特許第6190975号(P6190975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190975
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】単一コイル磁場誘導トモグラフィー撮像
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20170821BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   G01N27/72
   A61B5/05 A
【請求項の数】24
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-551711(P2016-551711)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-505916(P2017-505916A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】IB2014063151
(87)【国際公開番号】WO2015128704
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】14/191,913
(32)【優先日】2014年2月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310007106
【氏名又は名称】キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・アール・フェルトカムプ
(72)【発明者】
【氏名】ション・ジェフリー・サリバン
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/057467(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0146637(US,A1)
【文献】 特表2012−520112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
G01N 27/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場誘導トモグラフィー撮像のための方法であって、前記方法が、
高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源から高周波エネルギーを供給される単一コイルを使用して、当該単一コイルに関連する試料に対して取得された複数のコイル特性測定値に、1以上の計算装置によってアクセスする工程であって、前記複数のコイル特性測定値のそれぞれが、試料に対して複数の個別場所の一つにある前記単一コイルで取得され、前記複数のコイル特性測定値のそれぞれが、前記高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源から高周波エネルギーを供給される前記単一コイルの検出されたコイル測定値である、該工程と、
コイル位置データを、前記1以上の計算装置によって前記複数のコイル特性測定値のそれぞれと関連付ける工程であって、前記コイル位置データが、各コイル特性測定値の試料に対する前記単一コイルの位置および配向を示す、該工程と、
前記試料に対する複数の異なる位置において前記単一コイルで取得されたコイル特性測定値と前記試料の電磁特性との関係を定義するモデルに、前記1以上の計算装置によってアクセスする工程と、
前記1以上の計算装置によって、前記複数のコイル特性測定値および各コイル特性測定値に関連する前記コイル位置データに少なくとも一部基づいて、前記モデルを使用して、前記試料の三次元電磁特性マップを生成する工程とを含み、
前記複数のコイル特性測定値のそれぞれが、コイル損失測定値である方法。
【請求項2】
前記コイル損失測定値が、前記単一コイルが前記試料に隣接して配置されて高周波エネルギーで励磁された時に、前記試料に誘導される渦電流から生じる前記単一コイルのインピーダンスの変化を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のコイル特性測定値が、前記単一コイルが移動装置に取り付けられている間に取得され、前記移動装置が、前記単一コイルを前記複数の個別場所に動かすように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コイル位置データが前記移動装置から取得される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コイル位置データが、一つ以上のセンサーによって生成されるデータに少なくとも一部基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コイル位置データが、前記単一コイルを持つコイル装置の表面上に位置するグラフィックの補足された画像に少なくとも一部基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モデルが、前記単一コイルのインピーダンスの変化と複数のパラメータとを関連付け、前記複数のパラメータが前記試料の導電率分布ならびに前記試料に対する前記単一コイルの位置および配向を少なくとも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電磁特性マップが、前記試料の三次元導電率マップである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記三次元電磁特性マップが、前記試料を有限要素メッシュまたはグリッドに離散化することによって前記モデルを使用して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のコイル特性測定値が、コイル特性測定値の複数のデータセットを含み、前記複数のデータセットが異なる時間に異なる単一コイルから取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試料の磁場誘導トモグラフィー撮像用システムであって、前記システムが、
高周波エネルギー源に接続された単一コイルを持つコイル装置であって、前記単一コイルが複数の同心導電ループを含み、前記複数の同心導電ループのそれぞれが異なる半径を持ち、前記単一コイルがコイル損失測定値を取得するように構成されているコイル装置と、
前記試料に対する複数の個別場所に、前記試料に対して単一コイルを位置づけるように構成された移動装置と、
一つ以上のプロセッサおよび一つ以上の記憶装置を含む計算システムであって、前記一つ以上の記憶装置が、前記一つ以上のプロセッサによって実行された時、前記一つ以上のプロセッサに動作を実施させるコンピュータ可読命令を保存している計算システムとを含み、前記動作が、
前記単一コイルに関連する試料に対して取得された複数のコイル損失測定値にアクセスする工程であって、前記複数のコイル損失測定値のそれぞれが、前記高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源からの高周波エネルギーを有するエネルギーを供給される前記単一コイルを使用して、試料に対して前記複数の個別場所の一つにおいて取得され、前記複数のコイル特性測定値のそれぞれが、前記高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源から高周波エネルギーを供給される前記単一コイルの検出されたコイル損失測定値である、該工程と、
コイル位置データを、前記複数のコイル損失測定値のそれぞれと関連付ける工程であって、前記コイル位置データが、各コイル損失測定値の前記試料に対する前記単一コイルの位置および配向を示す、該工程と、
前記試料に対する複数の異なる位置において前記単一コイルで取得されたコイル特性測定値と前記試料の導電率との関係を定義するモデルにアクセスする工程と、
前記複数のコイル損失測定値および各コイル特性測定値に関連する前記コイル位置データに少なくとも一部基づいて、前記モデルを使用して、前記試料の三次元導電率マップを生成する工程とを含むシステム。
【請求項12】
前記コイル損失測定値が、前記単一コイルが前記試料に隣接して配置されて高周波エネルギーで励磁された時に、前記試料に誘導される渦電流から生じる前記単一コイルのインピーダンスの変化を示す、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コイル位置データが、一つ以上のセンサーによって生成されるデータに少なくとも一部基づいて決定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記コイル位置データが、前記単一コイルを持つコイル装置の表面上に位置するグラフィックの補足された画像に少なくとも一部基づいて決定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記モデルが、前記単一コイルのインピーダンスの変化と複数のパラメータとを関連付け、前記複数のパラメータが前記試料の導電率分布、前記試料に対する前記単一コイルの位置および配向、ならびに前記単一コイルの前記複数の同心導電ループのそれぞれの半径を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記三次元導電率マップが、前記試料を有限要素メッシュまたはグリッドに離散化することによって前記モデルを使用して生成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数のコイル特性測定値が、コイル特性測定値の複数のデータセットを含み、前記複数のデータセットが異なる時間に異なる単一コイルから取得される、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
一つ以上のプロセッサによって実行された時、前記一つ以上のプロセッサにヒト組織試料の磁場誘導トモグラフィーの為の演算を実施させるコンピュータ可読命令を保存する一つ以上の有形コンピュータ可読媒体であって、前記有形コンピュータ可読媒体は、非一時的にデータを保存可能な非一時的コンピュータ可読媒体であり、前記演算が、
高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源から高周波エネルギーを供給される単一コイルを使用して前記ヒト組織試料に対して取得された複数のコイル損失測定値にアクセスする工程であって、前記複数のコイル損失測定値のそれぞれが、前記ヒト組織試料に対する複数の個別場所の一つで前記単一コイルを使用して取得され、各コイル損失測定値が、前記単一コイルが、前記高周波エネルギー源に接続され、高周波エネルギーを供給された時、前記ヒト組織試料に誘導される渦電流から生じる単一コイルのインピーダンスの変化を示す、該工程と、
コイル位置データを、前記複数のコイル損失測定値のそれぞれと関連付ける工程であって、前記コイル位置データが、各コイル特性測定値の前記ヒト組織試料に対する前記単一コイルの位置および配向を示す、該工程と、
前記試料に対する複数の異なる位置において前記単一コイルで取得されたコイル損失測定値と前記ヒト組織試料の導電率との関係を定義するモデルにアクセスする工程と、
前記複数のコイル損失測定値および各コイル損失測定値に関連する前記コイル位置データに少なくとも一部基づいて、前記モデルを使用して、前記ヒト組織試料の三次元導電率マップを生成する工程とを含む有形コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記モデルが、前記単一コイルのインピーダンスの変化と複数のパラメータとを関連付け、前記複数のパラメータが前記ヒト組織試料の導電率ならびに前記試料に対する前記単一コイルの位置および配向を少なくとも含む、請求項18に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記複数のコイル損失測定値および各コイル損失測定値に関連する前記コイル位置データに少なくとも一部基づいて、前記モデルを使用して、前記試料の三次元導電率マップを生成する演算が、前記ヒト組織試料を有限要素メッシュに離散化する工程を含む、請求項18に記載の有形コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記試料が、組織試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記組織試料が、ヒト組織試料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記複数のコイル特性測定値の2以上が、前記試料に対する前記単一コイルの異なる配向に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記複数のコイル特性測定値は、前記試料に対して第1の配向で前記単一コイルで得られた第1のコイル特性測定値と、前記試料に対して前記第1の配向と異なる第2の配向で前記単一コイルで得られた第2のコイル特性測定値とを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁場誘導トモグラフィー撮像の分野に一般的に関連し、より具体的には単一コイルを使用した磁場誘導トモグラフィー撮像に関連する。
【背景技術】
【0002】
磁場誘導トモグラフィー撮像は、ヒト組織内の電磁特性分布(例えば、導電率または誘電率)を撮像するために使用されうる。より具体的には、磁場誘導トモグラフィー技術は、組織に隣接して配置された誘導コイルにより組織に誘導される渦電流に基づく、ヒト組織の電磁特性の低コスト非接触測定を提供できる。
【0003】
導電率および誘電率などの電磁特性は、脂肪、骨、筋肉および様々な臓器による自然にあるコントラストのために、ヒト組織内で空間的に異なる。結果として、磁場誘導トモグラフィー撮像技術を使用して得られる導電率または誘電率の分布は、その他の低コスト生体医療撮像技術(超音波など)を使用した撮像が困難であるなしにかかわらず、肺および腹部領域、脳組織、ならびに体のその他の領域を含む、体の様々な領域を撮像するために使用されうる。このように、磁場誘導トモグラフィー撮像は、例えば、創傷、潰瘍、脳外傷、およびその他の異常な組織状態の生体医療撮像で有用なことがある。
【0004】
磁場誘導トモグラフィー撮像の既存技術は一般的に、多数のコイル(例えば、コイルアレイ)のサンプルの近くへの配置、および試料の近くに配置された多数のコイル内のコイル対について測定された相互インダクタンスに基づいて画像を構築することを伴う。例えば、ソースコイルのアレイおよび検出コイルのアレイは試料に隣接して配置されうる。高周波エネルギーを使用して一つ以上のソースコイルを励磁することができ、応答を検出コイルで測定できる。試料の導電率(または誘電率)分布は、検出コイルの応答から決定されうる。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様および利点は、以下の記述で部分的に説明される、または記述から習得されうる、または実施形態の実施を通して習得される場合がある。
【0006】
本開示の一つの態様例は、磁場誘導トモグラフィー撮像のための方法を対象とする。方法は、高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源から高周波エネルギーを供給される単一コイルを使用して、当該単一コイルに関連する試料に対して取得された複数のコイル特性測定値に、1以上の計算装置によってアクセスする工程を含む。複数のコイル特性測定値のそれぞれは、試料に対して複数の個別場所の一つにある単一コイルを使用して取得され、前記複数のコイル特性測定値のそれぞれが、前記高周波エネルギー源に接続され、前記高周波エネルギー源から高周波エネルギーを供給される前記単一コイルの検出されたコイル測定値である。方法は、コイル位置データを、前記1以上の計算装置によって複数のコイル特性測定値のそれぞれと関連付ける工程をさらに含む。コイル位置データは、各コイル特性測定値について試料に対する単一コイルの位置および配向を示す。方法は、前記試料に対する複数の異なる位置において単一コイルによって取得されたコイル特性測定値と試料の電磁特性との関係を定義するモデルに、前記1以上の計算装置によってアクセスする工程、および複数のコイル特性測定値および各コイル特性測定値に関連するコイル位置データに少なくとも一部基づいて、モデルを使用して試料の三次元電磁特性マップを生成する工程を含む。前記複数のコイル特性測定値のそれぞれは、コイル損失測定値であり得る。
【0007】
本開示のまた別の態様例は、ヒト組織試料の磁場誘導トモグラフィー撮像用システムを対象とする。システムは、単一コイルを持つコイル装置を含む。単一コイルは複数の同心導電ループを含む。複数の同心導電ループのそれぞれは異なる半径を持つ。コイル装置は、コイル損失測定値を取得するように構成される。システムは、試料に対する複数の個別場所で、試料に対して単一コイルを位置付けるように構成された移動装置をさらに含む。システムは、一つ以上のプロセッサおよび一つ以上の記憶装置を持つ計算システムをさらに含む。一つ以上の記憶装置は、一つ以上のプロセッサによって実行された時、一つ以上のプロセッサに演算を実施させるコンピュータ可読命令を保存する。演算は、単一コイルを使用して取得された複数のコイル損失測定値にアクセスする工程を含む。複数のコイル損失測定値のそれぞれは、試料に対して複数の個別場所の一つにある単一コイルを使用して取得される。演算は、コイル位置データを複数のコイル損失測定値のそれぞれと関連付ける工程をさらに含む。コイル位置データは、各コイル損失測定値の試料に対する単一コイルの位置および配向を示す。演算は、単一コイルによって取得されたコイル特性測定値と試料の導電率との関係を定義するモデルにアクセスする工程、および複数のコイル損失測定値および各コイル損失測定値に関連するコイル位置データに少なくとも一部基づいたモデルを使用して、試料の三次元導電率マップを生成する工程を含む。
【0008】
本開示のまた別の態様例は、一つ以上のプロセッサによって実行された時、一つ以上のプロセッサにヒト組織試料の磁場誘導トモグラフィーのための演算を実施させるコンピュータ可読命令を保存する一つ以上の有形非一時的コンピュータ可読媒体を対象とする。演算は、単一コイルを使用してヒト組織試料に対して取得された複数のコイル損失測定値にアクセスする工程を含む。複数のコイル損失測定値のそれぞれは、ヒト組織試料に対して複数の個別場所の一つにある単一コイルを使用して取得される。各コイル損失測定値は、単一コイルがヒト組織試料に隣接して配置されて高周波エネルギーで励磁された時に、ヒト組織試料に誘導される渦電流から生じる単一コイルのインピーダンスの変化を示す。演算は、コイル位置データを複数のコイル特性測定値のそれぞれと関連付ける工程をさらに含む。コイル位置データは、各コイル特性測定値のヒト組織試料に対する単一コイルの位置および配向を示す。演算は、単一コイルによって取得されたコイル損失測定値と、ヒト組織試料の導電率との関係を定義するモデルにアクセスする工程をさらに含む。演算は、複数のコイル損失測定値および各コイル損失測定値に関連するコイル位置データに少なくとも一部基づいて、モデルを使用してヒト組織試料の三次元導電率マップを生成する工程をさらに含む。
【0009】
変形および変更を、本開示のこれらの態様例に加えることができる。
【0010】
さまざまな実施形態のこれらおよびその他の特徴、態様および利益は、以下の記述および添付請求項を参照することによってより良く理解されるであろう。本明細書に組み込まれ本明細書の一部をなす添付の図面は、本開示の実施形態を図示し、記述と共に、関連原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
当業者を対象とした、実施形態の詳細な記述が本明細書に説明されており、これは以下の添付図を参照する。
図1】本開示の実施形態例による、単一コイルを使用した磁場誘導トモグラフィー撮像用システムの例を示す。
図2】本開示の実施形態例に従って生成された導電率マップの例を示す。
図3】本開示の実施形態例に従って生成された導電率マップの例を示す。
図4】本開示の実施形態例による磁場誘導トモグラフィー撮像用コイルの例を示す。
図5】本開示の実施形態例による磁場誘導トモグラフィー撮像用コイルの接続トレースの例を示す。
図6】本開示の実施形態例による磁場誘導トモグラフィー撮像用コイルを提供するための方法の例のプロセスフロー図を示す。
図7】本開示の実施形態例による磁場誘導トモグラフィー撮像用コイルと関連する回路の例のブロック図を示す。
図8】本開示の実施形態例による磁場誘導トモグラフィー撮像方法の例のプロセスフロー図を示す。
図9】本開示の実施形態例による例を使用して得られたコイル特性測定値の実験結果を示す。
図10】本開示の実施形態例による例を使用して得られたコイル特性測定値の実験結果を示す。
図11】本開示の実施形態例に従ってシミュレーションをした導電率分布について得られたコイル特性測定値の実験結果を示す。
図12】本開示の実施形態例に従ってシミュレーションをした導電率分布について得られたコイル特性測定値の実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、実施形態を詳細に参照するが、その一つ以上の例を図に示す。各例は、実施形態の説明方法として提供されており、本発明を限定するものではない。実際に、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、実施形態に様々な改造および変形をなすことができることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、一つの実施形態の一部として図示または記述される特徴を、別の実施形態とともに使用して、なおさらなる実施形態を生じる可能性がある。従って、本開示の態様はこのような改造および変形を網羅することが意図されている。
【0013】
概要
一般的に、本開示の態様例は、単一コイルを使用した、ヒト組織試料などの試料の磁場誘導トモグラフィー撮像を対象とする。典型的な既存の磁場誘導トモグラフィーシステムは、複数のコイル(例えば、ソースコイルのアレイおよび検出コイルのアレイ)を使用して、ヒト組織試料などの試料の導電率マップを生成する。複数コイルの使用は、磁場誘導トモグラフィーシステムの複雑さを増大させる。例えば、複数のコイルを使用した測定値を取得するために、多重化が必要となりうる。
【0014】
磁場誘導トモグラフィー撮像のために必要なコイルの数を減らすための努力がなされてきた。例えば、コイルを試料に対して再配置するための技術を使用することにより、または試料をコイルに対して再配置することによって、必要なコイルの数を少なくしうる。磁場誘導トモグラフィー撮像に必要なコイルの数を減らすことが望ましいが、磁場誘導トモグラフィーを使用して取得される画像の解像度および正確性を改善するために、なるべく多くの測定値を取得することもまた望ましい。
【0015】
本開示の態様例は、単一コイルを使用した、ヒト組織試料などの試料の磁場誘導トモグラフィー撮像ためのシステム、方法、および装置を対象とする。複数のコイル特性測定値は、試料に対して複数の異なる個別場所の一つにある単一コイルを使用して取得されうる。単一コイルは、試料に対して多くの異なる位置/配向に配置するのが比較的容易なように設計されうる。三次元導電率マップまたは三次元誘電率マップなどの三次元電磁特性マップは、単一コイルを使用して取得された複数のコイル特性測定値から生成されうる。このように、単一コイルによる無接触コイル特性測定値を使用して、シンプルで費用効率の高いヒト組織撮像方法が提供されうる。
【0016】
より具体的には、本発明の発明者らは、単一コイルを使用して得られたコイル損失測定値と試料の電磁特性分布との関係を定義するモデルを発見した。一つの実施では、モデルは、RFエネルギーで励磁され、任意の三次元導電率分布を持つ任意の形状の物体の近くに配置された時、誘導される渦電流から生じる複数の同心導電ループを持つ単一平面多重ループコイルのインピーダンス(例えば、抵抗損)の変化の実数部を説明する定量的分析モデルである。
【0017】
モデルを使用して、単一コイルを使用して得られた複数のコイル特性測定値を使用したヒト組織に対する三次元電磁特性マップを生成しうる。例えば、試料に対して取得された複数のコイル損失測定値にアクセスできる。各コイル特性測定値は、試料に対する複数の個別場所の一つと関連付けられうる。位置データは、各コイル特性測定値と関連付けられうる。位置データは、測定が実施された時の単一コイルの位置および配向を示しうる。
【0018】
複数のコイル特性測定値および関連付けられた位置データが取得されたら、モデルを使用して取得されたコイル特性測定値の反転を実施し、複数の取得された測定値につながる、試料の電磁特性分布(例えば、導電率分布)を示す三次元電磁特性マップを取得しうる。一つの特定の実施では、反転は、試料を有限要素メッシュに離散化することによって実施されうる。非線形または拘束条件付き最小二乗法で、複数の取得されたコイル特性測定値に寄与する可能性が最も高い有限要素メッシュの電磁特性分布を決定できる。得られた導電率分布は、試料の三次元導電率マップとして出力されうる。
【0019】
磁場誘導トモグラフィー撮像用システムの例
図1は、ヒト組織試料など、試料110の磁場誘導トモグラフィー撮像用システム100の例を示す。システム100は、本開示の態様例による磁場誘導トモグラフィー撮像のためのコイル特性測定値を得るために、単一コイル125を持つコイル装置120を含む。コイル125は、プリント配線基板上の一つ以上の平面に配置された複数の同心導電ループを持つ単一コイルでありうる。本開示の態様例による磁場誘導トモグラフィー撮像のためのコイル設計の一例を、図4および5を参照して以下にさらに詳細に記述する。
【0020】
図1のコイル装置120は、コイル125が試料110に隣接して配置された時、定められた周波数(例えば、12.5MHz)のRFエネルギーでコイル125を励磁するように構成されたRFエネルギー源(例えば、発振回路)を含みうる。励磁されたコイル125は磁場を生成でき、これは試料110の渦電流を含みうる。試料のこれらの誘導された渦電流は、コイル125のコイル損失(例えば、インピーダンスの変化)を生じうる。コイル装置120は、試料110に対して特定の場所でのコイル特性測定中のコイル125と関連するコイル損失を決定するために、回路(例えば、測定回路)を含みうる。
【0021】
コイル特性測定値は、コイル装置120を試料110に対して様々に異なる場所や配向で位置付けながら、コイル装置120の単一コイル125を使用して取得できる。収集されたコイル特性測定値は、計算システム140に供給され、ここでコイル特性測定値を分析して、試料110の三次元導電率マップまたは三次元誘電率マップなど、試料110の三次元電磁特性マップを生成しうる。
【0022】
一部の特定実施では、コイル装置120は移動装置130上に取り付けられうる。移動装置130は、例えば、計算システム140またはその他の適切な制御装置によって制御され、コイル125を試料110に対して複数の異なる個別場所に位置づけるために、試料110に対するx、y、およびz軸に沿ってコイル装置120を移動させるロボット装置でありうる。コイル装置120を(例えば、計算システム140により)制御して、複数の個別場所のそれぞれにあるコイル125を使用してコイル特性測定値を取得しうる。
【0023】
代替的に、コイル装置120は、コイル特性測定の実行のために、複数の個別場所に手動で位置付けることができる。例えば、医療専門家は、手持ちコイル装置120を試料110に対して手動で位置付けて、試料110に対する複数の個別場所でコイル特性測定値を取得できる。
【0024】
試料110の正確な三次元電磁特性マップを生成するために、位置データを、得られたコイル特性測定値のそれぞれと関連付ける必要がある。位置データは、コイル125の位置(例えば、試料110に対してx軸、y軸、z軸によって定義される)に加えてコイル125の配向(例えば、試料110に対する傾斜角)を示しうる。コイル125を位置付けるために移動装置130を使用する時、コイル125の位置および配向は、複数の個別場所に位置付けられるべき移動装置130を制御する位置付け制御コマンドに少なくとも部分的に基づいて決定されうる。
【0025】
本開示の一つの実施形態では、試料110およびコイル装置120の上方に位置付けられたカメラ135によって取り込まれた画像は、コイル装置120と関連するさまざまなセンサーからの信号と共に処理されて、各コイル特性測定値に対する位置データを決定しうる。より具体的には、コイル装置120は、一つ以上のモーションセンサー126(例えば、3軸加速度計、ジャイロスコープ、および/またはその他のモーションセンサー)および深さセンサー128を含みうる。表面に対する単一コイル125の配向は、モーションセンサー126からの信号を使用して決定されうる。例えば、3軸加速度計からの信号を使用して、コイル特性測定中の単一コイル125の配向を決定しうる。
【0026】
深さセンサー128を使用して、単一コイルから試料110までの距離(例えば、z軸に沿った位置)を決定しうる。深さセンサー128は、表面に対するコイル125の場所を決定するように構成された一つ以上の装置を含みうる。例えば、深さセンサー128は、一つ以上のレーザーセンサー装置および/または音響位置センサーを含みうる。別の実施では、深さセンサー128は、試料110の画像を取り込むように構成された一つ以上のカメラを含みうる。画像は処理されて、例えば、structure−from−motion技術を使用して、試料110までの深さを決定しうる。
【0027】
カメラ135によって取り込まれた画像を使用して、x軸およびy軸に沿ったコイル125の位置を決定しうる。より具体的には、コイル装置120は、コイル装置120の表面上に位置するグラフィックも含みうる。複数のコイル特性測定が実施されるにつれ、画像取り込み装置135はグラフィックの画像を取り込むことができる。画像を計算システム140に提供することができ、計算システムはにグラフィックの場所に基づいて画像を処理し、試料110に対するx軸およびy軸に沿った位置を決定することができる。特定の実施では、カメラ135は、視差効果から生じる誤差を減らすためにテレセントリックレンズを含みうる。
【0028】
計算システム140は、コイルの場所および配向データと共にコイル特性測定値を受信し、データを処理して、試料110の三次元電磁特性マップを生成することができる。計算システム140は、デスクトップ、ラップトップ、サーバ、携帯装置、一つ以上のプロセッサを持つディスプレー、または一つ以上のプロセッサおよび一つ以上の記憶装置を持つその他の適切な計算装置のうち一つ以上など、一つ以上の計算装置を含みうる。計算システム140は、(例えば、クラスタまたはその他の分散型計算システムの)一つ以上のネットワークコンピュータを使用して実施されうる。例えば、計算システム140は、一つ以上の遠隔装置160と(例えば、有線または無線接続またはネットワークを通して)通信しうる。
【0029】
計算システム140は、一つ以上のプロセッサ142および一つ以上の記憶装置144を含む。一つ以上のプロセッサ142は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、集積回路またはその他の適切な処理装置など、任意の適切な処理装置を含みうる。記憶装置144は、RAM、ROM、ハードドライブ、フラッシュドライブ、光学媒体、磁気媒体またはその他の記憶装置を含むがこれらに限定されない、さまざまな有形非一時的コンピュータ可読媒体の一つ以上の単一または複数の部分を含みうる。計算システム140は、一つ以上の入力装置162(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、タッチパッド、マイクなど)および一つ以上の出力装置164(例えば、ディスプレー、スピーカーなど)をさらに含みうる。
【0030】
記憶装置144は、一つ以上のプロセッサ142によって実行された時、一つ以上のプロセッサ142に演算を実施させる命令146を保存できる。計算装置140は、命令146にアクセスすることによって望ましい機能を提供する専用マシンとして機能するように適合されうる。命令146はハードウェアまたはソフトウェアで実施されうる。ソフトウェアが使用される時、任意の適切なプログラミング、スクリプト作成、またはその他のタイプの言語または言語の組み合わせを使用して、本明細書に含まれる教示を実施しうる。
【0031】
図示されるように、記憶装置144は、一つ以上のプロセッサ142によって実行される時、一つ以上のプロセッサ142に磁場誘導トモグラフィー(「MIT」)モジュール148を実行させる命令146を保存できる。MITモジュール148は、図8に開示した方法など、単一コイルを使用した磁場誘導トモグラフィー撮像のために本明細書に開示された方法の一つ以上を実施するように構成されうる。
【0032】
図1の一つ以上の記憶装置144は、コイル特性測定値、位置データ、三次元電磁特性マップ、およびその他のデータなどのデータも保存できる。図示されるように、一つ以上の記憶装置144は、分析モデル150と関連するデータを保存できる。分析モデル150は、単一コイルで取得されたコイル特性測定値と試料110の電磁特性分布との関係を定義できる。分析モデル例の特徴が、以下でさらに詳細に記述される。
【0033】
MITモジュール148は、入力装置162から、コイル装置120から、移動装置130から、一つ以上の記憶装置144、またはその他のソースに保存されたデータから入力データを受信するように構成されうる。MITモジュール148は次に、開示された方法に従ってこのようなデータを分析し、三次元電磁特性マップなどの利用可能出力を、出力装置164を介して使用者に提供する。分析は、代替的に、一つ以上の遠隔装置160によって実行されうる。
【0034】
本明細書に記述された技術は、計算システム、サーバ、データベース、ソフトウェアアプリケーション、およびその他のコンピュータベースのシステムに加えて、取られた措置、およびこのようなシステムへと/から送信される情報を参照する。当業者であれば、本明細書に提供された開示を使用して、コンピュータベースのシステムの固有の柔軟性により、構成要素間およびその中で、さまざまに異なる可能な構成、組み合わせ、ならびにタスクおよび機能の分割が可能であることを認識するであろう。例えば、本明細書に記述されたプロセスは、単一の計算装置または組み合わせで動作する複数の計算装置を使用して実行されうる。データベースおよびアプリケーションは、単一システムまたは複数のシステム全体にわたって分配されて実行されうる。分配された構成要素は、順次にまたは並行して動作しうる。
【0035】
図2は、本開示の実施形態例による単一コイルを使用して、複数のコイル特性測定値からシステム100によって生成されうる導電率マップ180の一例を示す。導電率マップ180は、コイル装置120によって取得された測定値に基づいて、図1のMITモジュール148により生成される三次元導電率マップの断面の二次元図を提供しうる。図2の導電率マップ180は、例えば、図1の計算システム140の出力装置164上に表示されうる。
【0036】
図2の導電率マップ180は、脊柱管を横切して明らかにした患者の脊柱の横断像を提供している。導電率マップ180は、センチメートル単位で、x、y、およびz軸に沿って導電率分布をプロットしている。導電率マップ180は、S/m単位で導電率の変化の程度と関連するグレースケールの色を示すスケール182を含む。図示されるように、導電率マップ180は、脊髄領域のヒト組織の領域の対比導電率を示し、患者の脊髄領域の画像を提供できる。
【0037】
図3は、本開示の実施形態例による単一コイルを使用して、複数のコイル特性測定値からシステム100によって生成されうる導電率マップ190の別の例を示す。導電率マップ190は、コイル装置120によって取得された測定値に基づいて、図1のMITモジュール148により生成される三次元導電率マップの断面の二次元図でありうる。図3の導電率マップ190は、例えば、図1の計算システム140の出力装置164上に表示されうる。
【0038】
図3の導電率マップ190は、脊柱からオフセットされているが脊椎に並行な、患者の脊髄領域の矢状断像を提供する。導電率マップ190は、センチメートル単位で、x、y、およびz軸に沿って導電率分布をプロットしている。導電率マップ190は、S/m単位で導電率の変化の程度と関連するグレースケールの色を示すスケール192を含む。図示されるように、導電率マップ190は、脊髄領域のヒト組織の領域の対比導電率を示し、患者の脊髄領域の画像を提供できる。このスライスは、肋骨と椎骨の横突起との接続と関連する構造を横切して明らかにしている。導電率マップ180および導電率マップ190は、その他の図と共に、診断およびその他の目的で患者の脊髄領域の異なる画像を提供できる。
【0039】
単一コイルの定量的分析モデルの例
単一コイルによって得られる複数のコイル特性測定値から、三次元導電率マップを取得するための定量分析モデル例をこれから説明する。定量モデルが、任意の導電率分布に対して開発されているが、誘電率および透磁率は空間的に均一であるとしている。過渡電流がループに沿ったすべての点で同じ値を持つと見なして、すべてが共通平面内にあり直列に接続されており、複数の同心円形ループを含むコイル形状に対して、定量分析モデルが開発された。導電率分布は、空間的には任意に異なることが許容される一方、電界に対する解決策は小さな導電率の限度(<10S/m)で追求される。無電荷状態が保持されると想定され、それによって電界はゼロ発散を持つと見なされる。これらの条件下で、電界は外部電流および渦電流のみによる。
【0040】
定量分析モデルは、試料の導電率分布、試料に対する単一コイルの位置および配向、コイルの形状(例えば、複数の同心導電ループのそれぞれの半径)およびその他のパラメータを含む、さまざまなパラメータを持つコイルのインピーダンスの実数部の変化(例えば、抵抗損)と相関しうる。モデルの一例が以下に提供されている:
【0041】
【数1】
【0042】
−δZreはコイル特性測定値(例えば、コイルのインピーダンス損失の実数部)である。μは自由空間の透磁率である。ωはコイルの励起周波数である。ρおよびρは、各相互作用ループ対j,kの各導電ループjおよびkの半径である。関数Q1/2はリング関数または円環調和関数として知られており、ここに示されるように引数ηおよびηを持つ:
【0043】
【数2】
【0044】
【数3】
【0045】
ループがすべてXY平面内に横たわるように、同心ループの中心に配置された座標系に関して、ρはコイル軸から試料内の点までの半径距離であるのに対し、zはコイル平面から試料内の同じ点までの距離である。
【0046】
モデルは、導電率
【0047】
【数4】
【0048】
を位置の関数として導入する。(例えば、四面体要素の)有限要素メッシュを使用して積分を評価し、複数のコイル特性測定値の導電率分布を生成できるが、これは以下でさらに詳細に記述される。
【0049】
磁場誘導トモグラフィー撮像用コイル装置の例
上記に示されるように、発明者らは、直列に接続された複数の同心導電ループを持つ単一コイルにより取得された複数のコイル特性測定値と、試料の導電率分布との関係を定義する定量分析モデルを開発した。定量モデルの例によって意図されるコイルに近似するコイル設計例をこれから説明する。
【0050】
本開示の態様例によるコイルは、多層プリント配線基板上の2つの平面に配列された複数の同心導電ループを含みうる。複数の同心導電ループは、第一の平面内に位置する複数の第一の同心導電ループ、および第二の平面内に位置する複数の第二の同心導電ループを含みうる。第二の平面は、第一の平面から平面分離距離だけ間隔を置くことができる。平面分離距離は、コイルが、本明細書に開示された磁場誘導トモグラフィー撮像のための定量分析モデル例に意図された単一平面に近似するように選択されうる。
【0051】
さらに、複数の導電ループは、複数の接続トレースを使用して直列に接続されうる。複数の接続トレースは、接続トレースによって生成される磁場への寄与が減少されうるように配列することができる。このように、本開示の態様例によるコイルは、互いに同心円をなすように配列され、同じ平面に位置する複数の円形ループに近似した挙動を呈しうる。
【0052】
図4は、本開示の態様例による磁場誘導トモグラフィー撮像用に使用されるコイル200の例を示す。図示されるように、コイル200は10個の同心導電ループを含む。より具体的には、コイル200は、第一の平面に配置された5つの同心導電ループ210および第二の平面に配置された5つの第二の同心導電ループ220を含む。第一および第二の同心導電ループ210および220は、多層プリント配線基板上の1mmまたは0.5mm銅トレースでありうる。実施の一例では、どちらかの平面の5つの同心導電ループの半径は、それぞれ約4mm、8mm、12mm、16mm、および20mmにセットされる。本開示の範囲から逸脱することなく、その他の適切な寸法および間隔を使用しうる。
【0053】
図示されるように、複数の第一の同心導電ループ210のそれぞれは、それが複数の第二の同心導電ループ220の一つと重なるように配置される。さらに、第一の同心導電ループ210および第二の同心導電ループ220は、平面分離距離で分離される。平面分離距離は、コイル200が、定量分析モデルによって意図される同心ループの単一平面に近似するように選択される。例えば、平面分離距離は、約0.5mmなど、約0.2mm〜約0.7mmの範囲でありうる。本明細書で使用される場合、寸法またはその他の特性に関連しての「約」という用語の使用は、指定された寸法またはその他の特性の20%以内を意味することを意図する。
【0054】
複数の第一の導電ループ210は第一の最も内側の導電ループ214を含みうる。第一の最も内側の導電ループ214はRFエネルギー源に連結されうる。複数の第二の導電ループ220は第二の最も内側の導電ループ224を含みうる。第二の最も内側の導電ループ224は、基準ノード(例えば、接地ノードまたは共通ノード)に連結されうる。
【0055】
コイルは、第一の同心導電ループ210および第二の同心導電ループ220を直列に接続するために使用される複数の接続トレース230をさらに含む。より具体的には、接続トレース230は、複数の第一の同心導電ループ210を互いに直列に連結し、複数の第二の同心導電ループ220を互いに直列に連結しうる。接続トレース230は、最も外側の第一の同心導電ループ212を最も外側の第二の同心導電ループ214と直列に連結する接続トレース235も含みうる。
【0056】
図5により詳細に示されるように、接続トレース230は、接続トレースから発している磁場が互いに反対になるように配列されうる。より具体的には、接続トレース230は、第一の平面に位置する複数の接続トレースの一つの電流が第二の平面に位置する接続トレースの一つの電流と反対になるように、放射状に整列されうる。例えば、図5を参照すると、第一の平面に配列された接続トレース232は、第二の平面の接続トレース234とほぼ放射状に整列しうる。接続トレース232に流れる電流は、接続トレース232および234によって生成される磁場が互いに対抗またはキャンセルし合うように、接続トレース234に流れる電流と反対でありうる。
【0057】
図5にさらに示されるように、複数の第一の導電ループ210および第二の導電ループ220のそれぞれは、接続トレース230を使用して導電ループの接続を促進するために、ギャップ240を含みうる。ギャップは、約0.5mmなど、約0.2mm〜約0.7mmの範囲でありうる。
【0058】
ギャップ240は互いにオフセットされて、複数の同心導電ループ210および220の直列接続を促進しうる。例えば、複数の第一の同心導電ループ210の一つと関連するギャップは、複数の第一の同心導電ループ210のもう一つと関連するギャップからオフセットされうる。同様に、複数の第二の同心導電ループ220の一つと関連するギャップは、複数の第二の同心導電ループ220のもう一つと関連するギャップからオフセットされうる。第一の同心導電ループ210の一つと関連するギャップも、複数の第二の同心導電ループ220の一つと関連するギャップからオフセットされうる。オフセットされたギャップは、コイル200と関連する同じ軸に沿っていない可能性がある。
【0059】
以下の実験結果に示されるように、図4および5のコイル200は、磁場誘導トモグラフィー撮像のための定量分析モデルによって意図されるコイルの良好な近似を提供しうる。このように、コイル200を使用したコイル特性測定値を使用して、対象試料(例えば、ヒト組織試料)の三次元電磁特性マップを生成しうる。
【0060】
図6は、本開示の態様例による磁場誘導トモグラフィー撮像用コイルを提供するための方法(300)例のプロセスフロー図を示す。図6は、例示および考察の目的のために特定の順序で実施されるステップを示す。当業者であれば、本明細書に提供された開示を使用して、本明細書に開示された方法のいずれのステップも、本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな方法で変更、省略、再配置、適合、または説明されうることを理解するであろう。
【0061】
(302)では、複数の第一の同心導電ループが第一の平面に配列される。例えば、図4のコイル200の複数の第一の同心導電ループ210は、多層プリント配線基板の第一の平面上に配列される。図6の(304)では、複数の第二の同心導電ループが第二の平面に配列される。例えば、図4の複数の第二の同心導電ループ220は、多層プリント配線基板の第二の平面上に配列される。
【0062】
第一の平面および第二の平面は、平面分離距離によって分離されうる。平面分離距離は、コイルが、本明細書に開示された磁場誘導トモグラフィーのための定量分析モデルの同心導電ループの単一平面に近似するように選択されうる。例えば、平面分離距離は、0.2mm〜0.7mmの範囲になるように選択されうる。
【0063】
(306)で、複数の第一の同心導電ループは、第一の平面の複数の第一の接続トレースを使用して、直列に連結される。図6の(308)で、複数の第二の同心導電ループは、第二の平面の複数の第二の接続トレースを使用して、直列に連結される。接続トレースは、接続トレースによって生成された磁場が互いに対抗するように、放射状に整列されうる。例えば、複数の第一の接続トレースの一つの電流が複数の第二の接続トレースの一つの電流と反対になるように、複数の第一の接続トレースおよび複数の第二の接続トレースが放射状に配列されて複数の第一の同心導電ループおよび複数の第二の同心導電ループを直列に接続するように、接続トレースは配列されうる。
【0064】
(308)で、方法は、複数の第一の同心導電ループおよび複数の第二の同心導電ループが直列に連結されるように、第一の平面に位置する第一の最も外側の導電ループと第二の平面の第二の最も外側の導電ループを連結する工程を含みうる。例えば、図4を参照すると、第一の最も外側の導電ループ212は、第二の最も外側の導電ループ222と直列に連結されうる。
【0065】
図6の(310)で、方法は、第一の最も内側の導電ループをRFエネルギー源に連結する工程を含みうる。例えば、図4を参照すると、複数の第一の同心導電ループ210の最も内側の導電ループ214は、RFエネルギー源に連結されうる。図6の(312)で、第二の最も内側の導電ループは、基準ノード(例えば、接地ノードまたは共通ノード)に連結されうる。例えば、図4を参照すると、複数の第二の同心導電ループ220の最も内側の導電ループ224は、基準ノードに連結されうる。
【0066】
コイル特性測定値を取得するための回路の例
図7は、図4および5のコイル200を使用してコイル特性測定値を得るために使用されうる回路400の例の図を示す。示されるように、図7の回路400は、コイル200をRFエネルギーで励磁するように構成されたRFエネルギー源410(例えば、発振回路)を含む。RFエネルギー源410は、固定周波数でRFエネルギーをコイル200に適用するように構成された固定周波数水晶発振器でありうる。固定周波数は、例えば、約12.5MHzでありうる。実施形態の一例では、RFエネルギー源410は、コイル200の複数の第一の同心導電ループの最も内側の導電ループに連結されうる。コイル200の複数の第二の同心導電ループの最も内側の同心導電ループは、基準ノード(例えば、共通または接地)に連結されうる。
【0067】
回路400は、一つ以上のプロセッサ420を含み、回路400のさまざまな側面を制御することに加えて、回路400によって得られた情報(例えば、測定回路430によって得られた情報)を処理することができる。一つ以上のプロセッサ420は、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、集積回路またはその他の適切な処理装置など、任意の適切な処理装置を含みうる。
【0068】
一つ以上のプロセッサ420は、コイル200を使用してコイル損失測定値を取り込むために、回路400のさまざまな構成要素を制御するように構成されうる。例えば、一つ以上のプロセッサ420は、コイル特性測定のためにコイル200が試料に隣接して位置付けられた時、コイル200を共振または近共振へと駆動するように、コイル200と並列に連結されたバラクタ415を制御できる。一つ以上のプロセッサ420は、測定回路430も制御して、コイル200が試料に隣接して位置付けられた時、コイル特性測定値を得ることができる。
【0069】
測定回路430は、コイル200でコイル特性測定値を取得するように構成されうる。コイル特性測定値は、試料に誘導された渦電流から生じるコイル200のコイル損失を示しうる。一つの実施では、測定回路430は、コイル200のアドミタンス変化の実数部を測定するように構成されうる。コイル200のアドミタンス変化の実数部は、分析モデルの目的のためにアドミタンスの逆数としてコイル200のインピーダンス変化の実数部に変換されうる。
【0070】
コイル200のアドミタンスはさまざまな方法で測定されうる。一つの実施形態では、測定回路430は、位相偏移測定回路432および電圧利得測定回路434を使用してアドミタンスを測定する。例えば、測定回路430は、Analog Devices社からのAD8302位相および利得検出器を含みうる。位相偏移測定回路432は、コイル200に関連する電流と電圧の間の位相偏移を測定できる。電圧利得測定回路434は、コイル200と直列に連結された検出抵抗器の電圧とコイル200全体にわたる電圧の比率を測定できる。コイル200のアドミタンスは、測定回路430によって得られるコイル200の位相および利得に基づいて(例えば、一つ以上のプロセッサ420により)派生されうる。
【0071】
コイル特性測定値が得られたら、一つ以上のプロセッサ420は、コイル特性測定値を、例えば記憶装置に保存できる。一つ以上のプロセッサ420は、通信装置440を使用してコイル特性測定値を処理のために一つ以上の遠隔装置に伝達し、試料の三次元電磁特性マップを生成することもできる。通信装置440は、有線または無線接続および/またはネットワークにより、情報を遠隔装置に伝達するための任意のインターフェースまたは装置を含みうる。
【0072】
磁場誘導トモグラフィー撮像のための方法の例
図8は、本開示の態様例による磁場誘導トモグラフィー撮像のための方法(500)の例のプロセスフロー図を示す。方法(500)は、図1に示される計算システム140の一つ以上の計算装置など、一つ以上の計算装置によって実行されうる。さらに図8は、例示および考察の目的のために特定の順序で実施されるステップを示す。当業者であれば、本明細書に提供された開示を使用して、本明細書に開示された方法のいずれのステップも、本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな方法で変更、省略、再配置、適合、または説明されうることを理解するであろう。
【0073】
(502)で、方法は、試料に対して複数の異なる個別場所で単一コイルを使用して得られた複数のコイル特性測定値にアクセスする工程を含みうる。例えば、複数のコイル特性測定値は、記憶装置からアクセスできる、またはコイル特性測定値を取得するために構成された単一コイルを持つコイル装置から受信できる。コイル特性測定値は、単一コイルがRFエネルギーで励磁されて、複数の個別場所の一つに試料に隣接して配置された時、単一コイルによって取り込まれるコイル損失測定値でありうる。
【0074】
一つの実施では、単一コイルは複数の同心導電ループを含みうる。例えば、単一コイルは、第一の平面に配列された複数の第一の同心導電ループ、および第二の平面に配列された複数の第二の同心導電ループを持つ。複数の同心導電ループは、コイルによって生成される磁場に対する影響が減少するように配列された接続トレースを使用して、接続されうる。例えば、単一コイルは、図4および5に示されるコイル200のコイル形状を持ちうる。
【0075】
コイル特性測定値は、試料に対する複数の個別位置で取得されうる。各コイル特性測定値は、試料に対して異なる個別位置でとられうる。より多くの数のコイル特性測定値は、三次元電磁特性マップ生成の正確性の増加につながりうる。
【0076】
特定の実施形態では、コイル特性測定値は、コイル特性測定値の複数の異なるデータセットを含みうる。データセットのそれぞれは、単一コイルを使用して複数のコイル特性測定を実施することにより構築されうる。単一コイルは各データセットに対して異なりうる。例えば、各データセットは、その他のデータセットと関連したその他の単一コイルのいずれかに対して、異なる全体的サイズおよび/または外径を持つ単一コイルと関連しうる。データセットは異なる時点で取得されうる。データセットは本開示の態様例に従って集合的に処理し、以下に記述されるように試料の三次元電気特性分布を生成しうる。
【0077】
図8の(504)で、方法は、位置データを複数のコイル特性測定値のそれぞれと関連付ける工程を含む。各コイル特性測定値の位置データは、コイル特性測定が実施された時の試料に対する単一コイルの位置および配向を示しうる。位置データは、例えば、計算システムの記憶装置で、各コイル特性測定値と関連付けられうる。
【0078】
位置データは様々な方法で取得されうる。一つの実施では、位置データは、試料に対する複数の個別場所に、試料に対して単一コイルを位置付けるために使用される移動装置と関連するデータから各測定値に対して取得されうる。例えば、移動装置は、試料に対する複数の画定された場所に、単一コイルを位置付けるために制御されうる。位置データはこれらの画定された場所から決定されうる。
【0079】
単一コイルと関連付けられた一つ以上のセンサー(例えば、一つ以上のモーションセンサーおよび一つ以上の深さセンサー)からの信号は、コイル特性測定値の位置データを決定するためにも使用されうる。複数のコイル特性測定が実施される時、単一コイルを含むコイル装置の画像も取り込まれうる。単一コイルの位置は、例えば、画像に示されるコイル装置の表面上のグラフィックの位置に基づいて決定されうる。
【0080】
(506)で、方法は、単一コイルで取得されたコイル特性測定値と試料の電磁特性との関係を定義する分析モデルにアクセスする工程を含む。例えば、分析モデルは、例えば記憶装置からアクセスしうる。一つの特定の実施では、分析モデルは、複数の同心導電ループを持つ単一コイルのインピーダンスの変化と試料の導電率分布とを関連付ける。より具体的には、分析モデルは、単一コイルのインピーダンスの変化と様々なパラメータを関連付けることができる。パラメータは、試料の導電率分布、各コイル損失測定値と関連する位置および配向、ならびにコイルの形状(例えば、同心導電ループのそれぞれの半径)を含みうる。定量モデル例に関する詳細は、上述の単一コイルの定量分析モデル例の考察で提供されている。
【0081】
(508)で、方法は、複数のコイル特性測定値および関連する位置データに基づいて、分析モデルを評価する工程を含む。より具体的には、複数の取得されたコイル特性測定値に最も近いものをもたらす導電率分布を決定するために、モデルを使用して反転を実施しうる。一つの態様例では、反転は、試料を有限要素メッシュに離散化することによって実施されうる。有限要素メッシュは、四面体要素など、複数の多角形要素を含みうる。有限要素メッシュの形状および解像度は、分析されている試料に合わせることができる。実用性上、コイル場所位置を使用して、コイルが行ったことのある空間領域のメッシングを避けて、効率を改善することができる。有限要素メッシュが試料に対して生成されたら、有限要素メッシュの導電率分布を、非線形または拘束条件付き最小二乗法を使用して計算しうる。
【0082】
より具体的には、複数の電磁特性分布候補を有限要素メッシュに対して計算しうる。これらの電磁特性分布候補のそれぞれは、平均二乗誤差など、費用または目的関数を使用して評価されうる。費用または目的関数は、取得されたコイル特性測定値とモデルを使用した理論的コイル特性測定値との差に少なくとも一部基づいて、費用を各電磁特性分布候補に割り当てることができる。最低費用の電磁特性分布候補を、試料に対する電磁特性分布として選択できる。当業者であれば、本明細書に提供された開示を使用すれば、その他の適切な技術を使用し、本開示の範囲から逸脱することなく、分析モデルを使用して電磁特性分布を決定しうることを理解するであろう。
【0083】
(510)で、反転アルゴリズムを使用して特定された電磁特性分布に基づいて、三次元電磁特性マップが生成されうる。三次元特性マップは、試料に関連する複数の三次元点に対する電磁特性分布(例えば、導電率分布)を提供できる。次に三次元電磁特性マップの断面に沿った二次元図を取込み、例えば表示装置上に表示しうる。三次元電磁特性マップの三次元図を生成し、回転し、例えば表示装置上に表示しうる。
【0084】
実験結果1
図4および5に示されたコイル200のコイル形状を持つ2つのコイルが作成された。コイル「R」は1mmのトレース幅であった。コイル「S」は0.5mmのトレース幅であった。各トレースは2オンスの銅で作られた。コイル「R」上のトレースは、0.68mmの同等の円形ワイヤ直径を持ち、同等とは同一の周囲を持つという意味であった。コイル「S」上のトレースは、0.36mmの同等の円形ワイヤ直径であった。
【0085】
コイルは、30cm×30cm×13cmの深さのタンクに入った既知の導電率分布を持つKCl水溶液を含む試料に対して、複数の個別場所に位置付けられた。自由空間に対するアドミタンス変化が測定され、次に損失を計算するために使用された。次にこれは、上述の定量分析モデルを使用して計算された理論的損失と比較された。
【0086】
図9は、理論的損失とコイル「R」に対する観測損失との比較を示している。図9は、横座標に沿って試料からの深さ、または上方の距離、および縦座標に沿ってコイル損失をプロットしている。曲線602はコイル「R」に対する観測損失を示す。曲線604は、厚さ13cmの無限平板に対する理論的損失を示す。曲線606は、有限平板に対する理論的損失を示す。
【0087】
図10は、理論的損失とコイル「S」に対する観測損失との比較を示している。図10は、横座標に沿って試料からの深さ、または試料までの距離、および縦座標に沿ってコイル損失をプロットしている。曲線612はコイル「S」に対する観測損失を示す。曲線614は、厚さ13cmの無限平板に対する理論的損失を示す。曲線616は、有限平板に対する理論的損失を示す。
【0088】
図9および10に示されるように、図4および5のコイル200のコイル形状を使用して得られたコイル特性測定値は、本明細書に開示された定量分析モデル例を使用した理論的損失を近接してなぞっている。結果として図4および5のコイル200は、本開示の態様例による単一コイルを使用した磁場誘導トモグラフィー撮像のために効果的に使用されうる。
【0089】
実験結果2
本開示の態様例による定量分析モデル例をテストするため、9cm×9cmの正方形で2cmの厚さの平板を含む試料が2つの層に細分された。有限要素メッシュが、380個の五面体要素および342個のノードから成る試料に対して生成された。電気導電率はメッシュノードにわたって分布し、隅の近くの1.0S/mから中心近くの3.0S/mまで導電率が異なった。図10は、以下に従って試料に対して定義された理論的導電率分布620を示す:
【0090】
【数5】
【0091】
9個の仮想コイル特性測定値が、9個の個別コイル位置での単一コイルを使用してシミュレーションが実施された。逆転は、9個のコイル特性測定値に少なくとも一部基づいて、定量分析モデルを使用して実施された。図11は、逆転を使用して決定された、結果得られた三次元導電率マップ630を示す。示されるように、三次元導電率マップ630は真の導電率分布620に近似しており、試料に対して個別位置にある単一コイルによる、9個のコイル特性測定値のみを使用して決定される。
【0092】
本主題は、その特定の実施形態例に関して詳細に記述されているが、当然のことながら、当業者であれば、上記の理解を得ることで、このような実施形態に対する改造、その変形、およびそれとの等価物を容易に作ることができる。従って、本開示の範囲は限定としてではなく例としてであり、当業者にとっては明らかであるので、本開示はこのような改造、変形および/または本主題への追加の包含を排除しない。
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
図10
図11
図12