特許第6190955号(P6190955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190955
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】車両シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20170821BHJP
   B60N 2/42 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   B60N2/22
   !B60N2/42
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-522772(P2016-522772)
(86)(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公表番号】特表2016-533297(P2016-533297A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2014071542
(87)【国際公開番号】WO2015055478
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年6月1日
(31)【優先権主張番号】102013220659.3
(32)【優先日】2013年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502156098
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】パストールス、 アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッツィグ、 シュテファン
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−074149(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02507708(FR,A1)
【文献】 実開平05−034943(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
A47C 1/024 − 1/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シート(1)あって、
a)座部(3)及び背もたれ(2)であって、前記背もたれ(2)は少なくとも1つの取付具(10)によって前記座部(3)に連結され、前記取付具(10)は第1取付部品(11)と前記第1取付部品(11)に対して軸(A)を中心に回転可能な第2取付部品(12)とを含み、前記背もたれ(2)も前記座部(3)に対して前記軸(A)を中心に旋回可能である座部(3)及び背もたれ(2)と、
b)前記背もたれ(2)の構造体前記座部(3)の構造体のうちの一方に前記第1取付部品(11)を強固に連結する第1アダプター(20)と、
c)前記背もたれ(2)の構造体と前記座部(3)の構造体のうちの他方に前記第2取付部品(12)を強固に連結する第2アダプター(50)と、
d)前記第1アダプター(20)上の少なくとも1つの第1停止部(25)及び前記第2アダプター(50)上の少なくとも1つの第2停止部(60)と
有し、
前記第2アダプター(50)は、前記軸(A)に対して概ね垂直に延びる第2本体(52)と、部分的に前記第2本体(52)の外側輪郭に沿って前記軸(A)に対して平行な軸方向に延びる周囲リップ(54)とを有し、
前記第1停止部(25)は前記第2停止部(60)と相互作用することによって前記背もたれ(2)の旋回角度を制限し、前記第2停止部(60)は前記第2アダプター(50)と一体に形成され、前記第2停止部(60)は前記第2アダプター(50)の周囲リップ(54)から突出し、
前記第2停止部(60)は前記周囲リップ(54)から始まって前記軸(A)に向かって半径方向に延びる第1脚部(61)を有し、
前記第2停止部(60)は前記第1脚部(61)を安定させる第2脚部(62)を有する車両シート(1)。
【請求項2】
前記第1停止部(25)は第1停止面(26)を有し、前記第2停止部(60)は第2停止面(66)を有し、前記背もたれ(2)を旋回させると、旋回角度を通過した後、前記第1停止面(26)は前記第2停止面(66)に当接し、結果として前記背もたれ(2)の旋回角度を制限する請求項1に記載の車両シート(1)。
【請求項3】
前記第1アダプター(20)は前記軸(A)に対して概ね垂直に延びる平坦な第1本体(22)を有し、前記第1停止部(25)は前記第1本体(22)から軸方向に突出している請求項1又は2に記載の車両シート(1)。
【請求項4】
前記第1停止部(25)は前記第1アダプター(20)と一体的に形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の車両シート(1)。
【請求項5】
前記第1アダプター(20)は板金材料から製造され、前記第1停止面(26)は前記板金材料の切断面(S)から形成されている請求項に記載の車両シート(1)。
【請求項6】
前記第1脚部(61)及び前記第2脚部(62)は三角形の2つの辺のように形成されている請求項1からのいずれか1項に記載の車両シート(1)。
【請求項7】
前記第2アダプター(50)は板金材料から製造され、前記板金材料の板金表面の一部が第2停止面(66)を形成している請求項2からのいずれか1項に記載の車両シート(1)。
【請求項8】
前記第2アダプター(50)は板金厚さの間隔で互いに離隔された2つの板金表面を有する請求項に記載の車両シート(1)。
【請求項9】
前記第2停止部(60)は切り欠き(57)によって少なくとも部分的に囲まれている請求項又はに記載の車両シート(1)。
【請求項10】
前記第2停止部(60)は連続して前記第2本体(52)に達している請求項又はに記載の車両シート(1)。
【請求項11】
前記第2停止面(66)は軸方向において少なくとも1つの切断面によって境界されている請求項から10のいずれか1項に記載の車両シート(1)。
【請求項12】
前記第1アダプター(20)は正確には1つの第1停止部(25)を有し、前記第2アダプター(50)は正確には2つの第2停止部(60)を有し、前記第1停止部(25)は前記軸(A)の周りの周方向で前記2つの第2停止部(60)の間に位置し、両方の旋回方向で前記背もたれ(2)の旋回角度を制限する請求項1から11のいずれか1項に記載の車両シート(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部及び背もたれであって、背もたれは少なくとも1つの取付具によって座部に連結され、取付具は第1取付部品と第1取付部品に対して軸を中心に回転可能な第2取付部品とを含み、背もたれも座部に対して軸を中心に旋回可能である座部及び背もたれと、背もたれの構造体又は座部の構造体に第1取付部品を強固に連結する第1アダプターと、座部及び背もたれの2つの構造体のうちの他方に第2取付部品を強固に連結する第2アダプターとを有し、第1アダプター上の少なくとも1つの第1停止部及び第2アダプター上の少なくとも1つの第2停止部が設けられ、第1停止部は取付具がロック解除された状態で第2停止部と相互作用することによって背もたれの旋回角度を制限し、第2停止部は第2アダプターと一体に形成され、第2停止部は第2アダプターの周囲リップから突出している車両シート、特に自動車シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によって知られている車両シートの場合、停止部が座部と背もたれのそれぞれに溶接されている。背もたれを後方に旋回させると、2つの停止部が互いに接触し、旋回角度を制限し、結果として後方に向かって背もたれを支持する。
【0003】
特許文献2には、座部に対して旋回可能な背もたれを有する車両シートが開示されている。座部に割り当てられた停止部は、それぞれの旋回位置においていずれの場合にも背もたれに割り当てられた2つの停止部の一方と相互作用し、結果として背もたれの旋回角度を制限する。座部に割り当てられた停止部はアダプターから突出している。アダプターは背もたれの旋回軸に対して概ね垂直に延びる本体を含み、停止部は前記本体から軸方向に突出する。
【0004】
特許文献3には、車両シート用の取付具であって、第1取付部品と第1取付部品に対して旋回軸を中心に回転可能な第2取付部品とを含む取付具が開示されている。第1取付部品は第1アダプターに連結され、第2取付部品は第2アダプターに連結されている。第2アダプターは周囲リップを有し、周囲リップは旋回軸を中心に所定の位置に曲線状に延び且つ2つの部分を形成するように切り欠きによって中断されている。周囲リップの一方の部分の、旋回軸に対して平行に延びる端面が、第1取付部品に間接的に連結されたピンのための停止部として機能する。停止面の幅は第2アダプターの材料の厚さに相当する。停止面の大きさは材料の厚さによって制限される。
【0005】
特許文献4には、車両シート用の取付装置であって、3つの取付部品を含む取付装置が開示されている。第2取付部品が周囲リップを有し、ロック装置用の制御要素として機能する停止部が周囲リップの端部から外側に向かって斜めに設けられている。
【0006】
特許文献5には、背もたれ及び座部を有する車両シート用の取付具であって、座部に固定された第1取付部品と、車両シートの背もたれの傾きを調節するために第1取付部品に対して複数の使用位置の間で回転可能な第2取付部品と、背もたれに固定された第3取付部品であって、第2取付部品に強固に連結されたラッチ要素とロック可能であり且つ背もたれを自由に旋回させるために第2取付部品に対して軸を中心に旋回可能である第3取付部品とを有し、第3取付部品の使用位置から自由に旋回した位置への旋回運動は制限停止部によって制限されている取付具が開示されている。制限停止部はアダプターから軸に対して平行に突出している。停止面の幅は第2停止部の材料の厚さに相当する。停止面の大きさは停止部の材料の厚さによって制限される。
【0007】
特許文献6には、座部及び背もたれを有する車両シート用の、座部に対して背もたれの傾斜角度を調節するための調節手段が開示されている。調節手段は、座部に連結された座部取付具と背もたれに連結された背もたれ取付具とを有する。取付具は座部に対する背もたれの調節範囲を制限する停止部を含み、調節範囲は設定可能であるよう意図されている。この目的のため、停止部は取付具にネジ結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1859706号明細書
【特許文献2】独国実用新案出願公開第202009015235号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第112010004681号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102012009159号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102008063359号明細書
【特許文献6】国際公開第2012/123084号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、冒頭で述べたタイプの車両シートを改善するという課題、特に停止部が過剰な使用に関連する力によって変形するおそれがないように停止部の強度を高めるという課題に基づくものである。特に、停止面が接触できる接触領域を拡大することが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明に従って、座部及び背もたれであって、背もたれは少なくとも1つの取付具によって座部に連結され、取付具は第1取付部品と第1取付部品に対して軸を中心に回転可能な第2取付部品とを含み、背もたれも座部に対してを中心に旋回可能である座部及び背もたれと、背もたれの構造体又は座部の構造体に第1取付部品を強固に連結する第1アダプターと、座部及び背もたれの2つの構造体のうちの他方に第2取付部品を強固に連結する第2アダプターと、第1アダプター上の少なくとも1つの第1停止部及び第2アダプター上の少なくとも1つの第2停止部とを有し、第1停止部は第2停止部と相互作用することによって背もたれの旋回角度を制限する車両シート、特に自動車シートによって解決される。第2停止部は第2アダプターと一体に形成され、且つ第2アダプターの周囲リップから突出し、第2停止部は周囲リップから始まって軸に向かって半径方向に延びる脚部であるか、又は周囲リップから始まって軸に向かって半径方向に延びる第1脚部を有する。
【0011】
第2停止部は周囲リップから始まって軸に向かって半径方向に延びる脚部であるか、又は周囲リップから始まって軸に向かって半径方向に延びる第1脚部を有するので、第2停止部はアダプターの非常に曲げに関して堅いゾーンに形成されている。第2停止部をアダプターの本体内に配置するのと比べて、第2停止部を囲む材料は、周囲リップの領域にあまり膨出しない傾向がある。従って、第2アダプターの塑性変形が生じることなく、より大きな衝撃力が第2停止部によって吸収されることができる。また、第1及び第2停止部の停止面が接触できる接触領域は、第2停止部の板金厚さによって限定されない。
【0012】
周囲リップは、シート構造体全体の剛性を設計するための最も重要な制御変数を表す。シート構造体全体の剛性は第2停止部によって影響されることができるので、第2停止部自体がシート構造体の力管理のための有効な制御変数である。
【0013】
本発明による第2停止部の周囲リップへの統合の結果として、コストを低下させる機能的な統合が達成され、例えば、衝突の際に第2停止部の領域における局所的な変形によってエネルギーを選択的に吸収することができるという点で、これは構造的な剛性に選択的に影響を与えるための手段としても機能する。
【0014】
個別に又は互いに組み合わせて使用することができる有利な構成が従属請求項の主題である。
【0015】
第1アダプターは、有利には、幾何学的に単純に構成され、結果として安価であるように設計されている。この目的のため、第1アダプターは背もたれの旋回軸に対して概ね垂直に延びる第1本体を含み、第1停止部は前記第1本体から軸方向に突出している。更なる機能的な統合のために、第1停止部は第1アダプターと一体的に形成され、特に軸方向に直角に曲げられ又は折られていることが有利である。
【0016】
第1アダプターの好ましい実施形態は、板金材料から製造され且つ第2停止部の第2停止面と相互作用するための第1停止面を有する第1アダプターを提供する。第1停止面は板金材料の切断面から形成されることができる。板金材料から製造された任意の部品と同様に、板金、例えば鋼板から製造されたアダプターも板金厚さによって定められた厚さを有する板状体を含み、前記厚さはアダプターの他の寸法と比べて小さい。開口部によって生成された外側輪郭と内側輪郭に沿って切断面が延び、切断面は板金表面に対して好ましくは垂直に配向され、且つこの方向に板金厚さによって概ね予め定められた奥行きを有する。切断面は従って製造工程中に板金を分離することにより製造されるそれらの構成要素の面を意味すると理解されるべきである。板金を分離するのに適しているすべての材料除去又は非材料除去の製造方法、例えば押し抜き、精密打ち披き、ウォータージェット切断又は放電加工が好適である。
【0017】
局所的に異なる板金厚さの金属板、例えばテーラードブランクを使用する場合、切断面は、アダプターの輪郭形状に沿ってそれに対応して異なる奥行きを有する。
【0018】
第2アダプターは、有利には、旋回軸に対して概ね垂直に延びる平らな第2本体を含み、前記第2本体の外側輪郭は部分的に周囲リップによって形成されている。周囲リップは、本体に対して直角であるか、又は曲げ半径によって本体に連結されることができる。
【0019】
第2アダプターの高い剛性は、周囲リップが軸方向に、すなわち背もたれの旋回軸に対して平行に配向されることで達成される。
【0020】
好ましくは、第2停止部は周囲リップから始まって旋回軸の方向に延びている。停止部は独立して立っている停止部として構成されることができるが、好ましい実施形態では、周囲リップからの屋根状突起の脚部として形成される。
【0021】
第2停止部は正確には1つ以上の脚部を有することができる。第2脚部が第1脚部を安定化させることができ、第1脚部は第2停止面を有する。
【0022】
第2停止面は、好ましくは、板金材料の板金表面に位置し、すなわち切断面に位置しない。結果として、第2停止面の表面は、その表面積が使用される板金の板金厚さによって一方向において制限される切断面よりも大きくすることができる。2つの切断面が停止面として相互に接触する従来から知られている解決策に比べて、接触面を大きくすることができ、接触領域における面圧を低減することができる。また、十分に大きな第2停止面は、2つの停止面の相対位置の間の公差補償を可能にする。
【0023】
前記停止部が開口部によって部分的に囲まれている切り欠きによって少なくとも部分的に囲まれている場合、第2停止部は低い公差で製造されることができる。
【0024】
第2停止部は、第2停止部が隅角部一体化の形で形成されている点で、特に堅く形成されることができる。隅角部一体化の第1の側が第1脚部であることができる。隅角部一体化の第2の側が第2脚部であることができる。隅角部一体化の第3の側が第2アダプターの本体であることができる。
【0025】
両方の旋回方向で制限されている背もたれの旋回角度は、第1アダプターが正確には1つの第1停止部を有し、第2アダプターが正確には2つの第2停止部を有し、第1停止部が周方向、すなわち旋回軸を等距離で包囲する方向で2つの第2停止部の間に位置することで達成される。
【0026】
背もたれのクッションと座部のクッションの間の領域にある利用可能な設置スペースは、通常、第1アダプターが背もたれの構造体に連結され且つ第2アダプターが座部の構造体に連結されているという点で容易に使用されることができる。しかしながら、第2アダプターが背もたれの構造体に連結され且つ第1アダプターが座部の構造体に連結される停止部の反対の取り付けが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面に示されている有利な例示的実施形態を参照して本発明を以下の本文でより詳細に説明する。しかしながら、本発明はこの例示的実施形態に限定されるものではない。
図1】本発明による車両シートの概略図を示す。
図2】本発明による車両シートの取付具及び2つのアダプターの装置の分解図を示す。
図3図2と比べて反対の視線方向からの更なる分解図を示す。
図4】本発明による車両シートの取付具及び2つのアダプターの側面図を背もたれの中間位置で示す。
図5図4に対応する図を背もたれの第1停止位置で示す。
図6図4に対応する図を背もたれの第2停止位置で示す。
図7図4で左側に示した第2停止部の、図4と比べて反対の視線方向からの詳細図を示す。
図8図4で左側に示した第2停止部の、図4と比べて反対の視線方向からの更なる詳細図を示す。
図9図4で右側に示した第2停止部の、図4と比べて反対の視線方向からの詳細図を示す。
図10図4で右側に示した第2停止部の、図4と比べて反対の視線方向からの更なる詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
自動車用の車両シート1が座部3と背もたれ2とを有し、背もたれ2の傾きは座部3に対して設定可能である。背もたれ2は、背もたれ構造体と、背もたれ構造体を覆っているクッションとを含む。座部3は、座部構造体と、座部構造体を覆っているクッションとを含む。
【0029】
背もたれ2の傾きを設定するために、座部3と背もたれ2の間の遷移領域に水平に配置されている伝動ロッド7が、手動で、例えば操作レバー5を用いて回転させられる。伝動ロッド7は、車両シート1の両側にある取付具10に係合する。
【0030】
取付具10は第1取付部品11と第2取付部品12とを有し、第1取付部品11と第2取付部品12は互いに対して回転可能であり且つ互いにロックされることができる。第1取付部品11は、第1アダプター20を用いて背もたれ2の背もたれ構造体に強固に連結されている。第2取付部品12は、第2アダプター50を用いて座部3の座部構造体に強固に連結され、本例では座部構造体にネジ結合されている。しかしながら、取付部品11及び12の割り当ては入れ替えること、すなわち、その結果、第1取付部品11が座部構造体に連結され、第2取付部品12が背もたれ構造体に連結されることができる。
【0031】
取付具10はラッチ金具として構成され、例えば国際公開第2012/072216号に記載されているように、第1取付部品11及び第2取付部品12は互いにロックされることができ、ロック解除後、軸Aを中心に互いに対して回転可能である。伝動ロッド7と一直線になっている軸Aは、円筒座標系で使用される方向情報を定めている。
【0032】
2つの取付部品11及び12はそれぞれ、各円形ディスク形状に概ね内接することができる。2つの取付部品11及び12と、第1アダプター20と、第2アダプター50は、本例では鋼板で構成されている。しかしながら、他の材料及び製造工程、例えばダイカスト法を使用することもできる。
【0033】
本例では、円形の環状肩部11a、例えば第1取付部品11の材料隆起が、第1取付部品11上に、その第2取付部品12から離れた端面に形成されている。環状肩部11aは、第1アダプター20が第1取付部品11の端面の、環状肩部11aの半径方向外側に位置する部分で第1取付部品11に当接するように、円形の第1開口部21を通って第1アダプター20内に形状嵌合により係合している。環状肩部11aの外縁に沿って、第1取付部品11は、詳細には第1アダプター20の円形の第1開口部21を取り囲む切断面Sに溶接、詳細にはレーザー溶接されている。切断面Sは、第1アダプター20及び第2アダプター50の周辺領域に板金厚さによって形成され、隣接する板金表面に対して概ね垂直に延びる面を意味すると理解されるべきである。
【0034】
本例では、第2取付部品12に、その第1取付部品11から離れた端面に、星形肩部12aが形成されている。星形肩部12aは、例えば独国特許出願公開第102009041491号明細書によって知られているように、マルチアームの、実質的に対称な星形を有する。星形肩部12aは、第2アダプター50が第2取付部品12の端面の、星形肩部12aの半径方向外側に位置する部分で第2取付部品12に当接するように、第2アダプター50に相補的に形成された第2開口部51に形状嵌合により係合している。第2取付部品12は、星形肩部12aの外縁に沿って第2アダプター50に溶接、詳細にはレーザー溶接されている。
【0035】
第1アダプター20は、概ね平坦に形成され且つ軸Aに対して垂直に配向された円形の第1本体22であって、第1開口部21が組み込まれている前記本体22と、第1フランジ23とを含む。第1本体22と第1フランジ23は互いに一体的に形成され、本例では一平面内に位置する。
【0036】
第1フランジ23は、第1本体22から半径方向に背もたれ2に向かって配向され且つ背もたれ2の構造体に第1アダプター20を取り付けるのに役立つ矩形領域である。好ましくは、第1フランジ23は、ガスシールドアーク溶接プロセスによって背もたれ2の構造体に溶接されている。
【0037】
第1アダプター20の第1停止部25が、第1本体22から軸方向に、本例では車両シート1の最も近い外側の方向に突出している。第1停止部25は、概ね第1フランジ23の反対側に位置する本体22の外側の領域から離れる方向に角度が付けられている。第1本体22と第1停止部25の間の遷移領域は、本例では丸みを帯びているが、例示的な実施形態の変形では縁が鋭利であってもよい。
【0038】
第1停止部25は、軸Aを中心に湾曲した矩形形状を有する。周方向に対して垂直に配向された、第1停止部25の2つの切断面Sがそれぞれ第1停止面26を形成している。2つの第1停止面26はそれぞれ第1本体22の平面的な範囲に対して垂直である。
【0039】
第2アダプター50は、概ね平坦に形成され且つ軸Aに対して垂直に配向された概ね円形の第2本体52であって、第2開口部51が組み込まれている第2本体52と、第2フランジ53とを含む。第2本体52と第2フランジ53は互いに一体的に形成され、互いにわずかにずらして平行な平面内に位置する。
【0040】
第2フランジ53は、第2本体52から半径方向に座部3に向かって配向され且つ座部3の構造体に第2アダプター50を取り付けるのに役立ち、第2アダプター50は、本例では座部3の構造体にネジ結合されている。
【0041】
第2アダプター50の周囲リップ54が、部分的に第2本体52及び第2フランジ53の外側輪郭に沿って、本例ではシート中心方向に延びている。周囲リップ54は、軸方向に、従って平面的な第2本体52に対して垂直に延びている。周囲リップ54は、背もたれ2の方向及び第2フランジ53の本体52から離れた領域において中断されている。第2本体52と周囲リップ54との間の遷移領域は、本例では丸みを帯びているが、例示的な実施形態の変形では縁が鋭利であってもよい。第2フランジ53と周囲リップ54の間の遷移領域も同様である。
【0042】
第2本体52の外側輪郭と従って周囲リップ54は、軸Aに対して互いに反対側に位置する2つの部分に、概ね軸Aを中心半径Rを有する円弧の形で延びている。周囲リップ54のこれら2つの部分の各々から第2停止部60が突出し、前記第2停止部60は周囲リップ54から軸Aの方向に延び、いずれの場合にも第1停止部25と相互作用するのに役立つ。2つの第2停止部60はそれらの構造及び機能に関しては互いに同等なので、一方の第2停止部60のみを以下の本文で説明する。
【0043】
第2停止部60は周囲リップ54の小領域から突出している。周囲リップ54と第2本体52の間の丸みは、この位置では切り欠き57によって除去されている。切り欠き57は従って周囲リップ54と第2本体52の間の丸みを帯びた遷移領域に開口部を形成しているので、周囲リップ54は切り欠き57に沿って第2本体52に直接連結されていない。周囲リップ54は、三角形の2つの辺61,62のように、切り欠き57に沿って半径方向内側に湾曲している。第1脚部61が半径方向に軸Aに向かって配向され、第2停止部60を形成している。2つの脚部61,62の他方、第2脚部62は、第1脚部61を、すなわち第2停止部60を安定させる。第1脚部61と第2脚部62の間の遷移領域は、本例では丸みを帯びているが、例示的な実施形態の変形では縁が鋭利であってもよい。
【0044】
周方向に対して垂直に配向された第2停止部60の第2停止面66は、第2停止部60の幅を定める隣接する切断面Sに対して垂直である。第2停止面66は従って板金表面に位置する。第2停止面66は第2本体52の平面的な範囲に対して垂直である。
【0045】
第1停止部25は(軸Aを中心とする周方向に見られるように)2つの第2停止部60の間に位置する。第1停止部25の2つの第1停止面26の各々は、第2停止部60の2つの第2停止面66の一方の方向に配向されている。半径方向における軸Aから第1停止面26の距離と半径方向における軸Aから第2停止面66の距離は同じぐらいであるが、相互に割り当てられた第1及び第2停止面26,66は、背もたれ2が旋回されたとき特定の旋回角度後にそれらが互いに当接するように半径方向において重なり合い、結果として以下の本文でより詳細に説明するように、両方の旋回方向で背もたれ2の旋回角度を制限する。
【0046】
図4は背もたれ2の中間位置を示す。第1フランジ23の角度位置は背もたれ2の角度位置に対応する。第1停止部25は、2つの第1停止面26のどちらも第2停止面66と接触しないように、周方向で2つの第2停止部60から離間している。
【0047】
図5及び図6はそれぞれ、2つの停止位置の一方を示す。2つの停止位置の各々で、背もたれ2が各方向に更に旋回することができないように、2つの第1停止面26の一方が2つの第2停止面66の一方に接触している。
【0048】
例示的な実施形態の第1変形例では、第1アダプターは背もたれの背もたれ構造体に組み込まれ且つ/又は第2アダプターは座部の座部構造体に組み込まれている。
【0049】
例示的な実施形態の第2変形例では、第1アダプターは第1取付部品に組み込まれ且つ/又は第2アダプターは第2取付部品に組み込まれている。
【0050】
例示的な実施形態の第3変形例では、第2停止部は、切り欠きを有していない第2アダプターの領域の周囲リップから突出している。本発明は明示的に切り欠きを有する例示的な実施形態に限定されない。例えば、2つの停止部はその結果、隅角部融合の形で形成されることができ、又は第2停止部を形成する脚部は連続して第2本体に達する。
【0051】
例示的な実施形態の更なる変形例では、取付具は、例えば独国特許出願公開第102011012076号明細書によって知られているようなギア付きの取付具として構成されている。
【0052】
上記明細書、特許請求の範囲及び図面で開示された特徴は、本発明をその様々な形態で実現するために個別及び組み合わせの両方で重要であり得る。
【符号の説明】
【0053】
1 車両シート
2 背もたれ
3 座部
5 操作レバー
7 伝動ロッド
10 取付具
11 第1取付部品
11a 環状肩部
12 第2取付部品
12a 星形肩部
20 第1アダプター
21 第1開口部
22 第1本体
23 第1フランジ
25 第1停止部
26 第1停止面
50 第2アダプター
51 第2開口部
52 第2本体
53 第2フランジ
54 周囲リップ
57 切り欠き
60 第2停止部
61 第1脚部
62 第2脚部
66 第2停止面
A 軸
R 半径
S 切断面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10