特許第6191481号(P6191481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191481
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/28 20060101AFI20170828BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B65H75/28
   A47K10/16 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-15652(P2014-15652)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140256(P2015-140256A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】喜多 哲也
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−256131(JP,A)
【文献】 実開昭57−126455(JP,U)
【文献】 特開昭61−263574(JP,A)
【文献】 米国特許第04067441(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 − 75/32
A47K 10/16
B65H 19/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の巻芯(10)の表面(11)に長尺の衛生薄葉紙(20)が複数層巻き付けられた衛生薄葉紙ロール(30)を製造するための方法であって,
前記巻芯(10)の表面(11)に前記衛生薄葉紙(20)の始端部分(21)を接触させた状態で,前記巻芯(10)の表面(11)と前記衛生薄葉紙(20)の始端部分(21)を貫通するように複数の針部材(40)を前記衛生薄葉紙(20)の始端部分(21)の表面側から突き刺して孔を穿設しその後前記針部材(40)を引き抜くことで,前記巻芯(10)の表面(11)に前記衛生薄葉紙(20)の始端部分(21)を取り付けるピックアップ工程を含む
衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【請求項2】
前記ピックアップ工程の前に,前記巻芯(10)の筒内にマンドレルシャフト(50)を挿し込む準備工程と,
前記ピックアップ工程の後に,前記マンドレルシャフト(50)を回転させて,前記巻芯(10)の表面(11)に前記衛生薄葉紙(20)を巻き付ける回転工程と,をさらに含む
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記マンドレルシャフト(50)の少なくとも周面(51)は,可撓性材料で形成されており,
前記ピックアップ工程において,前記針部材(40)は,前記衛生薄葉紙(20)と前記巻芯(10)とを貫通し,前記マンドレルシャフト(50)の周面(51)に形成された可撓性材料に到達する
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記巻芯(10)に巻き付けられた前記衛生薄葉紙(20)の最外層(22)に前記衛生薄葉紙(20)の終端部分(23)を接触させた状態で,少なくとも前記終端部分(23)を貫通するように複数の針部材(60)を突き刺して,前記最外層(22)の表面(11)に前記衛生薄葉紙(20)の終端部分(23)を取り付けるテールシール工程を,さらに含む
請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
円筒状の巻芯(10)の表面(11)に長尺の衛生薄葉紙(20)が複数層巻き付けられた衛生薄葉紙ロール(30)を製造するための方法であって,
前記巻芯(10)に巻き付けられた前記衛生薄葉紙(20)の最外層(22)に前記衛生薄葉紙(20)の終端部分(23)を接触させた状態で,少なくとも前記衛生薄葉紙(20)の最外層(22)と前記衛生薄葉紙(20)の終端部分(23)を貫通するように複数の針部材(60)を前記衛生薄葉紙(20)の終端部分(23)の表面側から突き刺して孔を穿設しその後前記針部材(60)を引き抜くことで,前記衛生薄葉紙(20)の最外層(22)に前記衛生薄葉紙(20)の終端部分(23)を取り付けるテールシール工程を,含む
衛生薄葉紙ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,トイレットロールなどの衛生薄葉紙ロールを製造するための方法に関する。具体的に説明すると,本発明の製造方法は,衛生薄葉紙を巻芯に巻きつけるために,衛生薄葉紙の始端部を巻芯に取り付ける工程や,衛生薄葉紙の終端部を閉じるための工程を含む。
【背景技術】
【0002】
従来から,家庭用の衛生薄葉紙として,トイレットペーパやキッチンペーパなどが知られている。これらの衛生薄葉紙は長尺であるため,通常,円筒状の巻芯に巻き付けてロール状とされ,個別の製品として販売されている。
【0003】
衛生薄葉紙をロール状に形成するためには,一般的に,まず巻芯の基となる原芯の表面に接着剤(「ピックアップ糊」とも称される)を塗布する。その後,衛生薄葉紙の原紙の始端部分を,巻芯の表面に塗布された接着剤に接触させ,衛生薄葉紙を巻芯の表面に固定する。そして,衛生薄葉紙の始端部分が巻芯の表面に固定された状態で,巻芯を高速回転させることにより,巻芯の表面に衛生薄葉紙が多重に巻き付くようになる。
【0004】
また,衛生薄葉紙を巻芯に巻き付け終えた後,衛生薄葉紙の終端部分の内面に接着剤(「テール糊」とも称させる)を塗布する。その後,衛生薄葉紙の終端部分を,接着剤を利用して,巻芯に巻き付けられた衛生薄葉紙の最外層の表面に固定する。これにより,衛生薄葉紙の終端部分を閉じることができ,終端部分がヒラヒラと開放された状態を解消することができる。
【0005】
また,巻芯の原芯に衛生薄葉紙の原紙を巻き付けて形成された中間体を,ペーパーログともいう。このペーパーログを得た後,このペーパーログを軸方向に所定間隔をおいて切断することで,一本のペーパーログから複数個の衛生薄葉紙ロールを得ることができる。一般的には,このような工程に従って,巻芯に長尺の衛生薄葉紙を巻き付けた衛生薄葉紙ロールが製造される。従来の衛生薄葉紙ロールの製造方法は,例えば特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−213953号公報
【特許文献2】特開2011−131464号公報
【特許文献3】特開2013−256131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,従来の衛生薄葉紙ロールの製造方法では,上述のとおり,衛生薄葉紙を巻芯に巻き付けるために,この衛生薄葉紙の始端部分にピックアップ糊を塗布したり,衛生薄葉紙の終端部分にテール糊を塗布する必要がある。しかしながら,この従来の製造方法では,衛生薄葉紙ロールを製造するための消耗材料として,衛生薄葉紙や巻芯の他に,接着剤が必要となるため,接着剤の消費量に応じて衛生薄葉紙ロールの製造コストが高くなるという問題があった。また,衛生薄葉紙ロールの消費者の中には,接着剤の原材料として使用されている化学薬品を好まない者も少なからず存在している
【0008】
このため,本発明は,衛生薄葉紙ロールの製造にあたり,少なくとも接着剤の使用量を減らすことができ,好ましくは接着剤を使用せずに衛生薄葉紙ロールを製造することのできる方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は,上記の課題を解決する手段について鋭意検討した結果,衛生薄葉紙の始端部又は終端部分を針部材で突き刺して巻芯に取り付けるようにすることで,ピックアップ糊又はテール糊が不要になるという知見を得た。そして,このような知見に基づけば,少なくとも接着剤の使用量を減らすことができることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明に係る製造方法は以下の工程を有する。
【0010】
本発明は,衛生薄葉紙ロール30を製造するための方法に関する。衛生薄葉紙ロール30は,円筒状の巻芯10の表面11に長尺の衛生薄葉紙20が複数層巻き付けられた製品である。
本発明の製造方法は,少なくともピックアップ工程を含む。このピックアップ工程では,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20の始端部分21を接触させた状態で,少なくとも始端部分21を貫通するように複数の針部材40を突き刺して,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20の始端部分21を取り付ける。
【0011】
上記工程のように,衛生薄葉紙20の始端部分21を針部材40を突き刺して巻芯10の表面11に固定することで,従来の製造方法で使用していたピックアップ糊が不要になる。従って,衛生薄葉紙ロールの製造にあたり,接着剤の使用量を減らすことができ,結果として製品の製造コストを低減させることができる。
【0012】
本発明の製造方法は,ピックアップ工程の前に準備工程を含み,ピックアップ工程の後に回転工程を含むことが好ましい。ここにいう準備工程とは,巻芯10の筒内にマンドレルシャフト50を挿し込む工程である。また,回転工程とは,マンドレルシャフト50を回転させて,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20を巻き付ける工程である。
【0013】
上記のように,巻芯10の筒内にマンドレルシャフト50を挿し込んで固定しておくことで,このマンドレルシャフト50が心棒となるため,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20の始端部分21を針で突き刺して固定しやすくなる。また,マンドレルシャフト50を回転させることで,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20を簡単に巻き付けることができる。
【0014】
本発明の製造方法において,マンドレルシャフト50の少なくとも周面51は,可撓性材料で形成されていることが好ましい。
【0015】
上記のように,マンドレルシャフト50の周面51を,例えばゴムなどの可撓性材料で被覆しておくことで,衛生薄葉紙20と巻芯10とを貫通するように,針部材40を深く突き刺すことが可能となる。このように,針部材40で衛生薄葉紙20と巻芯10の両方を貫通することで,衛生薄葉紙20が巻芯10に喰い込むようになり,衛生薄葉紙20と巻芯10の結合力が高くなる。これにより,ピックアップ糊を使用しなくても,衛生薄葉紙20を巻芯10の表面11にしっかりと取り付けることができる。
【0016】
本発明の製造方法は,さらに,テールシール工程を含むことが好ましい。テールシール工程では,巻芯10に巻き付けられた衛生薄葉紙20の最外層22に衛生薄葉紙20の終端部分23を接触させた状態で,少なくとも終端部分23を貫通するように複数の針部材60を突き刺して,最外層22に衛生薄葉紙20の終端部分23を取り付ける。
【0017】
上記工程のように,衛生薄葉紙20の終端部分23を針部材40で突き刺して衛生薄葉紙20の最外層22に固定することで,従来の製造方法で使用していたテール糊が不要になる。従って,上記のピックアップ工程とテールシール工程とを組み合わせることで,衛生薄葉紙ロールの製造にあたり,接着剤を一切使用する必要がなくなる。その結果,製造コストを大幅に低減させることができるとともに,接着剤を嫌がる消費者の要求を満たすことができる。
【0018】
なお,本発明の製造方法は,必ずしもピックアップ工程とテールシール工程の両方を含む必要はなく,少なくともピックアップ工程とテールシール工程のいずれか一方を含んでいればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は,衛生薄葉紙ロールの製造にあたり,少なくとも接着剤の使用量を減らすことができ,好ましくは接着剤を使用せずに衛生薄葉紙ロールを製造することが可能な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は,衛生薄葉紙ロールの製造方法の概要を模式的に示した工程図である。
図2図2は,ピックアップ工程を示した模式図である。
図3図3は,テールシール工程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
なお,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0022】
図1は,衛生薄葉紙ロール30の製造工程の概要を模式的に示している。衛生薄葉紙ロール30は,円筒状の巻芯10に長尺の衛生薄葉紙20を複数層巻き付けることにより形成されたロール状の製品である。衛生薄葉紙ロール30には,例えば,トイレットペーパをロール状としたトイレットロールや,キッチンペーパをロール状としたキッチンロールなどの家庭用衛生紙が含まれる。
【0023】
図1に示されるように,衛生薄葉紙ロールの製造工程では,まず,筒状の巻芯10の原芯を用意する(ステップS1)。巻芯10は,原芯の状態において,最終製品の状態における長さの10倍〜30倍程度の長さを有していることが好ましい。つまり,巻芯10の原芯を複数に切断することで,最終製品用の巻芯を複数得ることができるようになっている。
【0024】
次に,図1に示されるように,巻芯10の筒の中に,マンドレルシャフト50を挿し込み,巻芯10をマンドレルシャフト50に固定する(ステップS2)。この工程を,「準備工程」という。マンドレルシャフト50は,円柱状又は円筒状の芯棒である。マンドレルシャフト50は,少なくともその周面51が,可撓性材料で形成されていることが好ましい。マンドレルシャフト50は,全体が可撓性材料で形成されていることとしてもよいし,鉄やステンレス等の金属で形成された中芯部分を可撓性材料で被覆することとしてもよい。可撓性材料の例は,ゴム,シリコーン,及びプラスチックである。具体的には,可撓性材料としては,ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂,又はエラストマーや,合成ゴム,天然ゴム等のゴム材料を採用することが好ましい。このように,マンドレルシャフト50の周面51を可撓性材料で形成することで,マンドレルシャフト50と巻芯10の間に摩擦抵抗が生じ,マンドレルシャフト50に巻芯10を固定しやすくなる。また,マンドレルシャフト50の周面51を可撓性材料で形成することで,後段のピックアップ工程(ステップS3)において,針部材40を巻芯10と衛生薄葉紙20に突き刺しやすくなる。
【0025】
次に,巻芯10の表面11に,衛生薄葉紙20を固定する(ステップS3)。図1に示されるように,衛生薄葉紙20の原紙は,搬送ローラ70によって引張されるようにして,原反ロール71から繰り出される。衛生薄葉紙20の原紙は,その一部が切断されることにより,始端部分21が形成されている。巻芯10は,マンドレルシャフト50と共に,衛生薄葉紙20の始端部分21に当接する位置まで運ばれる。そして,巻芯10の表面11に,衛生薄葉紙20の始端部分21が固定される。この工程を,「ピックアップ工程」という。
【0026】
図2は,ピックアップ工程(ステップS3)をより具体的に示した模式図である。図2に示されるように,マンドレルシャフト50を移動させることで,巻芯10が衛生薄葉紙20の始端部分21に当接する位置まで運ばれる。ここで,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20の始端部分21が接触している状態において,巻芯10と衛生薄葉紙20の始端部分21は共に,複数の針部材40によって突き刺される。この針部材40は,先端部が鋭利に尖った針状の部材であり,少なくとも巻芯10と衛生薄葉紙20を貫通することができる。複数の針部材40は,巻芯10が存在する方向に向かって進退可能な移動装置41に備え付けられている。移動装置41は,例えば上下に昇降し,複数の針部材40を,衛生薄葉紙20の始端部分21と巻芯10の表面11に押し付ける。これにより,各針部材40は,少なくとも衛生薄葉紙20の始端部分21を貫通して孔を穿設しつつ,この始端部分21を巻芯10の表面11に固定する。このとき,各針部材40は,衛生薄葉紙20と巻芯10とを貫通し,マンドレルシャフト50の周面51に形成された可撓性材料に到達することが好ましい。このように,各針部材40が深く突き刺さることで,衛生薄葉紙20の始端部分21と巻芯10との固定強度が高まる。
【0027】
図2に示された針部材40の形状や,配置,本数は,一例であり,衛生薄葉紙20を巻芯10により強く固定するために適宜好適な形状,配置,本数を採用することができる。
例えば,針部材40の先端の形状を,屈曲させたり湾曲させたりして,鉤爪状とすることとしてもよい。また,複数の針部材40を前後2列以上で配置することとしてもよい。また,複数の針部材40を,移動装置41の進退方向に対して所定角度(例えば3度〜30度)傾斜させて,移動装置41に取り付けることとしてもよい。また,隣接する針部材40を互いに近づく方向に傾斜させて,これらの隣り合う一対の針部材40によって巻芯10と衛生薄葉紙20を挟み込む(摘む)ようにして孔を形成することとしてもよい。これらの工夫を施すことにより,針部材40によって,衛生薄葉紙20を巻芯10により強く固定することができる。
【0028】
次に,図1に示されるように,巻芯10を回転させて,巻芯10の表面11に衛生薄葉紙20を巻き付ける(ステップS4)。この工程を「回転工程」という。回転工程では,マンドレルシャフト50を,回転装置(図示省略)によって周方向に回転させる。この回転により,衛生薄葉紙20が巻芯10に対して巻き取られる。ここで,衛生薄葉紙20は,製造結果物である衛生薄葉紙ロール30と同一の巻径(製品径)となるまで,巻芯10に対して巻き付けられる。
【0029】
次に,衛生薄葉紙20が所望の巻径に達した段階で,衛生薄葉紙20の終端部分23を,巻芯10に巻き付けられた衛生薄葉紙20の最外層22に対して固定する(ステップS5)。この工程を,「テールシール工程」という。
【0030】
このテールシール工程は,図3に具体的に示されている。図3に示されるように,衛生薄葉紙20の巻芯10に対する巻き付けが所望の巻径に達すると,衛生薄葉紙20の終端部分23が衛生薄葉紙20の最外層22に接触している状態において,最外層22と終端部分23は共に,複数の針部材60によって突き刺される。なお,ここにいう「終端部分23」とは,図3において点線で示した切断線の直前の部分を意味する。すなわち,衛生薄葉紙20の巻芯10に対する巻き付けが所望の巻径に達すると,衛生薄葉紙20を原反ロール71から切り離すために,衛生薄葉紙20が切断線(図3の点線)において切断される。この切断により,衛生薄葉紙20に終端部分23が形成されることとなる。本実施形態では,衛生薄葉紙20を切断する前に,終端部分23となる予定の部位において,複数の針部材60を衛生薄葉紙20に突き刺し,その後,針部材60で突き刺された場所の直後において衛生薄葉紙20を切断することとしている。このため,図3に示された実施形態においても,実質的には,衛生薄葉紙20の終端部分23に,複数の針部材60を突き刺していることとなる。
【0031】
このテールシール工程(ステップS5)において用いられる針部材60は,上述したピックアップ工程(ステップS3)で用いられる針部材40と同様の物を使用することができる。つまり,この針部材60は,先端部が鋭利に尖った針状の部材であり,少なくとも衛生薄葉紙20の終端部分23から最外層22にわたって貫通することができる。複数の針部材60は,巻芯10が存在する方向に向かって進退可能な移動装置61に備え付けられている。移動装置61は,例えば上下に昇降し,複数の針部材60を,衛生薄葉紙20の終端部分23と最外層22に押し付ける。これにより,各針部材60は,少なくとも衛生薄葉紙20の終端部分23を貫通して孔を穿設しつつ,この終端部分23を最外層22に固定する。このとき,各針部材60は,衛生薄葉紙20の終端部分23と最外層22を貫通することが好ましい。また,各針部材60は,複数層に巻回されている衛生薄葉紙20のうち,3〜25層,4〜20層,又は5〜15層を貫通することが好ましい。このように,各針部材60が深く突き刺さることで,衛生薄葉紙20の終端部分23と最外層22の固定強度が高まる。また,テールシール工程で用いられる針部材60の形状や,配置,本数については,上述したピックアップ工程で用いられる針部材40と同様の工夫を施すことができる。
【0032】
次に,図1に示されるように,衛生薄葉紙20の終端部分23が複数の針部材60によって最外層22に固定された後に,終端部分23と最外層22の固定部位の直後の位置(図3に示した点線位置)において,衛生薄葉紙20の原紙を切断する(ステップS6)。衛生薄葉紙20の原紙の切断には,切断刃72を利用すればよい。また,切断刃72を用いる以外にも,薄葉紙20の原紙に事前にミシン目を形成しておき,このミシン目において薄葉紙20の原紙を切断することも可能である。これにより,衛生薄葉紙20の原紙が,原反ロール71から切り離される。この工程を「切離し工程」という。これらの工程を経て,衛生薄葉紙20の原紙が巻芯10の原芯に巻き付けられたペーパーログ80が形成される。
【0033】
次に,ペーパーログ80は,軸方向の所定間隔ごとに,ログソー等の切断刃(図示省略)によって切断される(ステップS7)。すなわち,ペーパーログ80は,製造結果物である衛生薄葉紙ロール30と同一の軸方向長さ(製品長さ)となるように切断される。これにより,一本のペーパーログ80から,複数個の衛生薄葉紙ロール30が得られる。
【0034】
以上の工程により,トイレットロールなどの衛生薄葉紙ロール30を製造することができる。本発明の製造方法によれば,上記の通り,巻芯10に対して衛生薄葉紙20を巻き付けるために,ピックアップ糊やテール糊などの接着剤を使用する必要がない。従って,接着剤の材料コストを省略することができるため,衛生薄葉紙ロールの製造コストを低減させることができる。
【0035】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
トイレットロールなどの衛生薄葉紙ロールの製造方法に関する。従って,本発明は,衛生薄葉紙ロールの製造業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0037】
10…巻芯 11…表面 20…衛生薄葉紙
21…始端部分 22…最外層 23…終端部分
30…衛生薄葉紙ロール 40…針部材 41…移動装置
50…マンドレルシャフト 51…周面 60…針部材
61…移動装置 70…搬送ローラ 71…原反ロール
72…切断刃 80…ペーパーログ
図1
図2
図3