特許第6191402号(P6191402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191402
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ダイシング装置及びダイシング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170828BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   H01L21/78 C
   B24B27/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-229007(P2013-229007)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-90873(P2015-90873A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100117260
【弁理士】
【氏名又は名称】福永 正也
(72)【発明者】
【氏名】宮野 勝彦
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−044054(JP,A)
【文献】 特開2011−222621(JP,A)
【文献】 特開昭62−106505(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0206234(US,A1)
【文献】 特開昭62−061340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の切断線で切断されるワークを搭載可能な搭載面を有するテーブルと、
ダイシングブレードを先端に備え、前記テーブルに対して相対的に移動可能に配置されるスピンドルと、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向における所定の前後方向に相対的に移動させるY軸駆動源と、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面の法線方向に伸びる上下方向に相対的に移動させるZ軸駆動源と、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向において前記前後方向に直交する左右方向に相対的に移動させるX軸駆動源と、
前記ワークの表面を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、前記所定の切断線を演算可能とするように配置される認識点の座標を検出する画像認識処理装置と、
前記所定の切断線と前記認識点の座標との関係式及び前記認識点の座標を記憶する記憶装置と、
前記関係式及び前記認識点の座標に基づいて前記所定の切断線を演算し、演算した前記所定の切断線を前記記憶装置に記憶させる演算装置と、
前記所定の切断線上に前記ダイシングブレードが位置するように、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源との動作を同期させて制御する制御装置と
を備えるダイシング装置において、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記上下方向を回転軸として相対的に回転させる回転駆動源をさらに備え、
前記演算装置は、前記ワークの配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の前記認識点の座標に基づいて、前記所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を演算する多項式近似手段を有し、
前記制御装置は、前記近似曲線に沿って前記ダイシングブレードが移動するよう、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源及び前記回転駆動源の動作を同期させ
前記演算装置は、前記ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似することを特徴とするダイシング装置。
【請求項2】
所定の切断線で切断されるワークを搭載可能な搭載面を有するテーブルと、
イシングブレードを先端に備え、前記テーブルに対して相対的に移動可能に配置されるスピンドルと、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向における所定の前後方向に相対的に移動させるY軸駆動源と、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面の法線方向に伸びる上下方向に相対的に移動させるZ軸駆動源と、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向において前記前後方向に直交する左右方向に相対的に移動させるX軸駆動源と、
前記ワークの表面を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置で撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、前記所定の切断線を演算可能とするように配置される認識点の座標を検出する画像認識処理装置と、
前記所定の切断線と前記認識点の座標との関係式及び前記認識点の座標を記憶する記憶装置と、
前記関係式及び前記認識点の座標に基づいて前記所定の切断線を演算し、演算した前記所定の切断線を前記記憶装置に記憶させる演算装置と、
前記所定の切断線上に前記ダイシングブレードが位置するように、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源との動作を同期させて制御する制御装置と
を備えるダイシング装置で実行することが可能なダイシング方法において、
前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記上下方向を回転軸として相対的に回転させる回転駆動源をさらに備え、
前記ワークの配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の前記認識点の座標に基づいて、前記所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を前記演算装置により演算し、
前記近似曲線に沿って前記ダイシングブレードが移動するよう、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源及び前記回転駆動源の動作を前記制御装置により同期させ、
前記ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似することを特徴とするダイシング方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、電子部品等が形成されたウェハ等のワークに反りや歪が生じている場合であっても、ワークを高い精度で切断することができるダイシング装置及びダイシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体装置、電子部品等が形成されたウェハ等のワークを、個々のチップ(半導体装置、電子部品等)に切り出すことでチップ化している。しかし、ワーク自体に反りや歪が発生する場合、単純に直線状にダイシングするだけでは、所期の設計通りにチップを切り出すことが困難である。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、歪の大きいパッケージ基板を精度よく切削するために、パッケージ基板の傾き角度を事前に測定しておき、パッケージ基板の回転角度を変えて切削するパッケージ基板の分割方法が開示されている。ダイシングブレードは、切削が終了する都度上昇し、傾き角度を補正した後に下降して切削を行う。斯かる動作を繰り返すことにより、傾き角度に応じて高い精度で切削することができる。
【0004】
また、特許文献2には、セラミックス基板に焼結歪が生じている場合であっても、精密な位置合わせをして切削することができる切削方法が、特許文献3には、適正にアライメントを行い、格子状に区画されたストリートをすべて縦横に切削し、個々のチップに分割して切り出すアライメント方法が、特許文献4には、焼成ひずみを考慮してカットラインの角度を変更して、カットされた部材内にパターン電極が均等に配分されるよう等分割するセラミック板のダイシング方法が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−044054号公報
【特許文献2】特開平09−052227号公報
【特許文献3】特開2002−033295号公報
【特許文献4】特開2000−252234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至4に開示されている方法では、ワークがどのように変形していようとも基本的には直線状にダイシングすることを前提としている。したがって、ワークに大きい歪が発生する場合には、例えば半導体装置、電子部品等の一部を切断してしまう、いわゆるカットずれ不良が発生するおそれがあるという問題点があった。
【0007】
また、ワークに生じている歪の大きさを考慮して配列ピッチを広めにする必要があるため、切り出すことができるチップの個数が減少する。さらに、切り出されたチップの製品仕様の寸法保障値の公差を小さくすることができない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ワーク(集合基板)に大きい反りや歪が発生する場合であっても、高い精度でチップを切り出すことができるダイシング装置及びダイシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係るダイシング装置は、所定の切断線で切断されるワークを搭載可能な搭載面を有するテーブルと、ダイシングブレードを先端に備え、前記テーブルに対して相対的に移動可能に配置されるスピンドルと、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向における所定の前後方向に相対的に移動させるY軸駆動源と、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面の法線方向に伸びる上下方向に相対的に移動させるZ軸駆動源と、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向において前記前後方向に直交する左右方向に相対的に移動させるX軸駆動源と、前記ワークの表面を撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、前記所定の切断線を演算可能とするように配置される認識点の座標を検出する画像認識処理装置と、前記所定の切断線と前記認識点の座標との関係式及び前記認識点の座標を記憶する記憶装置と、前記関係式及び前記認識点の座標に基づいて前記所定の切断線を演算し、演算した前記所定の切断線を前記記憶装置に記憶させる演算装置と、前記所定の切断線上に前記ダイシングブレードが位置するように、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源との動作を同期させて制御する制御装置とを備えるダイシング装置において、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記上下方向を回転軸として相対的に回転させる回転駆動源をさらに備え、前記演算装置は、前記ワークの配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の前記認識点の座標に基づいて、前記所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を演算する多項式近似手段を有し、前記制御装置は、前記近似曲線に沿って前記ダイシングブレードが移動するよう、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源及び前記回転駆動源の動作を同期させ、前記演算装置は、前記ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似することを特徴とする。
【0010】
上記構成では、複数の半導体装置、電子部品等が形成されたワーク(集合基板)の配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の認識点の座標に基づいて、所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を演算し、演算された近似曲線に沿ってダイシングブレードが移動するよう、X軸駆動源、Y軸駆動源、Z軸駆動源及び回転駆動源の動作を同期させるので、ワークに反りや歪が発生する場合であっても、近似曲線に沿ってダイシングブレードを移動させる限り、チップ(半導体装置、電子部品等)の一部を切断してしまう、いわゆるカットずれ不良が発生するおそれがない。また、歪を考慮して配列ピッチを広めにする必要もなく、切り出すことができるチップの個数が減少することもない。さらに、切り出されたチップ(半導体装置、電子部品等)の製品仕様の寸法保障値の公差を小さくすることができる。また、ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似するので、認識点に特異点が含まれている場合であっても効果的に近似曲線を求めることができ、ダイシングブレードを正確にワーク上の実際に切断するべき位置に沿って移動させることが可能となる。
【0015】
次に、上記目的を達成するために本発明に係るダイシング方法は、所定の切断線で切断されるワークを搭載可能な搭載面を有するテーブルと、ダイシングブレードを先端に備え、前記テーブルに対して相対的に移動可能に配置されるスピンドルと、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向における所定の前後方向に相対的に移動させるY軸駆動源と、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面の法線方向に伸びる上下方向に相対的に移動させるZ軸駆動源と、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記搭載面に沿う方向において前記前後方向に直交する左右方向に相対的に移動させるX軸駆動源と、前記ワークの表面を撮像する撮像装置と、前記撮像装置で撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、前記所定の切断線を演算可能とするように配置される認識点の座標を検出する画像認識処理装置と、前記所定の切断線と前記認識点の座標との関係式及び前記認識点の座標を記憶する記憶装置と、前記関係式及び前記認識点の座標に基づいて前記所定の切断線を演算し、演算した前記所定の切断線を前記記憶装置に記憶させる演算装置と、前記所定の切断線上に前記ダイシングブレードが位置するように、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源との動作を同期させて制御する制御装置とを備えるダイシング装置で実行することが可能なダイシング方法において、前記スピンドルを前記テーブルに対して、前記上下方向を回転軸として相対的に回転させる回転駆動源をさらに備え、前記ワークの配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の前記認識点の座標に基づいて、前記所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を前記演算装置により演算し、前記近似曲線に沿って前記ダイシングブレードが移動するよう、前記X軸駆動源、前記Y軸駆動源、前記Z軸駆動源及び前記回転駆動源の動作を前記制御装置により同期させ、前記ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似することを特徴とする同期させることを特徴とする。
【0016】
上記構成では、複数の半導体装置、電子部品等が形成されたワーク(集合基板)の配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の認識点の座標に基づいて、所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を演算し、演算された近似曲線に沿ってダイシングブレードが移動するよう、X軸駆動源、Y軸駆動源、Z軸駆動源及び回転駆動源の動作を同期させるので、ワークに反りや歪が発生する場合であっても、近似曲線に沿ってダイシングブレードを移動させる限り、チップ(半導体装置、電子部品等)の一部を切断してしまう、いわゆるカットずれ不良が発生するおそれがない。また、歪を考慮して配列ピッチを広めにする必要もなく、切り出すことができるチップの個数が減少することもない。さらに、切り出されたチップ(半導体装置、電子部品等)の製品仕様の寸法保障値の公差を小さくすることができる。また、ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似するので、認識点に特異点が含まれている場合であっても効果的に近似曲線を求めることができ、ダイシングブレードを正確にワーク上の実際に切断するべき位置に沿って移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
上記構成によれば、複数の半導体装置、電子部品等が形成されたワーク(集合基板)の配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の認識点の座標に基づいて、所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を演算し、演算された近似曲線に沿ってダイシングブレードが移動するよう、X軸駆動源、Y軸駆動源、Z軸駆動源及び回転駆動源の動作を同期させるので、ワークに反りや歪が発生する場合であっても、近似曲線に沿ってダイシングブレードを移動させる限り、チップ(半導体装置、電子部品等)の一部を切断してしまう、いわゆるカットずれ不良が発生するおそれがない。また、歪を考慮して配列ピッチを広めにする必要もなく、切り出すことができるチップの個数が減少することもない。さらに、切り出されたチップ(半導体装置、電子部品等)の製品仕様の寸法保障値の公差を小さくすることができる。また、ワークの配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似するので、認識点に特異点が含まれている場合であっても効果的に近似曲線を求めることができ、ダイシングブレードを正確にワーク上の実際に切断するべき位置に沿って移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係るダイシング装置の構成を示す概略図である。
図2】従来のダイシング方法におけるダイシングブレードの移動位置とワーク上の実際に切断するべき位置との関係を示すグラフである。
図3】従来のダイシング方法を説明するための部分平面図である。
図4】従来のダイシング方法におけるダイシングブレードの移動位置とワーク上の実際に切断するべき位置との関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施の形態に係るダイシング方法におけるダイシングブレードの移動位置とワーク上の実際に切断するべき位置との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態に係るダイシング方法を説明するための部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るダイシング装置の構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施の形態に係るダイシング装置は、加工手段として先端にダイシングブレード21とホイールカバー(図示せず)とが取付けられた高周波モータ内蔵型のスピンドル22と、集合基板であるワーク20の表面を撮像する撮像手段(撮像装置)23と、ワーク20を吸着保持する、回転可能なワークテーブル(テーブル)31とを有する。それぞれの動作は、ダイシング装置本体に内蔵されている制御装置30により制御される。なお、制御装置30は、撮像手段23で撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、所定の切断線を演算可能とするように配置される認識点の座標を検出する画像認識処理装置30a、所定の切断線と認識点の座標との関係式及び認識点の座標を記憶する記憶装置30b、及び関係式及び認識点の座標により演算した所定の切断線を記憶装置30bに記憶させる演算装置30cを含む。
【0024】
本実施の形態では、図1の紙面の左右方向をX軸方向、紙面に向かって垂直な方向(前後方向)をY軸方向、紙面の上下方向をZ軸方向とする。すなわちワーク20が搭載されるワークテーブル31の搭載面における所定の前後方向がY軸方向、搭載面に直交する上下方向がZ軸方向、搭載面において前後方向に直交する左右方向をX軸方向としている。スピンドル22がY軸方向、Z軸方向に相対的に移動し、ワークテーブル31がX軸方向に相対的に移動するとともに回転する。ワークテーブル31は、Z軸方向を中心に相対的に回転することができる。
【0025】
本実施の形態に係るダイシング装置のXテーブル33は、Xガイド34に沿って、例えば図示しないリニアモータ(X軸駆動源)によりX軸方向に移動する。Xテーブル33には、図示しないモータ(回転駆動源)によりZ軸方向を中心に回転することが可能な回転テーブル32を介してワークテーブル31が設けられている。ワークテーブル31には、所定の切断線で切断されるワーク20が搭載される。
【0026】
一方、Yテーブル41は、Yガイド42に沿って、例えば図示しないステッピングモータ及びボールスクリュー(Y軸駆動源)によりY軸方向に移動する。Yテーブル41には、図示しないZ軸駆動源によりZ軸方向に移動するZテーブル43が設けられ、Zテーブル43の下端には、先端にダイシングブレード21が取付けられた高周波モータ内蔵型のスピンドル22及び撮像手段23が固定されている。
【0027】
スピンドル22は、1,000rpm〜80,000rpmで高速回転し、近傍にはワーク20に切削液を供給する供給ノズル(図示せず)が設けられている。斯かる構成により、スピンドル22は、Y軸方向にインデックス送りされ、Z軸方向に切込み送りされ、X軸方向に切削送りされる。
【0028】
以下、上述した構成のダイシング装置の動作について説明する。本実施の形態に係るダイシング装置は、ワークテーブル31にワーク20を載置し、撮像手段23によりワーク20の表面に形成されたパターンを撮像して画像認識処理を実行する。具体的には、画像認識処理装置30aが、撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、所定の切断線を演算可能とするように配置される認識点の座標を検出する。そして、記憶装置30bに、所定の切断線と認識点の座標との関係式及び認識点の座標が記憶される。演算装置30cは、関係式及び認識点の座標により演算した所定の切断線を記憶装置30bに記憶させる。
【0029】
具体的には、ダイシング装置の制御装置30は、撮像手段23により撮像された画像に対して画像認識処理を実行し、ワーク20のカット位置を調整するアライメント動作を実行する。なお、撮像手段23は、可視光を撮像する光学カメラには限定されず、赤外線、紫外線、X線などを撮像する手段も広く含むものとする。
【0030】
アライメント動作は、撮像手段23により撮像され、画像認識処理が実行され、ワーク20上の実際に切断するべき切断線と、ダイシングブレード21によるカット位置との位置合わせにより実行される。しかし、ワーク20に反りや歪みが発生する場合、画像認識処理を実行し、アライメント動作を実行するだけではチップ(半導体装置、電子部品等)を正しく切り出すことが困難である。そこで、本実施の形態では、記憶装置30bに記憶された座標情報を有する認識点に関連付けられた画像の境界領域と、撮影した画像における色調の差異、あるいは明暗の差異によって求められる境界領域とを比較して得られる複数の認識点を検出する。検出された認識点から求まる座標情報から切断軌跡を多項式で近似する。近似した多項式が示す近似曲線に沿ってダイシングブレード21の切断軌跡が移動するようにスピンドル22を移動させ、ワークテーブル31を移動及び回転させる。これにより、ワーク20上の実際に切断するべき切断線に沿って確実に切断することができる。なお、ワークテーブル31を移動及び回転させずに、スピンドル22をワークテーブルに対して移動及び回転させても良い。
【0031】
図2は、従来のダイシング方法におけるダイシングブレード21の移動位置とワーク20上の実際に切断するべき位置との関係を示すグラフである。図3は、従来のダイシング方法を説明するための部分平面図である。図2において、横軸はX軸方向の位置を、縦軸はY軸方向の位置を、それぞれ示している。
【0032】
図3に示すように、従来は、スピンドル22を直線的に移動させて切断する。すなわち、図2に示すように、認識点2A、2Bを検出し、認識点2A−2B間を結ぶ直線2C上をダイシングブレード21が移動するようスピンドル22を移動させる。この場合、ワーク20に発生する反りや歪みによって、ワーク20上の実際に切断するべき位置が曲線(切断線)2Dのようであるにもかかわらず直線的に切断する。そのため、ワーク20上の実際に切断するべき位置とダイシングブレード21によるカット位置との間に差分が生じる。生じる差分の大きさによっては、切り出されるチップ(半導体装置、電子部品等)の一部を切断してしまう、いわゆるカットずれ不良が発生するおそれがある。
【0033】
そこで、まず認識点の数を増やして差分を小さくすることが考えられる。図4は、従来のダイシング方法におけるダイシングブレード21の移動位置とワーク20上の実際に切断するべき位置との関係を示すグラフである。図4において、横軸はX軸方向の位置を、縦軸はY軸方向の位置を、それぞれ示している。
【0034】
図4に示すように、認識点4A〜4Fを検出し、隣接する認識点4A−4B間、4B−4C間、4C−4D間、4D−4E間、4E−4F間を結ぶ線分上をダイシングブレード21が移動するようスピンドル22を移動させる。この場合、ワーク20に生じている反りや歪みによって、ワーク20上の実際に切断するべき位置が曲線上に位置する場合であっても、6つの隣接する認識点間を結ぶ5つの線分40で近似することができる。しかし、図2と同様、従来のダイシング方法では複数の線分の集合で直線的に切断するので、ワーク20上の実際に切断するべき位置とダイシングブレード21によるカット位置との間に生じる差分を完全になくすことはできない。具体的には、直径50mmを超える大きさのダイシングブレード21でワーク(集合基板)20を切断する場合、切断が必要な線分の長さより余分に円弧状の切断箇所が生じる。あるいは複数の線分で切断することにより、所定の切断位置と実際の切断位置とのずれが発生する。斯かる切断位置のずれによって、ウェハ上に形成される半導体装置、電子部品等の一部が切断されるという問題が発生する。解決法として、ダイシングブレード21の直径を小さくする、認識点の数をさらに増やす等の方法がある。しかし、認識点の数の増加とともに演算処理負荷が大きくなり、線分の不連続部分でスピンドル22の移動位置並びにワークテーブル31の移動位置及び回転角度の調整回数が増加し、切断に時間がかかりすぎるという問題、あるいはダイシングブレード21の外周長さの減少によりダイシングブレード21の摩耗速度が速くなり、ダイシングブレード21の交換期間が短くなるという問題等が発生する。
【0035】
そこで、本実施の形態に係るダイシング方法では、認識点4A〜4Fを検出して、検出された認識点の座標に基づいて、所定の切断線を近似する多項式を求め、求めた多項式で近似した近似曲線に沿ってダイシングブレード21が移動するよう、連続的にスピンドル22を移動させ、ワークテーブル31を移動させるとともに回転させる。具体的には、演算装置30cが、ワーク20の配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の認識点の座標に基づいて、所定の切断線を多項式で近似した近似曲線を演算する(多項式近似手段)。そして、制御装置30が、演算された近似曲線に沿ってダイシングブレード21が移動するよう、X軸駆動源、Y軸駆動源、Z軸駆動源及び回転駆動源の動作を同期させる。これにより、ワーク20上の実際に切断するべき切断線に沿ってダイシングブレード21を移動させることができる。
【0036】
図5は、本発明の実施の形態に係るダイシング方法におけるダイシングブレード21の移動位置とワーク20上の実際に切断するべき位置との関係を示すグラフである。図5において、横軸はX軸方向の位置を、縦軸はY軸方向の位置を、それぞれ示している。
【0037】
図5に示すように、認識点4A〜4Fを検出し、検出された認識点4A〜4Fを通過する、あるいは認識点4A〜4FとY軸方向との偏差が最小である多項式を求める。図5の例では、6つの認識点4A〜4FとY軸方向との偏差が最小である4次多項式を求めている。そして、求めた4次多項式で近似した近似曲線50に沿ってダイシングブレード21を移動させる。この場合、ダイシングブレード21の移動軌跡、すなわちカット位置は、ワーク20上の実際に切断するべき位置とほぼ一致する。
【0038】
図6は、本発明の実施の形態に係るダイシング方法を説明するための部分平面図である。ダイシングブレード21は、多項式で近似した近似曲線50の曲率半径方向に絶えず直交するよう移動させることが好ましい。したがって、近似曲線50上の各位置において接線方向にダイシングブレード21の移動方向を合わせる必要がある。
【0039】
図6(a)では、ワークテーブル31がZ軸方向を中心に回転されることにより、ダイシングブレード21の移動方向を近似曲線50の接線方向に合わせている。チップを切り出すためのワークテーブル31のX軸方向への移動に、スピンドル22のY軸方向への移動及びワークテーブル31の回転を同期させ、図6(b)、図6(c)に示すように、ダイシングブレード21の移動方向を近似曲線50の接線方向に合わせながら近似曲線50に沿ってダイシングブレード21を移動させる。これにより、ワーク20上の実際に切断するべき切断線の近傍を確実に切断することが可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態では、6つの認識点4A〜4Fの座標に基づいて、4次多項式で所定の切断線を近似しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば認識点として、ワーク20の配列上の任意のm(mは4以上の自然数)個の認識点を検出し、(m−2)次多項式で近似すれば良い。この場合、検出された認識点、すなわち認識点4A〜4Fに特異点が含まれている場合であっても効果的に近似する多項式を求めることができ、ダイシングブレード21を正確にワーク20上の実際に切断するべき位置に沿って移動させることが可能となる。
【0041】
また、認識点として、ワーク20の配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の認識点を検出し、(n−1)次多項式で近似しても良い。この場合、近似多項式が一義的に定まり、ダイシングブレード21が確実に認識点を通過するよう移動させることが可能となる。
【0042】
以上のように、複数の半導体装置、電子部品等が形成されたワーク(集合基板)20の配列上の任意のn(nは3以上の自然数)個の認識点の座標に基づいて、所定の切断線を多項式で近似した近似曲線50を演算し、演算された近似曲線50に沿ってダイシングブレード21が移動するよう、X軸駆動源、Y軸駆動源、Z軸駆動源及び回転駆動源の動作を同期させるので、ワーク20に反りや歪が発生する場合であっても、近似曲線50に沿ってダイシングブレード21を移動させる限り、チップ(半導体装置、電子部品等)の一部を切断してしまう、いわゆるカットずれ不良が発生するおそれがない。また、歪を考慮して配列ピッチを広めにする必要もなく、切り出すことができるチップの個数が減少することもない。さらに、切り出されたチップ(半導体装置、電子部品等)の製品仕様の寸法保障値の公差を小さくすることができる。
【0043】
その他、上述した実施の形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができることは言うまでもない。例えば上述した実施例では、スピンドル22がY軸方向及びZ軸方向に移動し、ワークテーブル31がX軸方向に移動しているが、特に斯かる構成に限定されるものではなく、ワークテーブル31がZ軸方向に上下動し、スピンドル22がX軸方向及びY軸方向に移動する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0044】
20 ワーク
21 ダイシングブレード
22 スピンドル
23 撮像手段(撮像装置)
31 ワークテーブル(テーブル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6