特許第6190868号(P6190868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190868
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ケーブル型アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20170821BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20170821BHJP
   H04B 5/00 20060101ALI20170821BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H02G3/30
   H01Q13/22
   H04B5/00 A
   H01Q1/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-247802(P2015-247802)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-112803(P2017-112803A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2017年1月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文生
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5749850(JP,B2)
【文献】 特開2011−199760(JP,A)
【文献】 特公昭51−017788(JP,B1)
【文献】 特開2014−082905(JP,A)
【文献】 特開2009−040589(JP,A)
【文献】 特開2010−232120(JP,A)
【文献】 特開2009−033915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の漏洩同軸ケーブルと、前記複数の漏洩同軸ケーブルを互いに一定の間隔を設けて平行に配置した状態で連結する連結具とを備え、
前記連結具は、前記複数の漏洩同軸ケーブルをそれぞれ把持する複数の把持部と、前記間隔を設けた状態で前記複数の把持部の各間を連結する連結部とを備え、プラスチック材料により前記複数の把持部と前記連結部とが一体に形成され、
前記連結部は、前記把持部により把持される前記漏洩同軸ケーブルの互いに隣り合う間の空間を回避した状態で、前記複数の把持部の各間を連結しており、
前記複数の把持部は断面視で環状となる部分の一部に開放部を有する断面形状に形成され、かつ前記開放部を通してその内側に嵌め込まれた前記漏洩同軸ケーブルを前記開放部を介して両側の湾曲部間に挟み込んで把持するように構成され、
前記開放部は前記複数の把持部の互いに同じ側に位置し、前記把持部内側に把持された前記漏洩同軸ケーブルのスロットを前記把持部外方に臨ませ、
前記連結部は前記複数の把持部に対して前記開放部とは反対の側に設けられ
前記空間のうち前記把持部を除いた領域には空気のみが存在することを特徴とするケーブル型アンテナ。
【請求項2】
前記連結部は、前記複数の把持部が並列する方向に延長された第1の延長部と、前記複数の把持部が並列する方向と交差する方向に延長されると共に、前記第1の延長部の一面と前記複数の把持部との各間を連結する複数の第2の延長部とを有することを特徴とする請求項1に記載のケーブル型アンテナ。
【請求項3】
前記第2の延長部の高さは、前記漏洩同軸ケーブルのスロットから放射される電磁波の自由空間波長をλとしたときに、λ以下であることを特徴とする請求項2に記載のケーブル型アンテナ。
【請求項4】
前記間隔は、前記漏洩同軸ケーブルのスロットから放射される電磁波の自由空間波長をλとしたときに、λ/4〜λの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のケーブル型アンテナ。
【請求項5】
前記連結部の厚みは、漏洩同軸ケーブルのサイズDに対して、D/8〜Dの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のケーブル型アンテナ。
【請求項6】
前記連結具は、前記複数の漏洩同軸ケーブルの延長方向に間隔を設けて複数配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のケーブル型アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル型アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブル(LCX:Leaky Coaxial Cable)は、通常の同軸ケーブルの外部導体にスロットと呼ばれる孔部を設けたケーブル型アンテナである。LCXでは、このようなスロットを通じて、ケーブル内部の電磁波信号をケーブル外部に放射(送信)したり、ケーブル外部の電磁波信号をケーブル内部に取り込んだり(受信)することができる。すなわち、この漏洩同軸ケーブルは、伝送路とアンテナとの両方の機能を持った特殊な細長い送受信アンテナと言える。
【0003】
LCXは、金属体等の障害物が多く存在する細長いエリアで使用するアンテナとして特に有効である。例えば、曲がりくねったトンネルや金属体が多数存在する場所などでは、電磁波の不感地帯が生じやすい。このような場所では、一般的な固定アンテナを用いた場合、多数の固定アンテナを設置しなければならない。一方、LCXによるケーブル型アンテナを用いた場合には、LCXの延長方向に周期的に並ぶ多数のスロットがそれぞれアンテナとして機能するため、アンテナの設置数を減らすことが可能である。この場合、LCXの延長方向に多数のアンテナが配置されたことになる。
【0004】
そのため、1本のLCXを設置するだけで、上述した細長く金属体等の障害物が多く存在する環境における電磁波の不感地帯の発生を抑制できる。また、アンテナの設置工事についても、上述した一般的な固定アンテナを多数設置する工事に比べて、LCXを敷設するだけでよいため、非常に簡単に実施できる。さらに、一般的な固定アンテナでは、アンテナの設置数に合わせて送受信機の数を増やす必要がある。これに対して、LCXを用いたケーブル型アンテナでは、LCXの一端に1つの送受信機を接続すればよいため、送受信機の数を減らすことが可能である。
【0005】
ところで、近年、送信側と受信側にそれぞれ複数のアンテナを用いるMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)と呼ばれる無線通信装置の実用化が進んでいる。例えば、このMIMOにおいて、複数の漏洩同軸ケーブルを平行に並べて配置した結束漏洩伝送線路をアレイアンテナとして用いる無線通信装置が提案されている(特許文献1を参照。)。
【0006】
特許文献1に記載の結束漏洩同軸ケーブルは、複数本のLCXを平行に配置し、各々のLCXのシース(外部被覆)が、それらの長手方向に沿って互いに固着される(一体的に形成される)ことにより、互いに結束されている(図3を参照。)。また、特許文献1に記載結束漏洩同軸ケーブルは、複数本のLCXを平行に配置し、各々のLCXのシースが支持材によって連結されている(図7を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−199760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数のLCXを近接した状態で平行に並べて配置し、支持材で連結した場合には、隣り合う一方のLCXと他方のLCXとの間の空間に、誘電体である支持体が存在することになる。この場合、隣り合うLCXの間で誘電体損失が発生し、複数のLCXを支持材を用いずに空気中に平行に並べて配置した場合よりも、LCXの伝送損失が増大することによって、アンテナ特性が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、複数の漏洩同軸ケーブルを互いに一定の間隔を設けて平行に配置した状態で連結するのに適した連具を用いることによって、各漏洩同軸ケーブルの伝送損失を低く抑えることができ、なお且つ、敷設する際の作業性に優れたケーブル型アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 複数の漏洩同軸ケーブルと、前記複数の漏洩同軸ケーブルを互いに一定の間隔を設けて平行に配置した状態で連結する連結具とを備え、
前記連結具は、前記複数の漏洩同軸ケーブルをそれぞれ把持する複数の把持部と、前記間隔を設けた状態で前記複数の把持部の各間を連結する連結部とを備え、プラスチック材料により前記複数の把持部と前記連結部とが一体に形成され、
前記連結部は、前記把持部により把持される前記漏洩同軸ケーブルの互いに隣り合う間の空間を回避した状態で、前記複数の把持部の各間を連結しており、
前記複数の把持部は断面視で環状となる部分の一部に開放部を有する断面形状に形成され、かつ前記開放部を通してその内側に嵌め込まれた前記漏洩同軸ケーブルを前記開放部を介して両側の湾曲部間に挟み込んで把持するように構成され、
前記開放部は前記複数の把持部の互いに同じ側に位置し、前記把持部内側に把持された前記漏洩同軸ケーブルのスロットを前記把持部外方に臨ませ、
前記連結部は前記複数の把持部に対して前記開放部とは反対の側に設けられ
前記空間のうち前記把持部を除いた領域には空気のみが存在することを特徴とするケーブル型アンテナ。
〔2〕 前記連結部は、前記複数の把持部が並列する方向に延長された第1の延長部と、前記複数の把持部が並列する方向と交差する方向に延長されると共に、前記第1の延長部の一面と前記複数の把持部との各間を連結する複数の第2の延長部とを有することを特徴とする前記〔1〕に記載のケーブル型アンテナ。
〔3〕 前記第2の延長部の高さは、前記漏洩同軸ケーブルのスロットから放射される電磁波の自由空間波長をλとしたときに、λ以下であることを特徴とする前記〔2〕に記載のケーブル型アンテナ。
〔4〕 前記間隔は、前記漏洩同軸ケーブルのスロットから放射される電磁波の自由空間波長をλとしたときに、λ/4〜λの範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載のケーブル型アンテナ。
〔5〕 前記連結部の厚みは、漏洩同軸ケーブルのサイズDに対して、D/8〜Dの範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載のケーブル型アンテナ。
〔6〕 前記連結具は、前記複数の漏洩同軸ケーブルの延長方向に間隔を設けて複数配置されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載のケーブル型アンテナ。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、複数の漏洩同軸ケーブルを互いに一定の間隔を設けて平行に配置した状態で連結するのに適した連結具を用いることによって、各漏洩同軸ケーブルの伝送損失を低く抑えることができ、なお且つ、敷設する際の作業性に優れたケーブル型アンテナを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態で用いられる漏洩同軸ケーブルの一構成例を示す斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る漏洩同軸ケーブル用連結具の構成を示し、(A)はその平面図、(B)は、その断面図、(C)は、その連結具によりLCXが連結された状態を示す断面図である。
図3図2に示す漏洩同軸ケーブル用連結具が備える把持部による漏洩同軸ケーブルの嵌め込み構造を示し、(A)はその断面図、(B)はその側面図である。
図4図2に示す漏洩同軸ケーブル用連結具を用いたケーブル型アンテナの構成を示す平面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るケーブル型アンテナの構成を示し、(A)はその平面図、(B)は、その端面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る連結具の構成を示し、(A)〜(D)は図4に示すケーブル型アンテナが備える連結部の変形例を示す断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る連結具の構成を示す平面図である。
図8】本発明の第5の実施形態に係る連結具の構成を示す平面図である。
図9】本発明の第6の実施形態に係る連結具の構成を示す断面図である。
図10】本発明の第7の実施形態に係る連結具の構成を示す断面図である。
図11】本発明の第8の実施形態に係る連結具の構成を示し、(A)はその一例を示す平面図、(B)は、その他例を示す平面図である。
図12】本発明の第9の実施形態に係る連結具の嵌め込み構造を示し、(A)はその嵌め込まれた状態を示す断面図、(B)は、その嵌め込む途中の段階を示す断面図である。
図13】本発明の第10の実施形態に係る連結具の一例を示し、(A)はその側面図、(B)はそのA−A’断面図、(C)はそのB−B’断面図である。
図14】本発明の第10の実施形態に係る連結具の一例を示し、(A)はその側面図、(B)はそのA−A’断面図、(C)はそのB−B’断面図である。
図15】本発明の第10の実施形態に係る連結具の一例を示し、(A)はその側面図、(B)はそのA−A’断面図、(C)はそのB−B’断面図である。
図16】本発明の第11の実施形態に係る連結具の嵌め込み構造の一例を示し、(A)はその嵌め込み前の状態を示す断面図、(B)はその嵌め込み後の状態を示す断面図である。
図17】本発明の第11の実施形態に係る連結具の嵌め込み構造の一例を示し、(A)はその嵌め込み前の状態を示す断面図、(B)はその嵌め込み後の状態を示す断面図である。
図18】本発明の第11の実施形態に係る連結具の嵌め込み構造の一例を示し、(A)はその嵌め込み前の状態を示す断面図、(B)はその嵌め込み後の状態を示す断面図である。
図19】本発明の第11の実施形態に係る連結具の嵌め込み構造の一例を示し、(A)はその嵌め込み前の状態を示す断面図、(B)はその嵌め込み後の状態を示す断面図である。
図20】本発明の第12の実施形態に係る無線通信装置の一構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
(漏洩同軸ケーブル)
先ず、本発明の実施形態で用いられる漏洩同軸ケーブル(以下、LCXという。)について説明する。なお、図1は、本実施形態で用いられるLCX1の一構成例を示す斜視図である。
【0015】
LCX1は、図1に示すように、線状の中心導体2と、中心導体2を同心円状に被覆する絶縁体3と、絶縁体3を同心円状に被覆すると共に、延長方向に周期的に並ぶ複数のスロット4が開口して設けられた外部導体5と、外部導体5を同心円状に被覆するシース6とを有している。
【0016】
中心導体2及び外部導体5には、電気抵抗の低い銅が多く用いられるのが一般的であるが、アルミニウムや銀などが用いられることもある。絶縁体3には、高周波帯域での伝送損失の低減を目的に誘電体損失(tanδ)の低いポリエチレンが用いられている。或いは、tanδを低くするために、発砲性のポリエチレンが用いられてもよい。シース6には、例えばポリエチレンや塩化ビニル、難燃性のポリエチレンなどが用いられている。また、耐火型のLCX1として、仮に燃焼しても中心導体2と外部導体5とが直ちに短絡しないように、絶縁体3の周囲にガラス繊維製のテープを巻き付けた構造(図示せず。)を採用してもよい。
【0017】
複数のスロット4は、LCX1の延長方向において一定のピッチPで直線状に並んで配置されると共に、それぞれが同じ方向に向かって開口している。スロット4の開口形状については、特に限定されるものではなく、例えば丸孔であっても長孔でもよい。本実施形態では、ジグザグ状に配置されたスロット4として、LCX1の延長方向に対して斜めとなる長孔が、その斜めとなる向きを交互に変えながら並んで配置されている。また、垂直型のスロット4として、LCX1の延長方向に対して垂直となる長孔が並んで配置された構成(図示せず。)としてもよい。
【0018】
[第1の実施形態]
(漏洩同軸ケーブル用連結具)
次に、本発明の第1の実施形態として、例えば図2(A)〜(C)に示す漏洩同軸ケーブル用連結具(以下、単に連結具という。)10について説明する。なお、図2(A)は、連結具10の構成を示す平面図である。図2(B)は、図2(A)中に示す線分X−X’による連結具10の断面図である。図2(C)は、連結具10によりLCX1が連結された状態を示す断面図である。
【0019】
連結具10は、図2(A)〜(C)に示すように、複数(本例では2本)のLCX1を互いに一定の間隔Sを設けて平行に配置した状態で連結する連結具である。具体的に、この連結具10は、LCX1を把持する複数(本例では2つ)の把持部11a,11bと、複数の把持部11a,11bの各間を連結する連結部12と、把持部11a,11bの一部が開放された開放部13とを備えている。
【0020】
連結具10は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂などのプラスチック材料を射出成形や切削加工等によって、複数の把持部11a,11bと連結部12とが一体に形成された構成を有している。
【0021】
複数の把持部11a,11bは、LCX1を嵌め込む構造(嵌め込み構造)を有している。ここで、把持部11a,11bは、互いに同じ嵌め込み構造を有している。したがって、把持部11a,11bによるLCX1の嵌め込み構造については、図3(A),(B)に示す把持部11a側を例に挙げて説明するものとする。なお、図3(A)は、図2(B)に示す把持部11aによるLCX1の嵌め込み構造を示す断面図である。図3(B)は、図3(A)中に示す矢印Yの方向から見た側面図である。
【0022】
把持部11aは、図3(A),(B)に示すように、断面視で環状となる部分の一部が開放部13として開放された断面形状を有している。把持部11aは、開放部13を挟んで対称となる一対の湾曲部14a,14bを有している。一対の湾曲部14a,14bは、LCX1の外径に合わせて断面略円弧状に湾曲している。一対の湾曲部14a,14bの内径は、LCX1の外径とほぼ同じかそれよりも僅かに小さい。一対の湾曲部14a,14bの開き角θは、60°以上90°未満である。
【0023】
この嵌め込み構造では、開放部13を通して把持部11aの内側にLCX1が嵌め込まれると、一対の湾曲部14a,14bが互いに離間する方向に弾性変形しながら、LCX1を挟み込む。これにより、LCX1を把持することができる。また、把持部11aがLCX1を把持した後でも、LCX1を把持部11aから取り外すことができる。
【0024】
連結部12は、図2(C)に示すように、把持部11a,11bにより把持されるLCX1の互いに隣り合う間の空間Kを回避(迂回)した状態で、複数の把持部11a,11bの各間を連結している。具体的に、この連結部12は、把持部11a,11bが並列する方向(幅方向)に延長された第1の延長部12aと、把持部11a,11bが並列する方向と交差する方向(高さ方向)に延長されると共に、第1の延長部12aの一面と把持部11a,11bとの間を連結する複数の第2の延長部12bとを有している。
【0025】
第1の延長部12aは、複数の第2の延長部12bの間で略矩形平板状に形成されている。各第2の延長部12bは、各把持部11a,11bと第1の延長部12aとの間で略矩形平板状に形成されている。また、各第2の延長部12bは、第1の延長部12aの一面から同一高さで略垂直に立ち上がるように形成されている。さらに、各第2の延長部12bは、その延長線上に各LCX1の中心導体5が位置するように各把持部11a,11bと連結されている。
【0026】
開放部13は、第1の延長部12aの一面に対してほぼ垂直な方向に向かって開放されている。すなわち、開放部13の位置は、把持部11a,11bと第2の延長部12bとの接続位置とは反対側にある。
【0027】
開放部13は、一対の湾曲部14a,14bの間を一定の幅(上記開き角θに対応する幅)で開放している。開放部13の幅は、LCX1の周方向におけるスロット4の寸法(図1中に示す幅Z)よりも大きい寸法を有している。開放部13は、把持部11a,11bに把持されたLCX1のスロット4を外方に臨ませる位置にある。すなわち、開放部13は、把持部11a,11bの各位置からそれぞれ同じ方向に向かって開放されている。
【0028】
本実施形態の連結具10は、把持部11a,11bにより把持されるLCX1の互いに隣り合う間の空間Kを回避した状態で、連結部12(第1の延長部12a及び第2の延長部12b)が複数の把持部11a,11bの各間を連結した構造を有している。
【0029】
ここで、本発明における空間Kとは、把持部11a,11bにより把持されるLCX1の互いに隣り合う間の空間であって、これら隣り合うLCX1の外周を把持部11a,11bが並列する方向(幅方向)に結ぶ上下の二点鎖線と、上下の二点鎖線の間でLCX1の外周に沿った左右の二点鎖線とで囲まれた空間のことをいう。
【0030】
本実施形態の連結具10では、この空間Kを回避(迂回)した状態で、連結部12が把持部11a,11bの各間を連結している。したがって、空間Kのうち把持部12を除いた領域には、上記特許文献1に記載される支持材のような誘電体が存在しておらず、空気のみが存在した状態となっている。
【0031】
これにより、本実施形態の連結具10では、複数のLCX1を互いに一定の間隔Sを設けて平行に配置した状態で連結した場合でも、隣り合うLCXの間で誘電体損失が発生することを防ぐことができ、各LCX1の伝送損失を低く抑えることが可能である。
【0032】
(ケーブル型アンテナ)
次に、図4に示す上記漏洩同軸ケーブル用連結具(以下、単に連結具という。)10を用いたケーブル型アンテナ100について説明する。なお、図4は、ケーブル型アンテナ100の構成を示す平面図である。
【0033】
ケーブル型アンテナ100は、図4に示すように、複数(本例では2本)のLCX1と、複数のLCX1の延長方向に間隔Eを設けて配置された複数(図4中では2つ)の連結具10とを備えている。
【0034】
各連結具10は、各把持部11a,11bにLCX1を把持させることによって、複数のLCX1を互いに一定の間隔Sを設けて平行に配置した状態で連結している。また、各LCX1は、各スロット4を開放部13から外方に臨ませるように、把持部11a,11bに把持されている。
【0035】
これにより、複数のLCX1がアレイアンテナを構成している。また、このアレイアンテナは、例えばMIMO通信システムにおいて信号の送受信を行う通信装置の送受信アンテナとして好適に用いることができる。
【0036】
各LCX1のスロット4の向きは、把持部11a,11bの連結部12により連結される側(第2の延長部12b)とは反対側を向いている。これにより、各LCX1のスロット4の前面には、連結部12(第2の延長部12b)が存在しなくなる。また、隣り合うLCX1の間にも、連結部12(第1の延長部12a及び第2の延長部12b)が存在しなくなる。したがって、隣り合うLCX1の間には、空気のみが存在することになる。
【0037】
これにより、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、各LCX1のスロット4を通じて、効率良くケーブル内部の電磁波信号をケーブル外部に放射(送信)したり、ケーブル外部の電磁波信号をケーブル内部に取り込んだり(受信)することができる。
【0038】
本実施形態の連結具10では、上述したように、把持部11a,11bにより把持されたLCX1の互いに隣り合う間の空間Kを回避(迂回)した状態で、連結部12(第1の延長部12a及び第2の延長部12b)が複数の把持部11a,11bの各間を連結している。
【0039】
これにより、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、連結具10を用いて複数のLCX1を平行に配置した状態で連結した場合でも、隣り合うLCX1の間で誘電体損失が発生することを防ぐことができるため、各LCX1の伝送損失を低く抑えることが可能である。
【0040】
一方、ケーブル型アンテナ100では、隣り合う一方のLCX1のスロット4から放射された電磁波が連結具10を通じて他方のLCX1のスロット4へと伝わる。したがって、この連結具10を通じて一方のLCX1のスロット4から他方のLCX1のスロット4へと伝わる電磁波の距離が短いほど、伝送損失が増大することになる。
【0041】
これに対して、本実施形態の連結具10では、各LCX1のスロット4の前面とは反対(背面)側に向かって延長された第2の延長部12bの間を第1の延長部12aが連結する構成のため、この連結具10を通じて一方のLCX1のスロット4から他方のLCX1のスロット4へと伝わる電磁波の距離を伸ばすことができる。
【0042】
これにより、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、連結具10を通じて一方のLCX1のスロット4から他方のLCX1のスロット4へと伝わる電磁波による伝送損失を低く抑えることが可能である。
【0043】
ここで、間隔Sは、図4に示すように、隣り合うLCX1の外部導体8間の距離であり、LCX1の各スロット7から放射される電磁波の自由空間波長をλとしたときに、λ/4〜λとすることが好ましい。この間隔Sがλ/4よりも小さいと、隣り合うLCX1と給電用同軸ケーブル1との干渉により、LCX1の伝送損失が大きくなる。一方、この間隔Sを大きくすることによって、LCX1の伝送損失を低く抑えることができるが、間隔Sをλよりも大きくしても、LCX1の伝送損失はほとんど低下しないので、ケーブル型アンテナ1Aの大型化を防ぐためには、間隔Sをλ以下とすることが好ましい。
【0044】
なお、ケーブル型アンテナ100がMIMO通信用アンテナとして使用される場合における周波数λの例としては、無線LANで利用される2.4GHz(波長λ=125mm)や5GHz(波長λ=86mm)、或いは次世代携帯電話の3.5GHz(波長λ=60mm)がある。
【0045】
また、図3(A),(B)に示す第2の延長部12bの高さHは、第1の延長部12aの一面と把持部11a,11bとの間の距離であり、この高さHについては、λ以下とすることが好ましい。連結具10は誘電体であるため、LCX1が第1の延長部12aに接近するほど、LCX1の伝送損失に影響を及ぼすことになる。したがって、この高さHを大きくすることによって、LCX1の伝送損失を低く抑えることができる。しかしながら、高さHをλよりも大きくしても、LCX1の伝送損失はほとんど変化しなくなるため、ケーブル型アンテナ1Aの大型化を防ぐためには、高さHをλ以下とすることが好ましい。
【0046】
また、図3(A)に示す連結部12(第1の延長部12a及び第2の延長部12b)の厚みTは、LCX1のサイズD(Dの前の数字で外部導体8の概略内径[単位:mm]を表す。)に対して、D/8〜Dとすることが好ましい。この厚みTが薄いほど、LCX1の伝送損失が低くなる傾向があるが、D/8〜Dの範囲であれば、LCX1の伝送損失を低く抑えることが可能である。
【0047】
以上のように、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、上記連結具10を用いて、複数のLCX1を容易に連結することができる。なお且つ、隣り合うLCX1の間隔SをLCX1の延長方向に亘って一定に保つことができる。
【0048】
さらに、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、複数のLCX1を互いに一定の間隔Sを設けて平行に配置した場合でも、各LCX1の伝送損失を低く抑えることが可能である。
【0049】
また、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、上記連結具10の把持部11a,11bにLCX1を嵌め込む構成のため、この連結具10に対するLCX1の着脱を容易に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、複数のLCX1を一体化することによって、2本のLCX1を別々に敷設する必要がなくなるため、このケーブル型アンテナ100を敷設する際の作業性を高めることが可能である。具体的に、このケーブル型アンテナ100を敷設する際は、上述した連結部12(第1の延長部12a)を設置面にビス等により取り付けることで、容易に敷設することが可能である。
【0051】
さらに、本実施形態のケーブル型アンテナ100では、上記連結具10の把持部11a,11bにLCX1が把持された状態のまま、このLCX1を軸回りに回転させることもできる。したがって、スロット4と開放部13との位置合わせも容易に行うことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、複数のLCX1を互いに一定の間隔Sを設けて平行に配置した状態で連結するのに適した連結具10、並びにそのような連結具10を用いたケーブル型アンテナ100を提供することが可能である。
【0053】
なお、本発明は、上記第1の実施形態に示す連結具10及びケーブル型アンテナ100の構成に必ずしも限定されるものではなく、以下の実施形態のように、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の実施形態の説明では、上記連結具10及びケーブル型アンテナ100と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0054】
具体的に、本実施形態において、上記連結具10を配置する数については、LCX1の延長される長さに応じて適宜調整すればよい。また、互いに隣り合う連結具10の間隔Eも必ずしも一定である必要はなく、任意に調整することができる。また、本実施形態では、上述したLCX1と連結具10との組み合わせによって、互いに連結されるLCX1の本数を増やすことが可能である。
【0055】
[第2の実施形態]
第2の実施形態として図5(A),(B)に示すケーブル型アンテナ100Aは、上記連結具10を用いて、互いに連結されるLCX1の本数(本例では4本)を増やした構成である。なお、図5(A)は、ケーブル型アンテナ100Aの構成を示す平面図である。図5(B)は、図5(A)中に示す矢印Yの方向から見たケーブル型アンテナ100Aの端面図である。
【0056】
ケーブル型アンテナ100Aでは、図5(A),(B)に示すように、1本目のLCX1と2本目のLCX1との間を連結する連結具10と、2本目のLCX1と3本目のLCX1との間を連結する連結具10と、3本目の漏洩同軸ケーブルと4本目の漏洩同軸ケーブルとの間を連結する連結具10とが、複数のLCX1の延長方向において互い違いに並んで配置されている。
【0057】
以上のように、本実施形態では、LCX1と連結具10との組み合わせてによって、互いに連結されるLCX1の本数を増やすことが可能である。
【0058】
[第3の実施形態]
第3の実施形態として図6(A)〜(D)に示す連結具10A〜10Dは、上記連結部12の代わりに、連結部12A〜12Dを備えた構成である。なお、図6(A)は、連結具10Aの構成を示す断面図である。図6(B)は、連結具10Bの構成を示す断面図である。図6(C)は、連結具10Cの構成を示す断面図である。図6(D)は、連結具10Dの構成を示す断面図である。
【0059】
このうち、図6(A)に示す連結部12Aを備える連結具10Aは、各第2の延長部12bの延長線上に各把持部11a,11bの内側側面が位置する構成である。この構成の場合、第1の延長部12aの長さが短くなるが、その分だけ連結部12Aを小型化することができ、連結具10Aの材料費を低く抑えることが可能である。
【0060】
一方、図6(B)に示す連結部12Bを備える連結具10Bは、各第2の延長部12bの延長線上に各把持部11a,11bの外側側面が位置する構成である。この構成の場合、第1の延長部12aの長さが長くなることで、伝送損失をより低減することが可能である。
【0061】
一方、図6(C)に示す連結部12Cを備える連結具10Cは、各第2の延長部12bが互いに外側に斜めに立ち上がるように形成された構成である。この構成の場合、第1の延長部12aと第2の延長部12bとの間の角度が緩やか(鈍角)となるため、この部分の曲げ強度を高めることが可能である。
【0062】
一方、図6(D)に示す連結部12Dを備える連結具10Dは、各第2の延長部12bが互いに外側に湾曲するように形成された構成である。この構成の場合、第2の延長部12bの長さが長くなることで、伝送損失をより低減することが可能である。
【0063】
以上のように、本実施形態では、連結具10A〜10Dが備える連結部12A〜12Dの形状を適宜変更することが可能である。
【0064】
[第4の実施形態]
第4の実施形態として図7に示す連結具10Eは、上記図2(A)に示す連結具10よりも、把持部11a,11b及び連結部12のLCX1の延長方向に沿った長さLを延長した構成である。なお、図7は、連結具10Eの構成を示す平面図である。
【0065】
以上のように、本実施形態では、把持部11a,11b及び連結部12の長さLについて、適宜変更することが可能である。
【0066】
[第5の実施形態]
第5の実施形態として図8に示す連結具10Fは、LCX1の延長方向に並ぶ複数の連結具10が連結部12を介して一体化された構成である。なお、図8は、連結具10Fの構成を示す平面図である。
【0067】
図8に示す連結具10Fは、複数の連結具10がLCX1の延長方向に並んで配置されると共に、隣り合う連結具10同士が連結部12を介して互いに連結されることによって、複数の連結具10が一体化された構成を有している。
【0068】
以上のように、本実施形態では、LCX1の延長方向に並ぶ複数の連結具10が連結部12を介して一体化された構成とすることが可能である。
【0069】
[第6の実施形態]
第6の実施形態として図9に示す連結具10Gは、互いに連結されるLCX1の本数(本例では4本)に合わせて、把持部11a,11b,11c,11dを設けた構成である。なお、図9は、連結具10Gの構成を示す断面図である。
【0070】
以上のように、本実施形態では、互いに連結されるLCX1の本数に合わせて、把持部11a,11b,11c,11dの数を増やすことが可能である。
【0071】
[第7の実施形態]
第7の実施形態として図10に示す連結具10Hは、上記図9に示す連結具10Gの構成に加えて、連結部12を切断する切断部15を備えた構成である。なお、図10は、連結具10Hの構成を示す断面図である。
【0072】
切断部15は、図10に示すように、例えば第1の延長部12aに形成された切れ込み15aからなる。切れ込み15aは、複数の第2の延長部12bのうち、少なくとも一部の第2の延長部12bと第1の延長部12aとの境界付近において、この連結具10Fの長さ方向に亘って形成されている。この構成の場合、切断部15に沿って連結部12を切断することで、一部の連結部12を切り離すことができる。
【0073】
以上のように、本実施形態では、連結部12に切断部15を設けることによって、上記連結具10Hを分割可能な構成とすることが可能である。なお、切断部15については、連結部12の一部を切り離すことが可能な構成であればよく、上述した切れ込み15aからなる構成に必ずしも限定されるものではない。また、切断部15の配置や数も適宜変更することが可能である。
【0074】
[第8の実施形態]
第8の実施形態として図11(A),(B)に示す連結具10J,10Kは、複数のLCX1(アレイアンテナ)が設置される設置面(図示せず。)に対して連結部12を取り付ける取付部16を備えた構成である。なお、図11(A)は、連結具10Jの構成を示す平面図である。図11(B)は、連結具10Kの構成を示す平面図である。
【0075】
図11(A)に示す連結具10Jは、取付部16として、第1の延長部12aの略中央部を厚み方向に貫通する孔部16aを有している。連結具10Jでは、この孔部16aを通してビス等により連結部12を設置面に取り付けることができる。
【0076】
図11(B)に示す連結具10Kは、上記図7に示す連結具10Eの構成に加えて、複数の孔部16aを有している。複数の孔部16aは、第1の延長部12aの略中央部において、LCX1の延長方向に等間隔に並んで設けられている。また、第1の延長部12aには、開口部16bが設けられている。この開口部16bは、複数の孔部16aの各間に位置している。これにより、連結具10Kを軽量化したり、連結具10Kに使用される材料を削減したりすることができる。連結具10Kでは、これら複数の孔部16aにビス等を通すことで連結部12を例えば壁面等の設置面に取り付けて固定することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態では、連結部12に取付部16を設けることによって、この連結部12を設置面に対して容易に取り付けることができる。なお、取付部16については、上述した孔部16aの構成に限らず、例えばビス等を打ち込む位置に凹部や溝部、目印などを設けた構成としてもよい。
【0078】
[第9の実施形態]
第9の実施形態として図12(A),(B)に示す連結具10Lは、断面矩形となるLCX1の外径に合わせて、把持部11a,11bの形状を変更した構成である。ここで、把持部11a,11bは、互いに同じ嵌め込み構造を有している。したがって、把持部11a,11bによるLCX1の嵌め込み構造については、図12(A),(B)に示す把持部11a側を例に挙げて説明するものとする。なお、図12(A)は、把持部11aにLCX1が嵌め込まれた状態を示す断面図である。図12(B)は、把持部11aにLCX1が嵌め込まれる途中の段階を示す断面図である。
【0079】
図12(A),(B)に示す連結具10Lでは、把持部11aを構成する一対の湾曲部14a,14bがLCX1の外径に合わせて断面略L字状に屈曲した形状を有している。この嵌め込み構造では、開放部13を通して把持部11aの内側にLCX1が嵌め込まれると、一対の湾曲部14a,14bが互いに離間する方向に弾性変形しながら、LCX1を挟み込む。これにより、LCX1を把持することができる。また、把持部11aがLCX1を把持した後でも、LCX1を把持部11aから取り外すことができる。
【0080】
[第10の実施形態]
第10の実施形態として図13(A),(B),(C)に示す連結具10M、図14(A),(B),(C)に示す連結具10N、及び図15(A),(B),(C)に示す連結具10Pは、把持部11a,11bに開放部13とは別の開放部13A,13B,13Cを設けた構成である。ここで、把持部11a,11bは、互いに同じ構造を有している。したがって、図13図14及び図15では、把持部11a側を例に挙げて説明するものとする。なお、図13図14及び図15において、各(A)は、把持部11aにLCX1が嵌め込まれた状態を示す側面図、各(B)は、各(A)中に示す線分A−A’による断面図、各(C)は、各(A)中に示す線分B−B’による断面図である。
【0081】
図13(A),(B),(C)に示す連結具10Mは、一対の湾曲部14a,14bのうち何れか一方又は両方(本例では14a,14b)に開放部13Aを有している。開放部13Aは、湾曲部14a,14bの略中央部分を先端側から基端側に向かって一部切り欠くように形成されている。これにより、開放部13Aは、第1の延長部12aの一面に対してほぼ水平な方向に向かって開放されている。
【0082】
図14(A),(B),(C)に示す連結具10Nは、一対の湾曲部14a,14bのうち何れか一方又は両方(本例では14a,14b)に複数(本例では2つ)の開放部13Bを有している。複数の開放部13Bは、この連結具10Nの長さ方向に並ぶと共に、湾曲部14a,14bを先端側から基端側に向かって一部切り欠くように形成されている。これにより、各開放部13Bは、第1の延長部12aの一面に対してほぼ水平な方向に向かって開放されている。
【0083】
図15(A),(B),(C)に示す連結具10Pは、一対の湾曲部14a,14bのうち何れか一方又は両方(本例では14a,14b)に開放部13Cを有している。開放部13Cは、湾曲部14a,14bの略中央部分を開口して形成されている。これにより、開放部13Cは、第1の延長部12aの一面に対してほぼ水平な方向に向かって開放されている。
【0084】
本実施形態の連結具10M,10N,10Pでは、開放部13A,13B,13CからLCX1のスロット4を外方に臨ませることができる。これにより、開放部13からLCX1のスロット4を外方に臨ませる場合に限らず、把持部11a,11bに把持された各LCX1のスロット4の向きに対する自由度を高めることが可能である。
【0085】
[第11の実施形態]
第11の実施形態として図16(A),(B)に示す連結具10Q、図17(A),(B)に示す連結具10R、図18(A),(B)に示す連結具10S、及び図19(A),(B)に示す連結具10Tは、把持部11a,11bに対してLCX1A,1B,1C,1Dを位置決めする位置決め部18A,18B,18C,18Dを備えた構成である。ここで、把持部11a,11bは、互いに同じ嵌め込み構造を有している。したがって、把持部11a,11bによるLCX1A,1B,1C,1Dの嵌め込み構造については、図16図17図18及び図19に示す把持部11a側を例に挙げて説明するものとする。なお、図16図17図18及び図19において、各(A)は、把持部11aにLCX1A,1B,1C,1Dが嵌め込まれる前の状態を示す断面図、各(B)は、把持部11aにLCX1A,1B,1C,1Dが嵌め込み後の状態を示す断面図である。
【0086】
図16(A)示すLCX1Aは、シース6の外周面に1つの凸部19を有している。凸部19は、このLCX1Aの延長方向に直線状に形成されている。この凸部19は、シース6を押出成形する際に、所望の成型金型を用いることで形成可能である。一方、図16(A)に示す連結具10Qは、位置決め部18Aとして、把持部11aの内周面に1つの係合凹部20を有している。係合凹部20は、この連結具10Qの長さ方向に直線状に形成されている。
【0087】
図16(B)に示す嵌め込み構造では、係合凹部20に凸部19が係合された状態で、把持部11aにLCX1Aが嵌め込まれる。これにより、把持部11aに対するLCX1Aの位置決めを行うことができる。
【0088】
図17(A)示すLCX1Bは、シース6の外周面に1つの凹部21を有している。凹部21は、このLCX1Bの延長方向に直線状に形成されている。この凹部21は、シース6を押出成形する際に、所望の成型金型を用いることで形成可能である。一方、図17(A)に示す連結具10Rは、位置決め部18Bとして、把持部11aの内周面に1つの係合凸部22を有している。係合凸部22は、この連結具10Rの長さ方向に直線状に形成されている。
【0089】
図17(B)に示す嵌め込み構造では、凹部21に係合凸部22が係合された状態で、把持部11aにLCX1Bが嵌め込まれる。これにより、把持部11aに対するLCX1Bの位置決めを行うことができる。
【0090】
図18(A)示すLCX1Cは、シース6の外周面に複数の凸部19を有している。複数の凸部19は、このLCX1Cの延長方向に直線状に形成されると共に、周方向に等間隔に並んで設けられている。これら複数の凸部19は、シース6を押出成形する際に、所望の成型金型を用いることで形成可能である。一方、図18(A)に示す連結具10Sは、位置決め部18Cとして、把持部11aの内周面に複数の係合凹部20を有している。複数の係合凹部20は、この連結具10Sの長さ方向に直線状に形成されると共に、周方向に等間隔に並んで設けられている。
【0091】
図18(B)に示す嵌め込み構造では、複数の係合凹部20に複数の凸部19が係合された状態で、把持部11aにLCX1Cが嵌め込まれる。これにより、把持部11aに対するLCX1Cの位置決めを行うことができる。また、この嵌め込み構造では、各係合凹部20に対する各凸部19の係合位置を切り換えることができる。これにより、把持部11aに対するLCX1Cの位置を軸回りに段階的に切り換えることが可能である。
【0092】
図19(A)示すLCX1Dは、シース6の外周面に複数の凹部21を有している。複数の凹部21は、このLCX1Dの延長方向に直線状に形成されると共に、周方向に等間隔に並んで設けられている。これら複数の凹部21は、シース6を押出成形する際に、所望の成型金型を用いることで形成可能である。一方、図19(A)に示す連結具10Tは、位置決め部18Dとして、把持部11aの内周面に複数の係合凸部22を有している。複数の係合凸部22は、この連結具10Tの長さ方向に直線状に形成されると共に、周方向に等間隔に並んで設けられている。
【0093】
図19(B)に示す嵌め込み構造では、複数の凹部21に複数の係合凸部22が係合された状態で、把持部11aにLCX1Dが嵌め込まれる。これにより、把持部11aに対するLCX1Dの位置決めを行うことができる。また、この嵌め込み構造では、各凹部21に対する各係合凸部22の係合位置を切り換えることができる。これにより、把持部11aに対するLCX1Dの位置を軸回りに段階的に切り換えることが可能である。
【0094】
なお、本実施形態の位置決め部については、上述した位置決め部18A〜18Dの構成に限らず、LCX1に設けられた目印等により把持部11a,11bに対する位置決めを行ってもよい。
【0095】
[第12の実施形態]
(無線通信装置)
次に、本発明の第12の実施形態として、例えば図20に示す無線通信装置200について説明する。なお、図20は、無線通信装置200の構成を示す平面図である。
【0096】
無線通信装置200は、図20に示すように、ケーブル型アンテナ201と、ケーブル型アンテナ201に接続されるアクセスポイント(以下、APという。)202とを備えている。ケーブル型アンテナ201は、上記図9に示す構成と同様である。AP202は、無線LANの上位回線(図示せず。)と電気的に接続されている。
【0097】
具体的に、各LCX1の一端には、AP202のアンテナ端子に接続するためのコネクタ203が取り付けられている。一方、各LCX1の他端には、終端抵抗204が取り付けられている。
【0098】
以上のような構成を有する無線通信装置200では、ケーブル型アンテナ100Aが異なる信号S1,S2,S3,S4を同時に送受信する4×4MIMO通信用アンテナとして機能する。
【0099】
すなわち、この無線通信装置200では、異なる信号S1〜S4をケーブル型アンテナ201の各LCX1から同時に送信することができる。逆に、異なる信号S1〜S4をケーブル型アンテナ201の各LCX1によって同時に受信することも可能である。
【0100】
以上のように、本実施形態の無線通信装置200では、上記ケーブル型アンテナ100Aを用いた4×4MIMO無線通信装置を構築することが可能である。なお、本実施形態の無線通信装置200では、上記ケーブル型アンテナ100Aの代わりに、上記ケーブル型アンテナ100を用いた場合は、2×2MIMO無線通信装置を構築することが可能である。
【0101】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、本発明を適用したケーブル型アンテナ100,100Aは、上述した無線LANアクセスポイント(AP)用のアンテナに適用した場合に限らず、例えば携帯電話などの基地局側の無線通信用アンテナなどに適用することもが可能である。
【0102】
この場合、本発明を適用したケーブル型アンテナ100,100Aは、上述したAP202の代わりに、基地局側の無線機と接続することで、上述した2×2MIMO又は4×4MIMO無線通信装置を構築することが可能である。
【0103】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態の構成以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その構成を適宜変更して実施することができる。
例えば、本発明を適用した漏洩同軸ケーブル用連結具においては、上述した複数の把持部と連結部とが一体に形成された構成に限らず、複数の把持部と連結部とが別体に形成された構成であってもよい。この構成の場合、少なくとも把持部が誘電体からなる構成であればよく、連結部12については、把持部とは同じ材料を用いる場合に限らず、把持部とは別の材料を用いてもよい。
【0105】
放部の配置や数について、適宜変更して実施することが可能である。
【0106】
また、本発明を適用したケーブル型アンテナにおいては、上述した連結部を設置面にビス等により取り付ける構成に限らず、治具等を用いて設置面に取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0107】
1,1A〜1D…漏洩同軸ケーブル(LCX) 2…中心導体 3…絶縁体 4…スロット 5…外部導体 6…シース 10,10A〜10T…(漏洩同軸ケーブル用)連結具 11a,11b,11c,11d…把持部 12,12A〜12D…連結部 12a…第1の延長部 12b…第2の延長部 13,13A〜13D…開放部 14a,14b…湾曲部 15…切断部 15a…切れ込み 16…取付部 16a…孔部 16b…開口部 18A〜18D…位置決め部 19…凸部 20…係合凹部 21…凹部 22…係合凸部 23…クランプ部 100,100A…ケーブル型アンテナ 200…無線通信装置 201…ケーブル型アンテナ 202…アクセスポイント(AP) 203…コネクタ 204…終端抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図19
図20