(54)【発明の名称】タップ計画値算出方法及びこれを用いたタップ指令値の決定方法、制御目標値算出方法、並びにタップ計画値算出装置、タップ指令値決定装置、タップ計画値算出プログラム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定期間における前記配電系統の各ノードの電圧データは、前記所定期間内における前記負荷及び前記分散電源の所定の電力データに基づいて算出された前記各時刻における予測電圧値データである請求項1に記載のタップ計画値算出方法。
前記タップ切換回数を低減させる評価項は、時刻tと時刻(t−1)におけるタップ値の差から算出される項と、該差の二乗から算出される項の和を含む請求項1乃至7のいずれか一項に記載のタップ計画値算出方法。
前記コスト評価関数を最小化するタップ値が複数算出されたときには、同一タップ継続時間の合計が最大のものを前記タップ計画値として選択する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のタップ計画値算出方法。
請求項1乃至10のいずれか一項に記載されたタップ計画値算出方法により算出された前記タップ計画値と、前記所定電圧範囲内で最も電圧余裕が大きくなるタップ最適値と、現在の実際のタップ値であるタップ現在値とを用いて、前記タップ付き変圧器のタップ指令値を決定するタップ指令値の決定方法であって、
前記配電系統の計測値に基づき、前記所定位置における電圧を前記所定電圧範囲内とする前記タップ付き変圧器の選択可能タップ、前記タップ最適値及び前記タップ現在値を取得するとともに、予め算出された前記タップ計画値を取得するステップと、
前記選択可能タップに前記タップ最適値のみが存在するか否かを判定するステップと、
前記選択可能タップに前記タップ最適値のみが存在するときには、前記タップ最適値を前記タップ指令値に選択し、
前記選択可能タップに前記タップ最適値以外に前記タップ現在値及び/又は前記タップ計画値が存在するときには、前記タップ最適値、前記タップ現在値及び前記タップ計画値のうち、中央に位置するタップ値又は重複するタップ値を前記タップ指令値に選択するステップと、を有するタップ指令値の決定方法。
請求項1乃至10のいずれか一項に記載されたタップ計画値算出方法により算出された前記タップ計画値を用いて、配電線において生じる電圧降下を補償する線路電圧降下補償器の整定値又はプログラムコントロールによる制御の目標電圧を算出する制御目標値算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るタップ計画値算出方法が適用可能な配電系統の一例を示した図である。
図1において、監視制御装置110が示されており、監視制御装置110内に、本実施形態に係るタップ計画値算出装置80と、タップ指令値決定装置90と、制御目標値算出装置100とが示されている。
【0014】
配電系統70は、負荷50〜57に電力を供給するための電力供給系統であり、配電線10と、LRT20と、SVR21、22と、センサ30〜32と、変圧器40〜43と、負荷50〜57と、分散電源60〜64とを有する。
【0015】
配電線10上には、LRT20と、SVR20、21と、センサ30〜32が設けられており、LRT20より上流側が発電所側であり、下流側が負荷50〜57側となっている。配電線10のLRT20よりも下流側にセンサ30、SVR21、センサ31、SVR22、センサ32及び分散電源64が接続されて設けられている。また、配電線10は、SVR21とセンサ31との間にノード11、センサ31とSVR22との間にノード12、SVR22とセンサ32との間にノード13、センサ32と分散電源64との間にノード14を有する。ノード11〜14から、高圧線11a〜14aが分岐して接続されており、高圧線11a〜14aには変圧器40〜43の一次側が接続され、変圧器40〜43の二次側に低圧線11b〜14bが各々接続されている。また、低圧線11bには負荷50、51及び分散電源60、低圧線12bには分散電源61及び負荷52、53、低圧線13bには負荷54、55及び分散電源62、低圧線14bには負荷56,57及び分散電源63が接続されている。
【0016】
LRT20は、発電所側の送電系統からの電圧を変圧して低下させ、負荷50〜57側に供給するタップ付き変圧器である。例えば、変圧前の送電系統の電圧が66kVであり、変圧後の配電線10の電圧が6.6kVである。
【0017】
センサ30〜32は、電圧、電流、位相等を検出可能な検出手段であり、例えば、開閉器として構成されてもよい。本実施形態に係るタップ計画値算出装置80、タップ指令値決定装置90及び制御目標値算出装置100においては、センサ30〜32による計測値を利用してよい。
【0018】
SVR21、22は、配電系統70の負荷側(LRT20の下流側)に設置され、設置箇所の電圧が適正範囲内に維持されるように電圧の調整を行う電圧調整手段であり、LRT20と同様にタップ付き変圧器の一種である。LRT20及びSVR21,22は、自端の情報に基づく動作も可能であり、本実施形態に係るタップ計画値算出装置80、タップ指令値決定装置90及び制御目標値算出装置100は、センサ30〜32の計測情報のみならず、LRT20及びSVR21,22の自端情報もタップ値の算出に利用してよい。
【0019】
変圧器40〜43は、高圧線11a〜14aの高電圧を低圧に変圧する電圧調整手段であり、例えば、6.6kVを家庭用の100Vの電圧に変圧してもよい。
【0020】
負荷50〜57は、配電系統70の電力供給対象であり、例えば、需要家等で消費される電力である。負荷50〜57は、低圧線11b〜14bに接続され、低圧線11b〜14bを介して電力の供給を受ける。
【0021】
分散電源60〜64は、LRT20より下流側の配電系統70に設置される電源であり、例えば自然エネルギーを利用した電源が利用される。分散電源60〜64としては、一例としてPVや風力エネルギーが挙げられる。
図1においては、分散電源60〜64にPVを用いた例が挙げられている。分散電源60〜64も、配電線10に接続されるが、分散電源60〜63のように、負荷50〜57と同じく低圧線11b〜14bに接続されてもよいし、分散電源64のように、高圧線である配電線10に直接接続されてもよい。分散電源60〜64の配電系統10への接続の方法は、用途に応じて種々の態様とすることができる。
【0022】
監視制御装置110は、配電系統70の電圧制御を行うための装置であり、コンピュータを用いた制御システムとして構成してよい。監視制御装置110は、タップ計画値算出装置80と、タップ指令値決定装置90と、制御目標値算出装置100とを備える。
【0023】
タップ計画値算出装置80は、長周期的にタップ切換が少なくなる時系列的なタップ値を、予測に基づいてタップ計画値として算出するための装置である。タップ計画値算出装置80により算出されたタップ計画値を監視制御装置110の電圧制御に利用することにより、タップ切換回数を長周期的に低減させることができる。なお、タップ計画値算出装置80の詳細な構成及び機能については後述する。
【0024】
タップ指令値決定装置90は、監視制御装置110が、LRT20及びSVR21、22のようなタップ付き変圧器を用いて配電系統70の電圧制御を行う際に、各タップ付き変圧器のタップ指令値を決定するための装置である。タップ指令値決定装置90は、タップ計画値算出装置80により算出されたタップ計画値も利用し、配電系統70の電圧を適正範囲に維持しつつタップ切換回数が少なくなるようにタップ指令値を決定する。なお、詳細なタップ指令値決定装置90の構成及び機能は後述する。
【0025】
制御目標値算出装置100は、監視制御装置110が配電系統70の電圧制御を行う際の目標電圧、つまり制御目標値を算出するための装置である。具体的には、例えば、配電系統70に、配電線において生じる電圧降下を補償する線路電圧降下補償器(LDC、Line Drop Compensator)(図示せず)が設置され、電圧制御方式として、目標とする電圧を負荷電流に応じて調整するLDC方式を用いた場合に、LDC整定値を算出する。また、電圧制御方式として、予め定められた時間帯毎のパターンに応じて制御されるプログラムコントロール方式が用いられる場合には、その制御目標電圧を算出する。制御目標値算出装置100は、これらのLDC整定値、制御目標電圧を算出する際、必要に応じて、タップ計画値算出装置80で算出されたタップ計画値を用い、これを考慮して制御目標値を算出してよい。なお、制御目標値算出装置100の構成の詳細については後述する。
【0026】
監視制御装置110は、LRT20及びSVR21、22のタップ制御を行うことにより配電系統70の電圧制御を行うので、LRT20、SVR21、22と通信可能なデータ通信線120が設けられる。また、監視制御装置80は、電圧等の配電系統70の計測値を用いて電圧制御を行うので、データ通信線120は、センサ30〜32とも通信可能に接続構成されている。なお、データ通信線120は有線に限らず無線により実現しても構わない。
【0027】
監視制御装置110は、タップ計画値算出装置80、タップ指令値決定装置90及び制御目標値算出装置100を用いて配電系統70の電圧制御を行うため、
図1に示すように、監視制御装置110は、タップ計画値算出装置80、タップ指令値決定装置90及び制御目標値算出装置100を内蔵して構成されてもよい。一方、タップ計画値算出装置80、タップ指令値決定装置90及び制御目標値算出装置100は、各々の機能を果たすことができれば、必ずしも監視制御装置110に内蔵されている必要は無く、別体として構成されてもよい。
【0028】
図2は、LRT20の概要を説明するための図である。LRT20は、配電線10a、10b、調整変圧器201、負荷時タップ切換器202、及び駆動機器203を含んで構成される。
図1における配電線10は、
図2においては、説明の便宜上、LRT20の1次側を配電線10a、2次側を配電線10bとして区別して示している。
【0029】
配電線10aは、調整変圧器202の1次側に接続される電線であり、送電系統からの電圧が印加される。配電線10bは、調整変圧器202の2次側に接続される電線である。調整変圧器201は、例えば、10のタップt1〜t10を有する単巻変圧器である。
【0030】
負荷時タップ切換器202は、調整変圧器201のタップを切り換える機器である。本実施形態では、負荷時タップ切換器202が、例えばタップをタップt10からt1方向へと切り換えると、1次側の巻線数が減少し、2次側の巻線数は一定であるので、2次側の巻線比が増加し、2次側の配電線10bの電圧が相対的に上昇する。一方、負荷時タップ切換器202が、タップをタップt1からt10方向へと切り換えると、1次側の巻線数が増加し、2次側の巻線数は一定であるので、2次側の巻線比が減少し、2次側の配電線10bの電圧は相対的に降圧される。
【0031】
なお、
図2においては、1次側にタップt1〜t10を設けて巻線数を可変とし、1次側で1次側:2次側の巻線比の調整を行っているが、1次側を固定とし、2次側にタップt1〜t10を設けて2次側で巻線比の調整を行ってもよい。更に、1次側と2次側の双方にタップt1〜t10を設け、1次側と2次側のいずれにおいても巻線比の調整を行えるように構成してもよい。また、タップt1〜t10の数も、いずれの構成においても、用途に応じて種々変更することができる。
【0032】
駆動機器203は、タップ指令値決定装置90又はこれを含む監視制御装置110からのタップ指令値に基づいて、負荷時タップ切換器202にタップの切り換え動作をさせるための機器である。例えば、タップt6を選択させるためのタップ指令値S1が入力されると、駆動機器203は、タップt6が選択されるよう負荷時タップ切換器202を制御する。
【0033】
なお、本実施形態におけるSVR21、22は、LRT20と同様であるため、詳細な
説明は省略する。
【0034】
図3は、本実施形態に係るタップ計画値算出方法及びタップ計画値算出装置80により算出されるタップ計画値を説明するための図である。
【0035】
図3(A)は、タップ計画値を用いない電圧制御を説明するための図である。
図3(A)において、横軸を時刻とし、計測された電圧の時間的変化を示す計測電圧時系列線Aと、時系列的なタップ段数(タップ値)の変化を示すタップ値時系列線Bとが示されている。タップ値は、配電系統70の電圧を適正範囲内に維持するように変化するため、計測された電圧が高ければ、電圧を低くすべくタップ値が低くなるように動作し、計測電圧が低ければ、電圧を高くすべくタップ値が高くなるように動作する。よって、
図3(A)に示すように、タップ値時系列線Bは、計測電圧時系列線Aの変化に応じて切り換わる。そして、領域Eに示すように、計測電圧の急峻な変化があれば、タップ値は、その変化に伴い、急峻な変化をする。つまり、領域E内において、計測電圧に一時的な電圧低下が発生したため、タップ付き変圧器はタップ値を上げることにより電圧を維持しようと制御したが、すぐに電圧低下が収まったため、タップ値を元の値(段数)に戻している。
【0036】
このような短周期的な急峻な変化は、自然エネルギーを利用した分散電源60〜64を配電系統70に接続した場合に顕著となり、また、分散電源60〜64のみならず、負荷50〜57による電力消費でも発生し得る。例えば、PVの場合には、晴れていて太陽光の照射量が多い場合には発電量が多くなるが、突然空が雲で覆われ、太陽光の照射量が一時的に低下すると、発電量が小さくなる。そして、また雲が無くなり、太陽光の照射量が多くなると、発電量は増加し、
図3(A)の領域Eに示したような電圧変化となる。このような急峻な電圧変化は、自然エネルギーを利用した分散電源60〜64では当然に多くなることが想定されるし、何らかの要因により、電力消費においても同様な変化が起こることもあり得る。
【0037】
このような急峻な電圧変動が頻繁に発生すると、LRT20、SVR21,22等のタップ付き変圧器による電圧制御は困難となる。なぜなら、変圧器タップは機械式で変圧比を切り換えるため、頻繁に動作させると機器の劣化が早まり、また、変圧器タップの電圧調整幅が短周期的な変動幅に対して大きい場合、瞬間的な電圧変動に応じてタップを切り換えると、タップ動作が多くなるおそれがあるためである。
【0038】
図3(B)は、タップ計画値を用いた電圧制御を説明するための図である。
図3(B)において、横軸を時刻とし、計測された電圧を示す計測電圧時系列線Aと、予測された電圧を示す予測電圧時系列線Cと、タップ値(タップ段数)の時系列変化を示すタップ値時系列線Dとが示されている。予測電圧時系列線Cは、配電系統70の長周期的な電圧変化を予測した時系列線であり、急峻な変化等に左右されずに長周期的な時系列変化を示している。例えば、PVの場合を例にとると、天候、日照時間等が予測できれば、それに応じたPVによる発電量も予測することができ、
図3(B)に示した予測電圧時系列線Cを算出することが可能となる。
【0039】
図3(B)において、タップ値時系列線Dは、計測電圧時系列線Aではなく、予測電圧時系列線Cの電圧変化に対応させ、予測電圧時系列線Cの予測電圧を適正範囲に収めるためのタップ値時系列を示している。よって、領域Eにおいても、計測電圧の急峻な変化に応じた急峻なタップ動作は行っておらず、タップ切換回数を1回減少させた時系列線となっている。タップ値時系列線Dに従っていても、配電系統70の電圧が適正範囲内であれば、何ら問題は生ぜず、タップ切換回数を低減させ、タップ付き変圧器の寿命を長くすることができる。
【0040】
よって、本実施形態に係るタップ計画値算出方法及びタップ計画離算出装置80では、
図3(B)のタップ値時系列線Dに相当するタップ計画値を算出する方法及び装置を提供する。また、本実施形態に係るタップ指令値決定方法及びタップ指令値決定装置90では、かかるタップ計画値を用いた電圧制御の方法及び装置を提供する。
【0041】
図4は、本発明の実施形態に係るタップ計画値算出装置80の一例を示した構成図である。タップ計画値算出装置80は、入力部81と、記憶手段82と、ノード電圧算出部83と、選択可能タップ算出部84と、タップ最適値算出部85と、タップ計画値算出部86と、出力部88とを有する。なお、ノード電圧算出部83と、選択可能タップ算出部84と、タップ最適値算出部85と、タップ計画値算出部86は、CPU(中央処理装置、Central Processing Unit)87の一部として構成されてもよい。
【0042】
入力部81は、タップ計画値算出のために必要なデータが入力される箇所であり、入力インターフェースとして機能する。タップ計画値算出のために必要なデータとしては、配電系統70の各ノード11〜14の電圧値の時系列的なデータが必要である。例えば、時刻t=0から時刻t=T(Tは自然数)までの所定期間についてのタップ計画値を算出する場合、t=0〜Tの各時刻における各ノード11〜14の電圧データが必要である。かかるノード電圧データが取得可能な場合は、入力部81に入力データとして入力される。一方、ノード電圧を算出するために必要な他のデータも、入力部81から入力される。入力部81は、用途に応じて、操作者から直接入力可能なキーボード等の物理的なインターフェースを備えていてもよいし、電気信号的のみ入力可能に構成されていてもよい。
【0043】
記憶手段82は、入力部81から入力されたデータを記憶するための手段であり、コンピュータ等に一般的に使用されるメモリが用いられてもよい。
【0044】
ノード電圧算出部83は、入力部81に入力されたデータが、各ノード11〜14のノード電圧データでなかったときに、ノード電圧を算出するための演算処理手段である。入力部81又は記憶手段82からノード電圧算出部83に送られるデータは、例えば、分散電源60〜64の予測電力値データであってもよいし、負荷50〜57及び分散電源60〜64の電力統計値データであってもよいし、分散電源60〜64の発電計画電力値データであってもよい。これらの電力値データから、ノード電圧算出部83は、潮流計算を行うことにより、各ノード11〜14の電圧値を算出する。
【0045】
また、入力部81又は記憶手段82からノード電圧算出部83に送られるデータは、センサ30〜32で過去に検出された電圧、電流、位相等のデータであってもよい。かかるセンサ値データから、ノード電圧算出部83は状態推定を行い、各ノード11〜14の電圧を算出することができる。
【0046】
選択可能タップ算出部84は、入力部81、記憶手段82又はノード電圧算出部83で取得された各ノード11〜14のノード電圧に基づいて、タップ付き変圧器であるLRT20、SVR21、22の選択可能タップを算出する演算処理手段である。
【0047】
図5は、選択可能タップ、タップ最適値及びタップ計画値を説明するための図である。
図5において、横軸は時刻t=0〜T、縦軸はタップ付き変圧器のタップ位置を示している。選択可能タップは、LRT20及びSVR21、22が、各々の電圧調整対象となる電圧を適正範囲に維持するために選択可能なタップ位置を意味している。例えば、負荷50〜57及び分散電源60〜64が接続された低圧線11b〜14bの電圧を95〜107Vの適正範囲内に維持する必要があるときに、その条件を満たす範囲でLRT20、SVR21、22が選択し得るタップ位置である。よって、選択可能タップは、多くの場合において複数存在するし、どのタップを選択しても電圧を適正範囲内に維持できない場合であっても、適正電圧範囲から最も逸脱量の少ないタップを選択するので、最低1つは選択可能タップが存在する。
【0048】
図5において、時刻t=0〜5において、1つ以上の○印が示されているが、その○印が選択可能タップである。つまり、例えば、時刻t=1においては、5つの選択可能タップが存在するし、時刻t=2においては、4つの選択可能タップが存在する。このように、選択可能タップ算出手段84は、各時刻t=1〜Tにおける選択可能タップを算出する演算処理を行う。
【0049】
図4の説明に戻る。タップ最適値算出部85は、選択可能タップから、タップ最適値を算出する演算処理手段である。タップ最適値は、各時刻において、適正電圧範囲内において電圧余裕が最大となるタップ値であり、選択可能タップの中央のタップがタップ最適値となる。
【0050】
図5を参照すると、選択可能タップとして示された○印の中に、数字が記載されている。この数字で、0.0と記載されているものが、各時刻t=1〜5における最適タップである。時刻t=1においては、5個ある選択可能タップの中央のタップ、つまり上側からも下側からも3番目のタップがタップ最適値となる。時刻t=4の場合も、同様の考え方で、3個の選択可能タップのうち、中央の上からも下からも2番目のタップをタップ最適値とする。
【0051】
一方、時刻t=2においては、選択可能タップが4個存在する。この場合には、偶数個の選択可能タップが存在するので、上から2番目か、下から2番目のタップがタップ最適値となるが、適正電圧範囲は電圧値で算出されるので、上から2番目と下から2番目のタップのうち、最も電圧余裕が最大となるタップをタップ最適値とする。ここでは、上から2番目のタップがタップ最適値とされている。同様に、時刻t=3の場合も、4個の選択可能タップのうち、上から2番目のタップがタップ最適値とされている。
【0052】
また、時刻t=5においては、1つの選択可能タップしか存在していないので、この場合には、必然的に唯一の選択可能タップがタップ最適値となる。
【0053】
このように、タップ最適値算出部85は、選択可能タップから、タップ最適値を算出する。なお、
図4において、選択可能タップ算出部84と、タップ最適値算出部85は、各々別個としているが、選択可能タップが算出されれば、タップ最適値85は自動的に定まるので、選択可能タップ算出部84とタップ最適値算出部85は一体構成としてもよい。
【0054】
図4の説明に戻る。タップ計画値算出部86は、タップ計画値を算出する演算処理手段である。タップ計画値算出部86は、選択可能タップ算出部84で算出された選択可能タップ及びタップ最適値算出部85で算出されたタップ最適値に基づいて、タップ計画値を算出する。なお、タップ計画値は、
図3(B)で説明したように、所定期間(例えば、時刻t=1〜T)において、タップ切換回数を低減させる時系列的なタップ値である。
【0055】
タップ計画値は、例えば(1)、(2)式に示すコスト評価関数を用いることにより算出する。(1)、(2)式において、p
tは時刻tにおけるタップ数、q
tは時刻tにおける電圧余裕最大タップ値(最適値)、C
1〜C
3は重み係数、Tは時刻ステップ数である。また、(2)式は(1)式を一般化した式であり、(1)式における(p
t−p
t−1)に関する第1項及び第3項をf(p
t−p
t−1)の関数で表し、p
tに関する第2項をg(p
t)の関数で表したものである。(2)式の関数f(p
t−p
t−1)は時刻t-1から時刻tにおいて変化するタップ変化p
t−p
t−1についての関数であり、タップ変化p
t−p
t−1の絶対値が小さくなれば関数fが小さくなるような性質を持つ。また(2)式の関数g(p
t)は時刻tにおけるタップ位置p
tについての関数であり、電圧管理上下限に対する電圧の余裕が大きくなるようなタップ値p
tの場合に関数gが小さくなるような性質を持つ。なお、(1)式の重み係数C
1〜C
3は、例えば、C
1=1、C
2=1、C
3=0.1といった数が選択される。
【0057】
具体的には、(1)、(2)式に示すコスト評価関数を最小化するタップ値p
tを最適化計算により算出し、算出されたタップ値をタップ計画値とする。
【0058】
(1)式において、大括弧内の1番目及び3番目の評価項は、時刻t及びt−1の関係のコストを示し、2番目の評価項は、時刻tにおけるコストを示している。そして、1〜3番目の評価項の和をコスト評価関数としている。
【0059】
1番目の評価項は、時刻tとt−1との間で、タップ切換段数を少なくするという観点からの評価項である。つまり、時刻tとt−1との間で、タップ値p
tとp
t−1が同じであれば、1番目の評価項はコストがゼロとなる。
【0060】
2番目の評価項は、電圧を適正範囲に維持し、電圧に余裕を持たせるという観点からの評価項である。つまり、タップ値p
tが時刻tにおける電圧余裕最大タップ値、時刻tにおけるタップ最適値に等しい場合には、2番目の評価項はコストがゼロとなる。
【0061】
3番目の評価項は、時刻t、t−1、t−2といった3つ以上の時刻の間で、全体としてタップ値の急激な変化を抑制するという観点からの評価項である。例えば、任意の3つの時刻間で、2タップ分変化するときに、各時刻で1タップずつ変化すれば1回当たりのタップ変化は1で小さいが、タップ変化の無い時刻と、2タップ分変化した時刻とを含む場合には、全体の変化はともに2タップ分であるが、後者の方が急激なタップ変化を含み、コストがより多く増大する。
【0062】
具体例を挙げると、
図5において、時刻t=2〜4のタップ変化に着目し、t=2で上から2番目のタップ位置、t=4で1番下のタップ位置が選択される場合のタップ変化を考える。時刻t=3において、上から2番目のタップ位置が選択された場合には、t=3、4での各時刻におけるタップ位置の変化は各々1段分であり、1段分タップ位置が変化するコストは1
2であるので、3番目の評価項のコストは、C
3×(1
2+1
2)=0.1×2=0.2となる。
【0063】
一方、時刻t=3において、上から3番目のタップ位置が選択された場合には、時刻t=3におけるタップ位置の変化は2段分、時刻t=4におけるタップ位置の変化は0段分となる。2段分タップ位置が変化するコストは2
2であるので、この場合の3番目の評価項のコストは、C
3×(2
2+0
2)=0.1×4=0.4となり、0.2よりも大きくなる。
【0064】
このように、時刻t=2〜4の時刻変化の中で、ともにタップ位置の変化は2段分であるが、各時刻で徐々に変化をした1番目の例よりも、急激に変化をした時刻を含む2番目の例の方が、コストが高く評価される。つまり、3番目の評価項においては、演算に用いる項は時刻t、t−1の2時刻分のみであるが、時刻t、t−1、t−2と3時刻分に亘るタップ位置変化をコストとして評価している。演算対象とする時刻が2時刻分であれば、動的計画法を用いることができ、迅速な演算処理が可能となるが、3時刻分となると、演算処理が複雑となり、動的計画法を用いた迅速な演算処理は不可能となる。よって、(1)、(2)式に示すコスト評価関数は、演算処理の迅速さを保ちつつ、3時刻以上に亘るタップ位置の全体的変化をも考慮に入れた評価項と言える。
【0065】
このように、(1)、(2)式に示すコスト評価関数は、時刻tにおけるコストと、時刻tとt−1との間の関係のコストの和であるため、このコスト評価関数の最適化問題は、動的計画法で解くことができる。動的計画法による最適問題の求解はO(TP
2)の計算量であるため、時刻ステップ数が増加しても高速に計算することができる。ここで、Oは計算量のオーダを表す関数、Pはタップの段数、Tは任意の時間を指す。
【0066】
なお、動的計画法は、公知の一般的な動的計画法を用いることができる。また、動的計画法のみならず、他の線形計画法の手法を用いてもコスト評価関数の最小化問題を解くことができるので、他の公知の線形計画法を適用してもよい。
【0067】
図5においては、タップ計画値の算出例も示している。太い○印が、タップ計画値として算出されたタップ値である。
図5において、各々の時刻t(又は時刻t−1)における選択可能タップから、次の時刻t+1(又は時刻t)に遷移する際のコストが、矢印の近くに数字で示されている。タップ値の変化が、時刻t−1とtとの間で全く無いと遷移の際のコストは0.0となり、1つ段数が変化すると1.1となり、2つ段数が変化すると2.4となり、3つ段数が変化すると3.9となっている。よって、タップ値の変化の少ない方が、1番目と3番目の評価項のコストは低くなる。
【0068】
また、1段分のタップ位置の変化が、2段分変化と1段分変化との間では2.4−1.1=1.3であり、3段分変化と2段分変化との間では3.9−2.4=1.5となり、段数変化が急激である方がコストが増大するように設定されている。これにより、同じ段数変化であっても、急激な変化を回避するようにタップ計画値を選択できることは、3番目の評価項の説明で述べた通りである。
【0069】
一方、電圧余裕の観点からは、タップ最適値となるタップ値が、コストが最も低くなるので、選択可能タップの中央にあるタップ最適値が2番目の評価項のコストを低くする。
図5に示される通り、○印内が0.0であるタップ最適値か、又はそれよりも1段ずれた位置のタップ値が、タップ計画値として算出されている。
【0070】
このように、電圧を適正範囲に維持するための評価項と、タップ切換回数を低減させるための評価項の両者を含むコスト評価関数を用いることにより、所定期間において、電圧を適正範囲に維持しつつ、タップ切換回数を低減させるタップ計画値を算出することができる。また、コスト評価関数を、時刻tとt−1との関係の範囲内で構成することにより、動的計画法を用いることができ、高速にタップ計画値を算出することができる。
【0071】
図6は、タップ計画値の算出の際、解が複数経路算出された場合の処理方法の一例を示した図である。
図6において、時刻t=2〜5において、2つのタップ計画値が各々示されている。タップ計画値算出部85によるタップ計画値算出において、複数経路が解として算出されたときには、タップの滞在時間が最も均等になる経路を選択することが好ましい。
図6において、t=1のタップ計画値と、t=6のタップ計画値は、タップ値が1段異なっている。そして、その間のt=2〜5において、タップ計画値が2個ずつ存在する。このような場合には、タップ切換回数を最小限とすると、1回だけ下段から上段にタップ値を切り換えることが必要となるが、
図6に示すように、t=1とt=6の間の中央の時刻であるt=3からt=4の時刻でタップ値を切り換えると、t=3の前で2回のタップ値滞在、t=4の後で2回のタップ値滞在と、同じタップ値に滞在する時間を等しくすることができる。
【0072】
このように、複数経路が存在する場合には、タップ値切換の前後で同一タップの滞在時間が最も均等になる経路を選択することが好ましい。具体的には、タップが滞在する時間の2乗和が最小となるものを選択する。
【0073】
図4の説明に戻る。出力部88は、タップ計画値算出部86で算出されたタップ計画値を出力する手段である。出力部88は、タップ計画値を電気信号としてタップ指令値決定装置90に出力してもよいし、タップ計画値算出装置80がスタンドアロンの単体として構成されている場合には、ディスプレイ等にタップ計画値を出力するように構成してもよい。
【0074】
図7は、本発明の実施形態に係るタップ計画値算出方法の一例を示した処理フロー図である。
図7において、今まで説明したのと同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0075】
ステップS100では、時刻t=初期時刻とされる。例えば、t=0と設定してもよい。
【0076】
ステップS110では、タップ計画値を算出するために必要なデータが読み込まれる。例えば、データとして、負荷50〜57及び分散電源60〜64の予測電力データが読み込まれてもよい。この場合、予測電力データは、負荷50〜57については予測消費電力であり、分散電源については予測出力電力である。なお、データの読み込みは、外部のデータベースから、入力部81を介して読み込まれ、記憶手段82に一旦保存される。
【0077】
ステップS120では、各ノード11〜14の電圧値の計算が行われる。電圧値の計算は、ノード電圧算出部83により行われる。ノード電圧算出部83は、例えば、読み込んだ予測電力データを用いて、潮流計算によりノード電圧を算出する。
【0078】
ステップS130では、選択可能タップが計算される。選択可能タップは、選択可能タップ算出部84により行われる。選択可能タップ算出部84は、LRT20、SVR21、22における電圧が所定の適正電圧範囲内となるように、初期時刻における選択可能タップを算出する。なお、選択可能タップを算出した際、タップ最適値算出部85が同時にタップ最適値を算出するようにしてもよい。
【0079】
ステップS140では、時刻tが所定の終了時刻に達したか否かが判定される。終了時刻に達していないと判定されたとき(ステップS140;Yes)には、ステップS160で時刻t=t+1とされる。その後、時刻t+1において、ステップS110〜S130が繰り返され、時刻t+1における選択可能タップが算出される。以後、ステップS140において時刻tが終了時刻となるまでステップS110〜S140及びS160が繰り返され、初期時刻から終了時刻までの間の所定期間における選択可能タップが算出される。
【0080】
ステップS140において、時刻tが所定の終了時刻に達したと判定されたとき(ステップS140;No)には、ステップS150に進む。
【0081】
ステップS150では、動的計画法により最適解の導出が行われ、タップ計画値が算出される。タップ計画値の算出は、タップ計画値算出部86により行われる。タップ計画値算出部86は、初期時刻から終了時刻までの所定期間内における選択可能タップ及びタップ最適値に基づき、(1)、(2)式に示したコスト評価関数を用いて、コスト評価関数を最小化する最適解を算出し、算出された最適解をタップ計画値とする。
【0082】
なお、最適解の算出は、動的計画法を用いて行うようにしてよい。また、タップ計画値の具体的な算出方法は、
図4乃至
図6を用いて説明した通りであるので、その詳細な説明を省略する。
【0083】
また、以上説明した本実施形態に係るタップ計画値算出方法及びタップ計画算出装置80は、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現可能であり、これらの処理をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムとして構成することが可能である。コンピュータプログラムは、例えば、
図4のタップ計画値算出装置80の記憶部82に保存され、CPU87により実行されてもよい。
【0084】
図8は、配電系統において多段にタップ付き変圧器が設置されている場合にタップ計画値の算出順序について説明するための図である。
【0085】
図8において、配電系統71が示されている。配電系統71は、LRT25と、母線15と、SVR26〜28と、SVC(Static Var Compensator)130〜134とを備える。LRT25の下流に母線15が接続され、母線15に配電線16、17が並列接続されている。配電線16上にはSVR26、28が設置され、SVR26の上流側にSVC130、下流側にSVC132、SVR28の下流側にSVC134が設けられて配電線16に接続されている。また、配電線17上にはSVR27が設置され、SVR27の上流側にSVC131、下流側にSVC133が設けられ、それぞれ配電線17に接続されている。
【0086】
また、LRT25の制御範囲FがSVC130、131であり、SVR26の制御範囲GがSVC132であり、SVR27の制御範囲HがSVC133であり、SVR28の制御範囲IがSVC134であることが各々示されている。更に、LRT制御範囲Fは第1階層、SVR26の制御範囲G及びSVR27の制御範囲Hが第2階層、SVR28の制御範囲Iが第3階層であることが示されている。
【0087】
なお、
図8においては、LRT25、SVR26〜28の制御対象として、SVC130〜134が接続された例が示されているが、これらは、
図1の負荷50〜57、分散電源60〜64と同等であり、負荷/分散電源130〜134と置き換えてもよい。
図8においては、便宜上、SVC130〜134が設けられている例を挙げて説明する。
【0088】
配電系統71は放射状に形成されているため、制御範囲は、
図8に示す通り、階層的に構成される。このような階層的な制御範囲を有する配電系統71においては、上位側の制御範囲から下位側の制御範囲に順にタップ計画値を算出すればよい。つまり、最初に第1階層のLRT25のタップ計画値を算出し、次に、第2階層のSVR26、27のタップ計画値を算出し、最後に第3階層のSVR28のタップ計画値を算出すればよい。配電系統71の下流側は、上流側の電圧変動等の影響を受けるため、上流側の電圧が定まらないと、下流側の電圧を定めることができない。よって、タップ計画値の算出においても、上位の制御範囲から下位側の制御範囲に順に算出するようにする。
【0089】
図9は、本発明の実施形態に係るタップ指令値決定装置の一例を示した構成図である。タップ指令値決定装置90は、タップ計画値算出装置80にて得られたタップ計画値を利用し、オンラインでLRT20及びSVR21、22のタップ指令値を導出して配電系統70の電圧制御を行う。タップ指令値決定装置90は、入力部91と、タップ計画値取得部92と、タップ現在値取得部93と、選択可能タップ算出部94と、タップ最適値算出部95と、タップ指令値決定部96と、出力部97とを有する。
【0090】
入力部91は、センサ30〜32で検出した配電系統70の所定位置における電圧、電流、位相等の計測値が入力される入力手段である。その他、入力部91は、予め算出されたタップ計画値のデータが入力されてもよい。
【0091】
タップ計画値取得部92は、タップ計画値算出装置80で算出されたタップ計画値を取得する手段である。タップ計画値取得部92は、予めタップ計画値を保存するメモリ等の記憶手段として構成されてもよいし、タップ計画値算出装置80からタップ計画値をリアルタイムに読み取るデータ読み取り手段として構成されてもよい。
【0092】
タップ現在値取得部93は、タップ現在値を取得する手段であり、データ通信線120を用いて、又は時刻t−1における制御結果から、タップ付き変圧器であるLRT20、SVR21、22の時刻tにおけるタップ現在値を取得する。
【0093】
選択可能タップ算出部94は、センサ30〜32で検出された電圧、電流、位相等の時刻t−1における計測値から、時刻tにおける選択可能タップを算出する演算処理手段である。
【0094】
タップ最適値算出部95は、選択可能タップ算出部94で算出された選択可能タップに基づき、時刻tにおけるタップ最適値を算出する演算処理手段である。
【0095】
タップ指令値決定部96は、選択可能タップの中から、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値のいずれかをタップ指令値として選択決定するための演算処理手段である。なお、タップ指令値決定部95によるタップ指令値の決定方法の詳細は後述する。
【0096】
出力部97は、タップ指令値決定部96で選択決定されたタップ指令値を出力する手段である。具体的には、出力部97は、データ通信線120に接続され、データ通信線120を介してタップ指令値を送信し、タップ付き変圧器であるLRT20、SVR21、22のタップ制御を行う。
【0097】
次に、
図10乃至
図19を参照して、タップ指令値決定装置90によるタップ指令値決定方法について説明する。具体的には、選択可能タップ算出部94で算出された選択可能タップ、タップ最適値算出部95で算出されたタップ最適値、及びタップ計画値手段部92で取得されたタップ計画値と、タップ現在値取得部93で取得されたタップ現在値とに基づいて、タップの指令値(LRT20、SVR21、22に選択させるタップの位置)の決定方法(選択方法)について説明する。なお、タップ現在値とは、LRT20、SVR21、22における現時点のタップ位置を示す値であり、時刻tのタップ指令値を定めようとする場合には、時刻t−1におけるタップ位置を意味する。タップ現在値をタップ指令値として選択し続ければ、タップ切換回数は最小となる。但し、負荷50〜57の消費電力、各分散型電源60〜64の発電電力は時々刻々と変化するため、現時点でタップ現在値を選択しても、各地点電圧が適正範囲に維持できるとは限らない。即ち選択可能タップの中にタップ現在値が含まれるとは限らない。
【0098】
図10は、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値の内、選択可能タップの中に唯一タップ最適値のみが存在した状態を説明するための図である。
図10においては、例えば、選択可能タップはt3〜t5であり、タップ現在値はタップt2であり、タップ最適値はタップt4であり、タップ計画値はタップt6であることとする。このような場合、タップ最適値をタップ指令値として選択する。なぜならば、選択可能タップでないタップ候補値を選択すると、各地点の電圧が適正範囲を維持できないためである。
【0099】
次に選択可能タップの中に、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値の何れか複数
のタップ候補値が存在した場合について説明する。
【0100】
まず、
図11に示すように、中央に位置するタップ候補値がタップ最適値の場合を考える。ここでは、例えば、選択可能タップはt2〜t6であり、タップ現在値はタップt3であり、タップ最適値はタップt4であり、タップ計画値はタップt5であることとする。この場合、タップ現在値と比較し、現時点での最適値(タップ最適値)と、長期的な最適値(タップ計画値)が同一タップ方向(タップt10の方向、例えば降圧方向)にあることから、タップ最適値、タップ計画値のいずれかを選択すべきである。タップ計画値を選択すべきか否かについては今後の推移を見て判断することとし、本ケースでは現時点での最適値であるタップ最適値を選択する。なお、
図11では、タップ最適値、タップ計画値がタップt10方向(降圧方向)にあることしたが、例えば、
図12に示すように、タップt1方向(昇圧方向)にある場合であっても、同様である。つまり、
図12の場合であっても、現時点での最適値であるタップ最適値を選択する。
【0101】
次に、
図13に示すように、中央に位置するタップ候補値がタップ計画値の場合を考える。なお、以下の
図13等では、便宜上各値(例えば、タップ最適値)に対するタップの位置(例えば、t5等)は省略する。この場合、タップ現在値と比較し、現時点での最適値(タップ最適値)と、長期的な最適値(タップ計画値)が同一タップ方向にあることから、タップ最適値、タップ計画値のいずれかを選択すべきである。タップ最適値を選択すると長期的に見て過制御となり、タップ切換回数が増大する可能性があることから、本ケースでは長期的な最適値であるタップ計画値を選択する。また、
図14の場合も
図13の場合と同様に、長期的な最適値であるタップ計画値を選択する。
【0102】
最後に、
図15、16に示すように、中央に位置するタップ候補値がタップ現在値の場合を考える。この場合、現時点での最適値(タップ最適値)と、長期的な最適値(タップ計画値)が異なるタップ方向にあり、トレンドが判断できないことからタップ現在値を選択する。
【0103】
以上の結果をまとめると、選択可能タップの中に、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値の何れか複数のタップ候補値が存在した場合、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値の内、タップ位置が中央に位置するタップ候補値を選択する。つまり、LRT20の2次側の電圧を最も高くする値と、LRT20の2次側の電圧を最も低くする値との間の値が選択される。なお、ここでは、
図11〜
図16では、選択可能タップの中に、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値の3つが含まれていることとしたが、例えば、選択可能タップの中に、タップ計画値及びタップ現在値のうちの何れか一方の値と、タップ最適値との2つが含まれている場合も同様であり、3つの中の中央のタップ値を選択する。
【0104】
なお、
図17、18に示すように、選択可能タップの中に、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値の何れか複数が存在し、そのタップ候補値の内、2つ以上が同一のタップ値に重なっている場合は、重なったタップ候補値を中央値とみなして、そのタップ候補値を選択する。つまり、例えば、
図17の場合には、タップ最適値、タップ現在値がタップ指令値として選択される。また、
図18の場合には、タップ最適値、タップ計画値及びタップ現在値の総てが同一のタップ値に重なっているので、重なったタップ候補値を中央値とみなし、タップ最適値、タップ計画値及びタップ現在値をタップ指令値として選択する。
【0105】
図19は、タップ付き変圧器に対し、タップ指令値決定装置90がタップ指令値S1を出力する際に実行する処理の一例を示す処理フロー図である。なお、
図19では、LRT20を制御対象としている例について説明する。
【0106】
ステップS200では、選択可能タップ算出部94で選択可能タップ、タップ最適値算出部95でタップ最適値、タップ計画値取得部92でタップ計画値、タップ現在値取得部93でタップ現在値が各々取得される。
【0107】
ステップS210では、タップ指令値決定部96が、選択可能タップ(選択可能なタップの切り換え範囲)にタップ最適値のみが存在するか否かを判定する。選択可能タップにタップ最適値のみが存在する場合(ステップS210;Yes)には、ステップS220に進み、タップ最適値をタップ指令値として選択する。
【0108】
一方、ステップS210において、選択可能タップにタップ最適値以外の値が存在する場合(ステップS210;No)には、ステップS230に進み、タップ指令値決定部96は、タップ最適値、タップ計画値、タップ現在値に同じ値(重複値)があるか否かを判定する。そして、重複値がない場合(ステップS230;No)には、ステップS240に進み、タップ指令値決定部96は、タップ最適値のタップ位置、タップ計画値のタップ位置、タップ現在値のタップ位置のうち、中央のタップ位置の値をタップ指令値として選択する。
【0109】
一方、ステップS230において、重複値があると判定された場合(ステップS230;Yes)には、ステップS250に進み、タップ指令値決定部96は、重複値の値をタップ指令値として選択する。そして、出力部97は、タップ指令値決定部96で選択されたタップ指令値を出力する(ステップS260)。この結果、タップ指令値決定装置90からの出力により、LRT20は、タップ指令値S1で指定されるタップを選択することになる。
【0110】
なお、ここでは、LRT20のタップ指令値を出力する例について説明したが、SVR21、22のタップ指令値を出力する場合も同様である。つまり、LRT20を制御対象とする場合と同様の処理を実行し、各々のタップ指令値をSVR21、22のそれぞれに出力する。このため、SVR21、22も、タップ指令値で指定されるタップを選択することになる。
【0111】
このように、本実施形態に係るタップ指令値決定方法によれば、タップ計画値を利用して、電圧を適正範囲内に維持しつつ、タップ切換回数を低減する電圧制御を行うことができる。
【0112】
図20は、本発明の実施形態に係る制御目標値算出装置100の一例を示した構成図である。制御目標値算出装置100は、入力部101と、タップ計画値取得部102と、制御目標値算出部103と、出力部104とを備える。
【0113】
入力部101は、制御目標値の算出に必要なデータが入力される入力手段である。また、入力部101は、タップ計画値のデータも入力可能である。
【0114】
タップ計画値取得部102は、タップ計画値算出装置80により算出されたタップ計画値を取得する手段であり、タップ計画値のデータを保存する記憶手段、又はタップ計画値算出装置80のタップ計画値データを読み取る読み取り手段として構成されてよい。
【0115】
制御目標値算出部103は、タップ計画値取得部102で取得されたタップ計画値を利用しつつ、監視制御装置110の制御目標を算出する演算処理手段である。具体的には、監視制御装置110の電圧制御方式がLDC方式の場合には、タップ計画値を考慮したLDC整定値を算出し、プラグラマブルコントロール方式の場合には、タップ計画値を考慮した目標電圧を算出する。
【0116】
出力部104は、算出した制御目標値を出力する手段であり、例えば、監視制御装置110の制御目標値として出力する。
【0117】
このように、本実施形態に係る制御目標値算出装置100によれば、タップ計画値を利用した制御目標値算出方法を実施することができる。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。