特許第6190930号(P6190930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190930芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する改善された添加剤組成物、及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190930
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する改善された添加剤組成物、及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/40 20060101AFI20170821BHJP
   C07C 7/20 20060101ALI20170821BHJP
   C07C 15/46 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C08F2/40
   C07C7/20
   C07C15/46
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-164537(P2016-164537)
(22)【出願日】2016年8月25日
(62)【分割の表示】特願2014-545452(P2014-545452)の分割
【原出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-36284(P2017-36284A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】3461/MUM/2011
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】512169534
【氏名又は名称】ドルフ ケタール ケミカルズ(インド)プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DORF KETAL CHEMICALS (INDIA) PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニヤム,マヘッシ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182718(JP,A)
【文献】 特表2012−516933(JP,A)
【文献】 特開昭62−280285(JP,A)
【文献】 特開2012−062251(JP,A)
【文献】 特表2004−511569(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0034247(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/091040(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/033025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08C
C07B
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物と、
(B)1個以上の脂肪族第3アミンと、
からなる、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する添加剤組成物であって、
前記1個以上の脂肪族第3アミンが、
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミンである酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)化合物である酸化エチレン処理アミン;もしくは
iv)これらの混合物;
を含み、
前記脂肪族第3アミンは、第3アミンのアルキル鎖内に1個以上のヒドロキシル基を含み、且つ、
前記組成物は:
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA);
を有しない、添加剤組成物。
【請求項2】
前記組成物が:
a)前記芳香族ニトロ化合物1個以上I) 40乃至99.75重量%と;
b)前記1個以上の脂肪族アミンII) 0.25乃至60重量%と;
からなる、請求項1に記載の添加剤組成物。
【請求項3】
前記芳香族ニトロ化合物が、そのニトロ基だけでなくフェノール基もしくはその誘導体を含む、請求項1又は2に記載の添加剤組成物。
【請求項4】
前記芳香族ニトロ化合物は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)及び4,6−ジニトロ−オルトクレゾールもしくは4,6−ジニトロ−2−ヒドロキシトルエン(DNOC)、及びこれらの混合物を有するグループから選択される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
前記組成物は、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールもしくは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(又は4−ヒドロキシTempoもしくは4−HT)を包含するニトロオキシド(即ちニトロキシル)化合物を有しない、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の添加剤組成物をモノマー流に添加するステップにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法。
【請求項7】
モノマーの重量に基づき前記化合物0.01乃至2000ppmを、芳香族ビニルモノマー流に添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1個以上の芳香族ニトロ化合物及び前記1個以上の脂肪族第3アミン化合物は、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は、50℃乃至180℃の温度範囲で使用される、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の添加剤組成物を使用する方法。
【請求項11】
前記芳香族ビニルモノマー流を、モノマーの重量に基づき前記組成物0.01乃至2000ppmで処理する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1個以上の芳香族ニトロ化合物及び前記1個以上の脂肪族第3アミン化合物は、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物は、50℃乃至180℃の温度範囲で使用される、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の添加剤組成物を製造する方法であって、当該方法は:
前記1個以上の芳香族ニトロ化合物(A)を混合するステップ、
を含み、
前記芳香族ニトロ化合物もしくはその混合物を、前記1個以上の脂肪族第3アミンとさらに混合することを特徴し、
前記脂肪族第3アミンは、第3アミンのアルキル鎖内に1個以上のヒドロキシル基を含む、方法。
【請求項15】
前記1個以上の脂肪族第3アミンは、前記1個以上の芳香族ニトロ化合物と個別にもしくは混合後のいずれかで、混合される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野:
本発明は、芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する改善された添加剤組成物に関する。当該組成物において、芳香族ビニルモノマーはスチレンを包含し、その改善は1個以上の第3アミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物との組成物を含む。
【0002】
一実施形態において、本発明は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する改善された添加剤組成物の使用に関する。その改善は、1個以上の第3アミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物とを有する組成物の使用を含む。
【0003】
別の実施形態において、本発明はスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する本発明の改善された添加剤組成物を製造する方法に関する。その改善は、1個以上の第3アミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物とを有する組成物の製造を含む。
【0004】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の改善された添加剤組成物を利用することにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法に関する。その改善は、芳香族ビニルモノマーを含有する流れを、1個以上の第3アミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物とを有する組成物で処理することを含む。
【背景技術】
【0005】
処理中のスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合は、関心事項である。なぜならば芳香族ビニルモノマーの重合は望まないポリマーの形成を引き起こし、最終生成物の歩留まりの損失をもたらし、プロセスを非効率にするからである。
【0006】
当該技術において、スチレンの重合の問題を克服するため、阻害剤及び遅延剤の使用、並びにそれらの組み合わせの使用が報告されている。
【0007】
阻害剤を単独で使用する問題は、これら阻害剤は継続的にもしくは一定間隔で添加しなければならないということである。なぜならばいったん阻害剤が消費されると、重合が再び開始するからである。
【0008】
遅延剤を単独で使用する問題は、これら遅延剤はスチレンの重合を実質的な阻害のレベルまでもしくは阻害の許容可能なレベルまで減らすのにあまり有効でないことである。
【0009】
先行技術は(US5,254,760(US’760))は、重合阻害剤として、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(4HT)をはじめとするニトロオキシド化合物(即ちニトロキシル化合物)、及びジニトロ−ブチルフェノールをはじめとする芳香族ニトロ化合物の組み合わせを使用する、ビニルモノマーの重合阻害を開示する(US’760の要約、第3欄、26乃至32行目;第4欄、1乃至2行目、12行目)。
【0010】
US’760は、ニトロオキシド(即ちニトロキシル)化合物と芳香族ニトロ化合物との組み合わせの使用を開示及び教示する。US’760は、ニトロオキシド(即ちニトロキシル)化合物もしくは芳香族ニトロ化合物のいずれかの使用に反対の開示及び教示をする(US’760の第5欄、50乃至56行目;第6欄、10乃至14行目及び42乃至46行目;第7欄、36乃至41行目)。
【0011】
しかしながら、DNBPをはじめとする前記芳香族ニトロ化合物は、より大量に使用すべきものであり、及び/又は人体曝露に関するこれらの毒性についても知られている(US’760の第1欄、64乃至48行目)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許US5,254,760号明細書
【0013】
したがって、当該産業は、芳香族ニトロ化合物の量を減らせるもしくは最小化できる添加剤組成物を狙っており、それにより得られる組成物は経済的であるばかりでなく、人間にとって安全でもある。芳香族ニトロ化合物の消費を下げるもしくは最小化するためのいかなる努力も、産業の問題を緩和することになる。
【0014】
発明の必要性:
したがって、効果的な添加剤組成物及びそれを使用する方法、その製造方法、及び前記組成物を利用することにより芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法の必要性が依然として存在する。ここで、前記添加剤組成物は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合の実質的制御及び阻害に適しているだけではなく、芳香族ニトロ化合物の実質的に低下したもしくは最小化した量を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明により解決すべき課題:
従って、本発明は、効果的な添加剤組成物及びそれを使用及び製造する方法、並びに芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法を提供することにより、上に記載した既存の産業の問題に対する解決策を提供することを目指している。ここで前記添加剤組成物は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合の実質的制御及び阻害に適しているだけではなく、芳香族ニトロ化合物の実質的に低下したもしくは最小化した量を有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的:
従って、本発明の主たる目的は、効果的な添加剤組成物及びそれを使用する及び製造する方法、並びに芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法を提供することである。ここで前記添加剤組成物は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合の実質的制御及び阻害に適しているだけではなく、芳香族ニトロ化合物の実質的に低下したもしくは最小化した量を有する。
【0017】
本発明の別の主目的は、効果的な添加剤組成物及びそれを使用及び製造する方法、並びに芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法を提供することである。ここでの添加剤組成物は、芳香族ニトロ化合物の実質的に低下したもしくは最小化した量を有し、なおかつスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合の実質的制御及び阻害に適しており、及びなおかつスチレン重合の制御及び阻害について同等以上の許容可能なレベルを達成するため、芳香族ニトロ化合物単独の添加量と比べて比較的低い添加量を必要とする。
【0018】
これも本発明の一目的であるが、それは効果的な添加剤組成物及びそれを使用及び製造する方法、並びに芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法を提供することである。ここでの添加剤組成物は、1個以上のアミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物の低下したもしくは最小化した量とを有し、なおかつスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合の実質的制御及び阻害に適しており、及びなおかつスチレン重合の制御及び阻害について同等以上の許容可能なレベルを達成するため、芳香族ニトロ化合物単独の添加量と比べて比較的低い添加量を必要とする。ここでのアミンは1個以上の第3アミンである。
【0019】
本発明は特に、効果的な添加剤組成物及びその使用方法とその製造方法、並びに芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法を提供することを目指す。ここで、前記添加剤組成物は、1個以上のアミン及び芳香族ニトロ化合物の低下したもしくは最小化した量を有し、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合の実質的な制御及び阻害に依然として好適であり、及びスチレンの重合の制御及び阻害について同等以上の許容可能なレベルを達成するため、芳香族ニトロ化合物単独の添加量と比べて比較的低い添加量において依然として必要とされる。ここで、前記アミンは、1個以上の第3アミンであり、及びしたがって本発明の組成物は経済的であるだけでなく、環境にも優しい。
【0020】
本発明はまた、高温を包含するより広い温度範囲において芳香族ニトロ化合物の性能を改善することを目指す。ここで、組成物は1個以上の第3アミンをさらに有する。
【0021】
本発明はまた、高温を包含するより広い温度範囲において及び空気の存在下、芳香族ニトロ化合物の性能を改善することを目指す。ここで、組成物は1個以上の第3アミンをさらに有する。
【0022】
本発明の他の目的及び利点は、本発明の範囲を限定することを意図しない実施例と合わせて読むならば、以下の記載からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の説明及び好ましい実施形態:
先行技術の上記の問題を克服すること、及び本発明の上記の課題を達成することを目指して、本発明者は、1個以上の第3アミンを芳香族ニトロ化合物からなる組成物に添加すると、芳香族ニトロ化合物の重合制御及び阻害効率が実質的に向上するだけでなく、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合が、驚くべき且つ意外にも、1個以上の第3アミン及び1個以上の芳香族ニトロ化合物を有する組成物中の芳香族ニトロ化合物の実質的に低下した及び最小化した添加量により、許容可能なレベルまで制御及び阻害されることを見出した。このことは本発明組成物を経済的なものにするとともに環境に優しいものにする。
【0024】
先行技術の上記の問題を克服すること、及び本発明の上記の課題を達成することを目指して、本発明者は、1個以上の脂肪族第3アミン、もしくは1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンを芳香族ニトロ化合物からなる組成物に添加すると、芳香族ニトロ化合物の重合制御及び阻害効率が実質的に向上するだけでなく、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合が、驚くべき且つ意外にも、1個以上の脂肪族第3アミン、もしくは1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミン及び1個以上の芳香族ニトロ化合物を有する組成物中の芳香族ニトロ化合物の実質的に低下した及び最小化した添加量により、許容可能なレベルまで制御及び阻害されることを見出した。このことは本発明組成物を経済的なものにするとともに環境に優しいものにする。
【0025】
従って、本発明は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する添加剤組成物に係り;及び
前記組成物は:
(B)1個以上の脂肪族第3アミン、もしくはその混合物
をさらに有することを特徴とする。
【0026】
本発明によると、脂肪族アミンは、1個以上のヒドロキシル基を含む、好ましくは第3アミンのアルキル鎖内に1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンであり、より好ましくは、前記芳香族第3アミンは、第3アミンのアルキル鎖内に3乃至4個のヒドロキシル基を含む。
【0027】
本発明によると、1個以上のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンにおいて、ヒドロキシル基はヒドロキシアルキル基である。
【0028】
本発明によると、脂肪族第3アミン内の炭化水素は、直鎖でも分岐でも環状でもよい。
【0029】
本発明の最も好ましい実施形態によると、3個のヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンは、トリイソプロパノールアミンもしくはトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、ヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(THEED)である。
【0031】
本発明のもう一つの好ましい実施形態によると、ヒドロキシル基を含む脂肪族第3アミンは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Quadrol(登録商標))である。
【0032】
本発明のもう一つの好ましい実施形態によると、本発明の組成物は、ヒドロキシル基を含む上記脂肪族第3アミンもしくはその混合物を有し得る。
【0033】
従って、一実施形態において、本発明は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する添加剤組成物であって、
前記組成物は:
(B)1個以上の第3アミン
をさらに有し、前記第3アミンは:
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択されることを特徴とする、添加剤組成物に関わる。
【0034】
本発明の組成物が、1個以上の前記脂肪族第3アミンを有する場合、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する芳香族ニトロ化合物の効率が、驚くべき且つ意外にも、芳香族ニトロ化合物の実質的に低下した及び最小化した添加量においても、許容可能なレベルまで実質的に改善されること、それにより本発明の組成物を比較的より経済的なものにするとともに環境に優しいものにすることが見出された。
【0035】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の組成物は:
a)前記1個以上の芳香族ニトロ化合物I) 約40乃至約99.75重量%;及び
b)前記アミンもしくはその混合物II) 約0.25乃至約60重量%
を有する
【0036】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、本発明の組成物は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを含む流れに、前記スチレンをはじめとするモノマーの流れの重量に基づき約0.01乃至約2000ppm、好ましくは約1ppm乃至約2000ppmの量で添加される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、芳香族ニトロ化合物は、そのニトロ基だけでなくフェノール基もしくはその誘導体を含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、芳香族ニトロ化合物は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)及び4,6−ジニトロ−オルトクレゾールもしくは4,6−ジニトロ−2−ヒドロキシトルエン(DNOC)、及びこれらの混合物を有するグループから選択される。
【0039】
本発明の最も好ましい実施形態によると、芳香族ニトロ化合物は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、本発明組成物は、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オールもしくは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(即ち4−ヒドロキシTempoもしくは4−HT)を包含するニトロオキシド(即ちニトロキシル)化合物を有しない。
【0041】
本発明のもう一つの好ましい実施形態によると、本発明組成物は:
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA)
を有しない。
【0042】
従って、もう一つの実施形態において、本発明はまた、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するため、本書に記載の本発明の(本発明への言及は全体として描かれる)、脂肪族第3アミン及び芳香族ニトロ化合物系添加剤組成物を使用する方法に関わる。ここで、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、1個以上の芳香族ニトロ化合物と1個以上の前記脂肪族第3アミンとを有する添加剤組成物で処理される。
【0043】
特に第2の実施形態において本発明は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するため、本書に記載の本発明の(本発明への言及は全体として描かれる)添加剤組成物を使用する方法に関わる。ここで、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する添加剤組成物で処理され、前記組成物は:
(B)1個以上の第3アミン
をさらに有し、前記第3アミンは:
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択されることを特徴とする。
【0044】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを含む流れは、モノマー流とも芳香族ビニルモノマー流とも呼ばれることに注意する。
【0045】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の前記添加剤組成物を使用する方法は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマー流に対して、モノマーの重量に基づき約0.01ppm乃至約2000ppm、好ましくは約1ppm乃至約2000ppmの前記組成物を添加するステップを有する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、1個以上の芳香族ニトロ化合物と1個以上の脂肪族第3アミン化合物とが、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される。
【0047】
本書に記載された本発明の組成物(本発明への言及は全体として描かれる)の全ての特徴は、発明の前記添加剤組成物を使用する本方法に包含されたと思われることに留意する。
【0048】
従って第3の実施形態において、本発明はまた、本書に記載された本発明の脂肪族第3アミン及び芳香族ニトロ化合物系添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)を使用することにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法に関わる。当該方法においてスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、1個以上の芳香族ニトロ化合物と1個以上の前記脂肪族第3アミンとを有する添加剤組成物で処理される。
【0049】
特に第3の実施形態において、本発明は、本書に記載された本発明の添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)をモノマー流に添加することにより、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法に関わる。当該方法において前記組成物は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法であって、前記組成物は:
(B)1個以上の第3アミン
をさらに有し、前記第3アミンは:
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択されること、及び
前記組成物は前記モノマー流に添加されることを特徴とする。
【0050】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、モノマー流もしくは芳香族ビニルモノマー流とも称することに留意する。
【0051】
本発明の好ましい実施形態の一つによると、本発明の前記添加剤組成物を使用することによる、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する方法は、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマー流に対して、モノマーの重量に基づき前記組成物約0.01乃至約2000ppmを、好ましくは約1ppm乃至約2000ppmを添加するステップを有する。
本発明の好ましい実施形態の一つによると、1個以上の芳香族ニトロ化合物及び1個以上の脂肪族第3アミン化合物は、個別にもしくは混合後のいずれかで、前記モノマー流に添加される。
【0052】
本書に記載された本発明の組成物(本発明への言及は全体として描かれる)の全ての特徴は、発明の前記添加剤組成物を使用することによるスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する本方法に包含されたと思われることに留意する。
【0053】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の組成物を芳香族ビニルモノマーを含有する流れに、前記流れが処理システム中に入る前、もしくは前記流れが処理システム中に入った後のいずれか混合してよい。但し好ましくは、組成物は芳香族ビニルモノマーを含有する流れに、その処理が開始する前に添加するが、それにより芳香族ビニルモノマーの重合は避けられるか、最小化される。
【0054】
本発明の実施形態の一つによると、本組成物を、約50℃乃至約180℃、好ましくは約60℃乃至約180℃の温度の広範囲で使用してよい。
【0055】
本発明の組成物は、組成物を調製するいずれの公知の方法で調製されてよい。
【0056】
従って第4の実施形態において、本発明はまた、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、本書に記載の本発明の脂肪族第3アミン及び芳香族ニトロ化合物系添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)を製造する方法に関わる。当該方法において1個以上の芳香族ニトロ化合物は、1個以上の脂肪族第3アミン化合物と、個別にもしくは混合後のいずれかで混合される。
【0057】
特に第4の実施形態において、本発明は、
(A)1個以上の芳香族ニトロ化合物を混合するステップ
を有する、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害するための、本書に記載の本発明の添加剤組成物(本発明への言及は全体として描かれる)を製造する方法であって、前記芳香族ニトロ化合物もしくはその混合物を、
(B)
i)トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)であるヒドロキシアルキル第3アミン;
ii)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))である酸化プロピレン処理アミン;及び
iii)酸化エチレン処理アミンはN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)THEED化合物である;もしくは
iv)これらの混合物
からなるグループから選択される前記アミン1個以上とさらに混合することを特徴とする。
【0058】
本発明の実施形態の一つによると、本発明の添加剤組成物の製造方法は、1個以上の第3アミンと1個以上の芳香族ニトロ化合物を個別にもしくは混合後のいずれかで混合するステップを有する。
【0059】
本発明の実施形態の一つによると、製造された組成物を、約50℃乃至約180℃、好ましくは約60℃乃至約180℃の温度範囲で使用する。
【0060】
スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーを有する流れは、モノマー流もしくは芳香族ビニルモノマー流とも称することに留意する。
【0061】
本書に記載された本発明の組成物(本発明への言及は全体として描かれる)の全ての特徴は、本発明の添加剤組成物の本製造方法に包含されたと思われることに留意する。
【0062】
実施形態の一つにおいて、本発明者は、本組成物が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))からなるグループから選択されるアミン類のいずれか一つを有する場合、芳香族ニトロ化合物のスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は、実質的に改善されるが、その改善は、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)を有する組成物に対するほど有意ではないということを見出した。従って、本発明の最も好ましい実施形態によると、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)は最も好ましいアミンであり、本発明のより好ましい実施形態によると、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))は本発明のより好ましいアミン類である。
【0063】
驚くべきこと且つ意外にも、TIPAもしくはQuadrol(登録商標)もしくはTHEEDの濃度の増加により、即ち組成物がTIPAもしくはQuadrol(登録商標)もしくはTHEED約50重量%を有する場合、本発明添加剤組成物の重合阻害効率は低下すること(現在のところその理由は不明である)、但し先行技術添加剤組成物と比較してそれよりも改善を示すことに留意する。
【0064】
別の実施形態において本発明者は、本組成物が
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA)
からなるグループから選択されるアミンのいずれか一つを有する場合、芳香族ニトロ化合物のスチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は、驚くべきこと且つ意外にも実質的に低減するということを見出した。従って一実施形態において、本組成物は、
i)トリエタノールアミン(TEA);
ii)トリス[N−ブチルアミン](TBA);
iii)モノエタノールアミン(MEA);
iv)オクチルアミン(OA);
v)ジブチルアミン(DBA);
vi)ジエタノールアミン(DEA);
vii)ジプロピルアミン(DPA);及び
viii)エチレンジアミン(EDA)
からなるグループから選択されるアミンのいずれか一つを有しない。これらアミン類のいくつかは、低量における芳香族ニトロ化合物の効率の非常に不十分な改善をもたらすが、但し前述のものは商業的に実現可能ではないということに留意する。
【0065】
本発明のさらなる利点及び実施形態は以下の実施例から明らかにされる。
【0066】
ここから本発明は、以下の実施例の助けを借りて記載される。実施例は本発明の範囲を制限することを意図しているのではなく、本発明を実施するモード及び最良のモードを説明するために含まれた。
【実施例】
【0067】
実験:
主実験:
以下の実験において、蒸留したスチレンの測定量(もしくはgmsにおける炭化水素流)及び添加剤の測定量(スチレンもしくは炭化水素流の重量ppmで)を、温度計及び窒素入口及び出口を備えた管式反応装置に取り込んだ。これらの実刑において、いずれの機械的スターラーなしに管式反応装置を使用し、適当な撹拌を確実にするため十分なNフローを維持した。反応を120℃(表−I,表III,表IV,表V及び表VI)もしくは135℃(表−II)のいずれかで2時間実施した。その選択された持続時間後、反応装置を砕いた氷に浸漬することにより10℃未満に冷却した。次いで反応装置の内容物を、ビーカー内に注いだ。この同じビーカーに、約1.5乃至2gの冷却した重合混合物に対し、スチレン溶液内に形成したポリマーを沈殿させるため、約80gのメタノールを使用した。得られた沈殿物を濾過し、メタノールを除去するため乾燥し、秤量した。沈殿物の重さは%形成ポリマーとして報告された。
【0068】
安定剤を除去するため使用前にスチレンは精製されたことに留意する。
【0069】
以下の実施例において、先行技術添加剤は、4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)である芳香族ニトロ化合物である。該DNBPはスチレン(もしくは炭化水素流)の約100,200,300,400,500,600もしくは1000重量ppmの量で使用された。
【0070】
以下の実施例において、本発明添加剤は4,6−ジニトロ−2−sec−ブチルフェノール(DNBP)である芳香族ニトロ化合物の約100,200,300,400,500もしくは1000ppm、及び3個のヒドロキシル基を含有するトリ−イソプロパノールアミン(TIPA)である脂肪族第3アミンの約1乃至20ppmを有する組成物である。組成物中、TIPA約1乃至約20ppmを芳香族ニトロ化合物の秤量した量に添加する。
【0071】
実験1:
120℃に2時間加熱することにより10g蒸留スチレンによる上記主実験を行った場合の結果を表Iに示す。
【表1】
【0072】
上記表Iから、1ppm,2ppm,3ppmもしくは4ppmのTIPAを、DNBP(先行技術添加剤)100ppmに添加する場合、スチレンの重合を制御及び阻害するDNPの効率は、驚くべきこと且つ意外にも有意に改善されることが分かる。
【0073】
さらに表Iから、スチレンの重合は驚くべきこと且つ意外にも、DNBP(先行技術添加剤)500ppm中、TIPA 5乃至20ppmの添加において有意に低減されることが見て取れる。
【0074】
%形成ポリマーは、驚くべきこと且つ意外にも、100ppm DNBPによる4.8%から、もしくは200ppm DNBPによる3.18%から、もしくは300ppm DNBPによる2.03%から、
本組成物が100ppm DNBPと1ppm TIPAとを有する場合1.82%に、
本組成物が100ppm DNBPと2ppm TIPAとを有する場合1.45%に、
本組成物が100ppm DNBPと3ppm TIPAとを有する場合1.22%に、
本組成物が100ppm DNBPと4ppm TIPAとを有する場合1.08%に低減され、それにより、本組成物はDNBP(芳香族ニトロ化合物)の添加量の実質的な節約をもたらし、よって芳香族ニトロ化合物からなる組成物よりもより経済的且つ環境に優しいものであることを意味することに留意する。
【0075】
実験2:
135℃、2時間加熱することにより蒸留スチレン10gで実施した場合、上記主実験の結果を表IIに示す。
【表2】
【0076】
上記表IIから、5乃至20ppm TIPAを500ppm DNBP(先行技術添加剤)というより高い添加量に添加し、添加剤入りスチレン流を135℃というより高温で処理する場合、スチレンの重合を制御及び阻害するDNBPの効率は、驚くべきこと且つ意外にも有意に改善されるということが分かる。
【0077】
表IIから、500ppm DNBP(先行技術添加剤)内に5乃至20ppm TIPAを添加する場合、スチレンの重合は、驚くべきこと且つ意外にも有意に低減することが見て取れる。
【0078】
%形成ポリマーは、驚くべきこと且つ意外にも有意にも500ppm DNBPによる4.13%から、
本組成物が500ppm DNBPと5ppm TIPAとを有する場合2.24%に、
本組成物が500ppm DNBPと10ppm TIPAとを有する場合2.03%に、
本組成物が500ppm DNBPと15ppm TIPAとを有する場合1.88%に、
本組成物が500ppm DNBPと20ppm TIPAとを有する場合1.79%に低減すること、及びその反対に、1000ppm DNBP(芳香族ニトロ化合物、先行技術)を使用する場合のみ、1.79%形成ポリマーの効率が達成可能であったこと、それにより本組成物は、DNBP(芳香族ニトロ化合物、先行技術)の添加量の約半分までの有意な節約をもたらし、芳香族ニトロ化合物からなる組成物よりも経済的且つ環境に優しいものであることを意味することに留意する。
【0079】
実験3乃至5:
上記主実験に関する以下の実施例において、先行技術添加剤組成物はDNBP(100,200,300,400,500及び600ppmの量で使用される芳香族ニトロ化合物である)であり、本添加剤組成物は、芳香族ニトロ化合物であるDNBPと、さらに本発明のアミン類であるTIPA、THEEDもしくはQuadrol(登録商標)とを有し、DNBP:アミン比 99:1,95:5,90:10,85:15,及び50:50の重量比で使用される組成物である。発明者はさらに、本組成物の結果を、比較目的でDNBPとTEA,TBA,MEA,OA,DBA,DEA,DPA及びEDAからなるグループから選択されるアミンとを有する添加剤組成物と比較した。その結果は表III、IV、V及びVIにある。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0080】
表IV,V及びVI中のデータから見て取れるように、重量比99:1,95:5,90:10,85:15,及び50:50のDNBP:アミンを有するように、約1乃至約150ppm TIPA、THEEDもしくはQuadrol(登録商標)を、組成物の100、200及び300ppmという合計にするDNBPに添加することにより、スチレンの重合を制御及び阻害するDNBPからなる先行技術添加剤組成物の効率は、驚くべきこと且つ意外にも有意に改善される。
【0081】
見て取れるように、本組成物がN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))からなるグループから選択されるアミン類のいずれか1つを有する場合、芳香族ニトロ化合物の、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は有意に改善されるが、その改善はトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)を有する組成物に関するものほど有意ではない。従って、本発明の最も好ましい実施形態によると、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(TIPA)は最も好ましいアミンであり、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミン(THEED)及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレン−ジアミン(Quadrol(登録商標))は本発明のより好ましいアミンである。
【0082】
さらに見て取れるように、組成物がTEA,TBA,MEA,OA,DBA,DEA,DPA及びEDAからなるグループから選択される比較アミン類のいずれか1つを有する場合、芳香族ニトロ化合物の、スチレンをはじめとする芳香族ビニルモノマーの重合を制御及び阻害する効率は、改善されない。従って、実施形態の一つにおいて、本組成物は、TEA,TBA,MEA,OA,DBA,DEA,DPA及びEDAからなるグループから選択されるアミン類のいずれか1つを有しない。これらアミン類は、芳香族ニトロ化合物の効率の非常に不十分な改善をもたらすが、但し前述のものは商業的に実現可能ではないということに留意する。
【0083】
驚くべきこと且つ意外にも、アミンの濃度の増加により、即ちアミンの約50%をDNBPに添加する場足、本添加剤組成物の重合阻害効率はわずかに低減する(現在のところその理由は不明である)。
【0084】
従って、上の実験データ及びそれらの分析に鑑み、芳香族ニトロ化合物とTIPA、THEED及びQuadrol(登録商標)からなるグループから選択されるアミンとを有する本発明の添加剤組成物のみが、驚くべきこと且つ意外にも、芳香族ニトロ化合物からなる先行技術添加剤組成物の制御及び重合阻害効率の改善をもたらすと結論でき、及びこれらの知見は本組成物の相乗効果を立証する。
【0085】
上の知見の全ては、低温並びに高温における本組成物の驚くべき且つ意外な相乗的効果を立証する。
【0086】
上の知見の全てはまた、芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレンの重合を制御及び阻害する先行技術添加剤の効率の連続的な増加があることを立証する。
【0087】
上の知見の全てはまた、本組成物は、先行技術添加剤の同じ添加量と比べて、芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレンの重合を制御及び阻害するはるかに優れた効率を達成可能であることを立証する。それは、本発明は経済的及び環境的な利益をもたらすことを意味する。
【0088】
上の知見の全てはまた、現在提供される組成物は先行技術添加剤よりもはるかに優れていること、従って先行技術添加剤を超える技術的利点及び驚くべき効果を有することを立証する。
【0089】
本書で使用される用語「約」は、特許請求した発明の範囲を拡大することを意図していないが、当該技術分野で許容される実験誤差を包含するためにのみ含まれた。