特許第6191027号(P6191027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191027
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】建築養生メッシュシート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20170828BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20170828BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20170828BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20170828BHJP
   B01J 35/06 20060101ALI20170828BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   E04G21/24 AZAB
   A61L9/16 D
   A61L9/01 B
   A61L9/00 C
   B01J20/18 B
   B01J20/12 A
   B01J20/10 A
   B01J20/20 F
   B01J20/10 C
   B01J20/12 B
   B01J20/12 C
   B01J20/18 E
   B01J20/20 B
   B01J20/20 D
   B01J35/02 J
   B01J35/06 A
   B01D53/86 110
   B01D53/86 228
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-139731(P2013-139731)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-14093(P2015-14093A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】 坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−264137(JP,A)
【文献】 特開2003−025516(JP,A)
【文献】 特開2011−213756(JP,A)
【文献】 特開2009−207506(JP,A)
【文献】 特開2011−133586(JP,A)
【文献】 特開2010−229640(JP,A)
【文献】 特開2003−181998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24−21/32
A61L 9/00− 9/22
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94−53/96
B01J 20/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10〜45%のメッシュシートであって、前記表面側熱可塑性樹脂層及び前記裏面側熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、白竹炭、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質から選ばれ、少なくとも白竹炭を含む臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%含み、さらに、少なくとも前記表面側熱可塑性樹脂層に近赤外線反射性金属複合酸化物を1〜15質量%含み、前記近赤外線反射性金属複合酸化物が、1種または複数の金属複合酸化物で構成され、個々の金属複合酸化物がコバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた2〜4種の金属で構成され、かつ、前記金属複合酸化物が、鉄−クロム複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、鉄−クロム−コバルト−マンガン複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マグネシウム複合酸化物、銅−クロム−マンガン複合酸化物、銅−ビスマス複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物から選ばれた1種以上の黒色系金属複合酸化物を少なくとも含み、それによりマンセル明度(JIS Z8721)4以下に着色されていることを特徴とする建築養生メッシュシート。
【請求項2】
前記酸化・還元性物質が、電気石(トルマリン鉱石)、及び金属フタロシアニン錯体、金属フタロシアニン錯体テトラカルボン酸、(これらの錯体形成金属として、銅、鉄、コバルト、マンガンから選ばれた1種以上)から選ばれた1種以上である請求項に記載の建築養生メッシュシート。
【請求項3】
前記光触媒性物質が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上である請求項1または2に記載の建築養生メッシュシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減臭効果と遮熱効果とを有する建築養生メッシュシートに関する。詳しく述べると、ビル、マンション、店舗、住宅などの建造物の建築工事やリフォームなどにおいて、その建築現場全体を張囲して用いる合成樹脂で含浸被覆補強されたJIS−A8952の要件を満たす建築工事用シートであって、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の持続的減臭効果と、工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有する暗色系メッシュシートにおいて、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果とを備える建築養生メッシュシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、マンション、店舗、住宅などの建造物の工事現場では、近隣環境に配慮しての目隠し目的と、近隣及び周辺通行人に対する落下物対策のために多数の定型養生シートや定型養生メッシュシートを連結した張囲によって建造物全体を覆い隠し、工事現場の作業空間を外界から隔絶したものとしている。特に建築養生メッシュシートは通気性と採光性を有し、また消防法施行規則第4条(JIS L1091A法)の防炎性能と、JIS A8952及び(社)仮設工業会認定基準に規定される性能(引張強さ×伸び、引張強さ、はとめ部強度、鋼管落下による耐貫通試験)とを満足することで、建築現場の張囲い用に最も使用されている。このような建築養生メッシュシートの使用環境は、通気性と採光性の確保によって快適な作業環境を構築する。しかしその一方、建築工事現場では外壁タイルの接着工事、外壁スプレー塗装、ビニル床材やルーフィングシートの敷設接着工事などに伴う、工事特有の化学物質臭や有機溶剤臭などが蔓延し、それらが建築養生メッシュシートの通気効果によって建築現場張囲内から外部に漏れ、特に住宅街や繁華街での工事現場では異臭・不快臭として近隣での苦情問題となることが少なくない。このような臭気漏れ対策には通気性の無い建築養生シートを張囲に使うことが密閉性に効果的であるが、これでは工事現場内部空間に化学物質臭や有機溶剤臭などが滞留することで、今度は作業者に対する作業環境を悪くするというジレンマを有していた。
【0003】
このような事情に鑑み、消臭効果を有する建築養生メッシュシートが望まれているが、消臭効果持続性に優れるものはまだ存在していない。類似様のものとして例えばマルチフィラメント合成繊維糸を用いてメッシュシート基材を構成し、このメッシュシートにバインダーと炭化物微粉末との混合割合を1:2〜1:6としてコーティングを施した消臭メッシュシートの発明(特許文献1)が開示され、その用途に敷物、ロールカーテン、空気清浄機器のフィルタなどが例示されている。この消臭メッシュシートは炭化物微粉末が高含有率となって消臭効果に優れる反面、折り曲げ、屈曲、耐摩性などの物理的耐久性に乏しく、建築養生メッシュシートに使用することは実質的に困難である。また本出願人は、繊維基布の少なくとも1面上に浸食崩壊性樹脂層を設けたメッシュ、帆布、又はターポリンなどで、浸食崩壊性樹脂層に合成樹脂バインダー、光触媒粒子、無機消臭性粒子とを含み、光触媒粒子の分解作用により合成樹脂バインダーを経時的に浸食崩壊させ、これにより新しい消臭性粒子を露出させることで長期間安定的に消臭効果を得る消臭シート(特許文献2)を提案した。しかしこの提案によるメッシュシートでは建築工事現場の張囲内部特有の半遮光環境により、光触媒粒子の分解作用が不十分となり、張囲内部に滞留する化学物質臭や有機溶剤臭の消臭効果が不十分となることがあった。また本出願人は、エレベータかご内壁の装飾保護シートとして、気泡セルと臭気分子不活性化粒子とを含む熱可塑性樹脂連続発泡層を繊維織物上に形成し、気泡セル表面に臭気分子不活性化粒子を露出させた発明(特許文献3)を建築養生メッシュシートに応用してみたが、熱可塑性樹脂連続発泡層を設けることで、メッシュシートの空隙部が塞がれて、通気性、採光性、及び視認性を損ない、同時に摩耗強度も低下した。
【0004】
また一方で、建築養生メッシュシートで張囲した建設工事現場は、張囲内の様子が見え難いため、その現場の安全を管理する目的で、色相が暗色系の建築養生メッシュシートを使用し、適度なブラインド効果とコントラスト効果によるシースルー性を兼備させる使用例が増えている。しかし、このような色相が暗色系の建築養生メッシュシートではカーボンブラック顔料が黒の着色剤に使用されることで赤外線(波長領域780〜1800nm)の吸収率が高くなり、特に夏期の太陽光の直射により建築養生メッシュシート自体が過度に発熱して蓄熱し、その熱を張囲内に輻射することで張囲内温度が上昇し、その状態を長く継続することで作業者環境を過酷とする難点を有している。以上よりビル、マンション、店舗、住宅などの建造物の建築工事やリフォームなどにおいて、その建築現場全体を張囲して用いる合成樹脂で含浸被覆補強されたJIS−A8952の要件を満たす建築工事用メッシュシートにおいて、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の持続的減臭効果と、工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有する暗色系メッシュシートにおいて、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果とを備える建築養生メッシュシートが切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−60950号公報
【特許文献2】特開2010−264137号公報
【特許文献3】特開2012−126478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビル、マンション、店舗、住宅などの建造物の建築工事やリフォームなどにおいて、その建築現場全体を張囲して用いる合成樹脂で含浸被覆補強されたJIS−A8952の要件を満たす建築工事用メッシュシートにおいて、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の持続的減臭効果と、工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有する暗色系メッシュシートにおいて、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果とを備える建築養生メッシュシートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためには、粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10〜45%のメッシュシートにおいて、表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質から選ばれた1種以上の臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%含み、さらに、少なくとも表面側熱可塑性樹脂層に近赤外線反射性金属複合酸化物を1〜15質量%含み、それにより着色されているようにすることにより、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の持続的減臭効果と、工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有し、暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果とを備える建築養生メッシュシートが得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の建築養生メッシュシートは、粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10〜45%のメッシュシートであって、前記表面側熱可塑性樹脂層及び前記裏面側熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、白竹炭、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質から選ばれ、少なくとも白竹炭を含む臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%含み、さらに、少なくとも前記表面側熱可塑性樹脂層に近赤外線反射性金属複合酸化物を1〜15質量%含み、それによりマンセル明度(JIS Z8721)4以下に着色されていることが好ましい。これによって特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の持続的減臭効果と、工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有し、暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることを可能とする。
【0009】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記近赤外線反射性金属複合酸化物が、1種または複数の金属複合酸化物で構成され、個々の金属複合酸化物がコバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた2〜4種の金属で構成されていることが好ましい。これによって工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有し、暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることを可能とする。
【0010】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記金属複合酸化物が、鉄−クロム複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、鉄−クロム−コバルト−マンガン複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マグネシウム複合酸化物、銅−クロム−マンガン複合酸化物、銅−ビスマス複合酸化物、及びマンガン−ビスマス複合酸化物から選ばれた1種以上の黒色系金属複合酸化物を少なくとも含んでいることが好ましい。これによって工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有し、暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることを可能とする。
【0011】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記金属複合酸化物が、赤色系金属複合酸化物、青色系金属複合酸化物、及び黄色系金属複合酸化物とを減色混合してなる暗色系混合物であることが好ましい。これによって工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有し、暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることを可能とする。
【0012】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記無機多孔性物質が白竹炭であることが好ましい。これによって特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の減臭効果を得ることを可能とする。
【0013】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記酸化・還元性物質が、電気石(トルマリン鉱石)、及び金属フタロシアニン錯体、金属フタロシアニン錯体テトラカルボン酸、(これらの錯体形成金属として、銅、鉄、コバルト、マンガンから選ばれた1種以上)から選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の減臭効果を得ることを可能とする。
【0014】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記光触媒性物質が、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒から選ばれた1種以上であることが好ましい。臭気分子不活性化粒子が光触媒性物質を含むことにより、特に無機多孔性物質や酸化・還元性物質などと共に光触媒性物質を用いることで、建築養生メッシュシートが太陽光の照射を受け続ける限り、光触媒性物質を活性化し、それによって臭気分子を吸着した無機多孔性物質や、臭気分子が配位した酸化・還元性物質に常時作用する。この光触媒性物質の作用によって物理吸着や化学配位により捕捉した臭気分子を分解したり、分解無臭化することで、無機多孔性物質や酸化・還元性物質を吸着や配位前の初期状態にリセットし、新たな臭気分子を捕捉できるようになる。従って本発明の建築養生メッシュシートが太陽光を浴びている間は、「臭気分子の吸着・配位」と「臭気分子の分解・分解無臭化」とが連続的に交互に絶え間なく進行する。この減臭サイクルを絶え間なく繰り返すことで、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭を長期持続的に減臭し続けることができるようになる。
【0015】
本発明の建築養生メッシュシートは、少なくとも前記裏面側熱可塑性樹脂層が、前記無機多孔性物質、前記酸化・還元性物質、及び前記光触媒性物質による3種の臭気分子不活性化粒子を含むことが好ましい。臭気分子不活性化粒子が光触媒性物質を含むことにより、建築養生メッシュシートが太陽光の直射を受けることで、光触媒性物質が常時活性化し、それによって臭気分子を吸着した無機多孔性物質や、臭気分子が配位した酸化・還元性物質をより活性化させ、臭気分子の分解・不活性化を補助して吸着や配位前の初期状態にリセットし、これを繰り返すことで、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭を長期持続的に減臭し続けることができるようになる。
【0016】
本発明の建築養生メッシュシートは、前記表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層の両方が前記臭気分子不活性化粒子を含み、かつ、表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂層の両方が前記近赤外線反射性金属複合酸化物を含んでいることが好ましい。これによって特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭の持続的減臭効果と、工事現場張囲内における適度なブラインド効果と視認効果とを有し、暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることを可能とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、軽量かつ強靭で、通気性と採光性を有し、特に化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも工事現場張囲内における適度なブラインド効果と、工事関係者などの行動や安全状況を外から把握可能な視認効果とを備えるので、ビル、マンション、店舗、住宅などの建築用リフォーム用の養生メッシュシートに使用して、特に(スプレー)塗装工事や接着剤を使用するタイル貼り、ビニルタイル床材やルーフィングシートの敷設接着工事に伴う、化学物質臭や有機溶剤臭の近隣住民への対策、及び工事作業者への労働環境を改善し、特に暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることができるので工事現場張囲に用いる建築養生メッシュシートとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の建築養生メッシュシートの正面と断面の一部を示す図
図2】本発明の建築養生メッシュシートの断面の一部を示す図
図3】本発明の建築養生メッシュシートの断面の一部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の建築養生メッシュシートは、粗目織物を基布として、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とで構成された、空隙率10〜45%のメッシュシートであって、表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質から選ばれた1種以上の臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%含み、さらに、少なくとも表面側熱可塑性樹脂層に近赤外線反射性金属複合酸化物を1〜15質量%含み、それにより着色されている。この着色はマンセル明度4以下の色相が好ましく、具体的に、黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などが挙げられる。これらの色相は近赤外線反射性金属複合酸化物の単独使用または複数の併用による熱可塑性樹脂の着色により熱可塑性樹脂層を発色させたものである。特に表面側熱可塑性樹脂層に近赤外線反射性金属複合酸化物の含有を必須とする理由は、本発明の建築養生メッシュシートを張囲したときに、表面側熱可塑性樹脂層が太陽光の直射熱を反射させ、張囲内部の温度上昇を緩和させるためである。また、特に裏面側熱可塑性樹脂層をマンセル明度7〜9.5、及びマンセル彩度0〜3の色相とすることで、張囲内部の作業環境を明るいものとして作業の安全性を確保すると同時に、その色相の膨張感による目の錯覚により、メッシュシートの空隙部越に見える近隣住居の様子を見え難い死角とすることで近隣プライバシー対策とすることを可能とする。これらの色相は具体的に、白色、パステルカラー(白色に青色、赤色、緑色、黄色、黒などの原色を単独または複数の併用で差し色して得た中間色)、淡い灰色、淡い青、淡い緑、淡い赤、淡い黄色、淡い紫、淡いピンクなどが挙げられる。これらの色相は無機顔料(特に酸化チタン)をベースに、公知の有機顔料の単独使用または複数の併用による熱可塑性樹脂の着色により熱可塑性樹脂層を発色させたものである。
【0020】
本発明の建築養生メッシュシートにおいて、基布である粗目織物に含浸し、かつ、その表裏両面を被覆する表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体樹脂、シリコン樹脂、シリコン系共重合体樹脂などが使用でき、これらは単独もしくは、2種以上の併用としてもよく、また表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とが同一の熱可塑性樹脂で構成されていてもよく、また表面側と裏面側の層とが互いに異なる熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。このとき表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とは、粗目織物表面のみに形成されるものではなく、メッシュシートの厚み方向、及び厚み内部に及んで含浸形成された部分を包含する。但し本発明の建築養生メッシュシートにおいて、表面側熱可塑性樹脂層と裏面側熱可塑性樹脂層とが同一の熱可塑性樹脂で構成される場合、表面側熱可塑性樹脂層と裏面側熱可塑性樹脂層との境界部が形成されない場合には単純に表面側と裏面側の面とで区別する。
【0021】
表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂層の厚さは0.05〜1.0mm、特に0.1〜0.35mmが好ましい。特に本発明において好ましい熱可塑性樹脂は、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂である。表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂層は有機顔料や無機顔料による任意の着色が可能であり、さらに公知の印刷技術の応用により、メッシュシートの表面側または裏面側、または両面に写真画像・イラストレーション・文字などをプリントして、装飾効果や広告効果を附帯させることもできる。さらに熱可塑性樹脂には、必要に応じて可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、接着剤、防炎剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、防曇剤及び消臭剤など公知の添加剤を含むことができる。
【0022】
本発明の建築養生メッシュシートにおいて、上記の表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層の少なくとも一方が、無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質から選ばれた1種以上の臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%、特に5〜10質量%含むことが好ましい。さらに特に少なくとも裏面側熱可塑性樹脂層が、無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質の3種からなる臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%含むこと、取り分け表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂層ともに、無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質の3種からなる臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%含むことが好ましい。臭気分子不活性化粒子の含有量が表面側熱可塑性樹脂層及び/または裏面側熱可塑性樹脂層に対して1質量未満だと十分な減臭効果を得ることができない場合があり、また臭気分子不活性化粒子の含有量が20質量%を越えると、表面側熱可塑性樹脂層及び/または裏面側熱可塑性樹脂層が脆くなり、特に折り曲げや屈曲で亀裂を生じたり、摩耗劣化を早めたりするなどの弊害を生じたりする。臭気分子不活性化粒子が光触媒性物質を含むことによって、特に無機多孔性物質や酸化・還元性物質などと共に光触媒性物質を用いることにより、建築養生メッシュシートが太陽光の直射を受けることで、光触媒性物質が常時活性化し、それによって臭気分子を吸着した無機多孔性物質や、臭気分子が配位した酸化・還元性物質をより活性化させ、臭気分子の分解・不活性化を補助して吸着や配位前の初期状態にリセットし、これを繰り返すことで、特に塗料や接着剤などの建築補助資材、及びフローリング材やビニル壁紙などの内装材に起因する化学物質臭を長期持続的に減臭し続けることができるようになる。
【0023】
臭気分子不活性化粒子のうち物理的吸着性を有する無機多孔性物質としては、活性炭、添着活性炭、白竹炭、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、セピオライト、シラス、シリカ、シリカ−マグネシア、モレキュラーシーブなどを用いることができるが、特に白竹炭、ゼオライト、シラスなどが高い白度で好ましい。また化学反応性を有する無機酸化・還元性物質としては、電気石(トルマリン鉱石)、及び金属フタロシアニン錯体、金属フタロシアニン錯体テトラカルボン酸、(これらの錯体形成金属として、銅、鉄、コバルト、マンガンなど)などが使用できる。また無機分解反応触媒物質としては、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒などの可視光応答型光触媒粒子を用いることができる。特に可視光応答型光触媒粒子を用いる場合には、屋内の蛍光灯によって光触媒活性が励起されて臭気ガスに対する分解効果を発現する。
【0024】
表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂被覆層(粗目織物への含浸を含む)に含有する臭気分子不活性化粒子の含有量は、各々の熱可塑性樹脂層の全質量に対して1〜20質量%が好ましい。本発明において、上記臭気分子不活性化粒子の補助成分として植物性ポリフェノール類、植物性テルペノイドを含んでいてもよい。植物性ポリフェノールは、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニンなど、及びその誘導体、フェノール性酸及びその誘導体などの単一もしくは混合物である。また植物性テルペノイドは、ヒノキチオール、テルピネオール、リナロールなどのテルペンアルコール、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、p−メンタン、α−テルピネン、テルピノーレン、カンフェン、エレメン、ミルセン、カルボンなどのテルペン系環式炭化水素化合物を、熱可塑性樹脂層(粗目織物への含浸を含む)の全質量に対して0.1〜2.5質量%の範囲で併用してもよい。
【0025】
本発明の建築養生メッシュシートにおいて、使用時の外側面となる表面側熱可塑性樹脂層には近赤外線反射性金属複合酸化物を1〜15質量%の範囲、好ましくは1〜7.5質量%の範囲で含み、それにより着色されていることが好ましく、必要に応じて裏面側熱可塑性樹脂層にも近赤外線反射性金属複合酸化物を1〜15質量%の範囲で含むことができる。これら近赤外線反射性金属複合酸化物の含有量は表面側熱可塑性樹脂層の質量、または裏面側熱可塑性樹脂層の質量に対する含有率である。近赤外線反射性金属複合酸化物の含有率が1質量%未満だと十分な遮熱効果を得ることができないことがあり、また近赤外線反射性金属複合酸化物の含有率が15質量%を越えると、表面側熱可塑性樹脂層及び/または裏面側熱可塑性樹脂層が脆くなり、特に折り曲げや屈曲で亀裂を生じたり、摩耗劣化を早めたりするなどの弊害を生じたりする。遮熱性は波長300〜2500nmにおける日射反射率(JIS R3106)60%以上のものを遮熱効果とする。
【0026】
近赤外線反射性金属複合酸化物は、赤外線を反射して赤外線吸収によるメッシュシートの表面温度上昇を効果的に抑制する成分であり、1種または複数の金属複合酸化物で構成され、個々の金属複合酸化物がコバルト、クロム、マンガン、ビスマス、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅、錫から選ばれた2〜4種の金属で構成されているものが好ましい。特にこれらの組み合わせにおいて好ましい金属複合酸化物として、鉄−クロム複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、鉄−クロム−コバルト−マンガン複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マグネシウム複合酸化物、銅−クロム−マンガン複合酸化物、銅−ビスマス複合酸化物、及びマンガン−ビスマス複合酸化物から選ばれた1種以上の黒色系金属複合酸化物が挙げられ、これらの黒色系金属複合酸化物を含むものが好ましい。黒色系金属複合酸化物は400〜750nmの波長域(可視光)における平均反射率10%以下で、750〜2500nmの波長域(近赤外線)における平均反射率が20%以上のものが好ましい。
【0027】
また、近赤外線反射性金属複合酸化物は、金属複合酸化物として、1)赤色系金属複合酸化物、2)青色系金属複合酸化物、及び3)黄色系金属複合酸化物とを減色混合してなる暗色系混合物であってもよい。1)赤色系金属複合酸化物としては、亜鉛−鉄−クロム複合酸化物、亜鉛−鉄−クロム−アルミニウム複合酸化物が挙げられる。2)青色系金属複合酸化物としては、コバルト−アルミニウム複合酸化物、コバルト−アルミニウム−クロム複合酸化物、コバルト−アルミニウム−マグネシウム複合酸化物、コバルト−アルミニウム−亜鉛複合酸化物、コバルト−錫複合酸化物、コバルト−ニッケル−亜鉛複合酸化物、コバルト−ニッケル−チタン−亜鉛複合酸化物、コバルト−亜鉛−マグネシウム複合酸化物、コバルト−亜鉛−クロム−チタン複合酸化物、コバルト−亜鉛−ニッケル−チタン複合酸化物などが挙げられる。3)黄色系金属複合酸化物としては、ビスマス−バナジウム−アルミニウム複合酸化物、ニッケル−バリウム−チタン複合酸化物、ニッケル−チタン複合酸化物、ニッケル−アンチモン−チタン複合酸化物、クロム−アンチモン−チタン複合酸化物、鉛−アンチモン−チタン複合酸化物などが挙げられる。これら赤色系金属複合酸化物、青色系金属複合酸化物、及び黄色系金属複合酸化物とを減色混合してなる暗色系混合物は具体的に、黒色、黒灰色、黒茶色、黒緑色、黒青色、黒紫色、濃紺色、濃緑色、臙脂色、青色、緑色、赤色、灰色などのマンセル明度4以下の色相が好ましい。この暗色系混合物には段落〔0026〕に記載した黒色系金属複合酸化物をさらに含んでいてもよい。
【0028】
本発明において、粗目織物に表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂層(表面側、裏面側各々粗目織物への含浸を含む略円弧状断)を設けたメッシュシートは、基布とする粗目織物に対して液状の熱可塑性樹脂によるディッピングやコーティングによる含浸被覆によって形成される。液状の熱可塑性樹脂としては、エマルジョン樹脂、デイスパージョン樹脂などの水分散形態、熱可塑性樹脂を有機溶媒中に可溶化した塗料形態、及び塩化ビニル樹脂ペーストゾルなどの使用が好ましい。本発明において、粗目織物の表裏に熱可塑性樹脂層(表面側、裏面側各々粗目織物への含浸を含む略円弧状断面)を設けたメッシュシートは空隙率が10〜45%であり、1インチ四方当たりの全表面積(表裏の面積と全空隙部側面との総和)が1000〜1400mmを有し、特に空隙率15〜35%、1インチ四方当たりの全表面積(表裏の面積と全空隙部側面との総和)1100〜1300mmを有することが好ましい。空隙率が10%未満(1インチ四方当たりの全表面積1400mmを越える)だと得られるメッシュシートの通気性が不十分となり、そのフィルター効果による減臭効果や臭気拡散防止効果の発現が不十分となることがある。また空隙率が10%未満(1インチ四方当たりの全表面積1400mmを越える)だと建築現場を張囲したときに日射を大幅に遮ることで作業空間内を昼間でも薄暗いものとし、同時に大きく視界を遮ることで工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握することを困難とする。また空隙率が45%を越える(1インチ四方当たりの全表面積1000mm未満)と得られるメッシュシートの通気性は十分となる反面、メッシュ実体部分の占有率が減少することで表面積が大幅に減少し、フィルター効果が十分に発揮されないため減臭効果や臭気拡散防止効果の発現が不十分となることがある。また空隙率が45%を越える(1インチ四方当たりの全表面積1000mm未満)とメッシュシートの目合いが大きくなり過ぎて、スプレー塗装時の飛散防止効果を損ったり、建設工事用器具や部材をぶつけた時にメッシュシートが破れ易くなるなどの弊害をもたらすことがある。このように特に略円弧状断面を有する表面側及び裏面側の熱可塑性樹脂層を設けたメッシュシートでは、地上から工事現場張囲内上層部を鋭角的に見上げるような目視にも工事関係者などの行動などを適度に把握することを可能とする。熱可塑性樹脂層の断面形状が平坦だと工事関係者自体の認識すら困難とすることがある。
【0029】
本発明において、粗目織物を構成する繊維は、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維などの合成繊維、木綿、麻、ケナフなどの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維の何れもが使用でき、これらは単独で、或いは2種以上の混用で用いることができるが、特にポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維が好ましい。
【0030】
繊維糸条の形態は、マルチフィラメント、短繊維紡績、モノフィラメント、スプリットヤーン、テープヤーンなどいずれであってもよいが、特にマルチフィラメントが好ましい。マルチフィラメント糸条の繊度は、125(139dtex)〜1000(1111dtex)デニールの範囲が好ましい。養生メッシュ(1類)には750(833dtex)〜1000(1111dtex)デニールの糸条を用いた粗目織物、またはこれら糸条による粗目3本模紗織物が適している。また養生メッシュ(2類)には250(278dtex)〜500(555dtex)デニールの糸条を用いた平織粗目織物が適している。特に本発明においてマルチフィラメント糸条は、その断面形状が円形または楕円形の略円弧状の糸条が好ましく、このようなマルチフィラメント糸条の表裏に熱可塑性樹脂層を設けたメッシュシートによれば、表面側熱可塑性樹脂層と、裏面側熱可塑性樹脂層の各々の断面形状が、粗目織物への含浸を含む略円弧状となる。このような略円弧状は円形、楕円形、緩やかな円弧状、歪んだ円形、歪んだ楕円形などである。
【0031】
本発明の基布に使用する粗目織物は、マルチフィラメント経糸束と緯糸束とが交絡した織物であり、その空隙率は10〜45%、特に15〜35%であることが、適度な通気フィルター効果を発揮してマンションなどの建設工事に伴う、化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも工事現場張囲内における工事関係者などの行動や安全状況を外から把握するための視認効果とのバランスに優れている。このような空隙率の粗目織物は、例えば250(278dtex)デニールの糸条束を経糸束群及び緯糸束群として、1インチ間に25〜30本打ち込んだ空隙率25〜30%の平織物(養生メッシュ2類クラス)、例えば500(555dtex)デニールの糸条束を経糸束群及び緯糸束群として、1インチ間に18〜22本打ち込んだ空隙率35〜45%の平織物(養生メッシュ2類クラス)、例えば2000(2222dtex)デニールの糸条束を経糸束群及び緯糸束群として、1インチ間に11〜15本打ち込んだ空隙率25〜30%の平織物(養生メッシュ1類クラス)、例えば750(833dtex)デニール糸条の3本束を経糸束群及び緯糸束群として、1インチ間に10〜13本打ち込んだ空隙率10〜15%の模紗織物(養生メッシュ1類クラス)例えば1000(1111dtex)デニール糸条の3本束を経糸束群及び緯糸束群として、1インチ間に6〜8本打ち込んだ空隙率25〜30%の模紗織物(養生メッシュ1類クラス)などである。これらのマルチフィラメント糸条の撚数は、無撚を含み、0〜250T/mの範囲が好ましい。このような空隙率10〜45%の粗目織物を基布として、その表裏面に臭気分子不活性化粒子(少なくとも表面側熱可塑性樹脂層には近赤外線反射性金属複合酸化物も含む)を含む熱可塑性樹脂層を設けることで、熱可塑性樹脂被覆層の表面積を倍増し、それによってメッシュシートを通気する気流(臭気分子)と接触する臭気分子不活性化粒子数を増大させることで減臭効果、及び臭気拡散防止効果を効果的に発揮することができる。
【0032】
空隙率は粗目織物の任意の単位面積領域に占める空隙部の総和面積率である。空隙部の総和面積は、単位面積領域に存在する糸条実体部の総和面積を求め、単位面積から差し引いた値で求められる。具体的には1インチ四方のメッシュシートのデジタル画像をコンピューターに取り込み、糸条実体部と空隙部分との面積を画像計算する方法が挙げられる。また糸条の幅と、糸条の配置密度の設計から理論値として計算した値であってもよい。粗目織物の空隙率が10%未満(1インチ四方当たりの全表面積1400mmを越える)だと得られるメッシュシートの通気性が不十分となり、そのフィルター効果による減臭効果や臭気拡散防止効果の発現が不十分となることがある。また空隙率が10%未満(1インチ四方当たりの全表面積1400mmを越える)だと日射を大幅に遮ることで張囲空間(工事現場)内を昼間でも薄暗いものとし、同時に大きく視界を遮ることで張囲空間(工事現場)内の様子が外部から把握できないものとなる。空隙率が45%を越える(1インチ四方当たりの全表面積1000mm未満)と得られるメッシュシートの通気性は十分となる反面、メッシュ実体部分の占有率が減少することで表面積が大幅に減少し、フィルター効果が十分に発揮されないため減臭効果や臭気拡散防止効果の発現が不十分となることがある。また空隙率が45%を越える(1インチ四方当たりの全表面積1000mm未満)とメッシュシートの目合いが大きくなり過ぎて、スプレー塗装時の飛散防止効果を損ったり、建築工事に用いる器具や部材をぶつけた時にメッシュシートが破れ易くなるなどの弊害をもたらすことがある。
【0033】
建築工事張囲に用いる建築養生メッシュシート(ユニットサイズ)は、1ユニットが幅方向0.6〜2.4m×長手方向3〜6mの長方形ユニットが好ましく、特に幅方向1.8m×長手方向5.1mの長方形ユニットが取り扱い性に優れ好ましい。これら長方形ユニットの周側部には折り畳み縫製や芯補強縫製などによる縁取補強加工が施され、縁取補強加工部分に長方形ユニット同士をバンド結束または紐結びで連結するためのハトメ打ちが定間隔で設けられていることが好ましい。
【0034】
本発明の建築養生メッシュシートにおける表裏側の熱可塑性樹脂層の態様は、下記の通りである。
1)表面側熱可塑性樹脂層:近赤外線反射性金属複合酸化物含有
裏面側熱可塑性樹脂層:臭気分子不活性化粒子含有
2)表面側熱可塑性樹脂層:近赤外線反射性金属複合酸化物含有
臭気分子不活性化粒子含有
裏面側熱可塑性樹脂層:−
3)表面側熱可塑性樹脂層:近赤外線反射性金属複合酸化物含有
臭気分子不活性化粒子含有
裏面側熱可塑性樹脂層:臭気分子不活性化粒子含有
4)表面側熱可塑性樹脂層:近赤外線反射性金属複合酸化物含有
臭気分子不活性化粒子含有
裏面側熱可塑性樹脂層:近赤外線反射性金属複合酸化物含有
臭気分子不活性化粒子含有
【0035】
本発明の建築養生メッシュシート(1)について図1〜3により説明する。図1は段落〔0034〕の態様1)で、粗目織物(2)を基布として、粗目織物(2)の表裏を被覆する表面側熱可塑性樹脂層(3)及び裏面側熱可塑性樹脂層(4)とで構成され、表面側熱可塑性樹脂層(3)のみに近赤外線反射性金属複合酸化物(6)を含有し、また裏面側熱可塑性樹脂層(4)のみに臭気分子不活性化粒子(5)を含有するメッシュシートの正面と断面の一部を示す図である。同様に図2は段落〔0034〕の態様3)で、粗目織物(2)を基布として、粗目織物(2)の表裏を被覆する表面側熱可塑性樹脂層(3)及び裏面側熱可塑性樹脂層(4)とで構成され、表面側熱可塑性樹脂層(3)のみに近赤外線反射性金属複合酸化物(6)を含有し、また表面側熱可塑性樹脂層(3)及び裏面側熱可塑性樹脂層(4)とに臭気分子不活性化粒子(5)を含有するメッシュシートの断面の一部を示す図である。同様に図3は段落〔0034〕の態様4)で、粗目織物(2)を基布として、粗目織物(2)の表裏を被覆する表面側熱可塑性樹脂層(3)及び裏面側熱可塑性樹脂層(4)とで構成され、表面側熱可塑性樹脂層(3)及び裏面側熱可塑性樹脂層(4)とに臭気分子不活性化粒子(5)と近赤外線反射性金属複合酸化物(6)の両方を含有するメッシュシートの断面の一部を示す図である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験シートの減臭効果、視認効果、及び遮熱効果は下記の試験方法により測定し、評価した。
1)減臭効果
a)容積5LのTedlar(登録商標)バッグに10cm×10cmサイズの試験シート
を入れ、濃度10ppmに調整したアンモニアガスを3L注入し、0.5時間後と1
時間後のガス濃度を検知管で測定した。
b)容積5LのTedlar(登録商標)バッグに10cm×10cmサイズの試験シート
を入れ、濃度10ppmに調整したメチルメルカプタンガスを3L注入し、0.5時
間後と1時間後のガス濃度を検知管で測定した。
c)容積5LのTedlar(登録商標)バッグに10cm×10cmサイズの試験シート
を入れ、濃度10ppmに調整したホルムアルデヒドガスを3L注入し、0.5時間
後と1時間後のガス濃度を検知管で測定した。
2)視認効果
2−1)試験シートをマンションの2階居住部(地上3〜6m:室内照明OFF)に張囲し、試験シートの表面側が正午の太陽光(埼玉県草加市6月)で正面照射された状態で、住居部ベランダに大人1〜5人(マンセル明度6、マンセル彩度6のグレー色の作業着着用)が歩き回り、これを太陽を背にした観察者が25m離れた位置から目視確認した人数を、観察者5人に対して実施した結果を表した。
1:人数が正しく識別された。
2:人の存在は認識されたが、人数が正しく識別されなかった。
3:人の存在が識別されず、カウントなし。
3)熱線反射効果
表面を南方向に向けて屋外垂直設置したメッシュシート(埼玉県草加市6月)に正午〜13時の太陽光が直射された環境(晴天:気温28℃)でのメッシュシートの表面温度を放射温度計で測定した。また室内でASTM D4803−97法による250W赤外線ランプ照射による昇温曲線を30分間測定し、30分後の温度を求めた。
4)遮熱効果
幅100cm×高さ100cm×奥ゆき100cmの立方体の骨組みをアルミ製L型アングル(幅35mm)で組み立て、立方体骨組の底面を除く全面にメッシュシートを貼付固定し試験箱体を作製した。この試験箱体を正午〜13時の太陽光が直射された環境(埼玉県草加市6月:晴天:気温28℃)での試験箱体内部温度を温度センサー(試験箱体内部中心に温度センサーを50cm高さで宙吊り固定)で測定した。
5)マンセル表色系
JIS Z8721「色の表示方法-三属性による表示」に準拠した「修正マンセル表色系」を使用した。
【0037】
[実施例1]
1)ポリエステルのマルチフィラメント糸条250d(278dtex:円弧状断面)を経緯糸条として、経糸条26本/インチ、緯糸条28本/インチの打ち込みで製織した粗目平織物(質量60g/m:空隙率30%)を基布に用いた。〈基布1〉
2)次に粗目織物を被覆する表面側熱可塑性樹脂層用、及び裏面側熱可塑性樹脂層用に下記配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ゾルを配合調整した。
<配合1;軟質ポリ塩化ビニル樹脂ゾル組成>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系複合安定剤 1.5質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
鉄−クロム−コバルト複合酸化物(近赤外線反射性:黒色系) 5質量部
酸化チタン光触媒粒子(臭気分子不活性化粒子) 3質量部
白竹炭(臭気分子不活性化粒子) 10質量部
鉄電気石:NaFeAl(BO)Si18(OH)(臭気分子不活性化粒子)
5質量部
3)配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ゾルの液浴中に粗目織物を浸漬し、マングルロールで圧搾して余分なゾルを除いた後180℃の熱風炉でゲル化処理して熱可塑性樹脂被覆層を形成し両面が黒色で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有する質量130g/mの養生2類メッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は70g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mm、表面側熱可塑性樹脂層(黒)及び裏面側熱可塑性樹脂層(黒)のマンセル明度2であった。
【0038】
[実施例2]
実施例1で用いた基布1を下記基布2に変更した以外は実施例1と同様にして、配合1による表面側及び裏面側熱可塑性樹脂被覆層を設け、両面が黒色で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有する質量170g/mの養生2類メッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は70g/m、メッシュシートの空隙率は42%、1インチ四方の全表面積は1150mm、表面側熱可塑性樹脂層(黒)及び裏面側熱可塑性樹脂層(黒)のマンセル明度2であった。 〈基布2〉
ポリエステルのマルチフィラメント糸条500d(555dtex:円弧状断面)を経緯糸条として、経糸条19本/インチ、緯糸条20本/インチの打ち込みで製織した粗目平織物(質量70g/m:空隙率43%)
【0039】
[実施例3]
実施例1で用いた基布1を下記基布3に変更した以外は実施例1と同様にして、配合1による表面側及び裏面側熱可塑性樹脂被覆層を設け、両面が黒色で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有する質量455g/mの養生1類メッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は230g/m、メッシュシートの空隙率は30%、1インチ四方の全表面積は1205mm、表面側熱可塑性樹脂層(黒)及び裏面側熱可塑性樹脂層(黒)のマンセル明度2であった。 〈基布3〉
ポリエステルのマルチフィラメント糸条2000d(2222dtex:円弧状断面)を経緯糸条として、経糸条13本/インチ、緯糸条13本/インチの打ち込みで製織した粗目平織物(質量225g/m:空隙率31%)
【0040】
[実施例4]
実施例1で用いた基布1を下記基布4に変更した以外は実施例1と同様にして、配合1による表面側及び裏面側熱可塑性樹脂被覆層を設け、両面が黒色で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有する質量470g/mの養生1類メッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は245g/m、メッシュシートの空隙率は10%、1インチ四方の全表面積は1362mm、表面側熱可塑性樹脂層(黒)及び裏面側熱可塑性樹脂層(黒)のマンセル明度2であった。 〈基布4〉
ポリエステルのマルチフィラメント糸条750d/3本模紗(833dtex/3本模紗:円弧状断面)を経緯糸条として、経糸条11本/インチ、緯糸条11本/インチの打ち込みで製織した粗目模紗織物(質量225g/m:空隙率11%)
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例5〜8]
実施例1〜4に用いた配合1を下記配合2に変更した以外、各々実施例1〜4と同様にして実施例5〜8のメッシュシートを得た。実施例5〜8のメッシュシートは両面が黒色(マンセル明度2)で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有していた。
<配合2;軟質ポリ塩化ビニル樹脂ゾル組成>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系複合安定剤 1.5質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
銅−クロム−マンガン複合酸化物(近赤外線反射性:黒色系) 5質量部
酸化チタン光触媒粒子(臭気分子不活性化粒子) 3質量部
白竹炭(臭気分子不活性化粒子) 10質量部
鉄電気石:NaFeAl(BO)Si18(OH)(臭気分子不活性化粒子)
5質量部
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例9〜12]
実施例1〜4に用いた配合1を下記配合3に変更した以外、各々実施例1〜4と同様にして実施例9〜12のメッシュシートを得た。実施例9〜12のメッシュシートは両面が黒色(マンセル明度2)で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有していた。
<配合3;軟質ポリ塩化ビニル樹脂ゾル組成>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系複合安定剤 1.5質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
マンガン−ビスマス複合酸化物(近赤外線反射性:黒色系) 5質量部
酸化チタン光触媒粒子(臭気分子不活性化粒子) 3質量部
白竹炭(臭気分子不活性化粒子) 10質量部
鉄電気石:NaFeAl(BO)Si18(OH)(臭気分子不活性化粒子)
5質量部
【0045】
【表3】
【0046】
参考例1〜4
実施例1〜4に用いた配合1を下記配合4に変更した以外、各々実施例1〜4と同様にして参考例1〜4のメッシュシートを得た。参考例1〜4のメッシュシートは赤色系近赤外線反射性金属複合酸化物、青色系近赤外線反射性金属複合酸化物、黄色系近赤外線反射性金属複合酸化物の3種による減色混合により着色された、両面が茶褐色(マンセル明度3)で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を2.3質量%及び臭気分子不活性化粒子を8.3質量%含有していた。
<配合4;軟質ポリ塩化ビニル樹脂ゾル組成>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系複合安定剤 1.5質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
亜鉛−鉄−クロム複合酸化物(近赤外線反射性:赤色系) 1.5質量部
コバルト−アルミニウム−クロム複合酸化物(近赤外線反射性:青色系) 2質量部
クロム−アンチモン−チタン複合酸化物(近赤外線反射性:黄色系) 1.5質量部
酸化チタン光触媒粒子(臭気分子不活性化粒子) 3質量部
白竹炭(臭気分子不活性化粒子) 10質量部
鉄電気石:NaFeAl(BO)Si18(OH)(臭気分子不活性化粒子)
5質量部
【0047】
【表4】
【0048】
実施例1〜12の建築養生メッシュシートは、空隙率10〜45%、(1インチ四方当たりの表面積1000〜1400mmを満たすこと)、表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とが無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質からなる3種類の臭気分子不活性化粒子を1〜20質量%(8.3質量%)含み、さらに表面側熱可塑性樹脂層及び裏面側熱可塑性樹脂層とが、近赤外線反射性金属複合酸化物を0.1〜15質量%(2.3質量%)含んで着色されていることによって適度なブラインド効果と視認効果とを有しながら、特に化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果を有し、また暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果が得られることが明らかとなった。また臭気分子不活性化粒子が光触媒性物質を含むことにより、特に無機多孔性物質や酸化・還元性物質などと共に光触媒性物質を用いることで、より高く、持続性に優れた減臭効果が得られた。実施例1〜12の建築養生メッシュシートが太陽光の照射を受け続ける条件では、光触媒性物質が常時活性化し、それによって臭気分子を吸着した無機多孔性物質や、臭気分子が配位した酸化・還元性物質に常時作用し、この作用によって捕捉した臭気分子を効果的に分解したり、分解無臭化していた。そしてこの臭気分子の分解により、無機多孔性物質や酸化・還元性物質などを吸着や配位前の初期状態に戻すことで、新たな臭気分子を捕捉できる状態とし、実施例1〜12の建築養生メッシュシートが太陽光を浴びている環境では、「臭気分子の吸着・配位」と「臭気分子の分解・分解無臭化」とを連続的に交互に絶え間なく進行していることが明らかとなった。これは曇り日での減臭効果が晴天時の減臭効果に較べて約30%劣っていることの実証から明らかとなった。
【0049】
[比較例1]
実施例1の基布1を下記基布5に変更した以外は実施例1と同様にして、配合1による表面側及び裏面側熱可塑性樹脂被覆層を設け、両面がマンセル明度2の黒色に着色された、質量235g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は105g/m、メッシュシートの空隙率は4%、1インチ四方の全表面積は1324mmであった。
〈基布5〉
ポリエステルのマルチフィラメント糸条250d(278dtex:円弧状断面)を経緯糸条として、経糸条36本/インチ、緯糸条38本/インチの打ち込みで製織した平織物(質量90g/m:空隙率5%)
【0050】
[比較例2]
実施例1の基布1を下記基布6に変更した以外は実施例1と同様にして、配合1による表面側及び裏面側熱可塑性樹脂被覆層を設け、両面がマンセル明度2の黒色に着色された、質量80g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は44g/m、メッシュシートの空隙率は59%、1インチ四方の全表面積は666mmであった。
〈基布5〉
ポリエステルのマルチフィラメント糸条250d(278dtex:円弧状断面)を経緯糸条として、経糸条12本/インチ、緯糸条12本/インチの打ち込みで製織した平織物(質量36g/m:空隙率60%)
【0051】
[比較例3]
実施例1の配合1から、鉄−クロム−コバルト複合酸化物(近赤外線反射性黒色系着色剤)5質量部を省略し、代わりに酸化チタン(白顔料5質量部)を配合した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆層を形成し両面が白色(マンセル明度9、及びマンセル彩度0)に着色された、質量130g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は70g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mmであった。
【0052】
[比較例4]
実施例1の配合1から、3種類の臭気分子不活性化粒子:可視光応答型光触媒粒子(3質量部)、白竹炭(10質量部)、鉄電気石(5質量部)の配合を省略した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆層を形成し、両面がマンセル明度2の黒色に着色された黒色で、かつ両面の熱可塑性樹脂被覆層に臭気分子不活性化粒子を含まない、質量125g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は65g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mmであった。
【0053】
[比較例5]
実施例1の配合1から、鉄−クロム−コバルト複合酸化物(近赤外線反射性黒色系着色剤)5質量部を省略し、代わりにカーボンブラック(黒顔料5質量部)を配合した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆層を形成し両面が黒色(マンセル明度2)に着色された、質量130g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は70g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mmであった。
【0054】
[比較例6]
実施例1の配合1から、鉄−クロム−コバルト複合酸化物(近赤外線反射性黒色系着色剤)5質量部を省略し、代わりにイエロー系色素としてC.I.PY110(2質量部)、マゼンタ系色素としてC.I.PR122(1.5質量部)、シアン系色素としてC.I.PB15:3(1.5質量部)を用い、減色混合した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆層を形成し両面が暗褐色(マンセル明度2)に着色された、質量130g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は70g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mmであった。
【0055】
[比較例7]
実施例1の配合1の、鉄−クロム−コバルト複合酸化物(近赤外線反射性黒色系着色剤)5質量部を、1質量部に減量した以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆層を形成し両面が黒色(マンセル明度4)に着色され、両面の熱可塑性樹脂被覆層に近赤外線反射性金属複合酸化物を0.46質量%含有する、質量130g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は70g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mmであった。
【0056】
[比較例8]
実施例1の配合1の、酸化チタン光触媒粒子3質量部を0.3質量部に減量、白竹炭10質量部を1質量部に減量、また鉄電気石5質量部を0.5質量部にそれぞれ減量し、臭気分子不活性化粒子の配合量を1/10とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性樹脂被覆層を形成し両面が黒色(マンセル明度2)に着色され、両面の熱可塑性樹脂被覆層に臭気分子不活性化粒子を0.89質量%含有する、質量126g/mのメッシュシートを得た。両面の被覆層の付着量合計は66g/m、メッシュシートの空隙率は29%、1インチ四方の全表面積は1118mmであった。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
比較例1のメッシュシートは、空隙率を4%としたことで通気性が悪いものとし、臭気吸着、不活性化させるためのフィルター効果が阻害されて減臭効果が不十分となり、さらに視界や採光性も悪く、作業環境を薄暗いものとした。比較例2のメッシュシートは、空隙率を60%としたことで、臭気吸着、不活性化効果を発現するための表面積が過少となり、十分な減臭効果が発現しないばかりか、臭いが外に漏れ出てしまった。また比較例2のメッシュシートではJIS A8952及び(社)仮設工業会認定基準に規定される性能を満たさないものであった。比較例3のメッシュシートは、近赤外線反射性黒色系着色剤を省略し、代わりに酸化チタンを配合したことで十分な遮熱効果を発現することができず、しかも白の膨張色による眩しさで、メッシュシート空隙部越の作業現場内部の様子が暗く見え難いものとして外からの安全確認が困難となった。比較例4のメッシュシートは、臭気分子不活性化粒子の配合を省略したことで発生臭気の減臭及び拡散防止効果を発現できないものであった。比較例5のメッシュシートは、近赤外線反射性黒色系着色剤の代わりに黒顔料としてカーボンブラックを配合したことで遮熱効果を失い、反対に発熱して蓄熱する作用によって作業環境内部温度を高くする問題を生じた。比較例6のメッシュシートは、近赤外線反射性黒色系着色剤の代わりに有機着色剤の減色混合による暗褐色としたことで遮熱効果を失い、反対に蓄熱作用を生じて作業環境内部温度をやや高いものとした。比較例7のメッシュシートは、近赤外線反射性黒色系着色剤の含有量を1質量%未満としたことで遮熱効果を不十分なものとした。比較例8のメッシュシートは、臭気分子不活性化粒子の含有量を1質量%未満としたことで減臭効果を不十分なものとした。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により得られる建築養生メッシュシートは、軽量かつ強靭で、通気性と採光性を有し、特に化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも工事現場張囲内における適度なブラインド効果と、工事関係者などの行動や安全状況を外から把握可能な視認効果とを備えるので、ビル、マンション、店舗、住宅などの建築用リフォーム用の養生メッシュシートに使用して、特に(スプレー)塗装工事や接着剤を使用するタイル貼り、ビニルタイル床材やルーフィングシートの敷設接着工事に伴う、化学物質臭や有機溶剤臭の近隣住民への対策、及び工事作業者への労働環境を改善し、特に暗色系メッシュシートであっても、特に夏期の太陽熱に伴う工事現場張囲内の温度上昇及び蓄熱を緩和する遮熱効果を得ることができるので工事現場張囲に用いる建築養生メッシュシートとして極めて有用である。また、無機多孔性物質や酸化・還元性物質などと共に光触媒性物質を用いることで、太陽光の照射を受ける限り、より高く、持続性に優れた減臭効果が得られるので、屋外で長期間使用する建築養生メッシュシートの用途に最適である。
【符号の説明】
【0061】
1:建築養生メッシュシート
2:粗目織物(基布)
3:表面側熱可塑性樹脂層
4:裏面側熱可塑性樹脂層
5:臭気分子不活性化粒子
6:近赤外線反射性金属複合酸化物
図1
図2
図3