【実施例】
【0016】
図1および
図2を用いて本発明の一実施例に係る車両走行制御装置について説明する。
図1に示すように、本実施例に係る車両走行制御装置は、少なくとも自車両を定速で走行させる定速走行制御手段と、あらかじめ設定された条件(先行車両との車間距離が近接した場合又はエンジン回転数が上限を超えた場合等)に基づき当該条件に合致する状況において自車両の車両速度を自動的に減速させる減速制御手段とを備えるとともに、増速抑制制御手段として機能するクルーズコントロール制御演算部10を有している。
【0017】
このクルーズコントロール制御演算部10には、車速センサ21により検知した自車両の速度、車間距離センサ22により検知した先行車両との車間距離、加速度センサ23により検知した自車両の加速度、ブレーキペダルスイッチ24により検出したブレーキペダルの踏み込みの有無、アクセルペダル25の踏み込み操作量に対応するアクセル開度、クルーズコントロール(CC)スイッチ26により設定された制御モード(例えば、定速走行制御、追従走行制御、又はクルーズコントロール解除等)、及び、モード選択スイッチ27により設定された増速抑制制御の範囲(増速許容範囲)、定速走行設定スイッチ28において設定された定速走行条件等が入力される。
【0018】
また、クルーズコントロール制御演算部10は、入力された情報に基づいてエンジン31の出力、自動変速機(AT)32のギア段、ブレーキ33およびブレーキランプ34の点灯等を制御する。特に、増速抑制制御を行う場合は、増速制御手段としてのエンジン31の出力の変更、自動変速機(AT)32のギア段の変更、ブレーキ33の作動を制御する。
【0019】
ここで、モード選択スイッチ27は増速許容範囲設定手段として構成され、クルーズコントロール装置によって定速走行を行う場合に、定速走行中にクルーズコントロール制御演算部10によって自動的に制御される増速抑制制御の範囲を段階的に設定するものである。本実施例に係る車両走行制御装置では、増速抑制制御の範囲の一例として、高レベル増速抑制モード、中レベル増速抑制モード、低レベル増速抑制モードの三段階の増速抑制モードを道路交通状況等に応じて選択可能となっている。なお、モード選択スイッチ27は、例えばハンドルに選択スイッチを設ける、又は設定画面において増速抑制モードを選択可能とする等、ドライバの操作しやすい位置に設けられるものとする。
【0020】
高レベル増速抑制モードは、定速走行中、先行車両に接近した場合又はエンジン31の回転数が上限を超えた場合等の減速が必要不可欠な場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して減速を行うとともに、先行車両との車間距離やエンジン31の回転数が正常であれば、自車両の走行速度が車両状態(例えば、降坂走行中である等)に起因して設定速度プラスv1(例えば、v1=3)km/h以内となるようにエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して自車両の走行速度が設定速度範囲となるよう増速を抑制するものである。
【0021】
中レベル増速抑制モードは、定速走行中、先行車両に接近した場合又はエンジン31の回転数が上限を超えた場合等の減速が必要不可欠な場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して減速を行う一方、先行車両との車間距離やエンジン31の回転数が正常であれば、自車両の走行速度が車両状態に起因して設定速度プラスv2(v2>v1、例えば、v2=15)km/h以上となるまではブレーキ33の作動による増速の抑制は行わず、自車両の走行速度が車両状態に起因して設定速度プラスv2km/h以上となった場合に初めてエンジン31の出力変更及び自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して増速を抑制するものである。
【0022】
低レベル増速抑制モードは、定速走行中、先行車両に接近した場合又はエンジン31の回転数が上限を超えた場合等の減速が必要不可欠な場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して減速を行う一方、先行車両との車間距離やエンジン31の回転数が正常であれば、自車両の走行速度が車両状態に起因して増速した場合はエンジン31の出力変更を自動的に制御して増速を抑制し、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動による増速抑制は行わず、車両状態に起因する増速の抑制についてはドライバの操作に任せるものである。
【0023】
以下、
図2を用いて本実施例に係る車両走行制御装置による自動増速抑制制御の流れを説明する。
【0024】
図2に示すように、クルーズコントロール制御演算部10においては、まず、減速制御が必要か否かを判定する(ステップP1)。
【0025】
判定の結果、減速制御が必要でない場合(NO)は処理を終了する。
一方、減速制御が必要である場合(YES)は、続いて先行車両との車間距離やエンジン31の回転数が正常か否かを判定する(ステップP2)。
【0026】
判定の結果、車間距離又はエンジン31の回転数が設定範囲外である場合(NO)は、先行車両に近づいている、又はエンジン31の回転数が上限を超えている等とみなして、初期設定値、例えばエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動による自動増速抑制制御を作動状態とするとともに、車間距離又はエンジン31の回転数を設定範囲内に抑制制御する。(ステップP3)。
【0027】
一方、車間距離及びエンジン31の回転数が正常である場合(YES)は続いてモード選択スイッチ27により選択された増速抑制モード(増速抑制機能選択)が低レベル増速抑制モード以外か否か、すなわち高レベル増速抑制モード又は中レベル増速抑制モードであるか否かを判定する(ステップP4)。
【0028】
判定の結果、増速抑制モードが低レベル増速抑制モードである場合(NO)はエンジン31の出力変更による自動増速抑制制御を作動状態とする一方、自動変速機32のギア段変更及びブレーキ33の作動による自動増速抑制制御を非作動状態とするとともに、車両速度の増加許容域を制限なしに設定する(ステップP5)。
【0029】
一方、増速抑制モードが高レベル増速抑制モード又は中レベル増速抑制モードである場合(YES)は続いてモード選択スイッチ27により選択された増速抑制モードが中レベル増速抑制モード以外か否か、すなわち高レベル増速抑制モードであるか否かを判定する(ステップP6)。
【0030】
判定の結果、増速抑制モードが中レベル増速抑制モードである場合(NO)はエンジン31の出力変更及び自動変速機32のギア段の変更による自動増速抑制制御を作動状態とする一方、ブレーキ33の作動による自動増速抑制制御を非作動状態とするとともに、車両速度の増加許容域を設定速度プラスv2(本実施例では、v2=15)km/hに設定する(ステップP7)。
【0031】
一方、増速抑制モードが高レベル増速抑制モードである場合(YES)はエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動による自動増速抑制制御を作動状態とするとともに、車両速度の増加許容域の上限を設定速度プラスv1(本実施例では、v1=3)km/hに設定する(ステップ8)。
【0032】
このような処理を行うことにより、増速抑制モードを低レベル増速抑制モードに設定した場合には、先行車両に接近した場合や先行車両と衝突する恐れがある場合、又はエンジン31の回転数が上限に達した場合等の減速が必要不可欠な場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して増速を抑制する一方、例えば、設定速度を80km/hとした場合、車両速度が増速してもエンジン31の出力を制御するのみで、増速の抑制はドライバの操作に任される。
【0033】
また、増速抑制モードを中レベル増速抑制モードに設定した場合には、先行車両に接近した場合や先行車両と衝突する恐れがある場合、又はエンジン31の回転数が上限に達した場合等の減速が必要不可欠な場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して減速を行う一方、例えば、設定速度を80km/h、増加許容域v2を15km/hとした場合、車両速度が95km/hを超えるまでエンジン31の出力変更及び自動変速機32のギア段の変更を自動的に制御して増速を抑制するのみで、ブレーキ33の作動による抑制制御は行わない。
【0034】
また、高レベル増速抑制モードに設定した場合には、先行車両に接近した場合や先行車両と衝突する恐れがある場合、又はエンジン31の回転数が上限に達した場合等の減速が必要不可欠な場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して減速を行う。例えば、設定速度を80km/h、増加許容域v1を3km/hとした場合、車両速度が83km/hを超えない様にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段の変更及びブレーキ33の作動を自動的に制御して増速を抑制する。
【0035】
このように構成される本実施例に係る車両走行制御装置によれば、クルーズコントロール装置の増速抑制制御を道路交通状況に応じて選択することが可能であるため、例えば、降坂走行において自車両の周囲の車両の走行速度が増速した場合、周囲の走行車両の流れに応じて自車両を走行させることが可能となるなど、道路交通状況に応じて最適な走行制御形態を選択することができ、利便性が向上する。
【0036】
なお、上述した実施例は一例であり、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施例においては、一例として増速抑制制御段階を三段階に設定する例を示したが、増速抑制制御段階は必要に応じて二段階又は四段階以上としてもよい。
また、上述した実施例においては高レベル増速抑制モードでは車両速度が設定速度に対する増加許容域を超えた場合にエンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段変更及びブレーキ33の作動のうちの少なくとも一つを自動的に制御して増速を抑制し、中レベル増速抑制モードにおいては車両速度が設定速度に対する増加許容域を超えた場合にエンジン31の出力変更及び自動変速機32のギア段変更のうちの少なくとも一つを自動的に制御して増速を抑制する例を示したが、エンジン31の出力変更、自動変速機32のギア段変更及びブレーキ33の作動の組み合わせはこれに限定されるものではない。
【0038】
また、上述した実施例においてはクルーズコントロール制御演算部10が少なくとも自車両を定速で走行させる定速走行設定手段と、あらかじめ設定する条件(先行車両との車間距離やエンジン回転数等)に基づいて自車両の車両速度を減速させる減速制御手段とを備える例を示したが、予め設定された設定速度範囲内で前方を走行する先行車両を追従するように自車両を走行させる追従走行制御手段を備えるものであってもよい。
【0039】
また、上述した実施例においては車両走行制御装置を自動変速機を備えた車両に適用する例を示したが、例えば、手動変速機を備えた車両や電気自動車、又はハイブリッド車に適用することも可能である。