(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ニトロ化合物は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)及び4,6−ジニトロ−オルトクレゾールもしくは4,6−ジニトロ−2−ヒドロキシトルエン(DNOC)、及びこれらの混合物を有するグループから選択される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
前記組成物は、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールもしくは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(又は4−ヒドロキシTempoもしくは4−HT)を包含するニトロオキシド(即ちニトロキシル)化合物を有しない、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の添加剤組成物をモノマー流に添加するステップにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法。
前記1個以上の芳香族ニトロ化合物及び前記1個以上の脂肪族第3アミン化合物は、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される、請求項6又は7に記載の方法。
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の添加剤組成物を製造する方法であって、当該方法は:
前記1個以上の芳香族ニトロ化合物(A)を混合するステップ、
を含み、
前記芳香族ニトロ化合物もしくはその混合物を、前記1個以上の脂肪族第3アミンとさらに混合することを特徴し、
前記脂肪族第3アミンは、第3アミンのアルキル鎖内に1個以上のヒドロキシル基を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の説明及び好ましい実施形態:
先行技術の上記の問題を克服すること、及び本発明の上記の課題を達成することを目指して、本発明者は、1個以上の第3アミンを芳香族ニトロ化合物からなる組成物に添加すると、芳香族ニトロ化合物の重合制御及び阻害効率が実質的に向上するだけでなく、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合が、驚くべき且つ意外にも、1個以上の第3アミン及び1個以上の芳香族ニトロ化合物を有する組成物中の芳香族ニトロ化合物の実質的に低下した及び最小化した添加量により、許容可能なレベルまで制御及び阻害されることを見出した。このことは本発明組成物を経済的なものにするとともに環境に優しいものにする。
【0024】
先行技術の上記の問題を克服すること、及び本発明の上記の課題を達成することを目指して、本発明者は、1個以上の脂肪族第3アミン、もしくは1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンを芳香族ニトロ化合物からなる組成物に添加すると、芳香族ニトロ化合物の重合制御及び阻害効率が実質的に向上するだけでなく、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合が、驚くべき且つ意外にも、1個以上の脂肪族第3アミン、もしくは1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミン及び1個以上の芳香族ニトロ化合物を有する組成物中の芳香族ニトロ化合物の実質的に低下した及び最小化した添加量により、許容可能なレベルまで制御及び阻害されることを見出した。このことは本発明組成物を経済的なものにするとともに環境に優しいものにする。
【0025】
従って、本発明は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する添加剤組成物に係り;及び
前記組成物は:
(B)1個以上の脂肪族第3アミン、もしくはその混合物
をさらに有することを特徴とする。
【0026】
本発明によると、脂肪族アミンは、1個以上のヒドロキシル基を含む、好ましくは第3アミンのアルキル鎖内に1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンであり、より好ましくは、前記芳香族第3アミンは、第3アミンのアルキル鎖内に3乃至4個のヒドロキシル基を含む。
【0027】
本発明によると、1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンにおいて、ヒドロキシル基はヒドロキシアルキル基である。
【0028】
本発明によると、脂肪族第3アミン内の炭化水素は、直鎖でも分岐でも環状でもよい。
【0029】
本発明の最も好ましい実施形態によると、3個のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンは、トリイソプロパノールアミンもしくはトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、ヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(THEED)である。
【0031】
本発明のもう一つの好ましい実施形態によると、ヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Quadrol(登録商標))である。
【0032】
本発明のもう一つの好ましい実施形態によると、本発明の組成物は、ヒドロキシル基を含む上記脂肪族第3アミンもしくはその混合物を有し得る。
【0033】
従って、一実施形態において、本発明は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する添加剤組成物であって、
前記組成物は:
(B)1個以上の第3アミン
をさらに有し、前記第3アミンは:
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択されることを特徴とする、添加剤組成物に関わる。
【0034】
本発明の組成物が、1個以上の前記脂肪族第3アミンを有する場合、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する芳香族ニトロ化合物の効率が、驚くべき且つ意外にも、芳香族ニトロ化合物の実質的に低下した及び最小化した添加量においても、許容可能なレベルまで実質的に改善されること、それにより本発明の組成物を比較的より経済的なものにするとともに環境に優しいものにすることが見出された。
【0035】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の組成物は:
a)前記1個以上の芳香族ニトロ化合物I) 約40乃至約99.75重量%;及び
b)前記アミンもしくはその混合物II) 約0.25乃至約60重量%
を有する
【0036】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、本発明の組成物は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを含む流れに、前記スチレンをはじめとするモノマーの流れの重量に基づき約0.01乃至約2000ppm、好ましくは約1ppm乃至約2000ppmの量で添加される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、芳香族ニトロ化合物は、そのニトロ基だけでなくフェノール基もしくはその誘導体を含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、芳香族ニトロ化合物は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)及び4,6−ジニトロ−オルトクレゾールもしくは4,6−ジニトロ−2−ヒドロキシトルエン(DNOC)、及びこれらの混合物を有するグループから選択される。
【0039】
本発明の最も好ましい実施形態によると、芳香族ニトロ化合物は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、本発明組成物は、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールもしくは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(即ち4−ヒドロキシTempoもしくは4−HT)を包含するニトロオキシド(即ちニトロキシル)化合物を有しない。
【0041】
本発明のもう一つの好ましい実施形態によると、本発明組成物は:
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA)
を有しない。
【0042】
従って、もう一つの実施形態において、本発明はまた、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するため、本書に記載の本発明の(本発明への言及は全体として描かれる)、脂肪族第3アミン及び芳香族ニトロ化合物系添加剤組成物を使用する方法に関わる。ここで、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、1個以上の芳香族ニトロ化合物と1個以上の前記脂肪族第3アミンとを有する添加剤組成物で処理される。
【0043】
特に第2の実施形態において本発明は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するため、本書に記載の本発明の(本発明への言及は全体として描かれる)添加剤組成物を使用する方法に関わる。ここで、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する添加剤組成物で処理され、前記組成物は:
(B)1個以上の第3アミン
をさらに有し、前記第3アミンは:
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択されることを特徴とする。
【0044】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを含む流れは、モノマー流とも芳香族ビニルモノマー流とも呼ばれることに注意する。
【0045】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の前記添加剤組成物を使用する方法は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマー流に対して、モノマーの重量に基づき約0.01ppm乃至約2000ppm、好ましくは約1ppm乃至約2000ppmの前記組成物を添加するステップを有する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、1個以上の芳香族ニトロ化合物と1個以上の脂肪族第3アミン化合物とが、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される。
【0047】
本書に記載された本発明の組成物(本発明への言及は全体として描かれる)の全ての特徴は、発明の前記添加剤組成物を使用する本方法に包含されたと思われることに留意する。
【0048】
従って第3の実施形態において、本発明はまた、本書に記載された本発明の脂肪族第3アミン及び芳香族ニトロ化合物系添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)を使用することにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法に関わる。当該方法においてスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、1個以上の芳香族ニトロ化合物と1個以上の前記脂肪族第3アミンとを有する添加剤組成物で処理される。
【0049】
特に第3の実施形態において、本発明は、本書に記載された本発明の添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)をモノマー流に添加することにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法に関わる。当該方法において前記組成物は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法であって、前記組成物は:
(B)1個以上の第3アミン
をさらに有し、前記第3アミンは:
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択されること、及び
前記組成物は前記モノマー流に添加されることを特徴とする。
【0050】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、モノマー流もしくは芳香族ビニルモノマー流とも称することに留意する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、本発明の前記添加剤組成物を使用することによる、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマー流に対して、モノマーの重量に基づき前記組成物約0.01乃至約2000ppmを、好ましくは約1ppm乃至約2000ppmを添加するステップを有する。
本発明の好ましい実施形態の一つによると、1個以上の芳香族ニトロ化合物及び1個以上の脂肪族第3アミン化合物は、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される。
【0052】
本書に記載された本発明の組成物(本発明への言及は全体として描かれる)の全ての特徴は、発明の前記添加剤組成物を使用することによるスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する本方法に包含されたと思われることに留意する。
【0053】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の組成物を芳香族ビニルモノマーを含有する流れに、前記流れが処理システム中に入る前、もしくは前記流れが処理システム中に入った後のいずれか混合してよい。但し好ましくは、組成物は芳香族ビニルモノマーを含有する流れに、その処理が開始する前に添加するが、それにより芳香族ビニルモノマーの重合は避けられるか、最小化される。
【0054】
本発明の実施形態の一つによると、本組成物を、約50℃乃至約180℃、好ましくは約60℃乃至約180℃の温度の広範囲で使用してよい。
【0055】
本発明の組成物は、組成物を調製するいずれの公知の方法で調製されてよい。
【0056】
従って第4の実施形態において、本発明はまた、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、本書に記載の本発明の脂肪族第3アミン及び芳香族ニトロ化合物系添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)を製造する方法に関わる。当該方法において1個以上の芳香族ニトロ化合物は、1個以上の脂肪族第3アミン化合物と、個別にもしくは混合後のいずれかで混合される。
【0057】
特に第4の実施形態において、本発明は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物を混合するステップ
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、本書に記載の本発明の添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)を製造する方法であって、前記芳香族ニトロ化合物もしくはその混合物を、
(B)
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択される前記アミン1個以上とさらに混合することを特徴とする。
【0058】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の添加剤組成物の製造方法は、1個以上の第3アミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物を個別にもしくは混合後のいずれかで混合するステップを有する。
【0059】
本発明の実施形態の一つによると、製造された組成物を、約50℃乃至約180℃、好ましくは約60℃乃至約180℃の温度範囲で使用する。
【0060】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、モノマー流もしくは芳香族ビニルモノマー流とも称することに留意する。
【0061】
本書に記載された本発明の組成物(本発明への言及は全体として描かれる)の全ての特徴は、本発明の添加剤組成物の本製造方法に包含されたと思われることに留意する。
【0062】
実施形態の一つにおいて、本発明者は、本組成物が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))からなるグループから選択されるアミン類のいずれか一つを有する場合、芳香族ニトロ化合物のスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は、実質的に改善されるが、その改善は、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)を有する組成物に対するほど有意ではないということを見出した。従って、本発明の最も好ましい実施形態によると、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)は最も好ましいアミンであり、本発明のより好ましい実施形態によると、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))は本発明のより好ましいアミン類である。
【0063】
驚くべきこと且つ意外にも、TIPAもしくはQuadrol(登録商標)もしくはTHEEDの濃度の増加により、即ち組成物がTIPAもしくはQuadrol(登録商標)もしくはTHEED約50重量%を有する場合、本発明添加剤組成物の重合阻害効率は低下すること(現在のところその理由は不明である)、但し先行技術添加剤組成物と比較してそれよりも改善を示すことに留意する。
【0064】
別の実施形態において本発明者は、本組成物が
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA)
からなるグループから選択されるアミンのいずれか一つを有する場合、芳香族ニトロ化合物のスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は、驚くべきこと且つ意外にも実質的に低減するということを見出した。従って一実施形態において、本組成物は、
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA)
からなるグループから選択されるアミンのいずれか一つを有しない。これらアミン類のいくつかは、低量における芳香族ニトロ化合物の効率の非常に不十分な改善をもたらすが、但し前述のものは商業的に実現可能ではないということに留意する。
【0065】
本発明のさらなる利点及び実施形態は以下の実施例から明らかにされる。
【0066】
ここから本発明は、以下の実施例の助けを借りて記載される。実施例は本発明の範囲を制限することを意図しているのではなく、本発明を実施するモード及び最良のモードを説明するために含まれた。
【実施例】
【0067】
実験:
主実験:
以下の実験において、蒸留したスチレンの測定量(もしくはgmsにおける炭化水素流)及び添加剤の測定量(スチレンもしくは炭化水素流の重量ppmで)を、温度計及び窒素入口及び出口を備えた管式反応装置に取り込んだ。これらの実刑において、いずれの機械的スターラーなしに管式反応装置を使用し、適当な撹拌を確実にするため十分なN
2フローを維持した。反応を120℃(表−I,表III,表IV,表V及び表VI)もしくは135℃(表−II)のいずれかで2時間実施した。その選択された持続時間後、反応装置を砕いた氷に浸漬することにより10℃未満に冷却した。次いで反応装置の内容物を、ビーカー内に注いだ。この同じビーカーに、約1.5乃至2gの冷却した重合混合物に対し、スチレン溶液内に形成したポリマーを沈殿させるため、約80gのメタノールを使用した。得られた沈殿物を濾過し、メタノールを除去するため乾燥し、秤量した。沈殿物の重さは%形成ポリマーとして報告された。
【0068】
安定剤を除去するため使用前にスチレンは精製されたことに留意する。
【0069】
以下の実施例において、先行技術添加剤は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)である芳香族ニトロ化合物である。該DNBPはスチレン(もしくは炭化水素流)の約100,200,300,400,500,600もしくは1000重量ppmの量で使用された。
【0070】
以下の実施例において、本発明添加剤は4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)である芳香族ニトロ化合物の約100,200,300,400,500もしくは1000ppm、及び3個のヒドロキシル基を含有するトリ−イソプロパノールアミン(TIPA)である脂肪族第3アミンの約1乃至20ppmを有する組成物である。組成物中、TIPA約1乃至約20ppmを芳香族ニトロ化合物の秤量した量に添加する。
【0071】
実験1:
120℃に2時間加熱することにより10g蒸留スチレンによる上記主実験を行った場合の結果を表Iに示す。
【表1】
【0072】
上記表Iから、1ppm,2ppm,3ppmもしくは4ppmのTIPAを、DNBP(先行技術添加剤)100ppmに添加する場合、スチレンの重合を制御及び阻害するDNPの効率は、驚くべきこと且つ意外にも有意に改善されることが分かる。
【0073】
さらに表Iから、スチレンの重合は驚くべきこと且つ意外にも、DNBP(先行技術添加剤)500ppm中、TIPA 5乃至20ppmの添加において有意に低減されることが見て取れる。
【0074】
%形成ポリマーは、驚くべきこと且つ意外にも、100ppm DNBPによる4.8%から、もしくは200ppm DNBPによる3.18%から、もしくは300ppm DNBPによる2.03%から、
本組成物が100ppm DNBPと1ppm TIPAとを有する場合1.82%に、
本組成物が100ppm DNBPと2ppm TIPAとを有する場合1.45%に、
本組成物が100ppm DNBPと3ppm TIPAとを有する場合1.22%に、
本組成物が100ppm DNBPと4ppm TIPAとを有する場合1.08%に低減され、それにより、本組成物はDNBP(芳香族ニトロ化合物)の添加量の実質的な節約をもたらし、よって芳香族ニトロ化合物からなる組成物よりもより経済的且つ環境に優しいものであることを意味することに留意する。
【0075】
実験2:
135℃、2時間加熱することにより蒸留スチレン10gで実施した場合、上記主実験の結果を表IIに示す。
【表2】
【0076】
上記表IIから、5乃至20ppm TIPAを500ppm DNBP(先行技術添加剤)というより高い添加量に添加し、添加剤入りスチレン流を135℃というより高温で処理する場合、スチレンの重合を制御及び阻害するDNBPの効率は、驚くべきこと且つ意外にも有意に改善されるということが分かる。
【0077】
表IIから、500ppm DNBP(先行技術添加剤)内に5乃至20ppm TIPAを添加する場合、スチレンの重合は、驚くべきこと且つ意外にも有意に低減することが見て取れる。
【0078】
%形成ポリマーは、驚くべきこと且つ意外にも有意にも500ppm DNBPによる4.13%から、
本組成物が500ppm DNBPと5ppm TIPAとを有する場合2.24%に、
本組成物が500ppm DNBPと10ppm TIPAとを有する場合2.03%に、
本組成物が500ppm DNBPと15ppm TIPAとを有する場合1.88%に、
本組成物が500ppm DNBPと20ppm TIPAとを有する場合1.79%に低減すること、及びその反対に、1000ppm DNBP(芳香族ニトロ化合物、先行技術)を使用する場合のみ、1.79%形成ポリマーの効率が達成可能であったこと、それにより本組成物は、DNBP(芳香族ニトロ化合物、先行技術)の添加量の約半分までの有意な節約をもたらし、芳香族ニトロ化合物からなる組成物よりも経済的且つ環境に優しいものであることを意味することに留意する。
【0079】
実験3乃至5:
上記主実験に関する以下の実施例において、先行技術添加剤組成物はDNBP(100,200,300,400,500及び600ppmの量で使用される芳香族ニトロ化合物である)であり、本添加剤組成物は、芳香族ニトロ化合物であるDNBPと、さらに本発明のアミン類であるTIPA、THEEDもしくはQuadrol(登録商標)とを有し、DNBP:アミン比 99:1,95:5,90:10,85:15,及び50:50の重量比で使用される組成物である。発明者はさらに、本組成物の結果を、比較目的でDNBPとTEA,TBA,MEA,OA,DBA,DEA,DPA及びEDAからなるグループから選択されるアミンとを有する添加剤組成物と比較した。その結果は表III、IV、V及びVIにある。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0080】
表IV,V及びVI中のデータから見て取れるように、重量比99:1,95:5,90:10,85:15,及び50:50のDNBP:アミンを有するように、約1乃至約150ppm TIPA、THEEDもしくはQuadrol(登録商標)を、組成物の100、200及び300ppmという合計にするDNBPに添加することにより、スチレンの重合を制御及び阻害するDNBPからなる先行技術添加剤組成物の効率は、驚くべきこと且つ意外にも有意に改善される。
【0081】
見て取れるように、本組成物がN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))からなるグループから選択されるアミン類のいずれか1つを有する場合、芳香族ニトロ化合物の、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は有意に改善されるが、その改善はトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)を有する組成物に関するものほど有意ではない。従って、本発明の最も好ましい実施形態によると、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)は最も好ましいアミンであり、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))は本発明のより好ましいアミンである。
【0082】
さらに見て取れるように、組成物がTEA,TBA,MEA,OA,DBA,DEA,DPA及びEDAからなるグループから選択される比較アミン類のいずれか1つを有する場合、芳香族ニトロ化合物の、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は、改善されない。従って、実施形態の一つにおいて、本組成物は、TEA,TBA,MEA,OA,DBA,DEA,DPA及びEDAからなるグループから選択されるアミン類のいずれか1つを有しない。これらアミン類は、芳香族ニトロ化合物の効率の非常に不十分な改善をもたらすが、但し前述のものは商業的に実現可能ではないということに留意する。
【0083】
驚くべきこと且つ意外にも、アミンの濃度の増加により、即ちアミンの約50%をDNBPに添加する場足、本添加剤組成物の重合阻害効率はわずかに低減する(現在のところその理由は不明である)。
【0084】
従って、上の実験データ及びそれらの分析に鑑み、芳香族ニトロ化合物とTIPA、THEED及びQuadrol(登録商標)からなるグループから選択されるアミンとを有する本発明の添加剤組成物のみが、驚くべきこと且つ意外にも、芳香族ニトロ化合物からなる先行技術添加剤組成物の制御及び重合阻害効率の改善をもたらすと結論でき、及びこれらの知見は本組成物の相乗効果を立証する。
【0085】
上の知見の全ては、低温並びに高温における本組成物の驚くべき且つ意外な相乗的効果を立証する。
【0086】
上の知見の全てはまた、芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレンの重合を制御及び阻害する先行技術添加剤の効率の連続的な増加があることを立証する。
【0087】
上の知見の全てはまた、本組成物は、先行技術添加剤の同じ添加量と比べて、芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレンの重合を制御及び阻害するはるかに優れた効率を達成可能であることを立証する。それは、本発明は経済的及び環境的な利益をもたらすことを意味する。
【0088】
上の知見の全てはまた、現在提供される組成物は先行技術添加剤よりもはるかに優れていること、従って先行技術添加剤を超える技術的利点及び驚くべき効果を有することを立証する。
【0089】
本書で使用される用語「約」は、特許請求した発明の範囲を拡大することを意図していないが、当該技術分野で許容される実験誤差を包含するためにのみ含まれた。