(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4に示すように、恒温槽100内で複数の蓄電装置V・・・を充放電する場合、一般に、恒温槽100においては複数の蓄電装置V・・・が二次元で配置(
図4の例では、左右方向に2個、奥行き方向に3個の計6個が配置)される。そのために、充放電回路(図示せず)に給電線を介してそれぞれ接続される正極用コード101aと負極用コード101bが、二次元で配置される蓄電装置V・・・の各位置に対応して、恒温槽100の天井に取り付けられている。恒温槽100には扉があり、その扉が開く一面だけが開放可能であるため、蓄電装置Vの各端子Ta,Tbを各コード101a,101bに取り付ける場合や取り外す場合、恒温槽100の奥側の位置に配置される蓄電装置Vに対する作業が困難になり、作業性が低下する。特許文献1に開示の充放電装置の場合、幅方向の一次元で配置される複数の蓄電装置に対する充放電であるので、二次元で配置される複数の蓄電装置を充放電する場合に対応していない。
【0005】
そこで、本技術分野においては、二次元で配置される複数の蓄電装置を充放電する場合の作業性を向上させることができきる充放電システムが要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る充放電システムは、複数の蓄電装置を充放電する充放電システムであって、充放電エリアの上方に配設される複数のレールと、充放電回路に接続され、レールに沿って配線される複数の給電線と、レールに沿って移動可能であり、給電線と蓄電装置とを接続するコードを含む複数のケーブルとを備え、コードと給電線との間は、非接触の給電である。
【0007】
この充放電システムは、充放電エリアに配置される複数の蓄電装置の充放電を行うためのシステムである。そのために、充放電システムは、複数の蓄電装置に対応して、充放電エリアの上方に複数のレールが配設されており、各レールに沿って給電線がそれぞれ配線されており、各レールに沿って移動可能なケーブルがそれぞれ設けられている。各レールは、充放電エリア(二次元)に配置される蓄電装置の各位置に対応する充放電エリアの上方の位置と、蓄電装置に対する作業性が良い位置に対応する充放電エリアの上方の位置とを少なくとも含むように配置される。各レールの配置は、上記の条件を満たしていれば、充放電エリアの上方にどのように配置してもよい。給電線は、充放電回路に接続されており、充電時には充放電回路で発生させた直流電流が流れ、放電時には蓄電装置から放電された直流電流が流れる。したがって、給電線は、蓄電装置が放電する場合には排電用の電線となる。ケーブルは、給電線と蓄電装置との間を接続するコード(正極と負極の各コード)が含まれており、一端部にはレールに沿って移動可能な構成となっている。コードは、蓄電装置の正極端子と負極端子にそれぞれ接続するコードである。ケーブルに含まれるコードと給電線との間は、電磁誘導による非接触式であり、充電時には非接触給電を行う。したがって、放電時には非接触排電を行うことになる。
【0008】
このような構成とすることにより、充放電システムでは、コードを含むケーブルがレールに移動可能であるので、蓄電装置に対する作業(蓄電装置の各端子にコードを取り付け、蓄電装置の各端子からコードを取り外すなど)のときには、ケーブルをレールに沿って作業性の良い位置まで移動させることにより、蓄電装置に対する作業を容易できる。また、充放電システムでは、コードと給電線との間が電磁誘導による非接触式であるので、ケーブル(コード)をレール(給電線)に沿って移動させても、接触式のように摩耗粉が発生することがない。そのため、蓄電装置の正極端子と負極端子とが摩耗粉で短絡するようなことがない。また、充放電システムでは、コードと給電線との間が電磁誘導による非接触式であるので、レールにおけるケーブル(コード)の位置により(充放電回路と蓄電装置との距離が変化することにより)、接触式の場合に任意の箇所で発生する電蝕等によって接触抵抗が変化するようなことがなく、蓄電装置の充放電時の電圧等のデータの精度が低下するようなことがない。そのため、蓄電装置の充放電時のデータとして高精度なデータを得ることができる。このように、充放電システムは、複数のレールを配設して、各レールに沿って各ケーブル(コード)を移動可能とすることにより、二次元で配置される複数の蓄電装置を充放電する場合の作業性を向上させることができる。また、充放電システムは、コードと給電線との間を電磁誘導による非接触式とすることにより、摩耗粉が発生することがなく、充放電時のデータの信頼性を向上させることができる。
【0009】
一形態の充放電システムでは、給電線には、インピーダンスを測定する測定器が接続されるととともに交流電流回路が接続され、充放電回路で発生させた充電用の直流電流に交流電流回路で発生させた交流インピーダンス測定用の交流電流を重畳させ、当該重畳させた電流を給電線に流す。
【0010】
蓄電装置の活性化完了の合否判定する場合、一般に、交流インピーダンス測定を行い、蓄電装置に流した交流電流の周波数の変化に対するインピーダンスの変化の解析を行う。交流インピーダンス測定を行う場合、蓄電装置に交流電流を流し、蓄電装置のインピーダンスを測定する必要がある。そのために、給電線には、インピーダンスを測定する測定器と交流電流回路が接続されている。そして、交流電流回路で交流インピーダンス測定用の交流電流を発生させ、その交流電流を充電用の直流電流に重畳させて給電線に流し、測定器で蓄電装置から給電線を介して得られたデータにより蓄電装置のインピーダンスを測定する。上記したように、充放電システムでは、コードと給電線との間が電磁誘導による非接触式であるので、レールにおけるケーブル(コード)の位置により接触抵抗が変化するようなことがなく、蓄電装置の充放電時のデータの精度が低下するようなことがない。そのため、この充放電システムは、交流インピーダンス測定用に微細な交流電流を流して、その交流電流の周波数の変化に対するインピーダンスの変化を解析する場合に、高精度なデータを得ることができ、交流インピーダンス測定の信頼性を向上させることができる。また、この充放電システムは、充電用の直流電流に交流電流を重畳させることにより、交流インピーダンス測定用の微細な交流電流を蓄電装置に流すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二次元で配置される複数の蓄電装置を充放電する場合の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る充放電システムの実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
本実施の形態では、本発明に係る充放電システムを、出荷前の活性化工程に用いられる充放電システムに適用する。本実施の形態に係る活性化工程では、恒温槽内で複数の蓄電装置に対してそれぞれ充放電を繰り返し行い、蓄電装置の活性化が完了するとその蓄電装置に対する充放電を終了する。本実施の形態では、活性化完了の合否を判定するために、蓄電装置に微細な交流電流を流して、その交流電流の周波数の変化に対する蓄電装置のインピーダンスの変化を解析(コールコールプロットを利用)する交流インピーダンス測定によって判定する。本実施の形態に係る蓄電装置は、二次電池又は電気二重層キャパシタ等の蓄電装置である。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。本実施の形態では、蓄電装置としてリチウムイオン二次電池に適用した場合とする。
【0015】
蓄電装置は、電極組立体及び電解液等がケースに収容されている。電極組立体は、複数の正極、負極及びセパレータを備えており、シート状の正極と負極とがシート状(または袋状)のセパレータを介して積層されている。電解液は、ケース内に収容され、電極組立体内に含浸される。電解液は、例えば、有機溶媒系又は非水系の電解液である。ケースは、電極組立体及び電解液を収容するケースであり、例えば、角型である。ケースは、例えば、アルミニウムやステンレス鋼等の金属によって形成されている。ケースの上面側には、複数の正極のタブが溶接された導電部材に接続される正極端子と複数の負極のタブが溶接された導電部材に接続される負極端子が設けられている。
【0016】
正極は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された正極活物質層からなる。正極は、金属箔の端部に正極活物質層が形成されていないタブを有する。タブは、正極の上縁部に延び、導電部材を介して正極端子に接続されている。金属箔は、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔である。正極活物質層は、正極活物質、バインダを含んでいる。正極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、硫黄である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリノレ基含有樹脂などである。導電助剤は、例えば、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)である。
【0017】
負極は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された負極活物質層からなる。負極は、金属箔の端部に負極活物質層が形成されていないタブを有する。タブは、負極の上縁部に延び、導電部材を介して負極端子に接続されている。金属箔は、例えば、銅箔、銅合金箔である。負極活物質層は、負極活物質、バインダを含んでいる。負極活物質層は、導電助剤を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素である。バインダ、導電助剤は、例えば、正極で例示した同様のバインダ、導電助剤の中のものを適用できる。なお、バインダは正極での例示に加え、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、アルコキシシリル基含有樹脂なども適用できる。
【0018】
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布である。
【0019】
図1及び
図2を参照して、本実施の形態に係る充放電システム1について説明する。
図1は、本実施の形態に係る充放電システム1の構成を模式的に示す図である。
図2は、
図1のレール、給電線、ケーブル(コード)の結合箇所の拡大図である。
【0020】
充放電システム1は、恒温槽2内に複数の蓄電装置V,・・・が充放電エリア2a(二次元のエリア)に配置され、恒温槽2外の充放電装置3により複数の蓄電装置V,・・・を一度に充放電する。特に、充放電システム1は、恒温槽2における複数の蓄電装置V,・・・に対するコードの取り付け/取り外し等の作業性を向上させるために、コードを恒温槽2内で移動できるようにする。また、充放電システム1は、摩耗粉の発生の防止及び充放電の電圧データや交流インピーダンス測定用の解析データの信頼性を向上させるために、充放電装置3に接続される給電線とコードとの間を電磁誘導による非接触式の給電(排電)とする。
【0021】
なお、本実施の形態では、恒温槽2の充放電エリア2aには左右方向に2個、奥行き方向に3個の計6個の蓄電装置Vが配置される例で説明する。恒温槽2内において充放電を行う蓄電装置の個数、この各個数に応じた二次元の配置の仕方については適宜の個数や配置を適用可能である。
【0022】
恒温槽2について説明する。恒温槽2は、槽内を一定の温度に長時間維持することができ槽である。この恒温槽2の基本的な構成としては、従来の周知の恒温槽を適用する。恒温槽2は、略矩形状であり、内部が空間となっている。恒温槽2には、二次元の各位置に配置される6個の蓄電装置V・・・を載置できる十分な充放電エリア2aを有している。恒温槽2は、一面(この一面を前面とする)に扉があり、この扉を開けると槽の前面だけを開放できる。この開放された前面において蓄電装置Vの出し入れができ、充放電エリア2aの前面側においてはコードの取り付け/取り外し等の作業性を容易に行うことができる。なお、
図1では、恒温槽2の扉を図示しておらず、恒温槽2の前面が開放された状態を示している。また、
図1では、充放電エリア2aの前面側において作業中の蓄電装置Vを1個だけ示している。
【0023】
恒温槽2には、充放電エリア2aの上方の天井2bに6本のレール20(20A・・・20F)が配設されている。レール20は、
図2に示すように、コ字状の本体20aとそのコ字状の上端の左右方向に延びる部分の先端部から下方に所定量延びるガイド部20bとからなる断面形状を有している。レール20は、その本体20aの上面部分が天井2bに取り付けられている、レール20は、一端側の位置が充放電エリア2aに配置される蓄電装置Vの各位置に対応する天井2bにおける位置であり、他端側の位置が蓄電装置Vに対する作業性が良い充放電エリア2aの前面側の各位置に対応する天井2bにおける位置である。
【0024】
レール20Aは、直線状の非常に短いレールであり、一端側の位置が前面の扉の位置より少し奥側の位置かつ最も左側の位置であり、他端側の位置がその一端側の位置より少し前側(前面の扉に近い位置)の位置である。レール20Bは、L字状の中間の長さのレールであり、一端側の位置がレール20Aの一端側の位置より少し奥側の位置であり、他端側の位置がレール20Aの他端側の位置より少し右側の位置である。レール20Cは、L字状の最も長い長さのレールであり、一端側の位置がレール20Bの一端側の位置より少し奥側の位置であり、他端側の位置がレール20Bの他端側の位置より少し右側の位置である。レール20Dは、直線状の非常に短いレールであり、一端側の位置が前面の扉の位置より少し奥側の位置かつレール20Cより少し右側の位置であり、他端側の位置がその一端側の位置より少し前側の位置である。レール20Eは、L字状の中間の長さのレールであり、一端側の位置がレール20Dの一端側の位置より少し奥側の位置であり、他端側の位置がレール20Dの他端側の位置より少し右側(レール20Fの他端側の位置より少し左側)の位置である。レール20Fは、L字状の最も長い長さのレールであり、一端側の位置がレール20Eの一端側の位置より少し奥側の位置であり、他端側の位置がレール20Eの他端側の位置より少し右側(最も右側)の位置である。なお、本実施の形態では、レール20(20A・・・20F)が特許請求の範囲に記載するレールに相当する。
【0025】
したがって、レール20A,20B,20Cの一端側の各位置は、左右方向の位置が同じで奥行き方向の位置が異なる。レール20D,20E,20Fの一端側の各位置は、左右方向の位置が同じで奥行き方向の位置が異なる。レール20A・・・20Fの他端側の各位置は、奥行き方向の位置(充放電エリア2aの前面の扉に近い位置)が同じで左右方向の位置が異なる。なお、レール20B,20C,20E,20FのL字状の角部を略直角としているが、R状(弧状)としてもよい。
【0026】
恒温槽2には、レール20(20A・・・20F)に沿って給電線21,21(21A,21A・・・21F,21F)が配線されている。給電線21,21は、一対の電線であり、互いに反対方向の電流を流す(電線の往路と復路である)。給電線21は、銅線等の導電線を絶縁材料で被覆したものである。給電線21,21は、一端が充放電装置3まで配線されており、他端がレール20の他端側の位置まで配線されている。給電線21,21のレール20に沿って配線される部分は、
図2に示すように、レール20の本体20aの上下方向に延びる部分の内面に所定距離をあけて支持部材21a,21aが取り付けられており、その支持部材21a,21aの先端部に給電線21,21がそれぞれ取り付けられている。したがって、給電線21,21は、レール20の本体20aのコ字状の内側の空間部分に配置されることになる。給電線21,21のレール20から出て配線される部分は、支持部材等を介して天井2bに取り付けられる。給電線21,21には、充電時には充放電装置3からの充電用の直流電流に交流インピーダンス測定用の交流電流が重畳された電流が流れ、放電時には蓄電装置Vから放電された直流電流が流れる。したがって、給電線21は、蓄電装置Vが放電する場合には排電用の排電線になる。なお、本実施の形態では、給電線21,21(21A,21A・・・21F,21F)が特許請求の範囲に記載する給電線に相当する。
【0027】
恒温槽2には、レール20(20A・・・20F)に沿ってケーブル22(22A・・・22F)が移動可能な状態で設けられている。ケーブル22は、天井2bから下方の充放電エリア2aに配置される蓄電装置Vまで届く十分な長さを有している。ケーブル22は、絶縁材料で形成される円筒状部材の中に正極用コード23aと負極用コード23bを含んでいる。ケーブル22は、上端部にレール20に沿って移動するための可動部を備えている。この可動部は、
図2に示すように、レール20のガイド部20bを両側から挟み込むガイドローラ22aによって構成され、このガイドローラ22aが支持部材22bによってケーブル22の上端部に取り付けられている。また、ケーブル22は、上端の側部にコード23a,23bと給電線21,21との間を電磁誘導による非接触式で給排電するための給排電部を備えている。この給排電部は、
図2に示すように、断面がE字型に形成されたフェライト製のE型フェライトコア22cを有し、そのE型フェライトコア22cの中央の突出部にコイル22dが形成されることによって構成され、E型フェライトコア22cがケーブル22の上端の側部に取り付けられている。ケーブル22の上端部は、このような可動部や給排電部を取り付けることができるような強度と硬さを有する部材で形成されている。なお、本実施の形態では、ケーブル22(22A・・・22F)が特許請求の範囲に記載するケーブルに相当する。
【0028】
コード23a,23bは、蓄電装置Vと給電線21,21とを接続するコード(電線)である。コード23a,23bは、銅線等の導電線を絶縁材料で被覆したものである。正極用コード23aは、蓄電装置Vの正極端子Taに接続される。負極用コード23bは、蓄電装置Vの負極端子Tbに接続される。コード23a,23bは、一端部に各端子Ta,Tbに取り付けるためのプラグ(図示せず)が設けられている。コード23a、23bの他端部は、E型フェライトコア22cに接続されている。このコード23a,23bの他端部と給電線21,21との間は、電磁誘導による非接触式であり、充電時には非接触給電を行い、放電時には非接触排電を行う。なお、本実施の形態では、コード23a,23bが特許請求の範囲に記載するコードに相当する。
【0029】
この非接触式の給電は、
図2に示すように、E型フェライトコア22cがその2つの溝の部分(フェライトコア空間部)に給電線21,21をそれぞれ一本ずつ収納しており、給電線21,21を流れる電流をコイル22dで受ける構造になっている。そして、電磁誘導現象を利用し、その磁束によってコイル22dに電流が発生し、その電流がE型フェライトコア22cを介してコード23a,23bに流れる。このようにして、非接触での給電ができる。非接触式の排電も、同様に、電磁誘導現象を利用する。
【0030】
充放電装置3について説明する。充放電装置3は、恒温槽2内の複数の蓄電装置V・・・を一度に充放電し、この充放電を蓄電装置V・・・が活性化するまで繰り返し行う。そのために、充放電装置3は、充放電回路30、交流電流回路31、重畳回路32、電圧測定器33、インピーダンス測定器34、制御部35を備えている。充放電回路30、交流電流回路31、重畳回路32、電圧測定器33、インピーダンス測定器34については、蓄電装置V毎に備えられる。なお、本実施の形態では、充放電回路30が特許請求の範囲に記載する充放電回路に相当し、インピーダンス測定器34が特許請求の範囲に記載する測定器に相当する。
【0031】
充放電回路30は、蓄電装置Vに対する充電用の直流電流を発生するとともに蓄電装置Vから排電された電流を受電する回路である。充電用の直流電流を発生させる場合、充放電回路30では、最初に定電流充電を行うために一定の直流電流を発生させ、蓄電装置Vの電圧値が予め設定された所定の電圧値になると定電圧充電を行うための直流電流(徐々に小さくなる直流電流)を発生させる。この際、蓄電装置Vの電圧値は、電圧測定器33で測定される電圧値が利用される。充放電回路30は、従来の周知の回路が適用される。充放電回路30は、給電線21,21(21A,21A・・・21F,21F)に接続されるとともに、重畳回路32に接続される。
【0032】
交流電流回路31は、蓄電装置Vに対する交流インピーダンス測定用の交流電流を発生し、その交流電流の周波数を変化させることが可能な回路である。交流インピーダンス測定を行う場合、交流電流回路31では、充放電回路30で発生させる充電用の直流電流に比べて微細な交流電流を発生させ、その交流電流の周波数を所定の低周波数から所定の高周波数になるまで漸増させる。交流電流回路31は、従来の周知の回路が適用される。交流電流回路31は、重畳回路32に接続される。
【0033】
重畳回路32は、充放電回路30で発生した充電用の直流電流に交流電流回路31で発生した交流インピーダンス測定用の交流電流を重畳させる回路である。重畳回路32は、従来の周知の回路が適用される。重畳回路32は、給電線21,21(21A,21A・・・21F,21F)に接続される。
【0034】
電圧測定器33は、蓄電装置Vの電圧を測定する測定器である。電圧測定器33は、従来の周知の測定器が適用される。電圧測定器33は、給電線21,21(21A,21A・・・21F,21F)に接続される。
【0035】
インピーダンス測定器34は、蓄電装置Vのインピーダンスを測定する測定器である。インピーダンス測定器34は、従来の周知の測定器が適用される。インピーダンス測定器34は、給電線21,21(21A,21A・・・21F,21F)に接続される。
【0036】
制御部35は、充放電装置3の制御部であり、各測定器33,34で測定したデータに基づいて各回路30,31,32を動作させる。蓄電装置Vを充電する場合、制御部35では、充放電回路30に充電用の直流電流を発生させるための動作をさせ、交流電流回路31に交流インピーダンス測定用の交流電流を発生させるための動作をさせ、重畳回路32に充電用の直流電流に交流インピーダンス測定用の交流電流を重畳させるための動作をさせる。この際、制御部35では、電圧測定器33で測定されている蓄電装置Vの電圧値が所定の電圧値になったか否かを判定し、所定の電圧値になる前は充放電回路30に定電流充電用の直流電流を発生させるための動作をさせ、所定の電圧値になった後は充放電回路30に定電圧充電用の直流電流を発生させるための動作をさせる。蓄電装置Vが放電する場合、制御部35では、充放電回路30に受電するための動作をさせる。活性化の合否判定を行う場合、制御部35では、充電中に、交流電流回路31で発生させている交流電流の周波数の変化に対するインピーダンス測定器34で測定した蓄電装置Vのインピーダンスの変化を解析する(コールコールプロットを利用)。この際、制御部35では、コールコールプロットにおいて周波数の変化に対してインピーダンスの変化が弧状にプロットされる部分から蓄電装置Vの反応抵抗(拡散抵抗)の状態を観測し、弧状にプロットされる部分(反応抵抗)が予め設定されている閾値よりも小さくなるとその蓄電装置Vでの活性化が完了したと判定し、その蓄電装置Vに対する充放電を終了する。
【0037】
図1及び
図2を参照して、活性化工程において6個の蓄電装置Vの充放電を行う際の充放電システム1での動作について説明する。作業者は、恒温槽2の扉を開け、恒温槽2の前面を開放する。そして、作業者は、蓄電装置V毎に、恒温槽2の前面周辺でケーブル22(22A・・・22F)の各コード23a,23bを蓄電装置Vの各端子Ta,Tbに取り付け、その後に、蓄電装置Vを充放電エリア2aの所定の配置位置に置く。例えば、ケーブル22Cのコード23a,23bに接続される最も奥に配置される蓄電装置Vの場合、作業者は、蓄電装置Vを恒温槽2の充放電エリア2aの前面周辺の位置に一旦置く。そして、作業者は、ケーブル22Cをレール20Cに沿って恒温槽2の前面周辺まで移動させる。そして、作業者は、恒温槽2の前面周辺でケーブル22Cの各コード23a,23bを蓄電装置Vの各端子Ta,Tbに取り付ける(
図1の状態を参照)。そして、作業者は、その蓄電装置Vを持って奥の配置位置まで移動させ、その位置に蓄電装置Vを置く。この際、ケーブル22Cも、レール20Cに沿って奥の配置位置に対応する位置まで移動させる。このように、作業者は、奥側に配置される蓄電装置Vに対しても、作業し易い恒温槽2の前面周辺において作業を行うことができる。また、ケーブル22をレール20に沿って移動させる際に、コード23a,23bと給電線21,21との間が非接触式なので、移動中にコード23a,23bと給電線21,21とが接触することはなく、接触による摩耗粉が発生するようなことはない。そのため、蓄電装置Vの正極端子Taと負極端子Tbとの間にそのような摩耗粉が堆積して、短絡するようなことがない。
【0038】
全ての蓄電装置Vに対する各コード23a,23bの取り付けが完了し、充放電エリア2aの決められた各配置位置にそれぞれ置かれると、作業者は、恒温槽2の扉を閉める。そして、作業者の操作に応じて、恒温槽2内が所定の温度に維持され、充放電装置3によって恒温槽2内の全ての蓄電装置Vに対して活性化が完了するまで充放電が繰り返し行われる。この活性化が完了するまで充放電を繰り返す動作については従来と同様の動作なので、詳細な説明を省略する。但し、コード23a,23bと給電線21,21との間の給排電は、E型フェライトコア22cのフェライトコア空間部に配置される給電線21,21を流れる電流をコイル22dで受ける構造によって、電磁誘導による非接触式で行われる。そのため、接触式のように、任意の箇所で発生する電蝕によって接触抵抗が不均一になるようなことがない。そのため、蓄電装置Vと充放電装置3の充放電回路30との距離(給電線21、コード23a,23bを介した距離)が変化しても、蓄電装置Vの電圧やインピーダンス等のデータを高精度に得ることができる。
【0039】
全ての蓄電装置Vに対して活性化が完了し、充放電が終了すると、作業者は、恒温槽内の扉を開け、恒温槽2の前面を開放する。そして、作業者は、蓄電装置V毎に、蓄電装置Vを充放電エリア2aの所定の配置位置から恒温槽2の前面周辺に移動させ、ケーブル22(22A,22B,22C,22D,22E,22F)の各コード23a,23bを蓄電装置Vの各端子Ta,Tbから取り外し、その蓄電装置Vを恒温槽2から出す。例えば、ケーブル22Cのコード23a,23bに接続される最も奥の配置位置の蓄電装置Vの場合、作業者は、奥に置かれている蓄電装置Vを持って、恒温槽2の充放電エリア2aの前面周辺の位置まで移動させる。この際、ケーブル22Cもレール20Cに沿って前面周辺の対応する位置まで移動させる。作業者は、恒温槽2の前面周辺でケーブル22Cの各コード23a,23bを蓄電装置Vの各端子Ta,Tbから取は外す。そして、作業者は、その蓄電装置Vを持って、恒温槽2の外に出す。
【0040】
この充放電システム1によれば、恒温槽2の天井2bに複数のレール20を配設して、各レール20に沿って各ケーブル22(各コード23a,23b)を移動可能とすることにより、恒温槽2内の充放電エリア2aに二次元で配置される複数の蓄電装置Vを充放電する場合の作業性を向上させることができる。特に、各レール20を恒温槽2の前面周辺まで配設しているので、蓄電装置Vに対する作業を充放電エリア2aの前面周辺で行うことができ、蓄電装置Vに対する作業が容易である。
【0041】
また、充放電システム1によれば、コード23a,23bと給電線21,21との間で電磁誘導による非接触式の給排電を行うので、ケーブル22(コード23a,23b)をレール20(給電線21,21)に沿って移動させても、接触式にように摩耗粉が発生することがない。そのため、蓄電装置Vの正極端子Taと負極端子Tbとの間に摩耗粉が堆積して、短絡するようなことがない。また、充放電システム1によれば、コード23,23bと給電線21,21との間で非接触式の給排電を行うので、レール20におけるケーブル22(コード23a,23b)の位置により充放電回路30と蓄電装置Vとの距離(給電線21,21とコード23a,23bを介した距離)が変化しても、接触式による任意の箇所で発生する電蝕等によって接触抵抗が変化するようなことがなく、蓄電装置Vの充放電時の電圧等のデータの精度が低下するようなことがない。そのため、蓄電装置Vの充放電時のデータの信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、充放電システム1によれば、充電用の直流電流に交流電流を重畳させることにより、交流インピーダンス測定用の微細な交流電流を蓄電装置に流すことができる。また、充放電システム1によれば、上記したように蓄電装置Vの充放電時のデータとして高精度なデータを得ることができるので、交流インピーダンス測定用に微細な交流電流を流して、その交流電流の周波数の変化に対するインピーダンスの変化を解析する場合に、高精度なインピーダンスのデータを得ることができ、交流インピーダンス測定の信頼性を向上させることができる。
【0043】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0044】
例えば、本実施の形態では充放電システムを出荷前の電池の活性化工程で適用したが、エージング等の他の充放電を行う工程に適用してもよい。活性化工程では交流インピーダンス測定を行うために交流電流回路、重畳回路、インピーダンス測定器を備え、充電用の直流電流に交流インピーダンス測定用の交流電流を重畳させる構成としたが、交流インピーダンス測定を行わない場合にはこのような構成にする必要はない。
【0045】
また、本実施の形態ではケーブルをレールに沿って移動させる可動部を人手で移動させる構成の可動部としたが、モータ等を利用した電動で移動させる構成の可動部としてもよい。
【0046】
また、本実施の形態ではコードと給電線との間の電磁誘導による非接触式の給排電の構成の一例を示したが、コードと給電線との間の非接触式で給電(排電)して電流を授受できればどのような構成でもよい。
【0047】
また、本実施の形態では直線状とL字状の形状のレール20(20A・・・20F)の一例を示したが、レールの形状としては他の形状でもよい。例えば、
図3にレールの他の例を示している。
図3(a)に示す例の場合、径が異なる周状の5本のレール40(40A,40B,40C,40D,40E)である。このレール40の場合、周状のレールにおける恒温槽2の前面側の部分では蓄電装置に対する作業性が良く、周状のレールにおける恒温槽2の奥側の部分にも蓄電装置を配置できる。このような周状のレール40の場合、1本のレールに複数(例えば、2本)のケーブル(コード)を設けるようにしてもよい。また、
図3(b)に示す例の場合、長さが異なる斜め状の6本のレール50(50A,50B,50C,50D,50E,50F)である。このレール50の場合、斜め状のレールにおける恒温槽2の前面側の部分では蓄電装置に対する作業性が良く、斜め状のレールにおける恒温槽2の奥側の部分に蓄電装置を配置できる。なお、本実施の形態に係る最も短いレール20A,20Dについては無くてもよく(ケーブル22A,22Dの可動部も無し)、ケーブル22A,22Dについては天井に取り付けるようにしてもよい。