特許第6190977号(P6190977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190977
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】照明装置および照明装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 63/06 20060101AFI20170821BHJP
   H01J 9/22 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01J63/06
   H01J9/22 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-562197(P2016-562197)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015001662
(87)【国際公開番号】WO2016088283
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-243826(P2014-243826)
(32)【優先日】2014年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504302945
【氏名又は名称】釜原 董隆
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】釜原 董隆
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−162640(JP,A)
【文献】 特開2012−142109(JP,A)
【文献】 特開2006−190545(JP,A)
【文献】 特開2005−71682(JP,A)
【文献】 特開昭62−268042(JP,A)
【文献】 特開2010−267493(JP,A)
【文献】 特開2012−64464(JP,A)
【文献】 特開2011−108563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0119856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/20−9/227、29/20−29/24、63/00−63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体と多孔質体とエミッタとを備えた照明装置であって、
前記エミッタは、当該照明装置の光照射面と前記蛍光体との間に設けられ、
前記多孔質体は熱伝導性を有し、
前記蛍光体は前記多孔質体に含浸されている、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記多孔質体は電気伝導性をさらに有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記多孔質体は、焼結体と、圧粉体と、焼結体と圧粉体との混合物と、多孔質
体の物質と、粉状または粒状の固形物をペレタイジングした物と、鋳物の造型技
術の造型プロセスを応用して粉状または粒状の固形物を整形した物とのうちのい
ずれか1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記多孔質体と前記エミッタとを真空封止しかつ前記光照射面を備えた封止体
をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記蛍光体の熱を放熱する放熱体をさらに備え、
前記放熱体の一部は前記多孔質体に密着し、かつ前記放熱体の少なくとも一端
は前記封止体の外部に露出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
熱伝導性を有する多孔質体を製造する工程と、
前記多孔質体の表面に蛍光体を含浸させる工程と、
を含み、
前記多孔質体の表面に蛍光体を含浸させる工程では、前記多孔質体の表面に前
記蛍光体を塗布させたのち、前記多孔質体よりも硬度の低い材料からなるものを
用いて前記蛍光体を前記多孔質体の内部に押し込み、さらに前記蛍光体の押し込
みを終えた前記ものの凹凸を均す処理をしてから当該ものを前記多孔質体から剥
離する、
ことを特徴とする照明装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンドや、カーボンナノチューブなどのナノカーボンを使った発光素子を使用した照明装置において、発光体が、高電圧下の温度上昇によって短期間で発光しなくなる現象を抑制することができる構成とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工照明には白熱電球や蛍光灯やメタルハライド・ランプ、そして水銀灯やハロゲンランプなど種々ある。しかしこれらはいずれも消費電力が多い事や、水銀等の有害物質を使用している為に環境破壊につながる、という事が問題となる。現在世界中で使用されている人工照明の全てが、多かれ少なかれ環境を破壊する要因を有しており、そのため現状の人工照明の全ては、いずれ使用が禁止される方向に進んでいる。
【0003】
それに変わって今後はFEL(Field Emission Lamp:以下の説明では、ダイヤモンド発光素子を使った照明装置の事をFELと記す)や、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Organic Electro Luminescence)がそれぞれの特徴に応じて住み分ける時代が来るだろう、と言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−10169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDと有機ELは順調に社会に浸透しているが、FELは、高輝度の次世代照明装置として期待されているものの、その後の研究により照明装置としての寿命が1ヶ月しかない事が解かった。なお、さらなる研究によってFELの装置寿命を3ヶ月にまで延ばすことが可能となったが、それが限界であった。これにより、FELの開発が停滞してしまい、現時点では高輝度の次世代照明装置が見当たらい事態に陥っている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、FELの寿命が短い原因として現在特定されている問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
FELでは点灯時において蛍光体に非常に高い電圧をかけて非常に多くの電子を照射し過ぎるために蛍光体が温度上昇して早期に破壊されてしまう。この蛍光体の破壊がFELの寿命を短くする。本発明では、蛍光体が温度上昇によって破壊される事に着目し、上昇した温度を、熱の対流と放射と伝導を利用して冷却することで抑制している。具体的には、本発明の照明装置は、蛍光体と多孔質体とエミッタとを備え、前記エミッタは、当該照明装置の光照射面と前記蛍光体との間に設けられ、前記多孔質体は熱伝導性を有し、前記蛍光体は前記多孔質体に含浸されている。この構成を備えることで本発明の照明装置は、蛍光体に生じた熱を対流と放射と伝導を利用して外部に放熱している。以下、さらに説明する。
【0008】
照明装置(FEL)を点灯している時に蛍光体に発生する熱は蛍光体が設けられている物質を介して外部に伝導していくので、この物質を熱伝導性の特性が良好な物質にすれば、蛍光体の温度上昇を抑制する事が出来る。そこで、本発明の照明装置では、蛍光体を設ける物質として熱伝導性を有する多孔質体を用い、さらにこの多孔質体に蛍光体を含浸させることによって蛍光体の温度上昇を抑制している。多孔質体は、微小孔を多数有するために、蛍光体を含浸させれば蛍光体との間の接触面積を大きくすることができる。なお、多孔質体は電気伝導性をさらに有しているのがより好ましい。
【0009】
ここで多孔質とは、穴がたくさん空いていて軽石の様な状態をいう。多孔質体としては、多孔質焼結体、または圧粉体、または多孔質焼結体と圧粉体との混合物からなる物質がある。これらの多孔質体は、例えば粉末冶金の製法によって製作することができる。さらに多孔質体としては、多孔質体の物質、または粉状または粒状の固形物をペレタイジングした物、または鋳物の造型技術の造型プロセスを応用して粉状または粒状の固形物を整形する方法もある。この鋳物の造型技術については、後述する生砂の他にも水ガラスやフラン樹脂等を使用した様々な造型プロセス(砂を固める方法)があるので、どのプロセスを使用するかについては必要に応じて適宜選択すればよい。
【0010】
蛍光体に発生した熱が多孔質体に熱伝導する際における熱伝導効率は、上述したように蛍光体と多孔質体との接触面積が大きいほど良い。そこで、本発明では、照明装置の製造方法では、多孔質体の表面に蛍光体を塗布し、塗布した蛍光体をそのまま多孔質体に存在する空孔に含浸されている。これにより、蛍光体と多孔質体との接触面積を広げることが可能になる。
【0011】
しかし、長時間の点灯によって多孔質体に伝導する熱が増加すれば多孔質体の温度も上昇するので、蛍光体の熱が多孔質体に伝導しづらくなる。
【0012】
以上のことから、多孔質体の質量を大きくすればするほど、蛍光体の温度上昇を抑制できて蛍光体破壊を抑制することができる。つまり、多孔質体の質量を大きくすればFEL(照明装置)の寿命を長くすることができる。しかし、これには限界がある。
【0013】
FEL(照明装置)では、蛍光体と多孔質体とは封止体の内部に真空封止された状態で設けられるために、冷却は熱の放射によってのみ実現できる。本発明では、このことに着目して、熱伝導によって蛍光体から多孔質体に伝導した熱を、空気による熱の対流を利用して多孔質体から大気中へ放熱、放射させている。このような放熱を実現するため、本発明の照明装置では、一部が多孔質体に密着し、かつ少なくともその一端が封止体の外部に露出する放熱体をさらに設けている。
【0014】
放熱体を介して多孔質体を大気中に露出させるという構成を設けることで、本発明の照明装置では、蛍光体に発生する熱を、熱伝導によって多孔質体に伝導させ、さらに熱放射/熱対流によって多孔質体から放熱体を介して大気中に放散させている。これにより、点灯中に蛍光体に生じる温度上昇を長期間抑制することが可能になる。
【0015】
さらには、蛍光体の昇温抑制に伴って多孔質体に伝導される熱を、点灯停止後、すなわち消灯中において空気の対流によって大気中へ放熱することが可能になる。これにより、消灯中に蛍光体を初期点灯時の温度まで速やかに冷却させることができる。
【発明の効果】
【0016】
従来の照明装置には、蛍光体の温度上昇が原因で、蛍光体が短期開で発光しなくなるという問題があったが、本発明によれば、多孔質体の表面に蛍光体を塗布し、その蛍光体をそのまま多孔質体の内部に含浸せしめる事により、蛍光体と多孔質体との接触面積を拡大させて、発光時に生じる蛍光体の熱を多孔質体に速やかに伝導せしめる事が可能になった。これにより、蛍光体の温度上昇を抑制して、蛍光体の寿命を伸ばす事が出来る。
【0017】
また、従来の照明装置では、蛍光体の発光により生じた光は、発光しない蛍光体の隙間を抜けて出て行かねばならず、そのため発光した光は減衰してしまう。これに対して、本発明の照明装置では、発光した光の全てが照明装置の表面にまで届くため、従来のものよりも明るい照明装置を提供することが可能となる。
【0018】
更に本発明の照明装置では、多孔質体の表面で発生する蛍光体の橋架けを可及的に減少させることができるうえに蛍光体の表面の凹凸を均すことできる。これにより、さらに明るい照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1のFEL(照明装置)の概略構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態1のFELの要部を示す要部拡大断面図である。
図3】実施の形態1のFELにおける放熱部の取り付け状態の一例を示す斜視図である。
図4】実施の形態1のFELにおける放熱部の取り付け状態の他の例を示す斜視図である。
図5】蛍光体の橋掛けの説明に供する要部拡大断面図である。
図6】最適な蛍光体の説明に供する要部拡大断面図である。
図7】最適な蛍光体の説明に供する要部拡大断面図である。
図8】実施の形態1のFELの製造方法の説明に供する要部拡大断面図である。
図9】(a)、(b)、(c)は実施の形態3のFELの構成を示す平面図、正面図、側面図であり、(d)は作製の説明に供する斜視図である。
図10】(a)、(b)、(c)は実施の形態4のFELの構成を示す平面図、正面図、側面図である。
図11】従来例のFELの構成を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態を説明する前に、従来のFEL(照明装置)100について簡単に説明する。従来のFEL100は、図11に示すように、光照射面2となる外装ガラス2の内面2bに蛍光体3が塗布されており、蛍光体3と光照射面(外装ガラス2)とは一体となっている。
【0021】
以上の構成を備えた従来のFEL100では、図11に示す様に、エミッタ4から矢印Aの方向に沿って蛍光体3に向かって飛び出した電子eが蛍光体3に衝突すると、電子eが衝突した蛍光体3だけが選択的に発光する。図11においては、黒い丸印の蛍光体3が発光しており、白い丸印の蛍光体3は発光していない。
【0022】
そのため、発光した蛍光体3で生じた光は、発光しない蛍光体3の隙間を抜けてFEL100の外側へ出て行かざるを得ない。つまり蛍光体3の発光により生じた光は蛍光体3を突き抜ける事はできないので、蛍光体3の粒間を抜け出てFEL100の外部に放射される。しかし、これは説明するまでもなく照明装置として効率が悪くて、発光した光の大半は、この発光しない蛍光体3の層の中で減衰してしまう。
【0023】
これに対して以下の実施の形態で詳細を説明する本発明のFEL(照明装置)では、蛍光体を塗布し含浸せしめた多孔質体を、FELの表面つまり光の照射面から分離して両者を一体としないように構成した。
【0024】
つまり、図1図2において詳細を示す本発明の実施の形態1のFEL(照明装置)1は、封止体2とエミッタ4と発光体6と電源7とを備えている。発光体6は、図2に示すように、電気伝導性と熱伝導性とを有する多孔質体5と、多孔質体5の表面からその内部に含浸された蛍光体3とを備えている。エミッタ4は発光体6の周囲に配置されている。エミッタ4と発光体6とは封止体2の内部に収納されている。封止体2は密封容器から構成されており、光照射面2aとなるその周面は透明ガラスによって構成されている。封止体2は収納した発光体6とエミッタ4とを真空封止している。以上の構成を備えることでFEL1では、エミッタ4は、封止体2の表面からなるFEL1の光照射面2aと発光体6との間に配置されており、これによって、蛍光体3は光照射面2aから離間している。
【0025】
さらにFEL1では、対流によって空気で冷却させる円筒形の放熱体8を有している。放熱体8はその両端部がFEL1(具体的には封止体2)から突出している。なお、放熱体8は、図1図3に示す様に、その両端をFEL1から突出させてもよい。また、図4に示す様に、放熱体8の一方の端部だけをFEL1から突出させてもよい。図4の構成では、図1図3の構成よりも冷却効率は低下するものの、放熱体8の突出端とFEL1との間の隙間を封止する箇所が半減するため、封止のコストは安くなる。
【0026】
多孔質体5と放熱体8とは、図3図4に示す様に結合している。多孔質体5には電源7によって高電圧が印加されるため、放熱体8の材料を金属等の導電材料とする場合には、多孔質体5と放熱体8との間に絶縁材料を介在させる必要がある。その場合、多孔質体5に溜まった熱を一旦絶縁材料に伝導させてから、放熱体8へ伝導させねばならない。
【0027】
ただ、絶縁材料を介在させる構成では、放熱体8そのものを絶縁材料で製作した場合に較べると冷却効果が低い。しかし多孔質体5を作製する際には、図3図4に示す状態で還元雰囲気の焼結炉で、多孔質体5と放熱体8とを加熱する必要がある。さらには、多孔質体5と放熱体8との間を封止する作業時にも、両者は高熱に晒されてしまう。そのため、放熱体8を樹脂や木や紙等から構成することは出来ない。
【0028】
いずれにせよ蛍光体3で発生する熱を多孔質体5と放熱体8とを介して大気中に放熱させれば良いのであるから、放熱体8は、封止時の高熱に耐える事の出来る材料から構成されれば問題無い。例えは絶縁材料でない金属等の導電材料から放熱体8を構成しても、放熱体8と多孔質体5との間に、熱伝導に優れた材料からなる絶縁材料を介在させれば良い。
【0029】
以上の構成を備えることによって、FEL1では、図2において矢印Aに示す様に電子eが蛍光体3に向かって飛び出して蛍光体3に衝突して発光した光は、図11の従来例とは異なり蛍光体3の粒間を抜ける必要がなくなり、そのままFEL1の表面(光照射面2a)に向かって照射される。従って従来例とは異なり、FEL1で発光した光の全てはFEL1の表面まで到達する。これによりFEL1は、従来例に比べて格段に明るい照明装置になる。
【0030】
以下、粉末冶金の製法を用いた本実施の形態のFEL1の製造方法、特に多孔質体5の製造方法と多孔質体5に蛍光体3を含浸させて発光体6を製造する方法とを、詳細に説明する。まず、表面が酸化されていない粉末状又は粒状のアルミニュームとデキストリンとを混合させる。デキストリンはアルミニュームの融点の2/3の温度(焼結温度)以下で焼失するので、穴開き率40%の焼結体からなる多孔質体5を作製したい時は、体積パーセントでアルミニューム60%、デキストリン40%の比率で両者を配合して混合すれば良い。
【0031】
以上のようにして作製した混合物を金型へ入れてプレスで圧粉することで、圧粉体を作製する。このとき、直径10mm程度、長さ20mm程度の大きさの圧粉体を作製する場合は、1ton程度の圧縮加重を混合物に加えれば良い。
【0032】
以上のようにして作製した圧粉体を水素ガス還元炉へ入れて、アルミニュームの融点の2/3程度の温度で焼結させる。保持時間は、焼結温度に到達してからインチ当たり1時間程度である。したがって、圧粉体の肉厚が1インチ程度なら保持時間は1時間とする。
【0033】
以上で多孔質アルミニュームの焼結体からなる多孔質体5が完成する。次に完成した多孔質体5の表面の汚れを、電解研磨又は化学研磨によって取り除く。
【0034】
この様にして完成した多孔質体5を、アルコールからなる溶媒に蛍光体3を溶かし込んだ溶液中に含浸させ、この状態で、溶液中の多孔質体5をポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等のビニール樹脂製薄膜体からなるもので被覆し、さらにこの状態で多孔質体5表面を前記もので繰り返し擦ることで、溶液中の蛍光体3を多孔質体5の内部に含浸させる。
【0035】
さらに、多孔質体5の表面における蛍光体3の配列を、多孔質体5の表面と並行に一直線上に並んだ状態に均す為に、前記ものの上から、柔らかくて平滑なゴム製のヘラで前記ものの凹凸を擦って均してから、前記ものを多孔質体5から剥がし、さらに、蛍光体3を塗布した多孔質体5を乾燥させる。乾燥したら、リン酸カルシウムを多孔質体5に吹き付けて表面の蛍光体3を固めて固定する。
【0036】
図2に示す様に、FEL1において多数設けられている蛍光体3の中で発光するのはその中の一部の蛍光体3(黒丸の蛍光体3)だけである。発光する蛍光体3を増加させる事が出来れば、FEL1はさらに明るい照明装置になる。本実施の形態では、発光する蛍光体2を増加させるために、以下の構成をさらに備えている。
【0037】
多孔質体5においては、その表面から内部に蛍光体3を深く含浸させるほど、多孔質体5と蛍光体3との接触面積が大きくなって、発熱した蛍光体3の熱を速やかに多孔質体5に伝導させる事が出来るようになる。このことに着目してFEL1では、蛍光体3を多孔質体5の内部に深く含浸させている。以下、本実施の形態のFEL1において、蛍光体3を多孔質体5に深く含浸させる方法と、発光する蛍光体3をさらに増加させる方法について説明する。
【0038】
従来のFEL100では、蛍光体3で発光した光を、FEL100の表面(光照射面)により多く到達させて、発光効率を向上させるためには、前述したように、発光した光を遮る他の蛍光体3を出来るだけ減らす必要がある。そのため、従来のFEL100では、・蛍光体3の粒間間隔を大きくする方が良く、
・蛍光体3の粒の層に橋掛けを多く発生させる方がよい。
なお、橋掛けとは図5に示す様に、蛍光体3の粒と粒とが作用し合って作られる空洞3aのことである。
【0039】
これに対して、本実施の形態のFEL1では、蛍光体3で発光した光を遮る他の蛍光体3は基本的に存在しないため、発光効率を向上させるために上述した条件を設定する必要はない。このことに着目して、FEL1では、蛍光体3の粒間隙間を小さくすることで熱伝導効率を向上させることにより蛍光体3の発熱を抑制して、その寿命を伸ばしている。以下、さらに説明する。
【0040】
粒度がほぼ同一であって粒度分布に広がりがない蛍光体3を多孔質体5に含浸させると、蛍光体3の粒間に図6に示す様に比較的大きい間隔3bが生じる。これに対して、粒度分布に広がりがある蛍光体3を多孔質体5に含浸させると、粒の大きい蛍光体3同士の間に粒の小さい蛍光体3が入り込むことで、図7に示す様に形成される隙間3bは小さくなる。従って粒度分布の広がりが大きい方が間隔3bが小さくなって、その分、蛍光体3全体における接触面積が増加して熱伝導効率が高まる。
【0041】
以上のことから明らかなように、FEL1では、蛍光体3の粒度分布を広くすると熱伝導効率が向上する。又、一般に蛍光体3では、粒の流動性や充填性が良い方が多孔質体5の内部により容易に含浸させる事が出来る。
【0042】
以上、本実施の形態のFEL1において、蛍光体3と多孔質体5との間の熱伝導効率を向上させて蛍光体3の寿命をさらに伸ばすことが可能となる蛍光体3を、その物性に着目して選定することについて説明した。
【0043】
本実施の形態のFEL1では、蛍光体3の物性を最適に選定することで、蛍光体3と多孔質体5との間の熱伝導効率を向上させることができる他、次のことによって熱伝導効率の向上を図ることができる。すなわち、FEL1においては、蛍光体3を多孔質体5に物理的に押し込む(圧入させる)ことで、蛍光体3と多孔質体5との間の熱伝導効率を向上させることができる。
【0044】
本実施の形態では、蛍光体3は、上述したように、ビニール樹脂製薄膜体からなるものを用いて多孔質体5に押し込まれる。ここで多孔質体5より硬度の高い前記ものを用いて蛍光体5を多孔質体5に押し込むと、前記ものによって多孔質体5の表面が傷付いてしまう。そのため、前記ものは、多孔質体5より硬度の低いものを用いるのが好ましい。
【0045】
具体的には、蛍光体3を溶かした溶媒中に多孔質体5を浸漬した状態で、多孔質体5より硬度の低い前記ものを用いて多孔質体5を比較的強い力で擦ることで、溶媒中の蛍光体5を多孔質体5に押し込む。
【0046】
最も効果的に、蛍光体5を多孔質体5に押し込む方法としては、次の方法がある。すなわち、蛍光体3を溶かした溶媒中に多孔質体5を浸漬した状態で、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等のビニール樹脂製薄層体からなるもので多孔質体5の表面を繰り返し擦ることで、多孔質体5の内部に蛍光体3を含浸させ、最後に、多孔質体5に接触している前記ものの凹凸を均してから、当該ものを多孔質体5から剥離させる。これにより、蛍光体3が多孔質体5の空孔に強制的に含浸されると同時に、図8に示す様に、多孔質体5の表面で発生する蛍光体3の橋架けを減少させることができる。更に蛍光体3の表面の凹凸を均すことできる。これによって、本実施の形態のFEL1は、蛍光体3と多孔質体5との間の熱伝導効率をさらに向上させることができるうえに、従来のFEL100よりも明るい照明を実現することができる。
(実施の形態2)
本発明において製作するのは機械や構造物と異なり照明装置である。従って多孔質体5としての強度は数mの高さから落下しても破壊しない程度で充分である。つまり本発明の照明装置では、多孔質体を焼結体から構成することなく、アルミニュームを金型へ入れて加圧してなる圧粉体から多孔質体を構成してもよく、このようにして作製した圧粉体からなる多孔質体5’であっても、照明装置としての強度を維持することができる。具体的には、1ton/80mm2のプレス加圧によって作製されたアルミニュームの圧粉体からなる多孔質体5’であっても、数mの高さから落下させても破壊しない程度の強度を有する。
【0047】
更に、圧粉体からなる多孔質体5’では、多孔質体5’の材料(アルミニューム)にデキストリン等の空孔を形成するための材料を混合させる必要がない。
【0048】
アルミニューム単体の圧粉体からなる多孔質体5’では、その粒度分布の広がりは狭い方が良い。広がりが大きい時は、大きい粒と大きい粒との間に小さな粒が入り込む。この小さな粒によってできた隙間に、更に小さな粒が入り込み、その粒問はもっと小さな粒が入る。これが繰り返されると粒間の詰まった密度の高いものになってしまう。この事を考慮して、本実施の形態では、粒度分布の広がりの少ないアルミニューム粒体の圧粉体からなる多孔質体5’としている。
【0049】
本実施の形態では、デキストリンといった空孔形成材料を添加させることなく、さらにに、圧粉体を焼結させることなく加庄のみによって、多孔質体5’を製作するため、製造コストが非常に安価になる。
【0050】
上述した実施の形態1で多孔質体5は焼結体から構成され、実施の形態2で多孔質体5’は圧粉体から構成されていたが、この他本発明では、多孔質体5を焼結体と圧粉体との混合物から構成することも可能である。さらに、圧粉体よりも少し強度を持たせるために、圧粉体を焼結処理するものの焼結温度での保持時間を短くすることによって表面が焼結体で内部は圧粉体のままという構成を多孔質体5とすることも可能である。
(実施の形態3)
図1に示す本発明の実施の形態1のFEL1では、エミッタ4を2つ設けているため、発光する所は2か所になる。発光する所を増やして発光効率を上げるためには、エミッタ4を3ヶ所、5ヶ所と増やしていけばよい。しかしながら、エミッタ4の数が増加すればするほど、発光する所で発光した光がエミッタ4に遮られてFEL1から外部に照射される光量が減少する。このように、発光量と光遮断量とは相反する。
【0051】
この問題を解決したのが、図9(a)〜(d)に示す本実施の形態のFEL10である。FEL10では、多孔質体5の形状は次のように設定される。すなわち、図9(d)に示す様に、任意の第1の平面α上の点Aを通りかつ第1の平面αと直交する軸心Bを有する半径a、軸長bの第1の円柱体200を設定する。次に、第1の平面αにおいて点Aから距離cだけ離間した点Cを通りかつ軸心Bと平行な軸心Dを有する半径d(d=a−c)の第2の円柱体201を設定する。さらに、第1の平面αにおいて線分A−Cと直交する線分E−E’を含みかつ第1の平面αと直交する第2の平面βを設定する。
【0052】
以上のようにして、第1、第2の円柱体200、201、第1、第2の平面α、βを設定したうえで、さらに、次の設定を行う。すなわち、第1の円柱体200を、第2の円柱体201を重複して含む内側部材200aと、第2の円柱体201を含まない外側部材200bとに分けたうえで、第1の円柱体200から外側部材200bを残して内側部材200aを取り除く。さらに残した外側部材200bを第2の平面βを境界にして第1の部材200b1と第2の部材200b2とに分け、外側部材200bから軸心B側にある第1の部材200b1を残して第2の部材200b2を取り除く。
【0053】
以上の処理により残した第1の部材200b1を外形形状とする多孔質体5を作製し、さらに、作製した多孔質体5の表面に蛍光体3を含浸させ、さらに多孔質体5の最厚肉部5aに、円筒体からなる放熱体8の一端を埋設する。放熱体8は、軸心B、Dと平行に配置する。このとき、放熱体8の他端は多孔質体5から突出させて露出させる。さらには、ピアノ線にダイヤモンドをコーティングした線状のエミッタ4を準備し、このエミッタ4を軸心Dに沿って配置する。
【0054】
このようにして形成した本実施の形態のFEL10では、蛍光体3で発光した光を遮るのは、ピアノ線にダイヤモンドや、カーボンナノチューブなどのナノカーボンをコーチィングした1本の線状のエミッタ4だけとなり、エミッタ4に対向する多孔質体5の内曲面全域に設けられた蛍光体3で発生した光を効率よく外部に取り出すことが出来る。
(実施の形態4)
発明の実施の形態1〜3を改良し、電球の様に多方向に光を照射出来る様にしたものが図10(a)〜(d)に示すFEL20である。
【0055】
FEL20は、円柱体形状の多孔質体5を備えている。多孔質体5の周面上の4つの領域それぞれには曲面形状を有する切欠21が設けられている。切欠21は互いに対向しかつ直交する多孔質体5の2つの直径方向の両端それぞれに設けられている。切欠21は多孔質体5における円柱体軸心に沿って延出する形状を有する。さらに、多孔質体5の一方の端部5aには、内端がアーチ状となった切欠22と、内端が平坦面状となった切欠23とが設けられている。切欠21によって切り取られた多孔質体5の領域の内面には蛍光体3が含浸によって配設されている。さらに、切欠21それぞれにはピアノ線にダイヤモンドがコーティングされたエミッタ4が設けられている。エミッタ4は次の位置に配置されている。すなわち、エミッタ4は、切欠21によって切り取られた多孔質体5の切除領域における円柱体形状の周面位置においてその周方向中央位置に設けられており、さらには多孔質体5の軸心と平行に配置されている。つまり、エミッタ4は切欠21を含む円24の中心位置24aに設けられている。
【0056】
多孔質体5の他方の端部5bには、円筒形状の放熱体8が設けられている。放熱体8は多孔質体5の軸心上に軸心に沿って配設されており、その一端を多孔質体5に埋設し、その他端を多孔質体5の一方の端部から突出して外部に露出している。
【0057】
これによって切欠21が設けられた多孔質体5の周面それぞれは、対応するエミッタ4によって発光し、電球の様に多方向に光を照射することができる。
【0058】
以上の実施の形態によって本発明を説明したが、本発明では、多孔質体5は金属の圧粉体や焼結体からなるものに限らない。多孔質体5は、次に示す第1〜第3の方法により作製したものであってもよい。第1の方法では、珪藻土や軽石などの多孔質体の物質を、図1図3図4図9図10に示す形状に加工成形したうえで、その成形体に蛍光体を塗布することで成形体の孔に蛍光体を含浸させる。これにより多孔質体5を作製する。
【0059】
第2の方法では次のようにして多孔質体5を作製する。すなわち、固形物質を粉状にしてなる粉体と、固形物質を粒状にしてなる粒体と、前記粉体と前記粒体とを混ぜ合わしたものとのうちのいずれか一つに、ベントナイトと、デキストリンもしくは他の接着剤とを混合し、このようにして作製した混合物をペレタイジングして適宜の大きさの多孔質体ペレットに成形し、さらに成形後の多孔質体ペレットを図1図3図4図9図10に示す形状に加工成形し、その成形体に蛍光体を塗布することで成形体の孔に蛍光体を含浸させる。これにより多孔質体5を作製する。
【0060】
第3の方法は第2の方法の変形例である。第2の方法では、上述した混合物から中間成形体である多孔質体ペレットを作製したうえでその多孔質体ペレットを加工成形することで最終成形体である成形体を作製していた。これに対して第3の方法では、鋳物の生砂による造型技術を応用して、多孔質体ペレット(中間成形体)の作製を行うことなく最終成形体である成形体を作製する。すなわち、第2の方法で作製する混合物と同様の混合物に、ベントナイト8.5〜9.0%/重量比、デキストリン0.2〜0.3%/重量比、水3.5〜4.0%/重量比をさらに混合して混練することで混合物に粘性を付与する。粘性を付与した混合物を、図1図3図4図9図10に示す金型や木型等に入れて突き固めて所望の形状としさらに乾燥させて固めることで成形体とする。なお、作製した成形体に蛍光体を塗布することで成形体の孔に蛍光体を含浸させて多孔質体5とする点は第2の方法と同じである。この鋳物の造型技術については、上述した生砂の他にも、水ガラスやフラン樹脂等を使用した様々な造型プロセス(砂を固める方法)があるので、どのプロセスを使用するかについては必要に応じて適宜選択すればよい。
【0061】
本発明は、前述した実施の形態のものに限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意に且つ適宜に変更・選択して採用することができるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 FEL
2 封止体
2a 光照射面
2b 内面
3 蛍光体
3a 空洞(橋掛け)
3b 隙間
4 エミッタ
5 多孔質体
5" 多孔質体
5a 一端
5b 他端
6 発光体
7 電源
8 放熱体
10 FEL
20 FEL
21 切欠
22 切欠
23 切欠
24 円
24a 円の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11