特許第6190961号(P6190961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190961高い剛性および靭性を有する高流動ポリオレフィン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190961
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】高い剛性および靭性を有する高流動ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20170821BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C08L23/14
   C08L23/12
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-535439(P2016-535439)
(86)(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公表番号】特表2016-528367(P2016-528367A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】EP2014067533
(87)【国際公開番号】WO2015024887
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】13181231.5
(32)【優先日】2013年8月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】サントホルツァー、 マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】カーレン、 スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】グレステンベルガー、 ゲオルク
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−528368(JP,A)
【文献】 特表2008−511703(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/142540(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02551299(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02386602(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02592112(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02573134(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02423257(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02410007(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 23/14
C08L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、
(i)15.0〜55.0g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)、および
(ii)24〜38重量%の範囲内の、ISO16152(25℃)に従って決定される冷キシレン溶解性物含量(XCS)を有し、さらに
(iii)前記異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性(XCS)画分の、DIN ISO1628/1(135℃におけるデカリン中)に従って決定される固有粘度(IV)が、2.0〜3.5dl/gの範囲内である
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)と、
(b)プロピレンホモポリマー(H−PP2)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)を含む第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、
(i)前記プロピレンホモポリマー(H−PP2)は、15超〜400g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(ii)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分は、3.7超〜9.0dl/gの範囲内の、DIN ISO1628/1(135℃におけるデカリン中)に従って決定される固有粘度を有し、
(iii)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分のコモノマー含量が10.0〜40.0重量%の範囲内である
第2の異相プロピレンコポリマーと(HECO2)
を含むポリオレフィン組成物。
【請求項2】
前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、
(a)40重量%未満の、ISO16152(25℃)に従って決定される冷キシレン溶解性物含量(XCS)、および/または
(b)1.0〜150g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)
を有する、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、8.0〜35重量%の範囲内の、ISO16152(25℃)に従って決定される冷キシレン溶解性物含量(XCS)を有する、請求項2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、下記不等式(IV)を満たし、
【数1】
式中、
Cは、前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、重量%表示のコモノマー含量であり、
IVは、前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、dl/g表示の固有粘度である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
(i)前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)が、6.0〜17.0重量%の範囲内のコモノマー含量を有し、および/または
(ii)前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分のコモノマー含量が26〜40重量%の範囲内である、
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、20.0重量%未満のコモノマー含量を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項7】
前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、マトリックスとしてのポリプロピレン(PP1)、および前記マトリックスに分散されたエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)を含み
i)前記ポリプロピレン(PP1)はプロピレンホモポリマー(H−PP1)であり、および/または
(ii)前記ポリプロピレン(PP1)は、60〜400g/10分の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)を有する、
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項8】
(i)前記ポリオレフィン組成物は、前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)と前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)とを1.2:1〜15:1の重量比[(HECO1):(HECO2)]において含み、および/または
(ii)前記2つの異相プロピレンコポリマー(HECO1)および(HECO2)が、前記ポリオレフィン組成物の少なくとも50重量%を占める、
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項9】
前記2つの異相プロピレンコポリマー(HECO1)および(HECO2)が、前記ポリオレフィン組成物の少なくとも70重量%を占める、請求項8に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物を少なくとも60重量%含む、自動車用物品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物を少なくとも80重量%含む、請求項10に記載の自動車用物品。
【請求項12】
前記自動車用物品が、バンパー、サイドトリム、ステップアシスト、ボディーパネル、スポイラー、ダッシュボード、および室内トリムからなる群から選択される、請求項10または11に記載の自動車用物品。
【請求項13】
バンパー、サイドトリム、ステップアシスト、ボディーパネル、スポイラー、ダッシュボード、および室内トリムからなる群から選択される物品のような自動車用物品の製造のための、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性(stiffness)と靭性(toughness)と流動性(flowability)の優れたバランスのような、改善された特性を有するポリオレフィン組成物に関する。本発明によるポリオレフィン組成物は、2つの明確な異相(ヘテロフェーズ性)プロピレンコポリマーの混合物を含む。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、必要とされる特定の目的に適応させることができるので、多くの応用において選ばれる材料である。例えば、異相ポリプロピレンは、良好な剛性と適切な衝撃強度挙動とを組み合わせているので、自動車産業において(例えばバンパーへの応用において)広く使用されている。異相ポリプロピレンは、非晶相が分散されたポリプロピレンマトリックスを含む。非晶相は、エチレンプロピレンゴム(EPR)もしくはエチレンプロピレンジエンモノマーポリマー(EPDM)のようなプロピレンコポリマーゴムを含む。さらに異相ポリプロピレンは、ある程度、結晶性ポリエチレンを含む。自動車産業においては、そのような異相ポリプロピレングレードは約30重量%の量のプロピレンコポリマーゴムを含み、これは通常、1つか2つの気相反応器において直接的に生産されるか、または、複合工程を介してマトリックスに外部添加される。
【0003】
自動車部品は射出成形によって製造されることが多くなってきている。バンパー、ボディーパネル、またはダッシュボードのような大きな自動車部品の射出成形は、十分に低い粘性(すなわち十分に高いメルトフローレート)を有しそれでいて許容範囲内でかつバランスのとれた機械的性能を有するポリマーを必要とする。しかしながら、より高いメルトフローレート(すなわちより高い流動性)のポリマーは通常、より低い分子量を示し、従って、より劣った機械的特性を示す。分子量の低下は、粘性を低下させ流動性を高めるだけでなく、靭性のような機械的特性を改変ないし劣化させる。従って、高い流動性と優れた機械的特性との組合せを示すポリマー組成物を提供することは些細なことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた機械的特性に加えて高い流動性を有するポリオレフィン組成物を提供し、例えば射出成形を用いた自動車部品(特に大きな自動車部品)の製造のためにその組成物を利用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、定義された特徴を有する2つの異なる異相プロピレンコポリマーを組み合わせることによって上記目的が達成され得ることを発見した。
【0006】
すなわち本発明は、
(a)第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、
(i)15.0〜55.0g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)、および
(ii)24〜38重量%の範囲内の、ISO16152(25℃)に従って決定される冷キシレン溶解性物(xylene cold soluble)含量(XCS)を有し、さらに
(iii)前記異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、DIN ISO1628/1(135℃におけるデカリン中)に従って決定される固有粘度(intrinsic viscosity)(IV)が、2.0〜3.5dl/gの範囲内である
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)と、
(b)第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、
プロピレンホモポリマー(H−PP2)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)を含み、
(i)前記プロピレンホモポリマー(H−PP2)は、15〜400g/10分の範囲内、例えば30超〜120g/10分の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(ii)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分は、3.7〜9.0dl/gの範囲内の、DIN ISO1628/1(135℃におけるデカリン中)に従って決定される固有粘度を有し、
(iii)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分のコモノマー含量が、10.0〜40.0重量%の範囲内、例えば12.0〜30.0重量%の範囲内である
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)と
を含むポリオレフィン組成物を提供する。
【0007】
好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、40重量%未満、好ましくは8〜35重量%の範囲内の、ISO16152(25℃)に従って決定される冷キシレン溶解性物含量(XCS)を有する。
【0008】
好ましい一実施態様において、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、下記不等式(IV)を満たし、
【数1】
式中、
Cは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、重量%表示のコモノマー含量であり、
IVは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、dl/g表示の固有粘度である。
【0009】
本発明のさらなる好ましい実施態様は、付随する従属請求項に記述される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した、本発明によるポリオレフィン組成物は、2つの特定の異相プロピレンコポリマーを含む。
【0011】
本発明において使用される「異相プロピレンコポリマー」あるいは「異相」という表現は、エラストマー性プロピレンコポリマーが(半)結晶性ポリプロピレン中に(細かく)分散されていることを示す。換言すると、(半)結晶性ポリプロピレンがマトリックスを構成し、そこにおいて、エラストマー性プロピレンコポリマーがマトリックス中(すなわち(半)結晶性ポリプロピレン中)の包含物(inclusions)を形成する。従って、マトリックスが、そのマトリックスの一部ではない(細かく)分散された包含物を含有し、その包含物は、エラストマー性プロピレンコポリマーを含有する。本発明による「包含物」という用語は、マトリックスと包含物とが異相系内において異なる相を形成し、その包含物が例えば高解像度顕微鏡(電子顕微鏡もしくは原子間力顕微鏡など)によって、または動的機械熱分析(dynamic mechanical thermal analysis)(DMTA)によって可視化可能であることを好ましく示す。具体的には、DMTAにおいては、少なくとも2つの別個のガラス転移温度の存在によって複数の構造の存在が同定され得る。
【0012】
本発明に従って利用される第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)および第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)を下記においてさらに詳細に説明する。
【0013】
[第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)]
上述したように、本発明によるポリオレフィン組成物は、必須成分として第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)を含む。第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、本明細書で言及される他の成分と混合される前には、ポリマー成分としてマトリックスポリプロピレン(PP1)およびそこに分散されるエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)のみを含むことが好ましい。換言すると、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、さらなる添加物を含み得るものの、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の総量に基づいて、より好ましくは第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)中に存在するポリマーに基づいて、5重量%を超える量、より好ましくは3重量%を超える量、例えば1重量%を超える量の他のポリマーは含まない。そのような低量において存在し得る1つの追加的ポリマーはポリエチレンであり、これは第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の調製によって得られる反応産物である。従って、本発明において定義される第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、ポリプロピレン(PP1)、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)、および任意で、この段落で言及される量のポリエチレンのみを含有することが特に理解される。
【0014】
本発明の1つの重要な側面は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)がかなり高いメルトフローレートを有すること、すなわち、少なくとも15.0g/10分の、より好ましくは15.0〜55.0g/10分の範囲内の、さらにより好ましくは20.0〜50.0g/10分の範囲内の、さらにより好ましくは20.0〜45.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有することである。
【0015】
好ましくは、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は熱機械的に(thermo mechanically)安定であることが望ましい。従って、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は少なくとも135℃、より好ましくは135〜168℃の範囲内の融解温度(T)を有することが理解される。
【0016】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO1)におけるプロピレン含量は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の総量に基づいて、より好ましくは第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のポリマー成分の量に基づいて、さらにより好ましくはポリプロピレン(PP1)とエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)を合わせた量に基づいて、83.0〜94.0重量%であり、より好ましくは85.0〜93.0重量%である。残りの部分は、プロピレンコポリマー(R−PP1)であるポリプロピレン(PP1)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)についてそれぞれ定義されるコモノマーを構成し、好ましくはエチレンである。従って、コモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、6.0〜17.0重量%の範囲内であり、より好ましくは7.0〜15.0重量%の範囲内である。
【0017】
上述したように、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のマトリックスはポリプロピレン(PP1)である。
【0018】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のマトリックスを構成する本発明によるポリプロピレン(PP1)は、60〜400g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)を有し、好ましくは100〜350g/10分の範囲内、より好ましくは150〜300g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0019】
ポリプロピレン(PP1)はプロピレンコポリマー(R−PP1)またはプロピレンホモポリマー(H−PP1)であり得、後者が好ましい。
【0020】
従って、ポリプロピレン(PP1)は、9.0重量%以下、より好ましくは7.0重量%以下、さらにより好ましくは4.0重量%以下のコモノマー含量を有することが理解される。
【0021】
本発明において使用されるプロピレンホモポリマーという表現、例えばプロピレンホモポリマー(H−PP1)およびプロピレンホモポリマー(H−PP2)という表現は、実質的に、すなわち99.0重量%以上、例えば少なくとも99.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.7重量%、例えば少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。他のモノマー単位が少量存在する場合には、後述するように、その単位はエチレンおよび/またはC〜C12αオレフィンから選択される。好ましい一実施態様では、プロピレンホモポリマーにおいてプロピレン単位のみが検出可能である。
【0022】
ポリプロピレン(PP1)が、プロピレンコポリマー(R−PP1)である場合には、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、例えばエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィン、特にエチレンおよび/またはC〜C10α−オレフィン、例えば1−ブテンおよび/または1−ヘキセンのようなコモノマーを含む。好ましくは、プロピレンコポリマー(R−PP1)は、エチレン、1−ブテン、および1−ヘキセンからなる群から選択される、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特には、それらのモノマーからなる。より具体的には、プロピレンコポリマー(R−PP1)は、プロピレンの他に、エチレンおよび/または1−ブテンから誘導可能な単位を含む。好ましい一実施態様において、プロピレンコポリマー(R−PP1)は、エチレンおよびプロピレンから誘導可能な単位のみを含む。プロピレンコポリマー(R−PP1)におけるこのコモノマー含量は、好ましくは1.0超〜9.0重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは1.0超〜7.0重量%の範囲内である。
【0023】
ポリプロピレン(PP1)は広い範囲、すなわち最大で5.0重量%の冷キシレン溶解性物含量(XCS)を有し得る。従って、ポリプロピレン(PP1)は、0.3〜5.0重量%の範囲内、好ましくは0.5〜4.5重量%の範囲内、例えば1.0〜4.0重量%の範囲内の冷キシレン溶解性物含量(XCS)を有し得る。
【0024】
しかしながら、好ましい実施態様においては、ポリプロピレン(PP1)は、特にポリプロピレン(PP1)がプロピレンホモポリマー(H−PP1)である場合には、0.5〜5.0重量%の範囲内、より好ましくは1.0〜4.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは1.5〜3.5重量%の範囲内の冷キシレン溶解性物(XCS)含量を有する。
【0025】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の1つのさらなる必須成分は、そのエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)である。
【0026】
エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)は、好ましくは、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、例えば、エチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィン、特にエチレンおよび/またはC〜C10α−オレフィン、例えば1−ブテンおよび/または1−ヘキセンのようなコモノマーを含む。好ましくは、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)は、エチレン、1−ブテン、および1−ヘキセンからなる群から選択される、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特には、それらのモノマーからなる。より具体的には、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)は、プロピレンの他に、エチレンおよび/または1−ブテンから誘導可能な単位を含む。すなわち特に好ましい一実施態様において、エラストマー性プロピレンコポリマー相(E1)は、エチレンおよびプロピレンから誘導可能な単位のみを含む。
【0027】
ポリプロピレン(PP1)が、プロピレンコポリマー(R−PP1)である場合には、プロピレンコポリマー(R−PP1)とエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)とのコモノマー(複数可)は同じであることが好ましい。
【0028】
エラストマー性プロピレンコポリマー相(E1)の特性が、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物(XCS)含量に主に影響する。従って、本発明によれば、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分は第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)として考えられる。
【0029】
従って、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)の量、すなわち冷キシレン溶解性物(XCS)画分の量は、好ましくは、24〜38重量%の範囲内、より好ましくは25〜37重量%の範囲内、さらにより好ましくは26〜36重量%の範囲内である。これらの値は第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)に基づくものであり、全ポリオレフィン組成物に基づくものではない。
【0030】
本発明の1つの重要な要件は、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)がバランスのとれた重量平均分子量を有することである。マトリックスとエラストマー相とが同様の分子量を有する場合には小さな粒子が形成される。小さい粒子は一般的に好ましいが、これは、そのことによって異相系の全般的特性が向上するからである。しかしながら、本発明では、マトリックスは高いメルトフローレートを有する傾向があり、従ってかなり低い重量平均分子量を有する。従って、小さな粒子を得るためには、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)も低い重量平均分子量を有するべきである。一方でこのことは、この場合においてエラストマー性プロピレンコポリマー(E1)の低重量平均分子量における激しい低減を意味し、これは機械的特性に対してネガティブな影響を有する。従って、固有粘度を注意深く選ばなければならない。
【0031】
低い固有粘度(IV)値は、低い重量平均分子量を反映する。従って、エラストマー性プロピレンコポリマー相(E1)、すなわち第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物画分(XCS)は、DIN ISO1628/1に従って決定される固有粘度(IV)(135℃におけるデカリン中)が、2.0〜3.5dl/gの範囲内、より好ましくは2.1以上から3.2dl/gまでの範囲内、さらにより好ましくは2.3以上から3.0dl/gまでの範囲内であることが理解される。
【0032】
エラストマー性プロピレンコポリマー相(E1)内におけるコモノマー含量、好ましくはエチレン含量も、好ましくは特定の範囲内にある。従って、好ましい一実施態様において、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)の、すなわち第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物画分(XCS)の、コモノマー含量、より好ましくはエチレン含量は、26〜40重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは28〜38重量%の範囲内、さらにより好ましくは31〜38重量%の範囲内である。従って、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)、すなわち第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物画分(XCS)のプロピレン含量は、好ましくは60〜74重量%の範囲内、さらにより好ましくは62〜72重量%の範囲内、さらにより好ましくは62重量%から69重量%以下までの範囲内であることが理解される。
【0033】
下記において説明するように、第1の異相ポリプロピレン(HECO1)およびその個々の成分(マトリックスおよびエラストマー性コポリマー)は、異なる種類(すなわち異なる分子量および/またはコモノマー含量)のポリマーを混合することにより産生することができる。しかしながら、第1の異相ポリプロピレン(HECO1)およびその個々の成分(マトリックスおよびエラストマー性コポリマー)は、連続的構成を有し異なる反応条件で稼働する反応器を使用して連続的工程によるプロセスで産生されることが好ましい。結果として、特定の反応器において調製される各画分は、独自の分子量分布および/またはコモノマー含量分布を有することとなる。
【0034】
本発明による第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、本技術分野で知られる連続的重合プロセスにおいて、すなわち複数段階プロセスにおいて好ましく産生され、そこでは、ポリプロピレン(PP1)が、少なくとも、1つのスラリー反応器にて、好ましくはスラリー反応器および任意で後続の気相反応器において産生され、続いて、エラストマー性プロピレンコポリマー(E1)が、少なくとも1つの気相反応器(複数可)において、すなわち1つまたは2つの気相反応器において産生される。
【0035】
従って、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、以下の工程を含む連続的重合プロセスにおいて産生されることが好ましい:
(a)第1の反応器(R1)において、プロピレンならびに任意で少なくとも1つのエチレンおよび/またはC〜C12αオレフィンを重合させて、ポリプロピレン(PP1)の第1のポリプロピレン画分を得る工程であって、好ましくは前記第1のポリプロピレン画分は第1のプロピレンホモポリマーである、工程、
(b)前記第1のポリプロピレン画分を第2の反応器(R2)に移す工程、
(c)前記第2の反応器(R2)において、前記第1のポリプロピレン画分の存在下で、プロピレンならびに任意で少なくとも1つのエチレンおよび/またはC〜C12αオレフィンを重合させて、それによって第2のポリプロピレン画分を得る工程であって、好ましくは前記第2のポリプロピレン画分は第2のプロピレンホモポリマーであり、前記第1のポリプロピレン画分と前記第2のポリプロピレン画分とが、ポリプロピレン(PP1)、すなわち前記異相プロピレンコポリマー(HECO1)のマトリックスを形成する、工程、
(d)工程(c)の前記ポリプロピレン(PP1)を第3の反応器(R3)に移す工程、
(e)前記第3の反応器(R3)において、工程(c)で得られた前記ポリプロピレン(PP1)の存在下で、プロピレンならびに少なくとも1つのエチレンおよび/またはC〜C12αオレフィンを重合させて、それによって第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を得る工程であって、前記第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分は前記ポリプロピレン(PP1)中に分散される、工程、
(f)前記第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分が分散された前記ポリプロピレン(PP1)を第4の反応器(R4)に移す工程、ならびに、
(g)前記第4の反応器(R4)において、工程(e)で得られた混合物の存在下で、プロピレンならびに少なくとも1つのエチレンおよび/またはC〜C12αオレフィンを重合させて、それによって第2のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を得る工程であって、前記ポリプロピレン(PP1)、前記第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分、および前記第2のエラストマー性プロピレンコポリマー画分が、前記異相プロピレンコポリマー(HECO1)を形成する、工程。
【0036】
もちろん、第1の反応器(R1)において第2のポリプロピレン画分を産生することができるし、第2の反応器(R2)において第1のポリプロピレン画分を得ることができる。エラストマー性プロピレンコポリマー相についても同じことが言える。従って、第3の反応器(R3)において第2のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を産生することができる一方、第4の反応器(R4)において第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分が作られる。
【0037】
好ましくは、第2の反応器(R2)と第3の反応器(R3)との間、および任意で第3の反応器(R3)と第4の反応器(R4)との間において、モノマーはフラッシュ・アウトされる。
【0038】
「連続的重合プロセス」という用語は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)が、一続きに接続された少なくとも2つ、例えば3つまたは4つの反応器において産生されることを示す。従って、本プロセスは、少なくとも第1の反応器(R1)と第2の反応器(R2)とを含み、より好ましくは、第1の反応器(R1)、第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)、および第4の反応器(R4)を含む。「重合反応器」という用語は主要な重合が起こることを示す。すなわち、プロセスが4つの重合反応器からなる場合には、この定義は、全体的なプロセスが例えば前重合反応器における前重合工程を含むというオプションを排除するものではない。「からなる(consist of)」という用語は、主要な重合反応器に関して限定的表現(closing formulation)であるに過ぎない。
【0039】
第1の反応器(R1)は好ましくはスラリー反応器(SR)であり、バルクまたはスラリーにおいて稼働するあらゆる連続的または単純撹拌バッチタンク反応器もしくはループ反応器であり得る。バルクとは、少なくとも60%(w/w)のモノマーから構成される反応媒体における重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0040】
第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)、および第4の反応器(R4)は好ましくは気相反応器(GPR)である。そのような気相反応器(GPR)は、あらゆる機械混合式または流動床式反応器であり得る。好ましくは、気相反応器(GPR)は、少なくとも0.2m/秒の気体速度を有する機械撹拌式流動床反応器を含む。すなわち、気相反応器は、好ましくは機械式攪拌機を伴う流動床型反応器であることが理解される。
【0041】
すなわち、好ましい一実施態様において、第1の反応器(R1)はスラリー反応器(SR)であり、例えばループ反応器(LR)であり、一方で、第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)、および第4の反応器(R4)は気相反応器(GPR)である。従って、本プロセスに関しては、一続きに接続された、少なくとも4つ、好ましくは4つの重合反応器、すなわちループ反応器(LR)のようなスラリー反応器(SR)、第1の気相反応器(GPR−1)、第2の気相反応器(GPR−2)、および第3の気相反応器(GPR−3)が使用される。もし必要ならば、スラリー反応器(SR)の前に前重合反応器が置かれる。
【0042】
好ましい複数段階プロセスは、例えば、EP0887379、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479あるいはWO00/68315におけるように特許文献に記載された、デンマークのボレアリス社により開発されたもの(BORSTAR(登録商標)テクノロジーとして知られる)のような、「ループ気相」プロセスである。
【0043】
さらなる適切なスラリー気相プロセスはバセル社のSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0044】
好ましくは、上記で定義された異相プロピレンコポリマー(HECO)を製造するための本プロセスにおいて、工程(a)の第1の反応器(R1)、すなわちループ反応器(LR)のようなスラリー反応器(SR)のための条件は、以下のようなものであり得る:
・温度は50℃〜110℃の範囲内であり、好ましくは60℃と100℃の間の範囲内であり、より好ましくは68℃と95℃の間の範囲内である。
・圧力は20bar〜80barの範囲内であり、好ましくは40bar〜70barの範囲内である。
・それ自体公知であるやり方によって、モル質量を制御するために水素を添加し得る。
【0045】
続いて、工程(a)からの反応混合物を、第2の反応器(R2)すなわち気相反応器(GPR−1)に移し、すなわち工程(c)へと移し、ここで工程(c)における条件は好ましくは以下のようなものである:
・温度は50℃〜130℃の範囲内であり、好ましくは60℃と100℃の間の範囲内である。
・圧力は5bar〜50barの範囲内であり、好ましくは15bar〜35barの範囲内である。
・それ自体公知であるやり方によって、モル質量を制御するために水素を添加し得る。
【0046】
第3の反応器(R3)および第4の反応器(R4)における条件、好ましくは第2の気相反応器(GPR−2)、および第3の気相反応器(GPR−3)における条件は、第2の反応器(R2)と同様である。
【0047】
3つの反応器ゾーンにおける滞留時間は変化させ得る。
【0048】
ポリプロピレンを産生するためのプロセスの一実施態様において、バルク反応器、例えばループにおける滞留時間は、0.1〜2.5時間の範囲内、例えば0.15〜1.5時間であり、気相反応器における滞留時間は一般的に0.2〜6.0時間、例えば0.5〜4.0時間となるであろう。
【0049】
所望であれば、重合は、第1の反応器(R1)において、すなわちスラリー反応器(SR)において、例えばループ反応器(LR)において、超臨界条件下で公知のやり方で実施することができ、および/または、気相反応器(GPR)において凝縮モードとして実施することができる。
【0050】
好ましくは、本プロセスは、下記において詳しく説明するように、チーグラー・ナッタのプロ触媒、外部ドナー、および任意で共触媒を含む触媒系を用いた前重合も含む。
【0051】
好ましい一実施態様において、前重合は、液状プロピレンにおけるバルクスラリー重合として、すなわち液相は主にプロピレンを含み少量の他の反応物および任意で不活性成分がそこに溶解した状態で、行われる。
【0052】
前重合反応は通常は10〜60℃の温度で、好ましくは15〜50℃、より好ましくは20〜45℃の温度で行われる。
【0053】
前重合反応器における圧力は決定的に重要ではないが、反応混合物を液相に維持するために十分に高くなければならない。従って、その圧力は、20〜100bar、例えば30〜70barであり得る。
【0054】
触媒成分は好ましくは前重合工程にすべて導入する。しかしながら、固体触媒成分(i)と共触媒(ii)とが別々に入れられ得る場合には、共触媒の一部分だけを前重合段階に導入し残りの部分を後続の重合段階に導入することが可能である。またそのような場合には、前重合段階には、そこで十分な重合反応が得られるだけの量の共触媒を導入する必要がある。
【0055】
前重合段階に他の成分も加えることが可能である。従って、本技術分野で知られるように、前重合段階に水素を加えてプレポリマーの分子量をコントロールすることができる。さらに、帯電防止剤を使用して、粒子が互いに付着したり反応器の壁に付着したりすることを防ぐことができる。
【0056】
前重合条件および反応パラメータの正確なコントロールは当業者の技量の範囲内である。
【0057】
本発明によれば、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、上述したように、複数段階重合プロセスによって、低級アルコールとフタル酸エステルのエステル交換反応産物を含有するチーグラー・ナッタのプロ触媒を成分(i)として含む触媒系の存在下で得られる。
【0058】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)を調製するために本発明に従って使用されるプロ触媒は、
a)噴霧結晶化もしくはエマルジョン凝固化されたMgClとC〜Cアルコールの付加物をTiClと反応させること、
b)段階a)の産物を、式(I)のジアルキルフタレート
【化1】
(式中、R’およびR’は独立して少なくともCアルキルである)
と、前記C〜Cアルコールと前記式(I)のジアルキルフタレートとの間にエステル交換反応が起こって内部ドナーが形成される条件下で、反応させること、
c)段階b)の産物を洗浄すること、あるいは
d)任意で段階c)の産物を追加的なTiClと反応させること
によって調製される。
【0059】
プロ触媒は、例えば特許出願WO87/07620、WO92/19653、WO92/19658、およびEP0491566において定義されているように産生される。これらの文献の内容は参照により本明細書に含まれる。
【0060】
まず、式MgCl*nROH(式中、Rはメチルまたはエチルでありnは1〜6である)の、MgClとC〜Cアルコールとの付加物が形成される。アルコールとしてエタノールが好ましく使用される。
【0061】
上記付加物は、まず融解されそれから噴霧結晶化またはエマルジョン凝固化され、触媒担体として使用される。
【0062】
次の工程において、上記式MgCl*nROH(式中、Rはメチルまたはエチルであり、好ましくはエチルであり、nは1〜6である)の噴霧結晶化またはエマルジョン凝固化された付加物がTiClと接触して、チタン化担体を形成し、以下の工程がそれに続く:
・前記チタン化担体に、
(i)R’およびR’が独立して少なくともCアルキル、例えば少なくともCアルキルである式(I)のジアルキルフタレート、
または好ましくは
(ii)R’およびR’が同一であり少なくともCアルキル、例えば少なくともCアルキルである式(I)のジアルキルフタレート、
またはより好ましくは
(iii)プロピルヘキシルフタレート(PrHP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジ−イソ−デシルフタレート(DIDP)、およびジトリデシルフタレート(DTDP)からなる群から選択され、さらにより好ましくは、ジ−イソ−オクチルフタレートのようなジオクチルフタレート(DOP)もしくはジエチルヘキシルフタレートであり、特にジエチルヘキシルフタレートである、式(I)のジアルキルフタレート
を加えて、第1産物を形成すること。
・前記メタノールもしくはエタノールが前記式(I)のジアルキルフタレートの前記エステル基とエステル交換するように、前記第1産物を、適切なエステル交換反応条件、すなわち100℃より高い温度、好ましくは100〜150℃、より好ましくは130〜150℃に付して、好ましくは少なくとも80mol%、より好ましくは90mol%、最も好ましくは95mol%の式(II)のジアルキルフタレートを形成すること
【化2】
(RおよびRはメチルまたはエチル、好ましくはエチルであり、式(II)のジアルキルフタレートは内部ドナーである)、
ならびに
・前記エステル交換反応産物を、プロ触媒組成物(成分(i))として回収すること。
【0063】
式MgCl*nROH(式中、Rはメチルまたはエチルであり、nは1〜6である)の付加物は、好ましい一実施態様では、融解されてそれからその融解物が、好ましくは、冷却化された溶媒または冷却化されたガス中にガスによって注入され、それによって付加物は、例えばWO87/07620に記述されているように、形態的に有利なかたちに結晶化する。
【0064】
この結晶化された付加物は、WO92/19658およびWO92/19653に記述されているように、触媒担体として好ましく使用され、本発明において有用なプロ触媒に対して反応させられる。
【0065】
抽出により触媒残渣が除去されると、チタン化担体と内部ドナーの付加物が取られ、そこではエステルアルコールに由来する基が変わっている。
【0066】
担体上に十分チタンが残っている場合には、それはプロ触媒の活性要素として作用する。
【0067】
そうでなければ、十分なチタン濃度ひいては活性を確保するために、上記処理の後にチタン化を繰り返す。
【0068】
好ましくは、本発明に従って使用されるプロ触媒は、最大で2.5重量%、好ましくは最大で2.2重量%、より好ましくは最大で2.0重量%のチタンを含有する。そのドナー含量は好ましくは4〜12重量%であり、より好ましくは6〜10重量%である。
【0069】
より好ましくは、本発明に従って使用されるプロ触媒は、アルコールとしてエタノールを、式(I)のジアルキルフタレートとしてジオクチルフタレート(DOP)を使用することによって産生されたものであり、ジエチルフタレート(DEP)を内部ドナー化合物として生じている。
【0070】
さらにより好ましくは、本発明に従って使用される触媒は、実施例のセクションに記述されているとおりの触媒であり、特にジオクチルフタレートを式(I)のジアルキルフタレートとして使用したものである。
【0071】
本発明による異相プロピレンコポリマー(HECO1)の産生のために、使用される触媒系は、好ましくは、上記特別なチーグラー・ナッタのプロ触媒に加えて、成分(ii)として有機金属共触媒を含む。
【0072】
従って、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEA)、ジアルキルアルミニウムクロリド、およびアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群から共触媒を選択することが好ましい。
【0073】
使用される触媒系の成分(iii)は、式(IIIa)または(IIIb)により表される外部ドナーである。式(IIIa)は
Si(OCH (IIIa)
によって定義され、式中、Rは、3〜12個の炭素原子を有する分枝アルキル基、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する分枝アルキル基、または、4〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、好ましくは5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルを表す。
【0074】
は、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、およびシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0075】
式(IIIb)は、
Si(OCHCH(NR) (IIIb)
によって定義され、式中、RおよびRは同一または異なるものであり得、1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。
【0076】
およびRは、独立に、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族炭化水素基、1〜12個の炭素原子を有する分枝状脂肪族炭化水素基、および1〜12個の炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。RおよびRが、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソ−プロピル、イソ−ブチル、イソ−ペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、およびシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0077】
より好ましくは、RおよびRは両方同じであり、さらにより好ましくはRおよびRは両方エチル基である。
【0078】
より好ましくは、外部ドナーは式(IIIa)のものであり、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロペンチル)]またはジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH(CH(CH]である。
【0079】
最も好ましくは、式(IIIb)の外部ドナーはジエチルアミノトリエトキシシランである。
【0080】
さらなる一実施態様において、チーグラー・ナッタのプロ触媒は、上記特別なチーグラー・ナッタのプロ触媒(成分(i))、外部ドナー(成分(iii))、および任意で共触媒(成分(iii))を含む触媒系の存在下でビニル化合物を重合させることによって改変され得、ここで、そのビニル化合物は、以下の式を有し:
CH=CH−CHR
式中、RおよびRは一緒に5員もしくは6員の飽和、不飽和、もしくは芳香族環を形成し、または、独立に、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、改変された触媒は、本発明に従って異相プロピレンコポリマーの調製のために使用される。重合ビニル化合物はα核化剤として作用し得る。
【0081】
上記触媒の改変に関しては、国際出願WO99/24478、WO99/24479、および特にWO00/68315が参照され、これらは、触媒の改変に関する反応条件について、および重合反応について、参照により本明細書に組み入れられる。
【0082】
従って、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)はα核化されることが理解される。α核化が上記で示したようにビニルシクロアルカンポリマーまたはビニルアルカンポリマーによって行われない場合には、以下のα核化剤が存在し得る:
(i)モノカルボン酸とポリカルボン酸の塩、例えば安息香酸ナトリウムまたはtert−ブチル安息香酸アルミニウム、ならびに
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)およびC〜Cアルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、例えばメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール、もしくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、または置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、ならびに
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えばナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートまたはアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、ならびに
(iv)これらの混合物。
【0083】
[第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)]
上述したように、本発明によるポリオレフィン組成物は、必須成分として第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)をさらに含む。
【0084】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は通常、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)よりも低いメルトフローレートMFRを有する。さらに、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の固有粘度(IV)は第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)におけるよりも有意に高くあるべきである。
【0085】
従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対する第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のメルトフローレートMFR(230℃)の比が不等式(I)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(Ia)、さらにより好ましくは不等式(Ib)、さらにより好ましくは不等式(Ic)を満たし、
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
式中、
MFR(1)は第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のメルトフローレートMFR(230℃)であり、
MFR(2)は第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR(230℃)である。
【0086】
さらなる一実施態様において、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物含量(XCS)の固有粘度(IV)に対する第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物含量(XCS)の固有粘度(IV)の比が下記不等式(II)を満たすことが好ましく、より好ましくは不等式(IIa)、さらにより好ましくは不等式(IIb)、さらにより好ましくは不等式(IIc)を満たし、
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
式中、
IV(1)は第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の冷キシレン溶解性物含量(XCS)の固有粘度(IV)であり、
IV(2)は第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物含量(XCS)の固有粘度(IV)である。
【0087】
本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、その冷キシレン溶解性物(XCS)画分においてバランスのとれたコモノマー/固有粘度比を有する異相系である。
【0088】
従って、本発明の第2の異相ポリプロピレン組成物(HECO2)は、プロピレンホモポリマー(H−PP2)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)を含み、ここで、
(i)前記プロピレンホモポリマー(H−PP2)は、15超〜400g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(ii)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分は、3.7超〜9.0dl/gの範囲内の、DIN ISO1628/1(135℃におけるデカリン中)に従って決定される固有粘度を有し、
(iii)前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分のコモノマー含量が、10.0〜40.0重量%の範囲内である。
【0089】
好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、40重量%未満、好ましくは35重量%未満、より好ましくは8.0〜35重量%の範囲内、さらにより好ましくは15〜35重量%の範囲内、例えば20〜35重量%の範囲内の、ISO16152(25℃)に従って決定される冷キシレン溶解性物含量(XCS)を有する。
【0090】
1つの好ましい実施態様において、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、下記不等式(III)を満たし、
【数10】
式中、
Cは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、重量%表示のコモノマー含量であり、
IVは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、dl/g表示の固有粘度である。
【0091】
好ましくは、上記のように定義される第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、1.0〜150g/10分の範囲内、好ましくは1.0〜80g/10分の範囲内、より好ましくは2.0〜50g/10分の範囲内、例えば3.0〜20g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0092】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、プロプレンホモポリマー(H−PP2)であるマトリックス(M2)、およびそこに分散されたエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)を含む。すなわち、マトリックス(M2)は、そのマトリックス(M2)の一部ではない(細かく)分散された包含物を含有し、その包含物は、エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)を含有する。「異相プロピレンコポリマー」という用語のさらなる定義に関しては、上記において提供された情報が参照される。
【0093】
上述したように、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、プロプレンホモポリマー(H−PP2)を含む。前記プロプレンホモポリマー(H−PP2)は第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のマトリックス(M2)を構成する。
【0094】
プロプレンホモポリマー(H−PP2)はほとんど冷キシレン不溶性でありエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)は冷キシレン中で主に溶解性であるので、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン不溶性画分(XCI)の特性とプロプレンホモポリマー(H−PP2)の特性とは非常に類似している。
【0095】
従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン不溶性分(XCI)およびプロプレンホモポリマー(H−PP2)は、15〜400g/10分の範囲内、好ましくは20〜300g/10分の範囲内、より好ましくは30〜120g/10分の範囲内、さらにより好ましくは45〜95g/10分の範囲内の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)を有する。
【0096】
プロプレンホモポリマー(H−PP2)は、その分子量画分においてモノモーダルまたはマルチモーダルであり得、例えばバイモーダルであり得る。
【0097】
プロプレンホモポリマー(H−PP2)がその分子量においてマルチモーダル、例えばバイモーダルである場合には、それは少なくとも2つの画分を含み、好ましくは2つの画分からなり、これらの画分は第1のプロプレンホモポリマー画分(H−PP2a)および第2のプロプレンホモポリマー画分(H−PP2b)である。好ましくは、これら2つの画分は、メルトフローレートMFR(230℃)において異なる。従って、第1のプロプレンホモポリマー画分(H−PP2a)は、第2のプロプレンホモポリマー画分(H−PP2b)から、少なくとも10g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)だけ、より好ましくは少なくとも20g/10分だけ、さらにより好ましくは10〜200g/10分の範囲において、さらにより好ましくは20〜150g/10分の範囲において異なることが理解される。好ましくは、第1のプロプレンホモポリマー画分(H−PP2a)のメルトフローレートMFR(230℃)は、第2のプロプレンホモポリマー画分(H−PP2b)のメルトフローレートMFR(230℃)より高い。
【0098】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)が、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の特性および量に主に影響する。従って、第一の近似において、エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)の特性は、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の特性と同等であり得る。しかしながら、好ましい実施態様においては、エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)の量は、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の全冷キシレン溶解性物(XCS)含量よりも高い。
【0099】
従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のエラストマー性コポリマー(E2)の量は、好ましくは40.0重量%未満、より好ましくは38.0重量%以下、さらにより好ましくは15.0〜40重量%の範囲内、さらにより好ましくは17.0重量%から38重量%未満までの範囲内である。
【0100】
一方で、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の量は、好ましくは40.0重量%未満、より好ましくは35.0重量%以下、さらにより好ましくは8.0〜35.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは15.0〜35.0重量%の範囲内、例えば20.0〜35.0重量%の範囲内である。
【0101】
エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)は、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、例えばエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンのようなコモノマー、特にエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィン、例えば1−ブテンおよび/または1−ヘキセンを含む。好ましくは、エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)は、エチレン、1−ブテン、および1−ヘキセンからなる群から選択される、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特には、それらのモノマーからなる。より具体的には、エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)は、プロピレンの他に、エチレンおよび/または1−ブテンから誘導可能な単位を含む。従って、特に好ましい一実施態様において、エラストマー性プロピレンコポリマー相(E2)は、エチレンおよびプロピレンから誘導可能な単位のみを含み、すなわちプロピレン・エチレンゴム(EPR)である。
【0102】
エラストマー性プロピレンコポリマー(E2)の総重量に基づいたエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、好ましくは40.0重量%以下であり、さらにより好ましくは35.0重量%以下であり、さらにより好ましくは10.0〜40.0重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは12.0〜35.0重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは14.0〜30.0重量%の範囲内である。
【0103】
同様に、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、40.0重量%以下であることが好ましく、さらにより好ましくは35.0重量%以下であり、さらにより好ましくは10.0〜40.0重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは12.0〜30.0重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは13.0〜28.0重量%の範囲内であり、例えば14.0〜25.0重量%の範囲内である。
【0104】
加えて、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の分子量が特定の範囲内であることが求められる。従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分が、3.7超〜9.0dl/gの範囲内、より好ましくは4.0〜8.5dl/gの範囲内、さらにより好ましくは4.2〜8.0dl/gの範囲内、例えば4.5〜7.0dl/gの範囲内の、DIN ISO1628/1(135℃におけるデカリン中)に従って決定される固有粘度(IV)を有することが理解される。
【0105】
本発明の重要な一側面は、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性画分の固有粘度(IV)とコモノマー含量(好ましくはエチレン含量)とが、お互いに対して揃っていることである。従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、下記不等式(III)を満たすことが求められ、好ましくは不等式(IIIa)、より好ましくは不等式(IIIb)、さらにより好ましくは不等式(IIIc)を満たし、
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
式中、
Cは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、重量%表示のコモノマー含量であり、
IVは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の冷キシレン溶解性物(XCS)画分の、dl/g表示の固有粘度である。
【0106】
上記不等式から理解できるように、コモノマー含量および固有粘度の値は、それぞれの単位によって(すなわち、それぞれ「重量%」および「dl/g」によって)割られるので無次元で使用される。
【0107】
上述したように、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、プロプレンホモポリマー(H−PP2)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)を含む。従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のコモノマーは好ましくはエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)についてのものと同じである。すなわち、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、プロピレンの他に、エチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンのようなコモノマーを含み、特にエチレンおよび/またはC〜C10α−オレフィン、例えば1−ブテンおよび/または1−ヘキセンを含む。好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、エチレン、1−ブテン、および1−ヘキセンからなる群から選択される、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特には、それらのモノマーからなる。より具体的には、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、プロピレンの他に、エチレンおよび/または1−ブテンから誘導可能な単位を含む。従って、特に好ましい一実施態様において、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、エチレンおよびプロピレンから誘導可能な単位のみを含む。
【0108】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、好ましくは20.0重量%未満であり、より好ましくは16.0重量%以下であり、さらにより好ましくは3.5〜16.0重量%の範囲内であり、さらにより好ましくは4.0超〜14.0重量%の範囲内である。
【0109】
好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は熱機械的に安定であることが望ましい。従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は少なくとも135℃、より好ましくは135〜168℃の範囲内の融解温度(T)を有することが理解される。
【0110】
本発明において定義される第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、抗酸化剤およびスリップ剤そして抗ブロッキング剤のような、5.0重量%までの添加物(α核化剤を除く)を含み得る。好ましくは、添加物含量は3.0重量%未満であり、例えば1.0重量%未満である。
【0111】
好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、α核化剤を含む。さらにより好ましくは、本発明はβ核化剤を含まない。従って、α核化剤は、以下のものからなる群から好ましく選択される:
(i)モノカルボン酸とポリカルボン酸の塩、例えば安息香酸ナトリウムまたはtert−ブチル安息香酸アルミニウム、ならびに
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)およびC〜Cアルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、例えばメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール、もしくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、または置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、ならびに
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えばナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェートまたはアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、ならびに
(iv)ビニルシクロアルカンポリマーおよびビニルアルカンポリマー(下記においてより詳細に論じる)、ならびに
(v)これらの混合物。
【0112】
そのような添加剤は一般に市販されており、例えば、Hans Zweifel著「プラスチック添加物ハンドブック」第5版、2001、第871〜873頁に記述されている。
【0113】
好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は最大5重量%のα核化剤を含む。好ましい一実施態様において、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、200ppm以下、より好ましくは1〜200ppm、より好ましくは5〜100ppmのα核化剤を含有し、α核化剤は特に、ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、または置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0114】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、ビニルシクロアルカン(例えばビニルシクロヘキサン(VCH))ポリマー、および/またはビニルアルカンポリマーを含有することが特に好ましい。1つの特定の実施態様において、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、ビニルシクロアルカン(例えばビニルシクロヘキサン(VCH))ポリマー、および/またはビニルアルカンポリマーを含有する。好ましくは、ビニルシクロアルカンはビニルシクロヘキサン(VCH)であり、ポリマーはBNTテクノロジーにより第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)に導入される。
【0115】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は好ましくは特定のプロセスによって取得される。従って、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、好ましくは、第1の反応器(第1R’)における連続的重合プロセスによって取得され、任意で第2の反応器(第2R’)においてプロピレンホモポリマー(H−PP2)が産生され、第3の反応器(第3R’)および任意で第4の反応器(第4R’)において第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)が取得される。
【0116】
「連続的重合プロセス」という用語は、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、一続きに接続された少なくとも2つの反応器、好ましくは3つまたは4つの反応器において産生されることを示す。従って、本プロセスは、少なくとも第1の反応器(第1R’)、任意の第2の反応器(第2R’)、第3の反応器(第3R’)、および任意の第4の反応器(第4R’)を含む。「重合反応器」という用語は主要な重合が起こることを示す。すなわち、プロセスが3つまたは4つの重合反応器からなる場合には、この定義は、全体的なプロセスが例えば前重合反応器における前重合工程を含むというオプションを排除するものではない。「からなる(consist of)」という用語は、主要な重合反応器に関して限定的表現(closing formulation)であるに過ぎない。
【0117】
上述したように、第1の反応器(第1R’)または最初の2つの反応器(第1R’および第2R’)において、マトリックス(M2)、すなわちプロピレンホモポリマー(H−PP2)が産生される。プロピレンホモポリマー(H−PP2)の調製のために2つの反応器が使用される場合には、各反応器において、プロピレンホモポリマー画分(H−PP2a)および(H−PP2b)が産生され、これらは上記で示したようにメルトフローレートにおいて異なり得る。好ましくは、第1のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2a)が第1の反応器(第1R’)において産生される一方、第2のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2b)が第2の反応器(第2R’)において産生される。
【0118】
好ましくは、第1のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2a)と第2のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2b)との間の重量比は20/80〜80/20であり、より好ましくは30/70〜70/30であり、さらにより好ましくは40/60〜65/35である。
【0119】
第1の反応器(第1R’)または任意である第2の反応器(第2R’)の後に、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のマトリックス(M2)、すなわちプロピレンホモポリマー(H−PP2)が得られる。このマトリックス(M2)は続いて第3の反応器(第3R’)および任意の第4の反応器(第4R’)に移され、そこでエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)が産生され、このようにして、本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が得られる。
【0120】
好ましくは、マトリックス(M2)すなわちプロピレンホモポリマー(H−PP2)とエラストマー性プロピレンコポリマー(E2)との間の重量比[(M2)/(E2)]は、91/9〜60/40であり、より好ましくは90/10から70/30未満までである。
【0121】
第1の反応器(第1R’)は好ましくはスラリー反応器(SR)であり、バルクまたはスラリーにおいて稼働するあらゆる連続的または単純撹拌バッチタンク反応器またはループ反応器であり得る。バルクとは、少なくとも60%(w/w)モノマーを含む反応媒体における重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0122】
第2の反応器(第2R’)、第3の反応器(第3R’)、および第4の反応器(第4R’)は、好ましくは気相反応器(GPR)である。そのような気相反応器(GPR)は、あらゆる機械混合式または流動床式反応器であり得る。好ましくは、気相反応器(GPR)は、ガス速度が少なくとも0.2m/秒である機械撹拌流動床反応器を含む。従って、気相反応器は、機械的撹拌装置を好ましくは伴う流動床型反応器であることが理解される。
【0123】
すなわち、好ましい一実施態様において、第1の反応器(第1R’)はループ反応器(LR)のようなスラリー反応器(SR)であり、第2の反応器(第2R’)、第3の反応器(第3R’)、および任意の第4の反応器(第4R’)は気相反応器(GPR)である。従って、当該プロセスのために、少なくとも2つ、好ましくは2つまたは3つの重合反応器、すなわち、直列的に接続されたループ反応器(LR)のようなスラリー反応器(SR)、第1の気相反応器(GPR−1)、第2の気相反応器(GPR−2)、および任意で第3の気相反応器(GPR−3)が使用される。必要であれば、スラリー反応器(SR)の前に前重合反応器が置かれる。
【0124】
1つの好ましい多段階プロセスは、EP0887379、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479、またはWO00/68315におけるように例えば特許文献に記述された、デンマークのボレアリスA/Sによって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)テクノロジーとして知られる)のような、「ループ気相」プロセスである。
【0125】
さらなる1つの適切なスラリー・気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0126】
好ましくは、上記において定義した第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)を産生するための本プロセスにおいては、第1の反応器(第1R’)、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)のための条件は、以下のとおりであり得る:
・温度は40℃〜110℃の範囲内であり、好ましくは60℃〜100℃、例えば68〜95℃であり、
・圧力は20bar〜80barの範囲内であり、好ましくは40bar〜70barであり、
・水素が、それ自体知られている手法によってモル質量をコントロールするために添加され得る。
【0127】
続いて、第1の反応器(第1R’)からの反応混合物は、第2の反応器(第2R’)すなわち気相反応器(GPR−1)に移送され、そこでの条件は好ましくは以下のとおりである:
・温度は50℃〜130℃の範囲内であり、好ましくは60℃〜100℃であり、
・圧力は5bar〜50barの範囲内であり、好ましくは15bar〜35barであり、
・水素が、それ自体知られている手法によってモル質量をコントロールするために添加され得る。
【0128】
第3の反応器(第3R’)および第4の反応器(第4R’)における条件、好ましくは第2の気相反応器(GPR−2)および第3の気相反応器(GPR−3)における条件は、上記第2の反応器(第2R’)と同様である。
【0129】
滞留時間は上記3つまたは4つの反応器ゾーンで異なり得る。
【0130】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)を産生するためのプロセスの一実施態様において、第1の反応器(第1R’)、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)における滞留時間は、0.2〜4時間の範囲内、例えば0.3〜1.5時間であり、気相反応器における滞留時間は一般的に0.2〜6.0時間、例えば0.5〜4.0時間である。
【0131】
所望により、重合は、第1の反応器(第1R’)において、すなわちスラリー反応器(SR)において、例えばループ反応器(LR)において超臨界条件下で、および/または気相反応器(GPR)において凝縮モードとして、既知の手法により実行することができる。
【0132】
好ましくは、上記プロセスは、下記において言及されるように、チーグラー・ナッタのプロ触媒、外部ドナー、および任意で共触媒を含む触媒系を用いた前重合も含む。
【0133】
好ましい一実施態様において、前重合は、液状プロピレンにおけるバルクスラリー重合として実行され、すなわち、液相は主にプロピレンを含み、少量の他の反応物および任意で不活性成分がそこに溶解されている。
【0134】
前重合反応は通常0〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは15〜40℃の温度にて実行される。
【0135】
前重合反応器における圧力は決定的に重要ではないが、反応混合物を液相に維持するために十分に高くなければならない。従って、その圧力は20〜100bar、例えば30〜70barであり得る。
【0136】
触媒成分は好ましくは前重合工程にすべて導入する。しかしながら、固体触媒成分(i)と共触媒(ii)とが別々に入れられ得る場合には、共触媒の一部分だけを前重合段階に導入し残りの部分を後続の重合段階に導入することが可能である。またそのような場合には、前重合段階には、そこで十分な重合反応が得られるだけの量の共触媒を導入する必要がある。
【0137】
前重合段階に他の成分も加えることが可能である。従って、本技術分野で知られるように、前重合段階に水素を加えてプレポリマーの分子量をコントロールすることができる。さらに、帯電防止剤を使用して、粒子が互いに付着したり反応器の壁に付着したりすることを防ぐことができる。
【0138】
前重合条件および反応パラメータの正確なコントロールは当業者の技量の範囲内である。
【0139】
本発明によれば、第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、上述したように、連続的重合プロセスによって、チーグラー・ナッタ触媒および任意で外部ドナーを含む触媒系、好ましくは、3つの成分、すなわち成分(i)としてチーグラー・ナッタのプロ触媒、任意で成分(ii)として有機金属共触媒、および成分(iii)として式(IIIa)または(IIIb)で表される(好ましくは式(IIIa)で表される)外部ドナーを含む触媒系の存在下で得られ、これは上述したように第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の調製と同様である。
【0140】
より好ましくは、外部ドナーは式(IIIa)のものであり、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロペンチル)]またはジイシプロピルジメトキシシラン[Si(OCH(CH(CH]である。
【0141】
上述した添加物は、好ましくは押出処理によって第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)に添加される。混合/押出のためには、例えばバンベリーミキサー、2ロールゴムミル、ブス・コニーダー、またはツインスクリュー押出機のような従来型の配合装置または混合装置を使用し得る。押出機から回収されるポリマー物質は通常ペレットの形態である。
【0142】
[ポリオレフィン組成物およびその使用]
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)および第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が組み合わされて本発明のポリオレフィン組成物を形成する。混合は、例えば押出機におけるもののような、あらゆる従来的手法において達成され得る。
【0143】
所望の特性を得るために、異相プロピレンコポリマーは、好ましくは特定の混合比において混合される。すなわち、発明に係るポリオレフィン組成物は、好ましくは、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)および第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)を、1.2:1〜15:1、より好ましくは1.3:1〜10:1、さらにより好ましくは1.4.1〜8:1の範囲内の重量比[(HECO1):(HECO2)]において含む。本発明のポリオレフィン組成物はさらなるポリマーを含み得るが、上記2つの異相プロピレンコポリマー(HECO1)および(HECO2)が組成物の主要量を構成することが好ましい。従って、2つの異相プロピレンコポリマー(HECO1)および(HECO2)が、本発明のポリオレフィン組成物の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%を占めることが好ましい。残りの部分は、添加物、フィラー、添加物のための担体として使用されるポリマー、またはエラストマーであり得る。
【0144】
本発明のポリオレフィン組成物は好ましくは自動車用物品の製造のために使用され、例えば自動車用成型物品、好ましくは自動車用射出成形物品の製造のために使用される。さらにより好ましいのは、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、ボディーパネル、スポイラー、ダッシュボード、室内トリム等のような、自動車室内部材および室外部材の製造のための使用である。
【0145】
本発明はまた、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%の本発明のポリオレフィン組成物を含む、例えば本発明のポリオレフィン組成物からなる、(自動車用)物品、例えば射出成形物品も提供する。従って、本発明は特に、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%の本発明のポリオレフィン組成物を含む、例えば本発明のポリオレフィン組成物からなる、自動車用物品に関し、特に、バンパー、サイドトリム、ステップアシスト、ボディーパネル、スポイラー、ダッシュボード、室内トリム等のような自動車室内部材および室外部材に関する。
【0146】
ここで、下記において提供する実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0147】
[1.定義/測定方法]
以下の用語の定義および測定方法は、特に他の規定がない限り、上記発明の一般的説明にも下記実施例にも適用される。
【0148】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のプロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)のコモノマー含量の計算:
【数15】
式中、
w(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(R−PP1)の重量割合(重量%)であり、
w(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の重量割合(重量%)であり、
C(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(R−PP1)のコモノマー含量(重量%)であり、
C(PP)は、プロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含量(重量%)であり、
C(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の、算出されたコモノマー含量(重量%)である。
【0149】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のプロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の冷キシレン溶解性物(XCS)含量の計算:
【数16】
式中、
w(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(R−PP1)の重量割合(重量%)であり、
w(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の重量割合(重量%)であり、
XS(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(R−PP1)の冷キシレン溶解性物(XCS)含量(重量%)であり、
XS(PP)は、プロピレンコポリマー(R−PP)の冷キシレン溶解性物(XCS)含量(重量%)であり、
XS(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の、算出された冷キシレン溶解性物(XCS)含量(重量%)である。
【0150】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のプロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)のメルトフローレートMFR(230℃)の計算:
【数17】
式中、
w(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(R−PP1)の重量割合(重量%)であり、
w(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の重量割合(重量%)であり、
MFR(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(R−PP1)のメルトフローレートMFR(230℃)(g/10分)であり、
MFR(PP)は、プロピレンコポリマー(R−PP)のメルトフローレートMFR(230℃)(g/10分)であり、
MFR(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(R−PP2)の、算出されたルトフローレートMFR(230℃)(g/10分)である。
【0151】
第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)のプロピレンコポリマーの第2の画分(H−PP2b)のメルトフローレートMFR(230℃)の計算:
【数18】
式中、
w(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(H−PP2)、すなわち第1のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2a)の重量割合(重量%)であり、
w(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(H−PP2)、すなわち第2のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2b)の重量割合(重量%)であり、
MFR(PP1)は、プロピレンコポリマーの第1の画分(H−PP2)、すなわち第1のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2a)のメルトフローレートMFR(230℃)(g/10分)であり、
MFR(PP)は、プロピレンホモポリマー(H−PP2)のメルトフローレートMFR(230℃)(g/10分)であり、
MFR(PP2)は、プロピレンコポリマーの第2の画分(H−PP2)、すなわち第2のプロピレンホモポリマー画分(H−PP2b)の、算出されたルトフローレートMFR(230℃)(g/10分)である。
【0152】
第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のエラストマー性プロピレンコポリマー(E)のコモノマー含量の計算:
【数19】
式中、
w(PP)は、プロピレンコポリマー(R−PP)、すなわち第1および第2の反応器(R1+R2)において産生されるポリマーの重量割合(重量%)であり、
w(E)は、エラストマー性プロピレンコポリマー(E)、すなわち第3および第4の反応器(R3+R4)において産生されるポリマーの重量割合(重量%)であり、
C(PP)は、プロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマー含量(重量%)、すなわち第1および第2の反応器(R1+R2)において産生されるポリマーのコモノマー含量(重量%)であり、
C(HECO)は、プロピレンコポリマーのコモノマー含量(重量%)、すなわち第4の反応器(R4)における重合の後に得られるポリマーのコモノマー含量(重量%)であり、
C(E)は、エラストマー性プロピレンコポリマー(E)の、算出されたコモノマー含量(重量%)、すなわち第3および第4の反応器(R3+R4)において産生されるポリマーのコモノマー含量(重量%)である。
【0153】
[NMR分光法による微細構造の定量化]
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用してポリマーのコモノマー含量を定量化した。Hおよび13Cについてそれぞれ400.15および100.62MHzにて作動するブルーカー・アドバンスIII400NMR分光計を使用して、定量的13C{H}NMRスペクトルを溶液状態にて記録した。全てのスペクトルは、125℃における13C最適化10mm拡張温度プローブヘッドを使用して記録し、窒素ガスを全ての空気圧のために使用した。およそ200mgの材料を、クロム−(III)−アセチルアセトネート(Cr(acac))とともに3mlの1,2−テトラクロロエタン−d(TCE−d)に溶解し、溶媒中緩和剤の65mM溶液を得た(Singh, G., Kothari, A., Gupta, V., Polymer Testing 28 5 (2009), 475)。均質な溶液を確保するために、ヒートブロックにおける最初の試料調製後に、NMRチューブを回転式オーブン中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁場への挿入の際に、チューブを10Hzにおいて回転させた。この設定は主に高分解能のために選択され、正確なエチレン含量定量化のために定量的に必要であった。最適化されたチップ角度、1sリサイクルディレイ、およびバイレベルWALTZ16デカップリングスキームを使用して、標準的なシングルパルス励起をNOEなしで採用した(Zhou, Z., Kuemmerle, R., Qiu, X., Redwine, D., Cong, R., Taha, A., Baugh, D. Winniford, B., J. Mag. Reson. 187 (2007) 225;Busico, V., Carbonniere, P., Cipullo, R., Pellecchia, R., Severn, J., Talarico, G., Macromol. Rapid Commun. 2007, 28, 1128)。スペクトルあたり合計6144(6k)トランジェントが獲得された。
【0154】
専売のコンピュータープログラムを使用して定量的13C{H}NMRスペクトルを処理して積分し、積分から関係する定量的特性を決定した。溶媒の化学シフトを用いて、全ての化学シフトを30.00ppmにおけるエチレンブロック(EEE)の中央メチレン基に間接的にリファレンスさせた。このアプローチは、この構造単位が存在しない場合においてさえも同等なリファレンス化を可能にした。エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルが観察された(Cheng, H. N., Macromolecules 17 (1984), 1950)。
【0155】
2,1エリトロ位置欠陥(2,1 erythro regio defects)に相当する特徴的シグナルが観察され(L. Resconi, L. Cavallo, A. Fait, F. Piemontesi, Chem. Rev. 2000, 100 (4), 1253、Cheng, H. N., Macromolecules 1984, 17, 1950、およびW-J. Wang and S. Zhu Macromolecules 2000, 33 1157において記述されているとおり)、決定された特性に対する位置欠陥の影響についての補正が必要とされた。他の種類の位置欠陥に相当する特徴的シグナルは観察されなかった。
【0156】
コモノマー画分は、Wangらの方法(Wang, W-J., Zhu, S., Macromolecules 33 (2000), 1157)を使用して、13C{H}スペクトルにおける全スペクトル領域に渡る複数のシグナルの積分を介して定量化した。この方法は、その信頼性および必要な場合に位置欠陥の存在を考慮に入れられる能力のために選ばれた。見出されるコモノマー含有物の全域に渡る適用性を増加させるために、積分領域をわずかに調節した。
【0157】
PPEPP配列における隔離されたエチレンのみが観察された系に関しては、Wangらの方法を改変して、存在しないことが知られる位置の非ゼロ積分の影響を減少させた。このアプローチは、そのような系に関してエチレン含量の過剰評価を低下させ、これは、絶対的エチレン含量を決定するために使用された位置の数を
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
に減少させることによって達成された。
【0158】
この位置のセットの使用を通して、対応する積分等式は、Wangらの論文(Wang, W-J., Zhu, S., Macromolecules 33 (2000), 1157)において用いられたものと同じ表示を用いて
E=0.5(I+I+0.5(I+I))
となる。絶対的プロピレン含量に関して使用された等式は改変しなかった。
【0159】
コモノマー組入れのモルパーセントは、以下のモル割合から計算された。
E[mol%]=100*fE
【0160】
コモノマー組入れの重量パーセントは、以下のモル割合から計算された。
E[wt%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1−fE)*42.08))
【0161】
三連子レベルでのコモノマー配列分布は、Kakugoらの分析方法(Kakugo, M., Naito, Y., Mizunuma, K., Miyatake, T. Macromolecules 15 (1982) 1150)を使用して決定した。この方法はその信頼性の高い性質のために選ばれ、より広域のコモノマー含有物への適用性を増加させるために積分領域をわずかに調整した。
【0162】
[DSC分析、融解温度(T)および融解熱(H)、結晶化温度(T)、ならびに結晶化熱(H)]
これらは、TAインストゥルメントQ2000示差走査熱量測定(DSC)を用いて5〜7mgの試料について測定された。DSCは、ISO11357/パート3/メソッドC2に従って、加熱/冷却/加熱サイクルにおいて、−30〜+225℃の温度域における10℃/分の走査速度にて実施する。結晶化温度および結晶化熱(H)は冷却段階から決定され、融解温度および融解熱(H)は2番目の加熱段階から決定される。
【0163】
[MFR(230℃)]
MFR(230℃)はISO1133(230℃、2.16kgロード)に従って測定される。
【0164】
[冷キシレン溶解性物質(XCS、重量%)]
冷キシレン溶解性物質(XCS)の含量は、ISO16152;第1版;2005−07−01に従って25℃にて決定される。
【0165】
[固有粘度]
固有粘度はDIN ISO1628/1、1999年10月(135℃におけるデカリン中)に従って測定される。
【0166】
[引張係数(Tensile Modulus);破断点での引張歪(Tensile strain at break)]
これらは、EN ISO1873−2に記述されたとおりの射出成形検体(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を使用して、ISO527−2(クロスヘッド速度=1mm/分;23℃)に従って測定される。
【0167】
[シャルピー衝撃試験]
シャルピーノッチ付き衝撃強度(Charpy notched impact strength)(シャルピーNIS)は、ISO294−1:1996に従って調製された80x10x4mmmmの射出成形棒状試験検体を使用して、ISO179 2C/DIN53453に従って23℃および−20℃において測定される。
【0168】
2.実施例
重合プロセスにおいて使用する触媒は、以下のようにして製造した。まず、0.1molのMgCl x 3EtOHを、大気圧の反応器において250mlのデカン中に不活性条件下で懸濁した。この溶液を−15℃の温度まで冷却し、温度を前記レベルに維持しながら300mlの冷TiClを加えた。それから、このスラリーの温度をゆっくりと20℃まで上昇させた。この温度において、0.02molのジオクチルフタレート(DOP)をスラリーに加えた。前記フタレートの添加後、温度を90分間のあいだに135℃まで上昇させ、スラリーを60分間置いた。それから、さらなる300mlのTiClを加え、温度を135℃において120分間維持した。この後、液から触媒を濾過して、80℃における300mlのヘプタンで6回洗浄した。それから、固体触媒成分を濾過して乾燥させた。触媒およびその調製のコンセプトは、例えば特許文献EP491566、EP591224、およびEP586390に一般的に記述されている。触媒は、最終ポリマーにおいて200ppmのポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)濃度が達成される量のビニルシクロヘキサンを用いて前重合された(EP1183307A1参照)。共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)を、ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(D−ドナー)(HECO2aおよびHeco2b)ならびにジエチルアミノトリエトキシシラン(U−ドナー)(HECO1)をそれぞれ使用した。アルミニウム対ドナーの比は表1に示されている。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
本発明によるポリオレフィン組成物は、2つの異相プロピレンコポリマーを融解混合することにより製造した。
【0172】
【表3】
【0173】
ベースポリマーの分析を表2に要約する。本発明の実施例(IE)および比較例(CE)の特性を表3に要約する。CE1は第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)に関し、CE2は第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2a)に関し、CE3は他方の第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2b)に関する。表3に記述された結果は、流動性、剛性、靭性、衝撃性、および破断点での引張歪のバランスにおける改善を示している。