特許第6191181号(P6191181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191181
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】熱交換器及び吸着式ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20170828BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20170828BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20170828BHJP
   F25B 30/04 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F28D15/04 B
   F28D15/02 102H
   F25B39/00 K
   F25B30/04 510C
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-58831(P2013-58831)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-185779(P2014-185779A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】志満津 孝
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−082116(JP,A)
【文献】 実開昭61−141666(JP,U)
【文献】 特開昭58−018095(JP,A)
【文献】 特開2000−121264(JP,A)
【文献】 特開2010−007905(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0164010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02,15/04
F28B 17/08,30/04,39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の少なくとも一部が、作動流体の蒸発及び凝縮を行うとともに、凝縮した作動流体を保持する保持構造を有する伝熱面である蒸発凝縮室と、
前記保持構造に保持された作動流体との間で熱交換する熱交換流体が流通する流路と、
を備え、
前記保持構造が、毛管現象を利用して前記作動流体を保持する、凹部又は複数の突起物であり、
前記蒸発凝縮室と、前記流路と、が交互に配置されており、
前記蒸発凝縮室は、一端が扁平矩形状の開口端である四角柱状空間であり、
前記四角柱状空間の二対の側壁面のうち面積が広い方の一対の側壁面が、前記保持構造を有する伝熱面である熱交換器。
【請求項2】
前記保持構造に保持される作動流体に働く毛管力が、該作動流体に働く体積力よりも大きい請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが下記式(1)で定義される毛管長κ−1以下の凹部である請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
κ−1 = (σ/ρg)1/2 ・・・ 式(1)
〔式(1)において、κ−1は、毛管長(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、gは重力加速度(m/s)を表す。〕
【請求項4】
前記作動流体が、水、アンモニア、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記作動流体が水であり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが2.48×10−3m以下の凹部であるか、
前記作動流体がアンモニアであり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが0.96×10−3m以下の凹部であるか、
前記作動流体がメタノールであり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが1.47×10−3m以下の凹部であるか、又は、
前記作動流体がエタノールであり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円若しくは内接楕円の短軸長さが1.46×10−3m以下の凹部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記作動流体が水であり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが2.48×10−3m以下の凹部である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが、0.01×10−3m以上である請求項5又は請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記保持構造が凹部であり、下記式(2)で表される関係を満たす請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の熱交換器。
Lc・σcosθ > ρaV ・・・式(2)
〔式(2)において、Lcは、前記凹部の周長さ(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θは、凝縮した作動流体と前記凹部の壁面との接触角(°)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、aは、凝縮した作動流体に働く加速度(m/s)を表し、Vは、前記凹部に保持される作動流体の体積(m)を表す。〕
【請求項9】
前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円における比率〔長軸長さ/短軸長さ〕が1.0以上3.0以下の凹部である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の熱交換器と、前記作動流体の吸着及び脱着を行う吸着材を含む吸着器と、を備え、前記熱交換器と前記吸着器との間で前記作動流体の授受を行う吸着式ヒートポンプ。
【請求項11】
前記熱交換器の前記保持構造が保持できる最大量の液体の質量Aと、前記吸着器の前記吸着材が吸着できる最大量の作動流体を凝縮させたときの質量Bとが、質量A≧質量Bの関係を満たす請求項10に記載の吸着式ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及び吸着式ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な吸着式ヒートポンプの一例として、熱交換流体が流通する管に液体状態の作動流体を吹きかけて蒸発させる蒸発器、及び、熱交換流体が流通する管で気体状態の作動流体を凝縮させて流下させる凝縮器を備えた吸着式冷凍機が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、蒸発器及び凝縮器の機能を兼ね備えた蒸発凝縮器として、一つの容器内で作動流体の蒸発及び凝縮を行う蒸発凝縮器も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、気液分離室の一部に液相出口管に向かう溝付き部を設け、気液分離室で気液二相流を気相と液相とに分離し、液相を上記溝付き部によって液相出口管に導くように構成された気液分離装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−228951号公報
【特許文献2】特開2012−163264公報
【特許文献3】特開2006−170589号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ユニオン産業の吸着式冷凍機 吸着式冷凍機の原理」、[online]、ユニオン産業株式会社、[平成24年11月22日検索]、インターネット<URL:http://www.union-reitouki.com/chiller/principle.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、一つの容器内で作動流体の蒸発及び凝縮を行う蒸発凝縮器(熱交換器)の構成は、作動流体の凝縮時には凝縮した作動流体を重力の作用によって容器内の下部に貯留し、かつ、作動流体の蒸発時には容器の下部に貯留されている作動流体を蒸発させる構成となっている。
しかし、この構成では、作動流体が伝熱面で凝縮した後、凝縮した(即ち、液体状態の)作動流体がこの伝熱面の少なくとも一部から重力の作用によって垂れ落ちるため、作動流体を蒸発させるための有効伝熱面積が小さくなる。即ち、伝熱面のうち、作動流体を凝縮させるための熱伝達は行うが作動流体を蒸発させるための熱伝達は行わない領域が大きくなる。このため、作動流体を蒸発させる際の伝熱面積のロスが大きく、蒸発の効率が低いという問題がある。
また、上記特許文献3に記載の気液分離装置では、気液分離室の一部に溝付き部が設けられてはいるものの、かかる溝付き部は液相の流れを方向付けして排出するための手段であり、壁面に液体を保持する(留める)手段ではない。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、作動流体を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減でき、作動流体を効率よく蒸発させることができる熱交換器、及び、この熱交換器を備え熱の利用効率に優れた吸着式ヒートポンプを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
即ち、第1の発明である熱交換器は、作動流体の蒸発及び凝縮を行うとともに、凝縮した作動流体を保持する保持構造を有する伝熱面と、前記保持構造に保持された作動流体との間で熱交換する熱交換流体が流通する流路と、を備える。
【0008】
第1の発明に係る熱交換器は、作動流体の蒸発及び凝縮を行うための伝熱面に、凝縮した作動流体を液体状態で保持する保持構造を設けたことにより、作動流体を凝縮させた際に伝熱面の少なくとも一部から体積力によって作動流体が脱離する現象が抑制されるので、作動流体を蒸発させるための有効伝熱面積を従来よりも広く確保することができる。
従って、第1の発明に係る熱交換器によれば、作動流体を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減でき、作動流体を効率よく蒸発させることができる。
【0009】
ここで、「体積力」としては、作動流体に働く重力や作動流体に働くことがある慣性力(例えば遠心力)が挙げられる。
また、「体積力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体が脱離する現象」の概念には、重力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体が垂れ落ちる現象が含まれる。
【0010】
また、第1の発明に係る熱交換器によれば、伝熱面に保持構造を設けたことにより、伝熱面の方向(例えば重力方向に対する方向)に依らず、即ち、熱交換器の姿勢に依らず、作動流体の蒸発及び凝縮を行うことができる。
【0011】
第1の発明に係る熱交換器は、壁面の少なくとも一部が前記伝熱面である蒸発凝縮室を備える態様が好ましい。この態様では、有効伝熱面積を大きくできるため、作動流体の蒸発及び凝縮の効率がより向上する。
【0012】
第1の発明に係る熱交換器が上記蒸発凝縮室を備える場合、この蒸発凝縮室と、前記流路と、が交互に配置されている態様が好ましい。この態様では、作動流体と熱交換流体との熱交換の効率がより向上するので、作動流体の蒸発及び凝縮の効率がより向上する。
【0013】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記保持構造は、毛管現象を利用して前記作動流体を保持する態様が好ましい。この態様では、作動流体をより効果的に保持できる。
ここでいう「毛管現象」とは、液体状態の作動流体に対し伝熱面の方向への引きつける力が働く現象を指す。ここでいう「毛管現象」の原理は、一般的な毛管現象(液体中に毛管を立てたときに、毛管内の液面が毛管外の液面よりも上がる現象)の原理と同様である。
【0014】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記保持構造が、凹部又は複数の突起物である態様が好ましい。この態様により、作動流体をより効果的に保持できる。
ここで、凹部又は複数の突起物は、液体状態の作動流体に毛管現象を生じさせる凹部又は複数(好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上)の突起物であることが好ましい。この場合、凹部、又は、突起物同士の間隙が、毛管現象を生じさせる「毛管」に相当する。
上記凹部の数については、毛管現象を生じさせる観点からは特に制限はなく、単数であっても複数であってもよい。但し、より多くの量の作動流体を保持する観点からは、凹部の数は複数であることが好ましい。
【0015】
上記凹部の開口部の形状には特に制限はなく、例えば、多角形状、円形状、楕円形状、長尺形状等が挙げられる。
上記突起物の形状には特に制限はないが、少なくとも一部が、角柱形状、円柱形状、楕円柱形状、角錐形状、円錐形状、又は楕円錐状である形状が挙げられる。
【0016】
なお、本発明における保持構造は、上記凹部や上記複数の突起物以外にも、金属繊維構造体や多孔体など、液体を保持し得るその他の構造を採用することもできる。
【0017】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記保持構造に保持された作動流体に働く毛管力が、該作動流体に働く体積力よりも大きいことが好ましい。これにより、体積力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体が脱離する現象(例えば、重力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体が垂れ落ちる現象)がより抑制されるので、伝熱面で作動流体をより効果的に保持できる。
ここで、体積力の具体例については前述のとおりである。
【0018】
「前記保持構造に保持された作動流体に働く毛管力が、該作動流体に働く体積力よりも大きい」態様の具体例として、前記保持構造が凹部である場合には、下記式(2)で表される関係を満たすことが好ましい。
Lc・σcosθ > ρaV ・・・式(2)
〔式(2)において、Lcは、前記凹部の周長さ(m)を表し、σは、前記凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θは、前記凝縮した作動流体と前記凹部の壁面との接触角(°)を表し、ρは、前記凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、aは、前記凝縮した作動流体に働く加速度(m/s)を表し、Vは、前記凹部に保持される作動流体の体積(m)を表す。〕
【0019】
上記式(2)において、左辺(Lc・σcosθ)は作動流体に働く毛管力を示し、右辺(ρaV)は作動流体に働く体積力を示している。
σ、θ、ρ、及びaが固定された条件下では、式(2)は、実質的にLcとVとの関係、ひいては凹部の周長さと凹部の深さとの関係を示している。
【0020】
上記式(2)において、aで表される加速度としては、重力加速度g、遠心加速度が挙げられ、重力加速度gが好ましい。
【0021】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが下記式(1)で定義される毛管長κ−1以下の凹部であることが好ましい。これにより、毛管現象をより効果的に利用することができ、伝熱面で作動流体をより効果的に保持できる。
κ−1 = (σ/ρg)1/2 ・・・ 式(1)
〔式(1)において、κ−1は、毛管長(m)を表し、σは、前記凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、ρは、前記凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、gは重力加速度(m/s)を表す。〕
【0022】
ここで、開口部の内接円の短軸長さとは、内接円の直径を指す。
また、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さは、開口部が偶数角形状(例えば、矩形状又は六角形状)である場合には、開口部の対辺間距離の最小値に相当する(以下、同様である)。
また、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さは、開口部が長尺形状である場合にはこの長尺形状の幅方向長さに相当する(以下、同様である)。
また、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さは、開口部が円形状である場合にはこの円形状の直径を指し、開口部が楕円形状である場合にはこの楕円形状の短軸長さを指す(以下、同様である)。
また、重力加速度gは9.8(m/s)とする(以下、同様である)。
【0023】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記作動流体には特に制限はないが、例えば、水、アンモニア、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの少なくとも1種は、第1の発明に係る熱交換器を吸着器と組み合わせて吸着式ヒートポンプを構成する場合において、吸着器内の吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等)への吸脱着特性に優れる点で好ましい。
【0024】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記作動流体が水であり、前記熱交換流体の温度が5℃以上90℃以下であり、前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが2.48×10−3m以下の凹部である態様が好ましい。
この態様では、開口部の内接円又は内接楕円の短軸長さが毛管長κ−1よりも小さくなり、保持構造に保持された作動流体(水)に働く毛管力が作動流体(水)に働く重力よりも大きくなるので、毛管現象をより効果的に利用することができ、凹部(保持構造)で作動流体をより効果的に保持できる。
【0025】
また、第1の発明に係る熱交換器において、前記保持構造は、開口部の内接円又は内接楕円における比率〔長軸長さ/短軸長さ〕が1.0以上3.0以下の凹部である態様が好ましい。
この態様では、上記比率〔長軸長さ/短軸長さ〕が3.0を超える場合と比較して、凹部の壁面(底面及び側壁面)と熱交換流体との間での熱伝達の効率が向上するので、作動流体の蒸発及び凝縮をより効率よく行うことができる。例えば、作動流体を蒸発させる際には、作動流体を取り囲む凹部の壁面(底面及び側壁面)全体を通じてこの作動流体を効率よく加熱することができるので、作動流体をより効率よく蒸発させることができる。
【0026】
次に、第2の発明である吸着式ヒートポンプは、第1の発明に係る熱交換器と、前記作動流体の吸着及び脱着を行う吸着材を含む吸着器と、を備え、前記熱交換器と前記吸着器との間で前記作動流体の授受を行う。
【0027】
第2の発明に係る吸着式ヒートポンプでは、作動流体を効率よく蒸発させることができる第1の発明に係る熱交換器を備えるため、熱の利用効率に優れる。
【0028】
また、第2の発明に係る吸着式ヒートポンプにおいて、前記熱交換器の前記保持構造が保持できる最大量の液体の質量Aと、前記吸着器の前記吸着材が吸着できる最大量の作動流体を凝縮させたときの質量を質量Bとが、質量A≧質量Bの関係を満たす態様が好ましい。この態様では、吸着器における吸着材から脱着した作動流体の全て(全質量)を、熱交換器における保持構造で保持することができるので、熱交換器で作動流体を蒸発させる際の効率がより向上し、吸着式ヒートポンプにおける熱の利用効率がより向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、作動流体を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減でき、作動流体を効率よく蒸発させることができる熱交換器、及び、この熱交換器を備え熱の利用効率に優れた吸着式ヒートポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係る熱交換器を示す概略斜視図である。
図2図1のA−A線概略断面図である。
図3図1のB−B線概略断面図である。
図4】第1実施形態において、凝縮した作動流体が凹部に保持されている様子を示す概略断面図である。
図5】第2実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図である。
図6】第3実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図である。
図7】第4実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図である。
図8】第5実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図である。
図9】本実施形態に係る吸着式ヒートポンプの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る熱交換器及び吸着式ヒートポンプについて、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。なお、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符合を付与し、その説明を省略する場合がある。また、図面では、同一形状の部材や空間が多数並んでいる場合には、一部の部材や空間のみに符号を付す場合がある。
【0032】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る熱交換器10の概略斜視図であり、図2は、この熱交換器10を図1のA−A線及び作動流体F1の流通方向に沿って切断したときの概略断面図であり、図3は、熱交換器10を図1のB−B線及び作動流体F1の流通方向に沿って切断したときの概略断面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る熱交換器10は、作動流体F1の蒸発及び凝縮を行う複数の蒸発凝縮室20と、熱交換流体F2が流通する複数の流路30と、を有する熱交換器筐体12を備えている。ここで、蒸発凝縮室20は、蒸発した作動流体F1(蒸気)が流通する蒸気流路としても機能する。
蒸発凝縮室20と流路30とは隔壁を隔てて互いに分離されており、これにより、流路30の一端から供給され他端から排出される熱交換流体F2と、蒸発凝縮室20内の作動流体F1と、の間で熱交換を行えるようになっている。
即ち、蒸発凝縮室20の壁面の一部は、熱交換流体F2と作動流体F1とが熱交換するための伝熱面となっている。詳細には、本実施形態における伝熱面は、蒸発凝縮室20内の二対の側壁面のうち、面積が広い方の一対の側壁面である。また、伝熱面には、後述する複数の凹部24の壁面(側壁面及び底面)も含まれる。
【0034】
この熱交換器10では、蒸発凝縮室20と流路30とが交互に配置されている。これにより、熱交換流体F2と作動流体F1との熱交換を効率よく行えるようになっている。
【0035】
また、この熱交換器10では、蒸発凝縮室20は、一端が扁平矩形状の開口端である四角柱状空間とされている。一方、流路30は、両端が扁平矩形状の開口端である四角柱状空間とされている。そして熱交換器10は、蒸発凝縮室20の開口方向(作動流体F1の流れ方向)と流路30の開口方向(熱交換流体F2の流れ方向)とが側面視で直交する、直交流型の熱交換器として構成されている。
直交流型の熱交換器の構成としては、例えば、特開2012−172902号公報や特開2012−163264公報に記載の熱交換型反応器の構成を参照することができる。
【0036】
また、蒸発凝縮室及び流路の数は、図1に示す数に限定されないことはもちろんであり、蒸発凝縮室内に保持される作動流体F1の体積や、熱交換器10に入出力される熱量等を考慮して適宜設定される。
また、図1では、蒸発凝縮室20間に一つの流路30が配置された構成となっているが、蒸発凝縮室20間に二つ以上の流路30が配置された構成であってもよい。
【0037】
図2及び図3に示すように、蒸発凝縮室20の壁面(伝熱面)には、開口部が矩形状である凹部24(保持構造)が複数設けられている。詳細には、各凹部24は、一端に矩形状の開口部を有する四角柱状空間となっている。
本実施形態では、これらの凹部24によって、凝縮した作動流体F1(液体)が保持される。
図4は、凹部24に凝縮した作動流体F1(液体)が保持されている様子を示す概略断面図であり、図2の一部の拡大に相当する図である。
図4に示すように、本実施形態では、蒸発凝縮室20内で凝縮した作動流体F1は、毛管現象により、凹部24内に液体状態で保持される。
【0038】
また、図3に示すように、この熱交換器10では、複数の凹部24は、伝熱面にマトリックス状に配列されている。この配列により、伝熱面における複数の凹部24の配列密度が高くなっており、伝熱面の単位面積当たりに保持できる液体状態の作動流体F1の量(以下、「伝熱面の単位面積当たりの液保持量」ともいう)が高くなっている。
なお、凹部24の数は、図3に示す数に限定されないことはもちろんであり、蒸発凝縮室内に保持される作動流体F1の体積や、熱交換器10に入出力される熱量等を考慮して適宜設定される。
【0039】
また、熱交換器10における作動流体F1は、熱交換器10内で、蒸発し且つ凝縮する媒体である。作動流体F1としては、蒸発凝縮器において通常用いられる作動流体を用いることができ、例えば、水、アンモニア、炭素数1〜4のアルコール等が挙げられる。
作動流体F1は、単一物質を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
このうち、熱交換器10を吸着器と組み合わせて吸着式ヒートポンプを構成する場合、即ち、熱交換器10を吸着式ヒートポンプ用の熱交換器(蒸発凝縮器)として用いる場合には、吸着器内の吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等)への吸脱着特性に優れる観点から、水、アンモニア、メタノール、エタノールが好適である。
【0040】
また、熱交換器10における熱交換流体F2は、伝熱面を通じて作動流体F1を加熱して蒸発させ、かつ、伝熱面を通じて作動流体F1を冷却して凝縮させるための流体である。
熱交換流体F2としては、エタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱交換流体として通常用いられる流体(好ましくは液体)を用いることができる。熱交換流体F2としては、単一物質を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
熱交換流体F2の温度(即ち、熱交換器10の作動温度)には特に制限はないが、5℃以上90℃以下が好ましく、5℃以上80℃以下がより好ましく、5℃以上70℃以下が更に好ましく、5℃以上50℃以下が特に好ましい。
【0041】
また、熱交換器10における熱交換器筐体12(伝熱面を含む)の材質としては、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、等)等の、熱伝導性が高く、かつ、作動流体F1及び熱交換流体F2に対して耐食性を有する材質が好適である。
なお、凹部24の壁面(側壁面及び底面)には、公知の方法により表面処理(例えば親水化処理)が施されていてもよい。
【0042】
次に、熱交換器10の動作(蒸発及び凝縮)について説明する。
熱交換器10では、作動流体F1の凝縮を行う際には、流路30に供給された熱交換流体F2の熱に基づき、伝熱面及び伝熱面の近傍に存在する気体状態の作動流体F1が冷却されて凝縮する。凝縮した作動流体F1は、凹部24内に液体状態で保持される(図4参照)。
一方、作動流体F1の蒸発を行う際には、流路30に供給された熱交換流体F2の熱に基づき、凹部24内に保持されている液体状態の作動流体F1が加熱されて蒸発する。
【0043】
熱交換器10では、作動流体F1の蒸発及び凝縮を行うための伝熱面に、凝縮した作動流体F1を液体状態で保持する複数の凹部24を設けたことにより、作動流体F1を凝縮させる際にはこれら複数の凹部24で作動流体F1を保持でき、作動流体F1を蒸発させる際にはこれら複数の凹部24によって保持されている液体状態の作動流体F1をそのまま加熱して蒸発させることができる。即ち、この熱交換器10では、作動流体F1を蒸発させるための有効伝熱面積が、従来の蒸発凝縮器(具体的には、作動流体の凝縮後、重力の作用により、伝熱面の少なくとも一部から凝縮した作動流体が垂れ落ちる蒸発凝縮器)と比較して、広く確保される。
このため、熱交換器10によれば、作動流体F1を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減できる(即ち、作動流体の蒸発及び凝縮を行うための有効伝熱面積を高くすることができる)。
よって、熱交換器10によれば、作動流体F1を効率よく蒸発させることができる。
【0044】
また、熱交換器10によれば、伝熱面に保持構造としての凹部24を設けたことにより、作動流体F1を凝縮させた際、伝熱面の方向(例えば重力方向に対する方向)に依らず、即ち、熱交換器の姿勢に依らず、液体状態の作動流体F1を伝熱面で保持できる。このため、熱交換器の姿勢に依らず蒸発及び凝縮を行うことができる。
熱交換器10の姿勢の一例としては、作動流体F1の流通方向(例えば蒸発凝縮室20外から蒸発凝縮室20内に向かう方向)を重力方向とする例が挙げられる。
【0045】
また、熱交換器10では、容器内の下部に貯留された作動流体(液体)全体を加熱してその液面(重力方向についての上面)のみから作動流体の蒸気を得る構成の従来の蒸発凝縮器と比較して、複数の凹部24に保持された作動流体を加熱して各凹部24から作動流体の蒸気を得ることができるので、作動流体F1(液体)の加熱及び蒸発の効率に優れる。
【0046】
また、熱交換器10では、作動流体F1を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減できるので、伝熱面全体の面積を小さくすることができ、熱交換器を小型化することができる。このため、熱交換器の熱容量を低減させることができる。熱交換器の熱容量を低減させることにより、蒸発・凝縮の動作切り替えに伴う顕熱ロスを低減できる。
【0047】
また、凹部24の開口部の幅方向長さW(より好ましくは、幅方向長さW及び長手方向長さLの両方。以下同じ。)は、下記式(1)で定義される毛管長κ−1以下であることが好ましい。これにより、凹部24で作動流体F1をより効果的に保持できる。
なお、凹部24の開口部の幅方向長さWは、凹部24の開口部の内接楕円の短軸長さに相当する。
【0048】
κ−1 = (σ/ρg)1/2 ・・・ 式(1)
〔式(1)において、κ−1は、毛管長(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、gは重力加速度(m/s)を表す。〕
【0049】
例えば、作動流体F1が、水、アンモニア、メタノール、又はエタノールである場合、σ、ρ及びκ−1は、それぞれ下記表1〜表4に示すとおりである。
下記表1〜表4において、「温度」は、液体状態の作動流体の温度を示している。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
上記表1〜表4より、熱交換器10の作動温度(即ち、熱交換流体F2の温度)が5℃以上90℃以下(好ましくは5℃以上80℃以下、より好ましくは5℃以上70℃以下、特に好ましくは5℃以上50℃以下)である場合であって、作動流体F1が水、アンモニア、メタノール、又はエタノールであるときには、凹部24の開口部の幅方向長さWを毛管長κ−1以下とすることが容易であることがわかる。例えば、加工性に優れた幅方向長さWの範囲内(例えば、幅方向長さWが0.01×10−3m以上の範囲内)に、この幅方向長さWを毛管長κ−1以下にできる範囲が存在することがわかる。
【0055】
幅方向長さWの上限値の好ましい範囲は、表1〜表4に示すように、作動流体F1の種類によって異なる。
例えば、熱交換流体F2の温度(熱交換器10の作動温度)が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1が水であるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、2.48×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上2.48×10−3m以下)であることが好ましい(表1参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2が水であるときは、幅方向長さWは、2.55×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上2.55×10−3m以下)であることが好ましい(表1参照)。
また、熱交換流体F2の温度が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1がアンモニアであるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、0.96×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上0.96×10−3m以下)であることが好ましい(表2参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2がアンモニアであるときは、幅方向長さWは、1.26×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.26×10−3m以下)であることが好ましい(表2参照)。
また、熱交換流体F2の温度が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1がメタノールであるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、1.47×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.47×10−3m以下)であることが好ましい(表3参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2がメタノールであるときは、幅方向長さWは、1.53×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.53×10−3m以下)であることが好ましい(表3参照)。
また、熱交換流体F2の温度が5℃以上90℃以下である場合であって、作動流体F1がエタノールであるときは、凹部24の開口部の幅方向長さWは、1.46×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.46×10−3m以下)であることが好ましい(表4参照)。また、熱交換流体F2の温度が5℃以上80℃以下である場合であって、第2流体F2がエタノールであるときは、幅方向長さWは、1.53×10−3m以下(より好ましくは0.01×10−3m以上1.53×10−3m以下)であることが好ましい(表4参照)。
【0056】
また、熱交換器10では、凹部24に保持された作動流体F1に働く毛管力は、この作動流体F1に働く体積力よりも大きいことが好ましい。これにより、体積力によって伝熱面の少なくとも一部から作動流体F1が脱離する現象がより抑制されるので、伝熱面で作動流体F1をより効果的に保持できる。
なお、ここでいう体積力としては、重力以外にも、慣性力(例えば遠心力)等の、伝熱面の少なくとも一部から作動流体F1を脱離させる方向の力も挙げられる。
【0057】
より具体的には、熱交換器10では、下記式(2)で表される関係が満たされることが好ましい。
Lc・σcosθ > ρaV ・・・式(2)
〔式(2)において、Lcは、前記凹部の周長さ(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θは、凝縮した作動流体と前記凹部の壁面との接触角(°)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、aは、凝縮した作動流体に働く加速度(m/s)を表し、Vは、前記凹部に保持される作動流体の体積(m)を表す。〕
【0058】
上記式(2)において、左辺(Lc・σcosθ)は、凹部24に保持された作動流体F1に働く作動流体に働く毛管力を示し、右辺(ρaV)は、凹部24に保持された作動流体F1に働く体積力を示している。
ここでいう体積力が重力である場合、aで表される加速度は、重力加速度gである。
【0059】
上記式(2)において、作動流体F1の種類が特定されれば、σ及びρが特定される。
また、作動流体F1と、凹部の側壁の材質及び凹部の側壁の表面性状と、が特定されれば、θが特定される。
また、熱交換器10に慣性力が加わらない条件下では、aは重力加速度gと定まる。
以上の点を考慮すると、σ、θ、ρ、及びaが特定された条件下では、式(2)は、実質的にはLcとVとの関係、即ち凹部24の周長さ(2×幅方向長さW+2×長手方向長さL)と凹部24の深さDとの関係を示している。
【0060】
この熱交換器10では、凹部24の開口部の形状が矩形状であるが、凹部の開口部の形状は矩形状以外の形状であってもよい。
矩形状以外の形状としては、矩形状以外の四角形状(矩形状以外の平行四辺形状、台形状など)を含む多角形状、円形状、楕円形状、長尺形状等が挙げられる。
開口部の形状としては、伝熱面に凹部を配列させる際の配列密度(即ち、伝熱面の単位面積当たりの液保持量)や加工性等の観点から、平行四辺形状(例えば図3参照)、台形状、又は六角形状(例えば図5参照)が好ましい。
【0061】
また、凹部の開口部の内接円及び内接楕円における比率〔長軸長さ(ここでは長手方向長さL)/短軸長さ(ここでは幅方向長さW)〕は、1.0以上3.0以下であることが好ましい。これにより、作動流体F1を取り囲む凹部24の壁面全体(底面及び4つの側壁面)を通じてこの作動流体F1を効率よく加熱し、蒸発させることができる。
【0062】
第1実施形態に係る熱交換器10は、上述した構成以外のその他の構成を備えていてもよい。
例えば、流路30の両端側には、熱交換流体F2用の配管等との接続部が設けられていてもよい。また、蒸発凝縮室20の開口部側には、他の熱交換器や作動流体F1の蒸気管等との接続部(例えば、後述の接続部16)が設けられていてもよい。また、これらの接続部は、熱交換器筐体12と一体となっていてもよい。
【0063】
次に、本発明における保持構造のバリエーションの実施形態として、第2実施形態〜第5実施形態について説明する。
【0064】
〔第2実施形態〕
図5は、第2実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図5に示すように、第2実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた凹部を、開口部が矩形状である凹部24から、開口部が正六角形状である凹部34に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。詳細には、各凹部34は、一端に正六角形状の開口部を有する正六角柱状空間となっている。
凹部34によっても凹部24と同様にして作動流体F1を保持することができる。このため、第2実施形態に係る熱交換器によれば、第1実施形態に係る熱交換器10と同様の効果が奏される。
【0065】
特に、この第2実施形態の凹部34は、開口部が正六角形状であるため、作動流体F1を取り囲む凹部34の壁面全体(底面及び6つの側壁面)を通じてこの作動流体F1を効率よく加熱し、蒸発させることができる。
また、この第2実施形態では、複数の凹部34の配列は、ハニカム状の配列となっている。これにより、第1実施形態(マトリックス状の配列)と同様に、伝熱面における複数の凹部34の配列密度が高く、即ち、伝熱面の単位面積当たりの液保持量が高くなっている。
【0066】
第2実施形態において、凹部34の開口部の対辺距離Lb(即ち、凹部34の開口部の内接円の直径)の好ましい範囲は、第1実施形態における凹部24の開口部の幅方向長さWの好ましい範囲と同様である。
【0067】
〔第3実施形態〕
図6は、第3実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図6に示すように、第3実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた凹部を、開口部が矩形状である凹部24から、開口部が長尺形状である凹部44に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。
ここで、開口部が長尺形状である凹部とは、溝(groove)状の凹部を指す。
凹部44(溝状の凹部)によっても凹部24と同様にして作動流体F1を保持することができる。このため、第2実施形態に係る熱交換器によれば、第1実施形態に係る熱交換器10と同様の効果が奏される。
特に、凹部44の開口部(長尺形状)の長手方向を、重力方向に対して交差(好ましくは直交)させた場合には、伝熱面の少なくとも一部から作動流体F1が垂れ落ちる現象をより抑制できる。
【0068】
第3実施形態において、凹部44の開口部の幅方向長さLcの好ましい範囲は、第1実施形態における凹部24の開口部の幅方向長さWの好ましい範囲と同様である。
【0069】
〔第4実施形態〕
図7は、第4実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図7に示すように、第3実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた保持構造としての凹部24が、保持構造としての複数の突起物(ピン54)に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。
複数のピン54によっても凹部24と同様にして作動流体F1を保持することができる。このため、第4実施形態に係る熱交換器によれば、第1実施形態に係る熱交換器10と同様の効果が奏される。第4実施形態では、液体状態の作動流体F1が、ピン54同士の間隙に、毛管現象によって保持される。
複数のピン54が設けられた伝熱面の構成については、公知のピンフィンの構成を適宜参照することができる。
【0070】
第4実施形態では、毛管現象をより効果的に生じさせる観点から、ピン54とピン54との最近接距離が、前記式(1)で定義される毛管長κ−1以下であることが好ましい。
ピン54とピン54との最近接距離の好ましい範囲は、第1実施形態における凹部24の開口部の幅方向長さWの好ましい範囲と同様である。
また、ピン54の材質の好ましい範囲は、第1実施形態における熱交換器筐体12の材質の好ましい範囲と同様である。
【0071】
また、第4実施形態において、ピン54の形状としては、各種の柱形状(例えば、円柱形状、楕円柱形状、角柱形状等)が挙げられる。
また、ピン54は、柱形状以外の部分を有していてもよく、例えば、頭部と柱形状の胴部とからなる釘形状等であってもよい。
また、保持構造としての突起物の形状は、柱形状以外にも、錐形状(例えば、角錐形状、円錐形状、楕円錐形状等)や、後述する第5実施形態における十字型突起物のようなその他の形状の突起物が挙げられる。
【0072】
また、第4実施形態でも、第1実施形態と同様に、ピン54とピン54との間隙に保持された作動流体に働く毛管力が、この作動流体に働く体積力(例えば重力)よりも大きいことが好ましい。
この第4実施形態のように、保持構造として複数の突起物を備えた態様の熱交換器でも、毛管力と体積力との関係について、近似的に、第1実施形態で説明した式(2)を適用することができる。
より具体的には、保持構造として複数の突起物を備えた態様の熱交換器では、下記式(3)で表される関係が満たされることが好ましい。
【0073】
Lc・σcosθ > ρaV ・・・式(3)
〔式(3)において、Lcは、4つの突起物から構成される最小面積の格子(図7中の最小面積の格子56)の周長さ(m)を表し、σは、凝縮した作動流体の表面張力係数(N/m)を表し、θは、凝縮した作動流体と突起物の表面との接触角(°)を表し、ρは、凝縮した作動流体の密度(kg/m)を表し、aは、凝縮した作動流体に働く加速度(m/s)を表し、Vは、前記最小面積の格子に保持された作動流体の体積(m)を表す。〕
【0074】
〔第5実施形態〕
図8は、第5実施形態に係る熱交換器の断面を示す概略断面図であり、熱交換器10のB−B線断面図(図3)に対応する図である。
図8に示すように、第3実施形態に係る熱交換器の構成は、伝熱面に設けられた保持構造としての凹部24を、保持構造としての複数の十字型突起物64に変更したこと以外は第1実施形態に係る熱交換器10の構成と基本的に同様であり、好ましい態様や変形例も同様である。
ここで、複数の十字型突起物64全体の形状は、第1の実施形態に係る熱交換器10において、複数の凹部24を確定する隔壁の一部(詳細には、凹部24の四辺に相当する位置)に切れ込みが設けられた形状に相当する。
この第5実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が奏され、しかも、切れ込みを設けた分、熱交換器の軽量化が図られる。
【0075】
以上、本発明の熱交換器の第1〜第5の実施形態について説明したが、本発明の熱交換器はこれらの実施形態に限定されないことはもちろんである。
例えば第1〜第5の実施形態以外にも、伝熱面に、保持構造として金属繊維構造体(ナスロン(登録商標)など)や多孔体などを貼り付けた形態も挙げられる。
【0076】
また、第1〜第5実施形態では、壁面の少なくとも一部が上述の伝熱面である蒸発凝縮室を備えているが、本発明の熱交換器は、必ずしも蒸発凝縮室を備えている必要はない。 例えば、外壁面の少なくとも一部が上述の伝熱面であり、かつ、内部に熱交換流体が流通する流路を有する中空部材を備えた形態であってもよい。かかる中空部材の形状には特に制限はなく、例えば、板状、柱状等とすることができる。
【0077】
また、本発明の熱交換器は、必要に応じその他の熱交換器と組み合わせ、通常の用途に用いることができる。本発明の熱交換器とその他の熱交換器とを組み合わせた好適な例として、本発明の熱交換器と、吸着器と、を組み合わせた吸着式ヒートポンプが挙げられる。
以下、吸着式ヒートポンプについて説明する。
【0078】
〔吸着式ヒートポンプ〕
本発明の吸着式ヒートポンプは、本発明の熱交換器と、前記作動流体の吸着及び脱着を行う吸着材を含む吸着器と、を備え、前記熱交換器と前記吸着器との間で前記作動流体の授受を行うことにより作動する。
吸着器としては公知の吸着器を用いることができるが、例えば、特開2012−172902号公報や特開2012−163264公報に記載の熱交換型反応器の構成などを適宜参照することができる。
【0079】
図9は、本発明の実施形態に係る吸着式ヒートポンプ100の概略断面図である。
図9に示すように、吸着式ヒートポンプ100は、上記第1実施形態に係る熱交換器10、作動流体F1の吸着及び脱着を行う吸着材122を含む吸着器110、並びに、熱交換器10と吸着器110とを接続する接続部16及び接続部116を備えて構成されている。
【0080】
この実施形態では、吸着器110も、熱交換器10と同様の直交流型の熱交換器となっており、熱交換流体が流通する流路130及び吸着材122を含む吸着室120を備えている。流路130及び吸着室120は、交互に配置されている。
吸着器110の吸着室120の構成は、熱交換器10の蒸発凝縮室20において、伝熱面に設けられた保持構造(凹部24)が、伝熱面に設けられた吸着材122に変更されたこと以外は熱交換器10の蒸発凝縮室20の構成と基本的に同様である。
【0081】
吸着式ヒートポンプ100では、熱交換器10の蒸発凝縮室20の開口部と、吸着器110の吸着室120の開口部と、が対向しており、かつ、熱交換器10と吸着器110とが接続部16及び116により接続されている。これにより、熱交換器10の蒸発凝縮室20と吸着器110の吸着室120とが気密状態で連通されている。かかる構成により、熱交換器10の蒸発凝縮室20と吸着器110の吸着室120との間で、作動流体F1を流通できるようになっている。
【0082】
吸着材122の具体例としては、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等が挙げられる。
このうち、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲルが好ましく、活性炭、ゼオライト、シリカゲルが更に好ましく、ゼオライト、シリカゲルが特に好ましい。
作動流体F1として水を用いる場合には、吸着材としては、ゼオライト、シリカゲルが特に好ましく、ゼオライトが最も好ましい。
吸着材122は、吸着材(及び必要に応じバインダー等のその他の成分)を含む吸着材層の形態となっていてもよい。
【0083】
吸着器110の流路130を流通する熱交換流体は、流路130と吸着室を隔離する隔壁を通じ、吸着室内の吸着材との間で熱交換を行うための流体である。この熱交換流体の具体例については、前述の熱交換流体F2の具体例と同様である。
また、熱交換器10と吸着器110とを接続する接続部16及び接続部116としては、それぞれ、フランジ部材等の熱交換器10と吸着器110とを気密状態で接続し得る部材を用いることができる。また、熱交換器10及び接続部16、吸着器110及び接続部116、並びに、接続部16及び接続部116のうちの少なくとも一つは、一体に成形されていてもよい。
【0084】
この吸着式ヒートポンプ100の姿勢の一例としては、熱交換器10を重力方向側に、吸着器110を重力方向とは反対側に、それぞれ配置させた姿勢が挙げられる。
しかし、熱交換器10は保持構造としての凹部24を備えており、姿勢に依らず、液体状態の作動流体F1を保持できるものである。
従って、この吸着式ヒートポンプ100の姿勢は上記の一例以外にも、吸着器110を重力方向側に、熱交換器10を重力方向とは反対側に、それぞれ配置させた姿勢、作動流体F1の流通方向が重力方向に対し交差(例えば直交)する姿勢等、その他の姿勢であってもよい。
【0085】
次に、吸着式ヒートポンプ100の動作(吸着モード及び脱着モード)の一例について説明する。
【0086】
(脱着モード)
脱着モードでは、吸着器110の流路130に供給された熱交換流体の熱により、吸着室120内の吸着材122(例えばゼオライト)が加熱され、吸着材122から作動流体F1(例えば水)が脱着する。吸着材122から脱着された気体状態の作動流体F1は、熱交換器10の蒸発凝縮室20に供給され、蒸発凝縮室20内で凝縮する。凝縮した作動流体F1は、蒸発凝縮室20の壁面(伝熱面)に設けられた凹部に、毛管現象によって保持される。
【0087】
(吸着モード)
吸着モードでは、蒸発凝縮室20内の凹部に保持された液体状態の作動流体F1が、流路30を流通する熱交換流体F2の熱によって加熱されて蒸発する。蒸発した作動流体F1は蒸発凝縮室20から放出され、吸着器110の吸着室120に供給され、吸着室120内の吸着材122に吸着する。
【0088】
吸着式ヒートポンプ100では、上述の吸着モード及び脱着モードにより、熱交換器10−吸着器110間で作動流体F1の授受が行われ、これにより、両者の間で熱の授受が行われる。
その他、吸着式ヒートポンプの作動原理の詳細については、例えば、「伝熱 Journal of the Heat Transfer Society of Japan Vol.45,No.192」(社団法人日本伝熱学会、2006年7月)の第20ページ〜第21ページを参照することができる。
【0089】
この実施形態に係る吸着式ヒートポンプ100は、熱交換器10を備えたことにより、吸着モード時において、蒸発凝縮室20内で作動流体F1が効率よく蒸発するので、熱の利用効率に優れる。
【0090】
吸着式ヒートポンプ100は、吸着器110から放出される作動流体F1の全質量を、熱交換器10に設けられた全ての凹部24で保持できるように構成されることが好ましい。
このために、熱交換器10に設けられた全ての凹部24が保持できる最大量の液体の質量Aと、吸着器110内の吸着材122が吸着できる最大量の作動流体F1を凝縮させたときの質量Bとが、質量A≧質量Bの関係を満たすことが好ましい。
これにより、脱着モード時に、吸着材122から脱着した作動流体F1の全て(全質量)を熱交換器10における保持構造(凹部24)で保持できるので、吸着モード時に熱交換器10で作動流体F1を蒸発させる際の効率が向上する(即ち、作動流体F1を蒸発させる際の顕熱ロスが低減される)。従って、熱の利用効率がより向上する。
【0091】
(吸着式ヒートポンプ100の具体例)
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプ100の具体例(試算例)について説明する。
この具体例では、複数の凹部24が全て同じサイズであり、かつ、複数の凹部24が縦方向及び横方向とも同じ間隔(以下、この間隔をWc(m)とする)で、マトリクス状に配列されているものとする。また、凹部24の幅方向長さをW(m)、凹部24の長手方向長さをL(m)、凹部24の深さをD(m)とする。
この場合、凹部24ひとつの容積はW×L×D(m)であり、伝熱面の単位面積当たりの容積は(W×L×D)/((W+Wc)×(L+Wc))(m/m)となる。
【0092】
次に、吸着器110から放出される(即ち、吸着器110の吸着材122から脱着する)最大量の作動流体F1が凝縮した時の質量をM(kg)とし、熱交換器10の伝熱面の単位面積当たりの液保持量をV(m/m)とし、熱交換器10の伝熱面の全面積をS(m)とすると、前述の質量A≧質量Bの関係及び作動流体F1の密度ρ(kg/m)より、以下の式(a)の関係が導かれる。
【0093】
M(kg) ≦ ρVS(kg) = ρ(W×L×D)/((W+Wc)×(L+Wc))×S(kg) … 式(a)
【0094】
また、この具体例では、作動流体F1としては水を用い、かつ、作動温度(熱交換流体F2の温度)は26.85℃とする。
この条件では、表1より、密度ρは997(kg/m)であり、表面張力係数σは72×10−3(N/m)であり、毛管長κ−1は2.71×10−3(m)である。
【0095】
よって、重力より毛管力が十分大きくなるように(即ち、幅方向長さW及び長手方向長さLが毛管長κ−1以下となるように)、この具体例では、W=1.00×10−3(m)、L=2.00×10−3(m)、Wc=1.00×10−3(m)と設定する。
また、M=2.00×10−3(kg)、S=4.00×10−2(m)と設定すると、凹部24の深さDの好ましい範囲として、上記式(a)を変形することにより、以下の範囲が導かれる。
【0096】
D(m) ≧ M×((W+Wc)×(L+Wc))/(ρ(W×L)×S) = 2.00×10−3×((1.00×10−3+1.00×10−3)×(2.00×10−3+1.00×10−3))/(997×1.00×10−3×2.00×10−3×4.00×10−2) = 0.15×10−3(m)
【0097】
以上のDの好ましい範囲より、本具体例では、D=0.20×10−3(m)と設定する。
【0098】
以上の前提条件の下、以下、ひとつの凹部24に保持された作動流体F1(水)に働く、毛管力及び重力について計算する。
【0099】
前述の式(2)における接触角θを60°とすると、毛管力(前述の式(2)の左辺;Lc・σcosθ)は、以下のように計算される。
Lc・σcosθ = (2×W+2×L)・σcosθ = (2×1.00×10−3+2×2.00×10−3)×72×10−3×cos60° = 2.16×10−4(N)
【0100】
一方、重力(前述の式(2)の右辺;ρaV(ここではρgV))は、以下のように計算される。なお、前述のとおり、重力加速度gは9.8(m/s)とする。
ρgV = ρg(W×L×D) = 997×9.8×(1.00×10−3×2.00×10−3×0.20×10−3) = 0.04×10−4(N)
【0101】
以上により、この具体例(試算例)では、保持構造としての凹部に保持された作動流体に働く毛管力が、この作動流体に働く重力よりも十分に大きいことがわかる。従って、凹部で作動流体(水)を効果的に保持できるので、作動流体(水)を蒸発させる際の伝熱面積のロスを低減でき、作動流体(水)を効率よく蒸発させることができる。
【0102】
以上の吸着式ヒートポンプ100では、第1の実施形態に係る熱交換器10を用いたが、この熱交換器10を、熱交換器10以外の本発明の熱交換器(例えば、第2〜第5の実施形態に係る熱交換器)に変更した吸着式ヒートポンプによっても、吸着式ヒートポンプ100と同様の効果が得られることはもちろんである。
【0103】
また、この吸着式ヒートポンプ100(又はその変形例)を2つ含んだ吸着式ヒートポンプシステムを構成し、一方で脱着モードを実行し他方で吸着モードを実行する過程と、一方で吸着モードを実行し他方で脱着モードを実行する過程と、を交互に繰り返すことで、2つのモードを同時に実行することも可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 熱交換器
12 熱交換器筐体
16、116 接続部
20 蒸発凝縮室
24、34、44 凹部
30、130 流路
54 ピン(突起物)
64 十字型突起物
56 最小面積の格子
100 吸着式ヒートポンプ
110 吸着器
120 吸着室
F1 作動流体
F2 熱交換流体
W 幅方向長さ
L 長手方向長さ
Lb 対辺距離
Lc 幅方向長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9