(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、第一実施形態に係る筒外燃焼モニタ用センサ50が装着されたエンジン2(請求項の「内燃機関」に相当。)を示すブロック図である。
エンジン2は、エンジン制御装置1(以下、「ECU1」)という)によって制御される。ECU1は、データを受け入れる入力インターフェース1aと、エンジン2の制御を行うための演算を実行するCPU1bと、読み取り専用メモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)を有するメモリ1cと、制御信号を送る出力インターフェース1dと、を備えている。メモリ1cのROMには、エンジン2の制御を行うためのプログラムおよび各種のデータが格納されている。エンジン2を制御するためのプログラムは、該ROMに格納される。ROMは、EPROMのような書き換え可能なROMでもよい。RAMには、CPU1bによる演算のための作業領域が設けられる。エンジン2を制御するために送り出す制御信号は、RAMに一時的に記憶される。
【0026】
エンジン2は、例えば、4サイクルのエンジンであって、1番から4番までの燃焼室8(以下、「シリンダ8」という。)がエンジンの幅方向(
図1における紙面表裏方向)に並んで設けられている。エンジン2は、吸気弁3を介して吸気管4に連結され、排気弁5を介して排気管6に連結されている。吸気管4には、ECU1からの制御信号にしたがって燃料を噴射する燃料噴射弁7が設けられている。排気管6には、ECU1からの制御信号にしたがって排気の一部を分流して吸気系(吸気管4)に戻す排気還流装置22(以下、「EGR22」という。)が設けられている。EGR22は、EGR制御のための各種センサ(不図示)を含む。各種センサによって検出された吸気管圧力PBはECU1に送られる。
【0027】
エンジン2は、吸気管4から吸入される空気と、燃料噴射弁7から噴射される燃料との混合気とを、シリンダ8に吸入する。シリンダ8には、ECU1からの点火時期信号にしたがって火花を飛ばす点火プラグ9が設けられている。点火プラグ9から発せられた火花により、混合気は燃焼する。混合気の体積は、燃焼により増大する。これにより、混合気は、ピストン10を下方に押し下げる。ピストン10の往復運動は、クランクシャフト11の回転運動に変換される。なお、本実施形態において、1番から4番までの各シリンダ8に対する点火プラグ9の点火順は、1番、3番、4番、2番の順となっている。
【0028】
エンジン2には、不図示のクランクプーリの近傍にクランク角センサ17が設けられている。クランク角センサ17は、クランクシャフト11の回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU1に送る。なお、TDC信号は、ピストン10のTDC位置に関連したクランク角度で出力されるパルス信号である。
CRK信号は、所定のクランク角(例えば15度)で出力されるパルス信号である。ECU1は、CRK信号に応じ、エンジン2におけるクランクシャフト11の回転数NEを算出する。
【0029】
エンジン2の吸気管4には、スロットル弁18が設けられている。スロットル弁18の開度は、ECU1からの制御信号により制御される。スロットル弁18に連結されたスロットル弁開度センサ(θTH)19は、スロットル弁18の開度に応じた電気信号を、ECU1に送る。
【0030】
スロットル弁18の下流側には、吸気管圧力センサ20(以下、「PBセンサ20」という。)が設けられている。PBセンサ20によって検出された吸気管圧力PBはECU1に送られる。
【0031】
スロットル弁18の上流には、エアフローメータ(AFM)21が設けられている。エアフローメータ21は、スロットル弁18を通過する空気量を検出し、それをECU1に送る。
【0032】
ECU1には、アクセルペダル開度センサ(AP)25が接続されている。アクセルペダル開度センサ25は、アクセルペダルの開度を検出してECU1に送る。
【0033】
エンジン2は、シリンダブロック34と、シリンダブロック34の上部を覆うように形成されたシリンダヘッド35と、により構成されている。また、図示しないが、エンジン2は、吸気弁および排気弁の少なくともいずれか一方の位相およびリフトを可変に駆動する機構、燃焼室の圧縮比を可変にする機構、および吸気圧を調整する機構などを備えることができる。
【0034】
ECU1に向けて送られた信号は、入力インターフェース1aによって処理される。入力インターフェース1aは、送られた信号をアナログ−デジタル変換する。CPU1bは、変換されたデジタル信号を、メモリ1cに格納されているプログラムにしたがって処理して、アクチュエータに送るための制御信号を作り出す。出力インターフェース1dは、これらの制御信号を、燃料噴射弁7、点火プラグ9、スロットル弁18、EGR22およびその他の機械要素のアクチュエータに送る。
【0035】
図2は、吸気管4側から見たときのエンジン2の説明図である。
上述のように構成されたエンジン2のシリンダ8の外部には、エンジン2の燃焼状態を検知するための筒外燃焼モニタ用センサ50が取り付けられている。筒外燃焼モニタ用センサ50は、例えば加速度センサが採用される。
図2に示すように、本実施形態の筒外燃焼モニタ用センサ50は、シリンダブロック34の外面であって、吸気管4の下方かつエンジン2の幅方向における中間部(すなわち2番シリンダと3番シリンダとの間)に取り付けられている。筒外燃焼モニタ用センサ50には、ECU1(
図1参照)から延設されたハーネス13が接続されている。これにより、筒外燃焼モニタ用センサ50は、ECU1とハーネス13を介して互いに電気的に接続されるので、ECU1に対して出力信号を送ることができる。
【0036】
図3は、筒外燃焼モニタ用センサ50の分解斜視図である。
図3に示すように、筒外燃焼モニタ用センサ50は、センサ部51と、本体部53と、出力端子部58と、ボルト60と、により構成されている。
センサ部51は、リング状に形成された部材であり、筒外燃焼モニタ用センサ50に入力される振動を電圧に変換可能な圧電効果を利用した受動素子であって、例えば半導体圧電素子が採用される。
センサ部51は、その中心軸と同軸に測定主軸Oを有しており、例えば測定主軸Oに沿う振動を検知して出力信号を出力する。また、センサ部51は、測定主軸Oと交差する方向の振動を検知する、いわゆる横感度を有している。横感度の詳細については後述する。
なお、センサ部51は、半導体圧電素子に限定されることはなく、例えば圧電セラミックス等であってもよい。また、センサ部51は、筒外燃焼モニタ用センサ50に入力される振動や加速度、荷重等に対応して出力信号を出力できればよく、例えば歪みゲージ等であってもよい。
また、センサ部51のシリンダブロック34への取付方法は、上述のボルト60による締結固定に限定されることはなく、例えば接着剤を用いて接着固定してもよい。また、例えば、点火プラグにセンサ部51を埋め込んだ埋め込み型センサとし、シリンダヘッド35ごとセンサ部51をシリンダブロック34に固定してもよい。
【0037】
本体部53は、例えばステンレス等の金属材料によって、測定主軸Oを中心軸とするリング状に形成されている。本体部53の内部には、センサ部51が埋設されている。これにより、本体部53は、センサ部51を支持している。
【0038】
出力端子部58は、ECU1(
図1参照)から延設されたハーネス13(
図2参照)の先端に形成された不図示のコネクタと嵌合可能に形成されており、本体部53から測定主軸Oと直交する方向(本実施形態では本体部53の径方向)に沿って突出されている。出力端子部58の不図示の端子は、一端部がセンサ部51に接続され、他端部が不図示のコネクタに接続される。
【0039】
ボルト60は、本体部53に挿通されて本体部53をエンジン2に固定するためのものであり、筒外燃焼モニタ用センサ50の構成部品となっている。ボルト60は、例えばネジ部62の呼び径がM12のいわゆるフランジボルトであって、円盤状のフランジ部61と六角形の頭部63とを有している。頭部63は、例えば一部を切除することにより慣性質量を変更して、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する調節部70とされる。調節部70の詳細な説明、作用および効果については後述する。
なお、調節部70は、複数の手法で出力信号への影響を調節しても良い。
【0040】
ここで、筒外燃焼モニタ用センサ50に対して、XYZの直交座標系を以下のように定義する。具体的には、XYZの各方向のうち、X方向は出力端子部58の延在方向と定義し、Y方向はX方向と同一平面内で直交する方向と定義し、Z方向はX方向およびY方向と直交する方向であって、測定主軸Oに沿う方向と定義する。
【0041】
図4は、横軸を周波数とし、縦軸を位相差および振幅比としたときの、筒外燃焼モニタ用センサ50(
図2参照)をXYZの各方向に振動させた際の出力信号の周波数特性を示すグラフである。なお、
図4において、一点鎖線はX方向へ加振した時の結果を示し、二点鎖線はY方向へ加振した時の結果を示し、実線はZ方向へ加振した時の結果を示している。また、以下の説明において、各部品の符号については、必要に応じて
図1から
図3を参照されたい。
【0042】
一般に、圧電素子等からなるセンサ部51は、測定主軸Oと交差する方向の振動を検知する横感度を有していることが知られている。
例えば、
図4のグラフにおける振幅比について、筒外燃焼モニタ用センサ50をX方向およびY方向へ加振した場合、いずれの場合も測定主軸Oとは異なる方向の振動が入力されているため、本来振幅比の出力信号は0となるはずである。しかしながら、筒外燃焼モニタ用センサ50をX方向およびY方向へ加振した場合のそれぞれの振幅比の出力信号は、0とはなっていない。特に、周波数帯域が、50Hzの近傍にあっては、Y方向へ加振した場合の振幅比の出力信号は、Z方向へ加振した場合の振幅比の出力信号とほぼ同一となっている。
このように、
図4のグラフによれば、筒外燃焼モニタ用センサ50は、センサ部51が横感度を有しており、本来検知できないはずの測定主軸Oと交差するX方向およびY方向の振動を検知していることが明らかである。これは、ボルト60の頭部63の慣性質量により、X方向およびY方向の振動が入力された場合であっても、測定主軸Oに沿うZ方向の振動が発生するためと考えられる。
【0043】
ここで、ボルト60の頭部63は、上述したセンサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する調節部70として機能する。具体的には、ボルト60の軸方向に沿う頭部63の長さ(以下「軸長」という。)をLとしたとき(
図3参照)、頭部63の軸長Lを変更して頭部63の慣性質量を変更することにより、筒外燃焼モニタ用センサ50におけるセンサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する。
以下の条件のもと、ボルト60の頭部63の軸長Lを変更して頭部63の慣性質量を変更した時の、センサ部51の出力波形の変化を検証した。
【0044】
(測定条件)
(1)測定対象のエンジン2
直列4気筒のエンジン2を使用した。
(2)筒外燃焼モニタ用センサ50の取り付け位置
シリンダブロック34の外面であって、吸気管4の下方かつエンジン2の幅方向における中間部(すなわち2番シリンダと3番シリンダとの間)に取り付けた。
(3)回転数
エンジン2の回転数NEは、1500rpmであった。
(4)ボルト60
呼び径がM12のフランジボルトを使用した。ボルト60のシリンダブロック34への締結トルクは、25N・mとした。また、ボルト60のフランジ部61と筒外燃焼モニタ用センサ50の本体部53との間にワッシャ(
図2および
図3において不図示)を介して、筒外燃焼モニタ用センサ50の本体部53をボルト60によりシリンダブロック34へ締結固定した。
[比較例]
ボルト60の頭部63の軸長L=15mmとした。このときのボルト60の頭部63、フランジ部61およびワッシャの合計の慣性質量M=44.0gであった。
[実施例1]
ボルト60の頭部63を切削加工することにより、ボルト60の頭部63の軸長L=11mmとした。このときのボルト60の頭部63、フランジ部61およびワッシャの合計の慣性質量M=36.3gであった。
[実施例2]
ボルト60の頭部63を切削加工することにより、ボルト60の頭部63の軸長L=7mmとした。このときのボルト60の頭部63、フランジ部61およびワッシャの合計の慣性質量M=28.7gであった。
なお、比較例、実施例1および実施例2の慣性質量Mは、実測値ではなく計算値となっている。
【0045】
(検証結果)
図5は、ボルト60の頭部63の軸長L=15mmとした比較例に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図5(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図5(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
図6は、ボルト60の頭部63の軸長L=11mmとした実施例1に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図6(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図6(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
図7は、ボルト60の頭部63の軸長L=7mmとした実施例2に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図7(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図7(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
なお、
図5から
図7のグラフは、いずれも縦軸が出力信号の電圧(V)となっており、横軸がクランク角(deg)となっている。また、
図5から
図7における#1〜#4は、それぞれシリンダ8の番数に対応している。
【0046】
図5(a)、
図6(a)および
図7(a)を比較するとわかるように、ボルト60の頭部63の軸長Lが短くなるにつれて、ノイズによる出力信号の振幅幅が小さくなる傾向にある。特に、ボルト60の頭部63の軸長Lが短くなるにつれて、3番シリンダおよび2番シリンダ相当の振動に対応する出力信号の高調波ノイズが小さくなる傾向にある。
また、
図5(b)、
図6(b)および
図7(b)を比較するとわかるように、ボルト60の頭部63の軸長Lが短くなるにつれて、3番シリンダおよび2番シリンダ相当の振動に対応する出力信号の電圧降下がとりわけ大きくなっている。
このように、ボルト60の頭部63の軸長L(すなわち慣性質量)を変更することにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響度合いが変化し、異なる特性を有する出力信号が得られる。すなわち、ボルト60の頭部63は、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する調節部70として機能している。
【0047】
本実施形態によれば、調節部70を調節することで、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節することができる。これにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響を抑制して精度よく出力信号を得ることができ、または、センサ部51の横感度による出力信号への影響を活用してエンジン2の運転状態を把握することができる。
【0048】
また、ボルト60の頭部63が調節部70として機能しており、ボルト60の頭部63を切除することにより、ボルト60の頭部63の慣性質量を変化させることができるので、センサ部51の横感度による出力信号への影響を容易に調節することができる。
【0049】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について、図面を参照して説明する。
第一実施形態では、筒外燃焼モニタ用センサ50のボルト60の頭部63が調節部70として機能していた。
これに対して、第二実施形態では、測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更することにより、筒外燃焼モニタ用センサ50の出力端子部58が調節部70として機能する点で、第一実施形態とは異なっている。なお、以下では、第一実施形態と同一の構成については、説明を省略している。
【0050】
図8は、エンジン2を吸気管4(
図2参照)側から見たときの、筒外燃焼モニタ用センサ50の出力端子部58の取り付け方向の説明図である。以下の説明において、上下左右方向は、エンジン2を吸気管4側から見たときであって、
図2における上下左右方向に一致している。すなわち、
図8(a)は、筒外燃焼モニタ用センサ50の出力端子部58が上方を指向している状態を図示しており、
図8(b)は、筒外燃焼モニタ用センサ50の出力端子部58が下方を指向している状態を図示しており、
図8(c)は、筒外燃焼モニタ用センサ50の出力端子部58が左方を指向している状態を図示しており、
図8(d)は、筒外燃焼モニタ用センサ50の出力端子部58が右方を指向している状態を図示している。
【0051】
(測定条件)
[実施例1]
測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更し、出力端子部58が上方を指向した状態で、筒外燃焼モニタ用センサ50をシリンダブロック34へ取り付けた(
図8(a)参照)。
[実施例2]
測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更し、出力端子部58が下方を指向した状態で、筒外燃焼モニタ用センサ50をシリンダブロック34へ取り付けた(
図8(b)参照)。
[実施例3]
測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更し、出力端子部58が左方を指向した状態で、筒外燃焼モニタ用センサ50をシリンダブロック34へ取り付けた(
図8(c)参照)。
[実施例4]
測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更し、出力端子部58が右方を指向した状態で、筒外燃焼モニタ用センサ50をシリンダブロック34へ取り付けた(
図8(d)参照)。
【0052】
(検証結果)
図9は、出力端子部58が上方を指向した実施例1に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図9(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図9(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
図10は、出力端子部58が下方を指向した実施例2に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図10(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図10(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
図11は、出力端子部58が左方を指向した実施例3に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図11(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図11(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
図12は、出力端子部58が右方を指向した実施例4に係るセンサ部51の出力波形の変化を表すグラフであり、
図12(a)は、ローパスフィルタを介さないときのセンサ部51の出力波形であり、
図12(b)は、1kHzのローパスフィルタを介したときのセンサ部51の出力波形である。
なお、
図9から
図12のグラフは、いずれも縦軸が出力信号の電圧(V)となっており、横軸がクランク角(deg)となっている。また、
図9から
図12における#1〜#4は、それぞれシリンダ8の番数に対応している。
【0053】
図9(b)に示す出力端子部58が上方を指向したときに得られるセンサ部51の出力信号と、
図12(b)に示す出力端子部58が右方を指向したときに得られるセンサ部51の出力信号とは、同等の波形となっている。
これに対して、
図10(b)に示す出力端子部58が下方を指向したときに得られるセンサ部51の出力信号、および
図11(b)に示す出力端子部58が左方を指向したときに得られるセンサ部51の出力信号は、それぞれ
図9(b)および
図12(b)に示す出力信号と比較して、出力電圧が低下している。特に、
図11(b)において、3番シリンダ相当の振動および2番シリンダ相当の振動に対応する出力信号は、クランクシャフト11の回転にともない、大きく低下しているのがわかる。
このように、測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更することにより、本体部53の慣性質量のバランスを変更できる。これにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響度合いが変化し、出力端子部58の位置に対応して異なる特性を有する出力信号が得られる。すなわち、出力端子部58は、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する調節部70として機能する。
【0054】
第二実施形態によれば、筒外燃焼モニタ用センサ50が出力端子部58を有し、調節部70が出力端子部58であり、エンジン2に取り付ける際に、測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更することにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節するので、特別な部品を追加することなく、センサ部51の出力端子部58を利用して低コストかつ容易に調節することができる。
【0055】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
筒外燃焼モニタ用センサ50を構成するセンサ部51や、本体部53、出力端子部58、ボルト60等の形状や材質等は、上述の各実施形態に限定されない。
図13は、他の実施形態に係る筒外燃焼モニタ用センサ50の分解斜視図である。
図13に示すように、他の実施形態に係る筒外燃焼モニタ用センサ50は、出力端子部58と本体部53との隅部に、出力端子部58と本体部53とを接続する補強部56を設けてもよい。
この構成によれば、筒外燃焼モニタ用センサ50に振動や加速度等が入力された場合であっても、出力端子部58の振れを抑制できる。したがって、例えば、出力端子部58を調節部70として機能させた場合であっても、出力端子部58自身の振れに起因する測定主軸Oと交差する方向の振動や加速度等の発生を抑制できるので、センサ部51の横感度による出力信号への影響を確実に低減できる。
【0057】
図14は、他の実施形態に係る筒外燃焼モニタ用センサ50の分解斜視図である。
また、
図14に示すように、筒外燃焼モニタ用センサ50は、ボルト60により本体部53に固定され、測定主軸Oと交差する方向に沿って突出する突出片66を有するブラケット65を備えていてもよい。
ブラケット65は、例えば鉄等の金属材料により板状に形成されており、測定主軸Oから離れるにつれて本体部53側からボルト60の頭部63側に向かって傾斜する突出片66を有している。
ブラケット65の取付部67には、ボルト60のネジ部62が挿通される貫通孔67aが設けられている。ブラケット65は、シリンダブロック34(
図2参照)に本体部53をボルト60により締結固定した際に、測定主軸O周りの周方向における突出片66の位置を変更することにより、ブラケット65の慣性質量のバランスを変更できる。これにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響度合いが変化し、突出片66の位置に対応して異なる特性を有する出力信号が得られる。すなわち、ブラケット65は、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する調節部70として機能する。
【0058】
この構成によれば、調節部70がブラケット65であり、測定主軸O周りの周方向におけるブラケット65の突出片66の位置を変更することにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響を容易に調節することができる。さらに、例えば、突出片66の突出量や、形状等を変更することにより、センサ部51の横感度による出力信号への影響を所望に調節することができる。
【0059】
図15は、他の実施形態に係る筒外燃焼モニタ用センサ50の分解斜視図である。
図15に示すように、筒外燃焼モニタ用センサ50の本体部53の一部53aを切除することにより、本体部53の慣性質量のバランスを変更し、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節してもよい。この場合においては、筒外燃焼モニタ用センサ50の本体部53が調節部70として機能する。なお、
図15では、切除された本体部53の一部53aを二点鎖線で図示している。
この構成によれば、本体部53の一部53aを切除することにより、本体部53の慣性質量のバランスを変更して、センサ部51の横感度による出力信号への影響を容易に調節することができる。また、特別な部品を追加することなく、筒外燃焼モニタ用センサ50の本体部53を利用して、センサ部51の横感度による出力信号への影響を低コストかつ容易に調節することができる。
【0060】
図16および
図17は、他の実施形態に係る筒外燃焼モニタ用センサ50の分解斜視図である。
筒外燃焼モニタ用センサ50の本体部53の形状は、上述の各実施形態におけるリング状に限定されない。したがって、
図16に示すように、筒外燃焼モニタ用センサ50は、本体部53の形状が直方体状であってもよい。
また、
図17に示すように、筒外燃焼モニタ用センサ50は、出力端子部58を複数本(
図17の例では二本)備えていてもよい。この場合においても、測定主軸O周りの周方向における出力端子部58,58の位置を変更することにより、本体部53の慣性質量のバランスを変更できる。したがって、二本の出力端子部58,58は、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節する調節部70,70として機能できる。
【0061】
また、上述の各実施形態を組み合わせてもよい。したがって、例えば、第一実施形態と第二実施形態とを組み合わせ、ボルト60の頭部63の軸長Lを変更するとともに、測定主軸O周りの周方向における出力端子部58の位置を変更することにより筒外燃焼モニタ用センサ50の慣性質量のバランスを変更し、センサ部51の横感度による出力信号への影響を調節してもよい。
【0062】
また、上述の第一実施形態では、ボルト60の頭部63を切除し、軸長Lを変更して頭部63の慣性質量を変更することにより、ボルト60の頭部63を調節部70としていた。これに対して、例えば、測定主軸Oに対して非
対称形状となるように、ボルト60の頭部63の一部を切除して慣性質量のバランスを変更することにより、ボルト60の頭部63を調節部70としてもよい。さらに、ボルト60を例えば鋳造により形成する際に一部に凹部を設け、測定主軸Oに対して非
対称形状となるようにボルト60を形成して慣性質量のバランスを変更することにより、ボルト60を調節部70としてもよい。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。