特許第6190950号(P6190950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベース4 イノベーション リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6190950-液滴保存方法 図000002
  • 特許6190950-液滴保存方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190950
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】液滴保存方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170821BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20170821BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170821BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   C12Q1/68 Z
   C12Q1/68 A
   C12M1/00 A
   C12M1/34 Z
   !C12N15/00 A
【請求項の数】26
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-518578(P2016-518578)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公表番号】特表2016-521558(P2016-521558A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】GB2014000232
(87)【国際公開番号】WO2014199113
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】1310584.6
(32)【優先日】2013年6月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510060453
【氏名又は名称】ベース4 イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン アレクサンダー フレイリング
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−534653(JP,A)
【文献】 国際公開第03/080861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
C12M 1/00−1/42
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その少なくともいくつかが1つ以上の単一ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドならびに液滴流体を含む、液滴のストリームの保存方法であって、各液滴を、ノズルおよび出口オリフィスを備える液滴送達システムから、平坦なシートまたはプレートからなる基板の表面上に対応する特有の位置で連続的に印刷するステップにより特徴づけられ、(1)液滴のストリームが漸進的加ピロリン酸分解により分析物からヌクレオチドの順序づけられたストリームを生成するステップおよび各ヌクレオチドを対応液滴中に捕捉するステップを含むプロセスにより調製されること、(2)前記液滴送達システムおよび平坦な前記基板が、少なくとも1つの空間次元において互いに対して可動であること、をさらに特徴とする、方法。
【請求項2】
前記液滴が、表面上に、それらの合体を防止する条件下で導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板の表面が、液滴が導入される複数のウェル、溝、チャネル、ピンプル、ディンプル、穴、柱または他の突起を備えることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面が、液滴流体と非混和性である液体のフィルムでコーティングされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フィルムを備える液体が、液滴流体より密度が低いことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フィルムを備える液体の粘度により、液滴が、それを通る基板の表面上まで移動するのを可能にすることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記液滴流体が水または水性緩衝液であり、フィルムを備える液体がフッ化炭素油、炭化水素油、シリコーン油または熱もしくは紫外線の作用により硬化させて固体透明マトリックスを形成することができる液体モノマーもしくはポリマーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基板の表面の少なくとも一部分が、残部より比較的に親水性となるように構成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記平坦なシートまたはプレートの表面が、前記出口オリフィスに対向して並置されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記液滴送達システムが、断面プロファイルにおいて円形以外である出口オリフィスを備えるノズルを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記液滴送達システムおよび前記基板の表面が、前記平坦なシートまたはプレートの平面を画定する次元の両方において互いに対して可動であることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記液滴送達システムおよび前記基板の表面の相対動作が、マイクロプロセッサおよびサーボモータにより補助される機構により制御されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロプロセッサが、各液滴の順序および位置を保存するメモリを備えることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記液滴が、液滴送達システムまで、その少なくともいくつかがヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含有する液滴のストリームを含有するキャリア媒体の形態で送達されることを特徴とする、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリア媒体および前記フィルムを備える液体が、同じであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液滴中に含有されるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが1つ以上のフルオロフォアで標識されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記液滴のストリームが、前駆体ポリヌクレオチド分析物中のヌクレオチドの配列のそれに対応するヌクレオチド順序を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記プロセスが、各液滴を処理して、捕捉後に酵素分解される、不活性状態のフルオロフォアで多重に標識された捕捉分子でヌクレオチドを捕捉するさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記プロセスが、各液滴を処理して、それが含有するヌクレオチドに特徴的な標識アンプリコンを生成するさらなるステップを含むことを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記アンプリコンが、ポリメラーゼ連鎖反応、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅およびローリングサークル増幅からなる群から選択される方法により生成されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(1)前記液滴の少なくともいくつかが、分析物から誘導される単一ヌクレオチドを含有し、(2)前記液滴が、基板の操作表面まで、請求項18〜20に記載の追加のステップの少なくとも1つが行われる前に送達されることを特徴とする、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
a.複数のウェル、溝、チャネル、ピンプル、ディンプル、穴、柱または他の突起からなる特有の液滴受容位置を備える操作表面を有する、平坦なシートまたはプレートからなる基板;
b.漸進的加ピロリン酸分解によりポリヌクレオチド分析物から単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームを生成するステップを含む微小液滴のストリームを生成するための手段;
c.その少なくともいくつかが1つ以上の単一ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドを含む、微小液滴のストリームを、前記液滴受容位置に送達するためのノズルおよび出口オリフィスを備える液滴送達システム;
d.任意でキャリア媒体中の前記微小液滴のストリームを、前記液滴送達システムの入口まで送達するための手段;ならびに
e.前記基板および前記液滴送達システムの一方または両方を前記操作表面の平面において他方に対して移動させるための、位置決め機構
を備えることにより特徴づけられる微小液滴保存装置。
【請求項23】
前記微小液滴のストリームを液滴送達システムまで送達するための手段が、マイクロ流体経路を備えることを特徴とする、請求項22に記載の微小液滴保存装置。
【請求項24】
前記操作表面を画定する平面における、所定の微小液滴が送達される正確な位置を保存する手段をさらに備えることを特徴とする、請求項23または請求項24に記載の微小液滴保存装置。
【請求項25】
前記操作表面が、使用前に液体フィルムで予備コーティングされていることを特徴とする、請求項22〜24のいずれか1項に記載の微小液滴保存装置。
【請求項26】
前記液滴送達システムを含有するハウジング、ならびに前記基板を受容および排出するように構成されたチャンバーを備える、請求項22〜25のいずれか1項に記載の微小液滴保存装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を基板の表面上に保存する方法に関する。とくに、そのそれぞれが1つ以上の単一ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含有する液体液滴の保存に関する。本方法は、自然発生または合成DNAまたはRNAに由来するポリヌクレオチド分析物の配列決定において生成され得るような非常に多数の微小液滴の保存および特徴分析に有用である。
【背景技術】
【0002】
遺伝物質の次世代配列決定は、ますます高速化する配列決定装置の販売に伴い配列決定の単価が下落しているように、すでに一般に生物科学、とくに医学に顕著な影響を与えている。このように、1つのこうした装置では、二本鎖DNA分析物はまず複数のより小さなポリヌクレオチド断片に分解され、そのそれぞれは一本鎖の両端で一本鎖第1オリゴヌクレオチドを不対アデニン塩基へのハイブリダイゼーションによりその補体の両端に結合することができるようにまずアデニル化される。こうして得られる処理断片は次にサイズ選択され、それ自体が第1の配列補体である結合一本鎖第2オリゴヌクレオチドで覆われた表面上で捕捉され、実際にはさらなるハイブリダイゼーションにより表面結合二本鎖断片のライブラリを形成することができる。その後のクラスタリングステップでは、これらのライブラリ構成要素は次に、未使用の第2オリゴヌクレオチドを用いる伸長および等温架橋反応を用いて表面上で何百万回もクローン的に増幅される。これは、実際には、その鎖の1つによって表面に結合したポリヌクレオチド断片の密集体をもたらす。各断片の非結合相補鎖は次に配列決定用の結合一本鎖断片を残して除去される。配列決定段階では、これらの一本鎖断片のそれぞれはプライムされ、ポリメラーゼ連鎖反応およびジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)形態のDNAの4つの特徴的なヌクレオチド塩基の混合物を用いる伸長によりその相補鎖が再形成される。各ddNTPタイプは異なる波長で蛍光する異なるフルオロフォアで標識される部分で末端ブロックされる。伸長反応はここで3ステップのサイクルの形態をとる;第1に、適切なddNTPが伸長鎖に結合され;第2に、これが含有するヌクレオチド塩基が試料を照射し、蛍光の波長を検出することにより識別され;最後に、末端ブロックおよびその関連フルオロフォアが除去され、次の伸長事象の発生を可能にする。この手段により、相補鎖の配列を塩基ごとに形成することができる。この方法は高度に自動化することができ、高精度の配列リードを生成することができるが、その処理速度は伸長サイクルの速度により制限されることが理解されるだろう。このように、実際には、この技術の使用は比較的短いポリヌクレオチド断片の並列処理およびそれから得られるさまざまなリードからの全配列のアセンブリを含む傾向がある。これは本質的にコンピュータ処理の複雑さおよび潜在的なエラーの発生につながり得る。
【0003】
より最近では、直接配列決定方法の開発の努力がなされている。例えば、国際公開第WO2009/030953号は、とくに一本または二本鎖ポリヌクレオチド試料(例えば自然発生RNAまたはDNA)中のヌクレオチド塩基または塩基対の配列がこれをナノポアの開口部内にまたはこれに隣接して並置されたプラズモンナノ構造を備えるナノ多孔質基板を通して転位させることにより読まれる、新規高速配列決定装置について開示する。この装置では、プラズモンナノ構造は、その中で(任意で標識された)各ヌクレオチド塩基が順に光子を入射光との相互作用により特徴的に蛍光またはラマン散乱させるように誘導される、検出窓(本質的には電磁場)を画定する。こうして生成された光子はその後遠隔検出され、多重化され、その情報内容がポリヌクレオチドに関連するヌクレオチド塩基配列に特徴的であるデータストリームに変換される。この配列はその後、それと一体化したマイクロプロセッサまたはそれに付属した補助計算装置中にプログラムされた対応するソフトウェアにおいて具現化された計算アルゴリズムを用い、データストリームから回収することができる。プラズモンナノ構造およびそれらの関連共鳴特性の使用についてのさらなる背景は、例えばAdv.Mat.2004,16(19)pp.1685−1706を参照することができる。
【0004】
ポリヌクレオチドの高速配列決定の別の装置は、例えば、米国特許第US6627067号、第US6267872号および第US6746594号に記載される。そのもっとも単純な形態では、この装置はプラズモンナノ構造の代わりに電極を用い、基板上またはナノポアの開口部中もしくは周辺の検出窓を画定する。次に電極に異なる電位が印加され、その間を流動するイオン性媒体の電気特性の変化が、ナノポアを通るポリヌクレオチドおよび関連電解質の電気泳動的転位の結果として、時間の関数で測定される。この装置では、さまざまな個別のヌクレオチド塩基が検出窓を通過する際、それらはこれを連続的に閉塞および開放する「事象」を引き起こし、電流または抵抗の特徴的な変動をもたらす。これらの変動はその後上述したような分析に適したデータストリームを生成するのに用いられる。
【0005】
安定な液滴ストリーム、とくに微小液滴ストリームの生成は、分子生物学においてすでに用途を有するもう1つの技術開発分野である。例えば、米国特許第US7708949号は安定な油中水滴を生成する新規マイクロ流体方法を開示し、例えば米国特許第US2011/0250597号は1つの核酸テンプレート(一般的にはポリヌクレオチドDNAまたはRNA断片)およびポリメラーゼ連鎖反応を用いてテンプレートを増幅させることができる複数のプライマー対を含有する微小液滴を生成するためのこの技術の利用について記載する。当技術分野に関する他の特許出願としては一般的には日本国特許第JP2004/290977号、第JP2004/351417号、米国特許第US2012/0122714号、第US2011/0000560号、第US2010/01376163号、第US2010/0022414号および第US2008/0003142号が挙げられる。
【0006】
米国特許第US6277334号は、第1および第2液滴が、第1および第2液滴中に含有されるヌクレオチド間の反応を発生させることができる反応部位を備える多孔質反応支持体を通過した後、反応ウェル中に導入される装置について記載する。しかしながら、液滴流体および前駆体ポリヌクレオチド分析物から誘導される単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームから液滴のストリームを生成することについての言及はない。
【0007】
米国特許第US2004/0197817号は、ポリヌクレオチドを含有する液滴を基板上に配置することにより基板上のポリヌクレオチドのアレイを製造するための装置に関する。この装置は同様に、配列決定情報の保存を目的として液滴流体および前駆体ポリヌクレオチド分析物から誘導される単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームからなる液滴のストリームを印刷することは対象にしていない。
【0008】
米国特許第US2010/0015614号は、微小液滴ポリメラーゼ連鎖反応増幅および続いてキャピラリー電気泳動分析を用いる生物学的材料のチップベース選別、増幅および特徴分析のための装置について記載する。装置は、例えばバクテリアまたはウイルスの細胞に由来するライセートを含有する微小液滴を用いて充填された1つ以上のマイクロリアクタを備える平坦な基板を含む。しかしながら、液滴流体および前駆体ポリヌクレオチド分析物から誘導される単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームから液滴のストリームを生成することについては教示されていない。
【0009】
欧州特許第EP1933138号は、液滴印刷方法を用いてその上に複数の従来の生物学的プローブ(オリゴヌクレオチド等)を配置することによる生物学的アッセイ基板アレイの製造方法に関する。繰り返すが、液滴流体および前駆体ポリヌクレオチド分析物から誘導される単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームから液滴のストリームを生成することについての教示はない。
【0010】
近年、我々の先願、英国特許第GB1217772.1号、第GB1306444.9号および第GB1306445.6号において、我々は微小液滴の対応ストリーム中に1つずつ捕捉することができるヌクレオチドの順序づけられたストリームを生成するポリヌクレオチドの漸進的加ピロリン酸分解またはエキソヌクレアーゼ分解を含む新規配列決定方法について記載した。その後、各液滴はそれがもともと含有した特定のヌクレオチドを明らかにするように化学的および/または酵素的に操作することができる。しかしながら、こうした方法により潜在的に生成される何百万の液滴の分析は多くの場合、そこで起こるさまざまな化学および/または生物反応が完了まで進む間、液滴をある期間保存する必要がある。以前、保存を目的として、我々は、これを通って液滴ストリームが流動し、液滴を厳密な順序で捕捉および保持するように構成された、チャンバーを開示した。しかしながら、こうしたチャンバーは、分析されるポリヌクレオチドが比較的短い場合適切であるが、その使用は、より長いポリヌクレオチドに適用される場合、多数の液滴はひいては微小液滴ストリームの流動を制限するチャンバーにおける背圧の望ましくない増強を急速に引き起こすので問題となる。
【発明の概要】
【0011】
我々はしたがって、実際には液滴を基板の表面上に別々の位置で保存するステップを含み、それらを分析の準備ができるまで保持することができる、代替方法を開発した。よって、本発明によると、その少なくともいくつかが1つ以上の単一ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドならびに液滴流体を含む、液滴のストリームの保存方法であって、各液滴を基板の表面上に対応する特有の位置で連続的に導入するステップにより特徴づけられ、液滴のストリームが漸進的加ピロリン酸分解またはエキソヌクレアーゼ分解により分析物からヌクレオチドの順序づけられたストリームを生成するステップおよび各ヌクレオチドを対応液滴中に捕捉するステップを含むプロセスにより調製されることをさらに特徴とする方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【0012】
その上に液滴が保存される基板は、原則として、ガラス、ポリマー、複合体および金属を含むいずれかの不活性材料で製造することができる。1つの実施形態において、基板は、とくにの可視光線または近紫外線の周波数で電磁放射線を透過させる、例えばガラスまたは透明なプラスチックである。別の実施形態において、基板は、こうした電磁放射線を反射することができる。また別の実施形態において、基板は、液滴送達システムの下に並置された操作表面を有するシートである。この実施形態において、液滴送達システムのすぐ下の表面は、平坦で輪郭が形成されていないもの、または液滴の保持を促進するように構成もしくは成形された、溝、チャネル、ウェル、ピンプル、ディンプル、穴、柱および他の突起ような構造を備えるもののいずれかとするができる。この1つの例において、構造は、一般的には等間隔アレイとして配置される操作表面における複数のウェル、溝またはチャネルを含む。これらのウェル、溝またはチャネルは、液滴を少なくとも部分的に収容するのに十分に大きく、それらを操作表面に平行な方向で固定する限り、いずれの形状とすることもできる。1つの実施形態において、ウェルは実質的には半球状であり、それらの内面は光反射材料でコーティングされる。
【0013】
別の好適な実施形態において、基板の操作表面の部分は、それへの液滴の付着を向上させるように化学または物理処理される。1つの例において、これは表面の部分を親水性または残部より比較的に親水性にすることにより;例えば、基板がガラスシートである場合、液滴が送達される位置で表面をプラズマ処理またはエッチングして表面ヒドロキシルまたは水酸化物イオン基を生成することにより、達成することができる。別の実施形態において、操作表面の部分は、それらを疎水性または他の部分より比較的に疎水性にするように処理される。よって、操作表面は、そうでなければ疎水性表面上に親水性領域のパターンまたはアレイを備え得る。こうした場合、親水性または比較的により親水性の部分は、上記の表面構造のいくつかまたはすべてに対応し得る。
【0014】
別の例において、操作表面の部分は、化学的に機能化され、またはそれらを粘着性にする親水性ポリマーコーティングを備える。この実施形態において、コーティングは、適切には上記タイプの電磁放射線を透過または反射する。別の好適な実施形態において、操作表面は、上記タイプの構造を備え、これらの構造の少なくともいくつかは、これらの標的位置のみでの液滴付着を向上させるように選択的に化学または物理処理される。
【0015】
操作表面に適用される場合、およびある程度これに適用される間、液滴は蒸発する傾向がある。これは、とくに微小液滴が用いられる場合、それらの蒸発性表面積対内部容積比が比較的に高いので、問題である。よって、液滴は基板のコーティングされていない操作表面に直接適用することができるが、特定の状況において、操作表面は周囲温度で本質的には不揮発性である液体のフィルムでコーティングされることが好ましいだろう。適切には、このフィルムの厚さは、その保存される最終状態で液滴が液体により全体的にカプセル化されるように、液滴の直径より大きくなければならない。これを促進するため、液体は液滴流体より密度が低く、液滴が重力の影響下で表面上へフィルムを急速に通過するのに十分に低い粘度を有することが好ましい。液滴の完全性を保存するため、フィルムを備える液体は液滴流体と実質的または完全に非混和性でなければならない。液滴流体は一般的には水性媒体(例えば水または水性緩衝液)であるので、液体はよって好適には疎水性であるもの;例えばフッ化炭素、炭化水素またはシリコーン油である。別の実施形態において、液体は、例えば熱、紫外線またはマイクロ波放射線への曝露により、硬化させて固体透明マトリックスを製造することができるモノマーまたはポリマーである。この実施形態は、液滴がそこでマトリックス中に捕捉され、それらが固定され、基板を輸送、操作および長期保存しやすくするという利点を有する。
【0016】
液滴送達システムについて、これは基板の操作表面に対してシステム自体においてまたは基板上のいずれかで隣接する液滴のいかなる相当程度の衝突も起こらないように設計または配置される。1つの実施形態において、液滴送達システムは液滴のそれと同様の穴および出口オリフィス径を有するノズルを備える。この実施形態の1つの好適な例において、液滴、適切には微小液滴の出口オリフィスからの排出およびそれへの液体供給を促進するため、出口オリフィスでのノズルの穴は断面プロファイルにおいて円形以外、例えば三角形、正方形、長方形、正多角形、楕円形、等である。この手段により、特定の状況下で液滴を液滴送達システムから後述するタイプのキャリア媒体の必要なく分配することが可能となり得る。別の実施形態、および液滴が微小液滴である場合において、それらは適切にはキャピラリーチューブのようなマイクロ流体経路により出口オリフィスに送達される。このマイクロ流体経路の内面はこれへの液滴の付着を防止するため適切には疎水性にされる。液滴送達システムから現れた後、液滴は重力下で液体フィルムを通って基板の表面上に所望の位置で落下する。蒸発をさらに最小化するため、1つの実施形態において、液滴送達システムの出口オリフィスは実際にこれに接触することなく液体フィルムの表面のできる限り近くに配置することが好ましい。別の実施形態において、出口オリフィスは液体フィルムの表面下に浸漬され、好適には出口オリフィスでのノズルの穴は上記のような非円形断面を有する。
【0017】
異なる液滴を基板上の異なる特有の位置まで送達することを可能にするため、操作表面および液滴送達システムは互いに対して可動であるように構成される。これを達成するため、これら2つの構成要素のいずれか一方を固定された他方に対して移動させることができ、または両方を可動にすることができる。適切には、可動であるのは基板であり、固定されるのは液滴送達システムである。少なくとも1つ、好適には2つの空間次元において起こる、この相対動作は操作表面のそれと平行な平面において行われるべきである。一般的にはこの動作は、1つ以上のサーボモータおよびマイクロプロセッサにより制御される基板または液滴送達システムを支持する可動プラットフォームのような既知の方法を行われるだろう。適切にはマイクロプロセッサは位置センサーならびに液滴の順序および位置をその後の回収のために保存することができるメモリをさらに有するだろう。
【0018】
本発明の方法において用いられる液滴は適切には微小液滴、すなわち50ミクロン未満、好適には20ミクロン未満の直径を有する液滴である。それらの形状は一般的には用いられる装置の正確な設計によって決まり、さまざまな時間で、例えば、球形、扁平楕円形または楕円形であってもよい。これらの液滴の少なくともいくつかは1つ以上の単一ヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドを含有してもよい。一般的にはこれらのヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドはそれ自体が検出可能な状態の1つ以上の共通の標識を含むだろう。適切にはこれらの標識に関連した検出特性は蛍光であり、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに付着した1つ以上のフルオロフォアに起因するだろう。好適には液滴流体は水性媒体である。
【0019】
ヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは適切には前駆体ポリヌクレオチド分析物、例えば自然発生または合成DNAまたはRNAの断片から、それを構成する単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームを生成する分析物の漸進的加ピロリン酸分解またはエキソヌクレアーゼ分解を含むプロセスにより生成される。1つの実施形態において、ストリーム中の単一ヌクレオチドの順序は分析物中のヌクレオチドの配列に対応する。別の実施形態において、プロセスがDNAまたはRNA分析物の漸進的加ピロリン酸分解を含む場合、生成される単一ヌクレオチドのストリームはそれぞれデオキシリボヌクレオシド三リン酸またはリボヌクレオシド三リン酸のストリームを含む。また別の実施形態において、DNAまたはRNA分析物の漸進的エキソヌクレアーゼ分解が起こった場合、単一ヌクレオチドのストリームはそれぞれデオキシリボヌクレオシド一リン酸のストリームまたはリボヌクレオシド一リン酸のストリームのいずれかを含む。これらの場合のそれぞれにおいて、加ピロリン酸分解またはエキソヌクレアーゼ分解は適切には、解放されたヌクレオチドが反応ゾーンから連続的に除去されるように、流動水性媒体において行うことができる。その後、および1つの実施形態において、個別のヌクレオチドを含有する流動ストリームは非混和性キャリア媒体中に懸濁させた水性液滴のストリームに変換してもよく;各液滴は空または単一ヌクレオチド含有のいずれかである。別の実施形態において、全プロセスは、この液滴のストリーム中の単一ヌクレオチドの順序が分析物中のこれらのヌクレオチドの順序およびしたがってもとの配列に対応するように行われる。その後、ストリーム中の各液滴には、例えば必要な化学物質または酵素をその中に液滴流におけるさまざまな点で導入することにより、1つ以上の化学的または生物学的変換を行うことができる。このプロセスの1つの実施形態において、各液滴はそれが含有するヌクレオチドを、フルオロフォアで多重に標識された捕捉分子で捕捉するように処理される。ここで、フルオロフォアは、例えばクエンチャをこれに近接してさらに含むことにより、または相互フルオロフォアクエンチにより、捕捉分子が未使用状態である場合それらが検出不能であるように、捕捉分子上に配置される。その後、ヌクレオチドが捕捉された場合、「使用済み捕捉分子」は酵素分解を受けやすくなり、これは一連の標識された遊離ヌクレオチドを解放し、それに関連した蛍光を次に検出することができる。プロセスの別の実施形態において、各液滴は、これがもともと含有したヌクレオチドに特徴的な標識アンプリコンを生成するように処理される。この場合において、ヌクレオチドは好適には捕捉され、得られる使用済み捕捉分子は増幅され、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅またはローリングサークル増幅を用い、複数の対応アンプリコンが生成される。その後アンプリコンのそれぞれは分子ビーコン等を用いて蛍光標識することができる。これらの方法についてのさらなる詳細は上で挙げた我々の各種特許出願において見ることができ、そのそれぞれの主題は参照により組み入れられる。
【0020】
単一ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオシド三リン酸である場合とくに有用である1つの特定の実施形態において、捕捉分子は、その少なくとも1つがフルオロフォアおよび任意でクエンチャで標識された、iおよびj形状のオリゴヌクレオチドの対を含む。単一ヌクレオチドの存在下、これらの対は同様に標識された二本鎖オリゴヌクレオチド捕捉分子に組み立てることができる。別の実施形態において、この標識された捕捉分子は、例えば、制限エンドヌクレアーゼを用いて認識部位で切断され、生成物をもたらし、順位にその後のエキソヌクレアーゼ分解を行って捕捉分子から誘導された一連の標識単一ヌクレオチドを放出することができ、その関連した蛍光をその後検出することができる。1つの実施形態において、標識されるのは捕捉分子対のi形状の構成要素であり、別の実施形態において、標識されるのはj形状の構成要素であり、また別の実施形態において、両方の構成要素が標識される。最後の実施形態において、捕捉分子は、その内容、およびとくに捕捉分子の構造的特徴が、本明細書に参照により組み入れられる、我々の特許出願第PCT/GB2013/052594号(第WO2014/053853号として公開)および第PCT/GB2013/052595号(第WO2014/053854号として公開)において開示される各種システムの1つ以上を含む。
【0021】
液滴は、任意でキャリア媒体中に懸濁させることができる。キャリア媒体は、適切には液滴流体と非混和性であり、好適には液体フィルムと同じ材料で構成され、または少なくともそれらは混和性である。1つの実施形態において、液体フィルムは、液滴自体と同時に液滴送達システムを通して排出されるキャリア媒体により形成される。このさらなる実施形態において、もとのキャリア媒体は、液滴送達システム中またはそのアップストリームのいずれかの点で、液滴を分析する際により有利な媒体;例えばそれ自体が蛍光の影響を受けにくいキャリアで置き換えてもよい。
【0022】
別の実施形態において、ポリヌクレオチド分析物からのもとの単一ヌクレオチドを含有する液滴は、まず操作表面まで送達された後、上述したさまざまな化学的および生物学的変換を行うのに必要なさまざまな捕捉分子、化学物質および酵素で処理される。この場合において、必要な捕捉分子、化学物質および酵素は、送達された液滴に、例えば、それへの直接注入および/またはこれらの物質を含有するさらなる液滴のすでに送達された液滴への合体が起こり得る条件下での添加により、添加することができる。
【0023】
基板が液滴で充填された後、これは、液滴の内容を調査するような時間まで保存することができる。内容をそれらが放射する蛍光を測定することにより分析する場合、これは、例えば、各液滴に順に、例えば、可動アセンブリ上に載置されたレーザーからの焦点内電磁放射線源を照射し、その後光子検出器を用いて1つ以上の特徴的な周波数でのそれぞれの蛍光放射を測定することにより行うことができる。この手段により、光子検出器は、ポリヌクレオチド分析物の配列に特徴的な信号を生成することができ、これは、次にコンピュータ分析のためマイクロプロセッサまたはスタンドアローン型PCに供給することができる。
【0024】
本発明の方法は、
・操作表面を有する基板;
・漸進的加ピロリン酸分解またはエキソヌクレアーゼ分解によりポリヌクレオチド分析物から単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームを生成するステップを含む、微小液滴のストリームを生成するための手段;
・その少なくともいくつかが1つ以上のヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドを含有する、微小液滴のストリームを、操作表面の対応する特有の位置上まで送達するためのノズルおよび出口オリフィスを備える液滴送達システム;
・任意でキャリア媒体中の微小液滴のストリームを、液滴送達システムの入口に送達するための手段;ならびに
・基板および液滴送達システムの一方または両方を操作表面の平面において他方に対して移動させるための、位置決め機構
を備えることにより特徴づけられる微小液滴保存装置を用いて有利に行うことができる。
【0025】
適切には、本発明の装置において用いられる基板は、操作表面が液滴送達システムの出口オリフィスに対向して並置された、平坦な表面、例えば平坦なシートまたはプレートからなる。好適には、基板、およびその操作表面は、上で挙げた実施形態の1つ以上に従って設計され、適切には、固定または可動プラットフォームのいずれかに載置される。1つの実施形態において、操作表面は、使用前に上述したような液体フィルムで予備コーティングされる。同様に、液滴送達システムは、上で挙げた実施形態の1つ以上に従って設計され、適切には、固定または可動プラットフォームのいずれかに載置される。1つの実施形態において、基板を支持するプラットフォームは、可動であり、液滴送達システムを支持するプラットフォームは、固定される。別の実施形態において、基板を支持するプラットフォームは、固定され、液滴送達システムを支持するプラットフォームは、可動である。また別の実施形態において、両方のプラットフォームは、互いに対して可動である。プラットフォーム自体は、操作表面の平面を画定する次元の一方または両方において可動であってもよい。
【0026】
微小液滴のストリームを液滴送達システムまで送達するための手段は、適切には、液滴送達システムの入口に直接的または間接的に取り付けられたマイクロ流体経路の1つまたはネットワークで構成される。適切には、マイクロ流体経路は、微小液滴を液滴送達システムまで上述したタイプの非混和性キャリア媒体中に分散させた微小液滴のストリームの形態で送達するように構成される。1つの実施形態において、マイクロ流体経路は、(一般的には水性)液滴流体をキャリア媒体中に排出させることができる液滴生成オリフィスにより微小液滴が生成される、第1ゾーン;例えばチャンバーまたはマイクロ流体ジャンクションに接続された、マイクロ流体チューブ、パイプ、等のネットワークで構成される。別の実施形態において、この第1ゾーンに加えて、マイクロ流体経路は、例えば液滴流体への直接注入または1つ以上の第2微小液滴ストリームとの液滴合体により、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、捕捉分子ならびに上記のさまざまな化学物質および酵素の任意のいくつかまたはすべての順列を微小液滴中に導入することができる、1つまたは複数の第2ゾーン、例えばチャンバー、マイクロ流体ジャンクションまたは注入点をさらに備えてもよい。マイクロ流体経路は、微小液滴のストリームの温度制御を可能にするため、その長さに沿ったさまざまな点で1つ以上の加熱器および/または冷却器を備えてもよい。これは、キャリア媒体を別のものと交換することができる1つ以上の第3ゾーンも備えてもよい。適切には、マイクロ流体経路は、プラスチック製であり、微小液滴のストリームはその中を1つ以上のポンプにより移動させる。マイクロ流体経路は、定期的なフラッシング洗浄を可能にする補助マイクロ流体経路を備えてもよい。
【0027】
位置決め機構は、適切には、プラットフォームならびに、基板の操作表面および出口オリフィスを、操作表面の平面において微小液滴が後者から排出される前に直ちに、互いに対して正確に配置することを可能にする、1つ以上のモータを備える。適切には、装置は、操作表面を画定する平面において所定の微小液滴が送達される正確な位置を保存する手段を備え、各データ点をその後の機会に回収することができる。適切には、位置決め機構は、サーボモータにより補助される。
【0028】
1つの実施形態において、この装置は、液滴送達システムを含有するハウジングならびに基板を受容および排出するように構成されたチャンバーを備えてもよい。装置は、任意で、例えばカートリッジおよび/またはカルーセル配置により、一連の基板を連続的にチャンバー中に導入およびそこから排出する手段をさらに備えてもよい。別の実施形態において、装置は、任意で可動アセンブリ上に載置された電磁放射線源および光子検出器からなる分析ユニットも備えてもよい。また別の実施形態において、装置は、任意で液滴送達システム、電磁放射線源(例えばレーザー)および検出器の1つ以上と接続したマイクロプロセッサも備えてもよい。液滴送達システムは、適切には、上述したプロセスの1つを用いる液滴配列決定装置と接続している、または接続可能である。1つの実施形態において、微小液滴を生成するための手段は、チップ上で行われ、その生成物は基板上に印刷するため液滴送達システムまでマイクロ流体的に送達される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本方法について、以下の実施例を参照しながら示す。
図1】それぞれヌクレオチドを含有する微小液滴を捕捉システムと反応させて蛍光標識アンプリコンを生成する配列決定装置を概略的に示す。
図2】本発明の方法を用いる液滴保存装置の断面図を示す。
【実施例】
【0030】
それぞれオリゴヌクレオチドを含有する微小液滴のストリームの生成
ヒトDNAに由来する100ヌクレオチド塩基ポリヌクレオチド分析物の漸進的加ピロリン酸分解により得られる別々のデオキシリボヌクレオチド三リン酸のストリームを含む水性媒体1を、PDMSポリマーからなる直径10ミクロンのマイクロ流体チューブを通って流動させる。加ピロリン酸分解反応自体は、Taq Polならびにそれぞれ1リットル当たり2ミリモル濃度のピロリン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムを含む72℃の水性緩衝(pH8)反応媒体のストリームを、分析物がスクシニル架橋により予め結合したガラスマイクロビーズに通すことにより行われる。マイクロビーズのダウンストリームである1中の単一ヌクレオチド塩基の順序は、分析物の配列に対応する。1は、液滴ヘッド2から第1チャンバー3に現れ、ここで非混和性軽質シリコーン油4の1つ以上のストリームと接触する。これらのストリームの速度は、乱流混合を回避し、3においてそれぞれ約8ミクロンの直径を有する油中に懸濁させた水性球状液滴5を形成するように選択される。一般的に、割合は、隣接する充填液滴の間に10個の空の液滴が存在するように調節される。5のストリームは、次に、同じ直径の第2マイクロ流体チューブに沿って、毎秒1000液滴の割合で、5ミクロンの水性球状液滴7の第2ストリームも第2液滴ヘッド8により供給される第2チャンバー6まで推進される。液滴5および7は順次合体させ、直径約9ミクロンの肥大した水性液滴9が形成される。7のそれぞれは、5のそれぞれに存在する残留ピロリン酸アニオンをすべて破壊するピロホスファターゼを含有する。
【0031】
次いで、9のストリームは、マイクロ流体チューブによって同じ割合で第3チャンバー10まで推進され、そこで、これらの液滴が対応する液滴ヘッド12を通して同様に供給される5ミクロンの水性球状液滴11の第3ストリームと接触される。9のそれぞれがチャンバー6および10間を移動するのにかかる時間は、約2分である。
【0032】
次いで、液滴9および11は、10において合体し、液滴13(直径約10ミクロン)が生成される。11のそれぞれは、中温性リガーゼならびにj形状の第1オリゴヌクレオチドおよび4つの対応する第2一本鎖オリゴヌクレオチドの4つの対を備える捕捉システムを含有する。各j形状第1オリゴヌクレオチドは、60ヌクレオチド塩基長であり、60ヌクレオチド塩基一本鎖オリゴヌクレオチド前駆体を5’末端から第45ヌクレオチド塩基辺りで折り畳み、3ヌクレオチド一本鎖ループ、12ヌクレオチド塩基対二本鎖領域および33ヌクレオチド塩基一本鎖領域をもたらすことにより調製される。これらの4つの第1オリゴヌクレオチドのそれぞれは、DNAの4つの特徴的なヌクレオチド塩基タイプ(すなわちA、T、GおよびC)に特徴的な異なる第33塩基(一本鎖末端から測定)も有する。4つの異なるi形状の第2オリゴヌクレオチドは、それぞれ、28ヌクレオチド塩基長であり、それらの第1オリゴヌクレオチド対の第4および第32ヌクレオチド塩基により画定される一本鎖領域のその部分と相補的である異なる配列を有する。
【0033】
次いで、13のストリームは、マイクロ流体チューブによって同じ速度で推進され、30分後にホットスポットを通過し、リガーゼが不活性化され(10〜20分)、第3チャンバー14に入り、そこで液滴ヘッド16を通して同様に供給される5ミクロンの水性球状液滴15の第4ストリームと合体する。15のそれぞれは、第2オリゴヌクレオチドのそれぞれに選択的な4つの異なるプライマー対、Taq Pol酵素、DNAに特徴的な4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸および13で生成することができる4つの異なる捕捉分子から生成することができるアンプリコンの4つのタイプのそれぞれに選択的な4つの異なる分子ビーコンを含有する。15は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う際に一般的に用いられる他の添加剤を含有してもよい。こうして形成された合体微小液滴17のストリームは、次に、60〜95℃の20〜30の熱サイクル(毎分約1サイクル)にさらされ、その時間に、ポリメラーゼ連鎖反応による展開捕捉分子の増幅が行われる。この時間の終わりに、17は、保存に移される。
【0034】
17は、微小液滴21が1つずつ現れる出口オリフィス20につながるシラン処理されたキャピラリー穴19を備える液滴送達システム18に導入される。基板22は、その操作表面が半球状ウェル23の規則的な二次元アレイでパターン化されたガラスシートからなる。23の内面は、プラズマ処理により予備エッチングされる。22は、その操作表面上を軽質シリコーン油24の薄いフィルムで、その他方の表面を光反射金属層25でコーティングされる。22は、マイクロプロセッサおよびサーボモータ(図示せず)によりその操作表面に平行な平面において可動であるプラットフォーム26上に載置される。使用時、21のそれぞれは、26の動作により構築された特有の位置で20から連続的に現れ、重力下で24を通り23中に落下し、そこでそれらは油下で保存される。微小液滴を分析する際、各ウェルは、レーザーを用いて順に照射され、いずれかの反射蛍光は、コンピュータ(図示せず)と接続した光検出器により測定される。
図1
図2