特許第6190959号(P6190959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190959
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】液体噴射にかかる径制御
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/58 20060101AFI20170821BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B29C49/58
   B29C49/12
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-523714(P2016-523714)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公表番号】特表2016-523743(P2016-523743A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】US2013048450
(87)【国際公開番号】WO2014209339
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】クマー パンカジェ
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/050047(WO,A1)
【文献】 特開2002−067131(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/051365(WO,A1)
【文献】 特表2009−533290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/58
B29C 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製プリフォームから容器を形成するための方法であって、前記容器の形状のキャビティを規定する内面を有する型内に、閉端及び開端により画定され前記プリフォームの最小径を規定する本体を有する前記プリフォームを位置付ける位置付けステップと、液体である成形媒体を前記プリフォーム内に射出する射出ステップと、前記型内で前記プリフォームを軸方向に延伸する延伸ステップと、射出された前記成形媒体により、前記容器の形状を規定する前記キャビティの内面に沿って前記プリフォームを径方向に膨張させる膨張ステップとを含み、
前記射出ステップはさらに、前記成形媒体を前記プリフォームの前記最小径未満の外径を有する細流に形成するステップと、前記細流が前記プリフォームの前記閉端に最初に衝突するように前記細流を前記プリフォーム内に方向付けて、前記プリフォームの前記閉端以外の部分に最初に衝突することを防止するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記プリフォームは、前記プリフォームの口部と本体との間に延設された移行部を有し、前記移行部は、前記プリフォームの前記口部から前記本体に至るまで縮径しており、前記成形媒体の前記射出ステップはさらに、前記細流を形成し、前記細流が前記移行部に衝突しないように前記細流を射出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記成形媒体の前記射出ステップはさらに、前記細流を形成し、前記細流が前記プリフォームの前記本体に衝突しないように前記細流を射出するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記プリフォームを軸方向に延伸する前記延伸ステップは、延伸ロッドを、前記延伸ロッドが前記プリフォーム内に延長される延長位置まで移動させ、前記プリフォームに接触させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、液体の前記射出ステップは、前記延伸ロッドを前記プリフォーム内で延長しながら行われることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、液体の前記射出ステップは、前記プリフォームを軸方向に延伸する前記延伸ステップの後に行われることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記プリフォームを軸方向に延伸する前記延伸ステップは、前記プリフォーム内に射出された前記成形媒体が前記プリフォームに加える力により、前記プリフォームを軸方向に延伸するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記成形媒体の前記射出ステップはさらに、前記プリフォームの前記本体の前記最小径よりも2mm以上小さい径を有する前記細流を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、当該方法はさらに、センタリングロッドを前記キャビティ内に延長するステップと、前記プリフォームの前記閉端の外面を前記センタリングロッドと係合させるステップと、前記プリフォームの軸方向の延伸において、前記センタリングロッドを後退させるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
プラスチック製プリフォームを容器へと液圧ブロー成形するための成形システムであって、
前記容器の形状の型キャビティを規定する内面を有すると共に、閉端と開端との間に延設され前記プリフォームの最小内径を規定する本体を有するプリフォームを内部に収容するように構成された型と、
貫通する主ボア、並びに、前記主ボアへの入口及び出口径を規定する前記主ボアからの出口を有するノズル本体を有するノズルと、
前記ノズルに対して閉位置と開位置との間を移動可能な密封ピンであり、前記閉位置では前記出口を前記主ボアから塞止し、前記開位置では前記出口を塞止しない密封ピンと、
前記ノズルに連結された、前記容器中に貯留される液体である成形媒体の供給源とを有し、
前記出口径は、前記プリフォームの前記最小内径未満であり、それにより、成形中に前記成形媒体は前記出口から前記プリフォーム内へ細流として射出され、前記細流は前記プリフォームの前記本体に衝突しないことを特徴とする成形システム。
【請求項11】
請求項10記載の成形システムにおいて、前記プリフォームの前記本体は、前記開端から前記閉端に向かって延設された移行部を有し、前記移行部は、前記口部から前記閉端に向かって縮径していることを特徴とする成形システム。
【請求項12】
請求項11記載の成形システムにおいて、前記出口径は、前記プリフォームの前記最小内径よりも2mm以上小さい径を有することを特徴とする成形システム。
【請求項13】
請求項10記載の成形システムにおいて、当該成形システムはさらに、前記密封ピンの中央ボアに設けられ、後退位置と延長位置との間を移動可能な延伸ロッドを有し、前記延長位置において前記延伸ロッドは前記プリフォーム内に延長されることを特徴とする成形システム。
【請求項14】
請求項13記載の成形システムにおいて、前記延伸ロッドは前記出口の中央に延長されることを特徴とする成形システム。
【請求項15】
請求項13記載の成形システムにおいて、当該成形システムはさらに、後退位置と延長位置との間を移動可能なセンタリングロッドを有し、前記延長位置において前記センタリングロッドは、前記プリフォームの前記閉端の外面に接触することを特徴とする成形システム。
【請求項16】
請求項10記載の成形システムにおいて、当該成形システムはさらに、後退位置と延長位置との間を移動可能なセンタリングロッドを有し、前記延長位置において前記センタリングロッドは、前記プリフォームの軸方向の延伸時に前記プリフォームの前記閉端の外面に接触することを特徴とする成形システム。
【請求項17】
請求項10記載の成形システムにおいて、前記出口は噴出角度を規定する末端部を有することを特徴とする成形システム。
【請求項18】
請求項17記載の成形システムにおいて、前記噴出角度は、前記出口を貫通する中心縦軸に対して規定され、0度〜5度の範囲であることを特徴とする成形システム。
【請求項19】
請求項17記載の成形システムにおいて、前記噴出角度は、前記出口を貫通する中心縦軸に対して規定され、0度であることを特徴とする成形システム。
【請求項20】
請求項10記載の成形システムにおいて、前記プリフォームの前記最小内径は、前記プリフォームの移行部により規定されることを特徴とする成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、プリフォームからのプラスチック容器の成形に関する。特に、本発明は、液圧ブロー成形においてプリフォーム内に射出される液体細流(stream)の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、一般的に、(粘性のものを含む)液体製品等の様々な製品のパッケージに使用されている。プラスチック容器の一般的な種類として、しばしばポリエステル材料、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されるブロー成形プラスチック容器が挙げられる。ブロー成形容器は、通常、加熱したプリフォームをブロー型内に置いてから、プリフォームが所望の容器の最終的な形状を規定する型キャビティの内面に接触するまでプリフォームを空気によりブロー及び膨張させることにより形成される。膨張後のプリフォームが、プラスチックを「凝固」するのに十分な時間の間、ブロー空気の圧力により型キャビティの内面に対して保持された後、ブロー成形容器が型から取り出される。
【0003】
従来のブロー成形では、加熱されたプリフォームを型キャビティに導入後、ブローエアーを導入してプリフォームを有意に径方向に膨張させる前に、延伸ロッドをプリフォーム内に前進させてプリフォームの縦延伸を開始させることが多い。延伸ロッドは、通常、径方向の膨張時にはプリフォーム内に保持され、容器を成形装置から取り出す前に後退される。
【0004】
それから、ブロー成形容器は、容器に目的とする製品を充填する場所まで搬送される。これには、容器のパッケージ及び遠隔地への出荷が含まれ、時には、小売店又はエンドユーザに出荷される前のそうした最終ステップが行われる地域施設への容器の移送を伴う。
【0005】
上記の方法では、製品が充填された容器の製造工程において、ブロー成形及び充填は異なる別個のステップである。より新規な方法では、容器の成形において最終製品を使用する。ブロー媒体として空気を使用する替わりに、この新規な方法は、液体、より具体的には、容器にパッケージされエンドユーザに販売されることになる実際の最終製品を容器の成形媒体として使用する。本明細書中で用いられるとき、こうした種類の成形は液圧ブロー成形と呼称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先述した必要性を満たし、関連技術の上記問題点及びその他の制限を解決するために、本発明の1つの側面は、プリフォームから容器を液圧ブロー成形するための方法及びシステムを提供する。
【0007】
別の側面では、本発明は、プラスチック製プリフォームから容器を形成するための方法であって、前記容器の形状のキャビティを規定する内面を有する型内に、閉端及び開端により画定され前記プリフォームの最小径を規定する本体を有する前記プリフォームを位置付ける位置付けステップと、液体である成形媒体を前記プリフォーム内に射出する射出ステップと、前記型内で前記プリフォームを軸方向に延伸する延伸ステップと、射出された前記成形媒体により、前記容器の形状を規定する前記キャビティの内面に沿って前記プリフォームを径方向に膨張させる膨張ステップとを含み、前記射出ステップはさらに、前記成形媒体を前記プリフォームの前記最小径未満の外径を有する細流に形成するステップと、前記細流が前記プリフォームの前記閉端に最初に衝突するように前記細流を前記プリフォーム内に方向付けて、前記プリフォームの前記閉端以外の部分に最初に衝突することを防止するステップとを含む方法を提供する。
【0008】
本発明の別の側面では、前記プリフォームは、前記プリフォームの口部と本体との間に延設された移行部を有し、前記移行部は、前記プリフォームの前記口部から前記本体に至るまで縮径しており、前記成形媒体の前記射出ステップはさらに、前記細流を形成し、前記細流が前記移行部に衝突しないように前記細流を射出するステップを含む。
【0009】
本発明のさらに別の側面では、前記成形媒体の前記射出ステップはさらに、前記細流を形成し、前記細流が前記プリフォームの前記本体に衝突しないように前記細流を射出するステップを含む。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、前記プリフォームを軸方向に延伸する前記延伸ステップは、延伸ロッドを、前記延伸ロッドが前記プリフォーム内に延長される延長位置まで移動させ、前記プリフォームに接触させるステップを含む。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、液体の前記射出ステップは、前記延伸ロッドを前記プリフォーム内で延長しながら行われる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、液体の前記射出ステップは、前記プリフォームを軸方向に延伸する前記延伸ステップの後に行われる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、前記プリフォームを軸方向に延伸する前記延伸ステップは、前記プリフォーム内に射出された前記成形媒体が前記プリフォームに加える力により、前記プリフォームを軸方向に延伸するステップを含む。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、前記成形媒体の前記射出ステップはさらに、前記プリフォームの前記本体の前記最小径よりも2mm以上小さい径を有する前記細流を形成するステップを含む。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、本発明はさらに、センタリングロッドを前記キャビティ内に延長するステップと、前記プリフォームの前記閉端の外面を前記センタリングロッドと係合させるステップと、前記プリフォームの軸方向の延伸において、前記センタリングロッドを後退させるステップとを含む。
【0016】
別の側面では、本発明は、プラスチック製プリフォームを容器へと液圧ブロー成形するための成形システムであって、前記容器の形状の型キャビティを規定する内面を有すると共に、閉端と開端との間に延設され前記プリフォームの最小内径を規定する本体を有するプリフォームを内部に収容するように構成された型と、貫通する主ボア、並びに、前記主ボアへの入口及び出口径を規定する前記主ボアからの出口を有するノズル本体を有するノズルと、前記ノズルに対して閉位置と開位置との間を移動可能な密封ピンであり、前記閉位置では前記出口を前記主ボアから塞止し、前記開位置では前記出口を塞止しない密封ピンと、前記ノズルに連結された、前記容器中に貯留される液体である成形媒体の供給源とを有し、前記出口径は、前記プリフォームの前記最小内径未満であり、それにより、成形中に前記成形媒体は前記出口から前記プリフォーム内へ細流として射出され、前記細流は前記プリフォームの前記本体に衝突しない成形システムを提供する。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、前記プリフォームの前記本体は、前記開端から前記閉端に向かって延設された移行部を有し、前記移行部は、前記口部から前記閉端に向かって縮径している。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、前記出口径は、前記プリフォームの前記最小内径よりも2mm以上小さい径を有する。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、本発明は、前記密封ピンの中央ボアに設けられ、後退位置と延長位置との間を移動可能な延伸ロッドを有し、前記延長位置において前記延伸ロッドは前記プリフォーム内に延長される。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、前記延伸ロッドは前記出口の中央に延長される。
【0021】
本発明のさらに別の側面では、本発明は、後退位置と延長位置との間を移動可能なセンタリングロッドを有し、前記延長位置において前記センタリングロッドは、前記プリフォームの前記閉端の外面に接触する。
【0022】
本発明のさらに別の側面では、本発明は、後退位置と延長位置との間を移動可能なセンタリングロッドを有し、前記延長位置において前記センタリングロッドは、前記プリフォームの軸方向の延伸時に前記プリフォームの前記閉端の外面に接触する。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、前記出口は噴出角度を規定する末端部を有する。
【0024】
本発明のさらに別の側面では、前記噴出角度は、前記出口を貫通する中心縦軸に対して規定され、0度〜5度の範囲である。
【0025】
本発明のさらに別の側面では、前記噴出角度は、前記出口を貫通する中心縦軸に対して規定され、0度である。
【0026】
本発明のさらに別の側面では、前記プリフォームの前記最小内径は、前記プリフォームの移行部により規定される。
【0027】
本発明のさらなる目的、特徴及び効果は、本明細書に添付されその一部を成す図面及び特許請求の範囲を参照しながら以下の説明を読めば、当業者には容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1A及び図1Bは、本発明の原理が組み込まれた液圧ブロー成形システムの概略図である。
図2図2A及び図2Bは、図1A及び図1Bに示されている実施形態においてセンタリングロッドの使用がさらに取り入れられた実施形態の概略図である。
図3図3A及び図3Bは、本発明の原理が組み込まれた液圧ブロー成形システムの別の実施形態の概略図である。
図4図4A及び図4Bは、図3A及び図3Bに示されている実施形態においてセンタリングロッドの使用がさらに取り入れられた実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
先述したように、液圧ブロー成形においては、成形媒体が空気ではなく液体である。本明細書中で用いられるとき、液体との用語は、水に近い粘性を有する液体(例えば、水、スポーツドリンク及び茶等の飲料として消費される液体)のみではなく、水よりも実質的に高い粘性を有し、粘性液体と一般的に呼称される液体(例えば、ケチャップ及び食器用洗剤等の調味料又は家庭用製品として使用される粘性液体)をも包含することを意図するものである。
【0030】
液体である最終製品を成形媒体として使用する液圧ブロー成形では、従来の延伸ロッドを使用することができる。こうした場合、延伸ロッドは製品汚染源になり得るため、確実に製品汚染が生じないようにするためには、定置洗浄(Clean−In−Place)システム/工程の利用が必要であり得る。
【0031】
本発明は、延伸ロッドを使用して又は使用せずに実施される液圧ブロー成形に適用可能である。本発明の1つの側面によれば、従来の延伸ロッドが使用されるが、本発明の別の側面によれば、本明細書中で液体ベクトルと呼称されるものが優先され、延伸ロッドは省略される。液体ベクトルを利用することにより、新たに形成される容器に貯蔵されるべき最終製品を利用してプリフォームの最初の又は完全な延伸を行うことができる。
【0032】
ここで、図面を参照すると、図1A及び図1Bには、全体として参照符号10が付された液圧ブロー成形システムが概略的に示されている。成形システム10は、その主要な部品として、ノズル12と(図面では1つのみが示されている)少なくとも1個の型14とを有する。
【0033】
型14は、一対の型半部16から成り、それぞれが、協働して所望の容器の形状である型キャビティ20を規定する内面18を有する。型半部16は、ヒンジ留め又はそうでなければ開閉可能に接続されており、それにより、型半部16の型キャビティ20内には、プリフォーム24を収容し、プリフォーム24の本体26を位置付けることができる。
【0034】
型14の上側部分はプリフォーム24を収容及び保持するように構成されている。プリフォーム24を保持するための手段として、プリフォーム24のねじ山が形成された口部22が型14の上部まで延びた状態で、型14の頂部の対応する形状の凹部にプリフォーム24の支持体又は操作リングを嵌合させる方法が挙げられる。様々なその他の代替的な方法、例えば、型14の対応部分の内部に支持リングを入れ込む又は引っ掛ける方法を利用してプリフォーム24を保持及び型14内に係合させることができる。
【0035】
プリフォーム2を型キャビティ20内に配する前に、プリフォーム24の本体26は、容器の形成及び充填に適した温度まで加熱される。プリフォーム24は、当該プリフォーム24を、一連の放射、赤外線又はその他の種類のヒータを通り過ぎるように加熱炉(図示せず)を通過させるといった様々な手段により加熱することができる。プリフォーム及び容器の設計の特性に応じて、加熱炉は、プリフォーム24の本体26の縦方向長さに沿って、口部22から閉端28に至るまで様々な温度プロフィールを生じさせるように構成することができる。
【0036】
また、プリフォーム24は、様々な材料から形成することができる。ポリエチレンテフタレート(PET)は好適な材料であるが、容器を形成することができるその他の材料として、以下に限定されるわけではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)及び熱可塑性混合物、並びに、こうした材料の多層構造等が挙げられる。本発明は、特定の材料に何ら限定されることを意図するものではない。
【0037】
型14内に加熱後のプリフォーム24が位置付けられた状態で、図1Aに示されているように、プリフォーム24の本体26を型キャビティ20の空き空間に延長させる。その後、アクチュエータ30により、ノズル12がプリフォームの口部22の頂部又は密封面と密封された形で係合する位置までノズル12を移動させる。アクチュエータ30は、電動駆動式、空気圧駆動式又はその他の駆動式のアクチュエータである。
【0038】
ノズル12は、2個の主要部品、すなわち、ノズル本体32及び密封ピン34を有する。密封ピン34は、ノズル本体32のボア38内に設けられている。以下、このボア38を主ボア38と呼称する。密封ピン34は、第2アクチュエータ36により、後述する閉位置と開位置との間で主ボア38内を軸方向に並進可能である。第1アクチュエータ30と同様に、第2アクチュエータ36は、公知の種類のアクチュエータの1つとすることができる。代替的には、単一のアクチュエータを使用して、ノズル本体32及び密封ピン34両方の移動を実現及び制御することもできる。ノズル本体32はさらに、成形媒体を主ボア38に導入するための入口40と、成形媒体を射出するための出口42とを有する。
【0039】
入口40により、主ボア38には成形媒体45の供給源44が接続されている。成形媒体45は、主ボア38に収容されると加圧状態となる。加圧は、供給源44で生じさせる若しくは既に行われているか、又は、ノズル12の途中で行うことができる。加圧は、ノズル12に装着された様々な手段、例えば、高圧ポンプ又は充填チャンバ及びピストンの使用等によっても行うことができる。図示を目的として、供給源44として示されているものは、成形媒体45の供給源及びその加圧手段の両方を示すものである。成形媒体45の主ボア38内への供給のために、(図1Aでは図示されているが、図1Bでは省略されている)入口弁46を任意選択的に設けることができる。システムの特定の設計に応じて、加圧されていない成形媒体45の供給源と加圧手段との間に入口弁46を設けることができる。
【0040】
出口42に直ぐ隣接して、弁シート48を規定する内面を備えた主ボア38が設けられている。この表面は、好適には円錐台形状で設けられているが、形状が密封ピン34の対応する密封面50と係合する際に弁シートとして機能するのであればその他の形状であってもよい。図示されている実施形態のノズル12では、密封ピンの密封面50は、対応する円錐台形状の外面により規定されている。通常は図1Aで示されている最下位置又は延長位置において、密封ピン34は、密封面50が主ボア38の弁シート48と密封された形で係合し、密封ピン34の末端52が出口42に向けて延びるようにして位置付けられる。
【0041】
ノズル12の最初の動作中、密封ピン34は、アクチュエータ36により前進され、密封面50が弁シート48と係合する。それにより、主ボア38はプリフォーム24の内部から密封され、成形媒体45は入口40を通じて主ボア38に供給される。密封面50と弁シート48との間の係合の性質については、成形媒体45が主ボア38から出口42に流出しないものとする。
【0042】
密封ピン34の中央ボア66内には延伸ロッド56が配されている。延伸ロッド56は円筒形状で、プリフォーム24の閉端28の内面と係合するように形状付けられた末端58を有する。延伸ロッド56は中央ボア66内で、後退位置から延長位置までを軸方向にスライド可能である。後退位置では、延伸ロッド56の末端58は密封ピン34の末端52に戻るか、又は、隣接する。延長位置では、延伸ロッド56の末端58はプリフォーム24の閉端28と係合する。延伸ロッド56の前進及び後退のために、延伸ロッド56はアクチュエータ60に連結されており、また、ピストンを有して機械、空気圧、液圧、サーボ又はその他の手段により駆動され得る。
【0043】
図1Aに示されているように、密封面50が弁シート48に係合した状態で、延伸ロッド56は延長されて最初にプリフォーム24の閉端28に係合する。その後、延伸ロッド56はアクチュエータ60によりさらに前進されて、図1Bに示されているように、プリフォーム24を軸方向に延伸させる。プリフォーム24内に誘導される軸方向の延伸量は、プリフォーム24の部分的又は全体的な軸方向の延伸とすることができる。図1A及び図1Bでは、プリフォーム24は部分的に軸方向に延伸されている様子が示されているが、理解されるように、プリフォーム24の閉端28が型キャビティ20を規定する内面18の底壁と係合するように延伸ロッド56を前進させてプリフォーム24を全体的に軸方向に延伸してもよい。この段階の操作中に行われる延伸の量は、プリフォーム24、容器及びその他の処理要素の特定の設計に応じて決定される。
【0044】
プリフォーム24が十分に軸方向に延伸された後、延伸ロッド56を密封ピン34の中央ボア66内に後退させることができる。あるいは、図1Bに示されているように、延伸ロッド56をその延長位置で保持してもよい。同時に、密封ピン34も後退され、それにより、図1Bに示されているように密封面50が弁シート48から隔離する。密封面50が弁シート48から後退すると、ノズル本体32の主ボア38はプリフォーム24内部と液通し、加圧された成形媒体45が出口42から噴出し、プリフォーム24内に射出される。
【0045】
成形媒体45の出口開口42からの噴出は、プリフォーム24内及び延伸ロッド56の周囲に液体の噴射又は細流(以下、細流62と呼称する)を形成するようにして行われる。細流62は、具体的には図1Bに示されているように最初にプリフォーム24の閉端28に衝突する。その後、結果として生じた成形媒体45の流れは、キャビティ20を規定する面18に沿ってプリフォーム24を径方向に膨張させ、さらに必要に応じてプリフォーム24を軸方向に延伸させるように働き、それにより、成形媒体45を用いて容器64を形成すると共に充填する。
【0046】
いくつかの場合には、プリフォーム24には、プリフォーム24の口部22と全体的に円筒形の本体26の部分との間に移行部90が設けられている。移行部90は、口部22から本体26の円筒形部分に至るまで徐々に縮径かつ肉厚となっている。その結果、本体26の円筒形部分に隣接するプリフォーム24の移行部90の端部における内径は、ノズル12に隣接する口部22の内径よりも非常に小さい。また、プリフォーム24が延伸ロッド56により延伸されると、プリフォーム24の内径は閉端28に向かってさらに減少する。
【0047】
最初にプリフォーム24に射出される細流62の温度は、プリフォーム24のガラス転移温度よりも低く、細流62と移行部90の材料との接触作用により、移行部90の材料が尚早に容器の形成に不利な温度まで凍結又は冷却されることがある。また、細流62を形成する成形媒体45の液性により、成形媒体が空気である場合と比べて、熱が移行部90の材料から一層伝導しやすくなる。成形媒体45との接触による尚早な移行部90の材料の凍結/冷却は、結果として得られる容器の形成にむらを生じさせるか、又は、容器の形成中にプリフォーム24を裂傷又は破裂させる可能性もある。
【0048】
生じ得るこれらの問題を防止するために、本発明の1つの側面によれば、ノズル12の主ボア38の出口42の径(出口径)は、プリフォーム24の内径(Dp)よりも小さく寸法付けられている。なお、プリフォーム24の内径(Dp)は、移行部90がプリフォーム24の本体26に合流する箇所、又は、延伸後のプリフォーム24の本体26の別の箇所の径であり得る。明瞭化のために、留意すべき点として、プリフォーム24の閉端28の内半径は、プリフォーム24の最小内径の判定に用いられるものではない。出口開口のこうした寸法付けにより、細流62の外径(Ds)もプリフォーム24の内径(Dp)より小さくなる。好適には、細流62の外径(Ds)は、プリフォーム24の最小内径よりも2mm以上小さい。このように細流62をプリフォーム24の内壁からさらに隔離することにより、細流62に存在し得る乱流を許容すると共に、最大径の細流62をプリフォーム24の閉端28と係合させることができる。プリフォーム24の径方向の膨張時に、細流62が最初に移行部90に接触するのを防止することができる。一方で、プリフォーム24内への成形媒体45の高い流速により、細流62はプリフォーム24の本体26を充填し、容器を径方向に膨張及び形成することができる。
【0049】
理解されるように、細流62の外径(Ds)の制御は、幅狭の移行部90を有さないプリフォーム24を用いて行うこともできる。こうした場合であっても、細流62の外径(Ds)は、プリフォーム24の最小寸法の内径(Dp)よりも小さく寸法付けられるだろう。
【0050】
また、細流62の温度は、適正な径方向の膨張、及び、さらには所望の軸方向の延伸を許可するような温度でなければならない。したがって、細流62の温度は、プリフォーム24がそのガラス転移温度未満に冷却され、それにより容器の効果的かつ完全な形成機能が損なわれることがない約10℃乃至100℃の範囲である。この点に関して、成形媒体45を、主ボア38への流入前又は流入後に、供給源44の温度より高い温度まで加熱することができる。こうした加熱は、加熱部品(図示せず)を主ボア38の少なくとも一部に隣接してノズル本体32内に配することにより実現できる。
【0051】
プリフォーム24の延伸及び容器の形成を補助するために、センタリングロッド68を使用することができる。図2A及び図2Bに示されているように、センタリングロッド68は液圧ブロー成形システム10と接続して設けられる。センタリングロッド68を有する点を除けば、図2A及び図2Bに示されているシステム10は図1A及び図1Bに示されているシステム10と同一である。そのため、共通の部品及び特徴は同一の参照符号を付けて、これら共通の部品及び特徴についての説明は図2A及び図2Bに関して省略する。先の説明を参照によりここで組み込むものとする。
【0052】
図2A及び図2Bに示されているように、センタリングロッド68は、型14の概して型半部16同士の間に延びており、接触端70がプリフォーム24の閉端28と係合するように位置付けられている。接触端70の端面は、プリフォーム24の閉端28の形状に沿った形状を有する。本例では、接触端70の端面は、凹形又は皿形である。接触端70の凹形はさらに、その内部に形成された中央凹みを有し、プリフォーム24の射出成形の始めに使用されるゲートの痕跡を収容するように設計されている。
【0053】
図2Aに示されているように、延伸ロッド56によるプリフォーム24の最初の延伸に先立って、延長されたセンタリングロッド68はプリフォーム24の閉端28に係合する。延伸ロッド56が延長されると、センタリングロッド68は、プリフォーム24の延伸速度と略等しい速度で後退する。センタリングロッド68の後退は、プリフォーム24の延伸に直接的に対応し得る。すなわち、センタリングロッド68は、延伸ロッド56及び延伸されたプリフォーム24が加える力の影響を受けて後退され得る。代替的には、センタリングロッド68の後退は、センタリングロッド68を最初に延長しプリフォーム24に係合させるために用いるアクチュエータ72により制御することができる。後者の場合、センタリングロッド68の後退の制御には、細流が接触端70又はセンタリングロッド68に加える圧力を測定するためのセンサ74を用いたフィードバックループを利用することができる。フィードバックループの利用により、プリフォーム24の延伸速度を、例えば、一定又は可変の速度といった所望の速度に維持又は制御することができる。
【0054】
ここで、図3A及び図3Bを参照すると、これらの図に示されている実施形態は、延伸ロッド56が使用されていない点を除いて図1A及び図1Bの実施形態と同様である。延伸ロッド56が含まれていない点を除いて、図3A及び図3Bに示されているシステムは図1A及び図1Bに示されているシステム10と同一である。そのため、共通の部品及び特徴は同一の参照符号を付けて、これら共通の部品及び特徴についての説明は図1A及び図1Bに関連付けて省略する。先の説明を参照によりここで組み込むものとする。
【0055】
延伸ロッド56を使用する代わりに、図3A及び図3Bのシステムでは、細流62を利用してプリフォーム24の延伸を行う。したがって、細流62は、細流62が液体ベクトルとして機能可能な力で射出され、プリフォーム24を軸方向に延伸させ、その後、プリフォーム24を容器の形状を規定するキャビティ20の面18に沿って径方向に膨張させる。その他の全ての側面については、図3A及び図3Bの実施形態は図1A及び図1Bと同様である。
【0056】
同様に、図4A及び図4Bの実施形態は図3A及び図3Bに示されている実施形態と同様であるが、センタリングロッド68が液体ベクトルと共に使用される点で異なっている。この後者の意味において、図4A及び図4Bは、図2A及び図2Bと同様でもある。図2A及び図2Bに示されているように、延伸ロッド68は、プリフォーム24の最初の延伸に先立ってプリフォーム24の閉端28と係合する。液体ベクトルが生じると、センタリングロッド68は、プリフォーム24の延伸速度と略等しい速度で後退する。センタリングロッド68の後退は、プリフォーム24の延伸に直接的に対応し得る。すなわち、センタリングロッド68は、延伸されたプリフォーム24の影響を受けて後退され得る。代替的には、センタリングロッド68の後退は、センタリングロッド68を最初に延長しプリフォーム24に係合させるために用いるアクチュエータ72により制御することができる。センタリングロッド68の後退の制御にも、細流62が接触端70又はセンタリングロッド68に加える圧力を測定するためのセンサ74を用いたフィードバックループを利用することができる。フィードバックループの利用により、プリフォーム24の延伸速度を、所望の一定又は可変の速度に維持又は制御することができる。
【0057】
それぞれの実施形態において、上記の細流62及び液体ベクトルを確実に強固に形成され方向付けられた細流として形成するために、出口42は、噴出度を規定する末端部を有する。いずれの図でも示されているように、出口42はその長さ全体にわたって一定の内径を有する。噴出度により規定される径は、出口42の径と等しいか、又は、それより僅かに大きい。好適には、噴出角度は5度未満である。さらに好適には、噴出度の径は、密封ピンボアと等しく、したがって、0度又は約0度である。
【0058】
当業者には容易に理解されるように、ここまでの説明は本発明の原理の実施例を示すためのものにすぎない。この説明は、本発明の範囲又は適用を限定することを意図するものではなく、本発明には、以下の特許請求の範囲に規定されているような本発明の精神を逸脱することなく変更、変形及び変化を加えることができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B