(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ペプチドなどの生体由来の高分子化合物を同定する際に、液体クロマトグラフにより試料成分を分離し、分離された各試料成分に対してMS
n分析を順次行うことにより、得られたMS
nスペクトルに基づいて各試料成分を同定する場合がある。この場合、まず、イオン化された試料成分の質量分析(MS分析)を行うことによりMSスペクトルが測定される。そして、測定されたMSスペクトルをリテンションタイムに対応付けることにより、リテンションタイム(RT)、質量電荷比(m/z)及び強度(I)の三次元情報が得られる。
【0003】
図8は、MS分析により得られるリテンションタイム、質量電荷比及び強度の三次元情報の一例を示した図である。この例では、互いに隣り合うリテンションタイムrt1〜rt3のMSスペクトルにおいて、質量電荷比mz1及びmz2のピークが検出されている。リテンションタイムrt1では、質量電荷比mz2の強度が小さく、リテンションタイムrt3では、質量電荷比mz1の強度が小さい。
【0004】
この場合、リテンションタイムrt1では質量電荷比mz1のピークP11、リテンションタイムrt2では質量電荷比mz1のピークP21及び質量電荷比mz2のピークP22、リテンションタイムrt3では質量電荷比mz2のピークP32にそれぞれ対応するイオンが、MS/MSプリカーサイオンとして検出される。その後、各リテンションタイムにおいて、MS/MSプリカーサイオンを開裂させて質量分析(MS/MS分析)を行うことによりMS/MSスペクトルが測定される。このようにして得られた各MS/MSスペクトルに基づいて、公知のデータベースを用いた検索を行うことにより、各試料成分を同定することができる。
【0005】
しかしながら、例えば試料成分としてのペプチドが翻訳後修飾を受けている場合や、MS/MS分析において十分にイオンが開裂されていない場合などには、上記のようなデータベース検索により各試料成分を同定できない場合がある。このような場合には、MS/MS分析を行った後、さらにMS/MSスペクトルに基づいてMS
3プリカーサイオンを検出し、当該MS
3プリカーサイオンを開裂させて質量分析(MS
3分析)を行うことによりMS
3スペクトルを測定することが有効である(下記特許文献1参照)。
【0006】
このように、MS
3分析まで行うことにより得られたMSスペクトル、MS/MSスペクトル及びMS
3スペクトルに基づいてデータベース検索を行えば、より信頼度の高い同定結果を得ることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、MS/MS分析により得られた全てのMS/MSスペクトルからMS
3プリカーサイオンを検出してMS
3分析を行った場合には、測定時間が長くなるとともに、試料の消費量が多くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、測定時間を短縮することができるとともに、試料の消費量を削減することができる質量分析装置及び質量分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る質量分析装置は、液体クロマトグラフにより分離された試料成分をイオン化し、得られたイオンを開裂させて質量分析を行うことによりMS
n分析(nは3以上の整数)を行うための質量分析装置であって、MS測定処理部と、イオン検出処理部と、実行判定処理部とを備える。前記MS測定処理部は、イオン化された試料成分の質量分析を行うことにより、質量電荷比及び強度の関係を表すMSスペクトルを測定する。前記イオン検出処理部は、前記MSスペクトルをリテンションタイムに対応付けることにより得られるリテンションタイム、質量電荷比及び強度の三次元情報に基づいて、各リテンションタイム及び各質量電荷比の両方で強度分布がピーク波形となるイオンをMS/MSプリカーサイオンとして検出する。前記重畳判定処理部は、MS/MSプリカーサイオンとして検出された複数のイオンの同位体分布が、各リテンションタイムにおいて重畳しているか否かを判定する。前記実行判定処理部は、前記重畳判定処理部による判定結果に基づいて、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンに対してMS
3分析を行うか否かを判定する。
【0011】
このような構成によれば、MS/MSプリカーサイオンとして検出された複数のイオンの同位体分布が、各リテンションタイムにおいて重畳しているか否かに基づいて、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンに対してMS
3分析を行うか否かを予め判定することができる。これにより、MSスペクトルを測定してMS/MSプリカーサイオンを検出した時点で、MS
3分析を行うイオンと、MS
3分析を行わないイオンとを決定することができる。
【0012】
したがって、MS
3分析を行わないと決定されているイオンについては、MS/MS分析まで行い、MS
3分析を行うと決定されているイオンについては、MS/MS分析及びMS
3分析を続けて行うことができる。そのため、MS/MS分析により得られた全てのMS/MSスペクトルからMS
3プリカーサイオンを検出してMS
3分析を行うような従来の構成と比べて、測定時間を短縮することができるとともに、試料の消費量を削減することができる。
【0013】
本発明に係る質量分析方法は、液体クロマトグラフにより分離された試料成分をイオン化し、得られたイオンを開裂させて質量分析を行うことによりMS
n分析(nは3以上の整数)を行うための質量分析方法であって、MS測定ステップと、イオン検出ステップと、重畳判定ステップと、実行判定ステップとを備える。前記MS測定ステップでは、イオン化された試料成分の質量分析を行うことにより、質量電荷比及び強度の関係を表すMSスペクトルを測定する。前記イオン検出ステップでは、前記MSスペクトルをリテンションタイムに対応付けることにより得られるリテンションタイム、質量電荷比及び強度の三次元情報に基づいて、各リテンションタイム及び各質量電荷比の両方で強度分布がピーク波形となるイオンをMS/MSプリカーサイオンとして検出する。前記重畳判定ステップでは、MS/MSプリカーサイオンとして検出された複数のイオンの同位体分布が、各リテンションタイムにおいて重畳しているか否かを判定する。前記実行判定ステップでは、前記重畳判定ステップによる判定結果に基づいて、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンに対してMS
3分析を行うか否かを判定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、MS
3分析を行わないと決定されているイオンについては、MS/MS分析まで行い、MS
3分析を行うと決定されているイオンについては、MS/MS分析及びMS
3分析を続けて行うことができるため、測定時間を短縮することができるとともに、試料の消費量を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る質量分析装置の構成例を示した概略図である。本実施形態に係る質量分析装置は、例えばペプチドなどの生体由来の高分子化合物を同定する際に使用可能であり、液体クロマトグラフ1、質量分析部2、制御部3及び記憶部4などを備えている。
【0017】
液体クロマトグラフ1は、カラム(図示せず)を備えた公知の構成である。液体クロマトグラフ1のカラムに供給された試料は、当該カラムを通過する過程で試料成分ごとに分離され、真空状態の質量分析部2に順次導かれて質量分析が行われる。これにより、リテンションタイムに応じて異なるスペクトルが得られるようになっている。
【0018】
質量分析部2には、例えばイオン化室21、イオントラップ22及びTOFMS(飛行時間型質量分析計)23が備えられている。液体クロマトグラフ1により分離された試料成分は、イオン化室21に供給され、ESI(エレクトロスプレーイオン化)などのイオン化法を用いてイオン化される。ただし、試料成分のイオン化法としては、ESIに限らず、APCI(大気圧化学イオン化)などの他の各種方法を用いることができる。
【0019】
イオントラップ22は、例えば三次元四重極型であり、イオン化室21で得られたイオンを捕捉するとともに、捕捉したイオンの一部を選択的にイオントラップ22内に残し、CID(衝突誘起解離)により開裂させることができる。このようにして開裂されたイオンは、イオントラップ22からTOFMS23に供給される。
【0020】
TOFMS23では、飛行空間231を飛行したイオンがイオン検出器232により検出される。具体的には、飛行空間231に形成された電場により加速されたイオンが、当該飛行空間231を飛行する間に質量電荷比に応じて時間的に分離され、イオン検出器232により順次検出される。これにより、質量電荷比とイオン検出器232における検出強度との関係がスペクトルとして測定され、質量分析が実現される。
【0021】
本実施形態では、イオントラップ22においてイオンを開裂させてTOFMS23で質量分析を行うという一連の動作を繰り返し行うことにより、MS
n分析(nは3以上の整数)を行い、MS
nスペクトルを測定することができる。このようにして得られたMS
nスペクトルを用いてデータベース検索を行うことにより、試料成分を同定することができる。
【0022】
制御部3は、液体クロマトグラフ1及び質量分析部2の動作を制御するとともに、質量分析により得られたMS
nスペクトルに対する処理を行う。記憶部4は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びハードディスクなどにより構成され、制御部3の処理に用いられるデータや、制御部3の処理により生成されたデータなどが記憶される。制御部3及び記憶部4は、液体クロマトグラフ1及び質量分析部2と一体的に構成されていてもよいし、別々に構成されていてもよい。
【0023】
図2は、制御部3及び記憶部4の具体的構成の一例を示したブロック図である。制御部3は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、CPUがプログラムを実行することにより、MS
n測定処理部31、イオン検出処理部32、重畳判定処理部33、実行判定処理部34及び同定処理部35などとして機能する。
【0024】
MS
n測定処理部31は、質量分析部2でMS
nスペクトルを測定するための処理を行う。測定されたMS
nスペクトルは、記憶部4に割り当てられたスペクトル記憶領域41に記憶される。MS
n分析では、MSスペクトル、MS/MSスペクトル、MS
3スペクトル、・・・が順次測定され、それぞれスペクトル記憶領域41に記憶される。
【0025】
イオン検出処理部32は、MS
n−1スペクトルに基づいて、MS
nスペクトルを測定する際の対象となるイオン(MS
nプリカーサイオン)を検出する。MS
n分析では、まず、イオン化室21でイオン化された試料の質量分析(MS分析)がTOFMS23で行われることにより、MSスペクトルが測定される。このとき、MS
n測定処理部31は、MS測定処理部として機能する。そして、測定されたMSスペクトルに基づいて、イオン検出処理部32によりMS/MSプリカーサイオンが検出される。
【0026】
本実施形態では、MSスペクトルをリテンションタイムに対応付けることにより得られるリテンションタイム(RT)、質量電荷比(m/z)及び強度(I)の三次元情報に基づいて、MS/MSプリカーサイオンが検出される。このとき、各リテンションタイム及び各質量電荷比の両方で強度分布が所定値以上の強度を有するピーク波形となるイオンを、MS/MSプリカーサイオンとして検出するようになっている。
【0027】
図3は、三次元情報に基づいてMS/MSプリカーサイオンを検出する際の態様について説明するための図である。この
図3に示すように、本実施形態では、リテンションタイム、質量電荷比及び強度の三次元情報について、リテンションタイム方向及び質量電荷比方向の両方でピーク検出が行われる。
【0028】
その結果、各質量電荷比において検出されたピークのうち、各リテンションタイムにおいてもピーク波形となるピークに対応するイオンが、MS/MSプリカーサイオンとして検出される。例えば
図8の例では、リテンションタイムrt1における質量電荷比mz1のピークP11、リテンションタイムrt2における質量電荷比mz1のピークP21及び質量電荷比mz2のピークP22、リテンションタイムrt3における質量電荷比mz2のピークP32が、それぞれ各リテンションタイム及び各質量電荷比の両方でピーク波形となっている。
【0029】
再び
図2を参照して、重畳判定処理部33は、MS/MSプリカーサイオンとして検出された複数のイオンの同位体分布が、各リテンションタイムにおいて重畳しているか否かを判定する。同位体分布は試料成分の組成に応じてある程度決まった波形となるため、公知のアルゴリズムを用いることにより、複数の同位体分布が重畳しているか否かを判定することができる。
【0030】
実行判定処理部34は、重畳判定処理部33による判定結果に基づいて、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンに対してMS
3分析を行うか否かを判定する。具体的には、各リテンションタイムにおいて同位体分布が互いに重畳しているMS/MSプリカーサイオンについては、MS/MS分析だけでなくMS
3分析も行うと判定される。一方、各リテンションタイムにおいて同位体分布が互いに重畳していないMS/MSプリカーサイオンについては、MS
3分析は行わないと判定される。
【0031】
このように、各MS/MSプリカーサイオンに対してMS
3分析まで行うか否かが予め決定された上で、MS
n測定処理部31によりMS/MS分析以降のMS
n分析が行われる。同定処理部35は、測定されたMS
nスペクトルに基づいて、試料成分を同定するための処理を行う。同定処理は、自動で行われるような構成であってもよいし、ユーザが手動で行うような構成であってもよい。
【0032】
この例では、記憶部4の一部であるデータベース領域42に同定用データベースが割り当てられている。当該同定用データベースに含まれる種々の試料成分についての質量電荷比のデータと、MS
nスペクトルに含まれる各ピークの質量電荷比との一致度を算出することにより、試料成分を同定することができる。ただし、同定用データベースは、質量分析装置の記憶部4に割り当てられた構成に限らず、例えばネットワークを介して質量分析装置に接続されたデータベースを使用することも可能である。
【0033】
図4は、あるリテンションタイムにおけるMSスペクトルの一例を示した図である。また、
図5は、重畳判定処理部33による処理の態様について説明するための図であり、
図4のMSスペクトルを簡略的に示している。
【0034】
図4の例は、オボアルブミンのトリプシン消化物から得られた2種類のペプチドについてのMSスペクトルである。この例では、モノアイソトピック質量m/z=2281のピークと、モノアイソトピック質量m/z=2284のピークとが近接し、それらの同位体分布が互いに重畳している。
【0035】
すなわち、
図4のMSスペクトルを
図5(a)のように簡略化した場合、当該MSスペクトルは、
図5(b)に示すようなモノアイソトピック質量m/z=2281の同位体分布と、
図5(c)に示すようなモノアイソトピック質量m/z=2284の同位体分布とに分離することができる。このような場合、モノアイソトピック質量m/z=2281に対応するイオンと、モノアイソトピック質量m/z=2284に対応するイオンとについては、同位体分布が互いに重畳しているため、MS/MS分析だけでなくMS
3分析も行うと判定される。
【0036】
図6は、実行判定処理部34による処理の態様について説明するための図である。ここでは、
図8の例の各リテンションタイムrt1〜rt3におけるピークP11,P21,P22,P32について、MS
3分析を行うイオンと判定するか否かの具体的態様を説明する。
【0037】
リテンションタイムrt1における質量電荷比mz1のピークP11のように、当該リテンションタイムrt1において近接する質量電荷比のピークが存在せず、同位体分布が互いに重畳するイオンが存在しない場合には、当該ピークP11に対応するイオンについては、MS
3分析は行わず、MS/MS分析まで行うと決定される。
【0038】
リテンションタイムrt2における質量電荷比mz1のピークP21及び質量電荷比mz2のピークP22のように、当該リテンションタイムrt2において近接する質量電荷比のピークが存在する場合には、それらの同位体分布が互いに重畳しているか否かが判定される。その結果、各ピークP21,P22の同位体分布が互いに重畳している場合には、これらのピークP21,P22に対応するイオンについては、MS/MS分析だけでなくMS
3分析も行うと決定される。
【0039】
リテンションタイムrt3における質量電荷比mz2のピークP32のように、当該リテンションタイムrt3において近接する質量電荷比のピークが存在せず、同位体分布が互いに重畳するイオンが存在しない場合には、当該ピークP32に対応するイオンについては、MS
3分析は行わず、MS/MS分析まで行うと決定される。
【0040】
このように、本実施形態では、MS/MSプリカーサイオンとして検出された複数のイオン(ピークP11,P21,P22,P32)の同位体分布が、各リテンションタイムrt1〜rt3において重畳しているか否かに基づいて、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンに対してMS
3分析を行うか否かを予め判定することができる。これにより、MSスペクトルを測定してMS/MSプリカーサイオンを検出した時点で、MS
3分析を行うイオン(ピークP21,P22)と、MS
3分析を行わないイオン(ピークP11,P32)とを決定することができる。
【0041】
したがって、MS
3分析を行わないと決定されているイオン(ピークP11,P32)については、MS/MS分析まで行い、MS
3分析を行うと決定されているイオン(ピークP21,P22)については、MS/MS分析及びMS
3分析を続けて行うことができる。そのため、MS/MS分析により得られた全てのMS/MSスペクトルからMS
3プリカーサイオンを検出してMS
3分析を行うような従来の構成と比べて、測定時間を短縮することができるとともに、試料の消費量を削減することができる。
【0042】
図7は、MS
n分析を行う際の制御部3による処理の一例を示したフローチャートである。MS
n分析を行う際には、まず、液体クロマトグラフ1で分離される試料成分を質量分析部2で順次イオン化し、イオン化された試料の質量分析(MS分析)を行うことによりMSスペクトルを測定する(ステップS101:MS測定ステップ)。
【0043】
そして、測定されたMSスペクトルをリテンションタイムに対応付けることにより得られるリテンションタイム、質量電荷比及び強度の三次元情報に基づいて、MS/MSプリカーサイオンが検出される(ステップS102:イオン検出ステップ)。その後、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンの同位体分布が、各リテンションタイムにおいて重畳しているか否かが判定される(ステップS103:重畳判定ステップ)。
【0044】
上記判定の結果、同位体分布が互いに重畳するイオンについては(ステップS104でYes)、MS
3分析の対象と決定されることにより(ステップS105)、MS/MS分析だけでなくMS
3分析も行うと決定される。一方、重畳する同位体分布が存在しないイオンについては(ステップS104でNo)、MS
3分析の対象とはならず、MS/MS分析まで行うと決定される。ここで、ステップS104及びS105は、実行判定ステップを構成している。
【0045】
このようにして、各MS/MSプリカーサイオンについてステップS103〜S105の処理が行われ、全てのMS/MSプリカーサイオンについての判定が完了した後(ステップS106でYes)、MS
n測定処理部31によりMS
n分析(n≧2)が行われる(ステップS107:MS
n測定ステップ)。このとき、MS
3分析の対象と決定されているイオンについては、MS/MS分析だけでなくMS
3分析まで実行される。一方、MS
3分析の対象と決定されていないイオンについては、MS
3分析は実行されず、MS/MS分析まで実行される。
【0046】
なお、MS
3分析まで実行されるイオンについては、MS
4分析以降の質量分析が実行されてもよい。この場合、実行判定処理部34が、MS/MSプリカーサイオンとして検出された各イオンに対してMS
4分析以降の質量分析を行うか否かを判定するような構成であってもよい。
【0047】
そして、測定されたMS
nスペクトルに基づいて同定処理が行われることにより、試料成分が同定される(ステップS108:同定ステップ)。このとき、MS
3分析が実行されずに、MS/MS分析まで実行されたイオンについては、MS/MSスペクトルを用いて同定処理が行われる。一方、MS
3分析まで実行されたイオンについては、MS/MSスペクトル及びMS
3スペクトルの両方を用いてさらに信頼度の高い同定処理が行われる。
【0048】
以上の実施形態では、TOFMS23を用いて質量分析を行うような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、磁場型質量分析計、四重極型質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計などの他の質量分析計を用いて質量分析を行うような構成であってもよいし、イオントラップ22自体の質量分離機能を利用して質量分析を行うような構成であってもよい。
【0049】
また、イオントラップ22を用いてイオンを開裂させるような構成に限らず、例えば三連四重極型などの他の構成からなる質量分析部2を採用し、イオンを開裂させるような構成であってもよい。