(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(B)が、絡み合っていない超高分子量ポリエチレンであり、180℃において、0.5%の定歪を用いて、10 rad/sの固定周波数で、少なくとも3600秒間の動的時間スイープ測定により測定される、標準化弾性率G'0/G'p(式中、G'0は、試料溶融直後のt0で測定されるせん断弾性率であり、G'pは、最大プラトー係数である)の係数が、0.20〜0.95の範囲であることによりさらに特徴づけられる、請求項1に記載のブレンド。
UHMWポリエチレンホモポリマー又はコポリマーが、1,000,000 Pa.s〜30,000,000 Pa.sの範囲の190℃における0.05 rad/sのせん断応力での複素粘性率η*0.05を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブレンド。
UHMWポリエチレンホモポリマー又はコポリマーが、チーグラーナッタ触媒を使用することによる、30〜100℃でのスラリー重合プロセスで製造される、請求項1〜9のいずれか一項に記載のブレンド。
ブレンドが、カーボンブラックを、組成物の総量に基づいて、1.0〜10重量%の量でさらに含み、カーボンブラックは、そのまま(無溶媒)で、又はいわゆるマスターバッチの形態で添加されており、カーボンブラック及び場合によりさらなる添加剤は、担体ポリマー中に濃縮形態で含有される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のブレンド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、第一の態様では、本発明は、
(A) 55〜99重量%の、少なくとも930 kg/m
3の密度を有する高密度多峰性ポリエチレン成分、並びに
(B) 1〜45重量%の、
(i) 少なくとも15.0 dl/gの固有粘度、
(ii) 少なくとも2.0×10
6 g/molの粘度平均分子量(Mv)、及び
(iii) 少なくとも0.7×10
6 g/molの分子量(M
w)
を有する超高分子量のポリエチレンホモポリマー又はコポリマー成分
を含む、高密度ポリエチレンブレンドであって、
0.05〜10.0 g/10分のMFR
21及び少なくとも925 kg/m
3の密度を有する、前記ブレンド
を提供する。
【0018】
好ましい実施形態では、超高分子量成分(B)は、絡み合っていない超高分子量ポリエチレンであり、180℃において、0.5%の定歪を用いて、10 rad/sの固定周波数で、少なくとも3600秒間の動的時間スイープ測定により測定される、標準化弾性率G'
0/G'
p(式中、G'
0は、試料溶融直後のt
0で測定されるせん断弾性率であり、G'
pは、最大プラトー係数である)の係数が、0.20〜0.95の範囲であることによりさらに特徴づけられる。
【0019】
本発明の均質なポリマーブレンドは、様々な目的におけるパイプの使用に非常に適しており、例えば流体の輸送、例えば水又は天然ガスなどの液体又はガスの輸送が知られている。これらのパイプにおいて、流体が加圧されることは一般的である。
【0020】
したがって、さらなる態様では、本発明は、前記したポリマーブレンドを含む物品、好ましくはパイプを提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、
(A) 55〜99重量%の、少なくとも930 kg/m
3の密度を有する高密度多峰性ポリエチレン成分と、
(B) 1〜45重量%の、少なくとも15.0 dl/gの固有粘度、少なくとも2.0×10
6 g/molの粘度平均分子量(Mv)、及び少なくとも0.7×10
6 g/molの分子量(M
w)を有する超高分子量のポリエチレンホモポリマー又はコポリマーと
を混合するステップ、並びにそれを押出するか、又は混練して、0.05〜10.0 g/10分のMFR
21及び少なくとも925 kg/m
3の密度を有するブレンドを形成するステップを含む、前記したブレンドの製造方法を提供する。
【0022】
好ましくは、超高分子量成分(B)は、絡み合っていない超高分子量ポリエチレンであり、これは、180℃において、0.5%の定歪を用いて、10 rad/sの固定周波数で、少なくとも3600秒間の動的時間スイープ測定により測定される、標準化弾性率G'
0/G'
p(式中、G'
0は、試料溶融直後のt
0で測定されるせん断弾性率であり、G'
pは、最大プラトー係数である)の係数が、0.20〜0.95の範囲であることによりさらに特徴づけられる。
【0023】
別の態様では、本発明は、物品、とりわけパイプの製造における、前記した、本明細書の通りのブレンドの使用を提供する。
【0024】
特許請求の範囲に記載したいずれのパラメーターの試験は、本明細書において、実施例の前の「分析試験」の項目において説明される。
【0025】
「分子量Mw」という用語は、本明細書で使用される場合、重量平均分子量を意味する。「分子量Mv」という用語は、本明細書で使用される場合、粘度平均分子量を意味する。
【0026】
本発明のポリエチレンブレンドは、少なくとも2つの成分:(A) 高密度多峰性ポリエチレン成分、及び(B) 超高分子量ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー成分、を含む。これらをまとめることにより、本発明のポリエチレンブレンドが形成される。全ての実施形態では、ブレンドは、HDPE、すなわち、少なくとも925 kg/m
3の密度を有するHDPEである。
【0027】
ブレンドの特性
ブレンドの特性を以下に記載する。次のパラメーターは、本発明のブレンドを製造するために使用され得る市販のポリマー中に元来存在する標準の添加剤の存在下で測定されてもよい。
【0028】
本発明のポリエチレンブレンドは、23℃において、少なくとも925 kg/m
3、好ましくは少なくとも930 kg/m
3、より好ましくは少なくとも935 kg/m
3のISO 1183による密度を有する。密度の上限値は、975 kg/m
3、好ましくは970 kg/m
3であり得る。
【0029】
本発明のポリエチレンブレンドのISO 1133によるMFR
21は、0.05〜10 g/10分、好ましくは0.1〜8 g/10分、とりわけ0.2〜5 g/10分の範囲である。
【0030】
ポリエチレンブレンドは、1.0 g/10分未満、好ましくは0.5 g/10分未満のMFR
5を有することが好ましい。
【0031】
本発明のブレンドの引張弾性率は、成分(A)自体の値の90%より大きく、とりわけ95%よりも大きいことが好ましい。
【0032】
したがって、本発明のブレンドの引張弾性率は、少なくとも1000 MPa、例えば少なくとも1050 MPa、好ましくは少なくとも1100 MPaであり得る。
【0033】
本発明のブレンドの引張強度は、成分(A)自体の引張強度より大きく、すなわち、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも23%大きい。
【0034】
本発明のブレンドの破壊応力は、成分(A)自体の破壊応力より大きく、すなわち、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%大きい。
【0035】
本発明のブレンドの破壊歪は、成分(A)自体の破壊歪より大きいことが好ましく、すなわち、少なくとも10%大きい、好ましくは少なくとも15%大きい、さらにより好ましくは少なくとも20%大きい。
【0036】
高密度多峰性ポリエチレン成分
本発明のブレンドは、高密度多峰性ポリエチレン成分、すなわち、少なくとも930 kg/m
3の密度を有する高密度多峰性ポリエチレン成分を含む。「多峰性」という用語は、本明細書において、特に明記しない限り、分子量分布に関して多峰性であることを意味し、したがって、二峰性ポリマーを含む。異なる重合条件下で製造することにより異なる(重量平均)分子量及び分子量分布となった、少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリエチレン組成物は、通常、「多峰性」として示される。接頭辞「多」は、ポリマー中に存在する異なるポリマー画分の数に関する。したがって、例えば、多峰性ポリマーは、2つの画分からなる、いわゆる「二峰性」ポリマーを含む。多峰性ポリマーの、分子量分布曲線の形状、すなわち、ポリマーの分子量の関数としてのポリマー重量画分のグラフの外観は、2つ以上の極大を示すか、又は典型的には、個々の画分の曲線と比較して明らかに幅広である。例えば、直列に結合させた反応器を利用して反応器ごとに異なる条件を使用する連続多段階プロセスによってポリマーを製造する場合、異なる反応器中で製造されたポリマー画分は、それぞれ独自の分子量分布及び重量平均分子量を有することになる。このようなポリマーの分子量分布曲線を記録する場合、これらの画分からの個々の曲線は、典型的に、一緒になって、得られるポリマー生成物全体について、幅の広い分子量分布曲線を形成する。
【0037】
本発明のブレンドの成分(A)は、高密度多峰性ポリエチレンであり、ブレンド中、55〜99重量%、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは80〜93重量%の量で存在することが好ましい。
【0038】
本発明の多峰性ポリエチレン成分(A)は、23℃において、少なくとも930 kg/m
3、好ましくは少なくとも935 kg/m
3、より好ましくは少なくとも940 kg/m
3のISO 1183による密度を有する。密度の上限値は、980 kg/m
3、好ましくは975 kg/m
3、より好ましくは970 kg/m
3であり得る。特に好ましい密度範囲は、945〜965 kg/m
3である。
【0039】
本発明の多峰性ポリエチレンのISO 1133によるMFR
21は、1〜20 g/10分、好ましくは2〜15 g/10分の範囲が好ましい。
【0040】
好ましくは、多峰性ポリエチレン成分(A)は、3〜14 g/10分のMFR
21を有する。
【0041】
本発明の多峰性ポリエチレン成分(A)のISO 1133によるMFR
5は、好ましくは1.0 g/10分未満である。
【0042】
成分(A)は、好ましくは、少なくとも70,000 g/mol、より好ましくは少なくとも120,000 g/molのMwを有する。成分(A)のMwは、400,000 g/mol未満、好ましくは300,000 g/mol未満であるべきである。
【0043】
成分(A)のMw/Mnは、少なくとも4、例えば少なくとも10、例えば10〜30であり得る。
【0044】
本発明の全ての実施形態では、成分(A)が、(i)小さな重量平均分子量(LMW)のエチレンホモポリマー又はコポリマー成分、及び(ii)大きな重量平均分子量(HMW)のエチレンホモポリマー又はコポリマー成分を少なくとも含む、多峰性ポリエチレンであることが好ましい。好ましくは、前記LMW及びHMW成分の少なくとも1つは、エチレンと少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーである。少なくとも前記HMW成分は、エチレンコポリマーであることが好ましい。あるいは、前記成分の1つがホモポリマーである場合、前記LMWはホモポリマーであることが好ましい。
【0045】
より好ましくは、成分(A)は、1つのエチレンホモポリマー成分と、1つのブタン-又はヘキサンコポリマー成分とを含む。
【0046】
前記多峰性ポリマーのLMW成分は、少なくとも5 g/10分、好ましくは少なくとも50 g/10分、より好ましくは少なくとも100 g/10分のMFR
2を有することが好ましい。
【0047】
前記多峰性ポリマーのLMW成分の密度は、940〜980 kg/m
3、例えば950〜975 kg/m
3の範囲であり得る。
【0048】
前記多峰性ポリマーのLMW成分は、多峰性ポリマーの30〜70重量%、例えば40〜60重量%を、70〜30重量%、例えば60〜40重量%を形成するHMW成分と共に形成し得る。一実施形態では、前記LMW成分は、上記又は下記で定義される多峰性ポリマーの50重量%以上を形成する。典型的には、LMW成分は、ブレンドの45〜55%を形成し、HMW成分は、ブレンドの55〜45%を形成する。
【0049】
前記多峰性エチレンポリマーのHMW成分は、LMW成分よりも、小さいMFR
2を有する。
【0050】
本発明の多峰性エチレンポリマーは、エチレンホモポリマー又はコポリマーであり得る。エチレンホモポリマーとは、本質的にエチレンモノマー単位のみから形成される、すなわち99.9重量%以上がエチレンであるポリマーを意味する。工業用エチレンが微量の他のモノマーを含むことに起因して、当然ながら、微量の他のモノマーが存在してもよい。
【0051】
本発明の多峰性エチレンポリマーはコポリマーであってもよく、したがって、エチレンと、少なくとも1つの他のコモノマー、例えばC
3-C
20オレフィンから形成され得る。好ましいコモノマーは、アルファ-オレフィン、とりわけ3〜8個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンである。好ましくは、コモノマーはプロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1,7-オクタジエン及び7-メチル-1,6-オクタジエンからなる群から選択される。1-ヘキセン又は1-ブテンの使用が最も好ましい。
【0052】
本発明の多峰性エチレンポリマーは、1つのモノマー、又は2つのモノマー、又は3つ以上のモノマーを含むことができる。単一のコモノマーの使用が好ましい。2つのコモノマーを使用する場合、1つが、C3〜8アルファ-オレフィンであり、もう1つが、上記で定義したジエンであることが好ましい。
【0053】
コモノマーの量は、エチレンポリマーの、0〜3 mol%、より好ましくは0.1〜2.0 mol%、最も好ましくは0.1〜1.5 mol%を占めるような量が好ましい。1.0 mol%未満の値、例えば0.1〜1.0 mol%も取り得る。これらはNMRにより測定することができる。
【0054】
しかしながら、本発明のエチレンポリマーは、LMWホモポリマー成分と、HMWエチレンコポリマー成分、例えばエチレン-ヘキセンコポリマー、又はエチレン-ブテンコポリマーとを含むことが好ましい。
【0055】
本発明の多峰性エチレンポリマーの製造では、当業者に公知の重合方法を使用することができる。当該技術分野において知られる方法において、それぞれの成分をその重合プロセス中その場(in-situ)で混合すること(いわゆるin-situプロセス)によって、あるいは2つ以上の別々に製造した成分を機械的に混合することによって製造される、多峰性、例えば少なくとも二峰性のポリマーは、本発明の範囲内である。
【0056】
本発明に有用なポリエチレンは、好ましくは多段階重合プロセスにおいて、in-situでブレンドすることによって得ることが好ましい。したがって、ポリマーは、多段階、すなわち2段階以上の重合プロセス(溶液、スラリー及びガス相プロセスを任意の順序で含む)において、その場で混合することにより得られる。プロセスの各段階において、異なるシングルサイト触媒を使用することも可能であるが、使用する触媒は両方の段階で同じであることが好ましい。したがって、理想的には、本発明のブレンドに使用されるポリエチレンポリマーは、1つのシングルサイト触媒又はチーグラーナッタ触媒を使用する、少なくとも2段階の重合で製造される。したがって、例えば2つのスラリー反応器、又は2つのガス相反応器、又はそれらの任意の組み合わせを、任意の順序で使用することができる。しかしながら、好ましくは、ポリエチレンは、ループ反応器におけるスラリー重合の後にガス相反応器におけるガス相重合を使用して製造される。
【0057】
ループ反応器-ガス相反応器システムは、ボレアリス社(Borealis)の技術として、すなわちBORSTAR TM反応器システムとして公知である。このような多段階プロセスは、例えばEP517868に記載されている。
【0058】
このようなプロセスに使用される条件は公知である。スラリー反応器では、反応温度は、通常60〜110℃、例えば85〜110℃の範囲であり、反応器圧力は、通常5〜80 bar、例えば50〜65 barの範囲であり、滞留時間は、通常0.3〜5時間、例えば0.5〜2時間の範囲である。使用される希釈剤は、通常-70〜+100℃の範囲に沸点を有する脂肪族炭化水素、例えばプロパンである。このような反応器では、所望される場合、重合は超臨界条件下で行われ得る。スラリー重合はまた、反応媒体が重合されるモノマーから形成されるバルク中で実施され得る。
【0059】
ガス相反応器では、使用される反応温度は、通常60〜115℃、例えば70〜110℃の範囲であり、反応器圧力は、通常10〜25 barの範囲であり、滞留時間は、通常1〜8時間である。一般に、使用されるガスは、モノマー、例えばエチレンと一緒にした、窒素などの非反応性ガス、又はプロパンなどの低沸点の炭化水素である。
【0060】
第1の反応器、好ましくはループ反応器におけるエチレン濃度は、約5〜15 mol%、例えば7.5〜12 mol%であり得る。
【0061】
第2の反応器、好ましくはガス相反応器では、エチレン濃度は、さらに高い濃度が好ましく、例えば、少なくとも40 mol%、例えば45〜65 mol%、好ましくは50〜60 mol%である。
【0062】
好ましくは、第1のポリマー画分は連続運転型ループ反応器で製造され、ここでは、エチレンは、上記のような重合触媒と水素などの連鎖移動剤の存在下で重合される。希釈剤は、典型的に、不活性な脂肪族炭化水素、好ましくはイソブタン又はプロパンである。その後、反応生成物は、好ましくは連続運転型ガス相反応器に移送される。その後、第2の成分は、ガス相反応器中、好ましくは同じ触媒を使用して形成することができる。
【0063】
本発明の多峰性ポリエチレンは市販製品であり、様々な製造業者から購入することができる。
【0064】
UHMW成分
本発明のブレンドはさらに、成分(B)として、UHMWポリエチレンホモポリマー又はコポリマー成分を1〜45重量%の量で含む。好ましくは、このUHMWPE成分は、ブレンド中に5〜35重量%、さらにより好ましくは7〜20重量%含まれる。
【0065】
本発明のブレンドのUHMWポリエチレン成分は、少なくとも2,000,000 g/mol〜最大で6,000,000 g/molまで、好ましくは少なくとも2,200,000 g/mol〜最大で5,800,000 g/molまで、より好ましくは少なくとも2,500,000 g/mol〜最大で5,500,000 g/molまでの粘度平均分子量(Mv)を有することが好ましい。
【0066】
UHMW成分の、190℃における0.05 rad/sのせん断応力での、分子量の間接的尺度である複素粘性率(η*
0.05 rad/s)は、1,000,000 Pa.s〜最大で30,000,000 Pa.sまでの範囲、好ましくは2,000,000 Pa.s〜最大で28,000,000 Pa.sまでの範囲、より好ましくは3,000,000 Pa.s〜最大で25,000,000 Pa.sの範囲である。
【0067】
UHMW成分の固有粘度は、少なくとも15 dl/g、好ましくは少なくとも17 dl/gであり、最大で40 dl/gまで、好ましくは最大で30 dl/gまでである。
【0068】
この成分は、非常に小さいMFR、例えば0.5 g/10分未満のMFR
21、特に0.1 g/10分未満、とりわけ0.05 g/10分未満のMFR
21を有する。
【0069】
UHMW成分の分子量(M
w)は、少なくとも70,000 g/mol〜最大で3,000,000 g/molまでであり、好ましくは少なくとも90,000〜最大で2,800,000 g/molまでであり、より好ましくは1,100,000 g/mol〜最大で2,500,000 g/molまでである。
【0070】
本発明のUHMWポリエチレンは、エチレンホモポリマー、又はエチレンコポリマーである。
【0071】
UHMWポリエチレンコポリマーでは、この成分中に存在するコモノマーは少なくとも1つのC
3〜
20オレフィンである。好ましいコモノマーはアルファ-オレフィン、とりわけ3〜8個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンである。好ましくは、コモノマーは、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1,7-オクタジエン及び7-メチル-1,6-オクタジエンからなる群から選択される。1-ヘキセン又は1-ブテンの使用が最も好ましい。理想的には、コモノマーは一種のみ存在する。ヘキセンの使用がとりわけ好ましい。
【0072】
コモノマー含量は、最大で2.0 mol%までであり、より好ましくは最大で1.0 mol%までである。一般に、コモノマーの量は、本発明において要求される固有粘度を達成するために調整される。
【0073】
好ましくは、UHMWPEホモポリマーを本発明において使用する。
【0074】
さらに、UHMW成分は、単峰性であることが好ましい。これは、GPCにおいて単一のピークを有することを意味する。理想的には、UHMW成分は、単一成分から形成され、したがって、単一の製造ステップで製造される。
【0075】
さらに、好ましい実施形態では、本発明により使用されるUHMWポリエチレン成分は、絡み合っていないUHMWポリエチレンである。
【0076】
UHMWポリエチレン成分が絡み合っていないことは、180℃において、0.5%の定歪を用いて、10 rad/sの固定周波数で、少なくとも3600秒間の動的時間スイープ測定により測定される、標準化弾性率G'
0/G'
p(式中、G'
0は、試料溶融直後のt
0で測定されるせん断弾性率であり、G'
pは、最大プラトー係数である)の係数が0.20〜0.95の範囲であることにより示される。
【0077】
好ましくは、係数G'
0/G'
pは、0.30〜0.94の範囲、より好ましくは0.40〜0.93の範囲、最も好ましくは0.50〜0.92の範囲である。
【0078】
例えば、D. Lippitsら、Macromolecules、2006、39、8882〜8885、又はA. Pandeyら、Macromolecules、2011、44、4952〜4960に記載されているように、係数は時間の関数として変化し、プラトー(平坦)領域は物質が完全に絡み合った状態に到達したとみなされる。
【0079】
G'
0及びG'
pの測定で使用される時間スイープ測定法は、実験項目で詳細に説明する。
【0080】
本発明により使用されるUHMWポリエチレンは、チーグラー-ナッタ触媒を使用する方法により製造される。
【0081】
適切なチーグラー-ナッタ触媒は、微粒子担体上に担持されたマグネシウム化合物、アルミニウム化合物及びチタン化合物を含有することが好ましい。
【0082】
微粒子担体は、無機酸化物担体、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナ及びシリカ-チタニアなどとすることができる。好ましくは、担体は、シリカ又はMgCl
2である。
【0083】
シリカ担体の平均粒径(D50)は、典型的には、10〜100μmとすることができる。しかしながら、担体が5〜20μm、好ましくは5〜15μmの平均粒径(D50)を有する場合に、特別な利点を得ることができることが判明している。
【0084】
マグネシウム化合物は、マグネシウムジアルキルとアルコールの反応生成物である。アルコールは、直鎖状又は分岐状の脂肪族モノアルコールである。好ましくは、アルコールは6〜16個の炭素原子を有する。分岐状アルコールがとりわけ好ましく、2-エチル-1-ヘキサノールは好ましいアルコールの一例である。マグネシウムジアルキルは、同じ又は異なっていてもよい、2つのアルキル基に結合するマグネシウムの任意の化合物であり得る。ブチル-オクチルマグネシウムは好ましいマグネシウムジアルキルの一例である。
【0085】
アルミニウム化合物は、塩素含有アルミニウムアルキルである。とりわけ好ましい化合物は、二塩化アルキルアルミニウム及びセスキ塩化アルキルアルミニウムである。
【0086】
チタン化合物は、ハロゲン含有チタン化合物であり、好ましくは塩素含有チタン化合物である。とりわけ好ましいチタン化合物は、四塩化チタンである。
【0087】
触媒は、EP-A-688794又はWO-A-99/51646に記載されているように、担体と前記化合物を順次接触させることにより製造することができる。あるいは、WO-A-01/55230に記載されているように、初めに成分から溶液を調製し、次に溶液を担体と接触させることにより製造することができる。
【0088】
適切なチーグラー-ナッタ触媒の他の群は、担体として作用するハロゲン化マグネシウム化合物を併用するチタン化合物を含有する。したがって、触媒は、塩化マグネシウムのような、ジハロゲン化マグネシウム上のチタン化合物を含有する。このような触媒は、例えばWO-A-2005/118655及びEP-A-810235に記載されている。
【0089】
また、チーグラー-ナッタ触媒のさらなる種類は、エマルションを形成する方法であって、少なくとも2つの液相の該エマルション中で、活性成分が、分散相、すなわち、不連続な相を形成する方法により製造される触媒である。液滴形状の分散相を、エマルションから凝固させて、固体粒子形状の触媒を形成させる。これらの種類の触媒の製造原理は、ボレアリス社のWO-A-2003/106510に記載されている。
【0090】
チーグラー-ナッタ触媒は、活性剤と共に使用される。適切な活性剤は、アルキル金属化合物、とりわけアルキルアルミニウム化合物である。これらの化合物は、ハロゲン化アルキルアルミニウム、例えば二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウムなどを含む。それらはまた、トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム及びトリ-n-オクチルアルミニウムも含む。さらに、それらは、アルキルアルミニウムオキシ化合物、例えばメチルアルミニウムオキサン(MAO)、ヘキサイソブチルアルミニウムオキサン(HIBAO)及びテトライソブチルアルミニウムオキサン(TIBAO)を含む。また、他のアルミニウムアルキル化合物、例えばイソプレニルアルミニウムを使用してもよい。とりわけ好ましい活性剤は、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、及びトリイソブチルアルミニウムが特に使用されるトリアルキルアルミニウム類、並びに二塩化エチルアルミニウム及び塩化ジエチルアルミニウムが特に使用されるハロゲン化アルキルアルミニウム類である。
【0091】
活性剤を使用する量は、特定の触媒及び活性剤に依存する。典型的には、トリエチルアルミニウムは、Al/Tiのようなアルミニウムと遷移金属のモル比が、1〜1000、好ましくは3〜100、特には約5〜約30 mol/molになるような量で使用される。
【0092】
重合は、スラリー又はガス相、好ましくはスラリー中で実施され得る。
【0093】
スラリー重合は通常、不活性な希釈剤、典型的には炭化水素希釈剤、例えばメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど、又はそれらの混合物中で行われる。好ましくは、希釈剤は、1〜4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素、又はそのような炭化水素の混合物である。とりわけ好ましい希釈剤は、場合により微量のメタン、エタン及び/又はブタンを含有する、プロパンである。
【0094】
スラリー重合の温度は、30〜100℃、好ましくは35〜95℃、特に40〜90℃である。
【0095】
圧力は、1〜150 bar、好ましくは10〜100 barである。
【0096】
スラリー重合は、スラリー重合に使用される公知の反応器のいずれで行ってもよい。このような反応器は、連続撹拌式タンク型反応器、及びループ反応器を含む。ループ反応器で重合を実施することがとりわけ好ましい。このような反応器では、スラリーは、循環ポンプを使用することにより、循環パイプに沿って高速循環される。一般に、ループ反応器は当該技術分野において公知であり、例として、例えばUS-A-4582816、US-A-3405109、US-A-3324093、EP-A-479186及びUS-A-5391654が挙げられる。
【0097】
当該技術分野において知られるように、ポリマーの分子量を調節するために、水素を反応器に投入してもよい。さらに、ポリマー生成物の密度及び分子量を調節するために、1種以上のアルファ-オレフィンコモノマーを反応器中に添加してもよい。このような水素及びコモノマーの実際の供給量は、使用される触媒や、得られるポリマーの所望のメルトインデックス(又は分子量)及び密度(又はコモノマー含量)に依存する。
【0098】
本発明に適するUHMPEを製造するためには、水素を添加しないことが好ましい。
【0099】
ブレンドの製造
本発明のブレンドは、単に成分を混合することにより製造することができるが、均質性を確実にするように、当然ながら、成分を複合化しなくてはならない。これは、任意の当業者に公知の従来法、例えば押出法、又は混練法により達成することができる。
【0100】
本発明のブレンドを製造するために押出法を使用する場合、場合により、第2の押出ステップを、例えば第1のステップと同じ条件下で実施してもよい。2つの押出ステップを使用することにより均質性を改善することができることが判明している。したがって、破壊歪、及び場合により垂れ性を改善することができる。
【0101】
組成物を均質化するために押出法を使用することが好ましく、特に、同方向回転2軸押出機、例えばZSK 18、又はZSK 40の使用が好ましい。
【0102】
当然ながら、本発明のブレンドを形成する前に、本発明の2つのポリマー成分を当該技術分野において知られる一般的な添加剤や補助剤と混合することができる。追加のポリマー、例えば添加剤マスターバッチの担体ポリマーを含有してもよい。ブレンドの成分及びブレンド自体の特性は、任意の添加剤がない状態で、又は任意の添加剤の存在下で、測定することができる。しかしながら、特性を測定するときに任意の添加剤が存在することが好ましい。
【0103】
ベース樹脂に加えて、ポリマー組成物は、ポリオレフィンとの利用における通常の添加剤、例えば色素(例えばカーボンブラック)、安定剤(例えば抗酸化剤)、金属捕集剤及び/又はUV-安定剤、帯電防止剤及び利用剤(utilization agent)(例えば加工助剤)を含んでもよく、含むことが好ましい。好ましくは、これらの添加剤の量は、組成物(100重量%)の、10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0104】
さらに好ましくは、カーボンブラックと異なる添加剤の量は、0重量%〜1重量%、より好ましくは0.001重量%〜0.8重量%である。
【0105】
ポリエチレン組成物は、カーボンブラックを、組成物の総量に基づいて、1.0〜10重量%、好ましくは1.5〜9.0重量%、より好ましくは1.8〜8.0重量%、さらにより好ましくは1.8〜7.0重量%、さらにより好ましくは1.8〜5.0重量%、さらにより好ましくは1.8〜4.5重量%、最も好ましくは1.8〜4.0重量%の量で含む。
【0106】
カーボンブラックはそのまま(無溶媒)で、又はいわゆるマスターバッチ(CBMB)の形態でポリマー組成物に添加することができ、カーボンブラック及び場合により上記のさらなる添加剤は、担体ポリマー中に濃縮形態で含有される。
【0107】
本発明のポリマーブレンド中の成分(A)及び(B)は、任意の他の有用なポリマーとさらに混合することもでき、又はそれ自体を物品中唯一のオレフィン材料として使用することができる。したがって、本発明のエチレンポリマーは、公知のHDPE、MDPE、LDPE、LLDPEポリマーと混合することができる。しかしながら、理想的には、本発明のエチレンポリマーブレンドから製造される任意の物品は、ポリマーブレンド、すなわち、多峰性ポリエチレン成分及びUHMWPE成分を含有するポリマーブレンドから本質的になる。
【0108】
用途
本発明のブレンドは、あらゆる種類の物品、例えばケーブル外装、繊維、フィルム及び成形品を製造するために使用することができる。本発明のブレンドは、パイプの形成に主に有用である。パイプは、様々な技術、例えばRAM押出法、又はスクリュー押出法を使用して製造することができる。
【0109】
当然ながら、本明細書に記載される本発明のポリマーの好ましい特徴は、全て、任意の方法でお互いを組み合わせることができる。
【実施例】
【0110】
ここで、本発明を以下の非限定的実施例を参照して説明する。
【0111】
実験項
分析試験
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO1133に従って測定され、g/10分で示される。MFRは、ポリマーの溶融粘度の指標である。ポリエチレンについてのMFRは、190℃で測定される。メルトフローレートを測定する際の荷重は、通常下付き文字として示し、例えばMFR
2は2.16 kgの荷重の下測定され、MFR
5は5 kgの荷重の下測定され、又はMFR
21は21.6 kgの荷重の下測定される。
【0112】
密度
ポリマーの密度は、EN ISO 1872-2(2007年2月)に従って調製した圧縮成形試料において、ISO 1183-1:2004方法Aに従って測定され、kg/m
3で得た。
【0113】
コモノマー含量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、ポリマーのコモノマー含量を定量化した。
【0114】
1H及び
13Cのためにそれぞれ500.13及び125.76MHzで動作するBruker AdvanceIII500 NMR分光計を用いて、定量的
13C{
1H}NMRスペクトルを溶融状態で記録した。
13Cに最適化された7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを使用し、すべての空気圧のために窒素ガスを用いて、150℃で、すべてのスペクトルを記録した。約200mgの材料を外径7mmのジルコニア製のMASローターに充填し、4kHzで回転させた。このセットアップは主として、迅速な同定及び正確な定量のために必要な高い感度により選択した{[1]、[2]、[6]}。3秒の短い待ち時間(recycle delay)での過渡的NOE{[1]、[3]}及びRS-HEPTデカップリングスキーム{[4]、[5]}を利用して、標準単一パルス励起を用いた。1024(1K)過渡状態の合計をスペクトルごとに取得した。このセットアップは、低コモノマー含量に対するその高い感度により選択した。
【0115】
定量的
13C{
1H}NMRスペクトルを処理、集積し、カスタムスペクトル分析自動化プログラムを用いて定量的特性を決定した。すべての化学シフトは、30.00ppmでのバルクメチレンシグナル(δ+)を内部的に基準にしている{[9]}。
【0116】
1-ヘキセンの組み込みに対応する特性シグナルを観察し{[9]}、すべての含量をポリマー中に存在するすべての他のモノマーに対して計算した。
H = I
*B4
【0117】
他のコモノマー配列を示す他のシグナル、すなわち連続したコモノマーの組み込みなしで、観察された全(total)1-ヘキセンコモノマー含量を単離された1-ヘキセン配列の量のみに基づいて計算した。
H
total = H
【0118】
飽和末端基から得られた特性シグナルを観察した。そのような飽和末端基の含量を、2秒及び3秒の部位にそれぞれ割り当てられた22.84及び32.23ppmでのシグナルの積分の平均値を使用して定量化した。
S = (1/2)
* (I
2S + I
3S)
【0119】
エチレンの相対的含量は、30.00ppmでのバルクメチレン(δ+)シグナルの積分を用いて定量化した。
E = (1/2)
* I
δ+
【0120】
全エチレンコモノマー含量は、バルクメチレンシグナル及び他の観察されたコモノマー配列又は末端基に存在するエチレン単位の算定を基に計算した。
E
total = E + (5/2)
* B + (3/2)
* S
【0121】
ポリマー中の1-ヘキセンの全モル分率を次のように計算した。
fH
= (H
total /(E
total + H
total)
【0122】
モルパーセントでの1-ヘキセンの全コモノマー組み込みを通常の方法でモル分率から計算した。
H [mol%]
= 100
* fH
【0123】
重量パーセントでの1-ヘキセンの全コモノマー組み込みは、標準的な方法でモル分率から計算した。
H [重量%]
= 100
* (fH
*84.16) / ( (fH
* 84.16) + ((1-fH)
* 28.05) )
【0124】
参考文献
[1]Klimke, K.、Parkinson, M.、Piel, C.、Kaminsky, W.、Spiess, H.W.、Wilhelm, M.、Macromol.Chem.Phys.2006;207:382
[2]Parkinson, M.、Klimke, K.、Spiess, H.W.、Wilhelm, M.、Macromol.Chem.Phys.2007;208:2128
[3]Pollard, M.、Klimke, K.、Graf, R.、Spiess, H.W.、Wilhelm, M.、Sperber, O.、Piel, C.、Kaminsky, W.、Macromolecules 2004;37:813
[4]Filip, X.、Tripon, C.、Filip, C.、J.Mag.Reson.2005、176、239
[5]Griffin, J.M.、Tripon, C.、Samoson, A.、Filip, C.及びBrown, S.P.、Mag.Res.in Chem.2007 45、S1、S198
[6]Castignolles, P.、Graf, R.、Parkinson, M.、Wilhelm, M.、Gaborieau, M.、Polymer50(2009)2373
[7]Zhou, Z.、Muemmerle, R.、Qiu, X.、Redwine, D.、Cong, R.、Taha, A.、Baugh, D.、Winniford, B.、J.Mag.Reson.、2007、187、225
[8]Busico, V.、Carbonniere, P.、Cipullo, R.、Pellecchia, R.、Severn, J.、Talarico, G.、Macromol.Rapid Commun.2007、28、1128
[9]J.Randall、Macromol.Sci.、Rev.Macromol.Chem.Phys.1989、C29、201
【0125】
分子量
Mw、Mn及びMWDは、以下の方法に従い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0126】
平均分子量(Mz、Mw、及びMn)、分子量分布(MWD)、及び多分散指数PDI=Mw/Mn(Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)によって記述されるその幅を、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003及びASTM D 6474-12に従い、以下の式を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【数1】
【0127】
一定の溶出体積区間ΔV
iについては、A
i、及びM
iは、それぞれ、クロマトグラフピークのスライス領域、及びポリオレフィン分子量(MW)であり、溶出体積、V
i、に関連して、Nは、積分限界(範囲)の間のクロマトグラムから得られるデータ点の数に等しい。
【0128】
赤外線(IR)検出器(PolymerChar (Valencia、Spain)製のIR4若しくはIR5、又はAgilent Technologies製の示差屈折率計(RI))を備え、3×Agilent-PLgel Olexis及び1×Agilent-PLgel Olexis Guardカラムを備えた、高温度GPC装置を使用した。溶媒及び移動相として、250 mg/Lの2,6-ジtert-ブチル-4-メチル-フェノールにより安定化された1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用した。クロマトグラフィーシステムは、160℃で、1 mL/分の一定の流量で操作された。200 μLの試料溶液を分析ごとに注入した。データの収集は、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3、又はPolymerChar GPC-IR制御ソフトウェアを使用して実施した。
【0129】
カラムセットは、0.5kg/mol〜11500kg/molの範囲の19のMWDが狭いポリスチレン(PS)標準物質を使用して、汎用較正(ISO16014-2:2003に従って)を用いて較正した。PS標準物質を室温で、数時間かけて溶解した。ポリスチレンピーク分子量のポリオレフィン分子量への変換は、Mark Houwink式及び以下のMark Houwink定数を使用して行われた。
K
PS = 19×10
-3 mL/g、α
PS = 0.655
K
PE = 39×10
-3 mL/g、α
PE = 0.725
K
PP = 19×10
-3 mL/g、α
PP = 0.725
【0130】
三次多項式のフィッティングを、較正データをフィッティングするために使用した。全ての試料を、UHMW PEについては0.15〜0.3 mg/mlの濃度範囲で、ブレンド及び比較例については0.5〜1 mg/mlの範囲で調製し、連続した穏やかな振とう下で、160℃で、3時間溶解した。
【0131】
粘度平均分子量(Mv)は、ASTM D 4020 - 05に従い、固有粘度[η]から計算される。
Mv = 5.37 × 10
4× [η]
1.37
【0132】
固有粘度は、デカリン中、135℃で、DIN EN ISO 1628 (1998)に従い測定される。
【0133】
ポリエチレン及びポリプロピレンの換算粘度(粘度数としても知られる)η
red、及び固有粘度[η]を、ISO 1628-3「キャピラリー粘度計を使用する希薄溶液中でのポリマー粘度の決定」により決定する。
【0134】
希薄ポリマー溶液(〜1mg/ml)及び純溶媒(デカヒドロナフタレン)の相対粘度を、シリコン油で満たされた恒温浴中に配置された4つのウベローデ型キャピラリーを備えた自動キャピラリー粘度計(Lauda PVS1)で決定した。浴温は135℃で維持される。各測定スタンドは、ポンプ、バルブ機能、時間測定、メニスカス検出を制御するための電子機器を備え、磁気撹拌機を有する。試料を秤量し、キャピラリー中に直接入れる。キャピラリーを、自動ピペットを使用して正確な体積の溶媒で満たす。試料を、完全溶解が達成されるまで(典型的には60〜90分)絶えず撹拌しながら溶解する。
【0135】
ポリマー溶液及び純溶媒の留出時間を、連続した3回の読みが0.1秒(標準偏差)を超えて相違しなくなるまで、数回測定する。
【0136】
ポリマー溶液の相対粘度が、ポリマー溶液及び溶媒の双方について得られた平均流出時間(秒)の比率として求められる:
【数2】
【0137】
換算粘度(η
red)は、次式を利用して計算される:
【数3】
(式中、Cは、135℃でのポリマー溶液の濃度:
【数4】
であり、mはポリマーの質量であり、Vは溶媒の体積であり、γは20℃及び135℃での溶媒密度の比率(γ=ρ
20/ρ
135=1.107)である)。
【0138】
固有粘度[η]の計算は、単一濃度での測定から、次のSchulz-Blaschkeの式を利用して実施される:
【数5】
(式中、Kは、ポリマーの構造及び濃度に依存する係数である。[η]に関して概略値を計算する場合、K=0.27である)。
【0139】
複素粘性率η*
0.05
動的せん断測定によるポリマー溶融物の特性決定は、ISO規格6721-1及び6721-10に準拠する。測定は、25mmの平行プレート形状を備えたAnton Paar MCR501応力制御回転式レオメーターで実施された。測定は、窒素雰囲気を用い、線形粘弾性領域内の歪を設定する、圧縮成形プレート上で実施された。振動せん断試験は、0.01〜600rad/sの間の周波数範囲を適用し、1.3mmの隙間を設定して190℃で実施された。1ディケイド(decade)につき5つの測定点が作成される。
【0140】
動的せん断実験では、正弦波的に変動するせん断歪又はせん断応力(それぞれ、歪及び応力制御モード)でプローブを均質変形に供する。制御された歪実験では、プローブは、以下の式で表すことができる正弦波歪に供される。
【数6】
【0141】
加えられる歪が線形粘弾性領域内であれば、結果として生ずる正弦波応力応答は、以下の式で得ることができる
【数7】
(式中、σ
0及びγ
0はそれぞれ応力及び歪振幅であり、ωは角周波数であり、δは位相シフト(加えられる歪と応力応答との間の損失角)であり、tは時間である)。
【0142】
動的試験結果は、典型的には、いくつかの異なるレオロジー関数、すなわち、せん断貯蔵弾性率G'、せん断損失弾性率G"、複素せん断弾性率G
*、複素せん断粘性率η
*、動的せん断粘性率η'、複素せん断粘性率の異相成分η"及び損失正接tanηによって表され、次のように表すことができる。
【数8】
【0143】
貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G")、複素弾性率(G
*)及び複素粘性率(η
*)の値を周波数(ω)の関数として得た。
【0144】
これにより、例えば、η
*0.05rad/s(eta
*0.05rad/s)は、0.05rad/sの周波数での複素粘性率の略語として使用される。
【0145】
値は、Rheoplusソフトウェアによって定義される一点補間手順によって決定される。実験的に所与のG
*値に達していない状況において、値は前と同じ手順を用いて外挿によって決定される。どちらの場合も(補間又は外挿)、Rheoplusからのオプションの「Interpolate y-values to x-values from parameter」及び「logarithmic interpolation type」を適用した。
【0146】
参考文献
[1]「Rheological characterization of polyethylene fractions」、Heino, E.L.、Lehtinen, A.、Tanner J.、Seppala, J.、Neste Oy、Porvoo、Finland、Theor.Appl.Rheol.、Proc.Int.Congr.Rheol、11th (1992)、1、360〜362
[2]「The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene」、Heino, E.L.、Borealis Polymers Oy、Porvoo、Finland、Annual Transactions of the Nordic Rheology Society、1995
[3]「Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers」、Pure & Appl.Chem.、Vol.70、No.3、701〜754ページ、1998
【0147】
動的時間スイープ実験
ベンチスケールの反応器からの粉末を0.25重量%のIRGANOX B225により安定化させた。安定化粉末は、200℃で、20秒以下の時間で、26mmの直径及び〜1.8mmの厚さを有するディスク状に圧縮成形した。時間スイープ測定は、窒素(不活性)雰囲気下、25mmの直径の平行なプレートを備える応力/歪制御Anton Paar MCR501レオメーターで実施した。圧縮成形された試料を挿入する前に、熱的に安定な環境を確保するため、プレートを、180℃で、少なくとも30分間、馴致させた。試料挿入後、良好な接触を確保するため、プレートを正の法線応力により閉じた。約1分後、間隙が1.7〜2.1 mmに減少するまで、プレートを圧縮した。さらに1分後、時間スイープ測定を、180℃において、10 rad/sの角周波数、0.5%の定歪を用いて、少なくとも3600秒以上の時間で実施した。
【0148】
係数の変化は、Macromolecules 2006、39、8882-8885に記載されているように、時間の関数としてプロットした。開始G'は、G'
0として記録され、一方、終了G'は、G'
pとして記録される。G'
0/G'
pは、絡み合いの度合いを特徴づけるために使用される。より小さい値は、絡み合っていない度合いがより大きいことを示す。いくつかの場合では、プラトー係数は試験時間枠内に表れず、したがって、このような場合の真の絡み合いの度合いは、G'
0/G'
pにより評価されるものよりも大きい。
【0149】
均質性の測定/ホワイトスポット評価(WSR)
配合組成物のホワイトスポット評価を、ISO 18 553/2002-03-01に従い、以下のように測定する。
【0150】
単一の配合ステップ後に得られる組成物のペレットを、6つの異なるペレットを収集することにより分析し、各ペレットからは、1つのカットを使用する(カット厚さ20±2 μm)。ホワイトスポット評価測定用のカットは、回転式ミクロトームType Leica RM2265を用いて、ペレット(試料)の中央付近から採取すべきである。好ましくは、カットは、ペレタイザー全体を通った溶融物の流れ方向である。
【0151】
カットは、×100の倍率で評価され、各カットの全領域上の色のついていない含有物(「ホワイトスポット」=ポリマー中の色素ではない、高分子量凝集物/粒子)の大きさ及び数を測定する。直径が> 5 μmである全てのホワイトスポットを計測する。Maerzhaeuser製のXYZモーター駆動ステージ及びOlympus製の粒子インスペクタソフトウェアを備えた透過光顕微鏡Olympus BX41を使用した。
【0152】
ホワイトスポット評価試験「均質性」はISO 18553/2002-03-01に基づく。この試験では、上記の単一の配合ステップ後に存在する、ホワイトスポットとして現れる組成物の不均質性を、ISO 18553/2002-03-01において与えられる評価スキームに従い、測定及び評価する。本試験では、組成物においてより少ないと評価される(高分子量粒子の量がより少ない)のが、より良好な組成物の均質性である。
【0153】
引張特性
引張弾性率/引張強度/引張強度での引張歪
引張試験は、圧縮成形試料に関して、23℃で、ISO 527-2:1993に従い実施される。
試料(5A型)は、ISO 1872-2:2007の第3.3章中に規定された条件を使用し、ISO 293:2004に従い、圧縮成形によって調製された厚さが2 mmの小板から切り出した。
係数を、1 mm/分の速度で測定した。
引張強度(単位MPa)を測定するために、23℃で、ISO 527-2に従う前記引張試験を、試料が壊れるまで、50 mm/分の伸長速度で継続した。
【0154】
降伏応力
降伏応力(単位MPa)は、ISO 527-2に従い、同試料において測定した。測定は、23℃の温度で、50 mm/分の伸長速度で実施した。
【0155】
破壊応力及び破壊歪
破壊応力(単位MPa)及び破壊歪(単位%)は、ISO 527-2に従い、同試料において測定した。測定は、23℃の温度で、50 mm/分の伸長速度で実施した。
【0156】
実施例
触媒(A)の調製
複合体の調製
87 kgのトルエンを反応器中に加えた。次に、ヘプタン中45.5kgのBomag A(ブチルオクチルマグネシウム)をさらに反応器中に添加した。次いで、161kgの99.8%の2-エチル-1-ヘキサノールを24〜40 kg/hの流量で反応器中に導入した。BOMAG-Aと2-エチル-1-ヘキサノールの間のモル比は、1:1.83であった。
【0157】
固体触媒成分の調製
330kgのシリカ(焼成シリカ、Sylopol(登録商標)2100)及びペンタン(0.12 kg/kg担体)を触媒調製反応器中に充填した。次いで、EADC(二塩化エチルアルミニウム)(2.66 mol/kg シリカ)を、2時間の間に、40℃未満の温度で、反応器中に添加し、混合を1時間継続した。混合中の温度は40〜50℃であった。次いで、前記のように調製したMg複合体(2.56 mol Mg/kgシリカ)を、2時間の間に、50℃で添加し、混合を40〜50℃で、1時間継続した。0.84 kgペンタン/kgシリカを反応器中に添加し、スラリーを、40〜50℃の温度で、4時間撹拌した。最終的に、TiCl
4(1.47 mol/kgシリカ)を、少なくとも1時間の間に、55℃で反応器に添加した。スラリーを、50〜60℃で、5時間撹拌した。その後、触媒を窒素パージにより乾燥した。
準備触媒のモル組成比は、Al/Mg/Ti = 1.5/1.4/0.8 (mol/kgシリカ)である。
【0158】
触媒(B)
触媒(B)として、BASFにより供給されるLynx 200触媒(MgCl
2-担持)を使用した。
【0159】
実施例(Inventive Example)1〜7において使用されるUHMWPEの重合
単峰性スラリー共重合を5.3 Lのベンチスケールの反応器で実施し、以下のように記載することができる。
【0160】
反応器を、プロセスフロー表示ソフトウェアとしてWIN CCを使用して、SIEMENS SIMATIC BATCHのプロセス制御システムにより操作した。全ての触媒及び共触媒成分をグローブボックス中に貯蔵した。スウェージロック(Swagelok)クイックコネクツを備える特別に設計された金属管を、触媒を反応器中に注入するために使用した。
【0161】
23℃の温度に維持された、撹拌中の5.3リットルのバッチ反応器中に、850 gのプロパン希釈剤を導入し、共触媒としてのトリエチルアルミニウム(TEA)を、Al/Tiの比率が、触媒(A)について15、触媒(B)について3.7となるように、導入した。
【0162】
例えば、IE6及びIE7では、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)を、共触媒としてAl/Tiが15となる比率で使用した。
【0163】
その後、温度を実際の重合温度まで昇温し、触媒を添加した。
重合条件を表1にまとめる。
重合は、反応器から炭化水素を排出することにより中断した。
重合中、水素は添加しなかった。
【表1】
【0164】
このようにして調製されたUHMWPEは、表2に示されるような以下の特性を有していた。
【表2】
【0165】
比較例1〜3では、Jingchem Corporationから購入したUHMWPEホモポリマーを使用した。特性は、表3において見ることができる。
【表3】
【0166】
CE1及びCE2において使用されたUHMWPEは、WO 2013/060736において使用されたものと同じであった。
【0167】
成分(A)として、EP 1985660 B2; 2. Production of polymer compositions and pipes, Exampleに記載される通りに調製した二峰性HDPEを使用した。
【0168】
したがって、二峰性HDPEを、50 dm3のループ反応器における、スラリーでの第1の(前)重合段階の後、スラリーを500 dm3のループ反応器に輸送し、そこで、スラリーでの重合を継続して、低分子量成分を製造するステップ、及び第2のループ反応器からの生成物の存在下における、ガス相反応器での第2の重合により、高分子量成分を含有するコモノマーを製造するステップを含む多段階反応において製造した。コモノマーとして、ヘキセン-1を使用した。
触媒として、BASFから入手することができるLYNX 200を使用した。このようにして調製されたHDPE(成分(A))は947 kg/m
3の密度を有していた。
【0169】
ブレンドの調製
最終的な組成物に基づいて、2つの出発材料(83.88重量%の成分(A) + 10重量%の成分(B))と、lrganox B225 (0.22重量%)、ステアリン酸Ca(0.15重量%)及び5.75重量%のカーボンブラックマスターバッチとの様々なブレンドを、従来の押出条件を使用して、同方向回転2軸押出機を使用して調製した。押出を、230℃で、120rpmで実施した。押出量は0.5 kg/hであった。試料を1回だけ押出した。
【0170】
カーボンブラックの添加のために、39.5重量%のカーボンブラック(Cabotにより販売されるElftex TP)、0.1重量%のIrganox 1010(Ciba製、今ではBASFの一部門)、及び60.4重量%のエチレン-ブチレンコポリマー(1.7重量%のコモノマー含量、30 g/10分のMFR
2 (2.16 kg、190°C、ISO 1133)及び959 kg/m
3の密度を有する)を含有するマスターバッチを、5.75重量%で使用した。
【0171】
ブレンドの特性は、表5及び6において見ることができる。
【0172】
参照物質は、6.12重量%の上記のような添加剤パッケージを有する、93.88重量%の成分(A)である。
【表4】
【表5】