特許第6191405号(P6191405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6191405-ガス化ガスの昇温方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191405
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】ガス化ガスの昇温方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/54 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   C10J3/54 D
   C10J3/54 M
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-231704(P2013-231704)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-91908(P2015-91908A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宏
(72)【発明者】
【氏名】高藤 誠
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−112872(JP,A)
【文献】 特開2007−16061(JP,A)
【文献】 特開2006−213817(JP,A)
【文献】 特開2009−292905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動粒子を加熱し上部から排ガスとともに流動粒子を排出する流動燃焼炉と、
前記流動燃焼炉によって加熱された流動粒子を排ガスから分離する粒子分離器と、
前記粒子分離器によって分離された流動粒子が導かれるダウンカマーと、
前記ダウンカマーによって導かれた流動粒子の熱によって、ガス化原料を水蒸気の存在下でガス化させてガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、を備えた二塔式ガス化炉におけるガス化ガスの昇温方法であって、
前記粒子分離器と前記ダウンカマーの間を、流動粒子を移動可能に、且つ、ガス化ガスを移動不可にするシール手段によってシールし、前記流動層ガス化炉で生成したガス化ガスをガス化ガス管が前記ダウンカマーに導いて流動粒子と直接接触させて熱交換し、改質炉で改質するために必要な温度に昇温したのちに前記改質炉へ導くことを特徴としたガス化ガスの昇温方法。
【請求項2】
前記粒子分離器によって分離された流動粒子は、前記ダウンカマーに接線方向から投入されることを特徴とした請求項1に記載のガス化ガスの昇温方法。
【請求項3】
流動粒子を加熱し上部から排ガスとともに流動粒子を排出する流動燃焼炉と、
前記流動燃焼炉によって加熱された流動粒子を排ガスから分離する粒子分離器と、
前記粒子分離器によって分離された流動粒子が導かれるダウンカマーと、
前記ダウンカマーによって導かれた流動粒子の熱によって、ガス化原料を水蒸気の存在下でガス化させてガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、を備えた二塔式ガス化炉におけるガス化ガスの昇温装置であって、
前記粒子分離器と前記ダウンカマーの間を、流動粒子を移動可能に、且つ、ガス化ガスを移動不可にシールするシール手段と、
前記流動層ガス化炉で生成されたガス化ガスを改質炉へ導き、流路の一部が前記ダウンカマーであるガス化ガス管と、を備え、
ガス化ガスは、前記ダウンカマーで流動粒子と直接接触して熱交換し、前記改質炉で改質するために必要な温度に昇温されることを特徴としたガス化ガスの昇温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二塔式ガス化炉で生成されたガス化ガスの昇温方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭、バイオマス、ごみ、下水汚泥等の炭化水素資源のガス化原料を利用し、生成したガスを可燃ガスとして供給する流動層ガス化装置の開発が進められている。例えば、流動層ガス化装置は、砂等の加熱した流動粒子によってガス化原料を700℃〜900℃で加熱しつつガス化剤として水蒸気を供給することによって流動層を形成し、この流動層の熱によってガス化原料をガス化してガス化ガスを製造している。
【0003】
この流動層ガス化装置は、酸素や空気を用いて2000℃の高温で部分酸化する方法よりも、コストを低減できる。しかし、生成されたガス化ガスには、高温で部分酸化する方法よりもタールが多く含まれてしまう。したがって、このようなタールを多く含むガス化ガスを装置に用いた際にガス化ガスの温度が低下すると、ガス化ガスに含まれるタールが凝縮し、配管の閉塞、システムで使用する機器の故障、触媒の被毒等の問題が生じてしまう。
【0004】
そこで、流動層ガス化装置で生成されたガス化ガスは、下流にタール改質炉を設けてタールを除去していた。ここで、流動層ガス化装置で生成されたガス化ガスは、下流のタール改質炉に導かれた際に改質に必要な温度よりも低い温度である。このため、流動層ガス化装置で生成されたガス化ガスは、改質前に熱交換器によって加熱して改質に必要な温度まで昇温させたり、酸素又は空気によって生成したガス化ガスの一部を燃焼させて改質に必要な温度まで昇温させたりしていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−182903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱交換器で改質に必要な温度まで昇温させる方法は、構造を複雑にし、コストアップにつながっていた。また、生成ガスの一部を燃焼させて改質に必要な温度まで昇温させる方法は、せっかく生成したガス化ガスを減少させてガス化ガス効率を低下させていた。
【0007】
そこで、本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置は、新たに熱交換器を導入することなく、また、ガス化ガス効率を低下させることなくガス化ガスを改質に必要な温度まで昇温させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二塔式ガス化炉におけるガス化ガスの昇温方法は、流動粒子を加熱し上部から排ガスとともに流動粒子を排出する流動燃焼炉と、前記流動燃焼炉によって加熱された流動粒子を排ガスから分離する粒子分離器と、前記粒子分離器によって分離された流動粒子が導かれるダウンカマーと、前記ダウンカマーによって導かれた流動粒子の熱によって、ガス化原料を水蒸気の存在下でガス化させてガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、を備え、前記粒子分離器と前記ダウンカマーの間を、流動粒子を移動可能に、且つ、ガス化ガスを移動不可にするシール手段によってシールし、前記流動層ガス化炉で生成したガス化ガスをガス化ガス管が前記ダウンカマーに導いて流動粒子と直接接触させて熱交換し、改質炉で改質するために必要な温度に昇温したのちに前記改質炉へ導くことを特徴としている。
【0009】
前記粒子分離器によって分離された流動粒子は、前記ダウンカマーに接線方向から投入されることが好ましい。
【0010】
本発明のガス化ガスの昇温装置は、流動粒子を加熱し上部から排ガスとともに流動粒子を排出する流動燃焼炉と、前記流動燃焼炉によって加熱された流動粒子を排ガスから分離する粒子分離器と、前記粒子分離器によって分離された流動粒子が導かれるダウンカマーと、前記ダウンカマーによって導かれた流動粒子の熱によって、ガス化原料を水蒸気の存在下でガス化させてガス化ガスを生成する流動層ガス化炉と、を備えている。前記粒子分離器と前記ダウンカマーの間を、流動粒子を移動可能に、且つ、ガス化ガスを移動不可にシールするシール手段と、前記流動層ガス化炉で生成されたガス化ガスを改質炉へ導き、流路の一部が前記ダウンカマーであるガス化ガス管と、を備え、ガス化ガスは、前記ダウンカマーで流動粒子と直接接触して熱交換し、前記改質炉で改質するために必要な温度に昇温されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置によれば、新たに熱交換器を導入することなく、また、ガス化ガス効率を低下させることなくガス化ガスを改質に必要な温度まで昇温できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガス化ガスの昇温方法及び装置が適用される二塔式ガス化炉を示す概略構成図である。
図2】流動粒子が接線方向からダウンカマーに投入される様子を示す図であり、図1のII−II矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態の例(以下、実施例と称する)を、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置が適用される二塔式ガス化炉を示す概略構成図である。図2は、流動粒子が接線方向からダウンカマーに投入される様子を示す図であり、図1のII−II矢視図である。本発明のガス化ガスの昇温装置1は、流動燃焼炉2と、サイクロン3(粒子分離器)と、ダウンカマー5と、シール手段6,7と、流動層ガス化炉8と、ガス化ガス管10と、を備え、ガス化ガス23を改質炉11で改質するために必要な温度に昇温する。
【0014】
流動燃焼炉2には、流動層ガス化炉8からオーバーフロー管12を介して流動粒子13とチャー14が投入される。流動燃焼炉2は、下部から空気15が供給されており、チャー14の燃焼によって流動粒子13を加熱し、上部から排ガス16とともに流動粒子13を排出する。ここで、流動粒子13は、例えば、砂、硅砂、石灰、アルミナ等である。この流動粒子13を含んだ排ガス16は、排ガス管17を通ってサイクロン3へ導かれる。
【0015】
サイクロン3は、流動燃焼炉2によって加熱された流動粒子13を排ガス16から分離する。そして、分離された流動粒子13は、U字配管18を介してダウンカマー5へ導かれる。また、流動粒子13が分離された排ガス16は、次の工程へ導かれる。
【0016】
U字配管18は、このU字配管18に溜められる流動粒子13と、U字配管18に水蒸気21を吹き込む水蒸気吹き込みノズル22と、でシール手段6を構成する。そして、U字配管18に溜められた流動粒子13は、水蒸気吹き込みノズル22から水蒸気21が吹き込まれることによって流動し、所定量溜まるとダウンカマー5へ流れ落ちる。このシール手段6は、サイクロン3とダウンカマー5の間を、流動粒子13を移動可能に、且つ、ガス化ガス23を移動不可にシールする。
【0017】
図2に示すとおり、ダウンカマー5は、長手方向に直交する断面が円形状の管路である。ダウンカマー5は、上部における接線方向からU字配管18が接続されて流動粒子13が導かれる。これによって、流動粒子13は、ダウンカマー5の流路内に旋回するように導かれ、一様に広がりながら落下する。そして、ダウンカマー5は、流動粒子13を下方のU字配管20に導く。
【0018】
下方のU字配管20は、前述したU字配管18と同様に、下方のU字配管20に溜められる流動粒子13と、水蒸気21を下方のU字配管20に吹き込む水蒸気吹き込みノズル22と、でシール手段7を構成する。このシール手段7は、ダウンカマー5と流動層ガス化炉8の間を、流動粒子13を移動可能に、且つ、ガス化ガス23を移動不可にシールする。そして、下方のU字配管20に溜められた流動粒子13は、水蒸気21が吹き込まれることによって流動し、所定量溜まると流動層ガス化炉8へ流れ落ちる。
【0019】
流動層ガス化炉8は、下方のU字配管20から流動粒子13が導かれる。また、流動層ガス化炉8は、下部に散気装置24を備えている。この散気装置24には、例えば、ボイラBからの水蒸気21がガス化剤として供給されている。そして、散気装置24は、水蒸気21を流動層ガス化炉8に供給することによって、流動層ガス化炉8の流動粒子13を流動化させて流動層25を形成する。
【0020】
そして、流動層ガス化炉8は、原料供給管26を一方側に有している。この原料供給管26は、流動層ガス化炉8の内部へガス化原料を供給する。流動層ガス化炉8へ供給されたガス化原料は、流動粒子13の熱を受けて水蒸気21の存在下でガス化し、ガス化ガス23を生成する。すなわち、ガス化原料は、流動層25の熱と水蒸気21によって吸熱反応を起こし、ガス化してガス化ガス23を生成する。
【0021】
また、流動層ガス化炉8は、オーバーフロー管12を他方側に有している。このオーバーフロー管12は、流動層25を構成する流動粒子13とチャー14を流動燃焼炉2へ導くようになっている。ここで、チャー14とは、未反応のガス化原料のことをいう。
【0022】
ガス化ガス管10は、流動層ガス化炉8で生成されたガス化ガス23を改質炉11へ導く流路である。ガス化ガス管10は、ガス化ガス23を流動層ガス化炉8からダウンカマー5の下側まで導く流路10aと、ガス化ガス23をダウンカマー5の下側から上側まで導くダウンカマー5の流路10bと、ガス化ガス23をダウンカマー5の上側から分岐してサイクロン4まで導く流路10cと、ガス化ガス23をサイクロン4から改質炉11まで導く流路10dと、で構成されている。すなわち、ガス化ガス管10は、流路の一部がダウンカマー5である。
【0023】
ガス化ガス23は、ガス化ガス管10の流路のうちダウンカマー5の流路10bを下から上へ導かれる際に、ダウンカマー5を上から下へ落ちる流動粒子13と直接接触して熱交換し、改質炉11で改質するために必要な温度まで昇温される。ここで、流動粒子13の熱容量は、ガス化ガス23の熱容量と比較して非常に大きい。このため、ガス化ガス23を昇温するには、例えば、ガス化ガス23よりも5〜10℃程度温度が高ければ足りる。また、必要温度に昇温するための温度調整は、循環する流動粒子13の量を調整することによって行う。
【0024】
ガス化ガス23は、その後、サイクロン4によってガス化ガス23に含まれる流動粒子13が除去されたのちに改質炉11へ導かれる。改質炉11は、ガス化ガス23からタールを除去する炉である。改質炉11は、例えば、内部にハニカム構造の触媒を備え、この触媒が作用する温度以上となるとガス化ガス23からタールを除去する。
【0025】
本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置によれば、流動層ガス化炉8で生成したガス化ガス23をダウンカマー5に導いて流動粒子13と直接接触させて熱交換させることで、新たに熱交換器を導入することなく、且つ、生成したガス化ガス23を減少させてガス化効率を低下させることなくガス化ガス23を改質に必要な温度まで昇温することができる。
【0026】
また、シール手段6がサイクロン3とダウンカマー5の間を、流動粒子13を移動可能に、且つ、ガス化ガス23を移動不可にシールし、シール手段7がダウンカマー5と流動層ガス化炉8の間を、流動粒子13を移動可能に、且つ、ガス化ガス23を移動不可にシールする。これによって、改質に必要な温度まで昇温されたガス化ガス23は、流動層ガス化炉8への逆流やサイクロン3を介して外部へ流出することなく改質炉11へ導かれる。
【0027】
また、本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置によれば、流動層ガス化炉8で生成したガス化ガス23をダウンカマー5に導いて流動粒子13と直接接触させていることによって、一部のタールが流動粒子13によって付着し、ダウンカマー5の流路内でタールを低減することができる。
【0028】
また、サイクロン3によって分離された流動粒子13は、ダウンカマー5に接線方向から投入される。これによって、流動粒子13は、ダウンカマー5の流路内に旋回するように導かれ、一様に広がりながら落下し、ガス化ガス23と効率良く接触して熱交換を行うことができる。
【0029】
なお、本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、U字配管で説明したがこれに限定されず、L字配管でも良い。
【0030】
また、ガス化ガス23を流動粒子13に対して対向流となるようにダウンカマー5に対して導いたがこれに限定されず、並流となるように流しても良い。
【0031】
また、ダウンカマー5には、内部を流される流体に対して乱流を発生させる邪魔板を配置しても良いし、仕切り板を多数設けて迷路状にしても良い。
【0032】
また、シール手段6がサイクロン3とダウンカマー5の間を、流動粒子13を移動可能に、且つ、ガス化ガス23を移動不可にシールし、シール手段7がダウンカマー5と流動層ガス化炉8の間を、流動粒子13を移動可能に、且つ、ガス化ガス23を移動不可にシールする態様で説明したがこれに限定されない。シール手段6のみでも良い。
【0033】
本発明のガス化ガスの昇温方法及び装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ガス化ガスの昇温装置
2 流動燃焼炉
3 サイクロン(粒子分離器)
5 ダウンカマー
6 シール手段
7 シール手段
8 流動層ガス化炉
10 ガス化ガス管
11 改質炉
13 流動粒子
16 排ガス
17 排ガス管
21 水蒸気
23 ガス化ガス
25 流動層
図1
図2