(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の
第一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態の包装袋1を示す斜視図である。包装袋1は、積層フィルム10を用いて袋状に形成されている。本実施形態の包装袋1は、一枚の積層フィルム10の端部10aと端部10bとを熱融着して略筒状にした後、当該筒状形状の管腔が延びる方向の両端部10cおよび10dを熱融着により接合することで袋状に形成されている。
本発明の包装袋において、積層フィルムを袋状に形成する手順や方法には特に制限はない。例えば、2枚の積層フィルムを対向配置し、周縁部を熱融着により接合することで包装袋が形成されてもよいし、他の方法がとられても構わない。
【0013】
図2は、積層フィルム10の断面図である。積層フィルム10は、二軸延伸ナイロンフィルムからなる耐ピンホール層20と、耐ピンホール層20の一方の面に設けられた内層部30と、耐ピンホールの他方の面に設けられたガスバリア層40と、ガスバリア層40上に設けられた保護外層60とを備えている。
【0014】
耐ピンホール層20を構成する二軸延伸ナイロンフィルムとしては、6-ナイロン、6,6-ナイロン、MXD(メタキシレンジアミン)ナイロン等を用いることができる。耐ピンホール層20の厚さは、5〜100μmの範囲内で適宜設定することができ、10〜50μmの範囲で設定されるのが好ましい。
耐ピンホール層20により、包装袋1の耐ピンホール性および耐衝撃性が発揮される。
【0015】
内層部30は、各層が直鎖状低密度ポリエチレンで形成された三層構造を有し、熱融着されるシーラント層として機能する。中心の第一層31は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m
3未満の直鎖状超低密度ポリエチレンからなり、第一層31の厚さ方向両側に形成された第二層32および第三層33は、JIS K7112で測定した密度が915kg/m
3以上の直鎖状低密度ポリエチレンからなる。内層部30の厚さは、5〜300μmの範囲内で適宜設定することができ、10〜100μmの範囲で設定されるのが好ましい。
内層部30の各層の形成方法には特に制限はなく、共押出や、サンドウィッチラミネーションなど、公知の各種方法が適宜選択されてよい。本実施形態において、内層部30は、上述の三層構造を有するフィルムを、接着剤51を用いたドライラミネーションにより耐ピンホール層に積層することにより形成されているが、これは必須ではない。例えば内層部30の各層を構成する樹脂を耐ピンホール層20上に塗布することにより形成されてもよい。
【0016】
ガスバリア層40の構成としては、1.二軸延伸ナイロンフィルムに酸化アルミニウム、酸化珪素等の無機化合物の蒸着層を設けたもの、2.二軸延伸ナイロンフィルムに塩化ビニリデン樹脂をコーティングしたもの、3.ポリアミド系樹脂層とエチレンビニルアルコール共重合体樹脂層とを含む二軸延伸共押出ナイロンフィルム、4.ポリアミド系樹脂層とMXD樹脂層とを含む二軸延伸共押出ナイロンフィルム、等が考えられる。バリア層の厚さとしては、5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲内で適宜設定することができる。ガスバリア層40に用いられる二軸延伸ナイロンフィルムとしては、耐ピンホール層30と同様のものを用いることができる。
ガスバリア層40は、接着剤52を用いたドライラミネーションにより耐ピンホール層20に積層されている。
【0017】
保護外層60は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる一号層61と、一号層61上に形成された熱融着層62とを備えている。保護外層60は、一号層61および熱融着層62を備える樹脂フィルムを、接着剤53を用いたドライラミネーションによりガスバリア層40上に積層することにより形成されている。
保護外層60の厚さは、5〜100μm、好ましくは15〜40μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0018】
積層フィルム10の形成に用いる接着剤51、52、53としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系等を主成分とする溶剤型、水性型、無溶剤型、あるいは、熱溶融型等の各種のラミネート用接着剤を用いることができる。ただし、内層部30を積層するための接着剤51は、包装袋1内に透過しうる残留溶剤量を低くする観点からは、無溶剤型のものを用いるのが好ましい。接着剤層の形成は、上述したラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デッブコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングすることにより行える。接着剤の塗布量としては、0.1〜5g/m
2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0019】
包装袋1は、ガゼット包装の折り込み部が展開された、略四角柱状に形成されている。折り込み部における包装袋1の上側端部10cにおいて、折り込み部の上部に位置する部位は、熱融着層62を用いたヒートシールによって一体に接合されている。包装袋1の下側端部10dも、四角形の底面を形成するように、熱融着層62を用いたヒートシールによって一体に接合されるとともに、包装袋の外表面に沿うように固着されている。これにより、包装袋1は、全体としていわゆるゲーブルトップ様の形状を呈している。
【0020】
上記のように構成された積層フィルム10を用いて形成された包装袋1には、以下のような利点がある。
包装袋1の内層部30は、耐衝撃性及び耐ピンホール性の観点からは低密度であることが望ましい。しかし、密度が低いと無菌充填包装システム内における過酸化水素水を用いた殺菌浸漬工程、およびその後の乾燥工程で高温にさらされると、収縮してしまうという問題がある。
本発明の内層部30は、相対的に密度の低い第一層31を相対的に密度の高い第二層32および第三層33で挟んだ構成としているため、第一層31で耐ピンホール性や耐衝撃性を付加しつつ、第二層32および第三層33で、過酸化水素水の殺菌浸漬工程、乾燥工程に耐えうる耐熱性を確保することができる。
【0021】
また、耐ピンホール層20およびガスバリア層40が二軸延伸ナイロンフィルムを用いて形成されているため、積層フィルム10の厚さ方向中心部に2枚のナイロンフィルムが存在し、剛性が高められている。
さらに、包装袋1の外表面となる保護外層60の最上層には柔軟な熱融着層62が設けられているため、落下時の衝撃を吸収するとともに、熱融着層62により一体に接合された包装袋の上下の端部10c、10dは接合されていない状態に比べて剛性が上昇し、破壊されにくくなる。
これらの効果があいまって、包装袋1が落下した際の破袋が好適に防止される。その結果、過酸化水素を用いた殺菌に適した構成でありながら破袋しにくい包装袋とすることができる。
【0022】
略四角柱状の包装容器としては、例えば牛乳パックのような紙を含む包装材料を用いたものが多く市場に出回っているが、アセプティック充填では、紙を過酸化水素水で完全に殺菌することが出来ず、しばしば菌が繁殖してしまうことがある点が問題である。上述の積層フィルム10を用いて四角柱状の包装袋を形成すれば、紙を使用しないため上述の問題を解決でき、より好適な殺菌充填を行うことができる。
さらに、包装袋1の下側端部が熱融着により包装袋の表面に沿うように固着されているため、包装袋を立てておくことが容易になり、輸送や保存を効率よく行うことができる。
【0023】
本発明の包装袋の第二実施形態について、
図3を参照して説明する。本実施形態の包装袋と第一実施形態の包装袋との異なるところは、材料である積層フィルムの層構造である。なお、以降の説明において、既に説明したのと共通する構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図3は、本実施形態の包装袋を形成する積層フィルム11の断面図である。積層フィルム11は、保護外層60に代えて保護外層70を備えている。保護外層70は、三層構造の無延伸共押出フィルムを、接着剤53を用いたドライラミネーションによりガスバリア層40上に積層することにより形成されている。
積層フィルム11において、内層部30を積層するための接着剤51は、無溶剤型の接着剤が用いられている。
【0024】
保護外層70は、無延伸のナイロンフィルムからなる中心部71と、中心部71の厚さ方向両面にそれぞれ形成された無延伸のポリオレフィン層72、73とを備えている。保護外層70の厚さは、5〜100μmの範囲内で適宜設定することができ、20〜60μmの範囲で設定されるのが好ましい。
包装袋の外表面を構成するポリオレフィン層73は熱融着可能な層である。
【0025】
積層フィルム10を形成する際は、まず耐ピンホール層20とガスバリア層40とを接着剤52を用いたドライラミネーションにより貼り合わせる。次に、貼り合わせた材料のガスバリア層40側の面に接着剤53を塗布して保護外層70を貼り合わせる。最後に、保護外層70を貼り合わせた材料の耐ピンホール層20側の面に接着剤51を塗布して内層部30を貼り合わせる。
ここで、内容物への影響を防ぐ等の目的で接着剤に含まれる溶剤を除去したい場合、ラミネーション前に加熱をすればよいが、本実施形態では、保護外層70および内層部30のいずれも柔軟であるため、加熱すると収縮してしまう。このため、接着剤53の塗布後に耐ピンホール層30とガスバリア層40とを貼り合わせた材料を加熱し、溶剤を除去した後に保護外層70を貼り合わせることで、保護外層70を加熱せずにラミネーションを行う。また、保護外層70を貼り合わせた材料は加熱できないため、無溶剤型の接着剤51を塗布して、加熱をせずに内層部30をラミネーションにより積層する。これにより、内層部30および保護外層70のいずれも加熱せず、かつ内容物に近い接着剤に溶剤が含まれない積層フィルム10を形成することができる。その結果、溶剤の悪影響が内容物へ及ばない包装袋を形成することができる。
なお、第一実施形態では、保護外層60が二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる一号層61を備えているため、ガスバリア層40および耐ピンホール層20に積層された後においては加熱に耐えうる構成となっている。したがって、保護外層60を貼り合わせた材料に接着剤51を塗布した後、加熱して溶剤を除去することができるため、内層部30を貼り合わせるための接着剤51が溶剤型であっても、内容物に近い接着剤に溶剤が含まれない積層フィルムとすることが可能である。
【0026】
本実施形態の包装袋においては、保護外層70の表面がポリオレフィンで形成されているため、表面の濡れ性が低くなっている。これにより、過酸化水素水を用いた殺菌時には、表面に付着した過酸化水素水が速やかに除去され、迅速に乾燥される。また、過酸化水素耐性のない中心部71がポリオレフィン層72、73によって好適に保護される。
【0027】
また、内層部30が無溶剤型のラミネート用接着剤51により耐ピンホール層20に貼り合わされているため、無延伸フィルムの収縮を防ぐために低い温度で乾燥を行っても残留溶剤について考慮する必要がない。したがって、残留溶剤の内容物への影響を低減した無菌包装袋として好適に使用することができる。
【0028】
以下、実施例および比較例を参照して、本発明の包装袋についてさらに説明するが、本発明は、各例の具体的内容には何ら限定されない。
(実施例1)
保護外層60の材料として、ポリオレフィンからなる熱融着層(層厚2μm)が形成された二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)、商品名:FOH、厚さ20μm)を用いた。このフィルムにドライラミネーション機を用いて溶剤系接着剤(三井化学(株)、商品名:A525)を塗工し、ガスバリア層40となる厚さ15μmのアルミナ蒸着二軸延伸ナイロンフィルム(凸版印刷(株)、商品名:GL-AEYBC)と貼りあわせた。次に、上述の溶剤系接着剤を用いて耐ピンホール層20となる厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(興人(株)、商品名:ボニールW)と貼り合わせ、最後に上述の溶剤系接着剤を用いて厚さ80μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)、商品名:MZ180)を積層して内層部30とした。内層部30の構成は、第一層31:厚さ30μmのポリエチレン(900kg/m
3)、第二層32および第三層33:いずれも厚さ20μmのポリエチレン(915kg/m
3)である。
上記のように形成された積層フィルムを用いて縦90mm、横90mm、高さ200mm、満容積1620mlの、
図1に示すような略ゲーブルトップ型の包装袋を作製し、実施例1の包装袋とした。包装袋において、上方の端部10cは、熱融着層を用いたヒートシールにより一体に接合し、下方の端部10dは、ヒートシールにより包装袋の外表面に沿うように固着させた。
【0029】
(実施例2)
保護外層70の材料として、厚さ40μmの無延伸共押出フィルム(タマポリ(株)、商品名:ZPB102)を用いた。保護外層の構成は、中心部71:厚さ8μmのナイロン、ポリオレフィン層72、73:いずれも厚さ16μmのポリエチレンである。また、内層部の積層には、無溶剤接着剤(東洋インキ(株)、商品名:ADN401)を用いた。それ以外の点は実施例1と同様の手順で実施例2の包装袋を作製した。
【0030】
(比較例1)
内層部に代えて、直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ70μmの単層フィルム(三井化学東セロ(株)、商品名:TUX-FCS、全層密度920kg/m
3)を使用した点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1の包装袋を作製した。
【0031】
(比較例2)
内層部に代えて、直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ70μmの単層フィルム(全層密度914kg/m
3)を使用した点を除き、実施例1と同様の手順で比較例2の包装袋を作製した。
【0032】
(比較例3)
特許文献1に記載の実施例に倣い、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(興人(株)、商品名:ボニールW)にドライラミネーション機を用いて溶剤系接着剤A525を塗工し、エチレン系重合体樹脂フィルムと貼り合わせた。さらに同一の溶剤系接着剤を用いて実施例1と同一の厚さ80μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ(株)、商品名:MZ180)を積層して、比較例3の包装袋とした。
【0033】
(比較例4)
内層部に代えて、直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ70μmの単層フィルム(三井化学東セロ(株)、商品名:TUX-FCS、全層密度920kg/m
3)を使用した点を除き、実施例2と同様の手順で比較例4の包装袋を作製した。
【0034】
(比較例5)
内層部に代えて、直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ70μmの単層フィルム(全層密度914kg/m
3)を使用した点を除き、実施例2と同様の手順で比較例5の包装袋を作製した。
【0035】
(比較例6)
保護外層として、熱融着層を備えない二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)、商品名:FOR、厚さ20μm)を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例6の包装袋を作製した。熱融着層がないため、折り込み部の上下に位置する端部は一体に接合されず、包装袋の外表面に沿うように固着されなかった。
【0036】
(比較例7)
内層部の積層に上述の溶剤系接着剤A525を用いた点を除き、実施例2と同様の手順で比較例7の包装袋を作製した。
【0037】
各実施例および各比較例の包装袋について、以下の試験を行った。
(落下試験)
包装袋に1200mlの水を後述の要領でアセプティック充填したサンプルを各例10個ずつ作製し、高さ0.5mの位置から落下させて、破袋した包装袋の数を評価した。
【0038】
(ピッチ測定試験)
包装袋の外表面に一定間隔でマーキングを印刷し、アセプティック充填前後でマーキングの間隔を測定し、間隔の減少値を包装袋の収縮量とした。
アセプティック充填は、約60℃に加温した過酸化水素水に充填前の包装袋をドブ漬けし、60℃の温風で乾燥させた後に内容物を充填する手順で行った。
【0039】
(残留溶剤測定試験)
各例の積層フィルムから100mm四方の領域を切り出して四つ折りにし、折線に沿って四つに裁断した。裁断した積層フィルムを20mlバイアル瓶に入れ、ガスクロマトグラフィー(アジレント製:7890A)にて80℃で20分加熱し、積層フィルムに含まれる残留溶剤の量を測定した。
【0042】
表1に示すように、実施例では落下試験において破袋がなかったのに対し、比較例1、4、および6では4つ、比較例3では7つのサンプルが破袋した。比較例1および4では包装袋の内側が柔軟性に欠ける構成であること、比較例3では二軸延伸ナイロンフィルムが二層積層されていないことが、それぞれ破袋の一因であると考えられた。比較例6と実施例1とでは、外表面に熱融着層があるかないか、および包装袋の端部が熱融着により固着されているか否かの点のみ異なるため、これらの違いが破袋抑制に貢献していると考えられた。
無溶剤型接着剤を用いた積層フィルムでは、残留溶剤を低く抑えることができた。比較例6では、内層部を積層するための接着剤層に溶剤系接着剤を用いているものの、内層部を最後に積層することでこの溶剤系接着剤を十分加熱することができたため、残留溶剤は低く抑えられた。しかし、比較例7では、保護外層および内層部のいずれも高熱に耐えられない構成であったため、残留溶剤が多くなってしまった。
ピッチ測定試験では、比較例2および5で大きい収縮が認められた。これは、内側のポリエチレン層の密度が低いために収縮が顕著になったものと考えられた。
【0043】
以上、本発明の各実施形態および実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したり、各実施形態の構成を組み合わせたりすることが可能である。
例えば、内層部を積層するための接着剤層と保護外層を積層するための接着剤層との両方に溶剤型接着剤を用いる場合、耐ピンホール層とガスバリア層とを積層した後に、内層部を積層するための接着剤層を形成し、加熱して溶剤を除去してから内層部を積層する。その後、外層部を積層するための接着剤層を形成し、通常よりも低温で加熱してから保護外層を積層してもよい。このようにすると、保護外層側の接着剤については残留溶剤が多くなるが、内容物に対する影響が大きい内層部側の接着剤では残留溶剤が少なくなるため、内容物への影響の少ない包装袋を構成することが可能である。
【0044】
また、本発明の包装袋は、略角柱状のものに限られず、角柱状に展開されない状態のガゼット包装や、ピロー包装等の形状であってよい。このような場合も、折り込み部に位置する端部を熱融着により一体に接合したり、ピロー包装を形成する際に積層フィルムを筒状にする際に接合するいわゆる背側シール等の端部を、熱融着により包装袋の外表面に沿うように固着させたりすることにより、破袋しにくい包装袋とすることが可能である。