【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電線接続構造の実施形態の1つを図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の電線接続構造が適用された電池配線モジュールの一実施形態を示す斜視図である。
図2は、本発明の電線接続構造が適用された電池配線モジュールの一実施形態を示す平面図である。
図3は、
図1及び
図2に示す電池配線モジュールが電池モジュールに組み付けられた電池パックを示す斜視図である。
図4は、
図1及び
図2に示す電池配線モジュールが電池モジュールに組み付けられた電池パックを示す平面図である。
図5A及び
図5Bは、各々本発明の電線接続構造に用いられる接続部材の一形態を説明する斜視図及び側面図である。
図6は、
図2のVI−VI線の断面図である。
図7A及び
図7Bは、各々本発明の電線接続構造に用いられる接続部材の別形態を説明する斜視図及び側面図である。
図8Aから
図8Dは、
図7A及び
図7Bに示す接続部材を形成する過程を説明する図であって、それぞれ一過程における接続部材の平面図である。
【0016】
図1から
図8Dを参照して、本実施形態の電線接続構造について詳細に説明する。本実施形態の電線接続構造は、
図1及び
図2に示す電池配線モジュール10に適用される。その電池配線モジュール10は、12個の電池セル21a、21b、・・・、21lにより構成されている電池モジュール20(
図3及び
図4)に装着される。その電池モジュール20とは、それぞれの電池セル21a、21b、・・・、21lにおける何れか一方の電極端子22a、22b、・・・、22lが一列に並べられ、且つ、他方の電極端子22a、22b、・・・、22lが一列に並べられるように、それぞれの電池セル21a、21b、・・・、21lを同一方向に重ね合わせたものである。例えば、この電池モジュール20としては、それぞれの電極端子22a、22b、・・・、22lの列において、正極端子と負極端子とを交互に配置したものや、同極のものを並べて配置したものなどが知られている。電池パック1においては、その複数の電池セル21a、21b、・・・、21lが直列や並列に接続されるように、所定の複数の電池セル21a、21b、・・・、21lが有する同列の電極端子22a、22b、・・・、22l同士をバスバー12aなどの接続部材(第1接続部材)で接続する。第1接続部材は、同一方向に重ね合わされた複数の電池セル21a、21b、・・・、21lの内の当該同一方向に連なる少なくとも2つの電池セルに設けた電極端子22a、22b、・・・、22lであり、その同一方向に並んでいる電極端子同士を電気的に接続するものである。更に、電池パック1においては、電池モジュール20としての両端に配置される正極端子22aと負極端子22lとに対して、各々バスバー12bなどの接続部材(第2接続部材)が接続されている。この例示の電池配線モジュール10は、隣り合う電池セル21a、21b、・・・、21lにおける正極端子と負極端子とを電気的に接続するバスバー12aを備える。電池配線モジュール10は、電池モジュール20に組み付けることにより、電池セル21a、21b、・・・21lを直列に接続する。電池パック1は、電池配線モジュール10及び電池モジュール20を備える。
【0017】
電池配線モジュール10は、
図1及び
図2に示すように、フラットケーブル11、バスバー12、接続部材13、コネクタ14によって構成される。この電池配線モジュール10は、
図3及び
図4に示すように、電池モジュール20において一方の側に並ぶ電極端子22a、22b、・・・、22l、及び、電池モジュール20において他方の側に並ぶ電極端子22a、22b、・・・、22lに、それぞれ組み付けられる。
【0018】
フラットケーブル11は、帯状のケーブルであり、
図6に示すように、複数の線状導体111と、それぞれが平行に且つ同一平面上に配置された状態の該線状導体111を覆う絶縁体112と、を有する。線状導体111は、導電性の金属材料によって構成される。線状導体111それぞれは、互いに異なるバスバー12に接続され、バスバー12に発生する電圧を検出するための電線(電圧検出線)として機能する。つまり、電池配線モジュール10においては、1つの線状導体111と1つのバスバー12とによる電気的な接続関係を持つ組み合わせが各々設定されている。本明細書では、線状導体111を電圧検出線111と称することがある。
【0019】
また、絶縁体112は、絶縁性の高い各種の絶縁材料によって構成される。絶縁体112は、同一平面上に平行に配置された電圧検出線111を内部に収容するように形成される。これにより、それぞれの電圧検出線111は、互いに絶縁された状態が維持される。絶縁体112のうち、電圧検出線111を内部に収容する部材のことを連結部112aと称する。この連結部112aには、
図1及び
図6に示すように、複数のバスバー12の一端が埋没している。これにより、複数のバスバー12は、連結部112aに保持されることになる。他方、絶縁体112においては、バスバー12を挟んで連結部112aの向かい側に、複数のバスバー12の他端が埋没した固定部112bが形成される。複数のバスバー12は、固定部112bにも保持されることになる。複数のバスバー12それぞれは、連結部112a及び固定部112bによって一端及び他端が保持されることにより、絶縁体112からの脱落が抑制される。
【0020】
バスバー12は、平板状の部材である。バスバー12は、導電性の金属材料によって構成される。バスバー12は、全体として矩形状であって、その板厚方向に貫通孔121が形成される。バスバー12には、形状の異なる2種類のバスバー12a、12bがある。
【0021】
そのうちの一つのバスバー12aは、2つの貫通孔121が、矩形状のバスバー12aの長手方向に沿って並設されたものである。この2つの貫通孔121には、隣り合う電池セル21a、21b、・・・、21lにおける電極端子22a、22b、・・・、22lの内の正極端子及び負極端子が1つずつ挿通される。例えば、或るバスバー12aにおいては、電池セル21bにおける負極端子22bが一方の貫通孔121に挿通され、電池セル21cにおける正極端子22cが他方の貫通孔121に挿通される(
図4)。
【0022】
もう一つのバスバー12bは、1つの貫通孔121が、矩形状のバスバー12bの中央付近に設けられたものである。このバスバー12bについては、
図3及び
図4に示すように、電池モジュール20の一方の最外側に位置する電池セル21aの正極端子22aを貫通孔121に挿通させるものと、電池モジュール20の他方の最外側に位置する電池セル21lの負極端子22lを貫通孔121に挿通させるものと、が用意されている。
【0023】
電池配線モジュール10としては、
図3及び
図4に示すように、6個のバスバー12aが、貫通孔121が一列に並ぶように配置されたもの(
図4の図中下側に位置する電池配線モジュール10)と、5個のバスバー12a及び2個のバスバー12bが、貫通孔121が一列に、且つ5個のバスバー12aの両側に2個のバスバー12bが位置するように配置されたもの(
図4の図中上側に位置する電池配線モジュール10)と、が用意される。この2つの電池配線モジュール10は、電池モジュール20に組み付けられた状態において、
図3及び
図4に示すように、バスバー12aが互い違いに配置される。こうして、この電池パック1においては、隣り合う電池セル21a、21b、・・・、21lにおける電極端子22a、22b、・・・、22lの内の隣り合う正極端子及び負極端子が電気的に接続されるので、電池セル21a、21b、・・・、21lを直列接続する構成が実現される。
【0024】
バスバー12a及びバスバー12bそれぞれは、
図1から
図4に示すように、一端が絶縁体112の連結部112aに埋没して連結部112aに保持され、他端が絶縁体112の固定部112bに埋没して固定部112bに保持される。このとき、隣り合う2つのバスバー12a間及び隣り合うバスバー12aとバスバー12bとの間には、矩形の貫通孔122が形成されている。このため、その間は、隣り合う2つのバスバー12a間及び隣り合うバスバー12aとバスバー12bとの間は、離間している。このように絶縁体112に保持されるバスバー12a及びバスバー12bは、フラットケーブル11と一体に扱われる。この結果、この電池配線モジュール10は、バスバー12a及びバスバー12bを個々に電極端子22a、22b、・・・、22lに取り付ける必要が無くなるため、電池モジュール20に組み付ける作業の効率が向上する。
【0025】
また、バスバー12a及びバスバー12bは、
図6に示すように、電圧検出線111が配置された平面と同一の平面上に配置される。このため、フラットケーブル11、バスバー12a及びバスバー12bは、全体として帯状に形成される。
【0026】
接続部材13は、1本の電圧検出線111と、1つのバスバー12aと、を電気的に接続するための部材である。つまり、接続部材13は、線状導体111とバスバー12aの組み合わせ毎に設ける。接続部材13は、導電性の金属材料によって構成され、
図5及び
図6に示すように、接続部材本体131と、接続部材本体131に連結された圧接刃部132と、を有している。
【0027】
接続部材本体131は、例えば各電圧検出線111の並列方向に延在させた棒形状のものであり、その各電圧検出線111の内の少なくとも1本に対向させている。この接続部材本体131の一端は、所定の電圧検出線111に対向させて配置されており、この電圧検出線111に向けて延在させた圧接刃部132に連結されている。接続部材本体131の他端は、所定のバスバー12a側に配置されており、このバスバー12aに向けて屈曲させている。以下、接続部材本体131の他端を溶接部133と称する。接続部材本体131の長手方向の長さは、接続部材13が接続すべき電圧検出線111とバスバー12aの間隔におうじて適宜設計される。
【0028】
圧接刃部132には、フラットケーブル11の連結部112aに食い込むことによって、該連結部112aを切り裂く圧接刃132aが形成されている。圧接刃132aは、U字状に形成され、そのU字に沿って刃が形成されている。圧接刃部132には、圧接刃132aにおける互いに向かい合う刃の間に圧接溝132bが形成されている。接続部材13においては、
図6に示すように、フラットケーブル11の電圧検出線111が圧接溝132bに進入するように圧接刃部132を連結部112aに圧入することによって、電圧検出線111を囲む連結部112aを切り裂き、電圧検出線111を露出させる。圧接刃部132の連結部112aへの圧入は、
図6に示すように、電圧検出線111が圧接溝132bの最深部に到達したときに、それ以上の圧入が規制される。連結部112aから露出した電圧検出線111は、圧接溝132bを形成する圧接刃132a(特に、圧接溝132bの最深部)に接触する。このようにして、連結部112aに圧入された圧接刃部132は、電圧検出線111との導通が図られる。
【0029】
コネクタ14は、フラットケーブル11の長手方向の一端側に設けられる。コネクタ14は、内部に複数の端子を保持しており、各端子がフラットケーブル11の電圧検出線111のいずれか1本に接続されている。このコネクタ14は、電池パック1に備わる電圧監視ユニット(図示せず。)に接続される。これにより、電圧監視ユニットは、各電圧検出線111を介して入力される電池セル21a、21b、・・・、21l間の電圧値に基づき、電池モジュール20の異常の有無を判別することができる。
【0030】
上述した電池配線モジュール10を電池モジュール20に装着するにあたっては、電池セル21a、21b、・・・、21lの間から上方に延びる仕切り部23に矩形の貫通孔122が差し込まれるように位置合わせしながら電池配線モジュール10を電池モジュール20に対して近づける。そして、この組み付けに際しては、各バスバー12の貫通孔121に電極端子22a、22b、・・・、22lを挿通し、ナットで電極端子22a、22b、・・・、22lをネジ止めする。こうして、電池配線モジュール10は、電池モジュール20に装着される。
【0031】
接続部材本体131の説明に戻る。接続部材本体131の他端に位置する溶接部133は、バスバー12aに向けて屈曲させている。言い換えれば、溶接部133は、
図5A及び
図5Bに示すように、接続部材本体131から圧接刃部132が延在する方向と同じ又はそれに相当する向きに屈曲している。このように屈曲した溶接部133は、圧接刃部132を連結部112aに圧入したとき、
図1から
図4に示すように、バスバー12aの2つの貫通孔121の間等でバスバー12aに当接する。この位置において、溶接部133は、バスバー12aに溶接される。このように接続部材本体131の一部である溶接部133が溶接されることにより、接続部材本体131は、バスバー12aに電気的に接続される。
【0032】
ここで、接続部材本体131の他端を屈曲した理由について説明する。接続部材本体131の他端を屈曲したのは、
図6に示すように、電圧検出線111及びバスバー12aよりも厚みのある連結部112aに接続部材本体131が接触しないように、連結部112aを迂回するためである。仮に、接続部材本体131が連結部112aに接触するように接続部材13が連結部112aに取り付けられたとする。この場合には、連結部112aが接続部材本体131を押し返すことにより、圧接刃部132を連結部112aへ圧入する方向とは反対の向きの外力が接続部材本体131に作用する。このため、接続部材13は、連結部112aから外れてしまう虞がある。他方、本実施形態の接続部材本体131のように他端が屈曲していれば、接続部材本体131は、連結部112aに接触しない。このため、本実施形態では、接続部材13が連結部112aから外れてしまう事態を抑制できる。
【0033】
ここまでは、別体として設けた接続部材13によって、1本の電圧検出線111と、1つのバスバー12aと、を電気的に接続する構造について説明した。この構造は、接続部材13を配置することができる、または溶接部133を溶接することができる程度の大きさが確保されたバスバー12aに対しては有用である。他方、例えばバスバー12bのように比較的小さいものに関しては、接続部材13をバスバー12bに取り付けることが困難なことが起こり得る。そこで、以降では、接続部材13Bをバスバー12bに一体化した構造について説明する。
【0034】
図7A及び
図7Bに示すように、接続部材13Bは、バスバー12bから延設されている。この接続部材13Bは、圧接刃部132を圧入する方向D(
図8B〜
図8D)が平板状のバスバー12bに対して垂直となるよう、接続部材本体131の所定の部位を折り曲げることによって形成される。接続部材13Bを含むバスバー12bを製造する製造方法について、以下説明する。
【0035】
まず、
図8Aに示すように、平板状の金属平板50を用意する。
【0036】
続いて、
図8Bに示すように、金属平板50を打ち抜く。打ち抜かれた金属平板50には、貫通孔121が形成されたバスバー本体部51、後の接続部材本体131となる棒状部52、後の圧接刃部132となる刃体部53、及び、バスバー本体部51と棒状部52とを連結する延伸部54が形成される。バスバー本体部51、棒状部52、刃体部53、及び延伸部54は、同一平面上に形成されている。
【0037】
続いて、
図8Cに示すように、棒状部52を捻じるようにして、棒状部52の長手方向を軸にして刃体部53を90度回転する。このように回転すると、刃体部53がバスバー本体部51に対して起立することになる。このとき圧接刃部132を圧入する方向Dは、平板状のバスバー12b(バスバー本体部51)に対して垂直であって、バスバー12b(バスバー本体部51)の上方(
図8C中の手前向き)になる。
【0038】
続いて、
図8Dに示すように、延伸部54を支点として、刃体部53がバスバー本体部51から延在する方向(バスバー本体部51の平面と平行な仮想平面に沿う方向)に向かって棒状部52を折り曲げる。このように折り曲げると、圧接刃部132を圧入する方向Dは、
図8Cのときとは反転し、平板状のバスバー12bに対して垂直であって、バスバー12bの下方(
図8D中の奥向き)になる。
【0039】
このようにして、棒状部52及び刃体部53により形成された接続部材13Bを有するバスバー12bが製造される。接続部材13Bを有するバスバー12bによれば、接続部材13Bとバスバー12bとを溶接する必要がなくなる。このようなバスバー12bは、上述したバスバー12aのように別体の接続部材13を取り付けることが困難な状況において特に有用である。
【0040】
尚、平板状の金属平板50からバスバー12bを形成するにあたって、棒状部52を捻じり且つ折り曲げる手法は、
図8Aから
図8Dを参照して説明した手法に限られない。このバスバー12bにおいては、圧接刃部132を圧入する方向Dが平板状のバスバー本体部51に対して垂直となるよう、棒状部52が折り曲げられればよい。
【0041】
以上、本実施形態の電線接続構造は、フラットケーブル11の電圧検出線111とバスバー12とを接続するにあたって、接続部材13、13Bに備わる圧接刃部132を連結部112aに圧入する構成である。このため、従来のように、フラットケーブルに事前の加工を施す必要が無くなる。よって、この電線接続構造は、電池配線モジュールを製造するための工程を減らすことができる。
【0042】
また、本実施形態の電線接続構造は、接続部材本体131の一部(特に溶接部133)がバスバー12に溶接される構造である。これにより、この電線接続構造は、接続部材本体131をバスバー12に対して強固に且つ簡易に固定することができる。
【0043】
また、本実施形態の電線接続構造は、接続部材13Bがバスバー12bから延設された構成である。特に、バスバー12b及び接続部材13Bは、金属平板50を打ち抜いて形成される。この構成であれば、比較的簡易な手法であるプレス成形によって接続部材付きのバスバーを製造することができる。また、この構成であれば、接続部材13Bとバスバー12bとを溶接する必要が無くなる。このようなバスバー12bは、バスバー12に対して別体の接続部材13を取り付けることが困難な状況において特に有用である。
【0044】
尚、本実施形態の電線接続構造を説明するにあたっては、フラットケーブル11の絶縁体112にバスバー12が保持される構造を一形態として挙げた。本実施形態の電線接続構造は、この保持構造への適用のみに限られるものではない。この電線接続構造は、フラットケーブルにバスバーが保持されていない、言い換えればフラットケーブルとバスバーが離間した構造の電池配線モジュールに対しても適用することができる。
【0045】
また、本実施形態の電線接続構造を説明するにあたっては、各バスバー12の貫通孔121に電極端子22a、22b、・・・、22lを挿通し、ナットで電極端子22a、22b、・・・、22lをネジ止めする構造を一形態として挙げた。本実施形態の電線接続構造は、貫通孔121に電極端子22a、22b、・・・、22lを挿入する構造への適用のみに限られるものではない。各バスバー12と電極端子22a、22b、・・・、22lとを電気的に接続するにあたっては、各バスバー12と電極端子22a、22b、・・・、22lを溶接することにより、各バスバー12と電極端子22a、22b、・・・、22lとを電気的に接続してもよい。