(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平坦面は、前記一体リングを2分割したときの前記外輪軌道面の変形開始点近傍から前記分割面に向かって引いた接線より内側を切り欠くことで形成されることを特徴とする請求項1に記載の分割形転がり軸受。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼設備の連続鋳造機とは、転炉や電炉によって成分調整された溶鋼をモールドとよばれる中空矩形状の銅製冷却装置の入側に流し込み、モールド出側から連続的に引き抜いていく設備である。
【0003】
図9に示すように、特許文献1に記載の鉄鋼設備の連続鋳造機100では、溶融した鋳片が上部の導入部101から供給され、二列になった排出部102より鉛直方向下方に向かって板状に排出されるようになっている。板状の鋳片FEは、それぞれ複数のローラが対向して配置されたローラユニット103の間を通過し、ローラにより徐々に板厚を調整され且つ徐々に水平になるよう方向付けされる。鋳片FEの両側に配置されたローラユニット103は、不図示のチャンバにより遮蔽されており、その内部は鋳片FEの高温と冷却剤とに曝された環境条件となっている。
【0004】
この鉄鋼設備の連続鋳造機100において、モールドの矩形形状にならって引き抜かれた鋳片FEは、矩形断面をもち、モールド出口付近では矩形断面の表面のみ冷却によって固化され心部はまだ溶鋼状態である。その後、鋳片FEをローラユニット103の上下ロール間を通す間に圧下により所定の厚さとし、更に冷却する。そして、深部まで完全に固化させた後、ある所定の長さで溶断する。矩形断面の大きさによってスラブ、ブルーム、ビレット等と呼ばれる半製品を製造する。
【0005】
このような連続鋳造機では、1ラインに500本近い数のロールが使用されている。それらは、
図10に示すように、セグメント化され、1つのセグメント200には上下で約30本近いロールが設置されている。そのセグメント内には、
図11に示す従動ロール201と、
図12に示す駆動ロール202があり、1セグメント内には少なくとも1本以上の駆動ロール202が設置され、その駆動ロール202により鋳片を進行方向に送り出している。
【0006】
鋳片は溶鋼状態から深部まで固化させるため、非常にゆっくりした速度(約2m/分)で進行方向に移動している。また、鋳片からの輻射熱、更に鋼片への大量の冷却剤が噴霧されている。そのためロールを支えている軸受は、極低速であるため十分な潤滑油膜が確保できず、また高熱や異物(水、スケール)環境下で使用されるため、極めて劣悪な環境で使用されていることなる。
【0007】
従動ロール用の軸受には、一般的に自動調心ころ軸受203が使用されている。一方、駆動ロールは、
図12で示したように杵状(縮径したロールネック部204を挟んで大径部205がある形状)のロールが使用されるため、中央部には駆動ロール202に使用されるような自動調心ころ軸受203を設置させることは不可能である。そのため分割形転がり軸受が使用されることになる。分割形転がり軸受としては、荷重負荷による軸のたわみを逃がす自動調心機能付き軸受形式が一般に使用されている。この軸受形式は、外輪外周を凸球面状とし、ハウジング内周を凹球面状としたものである。また、最近では上側分割外輪を省略し、負荷を受ける下側のみに球面外輪を設置する構造も採用されている。
【0008】
この分割形転がり軸受の内輪、外輪の加工は、一般的には一体リングの内輪や外輪を製造し、その後に軸方向に2つに分割する方法が採用されている。分割する方法は自然割り(端面部に切欠きを設け、プレス等により押割り)と、ワイヤーカット等による機械的にカットする方法がある。特許文献2では、内輪又は外輪の自然割りに対する最適な切欠き寸法形状を提案している。
【0009】
一方で、鉄鋼設備の連続鋳造機以外でも、分割形転がり軸受の使用が提案されている。特許文献3では、クランクシャフトをクランクケースに支持させるサポート軸受として、分割形転がり軸受が開示されている。この特許文献3に記載の分割形転がり軸受は、鉄鋼設備の連続鋳造機に使用される軸受とは、回転数、使用環境等全く異なるものであるが、分割外輪の分割面から所定領域の曲率を、他の領域の曲率よりも小さくして、肉厚減少部を形成し、組立誤差に起因して位置ズレが生じた場合であっても、振動、騒音の発生を抑制可能であることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
連続鋳造ロール用軸受の二分割される外輪、内輪材料は一般的に軸受鋼(SUJ2やSUJ3等)が使用されている。連続鋳造設備の駆動ロール用軸受では、上記したように過酷な使用環境で使用されているため軸受損傷が生じやすく、損傷部位は負荷位置が固定される分割外輪下側が圧倒的に多い。その損傷形態は主に軌道面はく離であるが、このはく離異常はすぐに検知されるものではない。そのためはく離を生じても軸受は使用され続ける傾向にある。
【0012】
前述のとおり、一般的な分割外輪の材質は軸受鋼である。軸受鋼は、表面と心部の硬さの値がほぼ同じ高硬度に保たれている。軸受軌道輪にとって、高硬度は要求特性の一つであるが、軌道面表面に損傷を生じると、軌道面−転動体間の高い繰り返し接触応力作用により、はく離から発生したき裂が心部まで急進的に進展し、外輪割損を生じる場合がある。仮に外輪割損が生じると、ロールが半径方向に移動しロール軸心がずれる。鋼片心部が十分に固化されていない状態でロール軸心ずれが生じると、鋼片表面をロールでサポートすることができないので、表面の硬化層に割れが生じるという不具合が発生する虞がある。
【0013】
外輪割損を抑制するには、はく離からの割れを抑制させる浸炭処理または浸炭窒化処理された材料(浸炭鋼)を用いることが効果的である。浸炭鋼は、表面は高硬度であるが、心部は低硬度となっていることが特徴であり、これにより、軌道面表面にはく離が発生しても、割れの進展(割損)を低硬度部で抑制する効果がある。
【0014】
一方で、浸炭鋼適用での問題点は、浸炭処理されたまたは浸炭窒化処理された浸炭鋼からなる一体外輪を二分割する際、もう一つの浸炭鋼の特徴である表面残留材料応力があるために、分割時にその応力が開放され、変形を生じてしまうことにある。即ち、分割外輪が浸炭鋼の場合、一体リングIRを二分割すると分割面Sから所定領域Lにおいて、
図13のような内径側へ収縮する変形が認められる。
図13中、点線は一体リングIRを示し、実線は一体リングIRを二分割した場合の分割外輪DRを示している。分割外輪DRが内径側へ収縮すると、転動面間距離が狭くなるため、転動体の自転及び公転が阻害され、内輪と外輪との円滑な相対回転が阻害される虞がある。このことが、これまでに分割外輪に浸炭処理または浸炭窒化処理された材料が用いられてこなかった理由と推定される。
【0015】
なお、従来の軸受鋼(SUJ2やSUJ3等)からなる分割外輪は、基本的には表面残留圧縮応力がほぼゼロに近いため、自然割り、ワイヤーカット等で分割した場合でも変形は生じず、これまで分割後の形状変化が問題となることはなかった。
【0016】
本発明の目的は、外輪割損を抑制でき、分割外輪に浸炭鋼を適用する際の分割外輪の形状変化による影響を抑制した、外輪分割形転がり軸受及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は以下の構成により達成される。
(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体と、を備え、
前記外輪は、一体リングをその中心を通る分割面で2分割した半円筒状の分割外輪を少なくとも一つ含む外輪分割形転がり軸受であって、
前記分割外輪は、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼からなり、
前記分割外輪の外輪軌道面は、前記分割面から周方向に沿う
と共に、周方向において負荷圏の外側に位置する所定領域において、前記外輪軌道面の接線方向に沿った直線状の平坦面を有し、
前記所定領域において、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間の距離は、前記転動体の外径以上であることを特徴とする外輪分割形転がり軸受。
(2) 前記平坦面は、前記一体リングを2分割したときの前記外輪軌道面の変形開始点近傍から前記分割面に向かって引いた接線より内側を切り欠くことで形成されることを特徴とする
(1)に記載の分割形転がり軸受。
(3) 鉄鋼設備の連続鋳造機用ロールに使用されることを特徴とする(1)
または(2)に記載の外輪分割形転がり軸受。
(4) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間を転動する複数の転動体と、を備え、
前記外輪は、一体リングをその中心を通る分割面で2分割した半円筒状の分割外輪を少なくとも一つ含む外輪分割形転がり軸受の製造方法であって、
前記分割外輪は、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼からなり、
前記分割外輪の外輪軌道面は、前記分割面から周方向に沿う
と共に、周方向において負荷圏の外側に位置する所定領域において、変形修正加工が施されて
おり、
前記変形修正加工は、前記所定領域において、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間の距離が前記転動体の外径以上となるように、前記外輪軌道面の接線方向に沿った直線状の平坦面を形成することを特徴とする外輪分割形転がり軸受の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の外輪分割形転がり軸受及びその製造方法によれば、分割外輪が浸炭鋼からなるので、外輪割損の発生を抑制できる。また、浸炭鋼からなる分割外輪の外輪軌道面は、分割面から周方向に沿う
と共に、周方向において負荷圏の外側に位置する所定領域において
、外輪軌道面の接線方向に沿った直線状の平坦面となるように加工が施されているので、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪と外輪との円滑な相対回転が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず、本発明の外輪分割形転がり軸受の分割外輪に施される変形修正加工について説明する。
本発明の外輪分割形転がり軸受に用いられる分割外輪DRは、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼から構成されており、一体リングIRをその中心を通る分割面で二分割することで形成される。浸炭鋼からなる一体リングIRを二分割して形成された分割外輪DRは、上記した
図13に示すように、表面残留材料応力があるために、分割時にその応力が開放され、分割面Sから所定領域Lにおいて分割外輪DRが内径側へ収縮している。
【0021】
そこで、分割外輪DRには、軌道面となる内周面の所定領域Lに変形修正加工が施される。変形修正加工では、その軸受内の転動体がスムーズに自転及び公転行えるようにするため、少なくとも転動体の外径以上の軌道面間距離が確保されるように、修正加工が行われる。
【0022】
表面残留材料応力の開放に伴う分割外輪DRの変形は、分割面から40°の領域内でのみ発生することが本発明者らの実験により確認されている。従って、変形修正加工は、分割面Sから40°の領域(所定領域L)内のみで行われる。この変形修正加工は、以下に説明する2通りの方法が選択的に行われる。
【0023】
(I)一つ目は、
図1に示すように、一体リングIRの内周面と同じ曲率となるように、言い換えると軸受の回転軸を中心とした外輪軌道面半径を半径とする円弧面Rをもつように、修正加工する方法である。この方法によれば、変形が始まる部位である変形開始点Pの位置によらず、分割外輪DRの内周面が、軸受の回転軸を中心とした外輪軌道面半径を半径とする半円となり、転動体のピッチ円の同心円となる。転動体のピッチ円とは、転動体の中心を結ぶことで形成される円である。一般的に分割外輪DRはワイヤーカットによって一体リングIRから機械的に分割されることが多いので、ワイヤーカットによる分割後、ワイヤーカットにて上記曲率に修正加工することも可能である。また、外輪の内方に設置される切削工具で、軸受の回転軸となる円筒の中心を基準に外輪軌道面半径を半径として、外輪の内周面を削ることで修正加工することも可能である。これにより、寸法変形がある箇所を精度よく削ることができ、ほぼ変形開始点から変形を修正することができる。
【0024】
(II)二つ目は、
図2に示すように、変形開始点Pから引いた接線の内側領域を切り欠くことで、外輪軌道面に平坦面Dを形成する方法である。この場合、変形がない領域においては、転動体のピッチ円と同心円である、軸受の回転軸を中心とした外輪軌道面半径とする円弧面となり、変形開始点から分割面Sまでの所定領域Lにおいては外輪軌道面の接線方向に沿った直線状の平坦面Dとなる。この場合、連続鋳造設備のライン速度(=軸受回転数)は極低速であるため、転動体は遠心力によって外輪軌道面に張り付くことはなく、転動体は内輪軌道面に沿って公転を行うため、上記所定領域Lでの不具合は生じない。
【0025】
連続鋳造設備の駆動ロール用軸受の負荷範囲(負荷圏)は、回転軸を通る鉛直方向の仮想線Oを中心に周方向両側に45度の範囲(合わせて90度の範囲、以下、負荷範囲Qとも呼ぶ。)であるため、この範囲内では内外輪軌道面と転動体間はすきまなく必ず接しなれければ、負荷範囲Q内で荷重が負荷される転動体のバランスが崩れ、一部の転動体に集中的に荷重が負荷され、早期損傷の原因となる。上記分割実験結果から修正加工範囲は、分割面Sから40度以下であり、またこれは負荷範囲Qの角度90度以下であることから、修正加工範囲は周方向において負荷範囲Qの外側に位置することとなる。従って、修正加工範囲である所定領域Lが分割面Sから最大でも45度以内の角度であれば、軸受使用に支障を生じることはない。
【0026】
以下、上記した(I)又は(II)の変形修正加工が施された、本発明の外輪分割形転がり軸受の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図3は本発明の第1実施形態の外輪分割形転がり軸受を示す図であり、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は軸方向断面図である。
本実施形態の外輪分割形転がり軸受10では、上側分割外輪が上側軸受箱20に一体形成され、上側軸受箱20と、下側軸受箱21よって支持された半円筒状の下側分割外輪12とが組み合わされて外輪13を構成する一方、2分割された分割内輪14,15とが組み合わせて内輪16を構成しており、これら内輪軌道面17と外輪軌道面18の間に、多数の円筒ころ19を介在させている。2分割された内輪16は他の部分よりも細くされたロールネック部204に嵌め合わされている。
【0028】
この外輪分割形転がり軸受10は、保持器のないいわゆる総ころ型の転がり軸受であり、上側軸受箱20及び下側軸受箱21は、例えば鋳鋼から構成される。また、内輪16は回転側であり、内輪16の負荷圏の位置は回転により変化するので、内輪16は、生産コストを抑制可能な材料が好ましく、例えば高炭素クロム鋼から構成される。
【0029】
内輪16は外周中央部に環状凹部61を形成しており、この環状凹部61の底面によって内輪軌道面17を構成している。内輪軌道面17を軸方向に挟んだ両側には、それぞれシール体としてのオイルシール31を装着するための一対の環状凹部62が形成されており、これら環状凹部62のさらに外側には、シール体としてのパッキン32を装着するための一対の環状凹部63が形成されている。
【0030】
上側軸受箱20及び下側軸受箱21の軸方向の両端部には、それぞれ有端状のラビリンスリング33が固定されており、各ラビリンスリング33は、ロールネック部204を挟んだロール端面にそれぞれ形成される凹溝206にそれぞれ挿入されてラビリンス形のシール構造を形成している。一方、各ラビリンスリング33の内周面は、オイルシール31およびパッキン32による摺接を受けるシール面を構成している。
【0031】
下側分割外輪12は、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼から構成される。下側分割外輪12の内周面には外輪軌道面18が形成されて、分割面Sから変形開始点Pまでの所定領域L(
図1参照。)に、変形修正加工により外輪分割形転がり軸受10の回転軸を中心とした外輪軌道面半径を半径とする円弧面Rが形成されている。即ち、下側分割外輪12が
図1に示す、(I)の変形修正加工が施された分割外輪DRとなっている。また、下側分割外輪12の外周面12aは略球面状に形成され、下側軸受箱21の球面溝22に摺動自在に嵌められている。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の外輪分割形転がり軸受10によれば、負荷圏側に位置する下側分割外輪12が浸炭鋼からなるので、外輪割損の発生を抑制できる。また、浸炭鋼からなる下側分割外輪12の外輪軌道面18は、分割面Sから周方向に沿う所定領域Lにおいて、外輪分割形転がり軸受10の回転軸を中心とした外輪軌道面半径を半径とする円弧面Rが変形修正加工により形成されているので、全周に亘って少なくとも円筒ころ19の外径以上の軌道面間距離が確保され、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪16と外輪13との円滑な相対回転が可能となる。
【0033】
さらに、上側分割外輪が、外輪軌道面18が形成された上側軸受箱20に一体形成されているので、部品点数を削減して、製造コストを抑えることができる。
【0034】
[変形例]
次に、上記した第1実施形態の外輪分割形転がり軸受の変形例について
図4を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態の変形例にかかる外輪分割形転がり軸受を示す図であり、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は軸方向断面図である。なお、第1実施形態の外輪分割形転がり軸受10と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
本変形例の外輪分割形転がり軸受10Aでは、上側分割外輪11が上側軸受箱20Aとは別体に形成されており、上側軸受箱20Aによって支持された半円筒状の上側分割外輪11と、下側軸受箱21よって支持された半円筒状の下側分割外輪12とが組み合わされて外輪13Aを構成している。
【0036】
下側分割外輪12と同様に、上側分割外輪11は、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼から構成される。上側分割外輪11の内周面には外輪軌道面18が形成されて、分割面Sから変形開始点Pまでの所定領域L(
図1参照。)に、変形修正加工により外輪分割形転がり軸受10の回転軸を中心とした外輪軌道面半径を半径とする円弧面Rが形成されている。即ち、上側分割外輪11も
図1に示す、(I)の変形修正加工が施された分割外輪DRとなっている。また、上側分割外輪11の外周面11aは略球面状に形成され、上側軸受箱20Aの球面溝23に摺動自在に嵌められている。
【0037】
以上説明したように、本変形例の外輪分割形転がり軸受10Aによっても、外輪割損の発生を抑制でき、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪16と外輪13との円滑な相対回転が可能となる。また、上側分割外輪11における外輪割損の発生も抑制できる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の外輪分割形転がり軸受について
図5を参照しながら説明する。
図5は、本発明の第2実施形態の外輪分割形転がり軸受を示す図であり、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は軸方向断面図である。なお、第1実施形態の変形例にかかる外輪分割形転がり軸受10Aと同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
本実施形態の外輪分割形転がり軸受10Bでは、上側分割外輪11Aが上側軸受箱20Aとは別体に形成されており、上側軸受箱20Aによって支持された半円筒状の上側分割外輪11Aと、下側軸受箱21よって支持された半円筒状の下側分割外輪12とが組み合わされて外輪13Bを構成している。
【0040】
上側分割外輪11Aは、高炭素クロム鋼からなる一体リングを2分割して形成されている。この高炭素クロム鋼からなる一体リングは、基本的には表面残留圧縮応力がほぼゼロに近いため、自然割り、ワイヤーカット等で分割した場合でも変形は生じず、(I)又は(II)の変形修正加工を施さなくても、転動体のピッチ円と同心円となっている。上側分割外輪11Aの外周面11aは略球面状に形成され、上側軸受箱20Aの球面溝23に摺動自在に嵌められている。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の外輪分割形転がり軸受10Bによっても、外輪割損の発生を抑制でき、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪16と外輪13との円滑な相対回転が可能となる。また、上側分割外輪11Aは、高炭素クロム鋼からなる一体リングを2分割して形成されているので、変形修正加工を施す必要はなく、製造工程を簡略化することができる。なお、上側分割外輪11Aは、高炭素クロム鋼からなる一体リングに限らず、軸受鋼からなる一体リングを2分割して形成してもよい。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の外輪分割形転がり軸受について
図6を参照しながら説明する。
図6は、本発明の第3実施形態の外輪分割形転がり軸受を示す図であり、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は軸方向断面図である。なお、第1実施形態の外輪分割形転がり軸受10と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態の外輪分割形転がり軸受10Cでは、上側分割外輪が上側軸受箱20に一体形成され、上側軸受箱20と、下側軸受箱21よって支持された半円筒状の下側分割外輪12Aとが組み合わされて外輪13Cを構成している。上側軸受箱20及び下側軸受箱21は、例えば鋳鋼から構成される。また、内輪16は回転側であり、内輪16の負荷圏の位置は回転により変化するので、内輪16は、生産コストを抑制可能な材料が好ましく、例えば高炭素クロム鋼から構成される。
【0044】
下側分割外輪12Aは、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼から構成される。下側分割外輪12Aの内周面には外輪軌道面18が形成されて、分割面Sから変形開始点Pまでの所定領域L(
図2参照。)に変形開始点Pから引いた接線の内側領域を切り欠くことで、外輪軌道面18に平坦面Dが形成されるように、修正加工が施されている。即ち、下側分割外輪12Aが
図2に示す、(II)の変形修正加工が施された分割外輪DRとなっている。また、下側分割外輪12Aの外周面12aは略球面状に形成され、下側軸受箱21の球面溝22に摺動自在に嵌められている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の外輪分割形転がり軸受10Cによっても、外輪割損の発生を抑制でき、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪16と外輪13との円滑な相対回転が可能となる。さらに、上側分割外輪が、外輪軌道面18が形成された上側軸受箱20に一体形成されているので、部品点数を削減して、製造コストを抑えることができる。
【0046】
[変形例]
次に、上記した第3実施形態の外輪分割形転がり軸受の変形例について
図7を参照しながら説明する。
図7は、本発明の第3実施形態の変形例にかかる外輪分割形転がり軸受を示す図であり、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は軸方向断面図である。なお、本実施形態及び以降の実施形態において、第3実施形態の外輪分割形転がり軸受10Cと同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
本変形例の外輪分割形転がり軸受10Dでは、上側分割外輪11Bが上側軸受箱20Aとは別体に形成されており、上側軸受箱20Aによって支持された半円筒状の上側分割外輪11Bと、下側軸受箱21よって支持された半円筒状の下側分割外輪12Aとが組み合わされて外輪13Dを構成している。
【0048】
下側分割外輪12Aと同様に、上側分割外輪11Bは、浸炭処理または浸炭窒化処理が施された浸炭鋼から構成される。上側分割外輪11Bの内周面には外輪軌道面18が形成されて、分割面Sから変形開始点Pまでの所定領域L(
図2参照。)に変形開始点Pから引いた接線の内側領域を切り欠くことで、外輪軌道面18に平坦面Dが形成されるように、修正加工が施されている。即ち、上側分割外輪11Bも
図2に示す、(II)の変形修正加工が施された分割外輪DRとなっている。また、上側分割外輪11Bの外周面11aは略球面状に形成され、上側軸受箱20Aの球面溝23に摺動自在に嵌められている。
【0049】
以上説明したように、本変形例の外輪分割形転がり軸受10Dによっても、外輪割損の発生を抑制でき、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪16と外輪13との円滑な相対回転が可能となる。また、上側分割外輪11Bにおける外輪割損の発生も抑制できる。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の外輪分割形転がり軸受について
図8を参照しながら説明する。
図8は、本発明の第4実施形態の外輪分割形転がり軸受を示す図であり、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は軸方向断面図である。なお、第3実施形態の変形例にかかる外輪分割形転がり軸受10Dと同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施形態の外輪分割形転がり軸受10Eでは、上側分割外輪11Aが上側軸受箱20Aとは別体に形成されており、上側軸受箱20Aによって支持された半円筒状の上側分割外輪11Aと、下側軸受箱21よって支持された半円筒状の下側分割外輪12Aとが組み合わされて外輪13Eを構成している。
【0052】
上側分割外輪11Aは、高炭素クロム鋼からなる一体リングを2分割して形成されている。この高炭素クロム鋼からなる一体リングは、基本的には表面残留圧縮応力がほぼゼロに近いため、自然割り、ワイヤーカット等で分割した場合でも変形は生じず、(I)又は(II)の変形修正加工を施さなくても、転動体のピッチ円と同心円となっている。上側分割外輪11Aの外周面11aは略球面状に形成され、上側軸受箱20Aの球面溝23に摺動自在に嵌められている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の外輪分割形転がり軸受10Eによっても、外輪割損の発生を抑制でき、浸炭鋼からなる分割外輪を用いた場合であっても、内輪16と外輪13との円滑な相対回転が可能となる。また、上側分割外輪11Aは、高炭素クロム鋼からなる一体リングを2分割して形成されているので、変形修正加工を施す必要はなく、製造工程を簡略化することができる。なお、上側分割外輪11Aは、高炭素クロム鋼からなる一体リングに限らず、軸受鋼からなる一体リングを2分割して形成してもよい。
【0054】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態では、内輪16は、分割内輪14,15とを組み合わせることで構成されているが、一体となった環状の内輪を用いてもよい。
また、総ころ型の転がり軸受に限らず、保持器を有していてもよい。
また、連続鋳造設備の駆動ロール用軸受に限らず、他の用途にも適用することができる。