(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前側揺動摩擦板及び前記後側揺動摩擦板が、前記支持板部の外側面又は内側面と、前記押圧部の内側面又は前記変位ブラケットの外側面との間部分に、それぞれ1対ずつ挟持されており、
前記ステアリングホイールを上端位置又は下端位置から中央位置まで移動させる場合の、前記両前側揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向であると共に、前記両後側揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向であり、同じく中央位置から下端位置又は上端位置まで移動させる場合の、前記両前側揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向であると共に、前記両後側揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向である、請求項1に記載したステアリングホイールの位置調節装置。
【背景技術】
【0002】
自動車用の操舵装置は、
図11に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定しており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持している。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、本明細書及び特許請求の範囲全体で、前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向は、特に断らない限り、車両の前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向を言う。
【0003】
上述の様な操舵装置で、運転者の体格や運転姿勢に応じ、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節する為のチルト機構や、前後位置を調節する為のテレスコピック機構が、従来から広く知られている。このうちのチルト機構を構成する為に、前記ステアリングコラム6の前端部を車体10に対して、左右方向に設置した枢軸11を中心とする揺動変位を可能に支持している。又、前記ステアリングコラム6の後端寄り部分に固定した変位ブラケット12を、前記車体10に支持した支持ブラケット13に対して、上下方向及び前後方向の変位を可能に支持している。又、前後方向の変位を可能とするテレスコピック機構を構成する為に、前記ステアリングコラム6を、アウタコラム14とインナコラム15とをテレスコープ状に伸縮自在に組み合わせた構造とし、前記ステアリングシャフト5を、アウタシャフト16とインナシャフト17とを、スプライン係合等により、トルク伝達可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせた構造としている。尚、図示の例は、電動モータ18を補助動力源として前記ステアリングホイール1を操作する為に要する力の低減を図る、電動式パワーステアリング装置も組み込んでいる。
【0004】
チルト機構やテレスコピック機構で、電動式のものを除く手動式の構造の場合には、調節レバーの操作に基づいて、前記ステアリングホイール1の位置を調節可能な状態としたり、調節後の位置に固定できる様にしている。この様な手動式のチルト機構やテレスコピック機構の構造に就いては、従来から各種構造のものが広く知られており、且つ、実施されている。例えば、
図11に示した構造の場合には、前記アウタコラム14に固設した変位ブラケット12に、前後位置調節方向であるこのアウタコラム14の軸方向に長い、前後方向長孔19を形成している。又、前記支持ブラケット13は、前記変位ブラケット12を左右両側から挟む、1対の支持板部20を備えており、これら両支持板部20の互いに整合する部分に、それぞれ上下方向に長い、上下方向長孔21を形成している。これら両上下方向長孔21は、一般的には、前記枢軸11を中心とする部分円弧状である。そして、これら両上下方向長孔21と前記前後方向長孔19とに、調節ロッド22を挿通している。この調節ロッド22には、前記両支持板部20を左右方向両側から挟む状態で1対の押圧部を設けており、調節レバーの操作に基づいて作動する拡縮装置により、前記両押圧部同士の間隔を拡縮可能としている。
【0005】
前記ステアリングホイール1の上下位置又は前後位置を調節する際には、前記調節レバーを所定方向(一般的には下方)に揺動させる事により、前記両押圧部同士の間隔を拡げる。これにより、前記両支持板部20の内側面と前記変位ブラケット12の両外側面との間に作用している摩擦力を小さくする。そして、この状態で、前記調節ロッド22が、前記両上下方向長孔21及び前記前後方向長孔19内で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の位置を調節する。調節後は、前記調節レバーを前記所定方向とは逆方向(一般的には上方)に揺動させる事により、前記両押圧部同士の間隔を縮める。これにより、前記摩擦力を大きくして、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する。
【0006】
又、上述したステアリング装置は、衝突事故の際に、運転者の身体が前記ステアリングホイール1にぶつかる、二次衝突が発生した場合に、運転者に加わる衝撃荷重を緩和すべく、このステアリングホイール1が前方に変位する事を許容する機能を備える。この為に、具体的には、前記支持ブラケット13を前記車体10に対し、二次衝突時の衝撃により前方への離脱を可能に支持する構造を採用している。この様な構造を備えたステアリング装置の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力、即ち、前記支持ブラケット13に対する前記アウタコラム14の保持力が弱いと、二次衝突の発生時に、このアウタコラム14が前記支持ブラケット13に対し不用意に移動する可能性がある。そして、移動した場合には、この支持ブラケット13に対する衝撃の加わり方が変化する為、この支持ブラケット13を前記車体10から離脱させる事に基づく衝撃吸収機構の設計が難しくなる可能性がある。
【0007】
一方、前記調節レバーの操作量や操作力を大きくする事なく、前記支持ブラケット13に対する前記アウタコラム14の保持力を大きくする為には、この保持力を確保する為の摩擦面の数を増やす事が好ましい。この様な事情に鑑みて、特許文献1には、ステアリングコラムに支持した摩擦板と、支持ブラケットに支持した摩擦板とを、左右方向に重ね合わせる事により、前記摩擦面の数を増やす構造が記載されている。ところが、この特許文献1に記載された構造の場合には、前記各摩擦板を、前記ステアリングコラム又は前記支持ブラケットに対し、左右方向の変位のみを可能に支持する構成を採用している。この為、前記摩擦面の数を増やす為に必要となる摩擦板の枚数が多くなる。従って、前記摩擦面を増やす事に伴って生じる、左右方向寸法、部品点数及び重量の増大量が、それぞれ大きくなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は
、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラム6aと、変位ブラケット12aと、コラム側貫通孔である前後方向長孔19aと、ステアリングシャフト5aと、支持ブラケット13aと、左右1対の上下方向長孔21a、21aと、調節ロッド22aと、1対の押圧部24a、24bと、調節レバー23と、前側、後側両揺動支持軸25、26と、前側、後側両揺動摩擦板27、28とを備える。
このうちのステアリングコラム6aは、前側に配置されたインナコラム15aの後端部と後側に配置されたアウタコラム14aの前端部とを軸方向の変位を可能に嵌合して成るテレスコピックステアリングコラムで、全体を円筒状としている。又、前記変位ブラケット12aは、アルミニウム系合金等の軽合金をダイキャスト成形する事により、前記アウタコラム14aと一体に構成している。前記変位ブラケット12aは、幅方向中央部に形成したスリット29により、全幅を弾性的に拡縮可能としている。前記前後方向長孔19aは、前記変位ブラケット12aの一部で、前記スリット29を挟んで互いに整合する位置に、この変位ブラケット12aを幅方向に貫通する状態で設けている。
【0018】
又、前記ステアリングシャフト5aは、後側に配置したアウタシャフト16aの前端部と前側に配置したインナシャフト17aの後端部とを、スプライン係合等により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせて成る。この様なステアリングシャフト5aは、前記アウタシャフト16aの中間部後端寄り部分を前記アウタコラム14aの後端部に、前記インナシャフト17aの中間部前端寄り部分を前記インナコラム15aの前端部に、それぞれ単列深溝型の玉軸受の如く、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支障可能な転がり軸受により、回転自在に支持している。従って、前記ステアリングシャフト5aは、前記ステアリングコラム6aの伸縮と共に伸縮する。尚、前記アウタシャフト16aの後端部で前記アウタコラム14aの後端開口よりも後方に突出した部分には、ステアリングホイール1(
図11参照)を支持固定する。
【0019】
又、前記支持ブラケット13aは、鋼板等、必要とする強度及び剛性を確保できる金属板を曲げ形成して成るもので、車体に支持する為の取付板部30と、この取付板部30の下面から垂下された、互いに平行な1対の支持板部20a、20bとを備える。これら両支持板部20a、20bの内側面同士の間隔は、前記変位ブラケット12aの幅寸法と前記後側揺動摩擦板28の厚さとの和に、ほぼ一致する。又、前記両上下方向長孔21a、21aは、前記両支持板部20a、20bの互いに整合する部分に形成しており、前記ステアリングコラム6aの前端部を揺動変位可能に支持した枢軸11aを中心とする部分円弧状である。但し、前記両上下方向長孔21a、21aは、後方に向かう程上方に向かう方向に傾斜する直線状とする事もできる。何れにしても、この様な構成を有する前記支持ブラケット13aは、車体に対して、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への脱落を可能に、但し、通常時には前記ステアリングコラム6aを充分な剛性を確保できる状態で支持する。
【0020】
又、前記調節ロッド22aは、前記前後方向長孔19a及び前記両上下方向長孔21a、21aを幅方向に挿通する状態で設けている。そして、この様な前記調節ロッド22aの両端部で、前記両支持板部20a、20bの外側面から突出した部分に、前記両押圧部24a、24bを設け、前記調節レバー23により、これら両押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮可能としている。この調節レバー23によりこれら両押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮する為の構造は特に問わない。例えば1対のカム部材のカム面同士の係合により軸方向寸法を拡縮可能としたカム装置や、調節ロッド22aの先端部に設けた雄ねじ部にナットを螺合する構造を採用する事ができる。何れの構造を採用した場合でも、前記調節レバー23は前記調節ロッド22aの一端部に設け、この調節ロッド22aを中心として回転する事により、前記両押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮する。
【0021】
又、前記前側揺動支持軸25は、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節する際に、前記調節ロッド22aに対し相対変位する部分である、前記両支持板部20a、20bのうちの一方(
図2の左方)の支持板部20aの外側面(
図2の左側面)に、前記後側揺動支持軸26は、同じく内側面(
図2の右側面)に、それぞれ前記調節ロッド22aと平行に設けている。このうちの前側揺動支持軸25は、前記一方の支持板部20aの外側面のうち、この一方の支持板部20aに設けた上下方向長孔21aの上下方向に関する中央位置を通り、この中央位置に於けるこの上下方向長孔21aの接線方向(この上下方向長孔21aを直線状とした場合、この上下方向長孔21aの長さ方向)に直交する方向の仮想直線α(
図1参照)上で、この上下方向長孔21aよりも前方に設置している。この様な構造により、前記調節ロッド22a及び前記前側揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離L
F(
図1参照)を、この調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部に位置する場合{
図3の(B)に示す状態の場合}に、最小値L
FMIN{
図3の(B)参照}となる様にしている。これと同時に、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の上端部に位置する場合{
図3の(A)に示す状態}の、この調節ロッド22a及び前記前側揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離L
FTと、同じく下端部に位置する場合{同図の(C)に示す状態}の、これら調節ロッド22a及び前側揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離L
FLとを互いに同じにしている(L
FT=L
FL>L
FMIN)。即ち、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節に伴い、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a(、及び後述する前側ガイド長孔31)に沿って変位する過程で、前記調節ロッド22aと前記前側揺動支持軸25との間の距離L
Fが変化する方向(伸長する方向か短縮する方向か)が、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部を境に互いに反対方向となっている。
【0022】
又、前記後側揺動支持軸26は、前記一方の支持板部20aの内側面のうち、前記仮想直線α上で、前記上下方向長孔21aよりも後方に設置している。この様な構造により、前記調節ロッド22a及び前記後側揺動支持軸26の中心軸同士の間の距離L
B(
図1参照)を、前記前側揺動支持軸25の場合と同様に、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部に位置する場合{
図3の(B)に示す状態の場合}に、最小値L
BMIN{
図3の(B)参照}となる様にしている。これと同時に、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の上端部に位置する場合{
図3の(A)に示す状態}の、この調節ロッド22a及び前記後側揺動支持軸26の中心軸同士の間の距離L
BTと、同じく下端部に位置する場合{同図の(C)に示す状態}の、これら調節ロッド22a及び後側揺動支持軸26aの中心軸同士の間の距離L
BLとを互いに同じにしている(L
BT=L
BL>L
BMIN)。従って、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節により、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a(、及び後述する後側ガイド長孔32)に沿い変位する過程で、前記調節ロッド22aと前記後側揺動支持軸26との間の距離L
Bが変化する方向(伸長する方向か短縮する方向か)が、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部を境に互いに反対方向となる。
【0023】
又、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28は何れも、鋼板、ステンレス鋼板或いはアルミニウム系合金等の、必要とする強度及び剛性を確保でき、且つ、相手面(前記一方の支持板部20aの外側面及び前記両押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面、或いは、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面)との当接部の摩擦係数を大きくできる金属板により形成された、略扇形の平板部材である。このうちの前側揺動摩擦板27は、前記一方の支持板部20aの外側面と前記一方の押圧部24aの内側面との間に挟持すると共に、先半部(幅広部)に設けた前側ガイド長孔31に前記調節ロッド22aを挿通している。この前側ガイド長孔31は、前記前側揺動支持軸25を中心とする揺動方向片端部である下端部(
図1、3の時計方向前側の端部)から、同じく他端部である上端部(同図の時計方向後側の端部)まで、少しずつでも、前記前側揺動支持軸25との間の距離が長くなる方向に、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記前側ガイド長孔31を、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の中央部に位置する状態{
図3の(B)に示す状態}で、前記仮想直線αよりも下方で、且つ、前記前側揺動支持軸25よりも前方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、この部分円弧のうちでこの調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記前側揺動支持軸25の中心軸を中心とし、これら調節ロッド22aと前側揺動支持軸25との間の距離L
Fを半径とする仮想円弧の接線(前記前側揺動摩擦板27の揺動方向)との成す角度θが、この調節ロッド22aの上下方向位置に拘わらず、一定となる様にしている。尚、この様な角度θは、10度〜35度とする事が好ましい。そして、前記調節ロッド22aが、前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部に位置する場合に、この調節ロッド22aと前記前側ガイド長孔31の下端部とが、同じく前記上下方向長孔21a内の端部(上端部及び下端部)に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記前側ガイド長孔31の上端部とが、それぞれ係合する様に、前記前側揺動摩擦板27の基端部(扇の要に相当する部分)を前記前側揺動支持軸25に、この前側揺動支持軸25を中心とする揺動変位を可能に支持している。
【0024】
又、前記後側揺動摩擦板28は、前記一方の支持板部20aの内側面と前記変位ブラケット12aの片側面との間に挟持すると共に、先半部(幅広部)に設けた後側ガイド長孔32に前記調節ロッド22aを挿通している。この後側ガイド長孔32は、前記後側揺動支持軸26を中心とする揺動方向片端部である上端部(
図1、3の時計方向前側の端部)から、同じく他端部である下端部(同図の時計方向後側の端部)まで、少しずつでも、前記後側揺動支持軸26との間の距離が長くなる方向に、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記後側ガイド長孔32を、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の中央部に位置する状態{
図3の(B)に示す状態}で、前記仮想直線αよりも上方で、且つ、前記後側揺動支持軸26よりも後方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、この部分円弧のうちでこの調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記後側揺動支持軸26の中心軸を中心とし、これら調節ロッド22aと後側揺動支持軸26との間の距離L
Bを半径とする仮想円弧の接線(前記後側揺動摩擦板28の揺動方向)との成す角度φが、この調節ロッド22aの上下方向位置に拘わらず、一定となる様にしている。尚、この様な角度φは、10度〜35度とする事が好ましい。そして、前記調節ロッド22aが、前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部に位置する場合に、この調節ロッド22aと前記後側ガイド長孔32の下端部とが、同じく前記上下方向長孔21a内の端部(上端部及び下端部)に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記後側ガイド長孔32の上端部とが、それぞれ係合する様に、前記後側揺動摩擦板28の基端部(扇の要に相当する部分)を前記後側揺動支持軸26に、この後側揺動支持軸26を中心とする揺動変位を可能に支持している。
【0025】
尚、本例の場合、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28のそれぞれの両側面に、相手面との間の摩擦係数を大きくする為の表面処理を施している。この様な表面処理として、例えば粗面加工(ショットブラスト、ローレット加工等)を施して前記各側面の表面粗さを大きくしたり、或は、これら各側面に摩擦剤を被覆する事ができる。この摩擦剤は、これら各側面の摩擦係数を大きくするものであれば、特に限定されない。この様な摩擦剤としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の高分子材料や、粘着性接着剤、セラミックコーティング等が望ましい。
【0026】
本例の場合、前記ステアリングホイール1の上下位置又は前後位置を調節する際には、前記調節レバー23を所定方向に揺動させる事により、前記両押圧部24a、24b同士の間隔を拡げる。この結果、前記変位ブラケット12aのスリット29の存在に基づき、前記アウタコラム14aの前端部の内径が弾性的に拡がって、このアウタコラム14aの前端部内周面と前記インナコラム15aの後端部外周面との嵌合部の面圧が、低下乃至は喪失する。同時に、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28の両側面と、前記一方の支持板部20aの両側面、前記一方の押圧部24aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面との当接部の面圧、並びに、前記両支持板部20a、20bのうちの他方の支持板部20bの両側面と、前記両押圧部24a、24bのうちの他方の押圧部24bの内側面及び前記変位ブラケット12aの他側面との当接部の面圧が、それぞれ低下乃至は喪失する。この状態で、前記調節ロッド22aが、前記前後方向長孔19a及び前記両上下方向長孔21a、21a内で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の位置を調節する。
【0027】
上述の様な本例に於いて、このステアリングホイール1の上下位置を調節すべく、このステアリングホイール1(ステアリングコラム6a)を上下方向に変位させた場合の、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28の動きに就いて次に説明する。
図3の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な上端位置まで移動させた状態を示している。この状態では、前記調節ロッド22aと、前記上下方向長孔21aの上端部、並びに、前記前側ガイド長孔31の上端部及び前記後側ガイド長孔32の下端部とが係合している。この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させ、前記調節ロッド22aを下降させると、この調節ロッド22aの中心軸と、前記前側揺動支持軸25の中心軸との間の距離L
F、及び、同じく前記後側揺動支持軸26の中心軸との間の距離L
Bが、それぞれ短く(L
FMIN、L
BMINに)なる。この為、
図3の(A)→(B)に示す様に、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28が、それぞれ前記前側、後側両揺動支持軸25、26を中心として、
図3の反時計方向に揺動する。そして、前記ステアリングホイール1を上下方向に関する中央位置とした状態では、前記
図3の(B)に示す様に、前記調節ロッド22aは、前記上下方向長孔21aの中央部、並びに、前記前側ガイド長孔31の下端部及び前記後側ガイド長孔32の上端部と係合する。前記
図3の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を下方に変位させて下端位置まで移動させ、前記調節ロッド22aを前記上下方向長孔21aの下端部に移動させると、この調節ロッド22aの中心軸と、前記前側揺動支持軸25の中心軸との間の距離L
F、及び、同じく前記後側揺動支持軸26の中心軸との間の距離L
Bが、それぞれ長くなる。この為、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28が、それぞれ前記前側、後側両揺動支持軸25、26を中心として、
図3の時計方向に揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を、下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図3の(C)→(B)→(A)の順に、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28が揺動する。
【0028】
上述の様に構成する本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、揺動摩擦板として特に大きなものを使用しなくても、ステアリングホイール1(
図11参照)を調節後の位置に保持する力を大きくできて、小型・軽量化及び設計の自由度の向上を図り易い。即ち、本例の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持すべく、1対の押圧部24a、24b同士の間隔を縮めた状態では、前側揺動摩擦板27が、1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの外側面と、前記両押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面との間で、後側揺動摩擦板28が、前記一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間で、それぞれ強く挟持された状態となる。この状態から前記ステアリングホイール1の上下位置を動かそうとすると、前記前側揺動摩擦板27の両側面と、前記一方の支持板部20aの外側面及び前記一方の押圧部24aの内側面とが強く擦れ合うと共に、前記後側揺動摩擦板28の両側面と、前記一方の支持板部20aの内側面及び前記変位ブラケット12aの片側面とが強く擦れ合う事となる。要するに、前記ステアリングホイール1を所望の位置に保持した状態から、このステアリングホイール1を動かそうとした場合、それぞれが摩擦面である、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28の両側面を滑らせつつ、これら前側、後側両揺動摩擦板27、28を揺動させる必要がある。この為、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くできる。この結果、二次衝突時に、このステアリングホイール1に加わる前方に向いた衝撃荷重に基づき、調節ロッド22aが前記両支持板部20a、20bに設けた上下方向長孔21a、21aに沿って上方に変位する事により、前記ステアリングホイール1が舞い上がるのを防止できて、運転者の身体の保護充実を図り易くなる。
【0029】
又、本例の場合、前側、後側両ガイド長孔31、32を、前記前側、後側両揺動支持軸25、26を中心とする揺動方向片端部から他端部に向かうに従って、これら前側、後側両揺動支持軸25、26との間の距離L
F、L
Bが長くなる方向に、それぞれ形成している。この為、前記ステアリングホイール1の上下方向変位に伴い、前記調節ロッド22aを前記前側、後側両ガイド長孔31、32に沿って変位させ、この調節ロッド22aと前記前側、後側両揺動支持軸25、26との間の距離L
F、L
Bを変化させる事で、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28を揺動変位させるのに要する力を、前記前側、後側両ガイド長孔31、32を、前記調節ロッド22aと前記前側、後側両揺動支持軸25、26とを結ぶ直線方向に形成した場合と比較して大きくできる。この面からも、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くする事ができる。
【0030】
又、本例の場合には、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くできる構造を、前述した特許文献1に記載の構造の様に、多数枚(3枚以上)の摩擦板を重ね合わせる事なく、1対の揺動摩擦板27、28のみで実現できる。従って、前記ステアリングホイール1の位置調節装置の左右方向寸法、部品点数及び重量が、前記特許文献1に記載の構造の様に増大するのを抑える事ができ、前記ステアリングホイールの位置調節装置の小型・軽量化を図れる。
【0031】
更に、本例の場合、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28の揺動方向をそれぞれ、前記ステアリングホイール1を上端位置から中央位置まで移動させる場合、同じく中央位置から下端位置まで移動させる場合とで互いに反対方向としている。この為、前記前側、後側両揺動摩擦板27、28が揺動する大きさ(揺動角度)を、前記ステアリングホイール1の位置調節できる全範囲で前記両揺動摩擦板27、28の揺動方向を同じとした場合と比較して小さく抑えられる。従って、これら両揺動摩擦板27、28の前記一方の支持板部20aの下端縁からの突出量を抑えたり、これら両揺動摩擦板27、28の表面積を大きくする事ができて、設計の自由度を確保し易い。
【0032】
尚、本例のステアリングホイールの位置調節装置は、テレスコピック機構を省略した、単なるチルトステアリング装置で実施する事もできる。この場合には、コラム側貫通孔を(前後方向長孔19aに代え、)単なる円孔とする。又、スリット29を省略し、インナコラム15aの後端部とアウタコラム
14aの前端部とを、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、このアウタコラム
14aの前方への変位を可能に嵌合する。
【0033】
[実施の形態の第2〜4例]
図4は、本発明の実施の形態の第2〜4例を示している。
図4の(A)に示した実施の形態の第2例の場合、前側揺動摩擦板27を、左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に、後側揺動摩擦板28を他方の支持板部20bの内側面と、この変位ブラケット12aの他側面との間に、それぞれ挟持している。又、
図4の(B)に示した実施の形態の第3例の場合、前側、後側両揺動摩擦板27、28同士を互いに重ね合わせた状態で、一方の支持板部20aの外側面と、左右1対の押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面との間に挟持している。更に、
図4の(C)に示した実施の形態の第4例の場合、前側、後側両揺動摩擦板27、28同士を互いに重ね合わせた状態で、一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に挟持している。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0034】
[実施の形態の第5例]
図5〜7は
、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例のステアリングホイールの位置調節装置は、それぞれ1対ずつの前側揺動摩擦板27a、27bと、後側揺動摩擦板28a、28bとを備える。即ち、これら両前側揺動摩擦板27a、27bのうちの一方の前側揺動摩擦板27aを、左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの外側面と、左右1対の押圧部24a、24bの一方の押圧部24aの内側面との間に、同じく他方の前側揺動摩擦板27bを、他方の支持板部20bの外側面と、他方の押圧部24bの内側面との間に、それぞれ挟持している。そして、ステアリングホイール1(
図11参照)を上下方向に関する中央位置とした状態で、調節ロッド22aと、前記一方の前側揺動摩擦板27aに形成した前側ガイド長孔31aの下端部(
図7の時計方向前側の端部)とが係合する様に、前記一方の前側揺動摩擦板27aを、前記一方の支持板部20aに設けた前側揺動支持軸25aに支持している。同様に、前記調節ロッド22aと、前記他方の前側揺動支持板27bに形成した前側ガイド長孔31bの上端部(
図7の時計方向後側の端部)とが係合する様に、前記他方の前側揺動摩擦板27bを、前記他方の支持板部20bに設けた前側揺動支持軸25bに支持している。
【0035】
又、前記両後側揺動摩擦板28a、28bのうちの一方の後側揺動摩擦板28aを、前記一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に、同じく他方の後側揺動摩擦板28bを、前記他方の支持板部20bの内側面と、前記変位ブラケット12aの他側面との間に、それぞれ挟持している。そして、前記ステアリングホイール1を上下方向に関する中央位置とした状態で、前記調節ロッド22aと、前記一方の後側揺動摩擦板28aに形成した後側ガイド長孔32aの上端部(
図7の時計方向前側の端部)とが係合する様に、前記一方の後側揺動摩擦板28aを、前記一方の支持板部20aに設けた後側揺動支持軸26aに支持している。同様に、前記調節ロッド22aと、前記他方の後側揺動支持板28bに形成した後側ガイド長孔32bの下端部(
図7の時計方向後側の端部)とが係合する様に、前記他方の後側揺動摩擦板28bを、前記他方の支持板部20bに設けた後側揺動支持軸26bに支持している。
【0036】
本例の場合、
図7の(A)に示す様に、前記ステアリングホイール1を調節可能な上端位置まで移動させた状態では、前記調節ロッド22aと、上下方向長孔21aの上端部、並びに、一方の前側ガイド長孔31aの上端部、他方の前側ガイド長孔31bの下端部、一方の後側ガイド長孔32aの下端部及び他方の後側ガイド長孔32bの上端部とが係合する。従って、この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させ、前記調節ロッド22aを下降させると、
図7の(A)→(B)に示す様に、前記一方の前側揺動摩擦板27aが前記一方の前側揺動支持軸25aを中心として、
図7の反時計方向に、前記他方の前側揺動摩擦板27bが前記他方の前側揺動
支持軸25bを中心として、同じく時計方向に、前記一方の後側揺動摩擦板28aが前記一方の後側揺動支持軸26aを中心として、同じく反時計方向に、前記他方の後側揺動摩擦板28bが前記他方の後側揺動支持軸26bを中心として、同じく時計方向に、それぞれ揺動する。前記
図7の(B)に示す中立状態では、前記調節ロッド22aは、前記上下方向長孔21aの上下方向中央部、並びに、前記一方の前側ガイド長孔31aの下端部、前記他方の前側ガイド長孔31bの上端部、前記一方の後側ガイド長孔32aの上端部及び前記他方の後側ガイド長孔32bの下端部とが係合する。この為、前記
図7の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を下方に変位させて下端位置まで移動させると、
図7の(B)→(C)に示す様に、前記一方の前側揺動摩擦板27aが前記一方の前側揺動支持軸25aを中心として、
図7の時計方向に、前記他方の揺動摩擦板27bが前記他方の前側揺動
支持軸25bを中心として、同じく反時計方向に、前記一方の後側揺動摩擦板28aが前記一方の後側揺動支持軸26aを中心として、同じく時計方向に、前記他方の後側揺動摩擦板28bが前記他方の後側揺動支持軸26bを中心として、同じく反時計方向に、それぞれ揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図7の(C)→(B)→(A)の順に、前記前側、後側各揺動摩擦板27a、27b、28a、28bが、それぞれ揺動変位する。
【0037】
上述の様な本例のステアリングホイールの位置調節装置の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を、前述した実施の形態の第1例の場合と比較して、より強くする事ができる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0038】
[実施の形態の第6例]
図8〜10は
、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合、前述した実施の形態の第1例の場合と同様に、左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの外側面と、左右1対の押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面との間に、チルト用前側揺動摩擦板33を、前記一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に、チルト用後側揺動摩擦板34を、それぞれ挟持している。これらチルト用前側、後側両揺動摩擦板33、34はそれぞれ、前記実施の形態の第1例に係る前側、後側両揺動摩擦板
27、28と同様に、ステアリングホイール1(
図11参照)の上下方向変位に伴い、チルト用前側、後側両揺動支持軸35、36を中心に揺動変位する。即ち、前記ステアリングホイール1を上端位置から下端位置まで下方に変位させる場合には、前述した
図3の(A)→(B)→(C)の順に、同じく後端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、前記
図3の(C)→(B)→(A)の順に、それぞれ前記チルト用前側、後側両揺動摩擦板33、34(前側、後側両揺動摩擦板
27、28)が揺動する。
【0039】
更に本例の場合には、前記両支持板部20a、20bのうちの他方の支持板部20bの内側面と、前記変位ブラケット12aの他側面との間に、前記ステアリングホイール1の前後方向変位に伴い揺動変位する、テレスコ用揺動摩擦板37を挟持している。この為に、テレスコ用揺動支持軸38を、前記ステアリングホイール1の前後方向変位の際に、調節ロッド22aに対し相対変位する部分である、前記変位ブラケット12aの他側面に、この調節ロッド22aと平行に設けている。前記テレスコ用揺動支持軸38の設置位置は、前記変位ブラケット12aの他側面のうち、この変位ブラケット12aに設けた前後方向長孔19aの前後方向に関する中央位置を通り、ステアリングコラム6aの軸方向(この前後方向長孔19aの長さ方向)に直交する方向の仮想直線β{
図10の(B)参照}上で、この前後方向長孔19aよりも上方としている。但し、前記テレスコ用揺動支持軸38の設置位置は、前記仮想直線β上であれば、前記前後方向長孔19aよりも下方とする事もできる。何れにしても、この様な構造により、前記テレスコ用揺動支持軸38の中心軸と、前記ステアリングホイール1を前端位置とした場合に於ける前記調節ロッド22aの中心軸との間の距離L
Fと、同じく後端位置とした場合に於けるこの調節ロッド22aの中心軸との間の距離L
Bとを、互いに同じにしている(L
F=L
B)。
【0040】
又、前記テレスコ用揺動摩擦板37は、鋼板、ステンレス鋼板等の、必要とする強度及び剛性を確保でき、且つ、相手面である、前記他方の支持板部20aの内側面、及び前記変位ブラケット12aの他側面との当接部の摩擦係数を大きくできる金属板により形成された、略扇形の平板部材である。前記テレスコ用揺動摩擦板37は、基端部である上端寄り部分を、前記テレスコ用揺動支持軸38を中心とする揺動変位を可能に支持している。そして、前記テレスコ用揺動摩擦板37は、前記他方の支持板部20aの内側面と前記変位ブラケット12aの他側面との間に挟持すると共に、下半部に設けたテレスコ用ガイド長孔39に前記調節ロッド22aを挿通している。このテレスコ用ガイド長孔39は、前端部から後端部まで、少しずつでも、前記テレスコ用揺動支持軸38との間の距離が長くなる方向に存在する、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記テレスコ用ガイド長孔39を、前記調節ロッド22aが前記前後方向長孔19a内の中央部に位置する状態{
図11の(B)に示す状態}で、前記仮想直線βよりも前方で、且つ、前記テレスコ用揺動支持軸38よりも上方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、この部分円弧のうちでこの調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記テレスコ用揺動支持軸38の中心軸を中心とし、これら調節ロッド22aとテレスコ用揺動支持軸38との間の距離を半径とする仮想円弧の接線(前記テレスコ用揺動摩擦板37の揺動方向)との成す角度ηが、この調節ロッド22aの前後方向位置に拘わらず、一定となる様にしている。尚、この様な角度ηは、10度〜35度とする事が好ましい。そして、前記ステアリングホイール1の前後方向位置を調節可能な範囲の中央位置とした時に、前記調節ロッド22aと前記テレスコ用ガイド長孔39の前端部とが係合し、同じく後端位置及び前端位置とした時に、前記調節ロッド22aとこのテレスコ用ガイド長孔39の後端部とが係合する様にしている。即ち、本例の場合、前記ステアリングホイール1の前後方向の位置調節に伴い、前記調節ロッド22aが前記テレスコ用ガイド長孔39に沿って変位する過程で、この調節ロッド22aと前記テレスコ用揺動支持軸38との間の距離が変化する方向(伸長する方向か短縮する方向か)が、前記ステアリングホイール1の位置調節可能な範囲の前後方向中央位置を境に互いに反対方向となる。
【0041】
上述の様な本例に於いて、前記ステアリングホイール1の前後位置を調節すべく、このステアリングホイール1の前後方向に変位させた場合の、前記テレスコ用揺動摩擦板37の動きに就いて次に説明する。
図11の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な前端位置まで移動させた状態を示している。この状態では、前記調節ロッド22aと、前記前後方向長孔19aの後端部及び前記テレスコ用ガイド長孔39の後端部とが係合している。従って、この状態から前記ステアリングホイール1を後方に変位させる事により、前記調節ロッド22aを前記前後方向長孔19a内で前方に変位させると、この調節ロッド22a及び前記テレスコ用揺動支持軸38との中心軸同士の間の距離が短くなる為、
図11の(A)→(B)に示す様に、前記テレスコ用揺動摩擦板37が前記テレスコ用揺動支持軸38を中心として、
図11の反時計方向に揺動する。前記
図11の(B)に示す中立位置状態では、前記調節ロッド22は、前記前後方向長孔19aの前後方向中央部及び前記テレスコ用ガイド長孔39の前端部と係合している。この為、前記
図11の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を後方に変位させて後端位置まで移動させると、前記調節ロッド22a及び前記テレスコ用揺動支持軸38との中心軸同士の間の距離が長くなり、
図11の(B)→(C)に示す様に、前記テレスコ用揺動摩擦板37が前記テレスコ用揺動支持軸38を中心として、
図11の時計方向に揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を、後端位置から前端位置まで前方に変位させる場合には、上述した前方に変位させる場合とは逆に、
図11の(C)→(B)→(A)の順に、前記テレスコ用揺動摩擦板37が揺動する。
【0042】
上述の様な本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記ステアリングホイール1の上下方向位置を保持する力に加え、前後方向に就いても、調節後の位置に保持する力を大きくできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。