特許第6190944号(P6190944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190944
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/14 20060101AFI20170821BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20170821BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F15B21/14 A
   F15B11/028 G
   E02F9/22 M
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-511276(P2016-511276)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2014059886
(87)【国際公開番号】WO2015151263
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土方 聖二
(72)【発明者】
【氏名】石川 広二
(72)【発明者】
【氏名】大木 孝利
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−202457(JP,A)
【文献】 特開2013−160251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/14
E02F 9/22
F15B 11/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、
前記旋回体を旋回駆動する旋回油圧モータと、
前記旋回油圧モータの圧油を給排する1対のアクチュエータ油路に接続された回生油路、この回生油路に接続された回生油圧モータ及び前記回生油圧モータと共に回転する発電・電動機を有する回生装置と、
前記1対のアクチュエータ油路のうち少なくとも高圧側の圧力を検出できる圧力検出装置と、
前記1対のアクチュエータ油路のそれぞれに接続されたオーバロードリリーフ弁と、
前記圧力検出装置によって検出された前記1対のアクチュエータ油路の高圧側の検出圧力が前記オーバロードリリーフ弁のリリーフ開始圧と同等かそれより僅かに低い値に設定された第1設定値未満のときは、前記回生油圧モータの目標流量をゼロまたは回生油路の油圧が負圧にならない程度の小流量に設定し、前記検出圧力が前記第1設定値以上のときは、前回生油圧モータの目標流量を前記検出圧力に応じた値に設定し、前記回生油圧モータの流量がこの目標流量となるように前記発電・電動機の回転数を制御する制御装置と
を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記検出圧力が前記第1設定値以上のときの目標流量を、前記オーバロードリリーフ弁のオーバライド特性を模擬して設定することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記検出圧力が前記第1設定値よりも高く設定された第2設定値以上のときは、前記回生油圧モータの目標流量を一定値に設定することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の建設機械において、
前記回生油路に設けられ、前記1対のアクチュエータ油路の高圧側の圧力が前記第1設定値と同等かそれより低く設定された第3設定値以上のときは前記回生油路を連通し、前記1対のアクチュエータ油路の高圧側の圧力が前記第3設定値未満のときは前記回生油路を遮断する切換弁を更に備えたことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係わり、特に油圧ショベルなどの油圧アクチュエータを有する建設機械であって、油圧アクチュエータから排出される圧油のエネルギを回生する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回油圧モータからの戻り圧油で油圧モータを駆動し、この油圧モータに直結された電動モータにより発電を行い、この発電した電気エネルギをバッテリに蓄電することにより圧油エネルギを回生するエネルギ回収装置として、例えば特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
また、特許文献2には、エネルギ回収装置の制御方法として、圧油回生時に旋回油圧モータの制動に必要な圧力が保たれるように回生油圧モータの傾転角を制御する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−136806号公報
【特許文献2】特開2009−281525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、エネルギ回収装置で回収する戻り圧油の流量(以下、回収流量という)の具体的な制御方法が開示されていない。従って、例えば回生油圧モータの流量が過度に大きく調整されて旋回油圧モータからの排出流量を上回った場合、旋回の制動圧が低下して操作性が悪化する可能性がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載のエネルギ回収装置は傾転角制御によって回収流量を制御しているが、傾転角制御は応答性が悪い。そのため、例えば旋回油圧モータからの排出流量が徐々に減少していく旋回減速時において、応答遅れにより回収流量が旋回油圧モータからの排出流量を上回ってしまう場合が考えられる。この場合も同様に、旋回の制動圧が低下して旋回操作性が悪化する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、旋回油圧モータに給排する圧油のエネルギを回生する建設機械であって、従来と同等の良好な操作性を確保できるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、旋回体と、前記旋回体を旋回駆動する旋回油圧モータと、前記旋回油圧モータの圧油を給排する1対のアクチュエータ油路に接続された回生油路、この回生油路に接続された回生油圧モータ及び前記回生油圧モータと共に回転する発電・電動機を有する回生装置と、前記1対のアクチュエータ油路のうち少なくとも高圧側の圧力を検出できる圧力検出装置と、前記1対のアクチュエータ油路のそれぞれに接続されたオーバロードリリーフ弁と、前記圧力検出装置によって検出された前記1対のアクチュエータ油路の高圧側の検出圧力が前記オーバロードリリーフ弁により予め設定された第1設定値未満のときは、前記回生油圧モータの目標流量をゼロまたは回生油路の油圧が負圧にならない程度の小流量に設定し、前記検出圧力が前記第1設定値以上のときは、前回生油圧モータの目標流量を前記検出圧力に応じた値に設定し、前記回生油圧モータの流量がこの目標流量となるように前記発電・電動機の回転数を制御する制御装置とを備えるものとする。
【0009】
このように構成した本発明においては、アクチュエータ油路の圧力がオーバロードリリーフ弁により予め設定された第1設定値未満のときは、回生油圧モータの流量がゼロまたは回生油路の油圧が負圧にならない程度の小流量となり、アクチュエータ油路の圧力が第1設定値以上のときは、応答性の高い発電・電動機の回転数制御によって回生油圧モータの流量が目標流量と一致するよう制御されるため、アクチュエータ油路の圧力が従来の建設機械と同様に保持され、従来と同等の良好な操作性を確保できる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記制御装置は、前記検出圧力が前記第1設定値以上のときの目標流量を、前記オーバロードリリーフ弁のオーバライド特性を模擬して設定する。
【0011】
これにより、回生油圧モータの流量がオーバロードリリーフ弁のリリーフ流量と同等あるいはより大きくなるよう制御されるため、圧油エネルギの回生効率を向上できる。
【0012】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記制御装置は、前記検出圧力が前記第1設定値よりも高く設定された第2設定値以上のときは、前記回生油圧モータの目標流量を一定値に設定する。
【0013】
これにより、アクチュエータ油路の圧力が第1設定値よりも高く設定された第2設定値以上のときは、回生油圧モータの流量が一定となるよう制御されるため、回生油圧モータの流量変動によるアクチュエータ油路の圧力変動を抑えることができる。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記回生油路に設けられ、前記1対のアクチュエータ油路の高圧側の圧力が前記第1設定値と同等かそれより低く設定された第3設定値以上のときは前記回生油路を連通し、前記1対のアクチュエータ油路の高圧側の圧力が前記第3設定値未満のときは前記回生油路を遮断する切換弁を更に備える。
【0015】
これにより、回生装置が故障して回生油圧モータが圧力を保持できなくなったときは、回生油圧モータがアクチュエータ油路から切り離されるため、回生装置が故障した場合でもアクチュエータ油路の圧力が従来の建設機械と同様に保持され、従来と同等の良好な操作性を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、旋回油圧モータに給排する圧油のエネルギを回生する建設機械において、従来と同等の良好な操作性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における油圧ショベルの外観を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における油圧制御システムを示す図である。
図3】本発明の実施の形態におけるコントローラの演算ロジックを示す図である。
図4】本発明の実施の形態における圧力センサの検出圧力と回生油圧モータの目標流量との関係を示す図である。
図5】本発明の実施の形態の変形例における圧力センサの検出圧力と回生油圧モータの目標流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
〜構成〜
図1は、本発明の実施の形態に係る建設機械の一例としての油圧ショベルの外観を示す図である。図1において、油圧ショベルは、下部走行体100と、上部旋回体200と、ショベル機構300とを備えている。
【0020】
下部走行体100は、一対のクローラ101と、クローラフレーム102と、各クローラを独立に駆動する一対の走行油圧モータ34(全て片側のみ図示)とを備えている。
【0021】
上部旋回体200は、旋回フレーム201を有し、旋回フレーム201上には、原動機としてのエンジン1、エンジン1により駆動される油圧ポンプ2、下部走行体100に対して上部旋回体200(旋回フレーム201)を旋回駆動する旋回油圧モータ3、油圧ポンプ2から各油圧アクチュエータへの圧油供給流量を制御するコントロールバルブ4等が搭載されている。
【0022】
ショベル機構300は、上部旋回体200に上下方向に回動可能に取り付けられたブーム301と、ブーム301の先端に回動可能に取り付けられたアーム302と、アーム302の先端に回動可能に取り付けられたバケット303とを有している。ブーム301はブームシリンダ31の伸縮により上下方向に回動し、アーム302はアームシリンダ32の伸縮により上下・前後方向に回動し、バケット303はバケットシリンダ33の伸縮により上下・前後方向に回動する。
【0023】
図2は、図1に示した建設機械に搭載される油圧制御システム(旋回体200の駆動に係る部分のみ)の構成を示す図である。図2において、油圧制御システムは、エンジン1と、油圧ポンプ2と、旋回油圧モータ3と、コントロールバルブ4(図1に示す)内に設けられたスプールバルブ5と、旋回操作装置6と、回生装置7と、制御装置としてのコントローラ8とを備えている。
【0024】
油圧ポンプ2は、スプールバルブ5及び1対のアクチュエータ油路9a,9bを介して旋回油圧モータ3に接続されている。スプールバルブ5が図示中立位置から位置C側に操作されると、油圧ポンプ2から吐出された圧油は、スプールバルブ5の位置Cに形成されたメータイン油路Ca及びアクチュエータ油路9aを介して旋回油圧モータ3のポートAに供給される。旋回油圧モータ3のポートAに供給された圧油はポートBから排出され、アクチュエータ油路9b及びスプールバルブ5の位置Cに形成されたメータアウト油路Cbを介してタンクに戻される。これにより、旋回油圧モータ3は右旋回方向に回転駆動され、旋回体200は右旋回動作を行う。
【0025】
一方、スプールバルブ5が図示中立位置から位置D側に操作されると、油圧ポンプ2から吐出された圧油は、スプールバルブ5の位置Dに形成されたメータイン油路Db及びアクチュエータ油路9bを介して旋回油圧モータ3のポートBに供給される。旋回油圧モータ3のポートBに供給された圧油はポートAから排出され、アクチュエータ油路9a及びスプールバルブ5の位置Dに形成されたメータアウト油路Daを介してタンクに戻される。これにより、旋回油圧モータ3は左旋回方向に回転駆動され、旋回体200は左旋回動作を行う。
【0026】
アクチュエータ油路9aには、内部圧力がリリーフ開始圧P0を超えたときに圧油を排出するオーバロードリリーフ弁10と、内部圧力が負圧になったときにタンクから油を補充するメイクアップバルブ11とが接続されている。アクチュエータ油路9bには、内部圧力がリリーフ開始圧P0を超えたときに圧油を排出するオーバロードリリーフ弁12と、内部圧力が負圧になったときにタンクから油を補充するメイクアップバルブ13とが接続されている。
【0027】
旋回操作装置6は、パイロット弁61と、パイロット弁61に取り付けられた操作レバー62とを備えている。パイロット弁61は、操作レバー62の操作量に応じたパイロットを発生する。パイロット弁61の出力ポートE,Fは、それぞれパイロット油路10a,10bを介してスプールバルブ5のパイロット受圧部5a,5bに接続されている。操作レバー62が右旋回側に操作されることにより発生したパイロット圧Prは、パイロット油路10aを介してスプールバルブ5のパイロット受圧部5aに導かれ、スプールバルブ5を位置C側に操作する。操作レバー62が左旋回側に操作されることにより発生したパイロット圧Plは、パイロット油路10bを介してスプールバルブ5のパイロット受圧部5bに導かれ、スプールバルブ5を位置D側に操作する。
【0028】
回生装置7は、回生油路16と、回生油圧モータ71と、発電・電動機72と、インバータ73と、チョッパ74と、蓄電装置75とを有している。
【0029】
回生油路16は、アクチュエータ油路9a,9bにそれぞれチェック弁14,15を介して接続されており、回生油路16には回生油圧モータ71が接続されている。チェック弁14,15は、アクチュエータ油路9a,9bから回生油路16へ向かう圧油の流れのみを許容するように配置されており、回生油圧モータ71は、チェック弁14,15を介して選択的に供給されるアクチュエータ油路9a,9bの高圧側の圧油によって回転駆動される。
【0030】
発電・電動機72は、回生油圧モータ71に直結されており、回生油圧モータ71と共に回転することにより発電する。発電・電動機72の回転数は、インバータ73を介して制御される。これにより回生油圧モータ71の回転数が制御され、回生油路16介して回収される圧油の流量が調整される。発電・電動機72によって発電された電力は、チョッパ74を介して昇圧され、蓄電装置75に蓄電される。
【0031】
回生油路16には、連通位置Gと遮断位置Hとの間で切換可能な切換弁17が配置されている。切換弁17の上流側の圧力(1対のアクチュエータ油路9a,9bの高圧側の圧力)が設定値P2(第3設定値)以上になると、切換弁17は連通位置Gに切り換わり、回生油路16を連通する。一方、切換弁17の上流側の圧力が設定値P2未満になると、切換弁17は遮断位置Hに切り換わり、回生油路16を遮断する。ここで設定値P2は、回生油圧モータ71の設定値P1(後述)と同等かそれより僅かに低い値に設定されている。これにより、回生装置7が故障して回生油圧モータ71が設定圧P2以上の圧力を保持できなくなったときは、回生油圧モータ71がアクチュエータ油路9a,9bから切り離されるため、回生装置7が故障した場合でもアクチュエータ油路9a,9bの圧力が従来の建設機械と同様に保持され、従来と同等の良好な操作性を確保できる。
【0032】
回生油路16の切換弁17より上流側には、圧力検出装置としての圧力センサ18が設けられている。圧力センサ18は、1対のアクチュエータ油路9a,9bの高圧側の圧力を検出し、圧力検出信号PSをコントローラ8に出力する。なお、圧力検出装置は、アクチュエータ油路9a,9bのち少なくとも高圧側の圧力を検出できる構成であれば良く、例えばアクチュエータ油路9a,9bのそれぞれに設けられた圧力センサによって高圧側と低圧側の双方の圧力を検出する構成とし、コントローラ8によって高圧側を選択しても良い。
【0033】
コントローラ8は、圧力センサ18から入力された圧力検出信号PSに基づいて所定の演算処理(後述)を行い、発電・電動機72を所定の回転数に制御するための回転数制御信号CSをインバータ73に出力する。
【0034】
〜制御〜
次に、コントローラ8の演算処理について図3を用いて説明する。図3は、コントローラ8の演算ロジックを示す図である。図3において、コントローラ8の制御ロジックは、目標流量設定部81と、除算部83と、出力変換部84とで構成されている。
【0035】
目標流量設定部81は、予め設定された変換テーブル82を参照して圧力検出信号PSに応じた目標流量を設定し、除算部83に出力する。
【0036】
ここで、図3に示した変換テーブル82の詳細を図4に示す。図4において、変換テーブル82は、回生油路16の圧力(1対のアクチュエータ油路9a,9bの高圧側の圧力)と回生油圧モータ71の目標流量とを対応づける圧力流量特性(実線aで示す)で構成され、予めコントローラ8内のメモリ等に記憶されている。図中の破線bは、オーバロードリリーフ弁10,12のオーバライド特性を示している。回生油圧モータ71が圧油の回収を開始する設定値P1(第1設定値)は、オーバロードリリーフ弁10,12のリリーフ開始圧P0と同等かそれより僅かに低い値に設定されている。また、切換弁17(図2に示す)の設定値P2は、前述のとおり設定値P1と同等かそれより僅かに低い値に設定されている。さらに、圧力流量特性aにおいて、回生油路16の圧力が設定値P1を超えたときの目標流量の変化率(実線aの傾き)は、オーバロードリリーフ弁10,11のオーバライド特性(破線bの傾き)を模擬して設定されている。これにより、目標流量が常にリリーフ流量と同等かそれより大きい値に設定されるため、回生装置7の回生効率を向上できる。なお、圧力流量特性aにおいて、回生油路16の圧力が設定値P1以上のときの目標流量の変化率(実線aの傾き)は、必ずしもオーバライド特性(実線bの傾き)を模擬して設定する必要は無く、実線bの傾きより緩やかに設定しても良い。また、回生油路16の圧力が設定値P1以下のときの目標流量はゼロに限定されず、回生油路16の油圧が負圧にならない程度の小流量に設定しても良い。これにより、回生油路16の油圧が設定圧P1以下のときも良好な操作性を確保しつつ回生を行うことができ、圧油エネルギの回生効率を向上できる。
【0037】
図3に戻り、除算部83は、目標流量設定部81から入力された目標流量をモータ容量(回生油圧モータ71の1回転当たりの流量)で除算することにより発電・電動機72の目標回転数を算出し、出力変換部84に出力する。出力変換部84は、除算部83から入力された目標回転数を発電・電動機72の回転数制御信号CSに変換し、インバータ73に出力する。これにより、発電・電動機72の回転数が目標回転数に制御され、回生油圧モータ71の流量が目標流量に調整される。
【0038】
〜動作〜
本実施の形態に係る油圧制御システムの動作について、図2を用いて説明する。
【0039】
まず、旋回体200の起動時の動作について説明する。尚、操作レバー62を右旋回側に操作した場合の動作と左旋回側に操作した場合の動作は、左右が逆になる点を除き同一であるため、ここでは右旋回側に操作した場合についてのみ説明する。
【0040】
操作レバー62が中立位置から右旋回側に操作されると、パイロット弁61から出力されたパイロット圧Prがスプールバルブ5のパイロット受圧部5aに導かれ、スプールバルブ5は位置C側に切り換えられる。これにより、油圧ポンプ2から吐出された圧油はメータイン油路Ca及びアクチュエータ油路9aを介して旋回油圧モータ3のポートAに供給される。ポートAに供給された圧油はポートBから排出され、アクチュエータ油路9b及びメータアウト油路Cbを介してタンクに戻される。これにより、旋回油圧モータ3は右旋回方向に回転駆動され、旋回体200は右旋回動作を開始する。
【0041】
ここで、旋回体200は慣性が大きいため、旋回起動時は、油圧ポンプ2からアクチュエータ油路9aに供給される圧油の流量を旋回油圧モータ3のポートAで吸収し切れず、アクチュエータ油路9aの圧力Paが急激に上昇する。圧力Paが切換弁17の設定値P3以上になると、切換弁17は位置Gに切り換わり回生油路16を連通する。圧力Paが更に上昇して設定値P1以上になると、回生油圧モータ71は圧油の回収を開始する。このとき、圧力流量特性a(図4参照)に応じて、リリーフ開始圧P0と同等かそれよりは僅かに低い設定値P1以上に保持された回生油路16の圧力が、アクチュエータ油路9aを介して旋回油圧モータ3に駆動圧として作用し、旋回体200は加速する。
【0042】
アクチュエータ油路9aの圧力Paが更に上昇し、オーバロードリリーフ弁10のリリーフ開始圧P0以上になると、旋回油圧モータ3のポートAで吸収し切れない流量は、回生油圧モータ71によって回収されるとともにオーバロードリリーフ弁10から排出される。このとき、回生油圧モータ71の流量は、応答性の高い発電・電動機の回転数制御によって、圧力流量特性aに応じた(オーバロードリリーフ弁10によるリリーフ流量と同等かそれより大きい)目標流量に速やかに調整される。
【0043】
旋回体200の右旋回速度が上昇するにつれて、旋回油圧モータ3のポートAで吸収される流量は増加し、アクチュエータ油路9aの圧力Paは低下する。圧力Paが設定値P1未満になると、回生油圧モータ72は圧油の回収を停止し、油圧ポンプ2からアクチュエータ油路9aに供給される流量は全て旋回油圧モータ3のポートAで吸収される。
【0044】
次に、旋回体200の減速時の動作について説明する。
【0045】
旋回体200が右旋回動作を行っている状態で操作レバー62を中立に戻すと、スプールバルブ5は中立位置に切り換えられ、スプールバルブ5を介したアクチュエータ油路9a,9bの圧油の給排が不能となり、油圧ポンプ2からの圧油による旋回油圧モータ3の駆動は停止する。一方、大きな慣性を有する旋回体200は、旋回油圧モータ3による駆動が停止した後も右旋回動作を継続する。そのため、旋回油圧モータ3は、旋回体200の慣性力によって回転駆動される。
【0046】
このとき、スプールバルブ5を介したアクチュエータ油路9a,9bの圧油の給排が不能となっているため、旋回油圧モータ3のポートA側(アクチュエータ油路9a)の圧力Paは急激に下がり、ポートB側(アクチュエータ油路9b)の圧力Pbは急激に上昇する。アクチュエータ油路9aの圧力Paが負圧になろうとすると、メイクアップバルブ11を介してアクチュエータ油路9aに油が補充される。アクチュエータ油路9bの圧力Pbが設定値P2以上になると、切換弁17は位置Gに切り換わり、回生油路16を連通する。
【0047】
アクチュエータ油路9bの圧力Pbが更に上昇し、設定値P1以上になると、図4に示す圧力流量特性aに応じた流量が回生油圧モータ71によって回収される。このとき、圧力流量特性aに応じて、リリーフ開始圧P0と同等かそれより僅かに低い設定値P1以上に保持された回生油路16の圧力が、アクチュエータ油路9bを介して旋回油圧モータ3に制動圧として作用し、旋回体200は減速を開始する。
【0048】
アクチュエータ油路9bの圧力Pbが更に上昇し、オーバロードリリーフ弁12のリリーフ開始圧P0以上になると、アクチュエータ油路9bの圧油は、回生油圧モータ71によって回収されるとともにオーバロードリリーフ弁12から排出される。このとき、回生油圧モータ71の流量は、応答性の高い発電・電動機72の回転数制御によって、圧力流量特性aに応じた(オーバロードリリーフ弁12のリリーフ流量と同等かそれより大きい)目標流量に速やかに調整される。
【0049】
その後、旋回体200が減速するに従って、旋回油圧モータ3からの排出流量が低下するとともにアクチュエータ油路9bの圧力Pbも低下する。このとき、応答性の高い発電・電動機72の回転数制御によって、回生油圧モータ71の流量がこの圧力Pbに対応する目標流量に速やかに調整されるため、旋回減速中にアクチュエータ油路9bの圧力Pbが設定値P1未満になることがなく、良好な操作性を確保することができる。
【0050】
〜効果〜
上記のように構成した本実施の形態においては、アクチュエータ油路9a,9bの圧力がオーバロードリリーフ弁10,12のリリーフ開始圧P0と同等かそれより僅かに低い値に設定された設定値P1未満のときは、圧力流量特性aに応じて回生油圧モータ71の目標流量がゼロまたは回生油路の油圧が負圧にならない程度の小流量に設定され、アクチュエータ油路9a,9bから圧油が回収されないため、アクチュエータ油路9a,9bの圧力は低下せず、従来と同等の良好な操作性を確保できる。
【0051】
一方、アクチュエータ油路9a,9bの圧力が設定値P1を超えたときは、回生油圧モータ71の流量が、応答性の高い発電・電動機の回転数制御によって、アクチュエータ油路9a,9bの高圧側の圧力に対応する目標流量に速やかに調整されるため、旋回起動時及び旋回減速時にアクチュエータ油路9a,9bの高圧側の圧力が設定値P1以上に保たれ、従来と同様の良好な操作性を確保できる。
【0052】
さらに、回生油路16の圧力が設定値P1を超えたときの流量変化率をオーバロードリリーフ弁10,12のオーバライド特性における流量変化率と同等に設定することで、回生油圧モータ71の目標流量が常にオーバロードリリーフ弁10,12によるリリーフ流量と同等かそれより大きい値に設定されため、圧油エネルギの回生効率を向上できる。
【0053】
〜変形例〜
なお、図3に示した目標流量設定部81は、図4に示した変換テーブル82に代えて図5に示す変換テーブル82Aを参照しても良い。変換テーブル82Aの変換テーブル82との違いは、検出圧力が設定値P1よりも高く設定された設定値P3(第2設定値)以上のときの目標流量が一定値となる点である。
【0054】
これにより、アクチュエータ油路9a,9bの圧力が設定値P1よりも高く設定された設定値P3以上のときは、回生油圧モータ71の流量が一定となるよう制御されるため、回生油圧モータ71の流量変動に起因するアクチュエータ油路9a,9bの圧力変動を抑えることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 エンジン(原動機)
2 油圧ポンプ
3 旋回油圧モータ
4 コントロールバルブ
5 スプールバルブ
5a,5b パイロット受圧部
6 旋回操作装置
7 回生装置
8 コントローラ(制御装置)
9a,9b アクチュエータ油路
10a,10b パイロット油路
10,12 オーバロードリリーフ弁
11,13 メイクアップバルブ
14,15 チェック弁
16 回生油路
17 切換弁
18 圧力センサ
31 ブームシリンダ
32 アームシリンダ
33 バケットシリンダ
34 走行油圧モータ
61 パイロット弁
62 操作レバー
71 回生油圧モータ
72 発電・電動機
73 インバータ
74 チョッパ
75 蓄電装置
81 目標回収流量設定部
82 変換テーブル
83 除算部
84 出力変換部
100 下部走行体
101 クローラ
102 クローラフレーム
200 上部旋回体
201 旋回フレーム
300 ショベル機構
301 ブーム
302 アーム
303 バケット
図1
図2
図3
図4
図5