(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力部材と、該入力部材から入力される回転が伝達されるプライマリプーリと、出力部材と、該出力部材に連結するセカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻掛けられるベルトと、を備え、該ベルトに伝達トルクに応じた挟持圧を付与した状態で、前記プライマリプーリ及びセカンダリプーリと前記ベルトとの接触位置を変更して入力される回転を無段に変速するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
前記挟持圧に対応する油圧を調圧する挟持圧制御部と、
各種センサからの信号に基づき演算して挟持圧を設定して、前記挟持圧制御部に制御信号を出力する挟持圧設定手段と、を備え、
前記挟持圧設定手段は、前記ベルトが前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリの少なくとも一方との間でスリップする可能性のある状況を判断するベルトスリップ判断手段を有し、該ベルトスリップ判断手段が、ベルトスリップの可能性のある状況を判断した場合、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力し、
前記ベルト式無段変速機は、エンジンを駆動源とする車両に搭載され、前記エンジンの動力を前記ベルト式無段変速機を介して車輪に伝達し、
フットブレーキの踏圧操作により前記ベルトスリップ判断手段を機能し、
前記ベルトスリップ判断手段が、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力している状態で、アクセル開度が所定開度以上になり、又は車速が所定車速以上であると、前記ベルトスリップ判断手段を解除して、前記挟持圧設定手段は、伝達トルクに応じた挟持圧になるように制御信号を出力してなる、
ことを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
入力部材と、該入力部材から入力される回転が伝達されるプライマリプーリと、出力部材と、該出力部材に連結するセカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻掛けられるベルトと、を備え、該ベルトに伝達トルクに応じた挟持圧を付与した状態で、前記プライマリプーリ及びセカンダリプーリと前記ベルトとの接触位置を変更して入力される回転を無段に変速するベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
前記挟持圧に対応する油圧を調圧する挟持圧制御部と、
各種センサからの信号に基づき演算して挟持圧を設定して、前記挟持圧制御部に制御信号を出力する挟持圧設定手段と、を備え、
前記挟持圧設定手段は、前記ベルトのすべりを判断するベルトスリップ判断手段を有し、該ベルトスリップ判断手段は、前記ベルトのすべりを判断した際、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力し、
前記ベルト式無段変速機は、エンジンを駆動源とする車両に搭載され、前記エンジンの動力を前記ベルト式無段変速機を介して車輪に伝達し、
フットブレーキの踏圧操作により前記ベルトスリップ判断手段を機能し、
前記ベルトスリップ判断手段が、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力している状態で、アクセル開度が所定開度以上になり、又は車速が所定車速以上であると、前記ベルトスリップ判断手段を解除して、前記挟持圧設定手段は、伝達トルクに応じた挟持圧になるように制御信号を出力してなる、
ことを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベルト式無段変速機には、ベルトがプライマリプーリ及びセカンダリプーリにスリップを生じないように摩擦接触するため、伝達トルクに応じた挟持力を付与すると共に、接触位置を変更して変速操作する油圧制御装置が用いられている。具体的には、セカンダリプーリの可動シーブを押圧する油圧アクチュエータにベルト挟圧力用制御油圧(ベルト挟持圧)が供給され、プライマリプーリの可動シーブを押圧する油圧アクチュエータに変速操作用制御油圧(レンジ圧)が供給される。
【0003】
ベルト式無段変速機は、その入力トルク及び変速比等により演算される制御指令信号により制御されるリニアソレノイドバルブ等により上記ベルト挟持圧が調圧され、またスロットル開度による要求トルク及び車速(出力軸回転速度)に基づき目標変速比が演算され、目標入力軸回転速度と実入力軸回転速度とが一致するようにフィードバック信号がアップシフトソレノイドバルブ又はダウンシフトソレノイドバルブに出力され、これによりレシオコントロールバルブから上記レンジ圧が調圧される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、フットブレーキの踏圧作動等により、前記ベルト式無段変速機を減速操作する場合、変速加速度(減速度)に応じて上記ベルト挟持圧制御指令値が増加し、ベルトがスリップしないように制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したベルト式無段変速機にあっては、常時、トルク容量が不足してベルトスリップを生じないように、ベルト挟圧力を制御し、ベルトスリップによるプーリ及びベルトがダメージを受けることを防止しているが、高いベルト挟持圧状態でベルトトルク容量が不足し、ベルトが滑った場合、プーリ及びベルトが大きなダメージを受けてしまう。
【0007】
特に、フットブレーキを強く作用した急制動時又は大きな段差を乗越える時等、高いベルト挟持圧状態で想定以上の大きなイナーシャトルクが作用すると、ベルトトルク容量が不足して、ベルトスリップを生じる虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、ベルトスリップの発生若しくはその可能性がある状況では、ベルト挟持圧を減少し、もって上述した課題を解消したベルト式無段変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例えば
図1〜
図4を参照して、本発明は、入力部材(22)と、該入力部材から入力される回転が伝達されるプライマリプーリ(26)と、出力部材(27)と、該出力部材に連結するセカンダリプーリ(31)と、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻掛けられるベルト(32)と、を備え、該ベルトに伝達トルクに応じた挟持圧を付与した状態で、前記プライマリプーリ(26)及びセカンダリプーリ(31)と前記ベルト(32)との接触位置を変更して入力される回転を無段に変速するベルト式無段変速機(2)の油圧制御装置(U)において、
前記挟持圧に対応する油圧を調圧する挟持圧制御部(82)と、
各種センサからの信号に基づき演算して挟持圧を設定して、前記挟持圧制御部(82)に制御信号を出力する挟持圧設定手段(86)と、を備え、
前記挟持圧設定手段(86)は、前記ベルト(32)が前記プライマリプーリ(26)及び前記セカンダリプーリ(31)の少なくとも一方との間でスリップする可能性のある状況を判断するベルトスリップ判断手段(86a)を有し、該ベルトスリップ判断手段が、ベルトスリップの可能性のある状況を判断した場合、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力してなる、
ことを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置にある。
【0010】
前記出力部材の回転数を検出する出力部材回転数センサ(74)を備え、
前記ベルトスリップ判断手段(86a)は、前記出力部材回転数センサの検出による前記出力部材回転数に基づき減速度を演算し、該減速度が所定しきい値以上の急減速レベルである場合(S2;YES)、前記ベルトスリップの可能性のある状態であると判断してなる。
【0011】
例えば
図1,
図2,
図6,
図7を参照して、本発明は、入力部材(22)と、該入力部材から入力される回転が伝達されるプライマリプーリ(26)と、出力部材(27)と、該出力部材に連結するセカンダリプーリ(31)と、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻掛けられるベルト(32)と、を備え、該ベルトに伝達トルクに応じた挟持圧を付与した状態で、前記プライマリプーリ(26)及びセカンダリプーリ(31)と前記ベルト(32)との接触位置を変更して入力される回転を無段に変速するベルト式無段変速機(2)の油圧制御装置(U)において、
前記挟持圧に対応する油圧を調圧する挟持圧制御部(82)と、
各種センサからの信号に基づき演算して挟持圧を設定して、前記挟持圧制御部に制御信号を出力する挟持圧設定手段(86)と、を備え、
前記挟持圧設定手段(86)は、前記ベルト(32)のすべりを判断するベルトスリップ判断手段(86a)を有し、該ベルトスリップ判断手段は、前記ベルトのすべりを判断した際、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力してなる、
ことを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置にある。
【0012】
前記入力部材の回転数を検出する入力部材回転数センサ(73)と、
前記出力部材の回転数を検出する出力部材回転数センサ(74)と、を備え、
前記ベルトスリップ判断手段(86a)は、前記入力部材回転数センサ(73)により検出された入力部材回転数と前記出力部材回転数センサ(74)により検出された出力部材回転数とに基づく変速比と、演算された目標変速比と、により前記ベルトのすべりを判断してなる。
【0013】
例えば
図4,
図7を参照して、前記ベルト式無段変速機(2)は、エンジン(8)を駆動源とする車両に搭載され、前記エンジンの動力を前記ベルト式無段変速機を介して車輪に伝達し、
フットブレーキの踏圧操作により前記ベルトスリップ判断手段(86a)を機能し、
前記ベルトスリップ判断手段が、前記挟持圧を解放方向に減圧する制御信号を出力している状態で、アクセル開度が所定開度以上になり(S5)、又は車速が所定車速以上であると(S8)、前記ベルトスリップ判断手段(86a)を解除して、前記挟持圧設定手段(86)は、伝達トルクに応じた挟持圧になるように制御信号を出力してなる(S7)。
【0014】
上記カッコ内の符号は、図面に対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、ベルトがスリップする可能性のある状況を判断して、ベルトに作用する挟持圧を解放方向に減圧するので、ベルトスリップ発生の可能性がある場合、ベルト挟持を解放して、未然に高い挟持圧におけるベルトスリップの発生を回避し、プライマリプーリ、セカンダリプーリ及びベルト等のハードの損傷を低減することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、出力部材回転数(車速)の減速度によりベルトスリップ発生の可能性を容易に判断することができ、コストの増加を伴うことなく、ベルト式無段変速機の損傷を低減して寿命の長期化を図ることができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、ベルトのすべりを判断して、上記挟持圧を解放方向に減圧するので、高い挟持圧が作用している状態でベルトがスリップし続けることを回避し、上記ハードの損傷を低減することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、入力部材回転数及び出力部材回転数による実変速比と、目標変速比との差に基づき、特別なセンサの設置等のコストアップを伴うことなくベルトのすべりを判断することができる。
【0019】
請求項
1又は3に係る本発明によると、フットブレーキの踏圧操作によりベルトスリップ判断手段を機能して、高い挟持圧作用下でのベルトのスリップを回避し得るものでありながら、運転者がアクセル操作して加速したり、車両が走行状態を維持した場合、上記ベルトスリップ判断手段を解除して、変速比等に基づく伝達トルクに対応した挟持圧に昇圧して、加速又は車両停止による次回の発進に備えてベルト式無段変速機をベルトスリップが生じない適正な挟持圧状態に戻すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明を適用し得る車両用自動変速機1を示す図であり、該車両用自動変速機1は、ベルト式無段変速機(CVT)2、前後進切換え装置3、ロックアップクラッチ5を内蔵したトルクコンバータ6、カウンタシャフト7、及びディファレンシャル装置9を備えており、これら装置が一体化された分割ケース(不図示)に収納されている。
【0022】
トルクコンバータ6は、エンジン8の出力軸10にフロントカバー17を介して連結されているポンプインペラ11、中間軸12に連結されているタービンランナ13、及びワンウェイクラッチ15を介して支持されているステータ16を有しており、更に中間軸12とフロントカバー17との間にロックアップクラッチ5が介在している。なお、同図中の符号20は、ロックアップクラッチプレートと中間軸12との間に介在するダンパスプリング、21は、ポンプインペラ11に連結して駆動されるオイルポンプ(油圧発生源)である。
【0023】
CVT2は、入力部材であるプライマリシャフト(入力軸)22に固定された固定シーブ23及びこのプライマリシャフト22に摺動自在かつ回転方向一体に支持されている可動シーブ25からなるプライマリプーリ26と、出力部材であるセカンダリシャフト(出力軸)27に固定されている固定シーブ29及びこのセカンダリシャフト27に摺動自在及び回転方向一体に支持されている可動シーブ30からなるセカンダリプーリ31と、これらプライマリプーリ26及びセカンダリプーリ31に巻掛けられた金属製のベルト32と、を備える。
【0024】
更に、プライマリ側の可動シーブ25の背面には油圧アクチュエータ33が配置されており、またセカンダリ側の可動シーブ30の背面には油圧アクチュエータ35が配置されている。プライマリ側油圧アクチュエータ33は、プライマリシャフト22に固定されている反力支持部材37及び可動シーブ25の背面に固定されている筒状部材39を有しており、これら反力支持部材37と筒状部材39とにより油圧室41を構成している。
【0025】
一方、セカンダリ側油圧アクチュエータ35は、セカンダリシャフト27に固定されている反力支持部材43及び可動シーブ30の背面に固定されている筒状部材45を有しており、これら反力支持部材43と筒状部材45とにより油圧室46を構成すると共に、可動シーブ30と反力支持部材43との間にプリロード用のスプリング47が縮設されている。
【0026】
前後進切換え装置3は、ダブルピニオンプラネタリギヤ50、リバースブレーキ(後進用ブレーキ)B
1及び入力クラッチ(ダイレクトクラッチ又は走行クラッチ)C
1を有している。前記ダブルピニオンプラネタリギヤ50は、そのサンギヤSが中間軸12に連結されており、第1,第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側の固定シーブ23に連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となる前記リバースブレーキB
1に連結されており、またキャリヤCRとリングギヤRとの間に前進用摩擦係合要素となる入力クラッチC
1が介在している。
【0027】
カウンタシャフト7には、大ギヤ51及び小ギヤ52が固定されており、大ギヤ51はセカンダリシャフト27に固定されたギヤ53に噛合し、かつ小ギヤ52はディファレンシャル装置9のギヤ55に噛合している。ディファレンシャル装置9は、前記ギヤ55を有するデフケース66に支持されたデフギヤ56の回転を、左右サイドギヤ57,59を介して左右車軸60,61に伝達する。
【0028】
図2は、前記車両用自動変速機1及びエンジン8を統合して制御する制御系(油圧制御装置)Uを示すブロック図である。該制御系は、電子制御装置70を備えており、該電子制御装置は、例えばCPU,RAM,ROM,入出力インター等を有するマイクロコンピュータからなる。該電子制御装置70には、各種センサ及びスイッチからの信号が入力されており、例えばエンジン回転数センサ71、タービン回転数センサ72、入力軸(入力部材)回転数センサ73、出力軸(出力部材)回転数センサ74、スロットルセンサ75、アクセル開度センサ76、フットブレーキスイッチ77及びレバーポジションセンサ79等からの信号が入力される。
【0029】
上記電子制御装置70は、上記各センサからの信号に基づき、運転者の要求トルク、車両状況及び道路状況を判断して演算し、スロットルアクチュエータ、燃料噴射装置及び点火装置等のエンジン操作部80及び無段変速機2の油圧装置(油圧回路)81に出力する。油圧装置81は、スロットルセンサ75等により負荷(伝達)トルクに応じたライン圧を出力するプライマリレギュレータバルブ並びに該ライン圧を調圧してベルト挟持圧(挟圧力)を発生するリニアソレノイドバルブ等の挟持圧制御部82、ベルト式無段変速装置2の変速比を制御するレシオコントロールバルブ及びその操作用のアップシフトソレノイドバルブ及びダウンシフトソレノイドバルブ等の変速制御部83、更に前記レバーポジションセンサ79からの信号に基づき操作されるマニュアルバルブ等の係合制御部85を有する。
【0030】
前記挟持圧制御部82からのベルト挟持圧は、前記セカンダリ側油圧アクチュエータ35に供給され、前記変速制御部83からのレンジ圧は、前記プライマリ側油圧アクチュエータ33に供給され、前記係合制御部85からの油圧は、前記入力クラッチC
1用の油圧サーボC1又は前記リバースブレーキB
1用の油圧サーボB1に供給される。
【0031】
前記電子制御装置70は、(ベルト)挟持圧設定手段86、変速設定手段87及びシフトポジション判定手段89等を有する。上記変速設定手段87は、アクセル開度をパラメータとして車速と無段変速機の目標入力回転数との関係において、車両の運転性と燃費性とを両立させた変速マップが予め記憶されており、車速センサ74からの実際の車速及びアクセル開度センサ76からの車両状態(要求トルク)に基づいて入力軸22の目標入力回転数を設定する。そして、該目標入力回転数と入力軸回転数センサ73からの実入力回転数とが一致するように、それらの回転差に応じた変速制御信号が上記油圧装置81の変速制御部83に出力される。
【0032】
前記ベルト挟持圧設定手段86は、アクセル開度、変速比、入力トルクをパラメータとして適正なベルト挟持(挟圧)力が算出されており、アクセル開度センサ76と入力軸回転数センサ73及び出力軸回転数(車速)センサ74により算出される実変速比とにより、ベルト挟持圧を設定する。そして、該ベルト挟持圧制御信号が前記油圧装置81の挟持圧制御部82に出力される。また、シフトポジション判定手段89は、レバーポジションセンサ79からの信号に基づき、P,R,D等の各ポジションを判定し、該判定信号を係合制御部85に出力する。
【0033】
従って、本車両用自動変速機1は、運転者のシフトレバーの操作により、Dレンジ又はRレンジがシフトポジション判定手段により判定され、係合制御部85から入力クラッチ用油圧サーボC1又はリバースブレーキ用油圧サーボB1に選択的に係合圧が供給される。入力クラッチC
1の係合により、エンジン8からトルクコンバータ6を介して中間軸12に伝達された回転は、一体回転する前後進切換え装置3によりCVT2のプライマリシャフト(入力軸)22に正回転として伝達される。リバースブレーキB1の係合により、上記中間軸12の回転は、前後進切換え装置3により減速逆転して、上記CVT2のプライマリシャフト22に伝達される。
【0034】
CVT2は、変速設定手段87により設定される目標変速比に対応する変速制御信号を変速制御部83に出力して、該変速制御部83から所定の流量がプライマリ側油圧アクチュエータ33に供給され、プライマリプーリ26の有効径が操作される。また、ベルト挟持圧設定手段86が、必要伝達(要求)トルク及び実変速比によりベルトスリップを生じないように適正なベルト挟持圧を設定し、該設定された制御信号により挟持圧制御部82が、所定ベルト挟持圧を出力してセカンダリ側油圧アクチュエータ35に供給される。これにより、CVT2は、セカンダリプーリ31からベルトスリップが生じないように適正なベルト挟持圧が付与された状態で、プライマリプーリ26は、実変速比が目標変速比に一致するようにフィードバック制御して、無段に変速制御される。
【0035】
フットブレーキを踏んで車両を減速する場合、該減速に応じてCVT2はアンダードライブ(U/D)方向に変速し、車速0そして次回の発進に備えて、CVT2は、最アンダードライブ位置に変速される。この際、減速度(減速の時間微分)に応じて、変速設定手段87は、変速比の変速速度に対応した変速制御信号を出力して、変速制御部83からの作動油流量は、変速速度に応じて変化する。また、ベルト挟持圧設定手段は、入力軸回転数センサ73からの信号及び車速センサ74からの信号により、CVT2のプライマリシャフト22の回転数(Nin)とセカンダリシャフト27との回転数(Nout)の比である実変速比γ(γ=Nin/Nout)が算出され、該実変速比γに対応してかつその変化速度(変速速度)を加味して、ベルト挟持圧が設定される。
【0036】
具体的には、
図3に示すように、運転者がフットブレーキを踏圧してフットブレーキスイッチ77がONすると、CVT2の変速比γがオーバドライブ(O/D)からアンダードライブ(U/D)に変速される。これにより、車速も減速して車両停止状態になるが、車速の変化(時間微分;Δ車速)も、急速に落込んだ後、その変化が少なくなって、復帰する。該車速の変化(減速度;Δ車速)に基づき、ベルト挟持圧設定手段86の急減速は、急減速レベルL1、そしてL2に設定される。
【0037】
一般に、ベルト挟持圧設定手段86は、変速比γ及び減速度(Δ車速)に基づき、フットブレーキON時から、通常走行時のベルト挟持圧PB1より高い圧力となる制御信号PB2を出力し、急減速レベルL1に対応してそれより高い圧力からなる制御信号PB3を出力し、更に急減速レベルL2に対応して更に高い圧力からなる制御信号PB4を出力する。
【0038】
ついで、
図3及び
図4に沿って、本発明の実施の形態によるベルトスリップ判断手段について説明する。破線で示すように、ベルト挟持圧を制御信号PB4まで昇圧する上記一般技術は、急減速にあっても、CVT2のベルトのスリップを極力防止するように、大きなベルト挟持圧(PB4)をCVT2に付与する。該急減速時にあっても、ベルト挟持圧設定手段86は、想定されるイナーシャ分の油圧を増加する指令信号を出力するが、上記急減速により、車両から想定以上の大きなイナーシャトルクが発生し、上記大きなベルト挟持圧PB4がベルト32に作用しているにも拘らず、ベルトがスリップすることがある。
【0039】
図5は、ベルトスリップ速度とベルト挟持圧との関係を示す図であるが、曲線Eより右上側は、ベルト又はプーリ等のハードに損傷があり、曲線Eより左下側は、ハードに損傷がないことが知られている。上述した大きなベルト挟持圧PB4を作用した状態でベルトスリップを生じると、ハードに損傷を与える可能性が高い。
【0040】
そこで、本実施の形態によるベルトスリップ判断手段86aは、急減速レベルが高く、ベルトがスリップする可能性がある状況では、ベルト挟持圧を低減するものである。
【0041】
本ベルトスリップ判断手段86aは、CVT2の最大変速速度に対応する最大値L2に対応する最大ベルト挟持圧制御信号PB4(ユニット最大油圧)の出力をなくして、ベルト挟持圧を解放圧(PB0)方向に減圧する。即ち、本実施の形態によるベルト挟持圧設定手段86のベルトスリップ判断手段86aは、運転者によるフットブレーキの踏圧操作によるフットブレーキスイッチ77のONにより機能し、出力軸(部材)回転数(車速)センサにより出力軸回転数を検出し、該検出値に基づき算出される減速度(Δ車速)が予め設定される急減速レベルL2になると、
図3に実線で示すように、所定の設定圧PB3から解放圧PB0に向けて減圧する制御信号を油圧装置81の挟持圧制御部82に出力する。
【0042】
図4に示すフローチャートに沿って述べると、ベルト挟持圧設定手段86は、フットブレーキスイッチのONによりベルトスリップ判断手段86aを機能し、該ベルトスリップ判断手段86aは、車速の減速度(減速加速度)を検出して急減速レベルを判定する(S1)。該急減速レベルが所定のしきい値(例えば≦レベルL2)を超えると(S2;YES)、ベルト挟持圧が解放圧方向に減圧される(S3)。この状態で、アクセル開度センサ76によりアクセル踏み込みが判定され(S4)、アクセル開度が所定しきい値[例えば閉(0%)位置]と比較され(S5)、所定しきい値以下である場合(S5;NO)、車両の停止と判定される(S6)。アクセル開度が上記所定しきい値を超える場合(S5;YES)、運転者は、例えばブレーキ後に加速等の停止でない状況を要求していると判断して、ベルト挟持圧設定手段86は、アクセル開度及び変速比に基づき所定のベルト挟持圧指令値へ昇圧する制御信号を出力する(S7)。
【0043】
上記ステップS6による停止判定にあって、出力軸(部材)回転数センサ74に基づき出力軸回転数(車速)が検出され、車速が検出下限値であるしきい値と比較され(S8)、車速が検出下限値以下の停止状態である場合(S8;YES)、次の車両の発進に備えて、ベルト挟持圧がベルト挟持圧設定手段86により設定される適正な値に昇圧する制御信号を出力する(S7)。上記ステップS8において、車速が検出下限値以上である場合、車両が走行状態と制定され、ステップS4のアクセル踏み込み判定に戻される。
【0044】
そして、ステップS7において、ベルト挟持圧設定手段86からのベルト挟持圧制御信号が油圧装置の挟持圧制御部82に出力されて、セカンダリ側油圧アクチュエータ35に適正な挟持圧が作用し、CVT2は、車両の走行時に対応し、又は停車状態において次の発進に備えて、ベルトがスリップしない状態(クランプ状態)になる(S9)。
【0045】
なお、上述実施の形態は、ベルトスリップ判断手段86aにおけるベルトスリップの可能性のある状況の判断を、急減速レベルを車速センサ74からの信号に基づく車速の変化(Δ車速、減速度)により判定したが、これに限らず、変速比γの変速速度に基づき判定してもよく、またブレーキペダルの操作速度、ABSのホイールセンサからの車輪速度等の他の検出値により判定してもよい。また、フットブレーキスイッチのONによりベルトスリップ判断手段86aが機能するようにしたが、これに限らず、車速又は変速比等の他の手段によりベルトスリップ判断手段を機能してもよく、またベルトスリップ判断手段は、常時機能していてもよい。
【0046】
ついで、
図6及び
図7に沿って、一部変更した実施の形態について説明する。なお、本実施の形態によるベルトスリップ判断手段86aは、ベルトのすべり(スリップ)を判断してベルト挟持圧を減圧した点で相違しているが、他の部分は先の実施の形態と同一又は同様なので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
図6において、本ベルトスリップ判断手段86aは、CVTの入力軸(部材)回転数センサ73及び車速(出力部材回転数)センサ74並びに変速設定手段87により設定された目標変速比γに基づき、ベルトのすべり(スリップ)が判定される。即ち、ベルトスリップ判断手段86aは、入力軸(入力部材)回転数と車速(出力部材回転数)により実変速比を算出し、該実変速比と目標変速比γとを比較し、両変速比の差が所定しきい値以上の場合、ベルトスリップを発生していると判定する(OFF→ON)。そして、該ベルトスリップ判定(ON)により、ベルト挟持圧は、解放方向(PB0)に向けて減圧される。
【0048】
図7において、ステップS11によりベルトのすべりが判定され、ベルトのすべり(スリップ)発生が判定されると(S12;YES)、ベルト挟持圧が解放方向に減圧される(S3)。なお、上述した実施の形態は、ベルトのすべり判定を、入力部材及び出力部材の回転数及び設定された変速比に基づき判定したが、これに限らず、ベルトのスリップを直接検出する等の他の方法でもよい。減速時においては、プライマリプーリが拡がる(有効径が小さくなる)方向に移動するため、ベルトは、プライマリプーリとの間でスリップを生じ易いが、該プライマリプーリのベルト接触部分を光学センサにより検出して、ベルトとシーブとの相対回転を検出する。該相対回転が所定しきい値以上である場合、スリップ発生と判断してベルト挟持圧を減圧し、上記検出値が、0又は0付近を検出した場合、ベルト挟持圧を常圧してクランプする。
【0049】
以上説明したように、フットブレーキによる急減速時又は大きな段差等があって、ベルトスリップ判断手段によりベルトのスリップの可能性がある場合又はベルトのすべりが判定された場合、ベルト挟持圧設定手段86は、ベルト挟持圧を減圧して、低いベルト挟持圧でベルトのスリップ(すべり)を許容する。これにより、ベルト挟持圧が高い状態でのベルトのすべりを回避して、プーリ及びベルト等のハードのダメージを低減することができる。
【0050】
なお、
図4及び
図7のステップS9において、ステップS7にてベルト挟持圧制御信号を昇圧して、本来必要なベルト挟持圧まで実圧が追従するまでエンジントルクを制御して、ベルトのスリップを防止するようにしてもよい。