特許第6191009号(P6191009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191009
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20170828BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H02P6/16
   H02P27/06
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-219622(P2013-219622)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-73422(P2015-73422A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】516265056
【氏名又は名称】コロンバス精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本宮 輝明
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−253689(JP,A)
【文献】 特開2010−213518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/16
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相のコイルと複数の磁石を有し、ホストコントローラに制御される同期モータの制御装置であって、
ホストコントローラに接続され、ホストコントローラから、所要の回転角を磁石の極対数で割った角度である指令電気角θを示す電気角情報を、所定時間毎に取得する電気角情報取得手段と、
ホストコントローラに接続され、ホストコントローラから、所要のモータ出力トルクを発生させるための電圧の指令振幅qを示す振幅情報を、所定時間毎に取得する振幅情報取得手段と、
電気角情報取得手段が取得した電気角情報が示す指令電気角θと振幅情報取得手段が取得した振幅情報が示す指令振幅qを入力とし、これを120°位相のずれた三相の正弦波出力電圧に変換する2相/3相変換器と、
同期モータの各相に供給される瞬時電流値を検出して、当該電流値を示す電流情報を出力する二つ又は三つの電流検出器と、
電流検出器により出力された電流情報が示す電流値に基づき、同期モータの回転速度に応じて各相に発生する逆起電圧により影響される演算電気角θrを演算する電気角演算手段と、
電気角情報取得手段が取得した電気角情報が示す指令電気角θと電気角演算手段が演算した演算電気角θrとの差θdを演算する電気角差演算手段と、
電気角差演算手段が演算した差θdを示す差情報を、同期モータの回転速度又は回転位置を制御するために、装置外部のホストコントローラに送る送信手段と、を備え、
ホストコントローラとは別に設けられた制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置と、ホストコントローラと、を備える制御システムであって、
ホストコントローラは、所定時間毎に制御装置から受信した連続した差情報が示す各差θdを積算して積算差θcとし、これをホストコントローラが目標値とする目標電気角θoに加算することで同期モータへの指令電気角θを調整し、目標電気角θoと制御装置の電気角演算手段が演算した演算電気角θrとが一致する様に収束させる制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関し、詳しくは、3相のコイルと複数の磁石を有し、ホストコントローラに制御される同期モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、従来のモータ制御装置いわゆるモータドライバは、モータが高速で回転しても処理に遅れが生じないように、モータに関する情報を全てモータ制御装置内で処理するものであった。
【0003】
例えば、特許文献1には、コイル印加電圧の位相と電流の位相の差を所望の位相差にすることで最大効率・トルクを得ることができるモータ制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−54297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のモータ制御装置は、コイル印加電圧の位相情報、電流の位相情報及び位相差の情報が全てモータ制御装置内で処理されるものであり、外部の装置がこれらの処理の補助を行う手段が無いためモータ制御装置内のマイクロコンピュータには高速の処理能力が求められている。
【0006】
本発明は、モータ制御装置に求められる処理能力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 3相のコイルと複数の磁石を有し、ホストコントローラに制御される同期モータのモータ制御装置であって、
ホストコントローラに接続され、ホストコントローラから、所要の回転角を磁石の極対数で割った角度である指令電気角θを示す電気角情報を、所定時間毎に取得する電気角情報取得手段と、
ホストコントローラに接続され、ホストコントローラから、所要のモータ出力トルクを発生させるための電圧の指令振幅qを示す振幅情報を、所定時間毎に取得する振幅情報取得手段と、
電気角情報取得手段が取得した電気角情報が示す指令電気角θと振幅情報取得手段が取得した振幅情報が示す指令振幅qを入力とし、これを120°位相のずれた三相の正弦波出力電圧に変換する2相/3相変換器と、
同期モータの各相に供給される瞬時電流値を検出して、当該電流値を示す電流情報を出力する二つ又は三つの電流検出器と、
電流検出器により出力された電流情報が示す電流値に基づき、同期モータの回転速度に応じて各相に発生する逆起電圧により影響される演算電気角θrを演算する電気角演算手段と、
電気角情報取得手段が取得した電気角情報が示す指令電気角θと電気角演算手段が演算した演算電気角θrとの差θdを演算する電気角差演算手段と、
電気角差演算手段が演算した差θdを示す差情報を、同期モータの回転速度又は、回転位置を制御するために、装置外部のホストコントローラに送る送信手段と、を備え、
ホストコントローラとは別に設けられたモータ制御装置。
【0008】
(1)の発明によれば、指令電気角θと演算電気角θrの処理はこれらの差θdを演算することとこれをホストコントローラに送ることだけであり、所定時間ごとに複雑な演算処理を行う必要はない
【0009】
したがって、モータ制御装置に求められる処理能力を低減できる。
【0010】
(2) (1)に記載のモータ制御装置と、ホストコントローラと、を備える制御システムであって、
ホストコントローラは、所定時間毎にモータ制御装置から受信した連続した差情報が示す各差θdを積算して積算差θcとし、これをホストコントローラが目標値とする目標電気角θoに加算することで同期モータへの指令電気角θを調整し、目標電気角θoとモータ制御装置の電気角演算手段が演算した演算電気角θrとが一致する様に収束させる制御システム。
【0011】
(2)の発明によれば、ホストコントローラが行う指令電気角θの調整は加算の処理だけであり、その演算周期も目標電気角θoの周期程度の遅いものでも構わない
【0012】
したがって、ホストコントローラが行うモータ制御装置を補助する為の処理の負担は小さいものにできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モータ制御装置に求められる処理能力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のブロック図である。
図2】2相/3相変換器4において、指令電気角θと指令振幅qから三相の正弦波出力電圧の値が演算されることを示している。
図3】電気角演算手段5において、検出された電流値から演算電気角θrが演算されることを示している。
図4】モータ制御装置1とホストコントローラ9によって演算電気角θrが目標電気角θoに収束していく様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態のブロック図である。
図1において、同期モータ2はホストコントローラ9の指令により、モータ制御装置1の内部のPWMスイッチング回路12によって駆動され、このPWMスイッチング回路12にはAC電源17を整流器18によって整流した直流電源が与えられる。
【0016】
モータ制御装置1は、ハード回路である電流検出器3、振幅情報取得手段13、電気角情報取得手段14及び送信手段15と、CPU(Central Processing Unit)と、を備える。
CPUは、演算手段としての2相/3相変換器4と電気角演算手段5と電気角差演算手段6としての機能をソフト処理で実現する。
【0017】
電流検出器3は、三つ設けられ、それぞれU、V、Wの各相に供給される瞬時電流値を検出する。
ここで、「瞬時電流値」とは、時々刻々に変化する電流の瞬間的な値であって、実効値電流の様に平均的な電流を指すものではない。
なお、電流検出器3は、二つであってもよい。この場合、電流検出器3は、U、V、W各相の内何れか二つの相の瞬時電流値を検出する。
【0018】
電気角情報取得手段14は、ホストコントローラ9に接続され、ホストコントローラ9から、所要の回転角を磁石の極対数で割った角度である指令電気角θを示す電気角情報を、所定時間(例えば、0.5ミリ秒間隔)毎に取得する。
【0019】
振幅情報取得手段13は、ホストコントローラ9に接続され、ホストコントローラ9から、所要のモータ出力トルクを発生させるための電圧の指令振幅qを示す振幅情報を、所定時間(例えば、0.5ミリ秒間隔)毎に取得する。
【0020】
2相/3相変換器4は、電気角情報取得手段14が取得した電気角情報が示す指令電気角θと振幅情報取得手段13が取得した振幅情報が示す指令振幅qを入力とし、これを120°位相のずれた三相の正弦波出力電圧に変換する。
【0021】
電流検出器3は、それぞれ、同期モータ2の各相に供給される瞬時電流値を検出して、当該電流値を示す電流情報を出力する。
【0022】
電気角演算手段5は、電流検出器3により出力された電流情報が示す電流値に基づき、同期モータ2の回転速度に応じて各相に発生する逆起電圧により影響される演算電気角θrを演算する。
【0023】
電気角差演算手段6は、電気角情報取得手段14が取得した電気角情報が示す指令電気角θと電気角演算手段5が演算した演算電気角θrとの差θdを演算する。
【0024】
演算結果である差θdを示す情報は有限のビット長のデジタルデータであるが、1ビットのON、OFFの情報でもよい。この場合、演算結果である差θdを示す情報は、0(零)又は正の値であるか、負の値であるかの二つの状態を表すことになる。
【0025】
送信手段15は、電気角差演算手段6が演算した差θdを示す差情報を、同期モータ2の回転速度又は、回転位置を制御するために、装置外部のホストコントローラ9に送る。
【0026】
ホストコントローラ9のCPUは、目標速度目標トルク設定器11と積分器7と積分係数掛算器16と加算器8としての機能をソフト処理で実現する。
【0027】
積分器7は、送信手段15から送られる差情報である差θdを積算し、積算差θcとして出力する。
【0028】
積分係数掛算器16は、積分器7から出力された積算差θcに係数Gを掛けて出力する。
【0029】
加算器8は、積分係数掛算器16から出力された積算差θcと係数Gを掛けた値θc×Gと、ホストコントローラ9が目標値とする目標電気角θoとを加算して指令電気角θとして出力し、モータ制御装置1に送る。
【0030】
目標速度目標トルク設定器11は、同期モータ2の所要の回転速度とトルクから目標電気角θoと指令振幅qを出力する。
また、
【0031】
以上、説明した各機能は、モータ制御装置1及びホストコントローラ9に内蔵されたCPUが、ROM(Read Only Memory)又はハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されるコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係るモータ制御装置1及びホストコントローラ9のCPUにおけるモータ制御処理について説明する。
【0033】
モータ制御装置1のCPUは、電気角情報取得手段14が取得した指令電気角θと振幅情報取得手段13が取得した指令振幅qを受信し、モータ制御処理を開始する。
【0034】
モータ制御装置1において2相/3相変換器4は、指令電気角θの正弦sinθと指令振幅qを掛けた q×sinθ が120°ずつ位相のずれた三相の正弦波出力電圧の値を演算し、この値に基づいてPWMスイッチング回路12がU,V,W各相の電圧としてモータに出力する。
【0035】
図2は、2相/3相変換器4において、指令電気角θと指令振幅qから三相の正弦波出力電圧の値が演算されることを示している。
【0036】
U、V、Wの各相に流れる電流もまた正弦波であり、この瞬時電流値を電流検出器3により検出する。
【0037】
図3は、電気角演算手段5において、検出された電流値から演算電気角θrが演算されることを示している。
【0038】
同期モータ2の回転速度に応じて各相に発生する逆起電圧により影響される電気角つまり、U,V,W各相の電流の位相である演算電気角θrが、電気角演算手段5により、検出された三つの瞬時電流値から、図3に示す様に算術的そして一義的に求まる。
【0039】
指令電気角θと演算電気角θrとの差θdつまり、θ−θrが電気角差演算手段6により演算される。
【0040】
差θdを示す差情報は送信手段15によりホストコントローラ9に送られ、モータ制御装置1はこれ以上の演算やデータ処理を行う必要はない。
【0041】
ホストコントローラ9において、所定時間毎にモータ制御装置1から受信した連続した差θdを、積分器7で積算した積算差θcが演算される。
【0042】
目標速度目標トルク設定器11には、モータ軸に取付けられた回転角センサ10のモータ回転角(機械角)情報が与えられ、これを磁極対数で割った角度(電気角)である目標電気角θoが演算される。
【0043】
積算差θcに、積分係数掛算器16により係数Gを掛けてから、加算器8により目標電気角θoに加算した θo+θc×G が、同期モータ2への指令電気角θとなる。
【0044】
同時に目標速度目標トルク設定器11は所要のトルクから、これに比例した指令振幅qを出力するがこれは直接モータ制御装置1に与えて構わない。
【0045】
図4は、演算電気角θrと目標電気角θoの時間軸上の変化を示している。
図4に示すように、以上のホストコントローラ9内の演算により、演算電気角θrは目標電気角θoに一致する様に収束していく。
【0046】
係数Gの大きさによって演算電気角θrの収束の速さが調整できる。つまり、係数Gが大きければ速く、小さければ遅く収束して行く。
【符号の説明】
【0047】
1 モータ制御装置、2 同期モータ、3 電流検出器、4 2相/3相変換器、5 電気角演算手段、6 電気角差演算手段、7 積分器、8 加算器、9 ホストコントローラ、10 回転角センサ、11 目標速度目標トルク設定器、12 PWMスイッチング回路、13 振幅情報取得手段、14 電気角情報取得手段、15 送信手段、16 積分係数掛算器、17 AC電源、18 整流器
図1
図2
図3
図4