(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内層に用いる弾性体が、シリコンゲル又はウレタンゲルであり、前記外層に用いる弾性体が、シリコンゴム又はウレタンゴムであることを特徴とする請求項1又は2記載の被覆材。
前記内層の弾性体の硬度は、ショアA硬度0〜40度であり、前記外層の弾性体の高度は、ショアA硬度40〜90度であることを特徴とする請求項4記載のロボット把持部の被覆構造。
前記内層に用いる弾性体が、シリコンゲル又はウレタンゲルであり、前記外層に用いる弾性体が、シリコンゴム又はウレタンゴムであることを特徴とする請求項4又は5記載のロボット把持部の被覆構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、パートナーロボットや介護ロボット等のように特定の作業が決まっていないロボットハンドや、特定作業に限定されない産業用、宇宙空間用のロボットハンド等では、把持する物体が特定されていないため、把持部表面の粘着性や摩擦係数を最適化してロボット把持部の把持性能を向上させるための対策が講じにくい。
【0009】
たとえば、把持対象の物体が重量物である場合は、ロボット把持部で物体の重量を適切に支えることができるようにするため、その重量に応じてロボット把持部の表面に比較的大きな粘着性や摩擦係数を持たせてやればよい。しかし、この大きな粘着性や摩擦係数を持ったロボット把持部で軽量物を把持すると、離した際にその軽量物がロボット把持部の表面に張り付いてしまい、作業性が著しく悪くなるおそれがある。
【0010】
また、逆に、軽量物の把持に合わせてロボット把持部の表面に比較的小さな粘着性や摩擦係数を持たせた場合、重量物を把持すると、重量物を滑らせてしまうおそれがある。
【0011】
すなわち、把持対象となる物体に応じて把持するための要求が様々に異なるため、表面材質の選択だけでは対応することができない問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、様々な把持対象の物体に応じて、該物体を把持するために適切な把持性能を発揮させることができる被覆材を提供することを課題とする。
【0013】
また、本発明は、様々な把持対象の物体に応じて、該物体を把持するために適切な把持性能を発揮させることができるロボット把持部の被覆構造を提供することを課題とする。
【0014】
また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0016】
1.物体を把持する機能を有する基材の表面に設けられる被覆材であって、
弾性体からなる内層と、該内層の表面に、前記物体の把持時に該物体に接触する弾性体からなる外層とを備え、
前記内層は、前記外層よりも粘着性が高く、且つ、前記外層よりも低硬度の弾性体によって構成され、
前記外層は、前記内層まで達するように貫通する1個以上の貫通部を有し、前記物体を把持した際の応力が作用した際に、該応力の大きさに応じて、前記内層の一部が前記貫通部内に侵入もしくは該貫通部からはみ出すように構成されていることを特徴とする被覆材。
【0017】
2.前記内層の弾性体の硬度は、ショアA硬度0〜40度であり、前記外層の弾性体の高度は、ショアA硬度40〜90度であることを特徴とする前記1記載の被覆材。
【0018】
3.前記内層に用いる弾性体が、シリコンゲル又はウレタンゲルであり、前記外層に用いる弾性体が、シリコンゴム又はウレタンゴムであることを特徴とする前記1又は2記載の被覆材。
【0019】
4.物体を把持する機能を有するロボット把持部の表面に、弾性体からなる内層と、該内層の表面に、前記物体の把持時に該物体に接触する弾性体からなる外層とを備え、
前記内層は、前記外層よりも粘着性が高く、且つ、前記外層よりも低硬度の弾性体によって構成され、
前記外層は、前記内層まで達するように貫通する1個以上の貫通部を有し、前記物体を把持した際の応力が作用した際に、該応力の大きさに応じて、前記内層の一部が前記貫通部内に侵入もしくは該貫通部からはみ出すように構成されていることを特徴とするロボット把持部の被覆構造。
【0020】
5.前記内層の弾性体の硬度は、ショアA硬度0〜40度であり、前記外層の弾性体の高度は、ショアA硬度40〜90度であることを特徴とする前記4記載のロボット把持部の被覆構造。
【0021】
6.前記内層に用いる弾性体が、シリコンゲル又はウレタンゲルであり、前記外層に用いる弾性体が、シリコンゴム又はウレタンゴムであることを特徴とする前記4又は5記載のロボット把持部の被覆構造。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、様々な把持対象の物体に応じて、該物体を把持するために適切な把持性能を発揮させることができる被覆材を提供することができる。
【0023】
また、本発明によれば、様々な把持対象の物体に応じて、該物体を把持するために適切な把持性能を発揮させることができるロボット把持部の被覆構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
本発明の被覆材は、本発明の課題を共通とする各種の被覆材に適用可能であるが、中でもエアチャック型や多指型のロボットハンドにおいて物体を把持するロボット把持部に好ましく適用することができる。
【0027】
図1は、ロボットハンドにおいて本発明の被覆材を適用したロボット把持部の被覆構造の一例を示す正面図、
図2は、
図1中の(ii)−(ii)線に沿う断面図である。
【0028】
図中、1はロボットハンドにおいて物体を把持する1つのロボット把持部であり、ロボット把持部1は、芯材として機能する基材11と、該基材11の表面に被覆された被覆材12とを備えている。
【0029】
ロボット把持部1は、図示しないロボット駆動機構により所望の把持機能を発揮する。
【0030】
被覆材12は基材11の表面に一体成形されるか、または、基材11とは別に形成したものを該基材11に被せ、接着剤を介して接着される。ここでは、基材11とは別に形成した被覆材12を該基材11に被せることによってロボット把持部1を構成した後者の態様を示している。
【0031】
被覆材12は、基材11の表面に設けられた内層121と、該内層121の表面に接して設けられた外層122とを有し、内層121の略中央部には、基材11が挿入されることにより該基材11に装着するための深溝状の装着部123が形成されている。外層122は、このロボット把持部1が物体を把持する際に、該物体に直接接触する層である。
【0032】
内層121と外層122は共に弾性体によって構成されるが、本発明において内層121を構成する弾性体は、外層122を構成する弾性体よりも粘着性が高く、且つ、外層122を構成する弾性体よりも低硬度の弾性体によって構成される。すなわち、外層122を構成する弾性体の方が、内層121を構成する弾性体よりも一般に架橋密度が大きく、粘着性が低くて硬度が高いものとなっている。
【0033】
外層122には、物体を把持する際に該物体と当接する部位である把持部位1aに、丸孔形状の貫通部13が形成されている。貫通部13は、外層122の表面から内層121まで達するように該外層122を貫通している。従って、ロボット把持部1の把持部位1aを外部から観察した際、貫通部13内に内層121が確認できる。しかし、物体を把持していない平常時、この貫通部13内の内層121は、該内層121と外層122との境界部分に位置し、貫通部13内に侵入していない。
【0034】
ここに示す貫通部13は、縦横に複数個配列されるように形成しているが、貫通部13の数は特に問わず、外層122に1個以上形成されていればよい。また、貫通部13の配列構成も特に問わない。
【0035】
次に、このように構成された被覆材12を備えたロボット把持部1によって把持対象の物体を把持する際の作用について、
図3〜
図8を用いて説明する。
【0036】
まず、
図3に示すように、把持対象の物体が比較的軽量な物体X1である場合、この物体X1を所定の把持力で把持した際に該物体X1が被覆材12の把持部位1aの表面(外層122)に接触することによって、把持部位1aの表面に把持応力F1が作用すると、被覆材12の内層121及び外層122は、その把持応力F1の大きさに応じて共に弾性変形する。このときの把持応力F1は軽量物を把持し得る程度の比較的小さい力であり、内層121と外層122とに対して、物体X1と基材11との間で挟むように応力を作用させる。
【0037】
ここで、外層122は内層121よりも硬度が高いのに対し、内層121は外層122よりも硬度が低いため、作用する把持応力F1の大きさに応じて内層121が押し潰されるように弾性変形し、内層121の一部121aが貫通部13内に侵入するように移動する。
【0038】
しかし、このとき作用する把持応力F1は比較的小さいものであるため、内層121と外層122に作用する応力は小さく、内層121の一部121aが応力によって貫通部13内に移動する量も僅かとなる。従って、内層121の一部121aが貫通部13の内部に侵入したとしても、
図4、
図5に示すように、貫通部13内の途中にとどまる程度であり、外層122の表面まではみ出す程ではない。
【0039】
このため、軽量物である物体X1の把持時は、内層121よりも粘着性が低い外層122の表面のみが物体X1と接触するだけであり、被覆材12の表面が物体X1と強く粘着することなく、適切な把持状態で物体X1を把持することができる。なお、
図4、
図5では物体X1は図示省略した。
【0040】
一方、
図6に示すように、把持対象の物体が比較的重量のある物体X2である場合、この物体X2を所定の把持力で把持した際に該物体X2が被覆材12の把持部位1aの表面(外層122)に接触することによって、把持部位1aの表面に把持応力F2が作用すると、被覆材12の内層121及び外層122は、その把持応力F2の大きさに応じて共に弾性変形する。このときの把持応力F2は重量物を把持し得るに十分な比較的大きい力であり、内層121と外層122とに対して、物体X2と基材11との間で挟むように応力を作用させる。
【0041】
このとき、内層121と外層122には、上記物体X1を把持する時よりも大きな応力が作用し、その応力の大きさに応じて内層121が押し潰されるように弾性変形する。これにより、内層121の一部121aが貫通部13内に、物体X1を把持するときよりも多く侵入するように移動する。
【0042】
このときの把持応力F2は上記物体X1を把持する際の把持応力F1よりも大きいため、貫通部13内に侵入するように移動した内層121の一部121aは、その把持応力F2の大きさに応じて、
図7、
図8に示すように、貫通部13から外層122の表面にまで達し、更には貫通部13から大きくはみ出そうとする。そして、この貫通部13の表面にまで達した、もしくは貫通部13からはみ出した内層121の一部121aが物体X2と接触する。
【0043】
このため、重量物である物体X2の把持時は、外層122の表面のみならず、外層122に設けられた貫通部13を通して、該外層122よりも粘着性が高い内層121の一部121aを物体X2に対して直接接触させることができる。従って、把持した物体X2を滑らせてしまうことなく、適切な把持状態で物体X2を把持することができる。なお、
図7、
図8では物体X2は図示省略した。
【0044】
このように、本発明に係る被覆材12及びこの被覆材12を備えたロボット把持部1の被覆構造によれば、様々な把持対象の物体に応じて、該物体を把持するために適切な把持性能を発揮させることができる。
【0045】
なお、
図7では、説明の便宜上、内層121の一部121aが貫通部13から大きく突出するように図示したが、実際の物体X2の把持時、内層121の一部121aは物体X2と接触することによってそれ以上に突出することが阻止され、物体X2の重量(把持応力F2の大きさ)に応じて該物体X2に対して強い粘着力を作用させたり、あるいは、物体X2と外層121の表面との間で広がるように変形し、被覆材12の表面の粘着性、摩擦係数、内層121の一部121aとの接触面積が変化したりするものであることは容易に理解できるであろう。
【0046】
本発明において、被覆材12の内層121を構成する弾性体は、粘着力が必要となる重量物を把持した際に外層122の貫通部13内に侵入することができる程度の軟質性を有するものである必要がある。内層121を構成する弾性体の具体的な硬度は、想定される把持対象の物体の重量や物体の把持時に及ぼす把持応力の大きさ等の条件によって決められるが、本発明の課題を効果的に解決し得る点で、ショアA硬度0〜40度であることが好ましく、ショアA硬度0〜20度がより好ましい。
【0047】
また、被覆材12の外層122に用いられる弾性体は、軽量物である物体を適切に把持できると共に、物体を把持した際の応力を内層121に効率良く伝達できるようにするため、内層121よりも硬度が高い条件で、ショアA硬度40〜90度であることが好ましい。
【0048】
各層の硬度は、樹脂材料の変更や主剤と硬化剤の混合比を変更することによって調整することができる。
【0049】
このような内層121及び外層122を構成する弾性体の材料としては、一般に軟質のゴム又は樹脂材料、たとえばゴム、シリコン、ウレタン、ゲルが用いられるが、想定される把持対象の物体の重量、形状、性質等に応じて適宜選定することができる。一例を挙げれば、内層121を構成する弾性体には、シリコンゲル又はウレタンゲルを用いることができる。また、外層122を構成する弾性体には、シリコンゴム又はウレタンゴムを用いることができる。
【0050】
内層121と外層122は、粘着性及び硬度が異なるものであれば、同じ系統の材質であってもよいし、それぞれ異なる系統の材質であってもよい。しかし、層間に高い接着性を付与できるため、内層121と外層122とは同じ系統の材質であることが好ましい。
【0051】
被覆材12の各層の厚さについて、外層122の厚みは、内層121の厚みより十分に小さく設定することが、物体に内層121の弾性を影響させ易く、また、外層122の貫通部13に内層121の一部121aを侵入、もしくは貫通部13から内層121の一部121aをはみ出させ易くすることができるために好ましい。
【0052】
外層122の厚みは、内層121の厚みの1/4倍以下に設定することがより好ましい。相対的に低硬度で柔軟性の高い内層121の弾性体の方が外層122の弾性体よりも厚くなるため、物体に内層121の弾性をさらに影響させ易くすることができるからである。
【0053】
被覆材12全体の厚みは、一般に2〜20mm、好ましくは4〜10mmとされる。各層121、122のそれぞれの厚みはこの範囲内で適宜設定されるが、外層122の厚みは0.2〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.0mmの範囲で設定する。内層121の厚みは0.5〜50.0mm、好ましくは2.0〜20.0mmの範囲で設定する。
【0054】
外層122に設けられる貫通部13の大きさは、把持対象の物体の重量、形状、性質等に応じて適宜選定することができ、特に問わない。一例を挙げれば、1mm〜5mmとすることができる。
【0055】
なお、以上説明した貫通部13は丸孔形状としたが、貫通部13の開口形状は特に問わず、
図9に示すように、四角形状とすることもできる。また、図示しないが、三角形状やその他の多角形状とすることもできる。
【0056】
また、貫通部13は、
図10に示すように、スリット状に形成することもできる。スリット状に形成する場合、
図11に示すように、波形状に形成することもできる。スリットの数及び配列態様も特に問わない。
【0057】
更に、貫通部13は、
図12に示すように同心状に形成することもできる。同心状の貫通部13は円形状のみならず、楕円形状、三角形状、四角形状、その他の多角形状に形成してもよい。
【0058】
本発明において、被覆材12の内層121、もしくは内層121と外層122の両方に、抗菌剤を配合してもよい。
【0059】
抗菌剤は、滅菌、殺菌、消毒、除菌、制菌、静菌、防腐、防カビ、防菌などの何れか1種または2種以上の組み合わせによって、微生物の発生・増殖の抑制から死滅に至るまでの広い範囲の微生物制御機能を発揮するものをいう。
【0060】
抗菌性を付与する抗菌剤は、無機系、有機系、天然系のいずれのものであってもよい。
【0061】
たとえば、無機系の抗菌剤としては、人体や動物には有害でなく、微生物に対して殺菌機能や増殖抑制機能を持つ金属として、銀、銅、亜鉛などが用いられる。
【0062】
無機系抗菌剤の中でも、抗菌性金属としては、安全性や機能性の観点から、銀系が好ましく用いられ、それらの銀系抗菌剤は、単体として用いることもできるが、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)、シリカゲル、粘土鉱物などのケイ酸塩系担体、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩系担体、溶解性ガラス、活性炭などの担持体に担持されて用いることもできる。これらの担持体は、粒状であっても紛体であってもよい。
【0063】
抗菌性金属を担持体に担持させる方法としては、たとえばゼオライトを抗菌性金属イオンの水溶液に、所定のpH条件で、所定温度、所定時間浸漬してゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部または全部を抗菌性金属イオンで置換させ、イオン交換終了後、水洗し、加熱乾燥して得る方法などがある。
【0064】
金属系の抗菌剤を内層121や外層122に配合させる手法は特に限定されないが、たとえば練り込み手法を好ましく例示できる。
【0065】
銀系抗菌剤の抗菌活性に関しては、表面酸化や溶液中に溶け出した金属イオンに起因すると考えられ、その抗菌メカニズムについては、(1)銀イオン(Ag
+)が細菌内に取り込まれ、細胞内の酵素の阻害を引き起こすか、(2)イオンの触媒作用によって、空中の酸素あるいは水に溶けた酸素を活性酸素に変え、できた活性酸素が抗菌性を発揮するものと考えている。
【0066】
有機系の抗菌剤としては、ベンゾイミダゾール系の有機系抗菌剤などが挙げられる。また天然系の抗菌剤としては、ワサビやショウガ、竹の葉やヒノキの葉のような植物、ヒノキチオールやヒバ油のような植物抽出物が用いられる。
【0067】
抗菌剤の配合量は、被覆材の使用目的により、適宜変更することができるが、内層121に配合して外層122へ拡散移動させる場合には、内層121に層形成上可能な範囲でできる限り多く配合させることが好ましい。
【0068】
また内層121から外層122への拡散移動を遅らせるために、内層121以外に、あらかじめ外層122に抗菌剤を配合することもできる。
【0069】
ゴムやゲルなどの材料は、軟質な弾性体ほど架橋密度が小さいので、被覆材12は、抗菌剤成分の移動の自由度は高いが(濃度の減少速度が速くなる)、内層121から外層122に向かって抗菌剤成分が拡散しても、抗菌剤成分が拡散しにくい外層122が把持側に構成されることで、内層121に配合されている抗菌剤成分の把持側(把持物体)への拡散を低減することができる。これらの架橋密度の異なる2層構成の層形成により、清潔性を長期間保持できる。
【0070】
また、被覆材12には、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。
【0071】
上記添加剤としては、たとえば、光重合開始剤、シランカップリング剤、離型剤、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、老化防止剤、変成剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、安定剤、可塑剤、消泡剤等が挙げられる。
【0072】
被覆材12を製造する方法は、ゲルシートを製造する適宜公知の方法を採用することができ、たとえば注型成形、射出成形、圧縮成形、遠心成形等を採用することができる。成形温度は一般に室温〜100℃とされる。
【0073】
内層121と外層122は、それぞれ別工程で製造した後に両者を積層してもよいし、たとえば内層121の一方の面に外層122となる材料を塗布等することによって積層してもよい。一体成形を行う場合の成形順序は内層121、外層122どちらを先にしてもよいし、両者を同時に成形してもよい。層間の接着は、材料同士の密着性によってなされる。
【0074】
なお、以上説明した被覆材12は、内層121と外層122のみからなる2層構造のものを例示したが、本発明における被覆材12は、内層121よりも内側、すなわち内層121と基材11との間に、他の1以上の層を設けることを何ら妨げるものではない。
【0075】
また、本発明におけるロボット把持部1は、図示したように、指型形状に形成するものに限らず、その外形形状は目的に応じて任意に設定できる。
【実施例】
【0076】
以下に、本発明の実施例について説明するが、かかる実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
ロボット把持部の外形形状を、
図1、
図2に示したように指型形状とし、その外形寸法を幅20mm×高さ30mm×厚み15mmとした。そして、この外形寸法から0.5mmを減算した寸法の被覆材の内層の注型型を作製した。この注型型には、底面中心に、ロボット把持部の芯材である基材を挿入する装着部を形成するため、内径φ7mm、長さ20mmの空洞を配置した。
【0078】
被覆材の外層の注型型は、ロボット把持部の外形寸法と同じ寸法で作製した。この外層の注型型内部の把持部位に相当する面に、直径2mm、高さ0.5mmの円形の凸部を、上下左右の間隔を1.8mmとして、
図1と同様の配列形態で計13個形成した。この凸部は、内層の材料をセットした際に、ちょうど内層の材料と接触して、外層の材料が流動せず、空間すなわち外層を貫通する貫通部となる部分である。
【0079】
そして、内層の注型型に、ショアA硬度0度のウレタンゲル材料を注入、固化させ、被覆材の内層を成形した。
【0080】
次いで、この内層を注型型から取り出して外層の注型型へセットし、この外層の注型型に、ショアA硬度50度のウレタンゲル材料を注入、固化させ、内層の外側に外層を積層させた。
【0081】
成形後、これを取り出し、基材の表面に内層と外層の2層構造からなる被覆材を得た。得られた被覆材は、外層の把持部位となる部位に13個の貫通部を有していた。
【0082】
この被覆材に芯材となる基材を挿入し、接着剤によって接着してロボット把持部を構成した。同様のロボット把持部を2本作製した。
【0083】
この2本のロボット把持部をロボットハンドに装着して、軽量物として0.7gのM3のボルトを所定の把持力で摘まんだところ、問題なく摘まみ上げることができた。このとき、貫通部から内層の一部がはみ出すことはなかったため、内層の粘着性がボルトに作用することがなく、ボルトを離す際に該ボルトが把持部位に張り付いてしまうこともなく、容易に離すことができた。
【0084】
一方、重量物として5kgのオイル缶をその重量に応じた所定の把持力で摘まんで持ち上げたところ、把持部位の外層の変形が確認され、滑ることなく持ち上げることができた。
【0085】
また、オイル缶を離す際も容易に離すことができたが、オイル缶に粘着していた把持部位が引き剥がされながら離れる様子が確認された。すなわち、オイル缶を摘まんで持ち上げる際に把持部位が変形した際、外層よりも粘着性が高い内層の一部が貫通部を通してはみ出し、オイル缶と直接接触して該オイル缶に粘着していたことを示していた。
【0086】
このように、同一のロボット把持部によって、軽量物であるボルトと重量物であるオイル缶の双方を、被覆材の変更や治具の追加等を伴うことなく、適切に持ち上げることができた。
【0087】
(比較例1)
被覆材の外層の注型型を形成する際、凸部を全く設けなかった以外は実施例1と同様にして、被覆材に貫通部を全く有さないロボット把持部を2本作製し、これをロボットハンドに装着して、実施例1と同じ所定の把持力で、実施例1と同じボルトとオイル缶をそれぞれ摘まんで持ち上げた。
【0088】
その結果、ボルトは問題なく摘まみ上げることができ、また、ボルトを離す際にも該ボルトが把持部位に張り付いてしまうこともなく、容易に離すことができた。
【0089】
しかし、オイル缶を持ち上げた際、一対のロボット把持部の間でオイル缶に滑りが発生し、オイル缶の把持状態が不安定となり、持ち上げ動作中に脱落してしまった。
【0090】
(比較例2)
実施例1と同一のロボット把持部の外形形状と同じ寸法で被覆材の注型型を作製した。この注型型には、底面中心に、ロボット把持部の芯材である基材を挿入するための装着部を形成するため、内径φ7mm、長さ20mmの空洞を配置した。
【0091】
そして、この注型型に、ショアA硬度10度のウレタンゲル材料を注入、固化させ、1層のみからなる被覆材を成形した。
【0092】
成形後、これを取り出し、この被覆材に芯材となる基材を挿入してロボット把持部を構成し、同様にしてロボット把持部を2本作製した。
【0093】
このロボット把持部をロボットハンドに装着して、実施例1と同じ所定の把持力で、実施例1と同じボルトとオイル缶をそれぞれ摘まんで持ち上げた。
【0094】
その結果、ボルト及びオイル缶のいずれも問題なく摘まみ上げることができた。しかし、ボルトを離す際、把持部位の表面にボルトが粘着してしまい、ロボット把持部から容易に剥離せず、人手によって剥離せざるを得なかった。