(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
孔と、前記孔に連通する第一の真空排気用経路と、前記孔に挿入された中空部材と、試料回転用部材を試料回転装置に固定する固定部と、からなる試料回転用部材であって、前記孔は、試料を回転させる回転中心を中心軸として同一半径上に設置され、複数存在することを特徴とする試料回転用部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1は、試料を回す機能が試料ホルダー自体に搭載されているが、加熱試験ホルダーなど別の機構がある試料ホルダーに回転機構を組み込むと、相当複雑な機構となり、直径数ミリメートルの試料ホルダー軸に組み込むことは事実上不可能である。仮に、複雑な機構を駆使して製作できたとしても、個々の部材強度は貧弱となり、実用化することはほぼ不可能に近いという問題を有する。
【0006】
また、ピンセットや真空ピンセットなどで、試料を回す場合、試料の外周近傍を掴んで回すことになり、試料を曲げてしまうなどの事故を起こしやすく、危険な作業である。さらに、ピンセットなどで、フィジカルに取り扱って回すことは、正確な角度に回せない等の問題点を有する。さらにまた、HolderにRotation機構を組み込むとすると、回転機構が必要な為、そのほかの目的要素の機構を、更にHolderに組み込み事は、困難になるなどの問題点を有する。
【0007】
従って、簡便に試料自体を回転することが望まれる。しかしながら、これまで、このような簡便に試料自体を回転可能な部材及び装置はこれまで知られていない。
【0008】
そこで、上記問題点を解決すべく、本発明は、簡便に試料を回転させることが可能な部材及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者は、試料ホルダー及び試料の回転機構について、鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明の試料回転用部材は、孔と、前記孔に連通する第一の真空排気用経路と、前記孔に挿入された中空部材と、試料回転用部材を試料回転装置に固定する固定部と、からなる試料回転用部材であって、
前記孔は、試料を回転させる回転中心を中心軸として同一半径上に設置され、複数存在することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の試料回転用部材の好ましい実施態様において、前記中空部材の少なくとも試料と接触する試料接触部の材質は、ポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の試料回転用部材の好ましい実施態様において、さらに、前記中空部材をガイドする保護部材を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の試料回転装置は、
孔と、前記孔に連通する第一の真空排気用経路と、前記孔に挿入された中空部材と、試料回転用部材を試料回転装置に固定する固定部と、からなる試料回転用部材、又は本発明の試料回転用部材と、前記試料回転用部材の第一の真空排気用経路に接続する、第二の真空排気用経路と、前記第二の真空排気用経路を内部に有するピストン部材と、前記ピストン部材を回転させる軸部と、前記ピストン部材を昇降させる高さ調節部材と、からなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記軸部の回転を制御する制御部材を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記ピストン部材の下部に第一の転がり部材を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、さらに、前記調節部材は、前記ピストン部材の昇降を制御する昇降制御部を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記昇降制御部は、水平面に対して勾配を有し、前記勾配面上で前記第一の転がり部材と接することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、さらに、第二の転がり部材を有し、前記第一の転がり部材と、前記第二の転がり部材との間に前記昇降制御部が挿入されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記昇降制御部の先端部は、尖った形状であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記昇降制御部は、R形状を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、さらに、真空ポンプのスイッチ部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡便に試料を回転させることが可能な部材及び装置を提供することができるという有利な効果を奏する。また、本発明の試料回転装置によれば、例えば、電子顕微鏡用であれば、TEM試料ホルダー装着状態で、TEM試料を、任意の角度にAzimuth回転させることが出来るという有利な効果を奏する。
【0024】
また、本発明によれば、試料を結晶方位に合わせて、TEM試料φ3mm自体を、回転したい場合、像の解釈/認識を高める為に、トリミングとしてTEM試料φ3mm自体を、回転することが可能であるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の試料回転用部材は、孔と、前記孔に連通する第一の真空排気用経路と、前記孔に挿入された中空部材と、試料回転用部材を試料回転装置に固定する固定部と、からなることを特徴とする。前記孔は、中空部材を通すことが可能であれば、特に限定されない。中空部材は、前記孔に挿入される。前記中空部材内は空洞であり、真空引きを行うことが可能である。すなわち、前記孔、ひいては前記中空部材の中空部分に連通する第一の真空排気用経路を使って、真空引きを行うことが可能となっている。前記中空部材には、試料及び/又は試料メッシュと接触する試料接触部を有することができる。試料接触部は、試料回転用部材の反対側にある、中空部材の先端部とすることができる。すなわち、前記中空部材の中空部分と前記第一の真空排気用経路とはつながっており、空気の出入りが可能である。第一の真空排気用経路から真空引きされると、中空部材の中空部分も真空引きされ、ひいては、試料接触部の近傍において、吸引力を発揮することができる。当該吸引力は、回転させたい試料、及び/又は試料メッシュを固定、回転させることができる。
【0027】
本発明において、前記孔の数、中空部材の数等は適宜、修正及び変更可能である。孔の配置はランダムでも、試料及び/又は試料メッシュを回転させることが可能であれば特に問題がないが、接するものは3点で支持することが可能であるという観点から、好ましくは孔の数、ひいては中空部材の数は、3つとすることができる。
【0028】
また、本発明の試料回転用部材の好ましい実施態様において、円形の試料及び試料メッシュが主流であり、可能な限り広い直径に配置して的確に回転させたいという観点から、前記孔は、試料を回転させる回転中心を中心軸として同一半径上に設置され、複数存在することを特徴とする。例えば、TEM試料ホルダーのTEMφ3mm試料メッシュを装着するところは、電顕メーカーやHolderメーカー、または観察目的の併せ、多様な構造になっているものの、3mm試料メッシュ用の試料Holderとなると、3mm試料メッシュは歴史を経た現在、暗黙の世界共通サイズとなっている。
【0029】
したがって、Holderも当該サイズに対応しているので、φ3mmが納まる為の座面部径は、おおむね勘合代を加味しφ3.05〜3.2の径で座面を製作されている。なお、電子線を透過させる孔は、φ2.0〜φ2.6程度に加工されているHolderものが標準的である。例えば、孔の下側から、その孔の中に3本のピラーを通して、3mm試料メッシュ試料を持ち上げて軸中心にて回転させたい場合、3本のピラーは、孔の中に納まる条件の中で、可能な限り広いφの配置とする事が望ましいことになる。
【0030】
したがって、例えば、3本の中空部材(ピラー)は、回転軸に対して、円周上に配置するが、試料のより正確な回転を行う上で望ましい。
【0031】
ただし、Holder各々で、電子線を通す貫通部孔サイズは、それぞれで若干異なるので、各々のHolder孔に対応させて、P.C.D.に配置した3本のピラーに交換する必要がある。したがって、3本のピラーの試料回転用部材(ボス)は、交換できるように設計することが好ましい。
【0032】
さらに、一般的なTEM試料メッシュは丸い円盤であるが、例えば、一例として、半分に切った半月の物(一般的には、FIB用半月メッシュと呼ばれている。)もある。その場合には、例えば3本のピラーを使用した例でいえば、1本は、試料メッシュに当たらなくなる為、1本の孔から陰圧に引かれ大気が漏れ込み、他の2本の陰圧低下になるので、不都合となる。
【0033】
したがって、FIB用半月メッシュ場合には、それ専用に「2本以上のピラー仕様ボス」に交換して回すことになる。この場合も、半月メッシュ等の内側であって、可能な限り半月メッシュの外縁側に中空部材の先端が接するような配置が好ましい。但し、試料及び試料メッシュを的確に回転させる限り、中空部材の位置は特に限定されるものではない。
【0034】
また、前記中空部材の少なくとも試料と接触する試料接触部の材質については、細管であれば特に限定されない。例えば、電子顕微鏡用の試料の場合、外形がφ0.2mm程度で、内径が0.1mm程度細管を用いることができるが、糸と同様な太さであるので、ある程度コシがある部材でないと曲がってしまう虞がある。また、中空部材は、試料及び/又は試料メッシュを持ち上げる必要がある。
【0035】
一方、中空部材の材質が、逆に硬質の材料である場合、試料に接して突き刺さってしまう虞がある。したがって、適度の固さおよびシナリを併せ持つ材料を選択する事が好ましい。
【0036】
本発明の試料回転用部材の好ましい実施態様において、試料を持ち上げることが可能であり、ある程度の硬さ等を有するという観点から、前記中空部材の少なくとも試料と接触する試料接触部の材質は、ポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする。製造コスト等の理由から、中空部材全部の材質をポリエーテルエーテルケトン
としてもよい。
【0037】
また、本発明の試料回転用部材の好ましい実施態様において、さらに、前記中空部材をガイドする保護部材を有することを特徴とする。保護部材は、中空部材をガイドする他に、微細な中空部材の破損等を防止し、保護する機能、中空部材の曲り癖を防止する機能を有する。保護部材の材質についても、上記機能を有することが可能であれば、特に限定されない。
【0038】
なお、保護部材もまた、中空部材を挿入可能な第二の孔を有することができる。
【0039】
なお、中空部材は、試料回転用部材に着脱可能であり、中空部材が破損した場合には、容易に交換可能である。また、逆に中空部材を試料回転用部材に固定してもよい。さらにまた、試料回転用部材も、後述する試料回転装置へ着脱可能であり、用途に応じて試料回転用部材を設計すれば、例えば、孔の数、中空部材の数、中空部材の内径、孔の配置等を変更して、試料回転用部材を設計すれば、試料回転用部材を交換することにより、所望の用途に応じた、試料観察を実現することができる。
【0040】
次に、本発明の試料回転装置について説明する。本発明の試料回転装置は、上述した本発明の試料回転用部材と、前記試料回転用部材の第一の真空排気用経路に接続する、第二の真空排気用経路と、前記第二の真空排気用経路を内部に有するピストン部材と、前記ピストン部材を回転させる軸部と、前記ピストン部材を昇降させる高さ調節部材と、からなることを特徴とする。試料回転用部材に関しては上述の本発明の試料回転用部材の説明をそのまま参照することができる。
【0041】
また、第二の真空排気用経路は、前記試料回転用部材の第一の真空排気用経路に接続する。したがって、前記第二の真空排気用経路を介して、真空引きを行うことにより、最終的に、試料回転用部材の中空部材の中空部分を真空引きすることができ、ひいては、試料を固定、回転等を行うことができる。
【0042】
前記第二の真空排気用経路は、真空のバッファー室の役割を果たすことができる。そして、前記第二の真空排気用経路を内部に有するピストン部材は、前記中空部材を上下運動させることができる。通常は、中空部材を格納しており、試料等を回転させたい場合には、当該ピストン部材により、中空部材を上昇させて、試料等を固定、回転させることができる。
【0043】
また、前記軸部は、前記ピストン部材を回転させることが可能である。ピストン部材を回転させることにより、試料回転装置に固定された前記試料回転用部材を回転させることでき、ひいては、試料等を回転させることができる。
【0044】
また、前記調節部材は、前記ピストン部材を昇降させる高さを調節することができる。すなわち、ピストン部材を上昇させて、ひいては、中空部材を上昇させて試料を固定させることができ、逆に、ピストン部材を降下させて、中空部材を降下させて、試料から離すことができるが、調節部材は、この時のピストン部材の高さを調節することができる。
【0045】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記軸部の回転を制御する制御部材を有することを特徴とする。制御部材は、軸部の回転を制御することができ、試料をどのくらい回転させるかにより、制御部材によって、軸の回転、ひいては、試料の回転を調節することができる。
【0046】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記ピストン部材の下部に第一の転がり部材を有することを特徴とする。前記第一の転がり部材を介して、ピストン部材の上下運動を円滑に行うことが可能となる。前記第一の転がり部材は、後述の昇降制御部の面を転がりやすい作りであれば足り、特に限定されない。例えば、転がり部材としては、コロ、丸棒、球体等を挙げることができる。
【0047】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、さらに、前記調節部材は、前記ピストン部材の昇降を制御する昇降制御部を有することを特徴とする。昇降制御部は、よりきめ細やかにピストン部材の昇降を制御することができる。
【0048】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記昇降制御部は、水平面に対して勾配を有し、前記勾配面上で前記転がり部材と接することを特徴とする。当該勾配を有することにより、ピストン部材を徐々に上昇させることが可能となる。なお、当該勾配面は、昇降制御部の上面でも下面でもよく、上下両面に設けてもよい。
【0049】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、さらに、第二の転がり部材を有し、前記第一の転がり部材と、前記第二の転がり部材との間に前記昇降制御部が挿入されることを特徴とする。前記第二の転がり部材は、昇降制御部の挿入を円滑に行うことを可能とする。第二の転がり部材としているが、昇降制御部の挿入を円滑に行うことができれば、特に限定されない。例えば、前記第二の転がり部材は、昇降制御部の面を転がりやすい作りであれば足り、特に限定されず、例えば、転がり部材としては、コロ、丸棒、球体等を挙げることができる。
【0050】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記昇降制御部の先端部は、尖った形状であることを特徴とする。先端部が尖っていれば、より円滑に昇降制御部を挿入することができる。但し、円滑に昇降制御部を挿入することができる限り、厳密に尖っている必要はなく、R形状や勾配を作った結果、先端を細くすることができ、昇降制御部へ挿入することができれば、先端部の形状に左右されない。
【0051】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、前記昇降制御部は、R形状を有することを特徴とする。たとえば、上側又は下側をR形状とすることにより、ピストン部材の上昇の初期段階において、素早くピストン部材を上昇させることが可能となる。特に、R形状を構成するR部分が、転がり部材に接して、昇降制御部を迅速に動作させることができ、ひいては素早くピストン部材を上昇、下降等させることが可能となる。
【0052】
また、本発明の試料回転装置の好ましい実施態様において、さらに、真空ポンプのスイッチ部を有することを特徴とする。昇降制御部の挿入程度に応じて、真空ポンプのスイッチ部を介して、真空ポンプのスイッチがオンオフされる設計にすれば、半自動的に、真空引きをオンオフすることができ、ひいては、試料等を固定、脱離等をすることが可能となる。例えば、昇降制御部の先端部で、スイッチをオンオフさせることができる。
【実施例】
【0053】
ここで、本発明の試料回転用部材及び試料回転装置の一実施例について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0054】
図面を参照して、本発明の試料ホルダーの一実施態様を説明すれば以下の通りである。
【0055】
図1は、本発明の一実施態様における試料回転用部材及び試料回転装置の断面図を示す図である。
図1では、中空部材が試料を真空引きにより固定している様子を示している。
図1中、1は試料及び/又は試料メッシュであり、ここでは、TEM試料である。ここでは、標準的なφ3mmである。2は試料固定ネジであり、試料押さえプレート3の板状の試料押さえ手法の場合にはネジで固定するのが一般的である。3は試料押さえプレートである。図面は板状の押さえ機構であるが、リング状の押さえも標準的であるので、この形状に限定するものではない。4は、中空部材(試料持ち上げ3点ピラー)である。ここでは、3点支持とし、外形φ0.2.mm/内径0.1mmの管である。管内は真空ポンプで負圧に出来る。標準の設計は、φ2.5 P.C.D.(Pitch Circle Diameter)である。5は試料回転用部材(ピラー植え付けボス)である。ピストン部材23に対して、ネジ式で固定され、脱着可能である。つまり、ピラーの仕様が簡単に変更可能、またメンテナンス的に交換が容易となる。6は保護カバーのボス部32の固定用O Ringである。洗浄やメンテナンスの為、脱着が可能である。7は摺動軸受け(上端部)である。摺動製樹脂ベアリングであり、ピストン部材23の軸受け用である。8はケーシング(ボディー部材)であり、ケーシング10 と同一の部材である。9は真空漏れ防止のO-ringである。試料回転用部材5とピストン部材23 を、組み込む際のシーリングを果す。10はケーシング(ボディー部材)である。ケーシング8と同一の部材である。
【0056】
11は部材間の連結を受け持つピンAであり、制御部材28の回転運動を軸部(Azimuth 回転ローター部)27へ伝達させる。12は高さ調節部材(昇降の高さ調節用ツマミ)である。ここでは、マイクロメーターヘッドを用いる。13は部材間の連結を受け持つピンBであり、ピストン部材23のキー溝へ挿入されているので、制御部材28の回転運動を、ピストン部材23に伝達させる。14は昇降制御部(昇降用可変シムブロック)である。15は第二の転がり部材(ローラー(ベアリング))である。高さの基準となる礎台部である。16は高さ調整板であり、第二の転がり部材15を装着している。この板を曲げる事で、最終的にはピラーの出具合を調整する。(調節ネジは、図中割愛。)17はHolderスタンドフレームである。(試料ホルダー自体を支える支持台座部は、図中割愛。)18は真空ポンプON/OFFスイッチである。高さ調節部材12を閉めることで、昇降制御部14が押し出され、昇降制御部14の先端で、このマイクロスイッチのドッグが押されONになる。19はスイッチ位置調整ステーであり、真空ポンプON/OFFスイッチ18の位置を微調節することが出来る。(調節ネジは、図中割愛。)20は、ピストン部材23下先端に配する第一の転がり部材(球体、硬球)である。昇降制御部14によってピストン部材23を持ち上げられる際、摺動を促進させるためのコロとなる硬球である。
【0057】
21は硬球20の受け板(超硬板)である。表面は鏡面研磨を施しており、20の硬球が回転する際、摩擦を軽減することで、よりスムーズにさせる為の受け板である。22は摺動軸受け(下端部)であり、摺動製樹脂ベアリングである。ピストン部材23の軸受け用である。23はピストン部材(エレベーターピストン)であり、内部は、第二の真空排気用経路34の空間があり、真空のバッファー室の役目も受けもつ。なお、部材間の連結を受け持つピンB(13)を受け入れるキー溝を有する。24は真空引きのホースであり、終端は、ポンプに繋がっている。第二の真空排気用経路34の空間を介して、中空部材4の管内の真空を引く。25はスプリング受けであり、スプリング26の作用を受け止めるリングである。26は迫り上げ反発用スプリングであり、ピストン部材23を常に押し下げる力を与えるバネである。27は軸部(Azimuth 回転ローター部)であり、内筒側の部材と共に、回転する軸部である。28は制御部材(Azimuth 回転ツマミ部)であり、指で、摘んで回転を与える際のハンドル部となる部材である。29は角度センサーを示す。30はローター用ベアリングであり、軸部27の回転軸を支える。31はTEM試料ホルダー軸部であり、試料ホルダースタンドフレーム17とは、支持(保持)部材を介して、安定的に静止させている。(ホルダー自体を支える支持台座部は、図中割愛。)32は保護カバーのボス部であり、固定用Oリング6の弾性を利用して、挿入固定されているので脱着可能な構造である。33は保護部材(保護カバー)であり、保護カバーのボス部32と一体化されている。ピストン部材23を下げた際には、この上端面と中空部材4の試料接触部分は同じ高さとなり、微細な中空部材4の保護を果す。また中空部材4の曲がり癖を防止する目的である。34は第二の真空排気用経路である。この空間は、真空域の容積確保用チャンバーとなり、さらにポンプ作動中の真空度変動に対してのアレスターの役割も受けもつ。35は孔、36は第一の真空排気用経路、37は固定部である。
【0058】
まず、予め試料押さえ3を緩め/または取り外し、まだ試料1が固定されていない状態にしておき、試料台座の下側から、3本のピラー(針状支柱)4で持ち上げる。そのピラー4は、管状の部材で、その内部の中空は、34経路と、24のホースによって、真空ポンプに接続されているので、真空に引く事が出来る。
【0059】
三本のピラー4は、試料回転用部材5の部材の上端面に、P.C.D.で配置しているので、三本のピラー4にて吸い付かされた試料1は、三本のピラー4と共に回転させる事が出来る。回転角度は、29の角度センサーで正確に読めるので、制御部材28で回転ツマミを回す際、精度の高い角度を読み取る事が可能となる。
【0060】
三本のピラー4は、試料回転用部材5のボスに配しているので、試料回転用部材5のボスを交換する事で、メンテナンスが可能な構造で、ピラー4が折れてしまった際にも、新品の試料回転用部材5に交換できる。
【0061】
なお、試料回転用部材5については、P.C.D.のφ径を変えたラインアップを提供することで、世にあるTEMHolderでも、ほとんどの既存ホルダー場合、φ3メッシュ用であるので、対応させることが出来る。つまり、Rotation Holderを持っていないUserでも、安全に、試料をRotationできるようになる。他の要素のHolder、例えば、加熱試験TEMHolderなど、Rotation機能がなかったHolderの試料も回転させることが、追加機能的に可能になる。なお、3点支持の針状細管は、PEEK製の細管であれば、金属と違ってしなるため、試料へのダメージを軽減させることができる。
【0062】
ピラー4を持ち上げるエレベーターピストン23の最下部に配している硬球を持ち上げることで、ピストン部材23の持ち上げることができる。マイクロメーター12で押されるシムブロック14の、先端は尖っている。昇降制御部14の上面側は、微妙な勾配を配しており、昇降制御部14の下面側は、R形状になっている。R形状は、カムの効果を有する。つまり、12 マイクロメーターで昇降制御14が押されることで、前の方へ押し出される昇降制御部14は、高さ調整板16に配したローラー15に上に乗り上がって進む。それにより、昇降制御部14 の上面側に接する、ピストン部材23は、ピストン部材23 の先端(図面上は最下)の球体20を返して持ち上げられる。つまり昇降制御部14は、第一の転がり部材20と第二の転がり部材15の間に割り込み、可変厚み的なシムとしての効果を奏する。
【0063】
一旦、ローラー15の上に、昇降制御部14のRが全て乗り上がった後に、それから更に、昇降制御部14を高さ調節部材12にて、前に押し込むと今度は、昇降制御部14の上面に配した、微妙な勾配によって、微細に、徐々に、ピストン部材23 を持ち上げる事となる。
【0064】
つまり、マイクロメーターツマミ12を、一定の速さで回わすとした場合に、中空部材4の高さは、保護カバー33の納まった位置から、TEM試料1の下面近傍までは、すばやく上昇(接近)するが、試料1の下面の近傍に近づいてからは、ピストン部材23の上昇運動は、一気に減速して、微細な上昇比率に軽減するので、TEM試料1に中空部材4を接触させる間際になると、同一の12マイクロメーターのツマミにて、微細に中空部材4のせり出し高さのコントロールを行う事が可能となる。
【0065】
さらに、ローラー15の上に昇降制御部14のRが全て乗り上がるタイミングで、この昇降制御部14の先端は、真空ポンプON/OFF用のマイクロスイッチ18を押すので、間接的であるが自動でポンプが回りだすことになる。
【0066】
つまり昇降制御部14の先端部は、カム的要素を備える単純な機構で、中空部材4+試料回転用部材5+ピストン部材23+第一の転がり部材20の組立部品の昇降に対して、可変的な作動比を実現し、ポンプのON/OFFも連動制御できることになる。
【0067】
また、電子顕微鏡用の試料に用いた場合の当該装置の運用手順について説明すると以下の通りである。
【0068】
試料ホルダーを当該製品にセットする。(
図1は、Holderが定位置にセットされている状態である。Holderを保持する機構部は、図面から割愛されている。)試料1を押さえている2の固定ネジは、緩めるか、または2と3は外しておく。マイクロメーターヘッドツマミ12を締め込むと、4の 3本のピラーは、33の保護板から、せり出してくる。
【0069】
12のツマミを締めてゆくにつれ、4のピラーは、試料1の裏面に徐々に近づき、真空ポンプのマイクロスイッチ18は、昇降制御部14の先端で押され、ONとなり、真空ポンプが回りだす。真空ポンプは、24のホースと33に空間を解して、4の管中を引き始める。
【0070】
さらに、12のツマミを締めてゆくにつれ、中空部材4はせり上がり、TEM試料1に接触すると、中空部材4の上端面は、吸盤のように試料1に密着する。さらに、12のツマミを締めると、試料Holder31先端の試料セット部の台面から試料1を持ち上げて、試料ホルダー31に対して浮き上がり非接触状態となる。その段階で、指にて制御部材28のノブの外周をハンドルとして回すことにより、13のピンを介して、軸部27のローターとその中に組み込まれた部材が回されるので、結果的に、中空部材4が回せるので、中空部材4に吸い付かれた試料1は、中空部材4と共に回転させる事が出来る。
【0071】
制御部材28のハンドルは、軸部27の外周の動きを読み取る29の角度センサーで、正確に角度を読み出しているので、試料1を任意の回転角度に試料を回転させる事が出来る。
【0072】
試料1の回転について任意の角度制御を終えたら、その後、12マイクロメーターヘッドツマミを戻し出すと、試料1は、試料ホルダー31の試料台に着陸させることが出来る。その状態で、試料固定ネジ2と試料押さえプレート3で試料1を固定する。その後、さらに12マイクロメーターヘッドツマミを戻し出すと、中空部材4は試料1から引き離なされる。
【0073】
なお吸引面積は、0.01mm
2程度であるので、問題なく離れる。それから、さらに12マイクロメーターヘッドツマミを戻し出すと、タイミングで、18 真空ポンプのマイクロスイッチもOFFの状態に戻り、ポンプは、自動的に止まる。後は、中空部材4が保護カバー33の面に引き込むまで回して終了する流れとなる。