の関数としてのインジェクターの入力パワーを決定し、不適切な使用による空気注入を回避する高レベルの安全性を提供する、冒頭で述べたようなタイプの高圧インジェクター用シリンジを提案することである。
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載の特徴を有するシリンジの具現化を提案する。
【0009】
本発明の特長的な実施形態と変形は、従属項に記載の主題の通りである。
【0010】
本発明が提案するように、本発明によるシリンジのプランジャは、より硬いプラスチックからなる芯部材と、芯部材に取り付けられ、芯部材のより硬いプラスチックに熱接着される比較的柔らかい材料からなる被覆層とを有する、熱可塑性プラスチックを基材とする2成分射出成形部材として具現化され、したがってプランジャは既知の2成分射出成形法を用いて簡単かつ効率的に生産され、一般的なシリンジシリンダと適切に協働できる。被覆層は、少なくともプランジャの封止表面と、シリンジシリンダの患者に近い方の端部に向けられたプランジャのプランジャ表面を構成する。シリンジ内に含まれ得る空気量を吸収するために、プランジャはプランジャ表面の領域に設けられた開口部を有する。
【0011】
より硬性の芯部材と比較的柔性の被覆層を有する2成分射出成形部材として具現化されるプランジャを有するそのような高圧インジェクター用シリンジは、簡単かつ廉価に作製され得、高レベルの機能的安全性を提供し、例えばエチレンオキシドでの滅菌中、滅菌剤で濡れやすいため短い接触時間で滅菌ができる。
【0012】
本発明によるシリンジを適切に用いて、まず決まった長さと決まった断面のチューブがチューブ接続部に接続され、次にシリンジが引かれ、その後注入される液体、例えば造影剤で満たされる。シリンジが引かれると、まずチューブから空気量がシリンジシリンダの内部へと移動し、続いて引かれた液体が入る。このため、このようにして引かれたシリンジは、入った空気量が排出されるまでプランジャを前進方向に摺動させることで空気を抜かれ、そうしてはじめて患者にチューブがつながれ注入が実行される。しかし、不適切な使用によりこのシリンジの空気抜きが省かれる即ち空気抜きの作業が行われないと、その空気量を患者に注入する危険がある。
【0013】
本発明による実施形態では、プランジャ表面に設けられた開口部によりこの危険は回避されるが、これは、プランジャが前進方向に完全に押されてしまっても、これらの開口部がシリンジシリンダ内部で残余の体積を構成し、ここに既存の空気量が留まるので、患者には注入され得ないからである。この状況において、本発明は、高圧インジェクターのシリンジが、通常チューブ接続部の例えば120°下方に傾斜した位置に向いていることを利用するものであり、したがってシリンジシリンダ内に含まれる空気はプランジャに向けて上昇する。
【0014】
通常はそのようなシリンジ専用のチューブしか使用されないのでチューブの最大内部容積は既知であり、本発明は、プランジャの開口部がチューブの内部容積に対応するかまたはそれより大きい全体積を有するように具現化、形成することを提案する。
【0015】
本発明の1つの提案によると、封止表面は、シリンジシリンダの内壁に対して配置され得る少なくとも1つの封止リップを有する。
【0016】
本発明の別の提案によると、2つの封止リップが設けられ、一方の封止リップは前進方向に突き出し、他方の封止リップは反対方向に突き出している。これにより、最大83バールのシリンジの所望の圧力範囲においてさらに高度な気密性が得られると同時にプランジャの移動特性も向上する。したがって、前進方向に突き出している封止リップはプランジャの水圧側に向けられ、反対方向に突き出している封止リップはその気圧側に向けられている。
【0017】
別の実施例の提案によると、一方の封止リップは、前進方向に突き出し、プランジャの残余の体部から前進方向に開いた自由空間により分離されて具現化され、他方の封止リップは、前進方向と反対方向に突き出し、プランジャの残余の体部から前進方向と反対方向に開いた自由空間により分離されて具現化、形成される。
【0018】
封止リップのこの配置により、インジェクターの注入圧が高まると、これらの封止リップがそれに応じてシリンジシリンダの内壁に対しより高い表面圧力を及ぼし、したがって高圧インジェクターでの使用中に予測される高圧下であっても確実に漏出から保護される。
【0019】
本発明の1つの提案によると、前進方向に向けられたプランジャ表面とプランジャの円錐先端は被覆層で形成されるので、作製は特に容易になる。この実施形態では、したがって、シリンジを満たす液体と接触するプランジャまたはその芯部材の全表面が被覆層で覆われる。
【0020】
本発明の1つの提案によると、封止リップが2つ使用される場合、これらは前進方向とは反対方向の溝により互いに離間されるので、プランジャが傾いたり、そのせいで封止リップの封止機能が弱化するリスクなしに、プランジャのシリンジシリンダ内での特に円滑な摺動が確保される。液体が不測にも封止リップを通過してしまった場合、液体はここでは集水溝として作用する溝に捕捉され、プランジャとシリンジシリンダの間から逃れることができない。
【0021】
本発明の1つの提案によると、プランジャの芯部材は適当な硬性のポリカーボネートまたは補強され得るアクリルブタジエンスチレンで作製され得る。
【0022】
本発明の1つの実施形態によると、被覆層は、芯部材に接着的に取り付けられ得、ショアー硬さ60〜90Aを有する熱可塑性エラストマーからなる。ポリカーボネートまたはアクリルブタジエンスチレンからなる芯部材に接着的に取り付けられ得る被覆層の熱可塑性エラストマーの例は、例えば、PP/EPDM系の熱可塑性エラストマーを含む。例えば、Teknor Apex Company社のSarlink(登録商標)またはBada AG社のBadaprene(登録商標)の商品名で販売されている部分的に架橋結合されたEPDM/PPブレンドが被覆層に使用され得る。可能な代替物として、適切な硬さのポリウレタンも含まれる。
【0023】
さらに、インジェクターのプランジャロッドに接続するための連結アダプタが芯部材上に形成され得る。
【0024】
最後に、芯部材は、前進方向から離れる方向の端部に例えばポリカーボネートまたはアクリルブタジエンスチレンからなり得る基部プレートを備え得る。基部プレートは芯部材を軸方向に安定させ、また、インジェクターのプランジャロッドにかかる圧力を吸収する働きもある。
【0025】
本発明のさらなる実施形態と特徴は、図面に示される例示的な実施形態と共に、以下により詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明によるシリンジの長手方向断面図である。
【
図2】
図1によるシリンジのD−D線断面図である。
【
図3a】本発明によるシリンジのプランジャの第1の実施形態で、
図3bのA−A線に沿った断面を示す概略図である。
【
図4a】本発明によるシリンジのプランジャの第2の実施形態の、
図4bのB−B線に沿った半断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1と
図2は、高圧インジェクターの付属品として使用され、患者に投与される液体、例えば画像診断手順用の造影剤を準備するのに役立つ、高圧インジェクター用シリンジ1を示す。
【0028】
既知の方法で、シリンジ1は、例えばPETGまたはポリカーボネートで作製され得る、またはマトリックスに潤滑剤を組み込んでPOMからも生産され得る、シリンジシリンダ2を含む。シリンジシリンダ2は通常は透明である。
【0029】
シリンジシリンダ2の内部ではプランジャ3が案内されて、シリンジシリンダ2から液体を注入するためにスライド方向Vに摺動でき;プランジャ3は当然ながら液体をシリンジ内に引き込むために反対方向にも移動され得る。この点で、プランジャ3の最大直径は、シリンジシリンダ2の内径Diに対応する。
【0030】
シリンジシリンダ2の患者に近い方の端部10にはチューブ(図示せず)を患者につなぐチューブ接続部11を有し、プランジャ3はインジェクターのプランジャロッド(図示せず)に接続する連結アダプタ311を有する。さらに、シリンジシリンダ2の後端部のフランジ突起12(
図2を参照)はインジェクターへの取付けに使用される。
【0031】
プランジャ3は、熱可塑性プラスチックを基材とする2成分射出成形部材として具現化され、ポリカーボネートまたは補強され得るアクリルブタジエンスチレン(ABS)などのより硬いプラスチックからなる芯部材31を含む。この芯部材31は、2成分射出成形法を用いて、ショアー硬さ60〜90Aの、熱可塑性エラストマーまたはマトリックスに潤滑剤が組み込まれたポリウレタンなどの適切なより柔らかいプラスチック材料で接着的に被覆され得、シリンジシリンダ2内に保存され得る液体と接触するプランジャ3の全表面が同時に覆われるが、その表面については以下に詳細に記載する。
【0032】
プランジャは、シリンジシリンダ2の内壁13に対して封止した態様で静止する封止表面302のところで終わっている円錐状の表面301に囲まれた先端300を有する。先端300、プランジャ表面301、および隣接する封止表面302は柔性の被覆層30で一体に構成されている。
【0033】
封止表面302の設計に関する詳細は、
図3aによる概略図にも示されている。
【0034】
プランジャ表面301から始めると、封止表面302は前進方向Vに向いた封止リップ303aを有し、この封止リップは前進方向Vに開いた溝様の自由空間304により残りのプランジャ表面301から分離されている。前進方向Vとは反対方向に、封止リップ303aはまず環状溝305に隣接し、次いで追加の封止リップ303bならびに肩部307と隣接する。選択された例示的な実施形態では、封止リップ303aおよび303bは中心軸Mに対しシリンジシリンダ2の内径Diに対応する共通径を有し、同様に環状溝305と肩部307も中心軸Mに対し封止リップ303a、303bの直径より小さい共通径を有する。
【0035】
この目的で使用される高圧インジェクターの最大83バールの高作用圧力下でのシリンジシリンダ2内でのプランジャ3の適切な前進により、患者に近い方の端部10から押し出されている液体の対応する反力がプランジャ3およびその封止リップ303aに作用し、その作用は
図3aによる概略図で矢印P1として示されている。先端300に向かって円錐状に先細になるプランジャ表面301の形状により、液体は前進方向Vに開いた自由空間304内に移動し(矢印P2を参照)、領域Fにおいてシリンジシリンダ2の内壁13に対する封止リップ303aの表面圧力を注入圧に正比例して増大させ、その結果極端な高圧下でもこの領域において確実な封止が確保される。それでもなお液体が封止リップ303aを通過してしまった場合、液体はこの封止リップの後ろに設けられた環状溝305内に集められ、環状溝305から封止リップ303bを通過して逃れることはできない。封止リップ303bはまた、プランジャをシリンジシリンダ2の内壁13に沿って精密に軸方向に案内する。
【0036】
この種類のシリンジに注射用の液体を引く、すなわち満たすことは、一般に、チューブ接続部11に接続され、後に患者への接続を生成するチューブを介して行われる。この点で、シリンジを引く間、チューブ内に含まれる空気が最初にシリンジシリンダ2内に引き込まれ、液体がそれに続く;患者に空気を注入しないように、この空気はこの後プランジャ3を限られた距離だけ前進方向に前進させることにより除去しなければならない。この空気抜きを忘れると、患者にとって大変危険な状態が生じ得る。
【0037】
この危険に対処するため、プランジャのプランジャ表面301は、プランジャ表面301にー本実施例では4つのー複数のリセス又は開口部308を有して具現化され、これらの開口部は、互いに90度互い違いになっており、プランジャの仮想的な回転表面に対する体積は、少なくともチューブ穴の容積に対応する。プランジャ(3)が前進方向(V)のもっとも遠い位置に進められるとき、シリンジシリンダ(2)内に存在する、例えば空気抜きに失敗した結果の空気量は、これらのリセス又は開口部308内に完全に収容され得、シリンジから患者内へと押し出されることが確実に回避される。結果として、図示のシリンジは、不適切な使用に対し非常に高レベルの保護を実現する。
【0038】
プランジャ3の芯部材31の領域に空隙313が設けられて、耐負荷能力が向上し、プランジャ3の製造のサイクルタイムが低減することも明らかであり、さらに、後方端部上には連結アダプタ311が形成され、穴312が設けられている。
【0039】
連結アダプタ311と係合するプランジャロッド(図示せず)の耐負荷能力を向上させるため、ポリカーボネートまたはABSからなる基部プレートが芯部材31に挿入され、例えばねじにより所定位置に固定される。
【0040】
図4aと
図4bは、上述の例示的実施形態に関連して変更されたプランジャ3の形状を示し;同様の部材は同様の参照番号を付され、繰り返しを避けるために、本発明の理解に必要なければ再度説明しない。
【0041】
図3aと
図3bによる例示的実施形態とは異なり、プランジャ3は第2封止リップ303bを有し、第2封止リップ303bは、前進方向Vに突き出した封止リップ303aとその自由空間304aの場合と同様に、前進方向Vとは反対の方向に突き出し、同様にプランジャ3の残余の体部から自由空間304によって分離されるように具現化されている。このためプランジャ3は圧力が作用した際に良好な特性を有し、移動特性も向上する。したがって、第1封止リップ303aはプランジャの水圧側に向けられ、第2封止リップ303bはその気圧側に向けられている。第1封止リップ303aはプランジャが前進方向に移動している際に主として機能し、第2封止リップ303bはプランジャが反対方向に移動している際に主として機能する。
【0042】
当然ながら、図面から推量され得るシリンジシリンダ2とプランジャ3の寸法および幾何学的特性は単なる例として意図されており、使用されるインジェクターおよび使用される分野による。
【0043】
いずれにせよ、本発明により、安全に使用でき、83バールに対応する最大1200PSIの注入圧下で高圧インジェクターで使用されても気密性のあるシリンジを作製することが可能である。