(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態による電流センサ装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態による電流センサ装置の一構成例を示す断面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示す電流センサ装置の斜視図である。以下、各図において定義したx,y,z軸を参照しながら説明を行う。
【0015】
図2(a)、(b)に示すように、本実施の形態による電流センサ装置1は、検出対象となるy軸方向に伸びたバスバー15上に設けられた、例えばホール素子などの磁気検出素子(IC)11を備えている。磁気検出素子11としては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、ホール素子とアンプ回路を組み合わせたホールIC(IC:Integrated Circuit)などのうちのいずれかを用いることができる。磁気抵抗素子としては、異方向性磁気抵抗素子AMR、巨大磁気抵抗素子GMR、トンネル磁気抵抗素子TMRなどを用いることができる。
【0016】
さらに、電流センサ装置1は、感磁面11aを有する磁気検出素子11の周囲に、磁気検出素子11に対する外部からの磁束(外部磁場)を遮蔽する磁気シールド部20を有している。
磁気シールド部20は、磁気検出素子11のx軸方向の両側面側に設けられる側壁部とz軸方向の底面側に設けられた壁部とにより形成されている。磁気検出素子11は、例えば、両側面側において、磁気シールド部20に固定された図示しない基板上に実装すると良い。磁気検出素子11に流れる電流をI
1とする。
この例では、磁気シールド部20は、磁気検出素子11の電圧印加方向(両端子間)であるy軸方向の幅W
2より大きな幅W
1を有している。X軸方向の幅Lは、小型化・低コスト化のため、できるだけ短い方が好ましい。
【0017】
本実施の形態では、磁気シールド部20は、第1の比透磁率μ
1を有する第1のシールド材からなり厚さがd
1の第1の磁気シールド部21と、第1の比透磁率μ
1とは異なる第2の比透磁率μ
2を有し、厚さがd
2の第2の磁気シールド部23と、を備える2層の磁気シールド構造を有する。この構造では、磁束に垂直なシールド部の面積は、S
1=S
2となる。
図2では、磁気シールド材の内側を断面積S
1、S
2としているが、d
1、d
2が薄い場合には、磁気シールド材の外側の断面積を採用しても同様の効果を得ることができる。
ここで、第2の比透磁率μ
2を第1の比透磁率μ
1よりも低くし、第2の磁気シールド部23を、第1の磁気シールド部21の外側に配置すると良い。
尚、第1の磁気シールド部21と第2の磁気シールド部23とを、粘着剤で粘着してもよく、両磁気シールド部21、23を樹脂でコーティングして一体としても良い。
【0018】
上記の構成によれば、
図2(a)に示すように、磁気検出素子11のx軸方向の側面側から印加される外部磁場に基づく磁束31の一部31bが第2の比透磁率μ
2を有する第2の磁気シールド部23に導入され、さらに磁束31aが第1の比透磁率μ
1を有する第1の磁気シールド部21に導入されるため、磁気検出素子11に対する外部磁場の影響を抑制することができる。
外部からの磁束31は、低比透磁率材料で形成される第2の磁気シールド部23に入った磁束が下部に少し流れ、高比透磁率材料である第1の磁気シールド部21に多くの磁束が通過する。磁気シールド部に入力する磁束と、出力される磁束は、ほぼ同じ値である。
【0019】
ここで、2層構造の場合の磁気シールド効果は以下の式のように示すことができる。すなわち、シールド材の内側に入る磁束は以下に式に基づいて減衰される。
E(total)=E
1×E
2={(μ
1×d
1)/S
1}×{(μ
2×d
2)/S
2}・・・(1)
【0020】
ここで、トータルの磁気シールド効果Eは、第1の磁気シールド部による磁気シールド効果E
1と第2の磁気シールド部による磁気シールド効果E
2とを合わせた磁気シールド効果の値である。また、μはそれぞれの比透磁率、dは外部磁場に垂直な方向のそれぞれの厚さ、Sは外部磁場に垂直な方向の磁気シールド材の面積(一般的にはS
1=S
2)である。
1層の磁気シールド部の場合には、E(total)=E
1であり、E
2が1以上であれば、2層の磁気シールド部の方が良い効果が得られることは式(1)から明らかである。
第2の比透磁率μ
2が低くなっても、d
2を厚くすれば、E
2を1以上にすることができる。
尚、トータルの磁気シールド効果Eは、2層構造のそれぞれのシールド効果の乗算となるため、1層のみの場合に比べて、2重磁気シールド構造を用い、E
2を1以上にすることで、すなわち、μ
2×d
2を大きくすることで顕著なシールド効果が得られることは理論的にも裏付けされている。
【0021】
さらに、第2の磁気シールド部23を構成する低比透磁率の第2の磁気シールド材は、一般的に第1の磁気シールド部21を構成する高価な高比透磁率の第1の磁気シールド材よりもコストを低くすることができるため、磁気シールド部20全体としての材料費を大幅に低くすることができる。すなわち、コストの高い第1の磁気シールド材の厚さを薄くする(使用量を低減する)ことができるため、コストを低くすることができる。
【0022】
尚、
図2(c)に示すように、第2の磁気シールド部23を、第1の磁気シールド部21の内側に配置しても良い。但し、このような形状では外側の方が同じ厚さでも体積が大きくなるため、コスト削減という観点からは、
図2(a)に示す構造の方がより好ましい。
第1の磁気シールド部21と第2の磁気シールド部23は、例えばそれぞれの部材の組み立て工程により実現することができる。
以上に説明したように、本実施の形態による電流センサ装置によれば、外部磁場の影響を抑制しつつコストを低減することができるという利点がある。
尚、上記の例では、磁気シールド部を異なる比透磁率を有する2層の磁気シールド材により形成したが、3層以上の磁気シールド材により構成しても良いし、比透磁率を厚さ方向に変化させた構造としても良い。
また、第1の磁気シールド部21と第2の磁気シールド部23とは、x軸方向、z軸方向に接していても良いし、離間して配置されていても良い。
【0023】
(実施例1)
図2(a)において、第1の比透磁率μ
1を有する第1の磁気シールド材を、例えば、パーマロイPC材とし、第2の比透磁率μ
2を有する第2の磁気シールド材を、例えば、フェライトとしても良い。パーマロイPC材は、比透磁率が5000超であり、フェライトの比透磁率が2000程度である。前者の方が価格は高い。パーマロイPC材厚さ0.1mmの比透磁率は数万〜数十万、パーマロイPB材厚さ0.1mmの比透磁率は1〜2万、0.35mmでは約3000である。そこで、パーマロイの層厚をできるだけ薄くし、その分だけ減少する磁気シールド効果を、安いフェライトを設けることで補う。例えば、第1の磁気シールド材の厚さは、外部からの磁束のうちの第2の磁気シールド部23により吸収しきれなかった磁束を第1の磁気シールド部21により吸収できる程度の厚さとすればよい。
【0024】
尚、パーマロイ(Permalloy)は透磁的(permeable)な合金(alloy)という意味であり、パーマロイは電磁軟鉄に比べ、透磁性が非常に高い(磁気を通し易い)性質を有している。パーマロイはニッケル含有量により類別され、夫々の特徴を備えている。
PCパーマロイ(Ni-Mo,Cu-Fe)は、ニッケル成分が70〜85%であり、比透磁率と直流特性に優れる。加工性も高く、磁気遮蔽(シールド)材料に適している。
PBパーマロイ(Ni-Fe)は大きな飽和磁束密度が得られる。各種センサの小型化・高性能化や、変流器(CT)の材料としても多用されている。特に厚さ1mm以下のPBパーマロイは薄板の積層により最も高い特性を発揮する。
【0025】
PCやPBの他に、PD(Ni成分35〜40%、残部はFe)、PE(Ni成分45〜50%、残部はFe)、PF(Ni成分54〜68%、残部はFe)を用いても良い。
尚、比透磁率の高低の基準値は約3000程度を目安とする。また、飽和磁束密度の高低の基準は、例えば0.4T程度を目安とする。境界を示す基準値に関してはこれらの値に限定されるものではない。
コストは、パーマロイ、珪素鋼板、フェライトの順番に高い。
2層シールド構造に関する上記のような考え方を適用できる構造であれば、比透磁率や材質、厚さ等は、この実施例に限定されるものではない。
【0026】
尚、第2の磁気シールド材の飽和磁束密度は、外部からの磁束の飽和が生じにくい程度の値とすることが好ましい。例えば、第2の磁気シールド材として例示されるフェライトの飽和磁束密度は、0.41T程度の値を有している、この場合で厚さを十分に厚くすると、第2の磁気シールド部23により外部磁場をある程度遮蔽することができ、第1の磁気シールド部21を構成するパーマロイPC材の層厚を薄くすることができる。
【0027】
以下に、磁気シールド部20における磁気シールド効果の構造依存性を磁気シールド効果解析法に基づいて解析した結果を示す。
RuckerとWillsによる無限円筒の磁気効果E
fは以下の式で表すことができる。
E
f=He/Hi=μd/D
ここで、磁性体の直径をD、磁性体の厚さをd、磁性体の比透磁率をμとする。磁性体のシールドの効果がE
fとする。Hiは、遮蔽空間の磁場、Heは、遮蔽材料が存在しなかった場合の磁場である。
比透磁率μ、磁性体の厚さdは、磁気シールド効果Eと比例し、磁性体の直径Dの大きさと反比例する。
【0028】
図3は、コアレス型の電流センサ装置における2重シールドコアにおけるシールド効果のシミュレーションモデルを示す図である。
図3(a)は平面図、
図3(b)は斜視図である。シュミレーションモデルとは、
図2の電流センサ装置に外部磁場を付与する簡単な構成を想定したものであり、簡単のため、バスバー15を設けていない。磁気検出素子11に対する外部磁場の影響をシミュレーションで見る場合には、バスバー15の影響は無視して良いため、シミュレーションの結果は妥当である。
図3(a)、(b)に示すように、シミュレーションモデル(ここでは、電磁界解析ソフトウェアJMAG(ジェイマグ:登録商標))を用いた。本実施の形態による電流センサ装置1と、その外側に配置され、外部磁場の影響を見積もるシミュレーションのために設けた磁界発生手段41とからなる。電流センサ装置1は、磁気検出素子11の外側に、磁気検出素子11に対する外部からの磁束を遮蔽する磁気シールド部20を有している。それぞれの寸法は、以下の通りである。
【0029】
磁界発生手段41:600mm×580mm、幅100mm、厚さ200mm、銅180TURNS(巻き数)
磁気シールド部20:高さ15mm(Z軸方向)、長さ22mm、幅15mm(Y軸方向)
磁気シールド部20の厚さの詳細は以下の通りである。
第1の磁気シールド部21の第1の磁気シールド材(パーマロイPB材:比透磁率μ
s≧3000、飽和磁束密度1.4T):厚さ0.1、0.2、0.35、0.5mm、尚、実効比透磁率は厚さに依存し、厚いほど比透磁率は小さくなる傾向にある。
【0030】
第2の磁気シールド部23の第2の磁気シールド材(フェライトMB4: 比透磁率μ
s=2500、飽和磁束密度0.4T):厚さ3、5、10mm、尚、MB4は、MnZnフェライトの材質名である。
また、磁気検出素子(IC)11の寸法は、以下の通りである。
高さ 1mm、長さ 3mm、幅 5mm、厚さ 1mm
材料は高比透磁率170000の磁性材PCと仮定している。
上記のシミュレーションモデルを用いて、磁界発生手段41から発生させた外部磁場を10000、15000、20000、30000、50000A/m変化させた場合の、第1の磁気シールド材(PB)と第2の磁気シールド材(フェライトMB4)及び磁気検出素子(IC)11における磁束密度を磁気シールド解析法により求めた。その計算結果を表1に示す。尚、シミュレーションで磁界の強さを設定する場合には、直流で設定する。
【0032】
表1は、外部磁場を10000〜50000A/mまで変化させながら、PBとMB4との2層シールド構造における厚さを変化させた場合の、PB、MB4及び磁気検出素子(IC)における磁束密度の値を示す図である。例えば、外部磁場が20000A/mであり、PBの厚さが0.35mm、MB4の厚さが5mmの場合のICの磁束密度は0.0057Tであり、外部磁場の影響を受けていないことを示している。
表1の最下段(3行)の値は、PBの厚さが0.1mm、MB4の厚さが0.5mmといずれも薄い場合であり、10000A/m程度の外部磁場でもコアの飽和が生じ、15000A/m程度でもICの誤動作が生じている。
尚、ICの磁束密度が高くなった場合、例えば、基準値を0.01Tとした場合に、それ以上になった場合には、ICの誤動作と定義した。0.1T以上になった場合を完全誤動作と定義した。
【0033】
表1においては、シミュレーションによる計算結果と、シミュレーション結果に応じて磁気検出素子(IC)11の誤動作が生じているかどうか、磁気シールド部(コア)において磁気飽和が生じているかどうかを領域に斜線を施すことで区別できるようにした。
表1より、磁気シールド部の構成が同じであっても外部磁場が大きくなるほど磁気検出素子(IC)11の誤動作が生じやすくなること、第1の磁気シールド材、第2の磁気シールド材の厚さが厚いほど、磁気検出素子(IC)11の誤動作が生じにくいこと、特に第2の磁気シールド材の厚さが薄いとコアの飽和が生じやすいことがわかる。
【0034】
以下、磁気検出素子(IC)11における磁束密度の磁気シールド部の構造依存性についてより詳細に説明する。
図4は、表1の結果に基づいて、内側の第1の磁気シールド材であるPBの厚さを0.35mmで一定として外部磁場を印加した場合の、磁気検出素子(IC)11における磁束密度(T)の値に関して、外側の第2の磁気シールド材MB4の厚さ依存性を示す図である。
図4に示すように、外部磁場20000A/m以下では、MB4の厚さが0.5から10mmまでの広い範囲において、磁気検出素子(IC)11における磁束密度は、0.01T以下であり、2重シールド構造による顕著な磁気シールド効果が発揮されることがわかる。
【0035】
尚、外部磁場が20000A/mの場合では、第2の磁気シールド材MB4の厚さが0.5mmになると、磁気検出素子(IC)11における磁束密度が高くなっており、シールド効果が弱くなって外部磁場の影響が表れてきていることがわかる。さらに、外部磁場が30000A/mの場合には、MB4の厚さが2mm以下では、磁気検出素子(IC)11における磁束密度が高くなっており、シールド効果が弱くなって外部磁場の影響が表れてきていることがわかる。
【0036】
以上のことから、外部磁場の値が20000A/m以下であれば、第1の磁気シールド材であるPB=0.35mm程度の薄さであっても、その外側に第2の磁気シールド材として例えば厚さ1mm以上のMB4を設けることで、良好な磁気シールド効果を得ることができ、磁気検出素子(IC)に対する外部磁場の影響を大幅に抑制することができることがわかる。
【0037】
図5は、第2の磁気シールド材のMB4の厚さを5mmで一定として外部磁場を印加した場合の、磁気検出素子(IC)11における磁束密度(T)のPBの厚さ依存性を示す図である。
図5に示すように、第2の磁気シールド材であるMB4の厚さをある程度の厚さで一定(5mm)とした場合において、第1の磁気シールド材であるPBの厚さが0.05mmから0.35mmの範囲において、外部磁場10000A/m、20000A/mでシールド効果があることがわかる。この場合の、磁気検出素子(IC)11における磁束密度がほぼ同じである。
【0038】
尚、強い磁界30000A/m以下、ここでは、20000A/m程度の外部磁場までにおいて、MB4の厚さ5mmの1重シールドだけでもシールド効果がある程度得られるが、その効果は不十分であった。1重シールドの場合に比べて、PB0.05mm、MB4の厚さ5mmの2重シールドの結果を見ると、磁束密度が低くICの誤動作が少ないことから、2重シールドの効果が得られることがわかる。
【0039】
また、理論的には、PBの厚さによって比透磁率が異なり、PBの厚さが薄い方が比透磁率は高くなる。すなわち、形状が一定であれば、(1)式に示したように、比透磁率と厚さとの積がシールド効果とリニアな関係になる。シミュレーション結果によれば、ICの磁束密度が一番低いシールド組み合わせはMB4=5mm、PB=0.05mm、その次がMB4=5mm、PB=0.2mm、次いで、MB4=5mm、PB=0.1mmである。PBの厚さを増やすと、比透磁率が下がることからこのような結果になったものと考えられる。
尚、外部磁場が30000A/mを超えると、例えばPBの厚さが0.1mmの条件では、ICの誤動作が生じていることから、良好なシールド効果は得られなくなることがわかる。従って、外部磁場が30000A/mを超える場合には、例えばPBの厚さが0.35mm以上が必要になる。
【0040】
図6は、PBの厚さを0.35mm、MB4の厚さを5mmで一定とし外部磁場を付与した場合の、磁気検出素子(IC)11における磁束密度(T)について外部磁場依存性を示す図である。
図6に示すように、この条件下では、少なくとも、外部磁場20000A/mまでは、本実施の形態による磁気シールド部の構造によりシールド効果が得られるといえる。外部磁場30000A/m程度を超えると、上記の磁気シールド構造であっても、外部磁場の影響を受けていることがわかる。
【0041】
以上のことから、外部磁場の値が20000A/m程度までであれば、第2の磁気シールド材であるMB4の厚さを5mm程度まで厚くしておけば、第1の磁気シールド材のPBの厚さが0.05から0.35mm程度の厚さ範囲において良好な磁気シールド効果を得ることができ、外部磁場の影響を抑制することができることがわかる。
【0042】
次に、飽和磁束密度の影響に関して説明を行う。
表1に示すように、第2の磁気シールド材(フェライトMB4)が磁気飽和(それ以上磁界を強めてもそれ以上磁性体の磁化が変化しなくなった状態)し、第1の磁気シールド材(PB)も磁気飽和すると、磁気検出素子11の誤動作が生じやすくなることがわかる。従って、第2の磁気シールド材(フェライトMB4)を磁気飽和しない程度の十分な厚さである5mm程度設けておくことにより、磁気シールド材の磁気飽和を抑制することができるという効果がある。
【0043】
この場合には、比透磁率μが高く、さらに飽和磁束密度Bsが高い材料を使うことが好ましい。このような材料としては、珪素鋼板と純鉄、パーマロイPB材が例示的に挙げられる。第1の磁気シールド材としては、飽和磁束密度が0.4T以上の材料を使用することが好ましい。
尚、磁気シールド材の残留磁束密度の値が高いと、外部磁場の影響が持続する。従って、残留磁束密度の高い材料、例えば、珪素鋼板を用いることは、磁気シールド効果を維持させるという観点からは好ましくない。
【0044】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7(a)は、本実施の形態による電流センサ装置の一構成例を示す断面図である。
図7(b)は、
図7(a)の変形例を示す電流センサ装置の断面図である。
第1の実施の形態との相違点は、第2の比透磁率を有する第2の磁気シールド部23aを、磁性材料と樹脂材などの非磁性材料との複合材料により構成したことである。この構造による磁気シールドに関する作用効果は、第1の実施の形態と同様であるが、磁性材料と樹脂材などの非磁性材料との安価な複合材料を用いることにより、第1の実施の形態の場合よりもコストの削減効果が大きいという利点がある。
図7(b)に示すように、第2の磁気シールド部23aを内側に設けても良い。
このような複合材料としては、例えば、フェライトとエポキシ樹脂との複合材料を用いることができる。
以上に説明したように、本実施の形態による電流センサ装置によれば、外部磁場の影響を抑制しつつコストをより一層低減することができるという利点がある。
【0045】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図8(a)は、本実施の形態による電流センサ装置の一構成例を示す断面図である。
本実施の形態による電流センサ装置1においては、第1の磁気シールド部21aは、磁気検出素子11の側面側、すなわち、感磁面11aと略対向する位置に配置され、第2の磁気シールド部23cは、感磁面11aと略垂直である位置に配置されている。すなわち、第1の磁気シールド部21aと第2の磁気シールド部23cとが、直列的に配置されている。但し、この場合には、第1の磁気シールド部21aと第2の磁気シールド部23cとの飽和磁束密度は、磁束の通路が直列的であるため、それぞれで高い値を有することが好ましい。また、第2の磁気シールド部23cは磁束の方向の断面積S
2が小さいため飽和しやすい。そこで、第2の磁気シールド部23cの飽和磁束密度も高くすることが好ましい。
この場合には、シールド効果は前述の式(1)と同様の式で求めることができる。
ここで、μはそれぞれの比透磁率、dは磁気シールド材の厚み、Sは磁気検出素子と対向する面の断面積である。
尚、
図8の第1の磁気シールド部21aの厚さは、
図2の第1の磁気シールド部21の厚さと同程度でよい。
図8の第1の磁気シールド部21aのみとしたことによる磁気シールド効果に対する影響は、
図8の第2の磁気シールド部23cを設けることで補うことができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態によれば、断面積が小さいが磁路が長くなる部分、すなわち、底面側の第2の磁気シールド部23cを低比透磁率、かつ、高飽和磁束密度の材料により形成することで、コストを下げつつ、外部磁場の影響を抑制することができる。
厚さにもよるが、第1の磁気シールド部21aは、比透磁率3000以上、飽和磁束密度1.4T以上、第2の磁気シールド部23cは、比透磁率100以上、飽和磁束密度1.2T以上の材料を用いることができる。
また、
図8(b)に示すように、底面側に設けられる第2の磁気シールド部23dを、磁性材料と樹脂材などの非磁性材料との複合材料により形成しても良い。例えば、樹脂とフェライトとを混ぜて成形した材料などを用いることができる。
さらに、
図8(c)に示すように、両側面側と底面側とに第1の磁気シールド部21aを設けるとともに、さらに、底面側に第2の磁気シールド部23cを設けるようにしても良い。
また、第1の磁気シールド部21aと第2の磁気シールド部23cとの接合位置は、
図8(a)に限らない。また、第1の磁気シールド部21aと第2の磁気シールド部23cの配置を入れ替えても良い。
図8(a)、(b)のときに、低比透磁率材は高比透磁率材の10〜20倍の厚さであることが好ましい。
【0047】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図9(a)、(b)は、本実施の形態による電流センサ装置の一構成例を示す斜視図である。
図9(a)、(b)に示す構造では、第1の磁気シールド部51・51aと、第2の磁気シールド部53・53aを、z方向の上方に開口のない筒状に形成している。これらの構造においても、2重シールド構造の効果を得ることができる。
また、このような構成によれば、上方に開口を設けていないため、磁気シールド部の製造工程をより簡単にできるという利点がある。
但し、四方を囲むよりも、上方が開いているUの字の方が磁気シールド効果は良い。その理由は、磁気シールド材が側壁、底面とともに四方を囲む上壁を有すると、バスバー上に配置される磁気検出素子は上壁の磁気シールド材と近い位置になり、上壁と磁気検出素子との磁界の干渉が生じやすくなるためである。
また、開口は、磁気検出素子の上方に位置するのが好ましく、また、開口は大きい方が好ましい。その理由は、磁気シールド材の上壁部分と磁気検出素子との干渉が生じにくいためである。
開口は四方を囲む上壁が無い形態としても良い。また開口の形状は特に限定されない。
【0048】
上記の各実施の形態は、磁気シールド部の形状等を限定するものではなく、一例として示したものである。三角形、多角形、楕円などの形状でも良い。また、シールド板は直線に限らず例えばIC側に突出した弧状であっても良い。
上記の各実施の形態によれば、電流センサ装置において、外部磁場による電流検出の誤動作を避けつつコスト削減を行うことができる。
【0049】
尚、高比透磁率の材料としては、以下の材料が例示的に挙げられる。
パーマロイ、センダスト、Co基アモルファス、純鉄、Fe−6.5Si、Fe−3.5Si、Fe基アモルファス、ナノ結晶Fe基軟磁性材料、珪素鋼板などを用いることができる。
また、低比透磁率の材料としては、以下の材料が例示的に挙げられる。
Mn−Znフェライト、樹脂にフェライトを混合して成形した材料などを用いることができる。
また、第1の磁気シールド部21も磁性粉末と樹脂との複合材料を用いることができる。
【0050】
第1の磁気シールド部に用いる磁性粉末としては、Fe−6.5Si、純鉄、Fe−Si、Fe−Ni、Fe−Al、Fe−Co、Fe−Cr、Fe−N、Fe−C、Fe−B、Fe−P、Fe−Al−SiなどのFe基合金粉末の軟磁性粉末、あるいは希土類金属粉末、非晶質金属粉末、などを用いることができる。これらの粉末の平均粒子径は、100μmから300μmとしても良い。
【0051】
第1及び第2の磁気シールド部に用いる樹脂としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミドやフッ素樹脂などの耐熱性に優れた樹脂を使用することができる。
これらの樹脂は第2の磁気シールド部23にも使用することができる。例えば、磁性粉末に添加する樹脂の割合は、磁性粉末に対して5〜7wt%としても良い。
また板状の2つの磁気シールド材を1つの樹脂で固化させて2層構造とすることもできる。
【0052】
また、外部磁場によりシールドコアに残留磁場が生じる場合がある。従って、シールドの材質を選択する時には、ヒステリシスの少ない材料、すなわち、残留磁場の小さい材料を選択することが好ましい。
また、磁気検出素子の感磁面と磁気シールド材とは必ずしも完全に平行でなくても良い。感磁面と磁気シールド材とにある程度の角度、例えば0〜10度の角度が付いていても、シールド効果を有する。
【0053】
U字形状を有する第1および第2の磁気シールド部は、一枚の板をU字形状に折り曲げた磁気シールド材でも良い。また、複数の磁気シールド材を組み合わせてU字形状にしても良い。
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。