【文献】
Christina Gimmler-Dumont et al.,Reliability study on system memories of an iterative MIMO-BICM system,VLSI and System-on-Chip (VLSI-SoC), 2012 IEEE/IFIP 20th International Conference on,2012年10月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態を、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態における無線通信システムの構成、つまり、BICM−IDを用いた送信装置及び受信装置の基本構成を示す図である。この構成は、送信側の変調器としてMIMO変調器12を用い、受信側の復調器としてMIMO復調器15を用いること以外は、従来のBICM−IDの基本構成と同じ構成である。
【0015】
送信装置は、符号化器10と、情報ビットの順序を乱数的に入れ替えるインターリーバ11と、MIMO変調器12と、複数のアンテナ12aとを含むように構成される。受信装置は、複数のアンテナ15aと、MIMO復調器15と、情報ビットの順序を元の順序に戻すデインターリーバ16と、復号器17と、インターリーバ18とを含むように構成される。
【0016】
送信装置(MIMO変調器12)の複数のアンテナ12aから無線送信された信号は、無線チャネル、つまり無線伝搬路14を介して、受信装置(MIMO復調器15)の複数のアンテナ15aで受信される。受信装置で受信された受信信号には、無線伝搬路14の状態を示すチャネル情報14aやノイズが反映される。
【0017】
送信装置において、符号化器10は、入力される所定のひとまとまりの情報ビット10a(例えばビット数g)を符号化し、情報ビット10b(例えばビット数h)として、インターリーバ11に出力する。インターリーバ11は、符号化された全符号語ビット(情報ビット10b)のビット順序を乱数的に入れ替えるインターリーブ処理を行って、情報ビット11aを生成し、MIMO変調器12へ出力する。MIMO変調器12では、無線伝搬路14に応じた変調処理を行い、変調信号(送信シンボル)をアンテナ12aから出力する。
【0018】
受信装置において、MIMO復調器15は、アンテナ15aから入力された受信信号(受信シンボル)に対して復調処理を行い、情報ビット15b(第1の外部情報)をデインターリーバ16に出力する。デインターリーバ16は、送信側で符号化されインターリーブされた全符号語ビット(情報ビット11a)に対応するビット尤度信号を一旦蓄えて、送信側のインターリーバ11で入れ替えられたビット列の順序を元に戻すデインターリーブ処理を行い、情報ビット16a(第2の外部情報)を復号器17に出力する。復号器17は、情報ビット16aを復号して、情報ビット17b(第3の外部情報)を出力する。インターリーバ18は、情報ビット17bに対しインターリーブ処理を施し、情報ビット18a(第4の外部情報)をMIMO復調器15に供給する。MIMO復調器15は、復号器17からの情報に基づく情報ビット18a(第4の外部情報)を、事前情報として用いて再度復調処理を行い、さらに精度の良い復調結果を出力する。
【0019】
このように、MIMO復調器15とデインターリーバ16と復号器17とインターリーバ18とから、繰り返し復号処理部19が構成される。BICM−IDでは、繰り返し復号処理部19で、前記繰り返し復号処理を繰り返し行い、得られた信号の事後確率を最大化した後に、最終的な復号器出力17a(送信側の入力情報ビット10aに対応)を得る。
【0020】
例えば、
図1の符号化器10として、復号に要する演算量が小さい単純な符号である反復符号を発生させる反復符号器を用いることができる。この反復符号器の次数dvは任意である。例えば、(a1,a2)の2ビットで構成されるひとまとまりの情報ビット(情報ビット10a)を、2次(dv=2)の符号語ビット(a1,a1,a2,a2)に符号化して、情報ビット10bを生成することができる。インターリーバ11では、全符号語ビット(a1,a1,a2,a2)のビット順序を乱数的に入れ替えて、情報ビット11aを生成する。
【0021】
また、
図1のMIMO変調器12に対応する変調器として、SNR(signal to Noise Ratio)に応じて、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)等の通常の変調を用いることができる。
【0022】
例えば、符号化器10は、2ビットの入力信号(情報ビット10a)を符号化し、4ビットの信号(情報ビット10b)を出力する。該4ビットの信号に対し、インターリーバ11は、インターリーブ処理を行って、4ビットの信号(情報ビット11a)をMIMO変調器12へ出力する。MIMO変調器12は、入力された4ビットの信号を、例えばQPSKを用いて2ビットずつ4値変調し、2つのアンテナ12aから、それぞれ、2ビットの送信信号T1(ビットb0,b1)、T2(ビットb2,b3)を同時に出力する。
【0023】
送信信号T1、T2は、無線伝搬路(チャネル)14を介して、受信装置の2つのアンテナで、T1とT2が混ざり合った受信信号R1、R2として受信される。すなわち、受信信号R1、R2は、次の(数1)で表すことができる。ここで、h11、h12、h21、h22は、チャネル情報14aである。チャネル情報は、既知の信号を送信し、受信信号と既知の信号とに基づき、求めることが可能である。
【0025】
図2は、第1の実施形態におけるMIMO復調器の構成を示す図である。
【0026】
図2に示すように、MIMO復調器15は、送信信号点候補生成部20と、受信信号点候補生成部21と、受信信号点候補絞込み部22と、行列演算部23と、尤度演算部25とを含むように構成される。尤度演算部25には、メトリック演算部24が含まれる。
【0027】
送信信号点候補生成部20は、送信側のMIMO変調器12において発生させ得る全ての送信信号点候補(つまり送信シンボル)を生成する。送信信号点候補は、例えば、
図3(a)の黒丸31のように、IQ平面上で表示することができる。なお、
図3(a)の黒丸31は、後述する受信信号点候補である。
【0028】
受信信号点候補生成部21は、送信信号点候補生成部20で生成された送信信号点候補と、無線伝搬路14の伝搬路情報であるチャネル情報とに基づき、受信信号点候補を生成する。チャネル情報は、前述したようにして予め求め、受信装置内に記憶しておく。受信信号点候補は、チャネル情報に基づき、送信信号点候補を修正したものであり、上記した送信信号点候補の数と同数である。受信信号点候補は、例えば、
図3(a)の黒丸31のように、IQ平面上で表示することができる。生成された受信信号点候補は、後述するメトリック演算に用いられる。
【0029】
受信信号点候補絞込み部22は、受信信号点候補生成部21で生成された複数の受信信号点候補の中から、尤度演算部25における演算(詳しくは、後述のメトリック演算部24における演算)に用いる受信信号点候補を絞り込む。このとき、受信信号点候補絞込み部22は、復号器17からの情報に基づく情報ビット18a(第4の外部情報=事前情報)の大きさと、受信信号点候補生成部21で生成した複数の受信信号点候補と復調器15で受信した受信信号との間の距離とに基づき、前記生成した複数の受信信号点候補の中から、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補を絞り込む。
【0030】
例えば、受信信号点候補絞込み部22は、情報ビット18a(第4の外部情報=事前情報)の大きさに基づき、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数を決定し、受信信号点候補生成部21で生成した複数の受信信号点候補とMIMO復調器15で受信した受信信号との間の距離に基づき、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補を決定する。
【0031】
このように受信信号点候補絞込み部22を構成すると、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数が決まっているので、尤度演算部25の演算量、延いては繰り返し復号処理部の演算量を所定値以下に抑えることが容易になる。
【0032】
例えば、情報ビット18a(第4の外部情報=事前情報)の大きさが大きいほど、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数が少なくなるようにし、また、前記複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離がより近い(距離がより小さい)受信信号点候補を、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補とする。
【0033】
例えば、前記複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離として、メトリック演算部24におけるメトリック演算値を用いることができる。このように構成すると、尤度演算に用いる受信信号点候補として、より適した受信信号点候補を絞り込むことができる。その理由は、後述するように、メトリック演算値は、事前情報による受信信号点候補の確率を含むからである。
【0034】
あるいは、受信信号点候補絞込み部22は、受信信号点候補生成部21が生成した複数の受信信号点候補の中から、MIMO復調器15で受信した受信信号との間の距離が任意の値r1以下となる受信信号点候補を、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補として絞り込み、事前情報が大きくなるに従い前記r1の値を小さくするよう構成することもできる。
【0035】
このように受信信号点候補絞込み部22を構成すると、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数は、事前情報が大きいときの方が、事前情報が小さいときよりも少なくなる。また、尤度演算に用いる受信信号点候補の絞込みを、容易に行うことができる。
【0036】
あるいは、受信信号点候補絞込み部22は、受信信号点候補生成部21が生成した複数の受信信号点候補の中から、メトリック演算部24におけるメトリック演算値が任意の値r2以下となる受信信号点候補を、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補として絞り込み、事前情報が大きくなるに従い前記r2の値を小さくするよう構成することもできる。
【0037】
このように受信信号点候補絞込み部22を構成すると、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数は、事前情報が大きいときの方が、事前情報が小さいときよりも少なくなる。そして、尤度演算に用いる受信信号点候補の絞込みが容易になるとともに、尤度演算に用いる受信信号点候補として、より適したものを選択することができる。
【0038】
このように、受信信号点候補絞込み部22は、受信信号点候補生成部21で生成された複数の受信信号点候補の中から、第1の外部情報15bの作成に用いる受信信号点候補を絞り込み、繰り返し復号処理部19が繰り返し復号処理を行うことにより第4外部情報18a(事前情報)が大きくなるに従い、第1の外部情報15bの作成に用いる受信信号点候補の数を少なくする。こうすることにより、情報ビット18a(第4の外部情報=事前情報)の大きさが大きくなるに従い、尤度演算部25における演算処理量、延いてはMIMO復調器15の演算処理量を削減することができる。
【0039】
尤度演算部25は、受信信号点候補絞込み部22で絞り込まれた受信信号点候補と、事前情報としての第4外部情報18aと、受信信号とに基づき、第1の外部情報15bを演算し作成する。前述したように、尤度演算部25には、メトリック演算部24が含まれる。
【0040】
メトリック演算部24は、受信信号と事前情報18a(第4の外部情報)とに基づき、後述する(数4)によるメトリック演算を行う。メトリック演算は、尤度演算部25が行う尤度演算の一部であり、演算量削減方式によっては、メトリック演算結果を受信信号点候補絞込み部22で参照する。
【0041】
尤度演算部25は、メトリック演算結果を用いて、後述する(数3)によりビット尤度を算出し、第1の外部情報15bとして出力する。
【0042】
行列演算部23は、尤度演算部25の処理量を削減するために用いられ、後述するツリー構造を用いない場合は、行列演算部23を用いないことも可能である。なお、行列演算を行わない場合は、受信信号に単位行列を乗算する場合と等価である。
【0043】
本実施形態のMIMO復調器15では、復号器17からの事前情報(A priori Information)18aと受信信号とを用いて、事後情報(A posteriori Information)を算出し、算出した事後情報から事前情報を減算して得られる外部情報(Extrinsic Information)15bを出力する。
【0044】
外部情報15bは、ビット単位の対数尤度比:LLR(Log Likelihood Ratio)の形式で出力するのが一般的である。LLRは、当該ビットが0である確率と1である確率の比の対数表現であり、(数2)で表すことができる。(数2)において、P(b=0)は、ビットbが0である確率、P(b=1)は、ビットbが1である確率を意味する。
【0046】
MIMO復調器15における外部情報Le(第1の外部情報15b)は、事前情報La(第4の外部情報18a)と、受信信号yとを用いて、(数3)で演算されることが知られている。(数3)において、c
kは、チャネル情報と送信信号点候補から求めた受信信号点候補、c
k(bj)は、受信信号点候補c
kの第j番目のビット(0または1)、σは受信装置の受信端(アンテナ15a)における雑音の標準偏差である。iは求めたいビットを示す添字(インデックス)、jは求めたいビットi以外の関連するビットを示す添字である。(数3)の第1項は、当該ビットが0であるシンボルの確率の総和と、当該ビットが1であるシンボルの確率の総和の対数比である。
【0048】
例えば、1シンボルが2ビット(つまり4値変復調)の場合、ビットb0の外部情報Le(b0)を算出するとき、(数3)の第1項の分子は、ビットb0=0である受信信号点候補c
k(b0b1=00、01)に関する総和を意味する。また、(数3)の第1項の分母は、ビットb0=1である受信信号点候補c
k(b0b1=10、11)に関する総和を意味する。
【0049】
また、メトリック演算は、(数3)の演算の一部であり、メトリック演算結果であるメトリックRは、(数4)で演算されることが知られている。
【0051】
(数4)の第1項は、受信信号と受信信号点候補の距離を雑音の分散で重み付けした値であり、第2項は、事前情報による受信信号点候補の確率に相当する値である。尤度演算部25における尤度演算としては、(数3)で表される厳密な式を用いる事が望ましいが、演算量削減のため、(数3)における総和算出処理を最大値検出処理に置き換えることができる。総和算出処理を最大値検出処理に置き換える手法としては、Max Log Mapと呼ばれる手法が知られている。
【0052】
また、(数4)のメトリック演算における第1項は、2次のノルム(|y - c
k|
2)を用いているが、これを0次ノルム(max(|y|, |c
k|))や1次ノルム(|y|+|c
k|)のような近似ノルムで代用しても良い。上記のような近似を用いた際には、最終的な尤度に定数を乗算し、尤度の大きさを調整する事で、復号特性劣化を抑制しても良い。
【0053】
MIMO復調器15の出力外部情報15b(第1の外部情報)は、デインタリーバ16で順序を入れ替えられ、復号器17へ入力される。MIMO復調器15に入力される事前情報18a(第4の外部情報)は、復号器17から出力される第3の外部情報17bを、インタリーバ18で順序を入れ替えたものである。復号器17の外部情報17bの算出は、符号化方式に依存する。例えば、非特許文献5では、復号器として反復符号が用いられる。反復符号の外部情報17bは、符号語のLLRの総和から事前情報を減算した値であり、(数5)で表されることが知られている。
【0055】
(数5)において、iは求めたいビットのインデックス、jは求めたいビットi以外の関連するビットのインデックスである。例えば、1シンボルが2ビット(つまり4値変復調)の場合、ビットb0の外部情報Le(b0)を算出するとき、(数5)の第1項は、ビットb0以外のビットb1に関する総和を意味する。また、(数5)の第2項は、ビットb0に関する事前情報を意味する。
【0056】
本実施形態のMIMO復調器15では、演算量削減のため、事前情報La(第4の外部情報18a)に基づき、受信信号点候補生成部21で生成した受信信号点候補c
kの絞り込みを行う。尤度演算部25での尤度演算における最適な処理は、最大事後確率処理であり、全ての受信信号点候補c
kと事前情報Laを元に、(数3)を用いて外部情報Le(第1の外部情報15b)を算出するのが望ましい。しかし、本実施形態では、全ての受信信号点候補c
kを用いる代わりに、外部情報Le(第1の外部情報15b)に大きな影響を与える受信信号点候補c
kのみを用いて(数3)を演算する。これにより、復号特性劣化を抑えつつ演算量を削減できる。
【0057】
また、本実施形態のMIMO復調器15では、事前情報Laが大きくなると共に受信信号点候補c
kの数を減らし、演算量を削減する。一般に、受信信号点候補c
kの数を減らす事で、最大事後確率処理の特性劣化は大きくなる。しかし、(数4)で表されるメトリックRは、事前情報Laの増加と共に、一部の受信信号点候補c
kについては小さくなり、その他の受信信号点候補c
kについては大きくなる。その結果、メトリックRの小さい一部の受信信号点候補c
kが外部情報Leに大きな影響を及ぼし、メトリックRの大きい残りの受信信号点候補c
kの外部情報Leへの寄与が小さくなる。従って、事前情報Laを用いない場合や事前情報Laが小さい場合に比べて、事前情報Laが大きい場合には、メトリックRの小さい受信信号点候補c
kを用いることにより、受信信号点候補数を減らす事に起因する特性劣化を小さく抑える事ができる。
【0058】
図3は、第1の実施形態において、尤度演算で用いる受信信号点候補を絞り込む方法の一例を示す図である。
図3(a)では、全ての受信信号点候補数が16個の場合の、受信信号点30と受信信号点候補31をIQ平面上に示している。
図3の例では、受信信号点30と受信信号点候補31との間の距離を、受信信号点候補を絞り込む基準とする。そして、その距離が一定以下の受信信号点候補31を、尤度演算部25の尤度演算に用いる。
【0059】
そして、
図3(b)に示すように、事前情報Laが小さい場合には、絞り込みに用いる受信信号点30からの基準距離r1を十分大きく設定し、16個の全受信信号点候補を用いて(数3)の尤度演算を行う。事前情報Laが大きい場合には、受信信号点30からの基準距離r1を小さい値へ変更し、(数3)の尤度演算に用いる受信信号点候補を、受信信号点30近傍の受信信号点候補のみに絞り込む。
図3の例では、
図3(b)に示すように、事前情報Laが大きい場合に尤度演算に用いられる受信信号点候補は3点となり、事前情報Laが小さい場合と比べて、尤度演算に用いられる受信信号点は1/5以下となる。
【0060】
図3の例では、説明を解り易くするため、受信信号点からの距離r1を基準にして受信信号点候補を絞り込む例を示したが、実際には、(数4)のメトリックRを用い、任意の変数r2を決定し、Rがr2以下の受信信号点候補のみを尤度算出に用いるように受信信号点候補の絞り込みを行うことが望ましい。(数4)より、事前情報Laが0の場合には、メトリックRは受信信号点30と受信信号点候補31との間の距離r1に相当する。BICM-IDの繰り返し復号処理の初回では、MIMO復調器15に入力される事前情報Laは0であるため、初回のメトリックRに対して、許容できる特性劣化となるr2を決定し、BICM-IDの繰り返し復号処理により事前情報が大きくなるにつれて、r2を繰り返し復号処理の初回の値より小さく変更し、BICM-IDの繰り返し復号処理の後段での演算量を削減する。演算量を厳密に規定したい場合には、絞込み後に残す受信信号点候補数を先に決め、外部情報Leの算出に影響が多い順にそれらを選択するという手法を用いても良い。
【0061】
このような手法は、受信信号を階層的なツリー構造に変換し、ツリーの上位階層で受信信号点候補を絞り込む際に有効である。
図4は、第1の実施形態において、尤度演算で用い受信信号点候補を、階層的なツリー構造を用いて絞り込む方法の一例を示す図である。
図4は、送信アンテナ2本からそれぞれ4値(2ビット)の信号(T1,T2)を送信した際の受信信号のツリー構造を示している。この場合、MIMO復調器15で受信される受信信号(R1,R2)の受信信号点の全候補数は16となる。
【0062】
MIMO復調器15では、QR分解を用いた行列演算により、受信信号点候補を1本のアンテナから送信された受信信号点候補40を最上位層とし、それ以降を複数アンテナから送信された信号が混ざり合った場合の受信信号点候補41とするツリー構造に変換することが可能となる。例えば、R2を、T2の信号のみで表す受信信号点候補40とし、R1を、T1とT2の信号が混ざり合った受信信号点候補41とすることが可能となる。
【0063】
図4(a)に示す事前情報Laが小さい場合には、MIMO復調器15は、ツリー構造の最上位40の4点の内、メトリックRの小さい順に3点を残し、その下位の受信信号点候補41の12点を含めた計15点を探索し、尤度演算に用いる。一方、
図4(b)に示す事前情報Laが大きい場合には、MIMO復調器15は、ツリー構造最上位40の4点のうち、メトリックRの最も小さい1点のみを残し、その下位の受信信号点41の4点を含めた計5点を探索し、尤度演算に用いる。このように事前情報が大きい場合の尤度演算に用いる受信信号点候補の数を、事前情報が小さい場合よりも減らすことにより、MIMO復調処理の演算量を削減できる。
【0064】
上述したように本実施形態では、事前情報Laの大きさに基づき、尤度算出に用いる受信信号点候補を決定する。事前情報量の大きさを見積もる指標として、上述したように事前情報量そのものを用いることもできるが、事前情報量の大きさを極力正確に見積もるためには、(数6)で表されるビットの相互情報量Imを用いることが望ましい。(数6)は公知である。相互情報量Imは、送信側と受信側との間における相互情報量である。
【0066】
このように、事前情報量の大きさを見積もる指標として相互情報量Imを用いた場合は、相互情報量Imを算出するための計算量が大きくなるものの、事前情報量の大きさを正確に見積もることができ、したがって、BICM-ID復号特性の劣化を小さくすることができる。
【0067】
なお、上述したように事前情報量そのものを用いた場合は、相互情報量Imを用いた場合よりも、BICM-ID復号特性の劣化が大きくなる可能性があるものの、電波伝搬環境の動的変化に対応することができ、送信装置や受信装置の設置場所の変更に容易に対応することができる。また、事前情報の相互情報量により判定するように構成した場合よりも、復調器の演算量を小さくすることができる。
【0068】
(数6)の相互情報量Imは、ビットの相互情報量の符号語全体(例えば1000シンボル分)における平均であり、0〜1の値で表され、1に近づくほど事前情報Laが大きいことを示す。BICM-ID処理においては、繰り返し復号処理に用いられる符号語全体の情報量の推移がBICM-ID復号特性を決定するため、事前情報Laの大きさを表す指標には、MIMO復調器15に入力される事前情報Laの符号語全体における統計量を用いることが望ましい。なお、事前情報Laの大きさを表す指標として、(数6)の相互情報量Im以外の指標を用いる場合にも、例えば、事前情報Laの分散や標準偏差や最大値や最頻値や絶対値の平均値等の統計量を用いることが望ましい。
【0069】
図5は、第1の実施形態におけるBICM-ID処理の一例のフローチャートを示す図である。このBICM-ID処理では、まず、送信信号点候補とチャネル情報とに基づいて、受信信号点候補を生成する(
図5のステップS50)。MIMO復調器15で用いられる事前情報Laは、繰り返し復号処理毎に更新される(ステップS51)。事前情報Laの相互情報量Imの大きさを判定し(ステップS52)、相互情報量Imの大きさに応じて、絞り込む受信信号点候補の数を決定する(ステップS53)。
【0070】
受信信号点候補の数の絞り込みは、事前情報Laの相互情報量Imが大きくなるにつれて、尤度演算に用いられる受信信号点候補が少なくなるように行われる。
図5の例では、相互情報量Imが0.2より小さい場合は、全ての受信信号点候補M個を、尤度演算部25の尤度演算に用いる。また、相互情報量Imが0.2以上であって0.4より小さい場合は、受信信号点候補(M−1)個を、尤度演算部25の尤度演算に用いる。また、相互情報量Imが0.9以上である場合は、受信信号点候補(M−K)個を、尤度演算部25の尤度演算に用いる。ただし、K<Mである。受信信号点候補数K、Mは、QR分解とMアルゴリズムを用いた手法では明示的に決定される。また、SDを用いた場合には絞り込みに用いるメトリックを変更することにより、間接的に受信信号点候補数を変更する。
【0071】
また、尤度演算に用いられる受信信号点候補の特定には、前記のメトリックRの大きさを用いた手法、つまり、決められた受信信号点候補数だけメトリックRの小さい方から順に選択する手法を用いる。具体的には、ステップS51で生成された受信信号点候補の全てに対しメトリック演算(ステップS54)を行い、各受信信号点候補のメトリックRを演算し、メトリックRの小さい方から順に、尤度演算に用いる受信信号点候補として選択する。尤度計算には、それぞれのビットが0の場合の確率と1場合の確率が必要となるため、受信信号点候補の絞り込みの結果、対応するビットが0または1となる信号点候補が1つも存在しないことがないように、対応するビットが0または1となるような信号点候補を少なくとも一つは残す手法もよく用いられる。
【0072】
なお、厳密には、メトリックの大きさを絞り込みの判定に用いるのが望ましいが、(数4)のメトリック中の受信信号点と受信信号点候補のノルムに相当する部分、つまり、受信信号点と受信信号点候補との間の距離に相当する部分を、絞り込みの判定に用いても良い。
【0073】
次に、ステップS54で絞り込まれた受信信号点候補を用いて、尤度演算(ステップS55)を行い、MIMO復調器15の外部情報を演算し、デインタリーバ16を介して、復号器17へ出力する。復号器17では、MIMO復調器15の処理結果を復号する(ステップS56)。そして、繰り返し復号処理の終了でないと判定された場合は(ステップS57でNo)、復号結果の外部情報17bを出力し、ステップS51に戻る。繰り返し復号処理の終了であるか否かは、例えば、繰り返し復号処理の回数で判定される。外部情報17bは、インタリーバ18を介して、MIMO復調器15の事前情報Laとして入力される。繰り返し復号処理の終了と判定された場合は(ステップS57でYes)、繰り返し復号処理を終了する。
【0074】
第1の実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
【0075】
(A1)繰り返し復号処理部の復調器が、受信信号点候補を複数生成し、事前情報の大きさと、前記生成した複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離とに基づき、前記生成した複数の受信信号点候補の中から、尤度演算(第1の外部情報作成)に用いる受信信号点候補を絞り込むように構成したので、繰り返し復号処理部の演算量を削減することができる。
【0076】
(A2)繰り返し復号処理部の復調器が、事前情報の大きさに基づき、尤度演算に用いる受信信号点候補の数を決定し、前記生成した複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離に基づき、尤度演算に用いる受信信号点候補を決定することもできる。このように構成した場合は、尤度演算に用いる受信信号点候補の数が決まっているので、繰り返し復号処理部の演算量を所定値以下に抑えることが容易になる。
【0077】
(A3)繰り返し復号処理部の復調器が、メトリック演算値を算出するメトリック演算部を含み、前記生成した複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離として、メトリック演算値を用いることもできる。このように構成した場合は、メトリック演算値は、事前情報による受信信号点候補の確率を含むので、尤度演算に用いる受信信号点候補として、より適したものを選択することができる。
【0078】
(A4)復調器で受信した受信信号との間の距離が任意の値r1以下となる受信信号点候補を、尤度演算に用いる受信信号点候補として絞り込み、事前情報が大きくなるに従いr1の値を小さくするようにすることもできる。このように構成した場合は、尤度演算に用いる受信信号点候補の絞込みが容易になる。
【0079】
(A5)尤度演算にはメトリック演算が含まれ、メトリック演算値が任意の値r2以下となる受信信号点候補を、尤度演算に用いる受信信号点候補として絞り込み、事前情報が大きくなるに従いr2の値を小さくすることにより、尤度演算に用いる受信信号点候補を少なくするようにすることもできる。このように構成した場合は、尤度演算に用いる受信信号点候補の絞込みが容易になるとともに、尤度演算に用いる受信信号点候補として、より適したものを選択することができる。
【0080】
(A6)事前情報の大きさを、事前情報の相互情報量により判定することもできる。このように構成した場合は、相互情報量を算出するための計算量が大きくなるものの、事前情報量の大きさを正確に見積もることができ、したがって、BICM-ID復号特性の劣化を小さくすることができる。
【0081】
(A7)事前情報の大きさを、事前情報の統計量である分散又は標準偏差又は最大値又は最頻値又は絶対値の平均値により判定することもできる。このように構成した場合は、事前情報の相互情報量により判定するように構成した場合よりも、BICM-ID復号特性の劣化が大きくなるものの、電波伝搬環境の動的変化に対応することができ、送信装置や受信装置の設置場所の変更に容易に対応することができる。また、事前情報の相互情報量により判定するように構成した場合よりも、復調器の演算量を小さくすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0082】
上述した第1の実施形態では、事前情報の相互情報量や統計量を用いて尤度算出に用いる受信信号点候補数を変更する例を説明した。ところで、BICM−IDでは、繰り返し復号処理における繰り返し数が増加するにつれて、復調器と復号器間でやりとりする事前情報の相互情報量が徐々に大きくなるように、復調器と復号器が設計される。そのため、BICM−IDでは、繰り返し回数を用いて事前情報の大きさを見積もることが可能である。
【0083】
第2の実施形態では、事前情報の代わりに、BICM−IDの繰り返し復号処理の回数を用い、この回数に基づいて、尤度算出に用いる受信信号点候補数を変更する。事前情報の代わりにBICM−IDの繰り返し回数を用いる点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0084】
図6は、本発明の第2の実施形態におけるMIMO復調器の構成を示す図である。第2の実施形態における無線通信システムの構成は、
図1(第1の実施形態における無線通信システムの構成)において、MIMO復調器15を、
図6のMIMO復調器60に置き換えたものである。また、MIMO復調器60は、
図2(第1の実施形態におけるMIMO復調器の構成)において、受信信号点候補絞込み部22を、
図6の受信信号点候補絞込み部62に置き換えたものである。
図6のMIMO復調器60の構成において、
図2の構成と同じものには同符号を付し、説明を省略する。
【0085】
第2の実施形態のMIMO復調器60では、受信信号点候補絞込み部62は、受信信号点候補生成部21で生成された複数の受信信号点候補の中から、尤度演算部25での尤度演算に用いる受信信号点候補を絞り込む。このとき、受信信号点候補絞込み部22は、BICM−IDの繰り返し回数と、受信信号点候補生成部21で生成した複数の受信信号点候補と復調器15で受信した受信信号との間の距離とに基づき、前記生成した複数の受信信号点候補の中から、尤度演算に用いる受信信号点候補を絞り込む。
【0086】
例えば、受信信号点候補絞込み部62は、BICM−IDの繰り返し回数に基づき、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数を決定し、受信信号点候補生成部21で生成した複数の受信信号点候補とMIMO復調器60で受信した受信信号との間の距離に基づき、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補を決定する。
【0087】
例えば、BICM−IDの繰り返し回数が大きいほど、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数が少なくなるようにし、また、前記複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離がより近い(距離がより小さい)受信信号点候補を、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補とする。
【0088】
このように受信信号点候補絞込み部62を構成すると、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数が決まっているので、繰り返し復号処理部の演算量を所定値以下に抑えることが容易になる。
【0089】
例えば、前記複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離として、メトリック演算部24におけるメトリック演算値を用いることができる。このように構成すると、尤度演算に用いる受信信号点候補として、より適した受信信号点候補を絞り込むことができる。その理由は、メトリック演算値は、事前情報による受信信号点候補の確率を含むからである。
【0090】
あるいは、受信信号点候補絞込み部62は、受信信号点候補生成部21が生成した複数の受信信号点候補の中から、MIMO復調器60で受信した受信信号との間の距離が任意の値r1以下となる受信信号点候補を、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補として絞り込み、BICM−IDの繰り返し回数が大きくなるに従い前記r1の値を小さくするよう構成することもできる。
【0091】
このように受信信号点候補絞込み部62を構成すると、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数は、BICM−IDの繰り返し回数が大きいときの方が、BICM−IDの繰り返し回数が小さいときよりも少なくなる。また、尤度演算に用いる受信信号点候補の絞込みを容易に行うことができる。
【0092】
あるいは、受信信号点候補絞込み部62は、受信信号点候補生成部21が生成した複数の受信信号点候補の中から、メトリック演算部24におけるメトリック演算値が任意の値r2以下となる受信信号点候補を、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補として絞り込み、BICM−IDの繰り返し回数が大きくなるに従い前記r2の値を小さくするよう構成することもできる。
【0093】
このように受信信号点候補絞込み部62を構成すると、尤度演算部25での演算に用いる受信信号点候補の数は、BICM−IDの繰り返し回数が大きいときの方が、BICM−IDの繰り返し回数が小さいときよりも少なくなる。また、尤度演算に用いる受信信号点候補の絞込みが容易になるとともに、尤度演算に用いる受信信号点候補として、より適したものを選択することができる。
【0094】
以上説明したように、第2の実施形態では、受信信号点候補の絞り込みは、繰り返し回数の増加に従って、尤度演算に用いられる受信信号点候補の数が減少するように行われる。そして、絞り込まれた受信信号点候補を用いて尤度演算が行われ、第1の外部情報60b(第1の実施形態の外部情報15bに相当)が出力される。
【0095】
第2の実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
【0096】
(B1)繰り返し復号処理部の復調器が、受信信号点候補を複数生成し、繰り返し復号処理の処理回数と、前記生成した複数の受信信号点候補と受信信号との間の距離とに基づき、前記生成した複数の受信信号点候補の中から、尤度演算(第1の外部情報作成)に用いる受信信号点候補を絞り込むように構成したので、繰り返し復号処理部の演算量を削減することができる。また、事前情報を用いた場合(第1の実施形態)よりも、BICM-ID復号特性の劣化が大きくなる可能性があるものの、簡単なハードウェア構成で復調器を実現することができ、また、復調器の演算量を小さくすることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0097】
第3の実施形態では、第1の実施形態又は第2の実施形態の演算量削減方法を用いて、MIMO復調器のハードウェア規模を削減する手法を提供する。
【0098】
図1に示すBICM−IDの繰り返し復号処理部19は、同一の処理を繰り返し行うため、単一のハードウェアで、任意の回数の繰り返し復号処理を実行できる。しかしながら、繰り返し復号処理を単一のハードウェアで行う場合は、繰り返し復号処理による遅延が、繰り返し復号処理の回数分発生する。この遅延を抑制するうえで、同一のハードウェアを並列に複数段実装し、BICM−ID処理のスループットを向上させる構成が有効である。第3の実施形態では、複数の繰り返し復号処理部19を用い、BICM−ID処理を並列に行う構成において、MIMO復調器全体の回路規模を削減する方法を提供する。
【0099】
図7は、本発明の第3の実施形態におけるBICM-IDのハードウェア構成を示す図である。
図7の繰り返し復号処理部19は、N段の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)の入出力部を接続し、パイプライン化して並列に実装することにより構成されている。Nは2以上の整数である。
図7の例では、各段の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)には、それぞれ、第2の実施形態のMIMO復調器60(1)〜60(N)が実装されている。
【0100】
また、
図7の例では、各段の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)は、それぞれ、繰り返し復号処理部19全体のBICM−ID処理に必要とされる繰り返し処理のうち、一部の処理を担当するように構成されている。すなわち、繰り返し復号処理部19全体で行われるBICM−ID処理の回数をNitrとした場合、初段の繰り返し復号処理部19(1)では、1〜Nitr1回の繰り返し復号処理、つまり、BICM-ID全体の繰り返し復号処理のうち、初回からNitr1回目までの繰り返し復号処理が行われる。2段目の繰り返し復号処理部19(2)では、(Nitr1+ 1)回目からNitr2回目までの繰り返し復号処理が行われる。N段目の繰り返し復号処理部19(N)では、((NitrN−1) + 1)回目からNitr回目までの繰り返し復号処理が行われる。
【0101】
各段の繰り返し復号処理部19は、自段が分担する繰り返し復号処理回数を自段の記憶部に記憶しておき、自段の繰り返し復号処理回数が記憶部に記憶した設定値に達すると、自段のインタリーバ18の出力である第4の外部情報18aを、次段の繰り返し復号処理部19のMIMO復調器60へ伝送する。
【0102】
例えば、初段の繰り返し復号処理部19(1)は、4ビットの受信信号(b0〜b3)で構成される符号語C
1に対して、1〜Nitr1回の繰り返し復号処理を行い、自段の繰り返し復号処理回数が記憶部に記憶した設定値(Nitr1)に達すると、インタリーバ18(1)の出力である第4の外部情報18a(1)を、次段(2段目)の繰り返し復号処理部19(2)のMIMO復調器60(2)へ伝送する。
【0103】
2段目の繰り返し復号処理部19(2)は、前段(初段)からの第4の外部情報18a(1)を受信すると、第4の外部情報18a(1)を事前情報として、符号語C
1に関する(Nitr1+ 1)回目からNitr2回目までの繰り返し復号処理を行い、自段の繰り返し復号処理回数が記憶部に記憶した設定値(Nitr2−Nitr1)に達すると、インタリーバ18(2)の出力である第4の外部情報18a(2)を、次段の繰り返し復号処理部19のMIMO復調器60へ伝送する。
【0104】
このようにして、各段の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)において、順次、符号語C
1に関する繰り返し復号処理が行われる。そして、最終段(N段目)の繰り返し復号処理部19(N)では、(NitrN−1 + 1)回目からNitr回目までの繰り返し復号処理が行われ、符号語C
1を構成する受信信号(b0〜b3)に関する最終的な復号器出力17a(N)が出力される。
【0105】
図8は、第3の実施形態において、繰り返し復号処理部をパイプライン化した際の信号処理の流れを示す図である。
図8において、初段の繰り返し復号処理部19(1)では、繰り返し復号処理の処理単位となる符号語C
1に対し、1〜Nitr1回の繰り返し復号処理を行い、符号語C
1の繰り返し復号処理が終了すると、次の符号語C
2に対し、1〜Nitr1回の繰り返し復号処理を行う。このようにして、繰り返し復号処理部19(1)では、符号語C
1、C
2・・・に対し、順次、1〜Nitr1回の繰り返し復号処理を行う。
【0106】
2段目の繰り返し復号処理部19(2)では、繰り返し復号処理部19(1)で符号語C
1の繰り返し復号処理が終了すると、符号語C
1に対し、(Nitr1+ 1)回目からNitr2回目までの繰り返し復号処理を行う。
【0107】
このように、繰り返し復号処理部19はパイプライン化されており、2段目の繰り返し復号処理部19(2)が1番目の符号語C
1に対し、(Nitr1+ 1)回目からNitr2回目までの繰り返し復号処理を行っているとき、これと並行して、初段の繰り返し復号処理部19(1)では、2番目の符号語C
2に対し、1〜Nitr1回までの繰り返し復号処理を行う。同様に、2段目の繰り返し復号処理部19(2)が2番目の符号語C
2に対し、(Nitr1+ 1)回目からNitr2回目までの繰り返し復号処理を行っているとき、これと並行して、初段の繰り返し復号処理部19(1)では、3番目の符号語C
3に対し、1〜Nitr1回までの繰り返し復号処理を行う。
【0108】
このようにして、各段の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)において、並行して、繰り返し復号処理が行われる。したがって、各段の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)において、少なくとも、各段の受信信号点候補絞込み部62の処理量を削減、つまり、受信信号点候補絞込み部62のハードウェア規模を削減することができる。
【0109】
以上説明したように、第3の実施形態では、N個の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)は、それぞれ、受信装置で行われるn(n:2以上の整数)回の繰り返し復号処理を分担して行うように、それぞれの繰り返し復号処理部における繰り返し復号処理の順番と回数とが設定される。そして、第1の繰り返し復号処理部に設定された回数の繰り返し復号処理を終了すると、第1の繰り返し復号処理部から出力された事前情報を、第1の繰り返し復号処理部の次に繰り返し復号処理を行う第2の繰り返し復号処理部へ出力する。第2の繰り返し復号処理部は、第1の繰り返し復号処理部から出力された事前情報を、第2の繰り返し復号処理部の復調器へ入力することにより、繰り返し復号処理を行う。
【0110】
第3の実施形態によれば、少なくとも次の効果を得ることができる。
【0111】
(C1)事前情報量の大きさを繰り返し復号処理の回数で見積もることが可能であり、上記のN個の繰り返し復号処理部19(1)〜19(N)は、繰り返し復号処理部19(N)に近くなるに従って、つまり、後段になるに従って、尤度演算に用いる受信信号点候補数を削減したハードウェアで実現可能である。したがって、パイプライン構成の繰り返し復号処理部19のMIMO復調器60(1)〜60(N)は、後段になるほどハードウェア規模を削減することができ、延いては、BICM−ID処理全体のハードウェア規模を削減することが可能となる。
【0112】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0113】
上述の第1〜第3実施形態では、送信側の変調器と受信側の復調器として、それぞれMIMO変調器とMIMO復調器を用いたが、本発明は、MIMO変調器以外の変調器やMIMO復調器以外の復調器にも適用可能である。