(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191125
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/06 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
H01H73/06 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-251823(P2012-251823)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2014-99384(P2014-99384A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑高
(72)【発明者】
【氏名】浜田 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】細岡 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山縣 秀人
【審査官】
安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−305490(JP,A)
【文献】
特開2007−048681(JP,A)
【文献】
特開2011−134570(JP,A)
【文献】
特開平11−185588(JP,A)
【文献】
特開2007−234496(JP,A)
【文献】
特開平07−288077(JP,A)
【文献】
特開2002−093300(JP,A)
【文献】
特開2000−299050(JP,A)
【文献】
特許第4650023(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドケース内に、固定接触子及び可動接触子からなる接触子部と、消弧装置と、前記可動接触子の開閉機構と、過電流引外し装置と、内装付属装置と、を組み込んだ回路遮断器において、
前記モールドケースを、ケース本体と、ケース本体の上部に装着されるカバーとで構成し、
前記ケース本体を、上部が開口した下部ケースと、この下部ケースの開口を閉塞する底部を有して当該下部ケースの上部に装着される中間ケースとで構成し、
前記下部ケースの内部空間に前記接触子部及び前記消弧装置が組み込まれ、前記中間ケースの内部空間に、前記開閉機構、前記過電流引外し装置及び前記内装付属装置が組み込まれているとともに、
前記中間ケースの前記開閉機構、前記過電流引外し装置及び前記内装付属装置が組み込まれた内部空間と、前記下部ケースの前記接触子部及び前記消弧装置が組み込まれた内部空間とが、前記中間ケースの前記底部で遮蔽されていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
前記カバーは、前記過電流引外し装置及び前記開閉機構を覆う上部カバーと、この上部カバーに形成した前記内装付属装置を配置する収納凹部の近傍に回動自在に連結され、開閉動作を行う補助カバーと、を備え、
前記補助カバーの開動作を行うことで、前記内装付属装置を前記収納凹部に配置して前記開閉機構に連結状態で組み込み、或いは取り外し、
前記補助カバーの閉動作を行うことで、前記収納凹部に配置した前記内装付属装置を閉塞することを特徴とする請求項1記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧電路に用いられる配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、主回路の各相に対応する固定接触子と可動接触子からなる接触子部、接触子間に発生するアークを消弧する消弧装置、可動接触子を開閉駆動する開閉機構、開閉機構の引外し機構、及び過電流を検出して引外し機構を作動させる過電流引外し装置を、モールドケースに組み込んで構成されている。
上記構成の回路遮断器は、短絡電流などの過電流を遮断すると、主回路の固定接点及び可動接点の間に発生したアークによるアークガスが開閉機構などの他の機構に回り込み、遮断器内部の絶縁性能が低下するとともに、電流遮断時に発生したアークガスが極間にまたがって流れ込むと、相間の絶縁強度が低下して高い遮断性能を得ることができない。また、アークの熱を受けて蒸発した金属(接点材料など)の溶融物がアークガスに随伴して周辺に飛散し、開閉機構や引外し機構の可動部分に付着して遮断動作機能を損なうことがある。
【0003】
このようなアーク発生による課題に対して、接触子部と開閉機構などの他の機能部との間を追加部品によってアークガスの侵入を防ぐ構造(第1の対策)や、例えば特許文献1のように、モールドケースを構成する中間ケースに、接触子部及び消弧装置を隔離する極間隔壁と、接触子部と過電流引外し装置とを隔離する中仕切隔壁とを設ける構造(第2の対策)とすることで、他の機能部へのアークガスや金属溶融物の侵入を防ぎ、短絡遮断後の絶縁性能を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4650023号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、第1の対策は、追加部品を使用することで部品点数が増加するので、製造コストの高騰化の面で問題がある。
また、第2の対策は、回路遮断器内部のスペースに複数の隔壁(極間隔壁、中仕切隔壁)を設けることで、開閉機構、引外し機構及び過電流引外し装置の可動スペースが制限され、設計自由度が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、製造コストの低減化を図り、設計自由度を向上させながら短絡遮断時の絶縁性能を確保することができるとともに、接触子部とともに内部に搭載された他の機能部に対してアーク発生による影響を最小限に抑制することができる回路遮断器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、一の実施形態に係る回路遮断器は、モールドケース内に、固定接触子及び可動接触子からなる接触子部と、消弧装置と、前記可動接触子の開閉機構と、過電流引外し装置と、内装付属装置と、を組み込んだ回路遮断器において、前記モールドケースを、ケース本体と、ケース本体の上部に装着されるカバーとで構成し、前記ケース本体を、
上部が開口した下部ケースと、この下部ケース
の開口を閉塞する底部を有して当該下部ケースの上部に装着される中間ケースとで構成し、前記下部ケースの内部空間に前記接触子部及び前記消弧装置が組み込まれ、前記中間ケースの内部空間に、前記開閉機構、前記過電流引外し装置及び前記内装付属装置が組み込まれて
いるとともに、前記中間ケースの前記開閉機構、前記過電流引外し装置及び前記内装付属装置が組み込まれた内部空間と、前記下部ケースの前記接触子部及び前記消弧装置が組み込まれた内部空間とが、前記中間ケースの前記底部で遮蔽されている。
【0007】
この一の実施形態に係る回路遮断器によると、接触子部を配置した空間と、過電流引外し装置及び開閉機構を配置した空間が、中間ケースにより遮蔽されているので、接触子部を配置した空間で発生したアークガスが過電流引外し装置及び開閉機構側の空間に回り込まない。また、下部ケース上に、過電流引外し装置及び開閉機構を組み込んだ中間ケースを装着するだけでアークガスの侵入を防いでおり、従来装置のような追加部品を必要としない。さらに、中間ケースで遮蔽された下部ケースの空間を制約なく使用することができるので、設計自由度が向上する。
【0008】
また、一の実施形態に係る回路遮断器は、前記カバーが、前記過電流引外し装置及び前記開閉機構を覆う上部カバーと、この上部カバーに形成した前記内装付属装置を配置する収納凹部の近傍に回動自在に連結され、開閉動作を行う補助カバーと、を備え、前記補助カバーの開動作を行うことで、前記内装付属装置を前記収納凹部に配置して前記開閉機構に連結状態で組み込み、或いは取り外し、前記補助カバーの閉動作を行うことで、前記収納凹部に配置した前記内装付属装置を閉塞するようにした。
【0009】
この一の実施形態に係る回路遮断器によると、内装付属部品を回路遮断器内部から着脱する場合には、回路遮断器の内部装置に指を触れることなく、上部カバーに連結した補助カバーの開動作を行い、収納凹部に内装付属部品を安全に組み込み、或いは、取り外すことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る回路遮断器によれば、製造コストの低減化を図り、設計自由度を向上させながら短絡遮断時の絶縁性能を確保することができるとともに、接触子部とともに内部に搭載された他の機能部に対してアーク発生による影響を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】下部ケースに組み込まれる消弧装置と接触子部を示す図である。
【
図3】下部ケース上に装着される中間ケースの形状を示す図である。
【
図4】中間ケース上に組み込まれる開閉機構及び過電流引外し装置を示す図である。
【
図5】中間ケース上に装着されるカバーの構造を示す図である。
【
図6】補助カバーが開動作を行った状態で内装付属装置を装着する状態を示す図である。
【
図7】補助カバーが閉動作を行い内装付属装置を閉塞している回路遮断器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の回路遮断器1は、樹脂モールドで形成したケース2内に、先端に可動接点3aを設けた可動接触子3と、可動接触子3を回動可能に支持する可動接触子支持部4と、可動接点3aに接触する固定接点5aを有し、電源側端子6に接続されている固定接触子5と、可動接触子3を開閉駆動する開閉機構7と、可動接触子3に接続されている負荷側端子板20と、電源側端子6側に接続されている過電流引外し装置8と、可動接点3a及び固定接点5aの間で発生したアークを消弧する消弧室9と、回路遮断器1のON・OFF・トリップ状態を電気的に表示する補助スイッチや警報スイッチなどの付属スイッチ10と、が収納されている。
【0013】
ケース2は、ケース本体11と、このケース本体11の上部に装着されるカバー12とで構成されている。
ケース本体11は、回路遮断器1の底部を形成する下部ケース13と、下部ケース13の上部に装着される中間ケース14とで構成されている。
カバー12は、中間ケース14の上部に装着される上部カバー15と、上部カバー15に回動自在に装着されて開閉動作を行う補助カバー16とで構成されている。
【0014】
図2に示すように、上部が開口した直方体形状の下部ケース13の内部には、相間を仕切る複数の隔壁部13aが形成されており、これら隔壁部13aの間に、各相の消弧室9、可動接触子3、可動接触子支持部4及び固定接触子5が組み込まれている。
図3に示すように、下部ケース13の上部に装着される中間ケース14は、下部ケース13内部に組み込んだ消弧室9、可動接触子3、可動接触子支持部4及び固定接触子5を閉塞する底部14aが形成されている。
【0015】
図4に示すように、下部ケース13の上部に装着した中間ケース14に、過電流引外し装置8及び開閉機構7が装着される。この際、過電流引外し装置8は、固定接触子5とネジ8aによって締結される。開閉機構7は可動接触子3とトグルリンク(不図示)を介して連結されている。
図5に示すように、中間ケース14に装着した過電流引外し装置8及び開閉機構7を、カバー12を構成する上部カバー15で覆う。ここで、上部カバー15にはポケット状の収納凹部15aが形成されているとともに、この収納凹部15aの開口部を閉塞する補助カバー16が、上部カバー15の上部に回動自在に装着されている。
【0016】
また、
図6に示すように、上部カバー15の収納凹部15aの開口部から、付属スイッチ10を組み込んで開閉機構7に連結状態とする。
そして、
図7に示すように、補助カバー16を付属スイッチ10の上部位置まで回動することで、付属スイッチ10が補助カバー16で覆われる。
ここで、本発明に係るモールドケースがケース2に対応し、本発明に係る中間ケースの底部が底部14aに対応し、本発明に係る接触子部が可動接触子3及び固定接触子5に対応している。
【0017】
次に、本実施形態の回路遮断器の組立て手順について説明する。
先ず、下部ケース13内に、消弧室9、可動接触子3、可動接触子支持部4及び固定接触子5を組み込む。
次に、下部ケース13上に中間ケース14を装着し、中間ケース14上に過電流引外し装置8及び開閉機構7を組み込む。これにより、中間ケース14の底部14aにより、可動接触子3及び固定接触子5を配置した空間と、過電流引外し装置8及び開閉機構7を配置した空間が別空間となる。
【0018】
次に、中間ケース14上に、補助カバー16が回動自在に装着されている上部カバー15を装着する。
次に、上部カバー15に設けた収納凹部15aに付属スイッチ10を組み込んで開閉機構7に連結状態とし、最後に、補助カバー16を付属スイッチ10の上部位置まで回動する(閉動作を行う)ことで、付属スイッチ10を補助カバー16で覆う。
【0019】
上記構成の回路遮断器1において通電電流が過負荷状態となると、過電流引外し装置8の動作により開閉機構7の鎖錠が外され、可動接触子3は固定接触子5から離間する方向(開極方向)に回動動作を行なう。
また、回路遮断器1に短絡電流などの大電流が流れると、可動接触子3及び固定接触子5を通る電流は互いに逆方向になるため、これらの間に働く電磁反発力により可動接触子3が固定接触子5から離間する方向に回動動作を行なう。
【0020】
これにより、可動接触子3の可動接点3a及び固定接触子5の固定接点5aの間にアークが発生してアーク電圧が高められ、次いで過電流引外し装置8の指令で可動接触子3が開離して短時間で限流遮断が行われる。
可動接点3a及び固定接点5aの間にアークが発生すると、このアークの熱を受けて蒸発した金属(接点材料など)の溶融物がアークガスに随伴して周辺に飛散する。
可動接触子3及び固定接触子5を配置した空間は、過電流引外し装置8及び開閉機構7を配置した空間に対して中間ケース14の底部14aにより遮蔽されているので、可動接触子3及び固定接触子5側の空間で発生したアークガスが過電流引外し装置8及び開閉機構7側の空間に回り込まない。
【0021】
次に、本実施形態の回路遮断器1の効果について説明する。
本実施形態によると、可動接触子3及び固定接触子5を配置した空間と、過電流引外し装置8及び開閉機構7を配置した空間が、中間ケース14により遮蔽されているので、可動接触子3及び固定接触子5側の空間で発生したアークガスが過電流引外し装置8及び開閉機構7側の空間に回り込まない。したがって、回路遮断器1内部の絶縁性能を向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態の回路遮断器1は、下部ケース13上に、過電流引外し装置8及び開閉機構7を組み込む中間ケース14を装着するだけでアークガスの侵入を防いでおり、従来装置のような追加部品を必要としないので、部品点数の減少により製造コストの低減化を図ることができる。
また、可動接触子3及び固定接触子5を配置した空間にはアークガスを遮蔽する隔壁が存在しておらず、中間ケース14で遮蔽された下部ケース13の空間を制約なく使用することができるので、設計自由度を向上させることができる。
【0023】
さらに、回路遮断器1に内装の付属部品である付属スイッチ10を着脱する場合には、回路遮断器1の内部装置(可動接触子3、固定接触子5、開閉機構7、過電流引外し装置8、消弧室9)に指を触れることなく、上部カバー15に回動自在に装着されている補助カバーの開動作を行い(
図5及び
図6の状態)、収納凹部15aに付属スイッチ10を安全に組み込み、或いは、取り外すことができる。
なお、内装の付属装置は、付属スイッチ10に限ることはなく、電圧引外し装置などの装置であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1…回路遮断器、2…ケース、3…可動接触子、3a…可動接点、4…可動接触子支持部、5…固定接触子、5a…固定接点、6…電源側端子、7…開閉機構、8…過電流引外し装置、8a…ネジ、9…消弧室、10…付属スイッチ、11…ケース本体、12…カバー、13…下部ケース、13a…隔壁部、14…中間ケース、14a…底部、15…上部カバー、15a…収納凹部、16…補助カバー、20…負荷側端子板