特許第6191445号(P6191445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191445
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】充電用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20170828BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-266321(P2013-266321)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-122239(P2015-122239A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 将司
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−009387(JP,A)
【文献】 特開2004−047168(JP,A)
【文献】 特開2013−074702(JP,A)
【文献】 特表2012−531721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側コネクタと嵌合されて車両に搭載されたバッテリを充電するために用いられる充電用コネクタであって、
前記車両側コネクタと嵌合されるコネクタ部が先端に設けられたガン形状をなすケーシングが具備され、
前記ケーシング内の上部空間には前後方向に長いロックアームがシーソー状の揺動可能に支持され、
前記ロックアームの先端下面には、前記車両側コネクタの上面に設けられた被係止部に係止可能なラッチ部が設けられて、同ロックアームは常には係止方向に揺動付勢されているとともに、
前記ロックアームの後端には、同ロックアームを係止解除方向に揺動操作するための解除操作部が設けられて、同解除操作部が、前記ケーシングの上面に開口された操作用孔に臨んで配されており、
前記コネクタ部が前記車両側コネクタに嵌合する過程では、前記ロックアームを付勢力に抗して係止解除方向に揺動させつつ前記ラッチ部が前記被係止部を乗り越え、
正規嵌合されたところで前記ロックアームが付勢力により係止方向に揺動しつつ前記ラッチ部が前記被係止部の背面に落ち込んで係止されるようにしたものにおいて、
前記ラッチ部の下面における前側角部がガイド用にR面として形成されており、
前記ラッチ部の下面は、前記R面の後方に、前記ラッチ部が前記被係止部の背面に落ち込んで係止された状態で前記被係止部の背後の面に当接または隙間を有して対向する部分を有しており、
前記ラッチ部の下面において、前記当接または隙間を有して対向する部分には、凹部が穿設されていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項2】
前記ロックアームが合成樹脂製である一方、前記被係止部における少なくとも前記ラッチ部の下面が摺接する上面が金属材から形成されていることを特徴とする請求項1記載の充電用コネクタ。
【請求項3】
記凹部が前記R面の後部側にも亘るように形成されていることを特徴とする請求項2記載の充電用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側コネクタと嵌合されて車両に搭載されたバッテリを充電するために用いられる充電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電用コネクタの一例として、下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、車両側コネクタと嵌合されるフロントハウジングが先端に設けられたガン形状をなすハウジングが具備され、同ハウジング内の上部空間には前後方向に長いレバーがシーソー状の揺動可能に支持されている。レバーは詳細には、その先端下面に、車両側コネクタの上面に設けられた被係止部に係止可能なロック爪が設けられて、同レバーは常には係止方向に揺動付勢されているとともに、後端には、同レバーを係止解除方向に揺動操作するための解除ボタンが設けられて、同解除ボタンが、ハウジングの上面に開口された解除窓に臨んで配された構造となっている。
【0003】
充電に際しては、充電用コネクタのフロントハウジングが相手の車両側コネクタに嵌合され、詳細には、フロントハウジングが車両側コネクタに嵌合する過程では、レバーを付勢力に抗して係止解除方向に揺動させつつロック爪が被係止部を乗り越え、正規嵌合されたところで、レバーが付勢力により係止方向に揺動しつつロック爪が被係止部の背面に落ち込んで係止され、コネクタ同士が嵌合状態に保持されて、充電作業が実施される。充電作業が終了したら、解除ボタンを押圧してレバーを付勢力に抗して係止解除方向に揺動させることにより係止を解除し、充電用コネクタを車両側コネクタから引き離すといった使い方がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−195214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで充電作業中において、作業現場等の条件によっては、充電用コネクタに雨水等が降り懸かる場合があるが、上記構造の充電用コネクタでは、例えば、レバーのロック爪の下面と、相手の車両側コネクタにおける被係止部の背後の上面との隙間に水分が浸入し、特に作業現場が冬場等で低温雰囲気にあると、同水分が氷結するおそれがある。これはすなわち、ロック爪の下面が車両側コネクタの上面に強固に凍り付いた現象を呈するため、充電終了時に解除ボタンを押圧してレバーを係止解除方向に揺動操作しようとした場合に、同操作に支障を来すことがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、氷結に起因してロック解除に支障を来すことを回避するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両側コネクタと嵌合されて車両に搭載されたバッテリを充電するために用いられる充電用コネクタであって、前記車両側コネクタと嵌合されるコネクタ部が先端に設けられたガン形状をなすケーシングが具備され、前記ケーシング内の上部空間には前後方向に長いロックアームがシーソー状の揺動可能に支持され、前記ロックアームの先端下面には、前記車両側コネクタの上面に設けられた被係止部に係止可能なラッチ部が設けられて、同ロックアームは常には係止方向に揺動付勢されているとともに、前記ロックアームの後端には、同ロックアームを係止解除方向に揺動操作するための解除操作部が設けられて、同解除操作部が、前記ケーシングの上面に開口された操作用孔に臨んで配されており、前記コネクタ部が前記車両側コネクタに嵌合する過程では、前記ロックアームを付勢力に抗して係止解除方向に揺動させつつ前記ラッチ部が前記被係止部を乗り越え、正規嵌合されたところで前記ロックアームが付勢力により係止方向に揺動しつつ前記ラッチ部が前記被係止部の背面に落ち込んで係止されるようにしたものにおいて、前記ラッチ部の下面における前側角部がガイド用にR面として形成されており、前記ラッチ部の下面は、前記R面の後方に、前記ラッチ部が前記被係止部の背面に落ち込んで係止された状態で前記被係止部の背後の面に当接または隙間を有して対向する部分を有しており、前記ラッチ部の下面において、前記当接または隙間を有して対向する部分には、凹部が穿設されているところに特徴を有する。
【0007】
凹部が穿設されていることでラッチ部の下面の表面積が減少し、そのためラッチ部の下面と車両側コネクタの上面との間で氷結が生じたとしても、相互の接着面積が縮小される。その結果、ロックアームに係止解除方向の揺動操作力を作用させた場合に、ラッチ部を比較的容易に剥離することができ、ひいては充電用コネクタの引き抜き作業をスームズに行うことができる。
【0008】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記ロックアームが合成樹脂製である一方、前記被係止部における少なくとも前記ラッチ部の下面が摺接する上面が金属材から形成されている。
被係止部の上面が増強等のために金属材で形成されている一方、ロックアームが軽量化等を目的として合成樹脂製であると、特に充電用コネクタを嵌合するに際して、ラッチ部が被係止部の上面に摺接して乗り越える場合に、ラッチ部の下面が削られて樹脂かすが出る可能性がある。
それに対して本発明では、ラッチ部の下面の表面積が減少していることから、仮に樹脂かすが出たとしてもその量が抑えられ、樹脂かすがコネクタ部や相手の車両側コネクタに侵入して不具合を起こすのを未然に防止できる。
【0009】
(2)前記凹部が前記R面の後部側にも亘るように形成されている。
被係止部の構造等の条件によっては、R面が最も削れやすい場合があるが、同R面の表面積が減らされることで、樹脂かすの発生量をより有効に抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、氷結に起因してロックアームの係止解除に支障を来すことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る充電用コネクタを車両側コネクタに嵌合する前の状態を示す側面図
図2】その一部切欠側面図
図3】ロックアームの側面図
図4】同拡大正面図
図5】同底面図
図6図5のVI−VI線断面図
図7図5のVII−VII線拡大断面図
図8】充電用コネクタの車両側コネクタに対する初期嵌合状態を示す一部切欠部分側面図
図9】その嵌合途中の状態を示す一部切欠部分側面図
図10】その嵌合完了状態を示す一部切欠側面図
図11図10のXI部の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11に基づいて説明する。
本実施形態の充電用コネクタ10は、図1に示すように、外部電源と接続される充電ケーブルWの端末に設けられ、車両に設けられた車両側コネクタ40と嵌合されて同車両に搭載されたバッテリを充電するために用いられる。
以下では、各コネクタ10,40において嵌合面側を前方として説明する。
【0013】
先に車両側コネクタ40を説明すると、図1及び図2に示すように、前面開口の円筒形のフード部42を有する合成樹脂製の雄ハウジング41を備え、車両のボディに開口された給電口に臨むようにして取り付けられている。雄ハウジング41には、バッテリと接続された接続電線の端末に設けられた複数本の車両側端子(図示せず)が、フード部42内に突出した形態で収容されている。
【0014】
雄ハウジング41のフード部42の上面における前端寄りの位置には、後記する充電用コネクタ10に設けられたロックアーム20に係止して、両コネクタ10,40を嵌合状態に保持するための被係止部45が立ち上がり形成されている。
被係止部45は、図2に示すように、所定幅を有して側面山形に形成されており、前面側がテーパ状のガイド面46とされている一方、後面が切り立った係止面47となっている。同被係止部45の上面48から係止面47に亘り、増強用に金属板50がインサート形成により張設されている。
被係止部45の左右両側には、ロックアーム20の先端側を案内する一対のガイド壁52が立てられている。
【0015】
充電用コネクタ10は、図1及び図2に示すように、筒形のガン形状をなす合成樹脂製のケーシング11を有しており、ケーシング11の先端部には、車両側コネクタ40と嵌合されるコネクタ部15が設けられるとともに、同ケーシング11の後端部から、コネクタ部15と接続された充電ケーブルWが引き出された構造である。
【0016】
詳細には、ケーシング11は、半筒形をなす一対の半割ケース12A,12B(ベース側半割ケース12Aとカバー側半割ケース12B)を備えて構成され、両半割ケース12A,12Bは、上下の端縁同士を合わせて、複数箇所(図示4箇所)をねじ13で止めることにより、上記のように筒形のガン形状に一体に組み立てられるようになっている。
【0017】
コネクタ部15は、先端側が上記した車両側コネクタ40の雄ハウジング41におけるフード部42内に嵌合可能な雌ハウジング16を備えており、同雌ハウジング16内に、充電ケーブルWの端末に接続された複数のケーブル側端子17が収容された構造である。各ケーブル側端子17は、両コネクタ10,40が正規嵌合されることに伴い、相手の車両側端子と嵌合接続されるようになっている。
コネクタ部15は、両半割ケース12,12Bで挟持された形態によりケーシング11の先端部に設けられ、同コネクタ部15に接続された充電ケーブルWは、ケーシング11内を通ったのち、ケーシング11の後端部に嵌着されたゴムブッシュ18を貫通して、水密状態を維持して引き出されている。
【0018】
ケーシング11内の先端側の上部位置には、充電用コネクタ10のコネクタ部15と、相手の車両側コネクタ40とを正規嵌合状態にロックするためのロックアーム20が収容されている。
このロックアーム20は、図3ないし図7に示すように、前後方向に細長い形状であって、その先端部の下面には、車両側コネクタ40に設けられた被係止部45に係止される鉤状をなすラッチ部21が形成されているとともに、後端部の上面には、後記するように、同ロックアーム20を係止解除方向に揺動操作するための解除操作部25が、隆起した形態で形成されている。ラッチ部21の下面の前側角部には、ガイド用にR面22が形成されている。
ケーシング11の上面における長さ方向かつ幅方向の略中央部には、上記したロックアーム20の解除操作部25が進退可能に嵌る操作用孔19が開口されている。
【0019】
ロックアーム20は、図2に示すように、先端側のラッチ部21が、コネクタ部15の上方においてケーシング11の先端から突出し、後端側の解除操作部25が、ケーシング11の上面に開口された操作用孔19に臨んだ形態において、軸26を中心としてシーソー状の揺動可能に支持されている。ロックアーム20は、解除操作部25の下面側に配された圧縮コイルばね27の弾発力により、軸26を中心として同図の反時計回り方向(係止方向)の揺動力が付勢されている。
【0020】
詳しくは後記するが、充電用コネクタ10のコネクタ部15が車両側コネクタ40に嵌合されると、嵌合過程では、ロックアーム20が付勢力に抗して係止解除方向(図2の時計回り方向)に揺動しつつラッチ部21が被係止部45を乗り越え、正規嵌合されたところでロックアーム20が付勢力により係止方向に揺動しつつラッチ部21が被係止部45の背面に落ち込んで係止されるようになっている。このとき、ラッチ部21の下面21Aは、フード部42の上面における被係止部45の背後の面55に当接する設定となっている(当接面55)。
【0021】
ここで、ロックアーム20の先端側に形成されたラッチ部21の下面21Aには、図5及び図6に示すように、左右2本の凹溝30が互いに平行姿勢をなして穿設されている。各凹溝30は、ラッチ部21の下面21Aにおける長さ方向の中央部に形成されており、特に前端側は、R面22の後部側に亘っている。
なお、各凹溝30は、ロックアーム20の先端部の上面近くに至るほどの大きな深さ(高さ)を有している。
【0022】
本実施形態の充電用コネクタ10は、図2に示すように、概ねコネクタ部15、ゴムブッシュ18、ロックアーム20等が、予めベース側半割ケース12Aに装着され、しかるのちカバー側半割ケース12Bが、それらを挟むようにしてベース側半割ケース12に合わせられ、図示4箇所においてねじ13で止めされることにより、筒形のガン形状に組み立てられる。組み立て完了時には、一部既述したように、ケーシング11の先端部にコネクタ部15が設けられるとともに、同ケーシング11の後端部から、コネクタ部15と接続された充電ケーブルWが水密状に維持して引き出される。
また、ケーシング11内の上部側には、ロックアーム20が係止方向に揺動付勢されて軸支され、先端のラッチ部21がケーシング11の先端から突出するとともに、後端の解除操作部25が操作用孔19に臨んだ形態を採る。
【0023】
上記のような構造になる充電用コネクタ10は、以下のような使い方がなされる。
充電するに際しては、充電用コネクタ10のグリップ部10Aを掴み、図1及び図2の矢線に示すように、先端のコネクタ部15が、車両側コネクタ40(雄ハウジング41)に対して嵌合される。初めの嵌合に伴い、図8に示すように、ロックアーム20の先端部が、車両側コネクタ40の左右のガイド壁52の間に進入し、ラッチ部21のR面22が、被係止部45のガイド面46の裾部に当てられる。
【0024】
さらに、コネクタ部15が押し込まれると、ロックアーム20を圧縮コイルばね27の付勢力に抗して係止解除方向に揺動変位させつつ、図9に示すように、ラッチ部21のR面22がガイド面46を摺接して上り、さらにR面22の後部側を含むラッチ部21の下面21Aが、被係止部45の上面を前方に向けて摺動する。
【0025】
両コネクタ10,40が正規嵌合されると、ラッチ部21が被係止部45を通過するから、図10に示すように、ロックアーム20が圧縮コイルばね27の付勢力により係止方向に揺動しつつ、ラッチ部21が被係止部45の背面に落ち込んで係止される。このとき、ラッチ部21の下面21Aは、被係止部45の背後の当接面55に当接する。
これにより両コネクタ10,40が正規嵌合状態に保持され、係る状態で充電作業が実施される。
【0026】
充電作業が終了したら、充電用コネクタ10のグリップ部10Aを握りつつ、図10の矢線xに示すように、操作用孔19から突出している解除操作部25を押圧すると、ロックアーム20が付勢力に抗して係止解除方向に強制的に揺動されることで、ラッチ部21による係止が解除されるから、引き続いて充電用コネクタ10が車両側コネクタ40から引き離される。
【0027】
ここで上記の充電作業中において、作業現場等の条件によっては、充電用コネクタ10の上面に雨水等が降り懸かる状態で放置される場合があり、本実施形態の充電用コネクタ10では、例えば、図11に詳細に示すように、ロックアーム20のラッチ部21の下面21Aと、車両側コネクタ40における被係止部45の背後の当接面55との間にできる狭い隙間sに、毛細管現象等で水分が浸入し、特に作業現場が冬場等で低温雰囲気にあると、同水分が氷結するおそれがある。これはすなわち、ラッチ部21の下面21Aが車両側コネクタ40の当接面55に凍り付いた現象を呈することになる。
【0028】
しかしながら本実施形態では、ラッチ部21の下面21Aに2本の凹溝30が穿設されているから、同ラッチ部21の下面21Aの表面積が減少されており、そのためラッチ部21の下面21Aと車両側コネクタ40の当接面55との間で氷結が生じたとしても、相互の接着面積は縮小される。その結果、解除操作部25を押圧してロックアーム20に係止解除方向の揺動操作力を作用させた場合に、ラッチ部21を当接面55から比較的容易に剥離することができ、ひいては充電用コネクタ10の引き抜き作業をスームズに行うことが可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、車両側コネクタ40に設けられた被係止部45の上面には、増強のために金属板50が張設されている一方、ロックアーム20が軽量化等を目的として合成樹脂製とされている。係る構造であると、例えば充電用コネクタ10を嵌合するに際して、ロックアーム20のラッチ部21が被係止部45の上面48(金属板50)に摺接して乗り越える場合に、ラッチ部21の下面21Aが削られて樹脂かすが出る可能性がある。なお、充電用コネクタ10を嵌合状態から離脱するに当たって、ラッチ部21の係止解除後にラッチ部21の下面21Aを被係止部45の上面48(金属板50)に弾性的に当てた状態で充電用コネクタ10を引っ張った場合も、同様にラッチ部21の下面21Aが削られる可能性がある。
それに対して本実施形態では、凹溝30が形成されていることでラッチ部21の下面21Aの表面積が減少しているから、仮に樹脂かすが出たとしてもその量が抑えられ、樹脂かすがコネクタ部15や相手の車両側コネクタ40に侵入して不具合を起こすのが未然に防止される。
【0030】
さらに経年後では、車両側コネクタ40において、被係止部45におけるガイド面46の上端46A(図11参照)が摩耗し、金属板50の先端部が露出することも懸念される。その場合は、ロックアーム20のラッチ部21が被係止部45に押し付けられつつ同被係止部45を乗り越える場合に、特にR面22の後部が金属板50の先端部に擦られるおそれがある。
それに対して本実施形態では、ラッチ部21の下面21Aに形成される凹溝30が、R面22の後部にまで亘っているから、R面22の後部の表面積も減じられており、仮に削られて樹脂かすが出たとしてもその量が抑えられる。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)ロックアームのラッチ部の下面に形成される凹部は、ラッチ部の下面の表面積を減少させることの他に、ラッチ部を成形する場合のひけ防止のための肉抜き孔としても機能させることができるものであるから、凹部の断面形状や数は、ラッチ部の形状等の条件に合わせて任意に選定できる。
(2)上記実施形態では、ロックアームのラッチ部が被係止部に係止した場合に、ラッチ部の下面が被係止部の背後におけるフード部の上面に当たる形態を例示したが、ラッチ部の下面とフード部の上面とが予め隙間を有して対向する設定であってもよく、そのようなものにも本発明は同様に適用可能である。
【0032】
)ロックアームがアルミダイキャスト等の金属製の場合も、ラッチ部の下面側で氷結することに起因してロックアームの係止解除に支障を来すことは考えられるから、ロックアームが金属製のものについても本発明は同様に適用可能である。
)車両側コネクタの被係止部については、ガイド面、上面及び係止面の全面に亘って金属板が張ってあるものや、被係止部全体が金属製であるもの等、要は少なくともラッチ部の下面が摺接する上面が金属材から形成されたものであれば、合成樹脂製のラッチ部の下面が削られることは懸念されるところであるから、そのような被係止部を備えたもの全般について、本発明は有効に機能する。
【符号の説明】
【0033】
10…充電用コネクタ
11…ケーシング
15…コネクタ部
16…雌ハウジング
19…操作用孔
20…ロックアーム
21…ラッチ部
21A…(ラッチ部21の)下面
22…R面
25…解除操作部
26…軸
27…圧縮コイルばね
30…凹溝(凹部)
40…車両側コネクタ
41…雄ハウジング
42…フード部
45…被係止部
48…(被係止部45の)上面
50…金属板(金属材)
55…当接面
s…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11