【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0021】
実施例および比較例で得られた潤滑油用エステル基油の各種分析は、以下の方法に従って実施した。
酸価:JOCS(日本油化学会) 2.3.1に準拠して測定した。
色相:JOCS(日本油化学会) 2.2. 1.3に準拠し、ガードナー(G)比色管にて測定した。
動粘度:JIS K−2283に準拠して測定した。
引火点:JIS K−2265に準拠し、クリーブランド式オープンカップ法にて測定した。
流動点:JIS K−2269に準拠して測定した。
なお、粘度指数は、40℃における動粘度と100℃における動粘度から算出される。
【0022】
飽和分岐アルコールのアルキル鎖における分岐数は、以下のように測定して算出した。
日本電子社製AL−400(400MHz)を用い、約50mgの試料を0.6mLの重クロロホルムに溶解し、各アルコールの
1H−NMRを測定した。
得られたNMRスペクトルにおけるアルコールの全てのアルキル鎖の水素を示す化学シフトの積分値を27とし、一級炭素の水素を示す化学シフトδ=0.88ppmの積分値を3で除した値をそのアルコールにおけるメチル基の数とした。
得られたメチル基の数から主鎖構造の末端メチル基である1を引いた値をそのアルコールの分岐数とした。
【0023】
〔実施例1〕
温度計、窒素導入管、攪拌機、ジムロート冷却管および容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、オレイン酸(日油(株)製、NAA−34)を920gと、分岐数が1.9である分岐トリデシルアルコールを688g仕込んだ(カルボン酸/アルコールの当量比=0.97)。油水分離器に溜まる反応水を抜き取りながら、反応液を220℃まで加熱して反応液の酸価を1時間ごとに測定し、1時間あたりの酸価の下がり幅が0.5mgKOH/g以下となるまで反応を行なった。
その後、反応液を220℃で30Torrまで減圧し、アルコールと揮発性の反応副生成物を除去した。
【0024】
85℃まで反応器を冷却した後、酸価から算出される水酸化ナトリウム量の1.5当量をイオン交換水で希釈して10質量%の水溶液を調製し、それを反応液に加えて1時間撹拌した。撹拌を止めた後、30分静置して下層に分離した水層を除去した。
次に、反応液に対して20質量%に相当する量のイオン交換水を加えて85℃で10分撹拌して、15分静置し、分離した水層を除去する操作を5回繰り返した。その後、100℃、30Torrで1時間撹拌することで脱水した。
最後に、反応液に対して2質量%に相当する量の活性白土を加え、80℃、30Torrの条件で1時間撹拌し、ろ過して吸着剤を除去することで所望のエステルを得た。
【0025】
〔
参考例1〕
分岐トリデシルアルコールとして分岐数が2.9のものを用いた以外は、実施例1と同じ方法でエステルを調製した。
【0026】
〔比較例1〕
分岐トリデシルアルコールに代えて2−エチルヘキサノール(分岐数=1.0)を用いた以外は、実施例1と同じ方法でエステルを調製した。
【0027】
〔比較例2〕
分岐トリデシルアルコールに代えて2−エチルヘキサノール(分岐数=1.0)を用い、オレイン酸に代えてステアリン酸(日油(株)製、ステアリン酸さくら)を用いた以外は、実施例1と同じ方法でエステルを調製した。
【0028】
〔比較例3〕
分岐トリデシルアルコールに代えてノルマルデカノールを用いた以外は、実施例1と同じ方法でエステルを調製した。
【0029】
〔比較例4〕
分岐トリデシルアルコールに代えて2−ヘキシルデカノール(分岐数=0.9)を用いた以外は、実施例1と同じ方法でエステルを調製した。
【0030】
〔比較例5〕
比較例1と比較例4で得られた各エステルを、質量比30対70(比較例1対比較例4)の比率で配合した。
【0031】
上記実施例1、
参考例1および比較例1〜5で得られたエステルの物性値を表1にまとめた。
なお、表1中、比較例5におけるカルボン酸は比較例1と比較例4で用いたカルボン酸を表し、アルコールは比較例1と比較例4で用いたアルコールを表し、アルコールの分岐数は比較例1と比較例4で用いたアルコールの分岐数の加重平均値である。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示すように、実施例1および
参考例1のエステルは、40℃の動粘度が15mm
2/s以下であり、低粘度である。また引火点が250℃以上であり、消防法上での指定可燃物に分類されるものである。さらに、流動点が−30℃程度であり、低温環境下においても固化し難く、加熱用の設備を設置しなくても使用することができるものである。
【0034】
一方、比較例1〜5では、実施例1および
参考例1のエステルと異なり、炭素数13の飽和分岐アルコール以外のアルコールやオレイン酸以外のカルボン酸を用いて反応させているので、動粘度、引火点、流動点の全てが良好なエステルは得られなかった。