特許第6191519号(P6191519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191519
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】取引システム及び取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20170828BHJP
   G06F 3/048 20130101ALI20170828BHJP
   G06Q 20/18 20120101ALI20170828BHJP
【FI】
   G07D9/00 421
   G07D9/00 426Z
   G06F3/048
   G06Q20/18
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-58453(P2014-58453)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-184762(P2015-184762A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 悠介
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−250950(JP,A)
【文献】 特開2013−110514(JP,A)
【文献】 特開2012−174208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G06F 3/048
G06Q 20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者と取引を行う取引装置と、撮像手段と上記撮像手段により取得した画像を表示する表示部を備えた端末装置とを有する取引システムにおいて、
上記取引装置は、上記操作者の操作を受付けるとともに、取引に関する情報を表示する操作画面を提示するものであって、少なくとも上記操作画面上で操作を受付け可能なオブジェクトに、上記端末装置に表示するコンテンツを識別するためのタグデータが符号化された符号化画像を付することが可能な操作画面提示手段を備え、
上記端末装置は、
コンテンツのデータを保持するコンテンツ保持手段と、
上記撮像手段が撮像した画像を解析して前記符号化画像が検出された場合、当該符号化画像に対応するコンテンツのデータを上記コンテンツ保持手段が保持したデータから取得し、上記撮像手段が撮像した画像に取得したコンテンツの画像を重ね合わせた合成画像を上記表示部に表示させる画像処理手段を備える
ことを特徴とする取引システム。
【請求項2】
上記操作画面提示手段は、それぞれ異なる数字が割り当てられた複数の操作キーを配置し、1又は複数桁の数字入力を受付ける数字入力画面を提示し、
上記数字入力画面を構成するそれぞれの操作キーには、当該操作キーの数字を示すコンテンツのタグデータを符号化した符号化画像が付されている
ことを特徴とする請求項1に記載の取引システム。
【請求項3】
上記数字入力画面には、上記操作キーにより入力済の数字を示すコンテンツのタグデータを符号化した符号化画像が表示されていることを特徴とする請求項2に記載の取引システム。
【請求項4】
上記操作画面提示手段が提示する操作画面に、提示中の操作画面に係る情報を拡大表示するコンテンツのタグデータを符号化した符号化画像が表示されていることを特徴とする請求項1に記載の取引システム。
【請求項5】
上記端末装置にコンテンツのデータを提供するものであって、同じタグデータに対応する複数のコンテンツから、上記端末装置の種別に応じて選択したコンテンツを上記端末装置に提供するコンテンツ提供装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の取引システム。
【請求項6】
上記取引装置に操作画面のデータを提供する操作画面データ提供手段と、上記操作画面提手段により提する操作画面に表示される符号化画像を外部装置の制御に応じて差し替える符号化画像変更受付手段とを備える操作画面提供装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の取引システム。
【請求項7】
操作者の操作を受付けるとともに、取引に関する情報を表示する操作画面を提示するものであって、上記操作画面上で操作を受付け可能なオブジェクトに、上記操作者が所持する端末装置に表示するコンテンツを識別するためのタグデータが符号化された符号化画像を付することが可能な操作画面提示手段を有することを特徴とする取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取引システム及び取引装置に関し、例えば、ATM(Automated Teller Machine)を備える取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からAugmented Reality(以下、AR)を用いた技術は、各産業の様々な技術に活用されてきた。ARとは、現実の風景にデジタル合成等の情報を重ね合わせる技術のことである。
【0003】
AR技術を用いたシステムでは、重ね合わせる先となる現実風景の特定方法が2つ存在する。第1の方法はGPS等を利用した位置情報による特定方法であり、第2の方法はカメラによる画像解析を用いた特定方法である。さらにカメラによる画像解析の中でも、コンピュータが認識可能な「マーカー」と呼ばれる2次元データを目印に情報を付加する方法と、実際の物体や図形等を画像認識して情報を付加する方法が存在する。
【0004】
そして、従来、ATM等の取引装置においてもARを利用した暗証番号のセキュリティ技術も存在する。現実風景の特定方法として位置情報を利用する。位置情報を元に、重ねあわせる先となるATMを特定する。暗証番号入力画面であっても、ATMの顧客操作画面上に暗証番号入力ボタンは表示されない。表示の代わりに、ATM利用者が取り付けているヘッドマウントディスプレイを通して仮想的なボタンが重ねあわせて表示される。利用者は重ねあわせられた映像を利用してATMの顧客操作画面にタッチして入力を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−174208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の記載技術では、実際のATM画面には何の表示もないため、操作者から見ると正しいキーが押されているかの判断ができないため、操作間違い(押下するキーの間違い)が発生しやすいという問題がある。ATMでは暗証番号で一定回数誤操作をする取引が停止してしまったり、金額入力を誤操作してしまう等、操作間違いに伴う顧客の影響が大きい。
【0007】
そのため、拡張現実を表示する端末装置を用いて顧客の取引に係る操作を支援することができる取引システム及び取引装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、操作者と取引を行う取引装置と、撮像手段と上記撮像手段により取得した画像を表示する表示部を備えた端末装置とを有する取引システムにおいて、(1)上記取引装置は、上記操作者の操作を受付けるとともに、取引に関する情報を表示する操作画面を提示するものであって、少なくとも上記操作画面上で操作を受付け可能なオブジェクトに、上記端末装置に表示するコンテンツを識別するためのタグデータが符号化された符号化画像を付することが可能な操作画面提示手段を備え、(2)上記端末装置は、(2−1)コンテンツのデータを保持するコンテンツ保持手段と、(2−2)上記撮像手段が撮像した画像を解析して前記符号化画像が検出された場合、当該符号化画像に対応するコンテンツのデータを上記コンテンツ保持手段が保持したデータから取得し、上記撮像手段が撮像した画像に取得したコンテンツの画像を重ね合わせた合成画像を上記表示部に表示させる画像処理手段を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明の取引装置は、操作者の操作を受付けるとともに、取引に関する情報を表示する操作画面を提示するものであって、上記操作画面上で操作を受付け可能なオブジェクトに、上記操作者が所持する端末装置に表示するコンテンツを識別するためのタグデータが符号化された符号化画像を付することが可能な操作画面提示手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拡張現実を表示する端末装置を用いて顧客の取引に係る操作を支援することができる取引システム及び取引装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係るWebATMシステムの全体構成について示したブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るWebAPサーバの内部構成について示したブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る顧客情報データベースサーバの内部構成について示したブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る顧客情報データベースサーバに記憶されるデータ構成の例について示した説明図である。
図5】第1の実施形態に係るスマートフォン端末の構成例について示したブロック図である。
図6】第1の実施形態に係るスマートフォン端末の外観について示す平面図、及び底面図である。
図7】第1の実施形態に係るARコンテンツダウンロードサーバの構成例について示したブロック図である。
図8】第1の実施形態に係るWebATMシステムの動作について示したシーケンス図である。
図9】第1の実施形態のATMで表示される画面の構成例について示した説明図である。
図10】第1の実施形態のスマートフォン端末で表示されるARコンテンツの例について示した説明図である。
図11】第1の実施形態のスマートフォン端末で表示される合成画像の例について示した説明図である。
図12】第2の実施形態に係るWebAPサーバの構成例について示したブロック図である。
図13】第2の実施形態のATMで表示される画面の構成例について示した説明図である。
図14】第2の実施形態のスマートフォン端末で表示される合成画像の例について示した説明図(その1)である。
図15】第2の実施形態のスマートフォン端末で表示される合成画像の例について示した説明図(その2)である。
図16】第3の実施形態に係るWebATMシステムの全体構成について示したブロック図である。
図17】第3の実施形態に係るATMで表示される画面の構成例、及び、スマートフォン端末で表示される合成画像の構成例について示した説明図(その1)である。
図18】第3の実施形態に係るATMで表示される画面の構成例、及び、スマートフォン端末で表示される合成画像の構成例について示した説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による取引システム及び取引装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、本発明の取引システム及び取引装置を、WebATMシステム及びATMに適用した例について説明する。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、この実施形態のWebATMシステム1の全体構成について示した説明図である。
【0014】
まず、WebATMシステム1の全体概要について説明する。
【0015】
WebATMシステム1は、ATM10、端末装置としてのスマートフォン端末20、顧客情報データベースサーバ30、コンテンツ提供装置としてのARコンテンツダウンロードサーバ40、勘定系ホスト50、及び操作画面提供装置としてのWebAPサーバ60を有している。
【0016】
WebATMシステム1は、WebAPサーバ60を中心とし、ATM10をシンクライアント化したATMシステムである。WebATMシステム1の根幹は、ATM10とWebAPサーバ60と勘定系ホスト50で構成される。
【0017】
WebATMシステム1において、ATM10で提供される取引用のアプリケーション(取引用の操作画面のコンテンツ)については、WebAPサーバ60に格納される。なお、WebATMシステム1に格納されるコンテンツには、ARマーカーが付されたページ(操作画面)が存在する。また、WebATMシステム1において、取引情報は、勘定系ホスト50からWebAPサーバ60を介してATM10に提供される。
【0018】
さらに、WebATMシステム1において、ARコンテンツは、ARコンテンツダウンロードサーバ40に格納され、通信によりスマートフォン端末20に提供される。
【0019】
ARマーカー上に重ね合わせるコンテンツのデータは、ARコンテンツダウンロードサーバ40に格納される。ARコンテンツダウンロードサーバ40は、顧客の情報を管理する顧客情報データベースサーバ30と接続している。
【0020】
第1の実施形態では、ARマーカー上に重ね合わせる(付する)コンテンツ(以下、「ARコンテンツ」と呼ぶ)はWebAPサーバ60に格納され、ARコンテンツダウンロードサーバ40を介してスマートフォン端末20へダウンロードされる。ARコンテンツをARコンテンツダウンロードサーバ40へ格納する際、ネツトワーク経由でなくても媒体等を介してオフラインで格納しても良い。そして、スマートフォン端末20は、ATM10の顧客操作画面上のARマーカーを目印にしてARコンテンツの画像を重ね合わせて表示することができる。
【0021】
次に、WebATMシステム1を構成する各装置の内部構成の例について説明する。
【0022】
まず、ATM10の内部構成について説明する。
【0023】
ATM10は、装置全体を制御する制御部11、タッチパネルディスプレイを用いて構成された操作画面提示手段としての顧客操作画面12、挿入された通帳の処理(例えば通帳の記帳等)を行う通帳ユニット13、挿入されたカードの処理(例えば、データ読み取り等)を行うカードユニット14、現金の入出金を行う現金処理部15を有している。また、ATM10の近傍には、コールセンターのオペレータと通話可能な電話機80も配置されているものとする。
【0024】
制御部11は、CPUやメモリ等を含むコンピュータに、実施形態の取引プログラムをインストールすることにより構築することができる。制御部11には、少なくとも、装置内の各構成要素を制御するためのメイン制御プログラム111と、Webブラウザ112を有している。Webブラウザ112は、通信によりWebAPサーバ60にアクセスして、取引の操作画面に係るWebコンテンツを取得して、その操作画面を顧客操作画面12に表示して顧客に提供する処理を行う。すなわち、ATM10は、アプリケーションとしてWebブラウザ112のみを備えるシンクライアントとして動作する構成となっている。
【0025】
次に、WebAPサーバ60の内部構成について、図2を用いて説明する。
【0026】
WebAPサーバ60は、ATM10にWebページ(取引処理に係る操作画面)を提供する操作画面データ提供手段としてのWebサーバプロセス61と、勘定系ホスト50と接続して取引処理に伴う情報処理(トランザクション)を協働して実行するホスト側インタフェース62、及びWebコンテンツ(取引処理に係る操作画面)及びARコンテンツのデータを記憶するためのコンテンツ記憶部63を備えている。
【0027】
コンテンツ記憶部63には、ATM10に供給するためのWebページであるATM表示用コンテンツ64と、ARコンテンツダウンロードサーバ40を経由してスマートフォン端末20に供給するためのARコンテンツデータ65が記憶されている。ARコンテンツデータ65には、ARマーカー(タグデータを符号化した内容を含む符号化画像)を復号して得られるタグデータごとに対応するARコンテンツ(画像データ、テキストデータ等のコンテンツ)のデータが含まれているものとする。
【0028】
次に、図3を用いて顧客情報データベースサーバ30の内部構成について説明する。
【0029】
顧客情報データベースサーバ30は、顧客データを管理・記憶するための顧客情報データベース記憶部32と、データベースクライアントとしてのARコンテンツダウンロードサーバ40に対して顧客情報データベース記憶部32のデータを提供するためのデータベースサーバプロセス31を有している。
【0030】
顧客情報データベース記憶部32には、ATM10及びスマートフォン端末20を利用する顧客の情報を管理するためのデータが記憶されている。この実施形態では、顧客情報データベース記憶部32に記憶する情報は、図4のような内容であるものとする。
【0031】
図4に示すように、顧客情報データベース記憶部32には、顧客ごとに顧客氏名、各顧客のスマートフォン端末20(アプリケーションのログインに用いる顧客ID)を特定するための顧客IDを含む情報が記憶されているものとする。
【0032】
次に、図5を用いて、スマートフォン端末20の内部構成について説明する。
【0033】
スマートフォン端末20は、制御部21、タッチパネルディスプレイ22、カメラ23、及び無線通信を行うネットワークインタフェースとしての通信部24を有している。
【0034】
制御部21は、種々のデータ処理及び各デバイスの制御を行うものである。制御部21は、CPUやメモリ等により構成されるコンピュータに種々の制御プログラムをインストールすることにより構成されている。この実施形態には、制御部21を構成するコンピュータに、少なくともARコンテンツを処理するためのARアプリケーション211がインストールされているものとする。
【0035】
コンテンツ保持手段及び画像処理手段としてのARアプリケーション211は、カメラ23により撮像された画像(以下、「カメラ撮像画像」と呼ぶ)をタッチパネルディスプレイ22に表示すると共に、撮像した画像を解析してARマーカーの有無を確認する。そして、ARアプリケーション211は、ARマーカーを検出した場合、当該ARマーカーに対応するARコンテンツをARコンテンツダウンロードサーバ40経由で取得し、取得したARコンテンツに基づく画像(以下、「ARコンテンツ画像」と呼ぶ)と、カメラ撮像画像とを重ね合わせる合成を行った画像(以下、「合成画像」と呼ぶ)を、タッチパネルディスプレイ22に表示させる処理を行う。なお、ARアプリケーション211が行うARマーカーの検出処理や、ARコンテンツ(ARコンテンツ画像)の取得処理及び合成処理については種々のAR技術のアプリケーションを適用することができる。
【0036】
なお、ARアプリケーション211は、予め、ARコンテンツダウンロードサーバ40から必要なARコンテンツのデータをダウンロードしてキャッシュしておくようにしてもよいし、必要の都度(ARマーカーを検出する都度)取得するようにしてもよい。
【0037】
また、板形状のスマートフォン端末20の一方の面にはタッチパネルディスプレイ22が配置され(図6(a)参照)、他方の面(背面)には、カメラ23が配置されている(図6(b)参照)。これにより、顧客は、ARマーカーを含む部分をカメラ23で撮像しながら(スマートフォン端末20をかざしながら)、タッチパネルディスプレイ22の合成画像を見ることができる。
【0038】
次に、ARコンテンツダウンロードサーバ40の内部構成について、図7を用いて説明する。
【0039】
ARコンテンツダウンロードサーバ40は、クライアントとして動作するスマートフォン端末20に、ARコンテンツを提供するアプリケーションサーバプロセス41を有している。ARコンテンツダウンロードサーバ40(アプリケーションサーバプロセス41)は、スマートフォン端末20からのログイン(顧客情報データベースサーバ30で管理される顧客IDを用いたログイン)を受付けて認証を受付け、接続を受付けるスマートフォン端末20を管理する。そして、アプリケーションサーバプロセス41は、ログイン中のスマートフォン端末20からの要求(タグデータ)に応じたARコンテンツを、WebAPサーバ60から取得して提供する処理を行う。ここでは、アプリケーションサーバプロセス41は、ARマーカーを復号したタグデータを取得し、取得したタグデータに対応するARコンテンツを、WebAPサーバ60に要求して取得し、スマートフォン端末20に返す処理を行う。
【0040】
なお、ARコンテンツダウンロードサーバ40は、予め、WebAPサーバ60から全てのARコンテンツ(コンテンツ記憶部63に格納されたARコンテンツデータ65)をダウンロードしてキャッシュしておくようにしてもよいし、必要の都度(ARコンテンツデータ65からの要求の都度)ダウンロードするようにしてもよい。また、この実施形態では、ARコンテンツのマスターデータはWebAPサーバ60に格納する構成としているが、ARコンテンツのマスターデータの格納位置は限定されないものであり、ARコンテンツダウンロードサーバ40に格納するようにしてもよいし、各スマートフォン端末20にだけ格納(ARアプリケーション211と共に格納)するようにしてもよい。
【0041】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態のWebATMシステム1の動作を説明する。
【0042】
まず、図8のシーケンス図を用いて、WebATMシステム1においてARコンテンツを用いた取引支援の基本的な動作について説明する。
【0043】
まず、顧客により、スマートフォン端末20においてARアプリケーション211が立ち上げられ(S101)、ARコンテンツダウンロードサーバ40にログイン要求を行ったものとする(S102)。
【0044】
そして、ARコンテンツダウンロードサーバ40は、スマートフォン端末20からのログイン要求に基づいて、顧客情報データベースサーバ30の顧客データと照合する処理等により認証を行い、ここでは認証が成功したものとする(S103)。
【0045】
なお、ARコンテンツダウンロードサーバ40における認証方式については限定されないものである。また、ARコンテンツダウンロードサーバ40において、ログイン受付に際して、セキュリティ上の問題がなければ、認証処理を省略するようにしてもよい。また、ARコンテンツダウンロードサーバ40は、ログイン処理を行わずに、スマートフォン端末20からARコンテンツの要求を受付けるようにしてもよい。
【0046】
そして、当該顧客(スマートフォン端末20を所有する顧客)の操作に従ってATM10で取引処理が開始したものとする(S104)。なお、スマートフォン端末20によるログインの処理(ステップS101〜S103)については、ATM10における取引処理開始後であってもよい。
【0047】
その後、ATM10では、顧客との取引処理の過程で、顧客操作画面12に表示する操作画面が遷移し、ARマーカーを含む操作画面が表示されたものとする(S105)。
【0048】
そして、顧客の操作によりスマートフォン端末20(カメラ23)で、顧客操作画面12が撮像され、スマートフォン端末20(ARアプリケーション211)でARマーカーが検出されたものとする(S106)。
【0049】
ARマーカーを検出すると、スマートフォン端末20(ARアプリケーション211)は、そのARマーカーを画像解析してタグデータを抽出し、当該タグデータを付してARコンテンツのデータ要求を、ARコンテンツダウンロードサーバ40に送信する(S107)。
【0050】
ARコンテンツのデータ要求を受信すると、ARコンテンツダウンロードサーバ40は、WebAPサーバ60から、タグデータに対応するARコンテンツを取得して(S108)、スマートフォン端末20に送信する(S109)。
【0051】
ARコンテンツを取得すると、スマートフォン端末20(ARアプリケーション211)は、そのARコンテンツの画像と、カメラ撮像画像を合成した画像を、顧客操作画面12に表示する処理を開始する(S110)。
【0052】
次に、顧客に対してATM10を用いた取引(操作)を支援する具体的動作について説明する。
【0053】
図9は、ATM10で暗証番号の入力を受付ける際に顧客操作画面12に表示する操作画面について示している。
【0054】
図10は、ATM10で暗証番号の入力を受付ける際にスマートフォン端末20のタッチパネルディスプレイ22に表示されるARコンテンツの画像について示した説明図である。本来スマートフォン端末2では、ARコンテンツ画像とカメラ撮像画像とを合成した合成画像が表示されるが、図10では説明を簡易とするためにARコンテンツの画像のみを抽出して図示している。
【0055】
図11は、ATM10で暗証番号の入力を受付ける際にスマートフォン端末20のタッチパネルディスプレイ22に表示される合成画像について図示している。すなわち、図11では、図9の操作画面を撮像したカメラ撮像画像と、図10のARコンテンツ画像を合成した合成画像がスマートフォン端末20で表示される状態について示している。
【0056】
ATM10(顧客操作画面12)で表示される暗証番号入力の操作画面(数字入力画面)には、図9に示すように、0〜9の10個の数字に対応する10個のオブジェクト(操作可能なオブジェクト)としてのボタンB100〜B109と、入力した桁数を表示するフィールドF101〜F104が配置されている。
【0057】
図9に示すように、ボタンB100〜B109には、それぞれにARマーカーとして機能する画像が表示されている。図9に示すように、ボタンB100〜B109に付されたARマーカーの画像は、顧客の目から見た見掛け上は、7セグメントディスプレイの形式で、A〜Jの記号が表示されているように見える構成となっているものとする。
【0058】
したがって、ATM10(顧客操作画面12)の操作画面上では、どのボタンがどの数字に対応するのか表示されてないため、顧客は、スマートフォン端末20(タッチパネルディスプレイ22)にARコンテンツを表示して、それぞれのボタンに対応する数字を把握する必要がある。
【0059】
フィールドF101〜F104には、顧客が暗証番号を1桁入力する毎に(1つのボタンを押下する毎に)、フィールドF101〜F104の順序で暗証番号を入力したことを示す「*」の記号を表示するものとする。そして、ここでは、「*」が表示されたフィールドには、ARマーカーとして機能する画像が表示されるものとする。
【0060】
本実施例の場合では、まず顧客は暗証番号の1文字目として「1」を入力するため、スマートフォン端末20のタッチパネルディスプレイ22に表示されたARコンテンツを参照する。顧客はスマートフォン端末20のタッチパネルディスプレイ22に表示された「1」と対応するボタンが、ATM10(顧客操作画面12)の操作画面上では「A」のボタンであることを認識して、「A」のボタンを押下する。その結果、ATM10では「A」のボタンと対応する数字「1」が入力されたと判断し、F101に「A」のボタンと同様のタグデータを符号化したARマーカーの画像を表示する。このようにして、顧客はスマートフォン端末20のタッチパネルディスプレイ22に表示されたARコンテンツを参照しながらATM10の顧客操作画面12に表示されたARマーカーを含むボタンを押下することで、参照番号を入力していく。
【0061】
すなわち、顧客は、ATM10(顧客操作画面12)の操作画面上では、各フィールドに入力された数字は認識できないが、スマートフォン端末20(タッチパネルディスプレイ22)にARコンテンツを表示して、それぞれのフィールドに対応する数字を把握することができる。
【0062】
以上のように、スマートフォン端末20のカメラ23で、図9に示すATM10(顧客操作画面12)に操作画面が撮像されると、タッチパネルディスプレイ22に表示されるARコンテンツは、例えば図10のようになる。また、このとき、タッチパネルディスプレイ22に表示される合成画像は、図11のようになる。
【0063】
図10図11に示すように、タッチパネルディスプレイ22では、ATM10側のボタンB100〜B109に重なる位置に、ARコンテンツの画像G100〜G109が表示される。また、図10図11に示すように、タッチパネルディスプレイ22では、ATM10側のフィールドF101〜F104に重なる位置に、入力された数字(番号)を表示するためのフィールドF201〜F204が表示されている。なお、図9では2桁のみ暗証番号が入力された状態を示しているので、図10図11でも2ケタ分の番号のみ番号が表示された状態となっている。
【0064】
ATM10(顧客操作画面12)で表示するボタンB100〜B109については、どのボタンがどの数字に対応するかはランダムとしてもよいが、各ボタンに表示する画像は、当該ボタンに対応する数字に対応するARマーカーである必要がある。例えば、図9において7セグメントディスプレイの形式でAという画像が付されたボタンB101は、「1」という番号を入力可能なボタンであるため、ボタンB101に付された画像には「1」に対応するARコンテンツのタグデータをARマーカーとする必要がある。これにより、スマートフォン端末20(ARアプリケーション211)では、撮像したARマーカーに対応するARコンテンツ(各ボタンの画像データ)を取得して、タッチパネルディスプレイ22に表示することができる。
【0065】
以上のように、WebATMシステム1では、ATM10側には暗証番号のキーや入力内容を表示せずに、ARコンテンツとしてスマートフォン端末20側に表示することができる。すなわち、スマートフォン端末20では、ARマーカーに重ねあわせて、暗証番号の仮想的な画像を表示することで、顧客に、ARマーカー(ARタグ)をボタンとして押下させることができる。
【0066】
なお、スマートフォン端末20(ARアプリケーション211)は、最初に図11のように、ARコンテンツを表示した状態となったときに、所定時間又は画面がタッチされるまでの間、表示する合成画像を静止した状態とするようにしてもよい。これにより、顧客は、スマートフォン端末20をATM10かざしたまま暗証番号を入力するという態勢を続ける必要がなくなるので、顧客の利便性が高くなる。
【0067】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0068】
(A−3−1)ATM10の顧客操作画面12では、暗証番号入力(数字入力)を受付ける際に、ATM10側の操作ボタンにはARマーカーのみを付して表示し、各操作ボタンに対応する数字はスマートフォン端末20側にARコンテンツとして表示する。また、ATM10の顧客操作画面12では、入力済みの番号(数字)についてARマーカー(「*」の記号をダミーとして付した画像)のみを表示し、入力された数字についてはスマートフォン端末20側にARコンテンツとして表示する。これにより、ATM10に入力される暗証番号を、顧客以外の他人に覗き見される可能性が抑制される。
【0069】
なお、説明の都合上、表示するARマーカーの一例としてアルファベット記号を用いたが、ARマーカーの形状はこれに限らず、例えば不規則な図形や模様とすることで、ARマーカーに対応付けられた数字との関係性をより難解なものにすることができ、顧客以外の第三者に覗き見される可能性を抑制することができる。
【0070】
特に、ATMの表示画面は様々な人が操作できるように、低めの位置に設けられるため、後方から覗き見される可能性があるため、ATM10とスマートフォン端末20を連携させて入力の支援を行うことは、顧客にとって利便性が高い。
【0071】
(A−3−2)ところで、位置情報を利用した現実風景の特定方法では、顧客操作画面へ正確に仮想的なボタン配置をすることはできない。また、ATM端末にGPSを外部センサとして取り付け、ATM端末と直接繋げることはセキュリティ上大変危険である。そのため、第1の実施形態のWebATMシステム1では、ARコンテンツの表示位置の特定に、位置情報ではなくARマーカー(画像解析)を用いて、上述のような問題を回避している。
【0072】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による取引システム及び取引装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、本発明の取引システム及び取引装置を、WebATMシステム及びATMに適用した例について説明する。
【0073】
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態のWebATMシステム1Aの全体構成についても図1を用いて示すことができる。以下では、第2の実施形態のWebATMシステム1Aについて第1の実施形態との差異を説明する。
【0074】
第1の実施形態のWebATMシステム1では、全ての顧客に対して同じARコンテンツを配信する構成となっていたが、第2の実施形態では、ATM10で同じタグデータのARマーカーが表示されていても、顧客(顧客の種別)に応じて複数パターンから選択されたARコンテンツがスマートフォン端末20に表示される構成となっている。
【0075】
したがって、第2の実施形態のWebAPサーバ60Aでは、複数ARコンテンツデータ65が記憶されており、ARコンテンツダウンロードサーバ40は、顧客(顧客の種別)に応じたARコンテンツデータ65を選択し、選択したARコンテンツデータ65に含まれるARコンテンツ(取得したタグデータに対応するARコンテンツ)を読込んで、スマートフォン端末20に配信することになる。
【0076】
第2の実施形態では、図12に示すように、WebAPサーバ60Aには、2つのARコンテンツデータ65−1、65−2が記憶されている。ここでは、ARコンテンツデータ65−1は晴眼者(健常者)向けのARコンテンツが含まれており、ARコンテンツデータ65−2には聴覚障がい者向けのARコンテンツが含まれているものとする。
【0077】
ARコンテンツダウンロードサーバ40が顧客の種別を判定する構成については限定されないが、例えば、ARアプリケーション211側で顧客の種別を設定可能とした構成としておき、ARコンテンツダウンロードサーバ40で、スマートフォン端末20(ARアプリケーション211)からのログインを受付ける際に、ARアプリケーション211から当該顧客の種別(晴眼者であるか聴覚障がい者であるか)を識別可能なデータを取得するようにしてもよい。これにより、ARコンテンツダウンロードサーバ40では、顧客の種別に応じて、ARコンテンツを取得する際の取得先(ARコンテンツデータ65−1又はARコンテンツデータ6−2)を選択することができる。
【0078】
また、例えば、顧客情報データベースサーバ30に、各顧客の種別を管理する情報も記憶しておき、ARコンテンツダウンロードサーバ40が、スマートフォン端末20からのログイン受付時に使用したID(顧客ID)に基づいて、顧客情報データベースサーバ30の情報(当該顧客IDの顧客の種別の情報)を取得するようにしてもよい。
【0079】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態のWebATMシステム1Aの動作を説明する。
【0080】
ここでは、ATM10において、ARコンテンツを用いて、表示中の操作画面に対する情報を付加(拡大表示)する例について説明する。
【0081】
図13図15は、ATM10で顧客に、取引に係る情報を確認させる際に、ARコンテンツを用いて取引支援(操作支援)を行う例について示した説明図である。図13では、顧客に対して取引の実行に手数料がかかることを示すメッセージと、顧客からの確認を受付けるための確認ボタンB201が配置されている。また、図13に示す操作画面では顧客に確認ボタンを押下させることにより、次の操作画面に遷移することができる。さらに、図13に示す操作画面では、聴覚障害者向けのガイダンスを表示するためのボタンB202(「音声を使わないご相談窓口」と表示されたボタン)も配置されている。さらにまた、図13に示すATM10の操作画面には、当該操作画面に係る情報を付加(拡大表示)するためのARコンテンツのタグデータが符号化されたARマーカーの画像G201が配置されている。
【0082】
図14図15は、図13の操作画面(ARマーカーの画像G201が表示された画面)を、スマートフォン端末20のカメラ23で撮像した場合にタッチパネルディスプレイ22に表示される合成画像について示している。
【0083】
図14は、顧客の種別が晴眼者(健常者)である場合に、スマートフォン端末20に表示される合成画像について示している。また、図15は、顧客の種別が聴覚障がい者である場合に、スマートフォン端末20に表示される合成画像について示している。
【0084】
図14に示すように、顧客の種別が晴眼者(健常者)の場合、スマートフォン端末20には、ARコンテンツの画像として、「ただいまのお時間の手数料は下記の通りです。当行銀行カード¥200…」というメッセージが拡大表示された画像G301と、顧客に電話機80を用いてオペレータと通話することを促す「お困りの場合は向かって左側の受話器をおとりになりご連絡ください。」というメッセージが拡大表示された画像G302が配置されている。
【0085】
図15に示すように、顧客の種別が聴覚障がい者の場合、スマートフォン端末20には、ARコンテンツの画像として、ボタンB202の押下を促すための「お困りの場合は、上記の音声を使わない相談窓口を押してご連絡ください」というメッセージが拡大表示された画像G401と、「ただいまのお時間の手数料は下記の通りです。当行銀行カード¥200…」というメッセージが拡大表示された画像G402が配置されている。
【0086】
以上のように、第2の実施形態のWebATMシステム1Aでは、聴覚障がい者には、音声を用いずに取引支援(操作支援)するためのARコンテンツをスマートフォン端末20に表示(拡大表示)し、晴眼者(健常者)には、音声も用いた取引支援(操作支援)するためのARコンテンツをスマートフォン端末20に表示(拡大表示)する構成となっている。
【0087】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0088】
(B−3−1)第2の実施形態のWebATMシステム1Aでは、スマートフォン端末20に、ATM10の顧客操作画面12に表示されている操作画面を付加する情報を、ARコンテンツとしてスマートフォン端末20に表示(拡大表示)している。これにより、第2の実施形態では、ATM10の顧客操作画面12自体に表示する情報を増やさずに(顧客操作画面12の表示を煩雑とさせずに)、操作画面の付加情報を表示(拡大表示)させることができる。ATMは設置スペースが限られているため表示画面の大きさには限界があり、取引に関する情報を複数まとめて表示できない。例えば取引を補助する情報等はヘルプボタンを押して画面を遷移させて表示するようにしている。そこで、第2の実施形態のように、ATM10とスマートフォン端末20を連携させることで、上述のような課題を解決し、顧客の取引(操作)を支援することができる。
【0089】
特に、ATMにおいて画面の顧客操作画面の表示内容は簡潔明瞭である必要がある。なぜなら、表示内容は操作内容の誤認識を削減すると操作時間の短縮を両立する必要があるためである。しかし一方で情報の不足により、突然の仕様変更や複雑な表示内容の確認操作に対しては、情報の不足が発生するパターンが多々発生する。情報の不足によるコールセンターヘの問い合わせは、銀行業務を圧迫する原因となる。そこで、第2の実施形態のWebATMシステム1Aでは、ARコンテンツによる情報付加によって、ATM10(顧客操作画面12)への影響を最小限にしつつ、顧客に提供する情報の拡大を実現することができる。
【0090】
(B−3−2)第2の実施形態では、顧客(顧客の種別)に応じて、異なるARコンテンツをスマートフォン端末20に表示するようにしている。具体的には、第2の実施形態では、晴眼者(健常者)と聴覚障がい者とで特性に合わせたARコンテンツをスマートフォン端末20から表示するようにしている。これにより、WebATMシステム1Aでは、ATM10の顧客操作画面12で表示する操作画面の内容を変えずに、顧客に合わせた情報の付加(ARコンテンツの表示)を実現している。また、上述のように、WebATMシステム1Aでは、ATM10(顧客操作画面12)で表示する操作画面の内容を変更せずに、ARコンテンツのみを差し替えるようにしているため、ATM10の操作画面の構成(ATMアプリケーション)ヘの影響を少なくすることが可能となる。
【0091】
(C)第3の実施形態
以下、本発明による取引システム及び取引装置の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。この実施形態では、本発明の取引システム及び取引装置を、WebATMシステム及びATMに適用した例について説明する。
【0092】
(C−1)第3の実施形態の構成
図16は、第3の実施形態のWebATMシステム1Bの全体構成を示すブロック図である。
【0093】
第3の実施形態のWebATMシステム1Bでは、システムの構成要素として、図示しないコールセンターに設置されたコールセンター端末70が追加されている点である。また、顧客は、ATM10の近傍に設置された電話機80を用いて、コールセンター端末70のオペレータと話すことで、取引(操作)の支援を受けることができる。
【0094】
そして、この実施形態では、オペレータのコールセンター端末70に対する操作に応じて、現在ATM10で表示中の操作画面におけるARマーカー(タグデータ)の内容を変更することができるものとする。すなわち、オペレータがコールセンター端末70を操作し、音声・動画・テキストを利用して、顧客に取引(操作)誘導を行う場合、ARコンテンツを利用することで、説明しているオブジェクト(操作画面のボタンやメッセージ等)を指し示す目的で利用することが可能である。
【0095】
例えば、コールセンター端末70では、現在WebAPサーバ60BからATM10に配信している画面と同じ画面を表示可能な構成となっているものとする。そして、WebAPサーバ60Bは、コールセンター端末70からの制御命令(例えば、通信電文等を用いた制御命令)に応じて、ATM10に配信する操作画面上のARマーカーを変更することが可能であるものとする。なお、コールセンター端末70で、ATM10に配信している画面を取得する構成や、WebAPサーバ60Bでコールセンター端末70からの制御に応じてATM10に配信する操作画面上のARマーカーを変更する構成については、種々のWebアプリケーションの構成を適用することができる。
【0096】
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第3の実施形態のWebATMシステム1Bの動作を説明する。
【0097】
ここでは、ATM10において、ARコンテンツを用いて、表示中の操作画面に対する情報を付加(拡大表示)する例について図17図18を用いて説明する。
【0098】
図17(a)は、ATM10の顧客操作画面12で表示される操作画面の例について示している。図17(a)の操作画面では、顧客に取引ついて手数料がかかことを示すメッセージと、顧客からの確認を受付けるための確認ボタンB501が配置されている。図17(a)に示す操作画面では顧客に確認ボタンB501を押下させることにより、次の操作画面に遷移することができる。また、図17(a)に示す操作画面では、聴覚障害者向けのガイダンスを表示するためのボタンB502(「音声を使わないご相談窓口」と表示されたボタン)も配置されている。また、図17(a)に示すATM10の操作画面には、ARマーカーの画像を表示するためのフィールドF501が配置されている。図17では、フィールドF501には、7セグメントディスプレイの形式で「1」の画像が、ARマーカーとして配置されている。
【0099】
そして、図17(b)は、図17(a)の操作画面(フィールドF501のARマーカーが表示された画面)を、スマートフォン端末20のカメラ23で撮像した場合にタッチパネルディスプレイ22に表示される合成画像について示している。
【0100】
図17(b)では、スマートフォン端末20(タッチパネルディスプレイ22)にフィールドF501に表示されたARマーカーの画像に対応するARコンテンツの画像として、ATM10側の操作画面内のメッセージを指し示す矢印と、当該矢印に「こちらをご覧ください」というメッセージを付した画像G601が表示されている。そして、図18(a)では、図17(a)の操作画面で、フィールドF501に表示するARマーカーが差し替えられた例(7セグメントディスプレイの形式で「2」の画像に差し替えられた例)について示している。
【0101】
そして、図18(a)の操作画面(フィールドF501のARマーカーが表示された画面)を、スマートフォン端末20のカメラ23で撮像した場合にタッチパネルディスプレイ22には、図18(b)の合成画像が表示される。
【0102】
図18(b)では、スマートフォン端末20(タッチパネルディスプレイ22)にフィールドF501に表示されたARマーカーの画像に対応するARコンテンツの画像として、ATM10側の操作画面内の確認ボタンB501を指し示す矢印と、当該矢印に「こちらをご覧ください」というメッセージを付した画像G602が表示されている。
【0103】
すなわち、コールセンター端末70のオペレータは、フィールドF501内に表示するARマーカーの画像を差し替えるための操作(WebAPサーバ60に対する操作制御)を行うことにより、フィールドF501に表示されるARマーカーの画像の差し替えが可能となっている。したがって、コールセンター端末70のオペレータは、図17図18の操作画面で表示されたメッセージの説明をしたい場合には、フィールドF501に「1」のARマーカーを表示する指示を、WebAPサーバ60に送信するようにコールセンター端末70を操作する必要がある。また、コールセンター端末70のオペレータは、図17図18の操作画面で表示された確認ボタンB501を押下する誘導を顧客に行う場合には、フィールドF501に「2」のARマーカーを表示する指示をWebAPサーバ60に送信するようにコールセンター端末70を操作する必要がある。そして、コールセンター端末70からの指示を受けたWebAPサーバ60Bは、ARマーカー変更後の対象画面を一時的に作成し、変更対象となるATM10に対して、画面データのダウンロード依頼(リロード依頼)を送信する。そして、その指示を受けたATM10は、ARマーカー変更後の対象画面をダウンロードして表示を行う。
【0104】
コールセンター端末70において、ATM10側の操作画面に表示されるARマーカーの差し替え指示を受付けるインタフェースについては限定されないものである。たとえば、コールセンター端末70において、図示しないキーボードに対する所定の操作や、図示しない操作画面上のボタンを押下すること等により受付けるようにしてもよい。
【0105】
(C−3)第3の実施形態の効果
第3の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0106】
WebATMシステム1Bでは、コールセンター端末70の制御に応じて、ATM10の顧客操作画面12に表示されるARマーカーを差し替えることが可能である。これにより、WebATMシステム1Bでは、顧客の操作環境によらず、ARコンテンツを利用してコールセンターのオペレータから説明されるオブジェクトを指し示す表示を行うことが可能である。
【0107】
この際、WebATMシステム1Bでは、ATM10(顧客操作画面12)の表示内容をタイムリーに変更でき、「ARマーカー」自体を可変的に使用可能であることが有用となる。なぜならば、顧客の操作環境による下記のような要件を緩和することが可能なためである。第1の要件としては、スマートフォン端末20で表示内容の変更を行う場合、ダウンロードが必要となるため、顧客はスマートフォン端末20の通信が可能な場所(無線通信が確立した場所)にいる必要があることである。第2の要件としては、スマートフォン端末20側でARコンテンツをダウンロードして切替える場合、コールセンター側(コールセンター端末70側)で切り替え完了を受け取るためにはスマートフォン端末20側からコールセンター(コールセンター端末70)への通信処理が発生することである。WebATMシステム1Bでは、一般の端末(コールセンター端末70等)からセキュリティリスクの高い端末(ATM10等)への情報通信は避けるべきである。
【0108】
(D)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0109】
(D−1)上記の各実施形態では、顧客情報データベースサーバ30を配置及びARコンテンツダウンロードサーバ40を配置しているが、スマートフォン端末20側で予めARコンテンツを保持(キャッシュ)している場合には、顧客情報データベースサーバ30を配置及びARコンテンツダウンロードサーバ40を省略する構成としてもよい。
【0110】
(D−2)上記の第1、及び第2の実施形態では、ATM10はシンクライアントとして機能する構成として説明したが、内部に操作画面のコンテンツを備え、WebAPサーバ60を経由せずに勘定系ホスト50に直接接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…WebATMシステム、10…ATM、11…制御部、12…顧客操作画面、13…通帳ユニット、14…カードユニット、15…現金処理部、112…Webブラウザ、111…メイン制御プログラム、20…スマートフォン端末、21…制御部、211…ARアプリケーション、22…タッチパネルディスプレイ、23…カメラ、24…通信部、30…顧客情報データベースサーバ、31…データベースサーバプロセス、32…顧客情報データベース記憶部、40…ARコンテンツダウンロードサーバ、41…アプリケーションサーバプロセス、50…勘定系ホスト、60…WebAPサーバ、62…ホスト側インタフェース、61…Webサーバプロセス、63…コンテンツ記憶部、64…ATM表示用コンテンツ、65…ARコンテンツデータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
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