(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光素子から出射され、第1部材を通過し、第2基板の第1面から第2基板に入射した光の一部を、反射し、第2基板の第2面から出射させる光反射部材が、第2基板に形成されている請求項1に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の表示装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の表示装置。本開示の第1の形態及び第2の形態の表示装置)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形)
6.実施例5(実施例1の更に別の変形)
7.実施例6(実施例1の更に別の変形。本開示の第1の形態及び第3の形態の表示装置)
8.実施例7(実施例6の変形)
9.実施例8(実施例6の別の変形)
10.実施例9(実施例6の更に別の変形)
11.実施例10(実施例1の更に別の変形。本開示の第1の形態及び第4の形態の表示装置)、その他
【0011】
[本開示の表示装置、全般に関する説明]
本開示の表示装置にあっては、第1部材と第2部材との界面において、第1部材を伝播した光が、少なくとも一部分、反射される形態とすることができる。尚、このような形態の表示装置を、便宜上、『本開示の第1の形態の表示装置』と呼ぶ。
【0012】
あるいは又、本開示の表示装置にあっては、第1部材と第2部材との界面には光反射膜が形成されている形態とすることができる。尚、このような形態の表示装置を、便宜上、『本開示の第2の形態の表示装置』と呼ぶ。本開示の第2の形態の表示装置にあっては、光反射膜を構成する材料に依存して、第1部材を伝播した光が、一部分、反射され、あるいは又、全て反射される。
【0013】
あるいは又、本開示の表示装置にあっては、第1部材を構成する材料の屈折率をn
1、光吸収層を含む第2部材を構成する材料の平均屈折率をn
2-aveとしたとき、
1.1≦n
1≦1.8
好ましくは、
1.2≦n
1≦1.6
を満足し、且つ、
n
1−n
2-ave≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2-ave≧0.3
を満足する形態とすることができる。尚、このような形態の表示装置を、便宜上、『本開示の第3の形態の表示装置』と呼ぶ。また、光吸収層を除く第2部材を構成する材料の屈折率をn
2、光吸収層を構成する材料の屈折率をn
2’としたとき、
n
1−n
2≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2≧0.3
を満足し、
n
1−n
2’≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2’≧0.3
を満足することが好ましい。
【0014】
このように、本開示の第3の形態の表示装置にあっては、屈折率n
1の値、及び、屈折率n
1と平均屈折率n
2-aveとの差の値が規定されているので、第1部材と第2部材との界面に光反射部材等を設けなくとも、発光素子からの外部への光取出し効率の一層の向上を図ることができる。
【0015】
本開示の第3の形態の表示装置において、第1部材と第2部材との間に、第2電極が形成されている形態とすることができ、あるいは、有機層及び第2電極が形成されている形態とすることができる。このような場合、第2部材と第2電極との界面において、あるいは又、第2部材と有機層との界面において、第1部材を伝播した光が、少なくとも一部分、反射されるが、これらの形態も、「第1部材と第2部材との界面において、第1部材を伝播した光が、少なくとも一部分、反射される」形態に包含される。
【0016】
本開示の第2の形態の表示装置あるいは本開示の第3の形態の表示装置は、例えば、
第1基板上に層間絶縁層を形成し、層間絶縁層上に第1電極を形成した後、
第1電極及び層間絶縁層上に第2部材形成層(光吸収層を含む)を形成し、次いで、第1電極上の第2部材形成層を選択的に除去することで、開口部の斜面が傾斜した第2部材を得た後、
開口部の底部に露出した第1電極上から開口部の斜面に亙り、有機層及び第2電極を形成し、次いで、本開示の第2の形態の表示装置にあっては、開口部の斜面の上に光反射膜を形成した後、
第2電極上に第1部材を形成する、
各工程に基づき製造することができる。あるいは又、
第1部材と相補的な形状を有するスタンパを準備し、
支持基板上に樹脂材料を塗布した後、
スタンパを用いて樹脂材料を賦形した後、スタンパを取り除き、凸部を有する樹脂材料層を得た後、
樹脂材料層の凸部の頂部を平坦化し、次いで、本開示の第2の形態の表示装置にあっては、光反射膜を凸部上に形成した後、樹脂材料層の凸部と凸部との間を接着剤層で埋め込み、その後、
支持基板から樹脂材料層を剥がし、接着剤層を第1基板に接着し、以て、接着剤層から成る第2部材(光吸収層を含む)、及び、樹脂材料層から成る第1部材を得る、
各工程に基づき製造することができる。
【0017】
これらの表示装置の製造方法にあっては、第2電極上に、直接、第1部材を形成することができるので、第2電極とリフレクタとの間に接着層が存在することに起因した発光素子から出射された光の取出しロスが無いし、あるいは又、スタンパを用いて接着剤層から成る第2部材及び樹脂材料層から成る第1部材を得ることができるので、簡素な製造方法にて、発光素子からの外部への光取出し効率の一層の向上を図ることができる表示装置を製造することができる。
【0018】
あるいは又、本開示の表示装置にあっては、発光素子から出射され、第1部材を通過し、第2基板の第1面から第2基板に入射した光の一部を、反射し、第2基板の第2面から出射させる光反射部材が、第2基板に形成されている形態とすることもできる。尚、このような形態の表示装置を、便宜上、『本開示の第4の形態の表示装置』と呼ぶ。光反射部材を備えた第2基板は、構成する材料にも依るが、例えば、第1面に凹部をスタンパを用いて形成し、あるいは又、第1面に凹部を切削加工に基づき形成し、係る凹部の露出した表面に光反射部材を形成した後、凹部を埋め込むといった方法で作製することができる。
【0019】
本開示の第2の形態の表示装置における光反射膜、本開示の第3の形態の表示装置における第1部材と対向する第2部材の表面(あるいは第1部材と第2部材の界面)、本開示の第4の形態の表示装置における光反射部材を総称して、以下、便宜上、『光反射部』あるいは『リフレクタ部』と呼ぶ場合がある。
【0020】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の表示装置にあっては、
第1部材及び第2部材の上に保護膜及び封止材料層が更に備えられており、
保護膜を構成する材料の屈折率をn
3、封止材料層を構成する材料の屈折率をn
4としたとき、
|n
3−n
4|≦0.3
好ましくは、
|n
3−n
4|≦0.2
を満足する形態とすることができ、これによって、保護膜と封止材料層との界面で光が反射又は散乱されることを効果的に防止することができる。尚、第1部材と保護膜を同時に形成し、第1部材と保護膜とが一体となった構造としてもよい。また、このような好ましい形態を含む後述する上面発光型の表示装置において、発光素子の中心部からの光の光量を1としたとき、発光素子から第1部材及び第2基板を介して外部に出射される光の光量は、1.5乃至2.0である形態とすることができる。
【0021】
前述したとおり、本開示の表示装置において、第2部材には光吸収層が設けられているが、具体的には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の表示装置において、第2部材は、光吸収層と、それ以外の層(便宜上、『第2部材構成層』と呼ぶ)とが積層された構造を有している構成とすることができ、あるいは又、第2部材は光吸収層から構成された構成(即ち、光吸収層は、第2部材の全体を占めている構成)とすることができる。そして、前者の構成にあっては、光吸収層は、第2部材の下部に設けられている構成とすることができ(即ち、第1基板側から、第2部材、第2部材構成層が積層された構造)、あるいは又、光吸収層は、第2部材の中間部に設けられている構成とすることができ(即ち、第1基板側から、第2部材構成層、光吸収層、第2部材構成層が積層された構造)、あるいは又、光吸収層は、第2部材の頂部に設けられている構成(即ち、第1基板側から、第2部材構成層、第2部材が積層された構造)とすることができる。尚、光吸収層を、2層以上、形成してもよい。
【0022】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置は、カラーフィルターを備えている構成とすることができる。
【0023】
表示装置をカラー表示装置とする場合、1つの画素は、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3つの副画素、あるいは、4つ以上の副画素から構成される。このようなカラー表示装置にあっては、赤色発光副画素を赤色光を発光する発光素子から構成し、緑色発光副画素を緑色光を発光する発光素子から構成し、青色発光副画素を青色光を発光する発光素子から構成してもよいし、上記の好ましい形態、構成を含む後述する上面発光型の表示装置において、第2基板はカラーフィルターを備えている構成とし、発光素子は白色光を発光する構成とし、各色発光副画素を、白色光を発光する発光素子とカラーフィルターとの組合せから構成してもよい。第2基板は遮光膜(ブラックマトリクス)を備えている構成としてもよい。同様に、後述する下面発光型の表示装置において、第1基板は、カラーフィルターや遮光膜(ブラックマトリクス)を備えている構成とすることができる。
【0024】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置において、発光素子と第1部材とは接している構成とすることができる。これによって、発光部から出射された光は、必ず、しかも、直接、第1部材に入射するので、光取出し効率の大幅な低下を招くことが無い。
【0025】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置において、各発光素子からの光は第2基板を介して外部に出射される構成とすることができる。尚、このような表示装置を『上面発光型の表示装置』と呼ぶ場合がある。但し、このような構成に限定されるものではなく、各発光素子からの光は第1基板を介して外部に出射される構造とすることもできる。尚、このような表示装置を『下面発光型の表示装置』と呼ぶ場合がある。
【0026】
本開示の第2の形態の表示装置における光反射膜、本開示の第4の形態の表示装置における光反射部材は、例えば、アルミニウム(Al)層、アルミニウム合金層(例えば、Al−Nd層)、クロム(Cr)層、銀(Ag)層、銀合金層(例えば、Ag−Pd−Cu層、Ag−Sm−Cu層)から構成することができ、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等によって形成することができる。
【0027】
あるいは又、本開示の第2の形態の表示装置における光反射膜は、第1部材を構成する材料の屈折率n
1よりも小さな屈折率を有する材料から構成することができる。ここで、このような光反射膜を構成する材料として、次に述べる本開示の第3の形態の表示装置における第2部材を構成する材料を挙げることができるし、この場合の第1部材を構成する材料として、次に述べる本開示の第3の形態の表示装置における第1部材を構成する材料を挙げることができる。尚、このような光反射膜を構成する材料の屈折率をn
2”としたとき、
n
1−n
2”≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2”≧0.3
を満足することが望ましい。
【0028】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の第3の形態の表示装置において、第1部材を構成する材料として、Si
1-xN
x、ITO、IZO、TiO
2、Nb
2O
5、臭素含有ポリマー、硫黄含有ポリマー、チタン含有ポリマー、ジルコニウム含有ポリマーを挙げることができるし、光吸収層を除く第2部材を構成する材料として、SiO
2、MgF、LiF、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマーを挙げることができる。
【0029】
また、本開示の第3の形態の表示装置を除く、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置において、第1部材を構成する材料として、また、光吸収層を除く第2部材を構成する材料として、SiO
2、Si
1-xN
x、TiO
2、Nb
2O
5、MgF、LiF、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、臭素含有ポリマー、硫黄含有ポリマー、チタン含有ポリマー、ジルコニウム含有ポリマーを挙げることができる。
【0030】
一方、光吸収層を構成する材料として、カーボン、金属薄膜(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等、あるいは、これらの合金から成る薄膜)、金属酸化物(例えば、酸化クロム)、金属窒化物(例えば、窒化クロム)、有機樹脂、黒色顔料等を含有するガラスペースト、カーボンブラック等の黒色顔料や黒色染料を含む各種樹脂を挙げることができる。具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。光吸収層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法とエッチング法との組合せ、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコーティング法とリフトオフ法との組合せ、スクリーン印刷法、リソグラフィ技術等、使用する材料に依存して適宜選択された方法にて形成することができる。光吸収層を構成する材料の屈折率n
2’と第2部材構成層を構成する材料の屈折率n
2との差は、出来る限り小さいことが好ましい。光吸収層とは、可視光の吸収率が90%以上、好ましくは99%以上である層を意味する。
【0031】
保護膜を構成する材料として、発光層で発光した光に対して透明であり、緻密で、水分を透過させない材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si
1-xN
x)、アモルファス酸化シリコン(α−Si
1-yO
y)、アモルファスカーボン(α−C)、アモルファス酸化・窒化シリコン(α−SiON)、Al
2O
3を挙げることができる。また、接着層を構成する材料として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤といった熱硬化型接着剤や、紫外線硬化型接着剤を挙げることができる。
【0032】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置(以下、これらを総称して、『本開示の表示装置等』と呼ぶ場合がある)において、1つの発光素子によって1つの画素(あるいは副画素)が構成されている形態にあっては、限定するものではないが、画素(あるいは副画素)の配列として、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、デルタ配列、又は、レクタングル配列を挙げることができる。また、複数の発光素子が集合して1つの画素(あるいは副画素)が構成されている形態にあっては、限定するものではないが、画素(あるいは副画素)の配列として、ストライプ配列を挙げることができる。1つの発光素子に対して複数の光反射部(リフレクタ部)が設けられている形態とすることができるし、1つの発光素子に対して1つの光反射部(リフレクタ部)が設けられている形態とすることができる。
【0033】
本開示の表示装置等において、光反射部は回転体の表面の一部(切頭回転体)から構成されており、回転体の回転軸である光反射部の軸線をz軸としたとき、z軸を含む仮想平面で光反射部を切断したときの光反射部の断面形状は、台形、あるいは、放物線の一部から構成されていることが好ましいが、それ以外から構成されていてもよく、回転体として、例えば、球面、回転楕円面、回転放物面とすることもできるし、3次以上の多項式、二葉線、三葉線、四葉線、連珠形、蝸牛線、正葉線、螺獅線、疾走線、公算曲線、引弧線、懸垂線、擺線、餘擺線、星芒形、半3次放物線、リサジュー曲線、アーネシー曲線、外サイクロイド、心臓形、内サイクロイド、クロソイド曲線、螺線に例示される曲線の一部を回転させて得られる曲面とすることもできる。また、場合によっては、1本の線分、あるいは、複数の線分の組合せ、線分と曲線の組合せを回転させて得られる面とすることもできる。あるいは又、光反射部は、切頭角錐(例えば、切頭三角錐、切頭四角錐、切頭六角錐、切頭八角錐等)から構成することができる。更には、光反射部をxy平面で切断したときの光反射部の外形線として、任意の閉曲線を挙げることができる。
【0034】
あるいは又、本開示に表示装置等において、1つの発光素子によって1つの画素(あるいは副画素)が構成されており、第1部材は切頭円錐形(あるいは切頭回転体)の形状を有し、光入射面の直径をR
1、光出射面の直径をR
2、高さをHとしたとき、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足する形態とすることができる。尚、切頭円錐形の斜面の断面形状(切頭円錐形の軸線を含む仮想平面で切頭円錐形を切断したときの断面形状。以下においても同様)は直線状であってもよいし、複数の線分の組合せであってもよいし、曲線から構成されていてもよい。発光部の直径をR
0としたとき、
0.5≦R
0/R
1≦1.0
を満足することが好ましい。
【0035】
あるいは又、本開示の表示装置等において、複数の発光素子が集合して1つの画素(あるいは副画素)が構成されており、第1部材は切頭円錐形(あるいは切頭回転体)の形状を有し、光入射面の直径をR
1、光出射面の直径をR
2、高さをHとしたとき、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足する形態とすることができる。1つの画素(あるいは副画素)を構成する発光素子の数として、3乃至1000を例示することができる。尚、切頭円錐形の斜面の断面形状は直線状であってもよいし、複数の線分の組合せであってもよいし、曲線から構成されていてもよい。発光部の直径をR
0としたとき、
0.5≦R
0/R
1≦1.0
を満足することが好ましい。
【0036】
隣接する発光素子において、第2部材の頂面の最短距離(便宜上、『構造間距離』と呼ぶ)として、0μmを挙げることができるし、あるいは又、2μm、4μmを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、表示装置に要求される仕様に依存する。
【0037】
上面発光型の表示装置における第1電極、あるいは又、下面発光型の表示装置における第2電極(これらの電極を、便宜上、『光反射電極』と呼ぶ場合がある)を構成する材料(光反射材料)として、光反射電極をアノード電極として機能させる場合、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)といった仕事関数の高い金属あるいは合金(例えば、銀を主成分とし、0.3質量%乃至1質量%のパラジウム(Pd)と、0.3質量%乃至1質量%の銅(Cu)とを含むAg−Pd−Cu合金や、Al−Nd合金)を挙げることができる。更には、アルミニウム(Al)及びアルミニウムを含む合金等の仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料を用いる場合には、適切な正孔注入層を設けるなどして正孔注入性を向上させることで、アノード電極として用いることができる。光反射電極の厚さとして、0.1μm乃至1μmを例示することができる。あるいは又、誘電体多層膜やアルミニウム(Al)といった光反射性の高い
光反射膜上に、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)等の正孔注入特性に優れた透明導電材料を積層した構造とすることもできる。一方、光反射電極をカソード電極として機能させる場合、仕事関数の値が小さく、且つ、光反射率の高い導電材料から構成することが望ましいが、アノード電極として用いられる光反射率の高い導電材料に適切な電子注入層を設けるなどして電子注入性を向上させることで、カソード電極として用いることもできる。
【0038】
一方、上面発光型の表示装置における第2電極、あるいは又、下面発光型の表示装置における第1電極(これらの電極を、便宜上、『半光透過電極』と呼ぶ場合がある)を構成する材料(半光透過材料あるいは光透過材料)として、半光透過電極をカソード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、有機層に対して電子を効率的に注入できるように仕事関数の値の小さな導電材料から構成することが望ましく、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と銀(Ag)[例えば、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)との合金(Mg−Ag合金)]、マグネシウム−カルシウムとの合金(Mg−Ca合金)、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)の合金(Al−Li合金)等の仕事関数の小さい金属あるいは合金を挙げることができ、中でも、Mg−Ag合金が好ましく、マグネシウムと銀との体積比として、Mg:Ag=5:1〜30:1を例示することができる。あるいは又、マグネシウムとカルシウムとの体積比として、Mg:Ca=2:1〜10:1を例示することができる。半光透過電極の厚さとして、4nm乃至50nm、好ましくは、4nm乃至20nm、より好ましくは6nm乃至12nmを例示することができる。あるいは又、半光透過電極を、有機層側から、上述した材料層と、例えばITOやIZOから成る所謂透明電極(例えば、厚さ3×10
-8m乃至1×10
-6m)との積層構造とすることもできる。積層構造とした場合、上述した材料層の厚さを1nm乃至4nmと薄くすることもできる。また、透明電極のみで構成することも可能である。あるいは又、半光透過電極に対して、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀合金、銅、銅合金、金、金合金等の低抵抗材料から成るバス電極(補助電極)を設け、半光透過電極全体として低抵抗化を図ってもよい。一方、半光透過電極をアノード電極として機能させる場合、発光光を透過し、しかも、仕事関数の値の大きな導電材料から構成することが望ましい。
【0039】
光反射電極の平均光反射率は50%以上、好ましくは80%以上であり、半光透過電極の平均光透過率は50%乃至90%、好ましくは60%乃至90%であることが望ましい。
【0040】
第1電極や第2電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)やMOCVD法、イオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、メタルマスク印刷法といった各種印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。各種印刷法やメッキ法によれば、直接、所望の形状(パターン)を有する第1電極や第2電極を形成することが可能である。尚、有機層を形成した後、第1電極や第2電極を形成する場合、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さな成膜方法、あるいは又、MOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、有機層のダメージ発生を防止するといった観点から好ましい。有機層にダメージが発生すると、リーク電流の発生による「滅点」と呼ばれる非発光画素(あるいは非発光副画素)が生じる虞がある。また、有機層の形成からこれらの電極の形成までを大気に暴露することなく実行することが、大気中の水分による有機層の劣化を防止するといった観点から好ましい。場合によっては、第1電極あるいは第2電極のいずれか一方は、パターニングしなくともよい。
【0041】
本開示の表示装置等にあっては、複数の発光素子は第1基板上に形成されている。ここで、第1基板として、あるいは又、第2基板として、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na
2O・CaO・SiO
2)基板、硼珪酸ガラス(Na
2O・B
2O
3・SiO
2)基板、フォルステライト(2MgO・SiO
2)基板、鉛ガラス(Na
2O・PbO・SiO
2)基板、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。第1基板と第2基板を構成する材料は、同じであっても、異なっていてもよい。但し、上面発光型の表示装置にあっては、第2基板は、発光素子が出射する光に対して透明であることが要求され、下面発光型の表示装置にあっては、第1基板は、発光素子が出射する光に対して透明であることが要求される。
【0042】
本開示の表示装置等として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置と略称する)を挙げることができ、有機EL表示装置をカラー表示の有機EL表示装置としたとき、有機EL表示装置を構成する有機EL素子のそれぞれによって、上述したとおり、副画素が構成される。ここで、1画素は、上述したとおり、例えば、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、及び、青色を発光する青色発光副画素の3種類の副画素から構成されている。従って、この場合、有機EL表示装置を構成する有機EL素子の数をN×M個とした場合、画素数は(N×M)/3である。有機EL表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータを構成するモニター装置として使用することができるし、テレビジョン受像機や携帯電話、PDA(携帯情報端末,Personal Digital Assistant)、ゲーム機器に組み込まれたモニター装置として使用することができる。あるいは又、電子ビューファインダー(Electronic View Finder,EVF)や頭部装着型ディスプレイ(Head Mounted Display,HMD)に適用することができる。あるいは又、本開示の表示装置等として、その他、液晶表示装置用のバックライト装置や面状光源装置を含む照明装置を挙げることができる。
【0043】
有機層は、発光層(例えば、有機発光材料から成る発光層)を備えているが、具体的には、例えば、正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造、正孔輸送層と電子輸送層を兼ねた発光層との積層構造、正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と電子注入層との積層構造等から構成することができる。また、これらの積層構造等を『タンデムユニット』とする場合、有機層は、第1のタンデムユニット、接続層、及び、第2のタンデムユニットが積層された2段のタンデム構造を有していてもよく、更には、3つ以上のタンデムユニットが積層された3段以上のタンデム構造を有していてもよく、これらの場合、発光色を赤色、緑色、青色と各タンデムユニットで変えることで、全体として白色を発光する有機層を得ることができる。有機層の形成方法として、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法);スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった印刷法;転写用基板上に形成されたレーザ吸収層と有機層の積層構造に対してレーザを照射することでレーザ吸収層上の有機層を分離して、有機層を転写するといったレーザ転写法、各種の塗布法を例示することができる。有機層を真空蒸着法に基づき形成する場合、例えば、所謂メタルマスクを用い、係るメタルマスクに設けられた開口を通過した材料を堆積させることで有機層を得ることができるし、有機層を、パターニングすること無く、全面に形成してもよい。
【0044】
上面発光型の表示装置において、第1電極は、例えば、層間絶縁層上に設けられている。そして、この層間絶縁層は、第1基板上に形成された発光素子駆動部を覆っている。発光素子駆動部は、1又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)から構成されており、TFTと第1電極とは、層間絶縁層に設けられたコンタクトプラグを介して電気的に接続されている。層間絶縁層の構成材料として、SiO
2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO
2系材料;SiN系材料;ポリイミド系樹脂やノボラック系樹脂、アクリル系樹脂、ポリベンゾオキサゾール等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、各種印刷法等の公知のプロセスが利用できる。発光素子からの光が層間絶縁層を通過するような構成、構造の下面発光型の表示装置にあっては、層間絶縁層は、発光素子からの光に対して透明な材料から構成する必要があるし、発光素子駆動部は発光素子からの光を遮らないように形成する必要がある。また、下面発光型の表示装置にあっては、第2電極の上方に発光素子駆動部を設けることも可能である。
【0045】
有機層の上方には、有機層への水分の到達防止を目的として、上述したとおり、絶縁性あるいは導電性の保護膜を設けることが好ましい。保護膜は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、あるいは又、CVD法やMOCVD法といった成膜方法に基づき形成することが、下地に対して及ぼす影響を小さくすることができるので好ましい。あるいは又、有機層の劣化による輝度の低下を防止するために、成膜温度を常温に設定し、更には、保護膜の剥がれを防止するために保護膜のストレスが最小になる条件で保護膜を成膜することが望ましい。また、保護膜の形成は、既に形成されている電極を大気に暴露することなく形成することが好ましく、これによって、大気中の水分や酸素による有機層の劣化を防止することができる。更には、表示装置が上面発光型である場合、保護膜は、有機層で発生した光を例えば80%以上、透過する材料から構成することが望ましく、具体的には、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えば、上述した材料を例示することができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを生成しないため、透水性が低く、良好な保護膜を構成する。尚、保護膜を導電材料から構成する場合、保護膜を、ITOやIZOのような透明導電材料から構成すればよい。
【実施例1】
【0046】
実施例1は、本開示の表示装置、具体的には、有機EL表示装置に関し、また、本開示の第1の形態及び第2の形態の表示装置に関する。実施例1の表示装置(以下、有機EL表示装置と呼ぶ場合がある)の模式的な一部断面図を
図1に示し、有機層等の模式図を
図12に示し、副画素の配列を表す模式図を
図13Aに示す。尚、
図12においては、図面の簡素化のために、1層の有機層を示しているが、実際には、複数の有機層が積層されており、複数段のタンデム構造を有する。
【0047】
また、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例8、実施例10の有機EL表示装置は、上面発光型である。即ち、各発光素子10からの光は、上部電極に相当する第2電極、第2基板34を介して外部に出射される。一方、後述する実施例9の有機EL表示装置は、各発光素子10からの光は第1基板11を介して外部に出射される下面発光型である。
【0048】
図1〜
図10に示すように、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例10の有機EL表示装置は、
(A)第1電極21、例えば有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23から構成された発光部24、及び、第2電極22が積層されて成る発光素子10が、複数、形成された第1基板11、並びに、
(B)第1基板11と対向して配された第2基板34、
を具備し、
第1基板11は、
各発光素子10からの光を伝播して外部に出射する第1部材51、及び、
第1部材51と第1部材51との間を占める第2部材52、
を備えており、
第2部材52には、光吸収層54が設けられている。尚、第1部材51及び光吸収層54を含む第2部材52、全体を、『光反射層50』と呼ぶ場合がある。
【0049】
ここで、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例10の有機EL表示装置における各発光素子(有機EL素子)10は、より具体的には、
(a)第1電極21、
(b)開口部25を有し、開口部25の底部に第1電極21が露出した第2部材52、
(c)開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上に少なくとも設けられ、例えば有機発光材料から成る発光層23Aを備えた有機層23、及び、
(d)有機層23上に形成された第2電極22、
を具備している。有機層23は、例えば、正孔注入層及び正孔輸送層23B、発光層23A並びに電子輸送層23Cの積層構造から構成されているが、図面では1層で表す場合がある。
【0050】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例10の有機EL表示装置は、電子ビューファインダー(EVF)や頭部装着型ディスプレイ(HMD)に適用される、高精細表示装置であり、あるいは又、例えば、テレビジョン受像機といった大型の有機EL表示装置である。
【0051】
実施例1の有機EL表示装置、あるいは、後述する実施例2〜実施例10の有機EL表示装置は、発光素子(具体的には、有機EL素子)10を、複数、有する。具体的には、画素数は、例えば、2048×1236であり、1つの発光素子10は1つの副画素を構成し、発光素子(具体的には有機EL素子)10は画素数の3倍である。そして、アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置である。
【0052】
1つの画素は、赤色を発光する赤色発光副画素、緑色を発光する緑色発光副画素、青色を発光する青色発光副画素の3つの副画素から構成されている。また、第2基板34はカラーフィルター33を備えており、発光素子10は白色光を発光し、各色発光副画素は、白色光を発光する発光素子10とカラーフィルター33との組合せから構成されている。カラーフィルター33は、通過光が赤色となる領域、緑色となる領域、青色となる領域から構成されている。カラーフィルター33とカラーフィルター33との間に、遮光膜(ブラックマトリクス)を備えていてもよい。発光素子10と第1部材51とは接している。具体的には、第2電極22と第1部材51とは、直接、接している。
【0053】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例10の有機EL表示装置において、副画素の配列は、
図13A及び
図13Bに示すように、疑似デルタ配列であり、点線で囲んだ1画素の大きさは、例えば5μm×5μmである。尚、
図13A及び
図13Bには、4つの画素を示す。
図13Aあるいは
図13Bにおいて、赤色発光副画素を「R」で示し、緑色発光副画素を「G」で示し、青色発光副画素を「B」で示す。
図13Aに示した例では、構造間距離は0μmであり、
図13Bに示した例では、構造間距離は0μmを超える値である。
【0054】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例10において、各発光素子は、3つのタンデムユニットが積層された3段のタンデム構造を有しており、各タンデムユニットにおける有機層23は、具体的には、以下に例示する赤色発光有機層、緑色発光有機層及び青色発光有機層から構成されている。但し、これらの限定するものではない。尚、有機層全体の平均屈折率は、(実数部,虚数部)=(1.85,0)である。
【0055】
具体的には、赤色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ26nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ50nm) :出光興産株式会社製 RH001 及び
東レ株式会社製 D125(0.5%ドープ)
[電子輸送層](厚さ220nm):出光興産株式会社製 ET085
から構成されている。
【0056】
また、緑色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ35nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ30nm) :出光興産株式会社製 BH232 及び
GD206(10%ドープ)
[電子輸送層](厚さ175nm):出光興産株式会社製 ETS085
から構成されている。
【0057】
更には、青色発光有機層は、第1電極側から、
[正孔注入層](厚さ10nm) :LGケミカル社製 LGHIL
[正孔輸送層](厚さ24nm) :出光興産株式会社製 HT320
[発光層] (厚さ30nm) :出光興産株式会社製 BH232 及び
BD218(10%ドープ)
[電子輸送層](厚さ141nm):出光興産株式会社製 ET085
から構成されている。
【0058】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例8、実施例10においては、第1電極21をアノード電極として用い、第2電極22をカソード電極として用いる。第1電極21は、光反射材料、具体的には、Al−Nd合金から成り、第2電極22は、半光透過材料、具体的には、マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ10nmのMg−Ag合金から成る。第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。また、第2電極22は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されており、パターニングはされていない。第1電極21の光反射率及び第2電極22の屈折率、光透過率の測定結果は以下の表1のとおりである。
【0059】
[表1]
第1電極21の屈折率
実数部:0.755
虚数部:5.466
第2電極22の屈折率
実数部:0.617
虚数部:3.904
第1電極21の光反射率:85
第2電極22の光透過率:57%
【0060】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例8、実施例10において、有機EL素子を構成する第1電極21は、CVD法に基づき形成されたSiONから成る層間絶縁層16(より具体的には、上層層間絶縁層16B)上に設けられている。そして、この層間絶縁層16は、第1基板11上に形成された有機EL素子駆動部を覆っている。有機EL素子駆動部は、複数のTFTから構成されており、TFTと第1電極21とは、層間絶縁層(より具体的には、上層層間絶縁層16B)に設けられたコンタクトプラグ18、配線17、コンタクトプラグ17Aを介して電気的に接続されている。尚、図面においては、1つの有機EL素子駆動部につき、1つのTFTを図示した。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。
【0061】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例8、実施例10において、第1基板11はシリコン基板から構成されており、第2基板
34は、無アルカリガラスあるいは石英ガラスから構成されている。一方、後述する実施例9において、第1基板11及び第2基板
34は、無アルカリガラスあるいは石英ガラスから構成されている。
【0062】
そして、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例10の有機EL表示装置にあっては、第1部材51と第2部材52との界面において、第1部材51を伝播した光が、少なくとも一部分、反射される。
【0063】
また、実施例1の有機EL表示装置にあっては、第1部材51と第2部材52との界面には光反射膜(光反射部)71が形成されている。光反射膜71は、具体的には、Al−Ndから成り、第2部材52の傾斜した側壁の上に形成されている。実施例1の有機EL表示装置にあっては、光反射膜71の表面において、第1部材51を伝播した光が、少なくとも一部分(実施例1にあっては、全て)、反射される。
【0064】
実施例1の有機EL表示装置において、第2部材52には光吸収層54が設けられているが、具体的には、第2部材52は、光吸収層54と第2部材構成層53とが積層された構造を有している。より具体的には、光吸収層54は、第2部材52の下部に設けられている。即ち、第1基板側から、第2部材52、第2部材構成層53が積層された構造を有する。
【0065】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例4、実施例6〜実施例10において、切頭円錐形の第1部材51は窒化シリコン(Si
1-xN
x)から成り、第2部材52を構成する第2部材構成層53はSiO
2から成り、光吸収層54はカーボンブラックを含むアクリル系樹脂から成る。第1部材51を構成する材料の屈折率n
1、光吸収層54を含む第2部材52を構成する材料の平均屈折率n
2-ave、第2部材構成層53を構成する材料の屈折率n
2、光吸収層を構成する材料の屈折率n
2’を、以下の表2に示す。
【0066】
更には、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例9において、光反射層50の上(第1部材51及び第2部材52の上)には、保護膜31及び封止材料層32が更に備えられている。Si
1-yN
yから成る保護膜31の屈折率n
3、エポキシ系樹脂から成る封止材料層32の屈折率n
4を以下の表2に示すが、
|n
3−n
4|≦0.3
を満足している。保護膜31は、有機層23への水分の到達防止を目的として、プラズマCVD法に基づき形成されている。尚、第1部材51と保護膜31を同時に形成し、第1部材51と保護膜31とが一体となった構造としてもよい。また、
図1においては、第1部材51の頂面と、第2部材52上の第2電極22の頂面とを同一レベルで示しているが、第1部材51は第2部材52の頂面上の第2電極22を覆っていてもよい。即ち、第1部材51は全面を覆っていてもよい。
【0067】
[表2]
実数部 虚数部
n
1 1.81 0
n
2-ave 1.48 0
n
2 1.46 0
n
2’ 1.54 0
n
3 1.81 0
n
4 1.65 0
【0068】
以下、実施例1の有機EL表示装置の製造方法の概要を、
図15A、
図15B、
図15C、
図16A、
図16B及び
図17を参照して説明するが、実施例1の有機EL表示装置は、
第1基板11上に層間絶縁層を形成し、層間絶縁層上に第1電極21を形成した後、
第1電極21及び層間絶縁層上に第2部材形成層を形成し、次いで、第1電極21上の第2部材形成層を選択的に除去することで、開口部25の斜面が傾斜した第2部材52を得た後、
開口部25の底部に露出した第1電極21上から開口部25の斜面に亙り、発光部24及び第2電極22を形成し、次いで、開口部25の斜面の上に光反射膜71を形成した後、
第2電極22上に第1部材51を形成する、
各工程に基づき製造することができる。
【0069】
[工程−100]
先ず、第1基板11上に、副画素毎にTFTを、周知の方法で作製する。TFTは、第1基板11上に形成されたゲート電極12、第1基板11及びゲート電極12上に形成されたゲート絶縁膜13、ゲート絶縁膜13上に形成された半導体層に設けられたソース/ドレイン領域14、並びに、ソース/ドレイン領域14の間であって、ゲート電極12の上方に位置する半導体層の部分が相当するチャネル形成領域15から構成されている。尚、図示した例にあっては、TFTをボトムゲート型としたが、トップゲート型であってもよい。TFTのゲート電極12は、走査回路(図示せず)に接続されている。次に、第1基板11上に、TFTを覆うように、SiO
2から成る下層層間絶縁層16AをCVD法にて成膜した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、下層層間絶縁層16Aに開口16’を形成する(
図15A参照)。
【0070】
[工程−110]
次いで、下層層間絶縁層16A上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、アルミニウムから成る配線17を形成する。尚、配線17は、開口16’内に設けられたコンタクトプラグ17Aを介して、TFTのソース/ドレイン領域14に電気的に接続されている。配線17は、信号供給回路(図示せず)に接続されている。そして、全面にSiO
2から成る上層層間絶縁層16BをCVD法にて成膜する。次いで、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、上層層間絶縁層16B上に開口18’を形成する(
図15B参照)。
【0071】
[工程−120]
その後、上層層間絶縁層16B上に、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき、Al−Nd合金から成る第1電極21を形成する(
図15C参照)。尚、第1電極21は、開口18’内に設けられたコンタクトプラグ18を介して、配線17に電気的に接続されている。
【0072】
[工程−130]
次いで、光吸収層54を含む第2部材52を形成する。具体的には、全面に、第2部材形成層52A(第2部材構成層53を形成するためのSiO
2層及び光吸収層54を形成するためのカーボンブラックを含む樹脂層の積層構造)を形成し、第2部材形成層52A上にレジスト材料層52Bを形成する。次いで、レジスト材料層52Bを露光、現像することで、レジスト材料層52Bに開口部52Cを形成する(
図16A参照)。その後、RIE法に基づき、レジスト材料層52B及び第2部材形成層52Aをエッチングすることで、テーパー形状を第2部材形成層52Aに付与し(
図16B参照)、最終的に、開口部25の側壁が傾斜した第2部材52(第2部材構成層53及び光吸収層54の積層構造)を得ることができる(
図17参照)。開口部25は、切頭円錐形の形状を有する。尚、エッチング条件の制御によってテーパー形状を第2部材形成層52Aに付与することができる。但し、第2部材52の形成方法は、このような形成方法に限定されず、例えば、全面に、アクリル系樹脂あるいはポリイミド系樹脂から成る第2部材形成層を成膜した後、フォトリソグラフィ技術及びウェットエッチング技術に基づき
図17に示す第2部材52を形成してもよい。
【0073】
[工程−140]
次に、開口部25の底部に露出した第1電極21の部分の上を含む第2部材52上に(即ち、全面に)、有機層23を形成する。尚、有機層23は、例えば、有機材料から成る正孔注入層及び正孔輸送層、発光層並びに電子輸送層が順次積層されている。有機層23は、抵抗加熱に基づき、有機材料を真空蒸着することで得ることができる。
【0074】
[工程−150]
その後、表示領域の全面に第2電極22を形成する。第2電極22は、N×M個の有機EL素子を構成する有機層23の全面を覆っている。第2電極22は、第2部材52及び有機層23によって第1電極21とは絶縁されている。第2電極22は、有機層23に対して影響を及ぼすことのない程度に成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法である真空蒸着法に基づき形成されている。また、有機層23を大気に暴露することなく、有機層23の形成と同一の真空蒸着装置内において連続して第2電極22の形成を行うことで、大気中の水分や酸素による有機層23の劣化を防止することができる。具体的には、Mg−Ag(体積比10:1)の共蒸着膜を厚さ10nm成膜することで、第2電極22を得ることができる。
【0075】
[工程−160]
次に、第2部材52の傾斜した側壁の上に(具体的には、第2電極22上に)、Al−Ndから成る光反射膜71をスパッタリング法及びエッチング技術に基づき形成する。
【0076】
[工程−170]
次いで、全面に(具体的には、第2電極22及び光反射膜71上に)、窒化シリコン(Si
1-xN
x)から成る第1部材51を形成し、平坦化処理を施すことで、第1部材51及び第2部材52から成る光反射層50を得ることができる。
【0077】
[工程−180]
その後、光反射層50上に、窒化シリコン(Si
1-yN
y)から成る絶縁性の保護膜31を真空蒸着法に基づき形成する。尚、第1部材51と保護膜31を同時に形成し、第1部材51と保護膜31とが一体となった構造としてもよい。このような構造にあっては、開口部25の影響によって保護膜31の頂面に凹部が形成される場合があるが、上述したとおり|n
3−n
4|の値を規定することで、この凹部において発光素子10から出射された光が散乱されることを効果的に防止することができる。
【0078】
[工程−190]
次いで、カラーフィルター33が形成された第2基板34と、保護膜31が形成された第1基板11とを、封止材料層32を用いて接着する。最後に、外部回路との接続を行うことで、有機EL表示装置を完成させることができる。
【0079】
このような実施例1の有機EL表示装置の製造方法にあっては、第2電極22上に、直接、第1部材51を形成することができるので、第2電極22とリフレクタとの間に接着層が存在することに起因した発光素子から出射された光の取出しロスが無い。
【0080】
実施例1の有機EL表示装置において、第1基板は、各発光素子からの光を伝播して外部に出射する第1部材(発光領域を占める)、及び、第1部材と第1部材との間を占める第2部材(非発光領域を占める)を備えており、第2部材には光吸収層が設けられているので、第2部材に入射した外光は、光吸収層によって吸収され、有機EL表示装置から外部に出射され難い。それ故、有機EL表示装置のコントラストの向上を図ることができる。また、各発光素子からの光が第1部材によって全反射されることを抑制することができる。即ち、発光素子と第1部材とは接しているので、具体的には、第2電極と第1部材とは直接接しているので、各発光素子からの光が第1部材によって全反射されることを抑制することができ、各発光素子からの光を大幅に損失すること無く外部に取り出すことができる。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、実施例1の変形である。模式的な一部断面図を
図2に示すように、実施例2の有機EL表示装置において、光吸収層54は、第2部材52の中間部に設けられている。即ち、第1基板側から、第2部材構成層53、光吸収層54、第2部材構成層53が積層された構造を有する。以上の点を除き、実施例2の有機EL表示装置は、実施例1の有機EL表示装置の同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0082】
実施例3も、実施例1の変形である。模式的な一部断面図を
図3に示すように、実施例3の有機EL表示装置において、光吸収層54は、第2部材52の頂部に設けられている。即ち、第1基板側から、第2部材構成層53、第2部材52が積層された構造を有する。以上の点を除き、実施例3の有機EL表示装置は、実施例1の有機EL表示装置の同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0083】
実施例4も、実施例1の変形である。模式的な一部断面図を
図4に示すように、実施例4の有機EL表示装置において、第2部材52は光吸収層54から構成されている。即ち、光吸収層54は、第2部材52の全体を占めている。以上の点を除き、実施例4の有機EL表示装置は、実施例1の有機EL表示装置の同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例5】
【0084】
実施例5は、実施例1〜実施例4の変形である。実施例1〜実施例4にあっては、光反射膜71をAl−Ndから構成した。一方、模式的な一部断面図を
図5に示すように、実施例5にあっては、光反射膜(光反射部)72を樹脂から構成した。ここで、実施例5の有機EL表示装置における光反射膜72は、第1部材51を構成する材料の屈折率n
1よりも小さな屈折率n
2”を有する材料から構成されている。実施例5における第1部材51、第2部材構成層53、光吸収層54、光反射膜72を構成する材料、屈折率n
1,n
2,n
2’,n
2”の実数部を、以下の表3に例示する。尚、虚数部の値は「0」である。また、
n
1−n
2”≧0.2
を満足している。n
2-aveの値は1.58である。
【0085】
[表3]
第1部材51を構成する材料 窒化シリコン
(屈折率n
1:1.81)
第2部材構成層53を構成する材料 アクリル系樹脂
(屈折率n
2:1.54)
光吸収層54を構成する材料 カーボンブラックを含むアクリル系樹脂
(屈折率n
2’:1.66/厚さ:1.7μm)
光反射膜72を構成する材料 低屈折アクリル系樹脂
(屈折率n
2”:1.40/厚さ:3.0μm)
【0086】
以上の点を除き、実施例5の有機EL表示装置は、実施例1〜実施例4の有機EL表示装置の同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0087】
実施例5において、1ワットの外光が有機EL表示装置に入射角θ
inで入射したとき、この外光が、光吸収層54で吸収され、有機EL表示装置から出射される状態をシミュレーションした。また、光吸収層54を設けない有機EL表示装置を比較例として、同様のシミュレーションした。そして、外光光量割合及び外光吸収率を求めた。尚、光吸収層54を設けた各実施例の有機EL表示装置に対するこのような比較例を、『対応比較例』と呼ぶ場合がある。
【0088】
外光光量割合=(実施例における有機EL表示装置から出射される外光の光量)
/(対応比較例における有機EL表示装置から出射される外光の光量)
外光吸収率=1−外光光量割合
【0089】
シミュレーションを簡素化するために、保護膜31及び封止材料層32の全体を、屈折率1.60、厚さ3.0μmの樹脂層にて置き換えてシミュレーションを行った。また、切頭円錐形の第1部材51の斜面の傾斜角度(θ)を、原則として、73度とし、切頭円錐形の第1部材の頂部の開口直径を7.0μmとした。更には、光吸収層54を含む第2部材52の全体の厚さを5.0μmとし、光吸収層54の厚さを、原則として、(5/3)μm、構造間距離を、原則として、0μmとした。
【0090】
入射角θ
in=15度としたときのシミュレーション結果を、以下の表4に示す。表4には、併せて、輝度効率のシミュレーション結果を示す。ここで、輝度効率とは、発光層から出射された光の光エネルギーを「1」としたとき、有機EL表示装置の外部に取り出される光エネルギーの割合であり、且つ、対応比較例における輝度効率を「1」としたときの実施例の値である。
【0091】
更には、実施例5A及び実施例5Aに対応する対応比較例5Aの外光光量割合をシミュレーションした結果のグラフを
図20Aに示す。また、
図20Aに示す結果を基に、外光吸収率を求めた結果を
図20Bに示す。更には、光吸収層54を、第2部材52の下部に設ける代わりに、第2部材52の頂部に設けたときのシミュレーション結果を
図20Cに示す。尚、
図20A、
図20B、
図20Cにおける横軸は外光の入射角θ
inであり、
図20A、
図20Cにおける縦軸は反射光量(単位:ワット)であり、
図20Bにおける縦軸は外光反射率である。また、
図20A、
図20Cにおいて、実施例の結果を黒の棒グラフで示し、対応比較例の結果を白抜きの棒グラフで示す。
【0092】
また、光吸収層54を第2部材52の中間部に設けた場合(実施例5E)、厚さ(5/3)μmの光吸収層54を第2部材52の頂部に設けた場合(実施例5F)、厚さ5/12μmの光吸収層54を第2部材52の頂部に設けた場合(実施例5G)、第2部材52が光吸収層54から構成されている場合(実施例5H)のそれぞれにおけるシミュレーション結果を、表4に示す。
【0093】
[表4]
【0094】
表4から、光吸収層54を設けることで、外光光量割合の値が充分に低下していることが判る。また、外光光量割合の値の、切頭円錐形の第1部材51の斜面の傾斜角度(θ)に対する依存性(実施例5B参照)、光吸収層54を構成する材料の屈折率n
2’に対する依存性(実施例5C参照)は認められないことが判った。更には、構造間距離を、0μmから4μmにすると(実施例5D参照)、非発光領域を占める第2部材52の面積、更には、光吸収層54の面積が増加し、外光光量割合の値は大幅に低下することが判った。また、光吸収層54を、第2部材
52の下部に設けても(例えば、実施例5A参照)、第2部材
52の中間部に設けても(実施例5E参照)、第2部材
52の頂部に設けても(実施例5F及び実施例5G参照)、更には、光吸収層54が第2部材52の全体を占めている構成としても(実施例5H参照)、充分な外光光量割合の値を得ることができることが判った。更には、実施例5Aにおいて、光吸収層54の厚さを、それぞれ、(5/6)μm、(5/12)μmとしても、実施例5Aと同程度の外光光量割合の値が得られた。
【0095】
尚、輝度効率の値が、若干、低下している場合があるが、これは、
図21に視野角に対する輝度のシミュレーション結果(「A」のグラフ参照)を示すように、視野角20度前後で、対応比較例(「B」のグラフ参照)に対して輝度が、若干、低下しているためであり、この輝度の若干の低下は、発光層から出射された光が、若干、光吸収層54で吸収されていることに起因する。但し、実施例における輝度効率の低下は、実用上、問題となる値ではない。
【実施例6】
【0096】
実施例6も、実施例1〜実施例4の変形であるが、本開示の第3の形態の有機EL表示装置に関する。実施例6の有機EL表示装置にあっては、模式的な一部断面図を
図6に示すように、実施例1〜実施例4の有機EL表示装置とは異なり、光反射膜71が形成されておらず、その代わりに、第1部材51を構成する材料の屈折率n
1、光吸収層54を含む第2部材52を構成する材料の平均屈折率n
2-aveに関して、
1.1≦n
1≦1.8
好ましくは、
1.2≦n
1≦1.6
を満足し、且つ、
n
1−n
2-ave≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2-ave≧0.3
を満足している。また、光吸収層54を除く第2部材52を構成する材料の屈折率n
2、光吸収層54を構成する材料の屈折率n
2’に関して、
n
1−n
2≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2≧0.3
を満足し、
n
1−n
2’≧0.2
好ましくは、
n
1−n
2’≧0.3
を満足している。実施例6の有機EL表示装置にあっては、第1部材51と対向する第2部材52の表面において(即ち、第1部材51と第2部材52との界面において)、第1部材51を伝播した光が、少なくとも一部分、反射される。第1部材51と対向する第2部材52の表面(あるいは第1部材51と第2部材
52の界面)を、光反射部73と呼ぶ。尚、より具体的には、第1部材51と第2部材52との間に有機層23及び第2電極22が形成されているので、第2部材52と有機層23との界面において、第1部材51を伝播した光が、少なくとも一部分、反射される。
【0097】
第1部材51を構成する材料、第2部材構成層53を構成する材料、光吸収層54を構成する材料として、実施例1において挙げた材料を例示することができるし、あるいは又、実施例5において挙げた材料を例示することができる。実施例6にあっては、実施例1、実施例5と異なり、光反射膜71,72を形成しないので、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0098】
実施例6及び実施例1の有機EL表示装置における輝度の放射角分布をシミュレーションした。その結果、実施例6の構成、構造を有する有機EL表示装置(但し、n
1−n
2=0.20)と、実施例1の有機EL表示装置との間で、輝度の放射角分布に差異は認められなかった。云い換えれば、n
1−n
2≧0.20とすれば、第1部材51と対向する第2部材52の表面に光反射膜71を形成した実施例1の有機EL表示装置と同等の輝度向上効果を、実施例6の有機EL表示装置において得ることができることが判った。
【0099】
実施例6の有機EL表示装置にあっては、屈折率n
1の値、及び、屈折率n
1と平均屈折率n
2-aveとの差の値が規定されているので、第1部材51と第2部材52との界面(光反射部73)に光反射部材等を設けなくとも、発光素子10からの外部への光取出し効率の一層の向上を図ることができる。また、各発光素子10からの光が第1部材51によって全反射されることを抑制することができる。即ち、発光素子10と第1部材51とは接しているので、具体的には、第2電極22と第1部材51とは直接接しているので、各発光素子10からの光が第1部材51によって全反射されることを抑制することができ、各発光素子10からの光を大幅に損失すること無く外部に取り出すことができる。
【0100】
実施例6の有機EL表示装置は、例えば、実施例1において説明した有機EL表示装置の製造方法と同じ製造方法(但し、光反射膜71を形成する点を除く)で製造することができる。
【0101】
あるいは又、
第1部材51と相補的な形状を有するスタンパを準備し、
支持基板上に樹脂材料を塗布した後、
スタンパを用いて樹脂材料を賦形した後、スタンパを取り除き、凸部を有する樹脂材料層を得た後、
樹脂材料層の凸部の頂部を平坦化し、次いで、樹脂材料層の凸部と凸部との間を接着剤層で埋め込み、その後、
支持基板から樹脂材料層を剥がし、接着剤層を第1基板11に接着し、以て、接着剤層から成る第2部材52(光吸収層54を含む)、及び、樹脂材料層から成る第1部材51を得る、
各工程に基づき製造することができる。このように、スタンパを用いて接着剤層から成る第2部材52(光吸収層54を含む)及び樹脂材料層から成る第1部材51を得ることで、簡素な製造方法にて、発光素子10からの外部への光取出し効率の一層の向上を図ることができる有機EL表示装置を製造することができる。
【0102】
以下、このような製造方法、より具体的には、光反射層50の作製方法を、
図18A、
図18B、
図18C及び
図18Dを参照して説明する。
【0103】
[工程−600]
先ず、第1部材51と相補的な形状を有するスタンパを準備する。具体的には、第1部材51と相補的な形状を有するスタンパ(雌型)60を、電鋳、エッチング、その他の切削加工等の公知技術を利用して形成する。
【0104】
[工程−610]
一方、支持基板上に樹脂材料を塗布する。具体的には、例えば、光透過性を有するガラス基板から成る支持基板61上に、紫外線硬化型の樹脂材料62を塗布(形成)する(
図18A参照)。
【0105】
[工程−620]
そして、スタンパ60を用いて樹脂材料62を賦形した後、スタンパ60を取り除き、凸部64を有する樹脂材料層63を得る。具体的には、この樹脂材料62にスタンパ60を押し付けた状態で、支持基板61の側からエネルギー線(具体的には、紫外線)を照射することで樹脂材料62を硬化させ、樹脂材料層63を得た後(
図18B参照)、スタンパ60を取り除く。こうして、凸部64を有する樹脂材料層63を得ることができる(
図18C参照)。樹脂材料層63の凸部64が、第1部材51に相当する。
【0106】
[工程−630]
その後、樹脂材料層63の凸部64の頂部を平坦化し、次いで、樹脂材料層63の凸部64と凸部64との間を接着剤層65で埋め込む(
図18D参照)。尚、接着剤層65は、第2部材構成層53を形成するための層及び光吸収層54を形成するための層の積層構造である。
【0107】
[工程−640]
次いで、支持基板61から樹脂材料層63を剥がし、発光素子等が形成された第1基板11に樹脂材料層63を載置し、即ち、接着剤層65が発光素子10からの光の出射を妨げないように接着剤層65を第2電極22の上に配置し、接着剤層65によって接着する。尚、第1基板11は、[工程−100]〜[工程−120]に引き続き、第1電極21及び上層層間絶縁層16B上において、有機層23の形成及び第2電極22の形成を[工程−140]〜[工程−150]と同様にして実行することで得ることができる。こうして、接着剤層65から成り、光吸収層54を含む第2部材52、及び、樹脂材料層63から成る第1部材51から構成された光反射層50を得ることができる。
【0108】
[工程−650]
その後、光反射層50上に絶縁性の保護膜31をプラズマCVD法に基づき形成する。そして、カラーフィルター33が形成された第2基板34と、保護膜31が形成された第1基板11とを、封止材料層32を用いて接着する。最後に、外部回路との接続を行うことで、有機EL表示装置を完成させることができる。尚、紫外線硬化型の樹脂材料62の代わりに、熱硬化型の樹脂材料や、熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0109】
第1部材51は切頭円錐形(あるいは切頭回転体)の形状を有し、光入射面(実施例6にあっては、第1基板11に対向する面)の直径をR
1、光出射面(実施例6にあっては、第2基板34に対向する面)の直径をR
2、高さをHとしたとき、これらの値は、例えば、以下の表5に示すとおりであり、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足している構成とすることもできる。尚、切頭円錐形の斜面は直線状である。即ち、第1部材51の軸線を含む仮想平面で第1部材51を切断したときの第1部材51の断面形状は台形である。
【0110】
[表5]
【0111】
あるいは又、実施例6の有機EL表示装置の変形例(実施例6A)にあっては、実施例6の構成、構造を有する有機EL表示装置において、R
1、R
2、H、切頭円錐形の第1部材の斜面の傾斜角度(θ)、保護膜31の厚さ、封止材料層32の厚さ、カラーフィルター33の厚さ、発光部24の直径R
0(具体的には、第1電極21の直径)、発光部24の中心から隣接する発光部24の中心までの距離(発光部形成ピッチ)、開口率を、表5に示す値とした。このような実施例6Aの有機EL表示装置は、例えば、電子ビューファインダー(EVF)や頭部装着型ディスプレイ(HMD)に好ましくは適用される高精細表示装置である。また、光反射層50の代わりにSiO
2層を設けたことを除き、実施例6Aの有機EL表示装置と同じ構成、構造を有する有機EL表示装置を比較例6Aとした。
【0112】
そして、実施例6A及び比較例6Aの有機EL表示装置における輝度の放射角分布をシミュレーションした。その結果、放射角が±10度の範囲内にあっては、比較例6Aに比べて、実施例6Aの有機EL表示装置の輝度効率は2倍以上高く、駆動電流密度は0.4倍以下となった。また、カラーフィルターが0.3μm水平方向にずれたと想定したとき、比較例6Aに比べて、実施例6Aの有機EL表示装置の輝度効率は2倍以上高く、駆動電流密度は0.4倍以下となり、混色割合は約1%となった。また、発光素子10の中心部からの光の光量を「1」としたとき、実施例6Aの有機EL表示装置において、発光素子10から第1部材51及び第2基板34を介して外部に出射される光の光量は、「1.6」であった。
【0113】
あるいは又、実施例6Bにあっては、有機EL表示装置をテレビジョン受像機とした。実施例6Bにおいては、1副画素の大きさが実施例6の1副画素の大きさよりも大きい。従って、1つの発光素子10によって1つの副画素を構成すると、必然的に光反射層50の厚さが厚くなってしまう。それ故、実施例6Bにあっては、複数の(具体的には、64個の)発光素子10が集合して1つの副画素が構成されている。尚、1つの発光素子10の大きさは、例えば10μm×10μmであり、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足している。切頭円錐形の斜面は直線状である。また、副画素の配列は、
図14に示すように、ストライプ配列である。尚、
図14では、図面の簡素化のため、1つの副画素が3つの発光素子10の集合体から構成されているように図示している。
【0114】
実施例6Bの有機EL表示装置にあっては、実施例6と基本的に同様の構成、構造を有する有機EL表示装置において、R
1、R
2、H、切頭円錐形の第1部材の斜面の傾斜角度(θ)、保護膜31の厚さ、封止材料層32の厚さ、カラーフィルター33の厚さ、発光部24の直径R
0(具体的には、第1電極21の直径)等を表5に示したとおりとした。実施例3の有機EL表示装置にあっても、第2電極22と第1部材51とは、直接、接している。また、光反射層50の代わりにSiO
2層を設けた点、保護膜31及び封止材料層32を設ける代わりに接着層を設けた点を除き、実施例6Bの有機EL表示装置と同じ構成、構造を有する有機EL表示装置を比較例6Bとした。
【0115】
そして、実施例6Bの有機EL表示装置と、比較例6Bの有機EL表示装置とにおいてシミュレーションを行い、正面輝度、光取出し効率、視野角45度及び視野角60度における正面輝度に対する輝度比の値を求めた。その結果、実施例6Bにあっては、比較例6Bに比べて、正面輝度及び光取出し効率は2倍以上、向上した。また、実施例6B、比較例6Bにおける輝度の放射角分布をシミュレーションした。比較例6Bにおける視野角0度での輝度を「1」としたとき、正面輝度に対する視野角45度における輝度割合は0.87、正面輝度に対する視野角60度における輝度割合は0.79となり、非常に高い値が得られた。
【0116】
実施例6Bの有機EL表示装置にあっても、第2電極22と第1部材51とが、直接、接しているので、発光素子10から出射された光を大幅に損失することが無く、格段に優れた特性を有している。また、実施例6Bの有機EL表示装置は、比較例6Bの有機EL表示装置よりも、正面輝度の値が高いだけでなく、大きな視野角において高い輝度相対値を有している。即ち、実施例6Bの有機EL表示装置は、観察者が有機EL表示装置をどの角度から眺めても、より高い輝度を有していることが判り、実施例6Bの有機EL表示装置は、テレビジョン受像機のための有機EL表示装置として好ましい有機EL表示装置である。
【実施例7】
【0117】
実施例7は、実施例6の変形である。実施例6においては、第1部材51の頂面と第2部材52の頂面を、略同一平面に位置させた。即ち、第2部材52と第2部材52との間を第1部材51で充填した。一方、実施例7にあっては、
図7に模式的な一部断面図を示すように、第2部材52と第2部材52との間に、層状の第1部材51Aを形成する。具体的には、第2電極22上に、1.806の屈折率n
1を有し、平均厚さ0.2μmの層状の第1部材51Aを形成する。尚、第1電極21の上方であって、第2部材52及びその上に形成された層状の第1部材51Aによって囲まれた領域を、『領域51B』と呼ぶ。そして、全面に、即ち、領域51B、及び、第2部材52の頂面の上方の領域には、窒化シリコン(Si
1-yN
y)から成る絶縁性の保護膜31が形成されている。更には、保護膜31の上には、封止材料層32、カラーフィルター33が形成されている。尚、領域51B内には封止材料層32の一部が延在している。
【0118】
以上の点を除き、実施例7の有機EL表示装置は、実施例6の有機EL表示装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【0119】
実施例7Aとして、層状の第1部材51Aの屈折率n
1と保護膜31の屈折率n
3との差(|n
1−n
3|)を一定(=0.2)とし、第1部材51Aの屈折率n
1を変化させたときの光量比をシミュレーションした。ここで、比較例6Bの光量を「1.00」としている。また、第2部材52の屈折率n
2を1.61としている。尚、この実施例7Aの有機EL表示装置の光反射層のパラメータは、実施例6Bの有機EL表示装置の光反射層等のパラメータ(表5参照)及び副画素の配列と同じである。
【0120】
シミュレーションの結果、層状の第1部材51Aの屈折率n
1と保護膜31の屈折率n
3との差が0.2あれば、層状の第1部材51Aは光反射部(リフレクタ部)としての機能を十分に発揮し得ることが判った。また、保護膜31の屈折率n
3よりも層状の第1部材51Aの屈折率n
1の方が高い場合、光量比が減少することが判った。更には、視野角と輝度相対値(比較例6Bにおける視野角0度での輝度を「1」として正規化した値)との関係を調べたところ、(n
3−n
1)が0.2未満では、視野角−90度から視野角約−40度までは輝度相対値は増加し、視野角約−40度から視野角0度まで輝度相対値は減少し、視野角0度から視野角約40度まで輝度相対値は再び増加し、視野角約40度から視野角90度まで輝度相対値は再び減少するという、即ち、2つのピークが輝度相対値に存在するという結果が得られ、正面から有機EL表示装置を眺めたとき輝度が低下することが判った。以上のシミュレーション結果から、保護膜31の屈折率n
3から層状の第1部材51Aの屈折率n
1を減じた値(=n
3−n
1)は0.2以上であることが好ましいとの結論を得ることができた。
【0121】
また、実施例7Bとして、保護膜31の屈折率n
3を1.8、一定とし、領域51B内に延在している封止材料層32の屈折率n
4を変化させたときの光量比をシミュレーションした。ここで、第2部材52の屈折率n
2を1.61、層状の第1部材51Aの屈折率n
1を1.806としている。また、視野角と輝度相対値(視野角0度での輝度を「1」として正規化した値)との関係を調べた。この実施例7Bの有機EL表示装置の光反射層のパラメータは、実施例6Bの有機EL表示装置の光反射層のパラメータ(表5参照)及び副画素の配列と同じである。
【0122】
シミュレーションの結果、保護膜31の屈折率n
3と封止材料層32の屈折率n
4との差が大きくなるに従い、光量比の値は減少する一方、大きな視野角の値における輝度相対値は、視野角0度の場合よりも高くなることが判った。そして、保護膜31の屈折率n
3を1.8としたとき、封止材料層32の屈折率n
4は1.5以上であることが好ましいことが判った。即ち、|n
3−n
4|≦0.3を満足することが好ましいことが判った。
【0123】
更には、実施例7C及び実施例7Dとして、実施例6Bの有機EL表示装置の光反射層のパラメータ(表5参照)と同じパラメータを有し、また、副画素の配列と同じ配列を有する有機EL表示装置において、R
2の値を変化させたときの光量比をシミュレーションした。
【0124】
シミュレーションの結果、R
2/R
1の値が大きくなるに従い、光量比の値は増加するが、R
2/R
1の値が「2.00」に近づくに従い、光量比の増加割合が低下することが判った。また、視野角と輝度相対値(比較例6Bにおける視野角0度での輝度を「1」として正規化した値)との関係を調べたところ、R
2/R
1の値が1.5あるいはそれ以下では、視野角−90度から視野角が増加するに従い、輝度相対値は増加して第1の極大値を取った後、減少し、視野角0度で極小値を取り、増加して、第2の極大値を取った後、減少することが判った。以上の結果から、R
2/R
1の値は1.6以上、2.0以下であることが好ましいことが判った。
【実施例8】
【0125】
実施例8も、実施例6の変形である。
図8に実施例8の有機EL表示装置の模式的な一部断面図を示すように、領域51B内に、封止材料層32の一部を延在させる代わりに、保護膜31の屈折率n
3よりも高い屈折率n
5を有する高屈折率領域51Cを設ける。これによって、保護膜31から高屈折率領域51Cに侵入し、保護膜31と高屈折率領域51Cとの界面である斜面51Dに衝突した光の多くは、高屈折率領域51Cに戻される結果、発光素子からの外部への光取出し効率の一層の向上を図ることができる。尚、例えば、
n
5−n
3≧0.3
を満足することが好ましい。以上の点を除き、実施例8の有機EL表示装置は、実施例6の有機EL表示装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例9】
【0126】
実施例9も、実施例6の変形であるが、実施例9にあっては、各発光素子10からの光は第1基板11を介して外部に出射される。即ち、実施例9の表示装置は、下面発光型の表示装置である。実施例9の表示装置(アクティブマトリックス型のカラー表示の有機EL表示装置)の模式的な一部断面図を
図9に示す。尚、副画素の配列状態は、
図13A、
図13Bに示したと同様である。
【0127】
第1部材51は切頭円錐形(あるいは切頭回転体)の形状を有し、光入射面(実施例9にあっては、第2基板34に対向する面)の直径をR
1、光出射面(実施例9にあっては、第1基板11に対向する面)の直径をR
2、高さをHとしたとき、例えば、
R
1 =2.3μm
R
2 =3.8μm
R
1/R
2=0.61
H =1.5μm
R
0 =2.0μm
であり、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足している。尚、切頭円錐形の斜面は直線状である。即ち、第1部材51の軸線を含む仮想平面で第1部材51を切断したときの第1部材51の断面形状は台形である。
【0128】
実施例9においては、第2電極22をアノード電極として用い、第1電極21をカソード電極として用いる。第2電極22は、光反射材料、具体的には、Al−Nd合金から成り、第1電極21は、半光透過材料、具体的には、マグネシウム(Mg)を含む導電材料、より具体的には、厚さ10nmのMg−Ag合金から成る。第2電極22は、特に真空蒸着法のような成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法によって成膜されている。また、第1電極21は、真空蒸着法とエッチング法との組合せに基づき形成されている。第1電極21及び第2電極22の屈折率測定結果、第1電極21の平均光反射率測定結果、第2電極22の平均光透過率測定結果は、実施例1に示したと同様である。但し、実施例1の測定値において、「第1電極21」を『第2電極22』と読み替え、「第2電極22」を『第1電極21』と読み替える。
【0129】
実施例9において、有機EL素子を構成する第1電極21は、第1部材51及び第2部材52から成る光反射層50上に設けられている。そして、この光反射層50は、第1基板11上に形成された有機EL素子駆動部(図示せず)を覆っている。有機EL素子駆動部は、複数のTFTから構成されており、TFTと第1電極21とは、第2部材52に設けられたコンタクトプラグ、配線(これらも図示せず)を介して電気的に接続されている。場合によっては、有機EL素子駆動部を発光部24の上方に設けてもよい。
【0130】
実施例9において、発光部24の上には、実施例1と同様に、保護膜31及び封止材料層32が更に備えられている。また、発光部24は、絶縁層26によって囲まれている。
【0131】
実施例9の構成、構造を有する有機EL表示装置において、
R
1 =2.3μm
R
2 =3.8μm
H =1.5μm
切頭円錐形の第1部材の斜面の傾斜角度:63度
とし、保護膜31の厚さを3.0μm、封止材料層32の厚さを10μm、カラーフィルター33の厚さを2.0μmとし、発光部24の直径(具体的には、第1電極21の直径)を2.0μmとしたときの実施例9Aの有機EL表示装置と、光反射層50の代わりにSiO
2層を設けたことを除き、実施例9Aの有機EL表示装置と同じ構成、構造を有する比較例9Aの有機EL表示装置における輝度の放射角分布をシミュレーションした。その結果、放射角が±10度の範囲内にあっては、比較例9Aに比べて、実施例9Aの有機EL表示装置の輝度効率は2.2倍高かった。また、駆動電流密度は0.4倍となった。また、カラーフィルターが0.3μm水平方向にずれたと想定したときには、実施例9Aの有機EL表示装置の輝度効率は2.3倍高く、駆動電流密度は0.5倍となり、混色割合は1.3%となった。
【0132】
実施例9の有機EL表示装置にあっても、第1部材51の屈折率n
1の値、及び、第1部材51の屈折率n
1と第2部材52の平均屈折率n
2-aveとの差を規定することで、第1部材51と対向する第2部材52の表面において(即ち、第1部材51と第2部材52との界面において)、即ち、光反射部73において、光反射部材等を設けなくとも、第1部材51を伝播した光を、少なくとも一部分、確実に反射することができるし、各発光素子10からの光が第1部材51によって全反射されることを確実に防止することができる。尚、実施例9の有機EL表示装置の構造を実施例6Bの有機EL表示装置に適用し、有機EL表示装置をテレビジョン受像機とすることもでき、この場合には、実施例6Bと同様に、複数の発光素子10が集合して1つの副画素を構成すればよい。
【0133】
また、実施例9の下面発光型の表示装置に対して、実施例1〜実施例5において説明した光反射膜71,72を適用することもできる。
【実施例10】
【0134】
実施例10も、実施例1〜実施例4の変形であるが、本開示の第4の形態の有機EL表示装置に関する。実施例10の本開示の有機EL表示装置にあっては、模式的な一部断面図を
図10に示すように、発光素子10から出射され、第1部材51を通過し、第2基板35の第1面35Aから第2基板35に入射した光の一部を、反射し、第2基板35の第2面35Bから出射させる光反射部材(光反射膜)74が、第2基板35に形成されている。ここで、第2基板35は第2電極22の上方に固定されており、第1面35Aは第2電極22と対向し、第2面35Bは第1面35Aと対向する。
【0135】
より具体的には、第2基板35の第1面35Aから内部に亙り、発光層
23Aから第2電極22を介して出射され、第2基板35に入射した光の一部を反射して、第2基板35の第2面35Bから出射する光反射部材(光反射膜)74が形成されている。
図11に模式的な配置図を示すように、複数の発光素子10の配列はストライプ配列であり、1つの発光素子10に対して複数の光反射部材74が設けられている。
【0136】
光反射部材を備えた第2基板は、構成する材料にも依るが、例えば、第1面に凹部をスタンパを用いて形成し、あるいは又、第1面に凹部を切削加工に基づき形成し、係る凹部の露出した表面に光反射部材を形成した後、凹部を埋め込むといった方法で作製することができる。
【0137】
即ち、光反射部材74は、
図10に示すように、例えば、第2基板35の第1面35Aに凹部41を切削加工に基づき形成し、係る凹部41の露出した表面に、例えば、真空蒸着法に基づき光反射部材74を形成した後、凹部41を、例えば、アクリル系樹脂から成る充填材料42で埋め込むといった方法で作製することができる。尚、充填材料42を用いる代わりに、接着層32によって、第2基板35を貼り合わせると同時に凹部41を埋め込んでもよい。
【0138】
光反射部材(光反射膜)74を有する例えば第2基板35の別の作製方法を、以下、
図19A、
図19B、
図19C及び
図19Dを参照して説明する。具体的には、先ず、光反射部材74と相補的な形状を有するスタンパ(雌型)66を、電鋳、エッチング、その他の切削加工等の公知技術を利用して形成する。そして、例えば、光透過性を有するガラス基板から成る支持基板67上に、紫外線硬化型の樹脂組成物68を塗布して(
図19A参照)、この樹脂組成物68をスタンパ66を用いて賦形する。具体的には、この樹脂組成物68にスタンパ66を押し付けた状態で紫外線を照射することで、樹脂組成物硬化物68Aを得た後(
図19B参照)、スタンパ66を取り除くことで、樹脂組成物硬化物68Aの表面に光反射部材の形状を有する凹凸部を形成することができる。その後、樹脂組成物硬化物68Aの表面に、AlやAg等の光反射率の高い金属反射層(又は多層薄膜)74’を、例えば真空蒸着法によって形成する(
図19C参照)。そして、金属反射層74’が積層された樹脂組成物硬化物68Aの一部(凸部)を、例えばラッピング加工によって切削削除する(
図19D参照)。その後、凹部41を充填材料42で埋め込むことで、光反射部材74を有する第2基板35を得ることができる。
【0139】
以上、好ましい実施例に基づき本開示を説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における有機EL表示装置や有機EL素子の構成、構造、有機EL表示装置や有機EL素子を構成する材料等は例示であり、適宜変更することができる。
【0140】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《表示装置》
(A)第1電極、発光層を備えた有機層から構成された発光部、及び、第2電極が積層されて成る発光素子が、複数、形成された第1基板、並びに、
(B)第1基板と対向して配された第2基板、
を具備し、
第1基板は、
各発光素子からの光を伝播して外部に出射する第1部材、及び、
第1部材と第1部材との間を占める第2部材、
を備えており、
第2部材には、光吸収層が設けられている表示装置。
[A02]第1部材と第2部材との界面において、第1部材を伝播した光が、少なくとも一部分、反射される[A01]に記載の表示装置。
[A03]第1部材と第2部材との界面には光反射膜が形成されている[A01]に記載の表示装置。
[A04]第1部材を構成する材料の屈折率をn
1、光吸収層を含む第2部材を構成する材料の平均屈折率をn
2-aveとしたとき、
1.1≦n
1≦1.8
n
1−n
2-ave≧0.2
を満足する[A01]に記載の表示装置。
[A05]第1部材は、Si
1-xN
x、ITO、IZO、TiO
2、Nb
2O
5、臭素含有ポリマー、硫黄含有ポリマー、チタン含有ポリマー、又は、ジルコニウム含有ポリマーから成り、光吸収層を除く第2部材は、SiO
2、MgF、LiF、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系ポリマー、又は、シリコーン系ポリマーから成る[A04]に記載の表示装置。
[A06]発光素子から出射され、第1部材を通過し、第2基板の第1面から第2基板に入射した光の一部を、反射し、第2基板の第2面から出射させる光反射部材が、第2基板に形成されている[A01]に記載の表示装置。
[A07]第1部材及び第2部材の上に保護膜及び封止材料層が更に備えられており、
保護膜を構成する材料の屈折率をn
3、封止材料層を構成する材料の屈折率をn
4としたとき、
|n
3−n
4|≦0.3
を満足する[A01]乃至[A06]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A08]発光素子の中心部からの光の光量を1としたとき、発光素子から第1部材及び第2基板を介して外部に出射される光の光量は、1.5乃至2.0である[A07]に記載の表示装置。
[A09]光吸収層は、第2部材の下部に設けられている[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A10]光吸収層は、第2部材の中間部に設けられている[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A11]光吸収層は、第2部材の頂部に設けられている[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A12]光吸収層は、第2部材の全体を占めている[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A13]カラーフィルターを備えている[A01]乃至[A12]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A14]発光素子と第1部材とは接している[A01]乃至[A13]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A15]各発光素子からの光は第2基板を介して外部に出射される[A01]乃至[A14]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A16]1つの発光素子によって1つの画素が構成されている[A01]乃至[A15]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A17]第1部材は切頭円錐形の形状を有し、光入射面の直径をR
1、光出射面の直径をR
2、高さをHとしたとき、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足する[A16]に記載の表示装置。
[A18]複数の発光素子が集合して1つの画素が構成されている[A01]乃至[A15]のいずれか1項に記載の表示装置。
[A19]第1部材は切頭円錐形の形状を有し、光入射面の直径をR
1、光出射面の直径をR
2、高さをHとしたとき、
0.5≦R
1/R
2≦0.8
0.5≦H/R
1 ≦2.0
を満足する[A18]に記載の表示装置。