特許第6191524号(P6191524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191524
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/14 20060101AFI20170828BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20170828BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20170828BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01M2/14
   H01M2/34 B
   H01M2/16 P
   H01G11/82
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-65628(P2014-65628)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-191687(P2015-191687A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信司
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−114797(JP,A)
【文献】 特開2014−029823(JP,A)
【文献】 特開平06−181058(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124188(WO,A1)
【文献】 特開2014−041724(JP,A)
【文献】 特開2008−016250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14
H01G 11/82
H01M 2/16
H01M 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに電極組立体が収容され、前記ケースと前記電極組立体との間に絶縁フィルムが設けられる蓄電装置であって、
前記絶縁フィルムの内部には、荷重が付加されると粘着力が増加する樹脂からなる粒子が含まれている、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに電極組立体が収容され、ケースと電極組立体との間に絶縁フィルムが設けられる蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の蓄電装置は、正極と負極とがセパレータを介して積層された電極組立体及び電解液等が金属製のケースに収容されて構成される。例えば、特許文献1には、電解液に非水電解質を使用し、外装缶に発電要素である電極体が挿入された非水電解液二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−120836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極組立体と金属製のケースとの間には、短絡を防止するために、絶縁フィルムが設けられている。絶縁フィルムはポリプロピレン等によって形成されているので、ケースとの間の摩擦係数が低く、ケース内で電極組立体が動いてしまう虞がある。電極組立体がケース内で動くと(ずれると)、例えば、電極組立体の複数の同極の電極のタブ(金属箔)同士の溶接部分が剥がれたり、そのタブと導電部材との溶接部分が剥がれたりする。
【0005】
そこで、本技術分野においては、ケース内での電極組立体の動き(ずれ)を抑制できる蓄電装置が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電装置は、ケースに電極組立体が収容され、ケースと電極組立体との間に絶縁フィルムが設けられる蓄電装置であって、絶縁フィルムは、荷重が付加されると粘着力が増加する樹脂を含む。
【0007】
この蓄電装置は、電極組立体の外側に絶縁フィルムを設けて、その電極組立体をケース内に収容している。特に、この絶縁フィルムは荷重が付加されると粘着力が増加する樹脂を含んでいるので、荷重が付加された後は荷重が付加される前よりも絶縁フィルムが大きな粘着力を持つ。この大きな粘着力により、ケースとの間の摩擦係数が高くなり、ケース内で電極組立体が動き難くなる(ずれ難くなる)。しかし、荷重が付加される前は、絶縁フィルムの粘着力は大きくならない。そのため、電極組立体の外側に絶縁フィルムを設けた状態でケース内に電極組立体を収容するときに、ケースとの間の摩擦係数が未だ高くないので、絶縁フィルムが設けられた状態の電極組立体をケース内に挿入できる。このように、蓄電装置は、荷重が付加されると粘着力が増加する樹脂を絶縁フィルムに含ませることにより、荷重の付加後にはケース内での電極組立体の動き(ずれ)を抑制できる。
【0008】
一実施形態の蓄電装置では、絶縁フィルムは、ケース側に樹脂からなる層が形成されている。この絶縁フィルムの場合、荷重が付加されると、ケース側の樹脂層の粘着力が大きくなるので、その樹脂層に接するケースとの間の摩擦係数が大きくなる。
【0009】
一実施形態の蓄電装置では、絶縁フィルムは、電極組立体側に樹脂からなる層が形成されている。この絶縁フィルムの場合、荷重が付加されると、電極組立体側の樹脂層の粘着力が大きくなり、その樹脂層から出た粘着力が大きくなった樹脂がケース側に到達すると、ケースとの間の摩擦係数が大きくなる。また、この絶縁フィルムの場合、樹脂層が電極組立体側なので、荷重が付加される前は絶縁フィルムのケース側は摩擦係数が低く、絶縁フィルムが設けられた状態の電極組立体をケース内に収容するときにスムーズに挿入できる。
【0010】
一実施形態の蓄電装置では、絶縁フィルムは、内部に樹脂からなる粒子が含まれている。この絶縁フィルムの場合、荷重が付加されると、樹脂の粒子の粘着力が大きくなり、粘着力が大きくなった樹脂の粒子がケース側に到達すると、ケースとの間の摩擦係数が大きくなる。また、この絶縁フィルムの場合、荷重が付加される前は絶縁フィルムのケース側は摩擦係数が低く、絶縁フィルムが設けられた状態の電極組立体をケース内に収容するときにスムーズに挿入できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁フィルムに荷重が付加されると粘着力が増加する樹脂を含ませることにより、荷重の付加後にはケース内での電極組立体の動き(ずれ)を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る蓄電装置を模式的に示す斜視図である。
図2図1の蓄電装置の電極組立体が絶縁フィルムに包まれた状態を模式的に示す斜視図である。
図3図1の蓄電装置におけるケース、絶縁フィルム、電極組立体の断面構成を模式的に示す図であり、(a)が絶縁フィルムのケース側に感圧型の粘着性樹脂からなる層がある場合であり、(b)が絶縁フィルムの電極組立体側に感圧型の粘着性樹脂からなる層がある場合である。(c)が絶縁フィルム内部に感圧型の粘着性樹脂の粒子が含まれる場合である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る蓄電装置を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
一実施形態に係る蓄電装置は、ケースに電極組立体等が収容された角型の蓄電装置である。この蓄電装置は、二次電池又は電気二重層キャパシタ等の蓄電装置である。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。この実施形態では、蓄電装置としてリチウムイオン二次電池に適用した場合とする。
【0015】
なお、蓄電装置は、単体で使用されてもよいし、あるいは、複数の蓄電装置が並列又は/及び直列に電気的に接続された蓄電モジュールとして使用されてもよい。蓄電モジュールの場合、例えば、複数の蓄電装置が電極組立体の正極と負極とが積層される方向に沿って配設される。ちなみに、従来の蓄電モジュールでは、ケース内での電極組立体の動き(ずれ)を抑制するために、複数の蓄電装置が配設された状態で拘束部材を用いて複数の蓄電装置を積層方向に沿って拘束していた。
【0016】
図1及び図2を参照し、一実施形態に係る蓄電装置1について説明する。図1は、一実施形態に係る蓄電装置1を模式的に示した斜視図である。図2は、図1の蓄電装置1の電極組立体が絶縁フィルムに包まれた状態を模式的に示す斜視図である。
【0017】
蓄電装置1は、ケース2に電極組立体3等が収容され、ケース2と電極組立体3との間に絶縁フィルム4が設けられる。特に、絶縁フィルム4によってケース2内で電極組立体3を保持するために、絶縁フィルム4が荷重(外部から圧力)が付加されると粘着力が増加する樹脂を含んでおり、ケース2に収容された後に荷重が付加されて絶縁フィルム4の粘着力が大きくなる。なお、蓄電装置1のケース2、電極組立体3、絶縁フィルム4以外の構成要素については周知のものを適宜適用してよく、詳細な説明を省略する。
【0018】
ケース2は、有底の角筒状の本体部2aとその本体部2aの上部の開口部を覆う蓋部2bとからなる。ケース2は、アルミニウムやステンレス鋼等の金属によって形成されている。本体部2aは、矩形平板状の底板と、底板の4辺から鉛直方向上方に延びる矩形平板状の4つの側板とから構成される。蓋部2bは、矩形平板状である。ケース2は、この本体部2aと蓋部2bによって内部に直方体形状の密閉空間が形成される。蓋部2bには、ケース2の外部及び内部に突出する正極端子2cと負極端子2dが取り付けられている。
【0019】
電極組立体3は、正極、負極及び正極と負極とを絶縁するセパレータを備えており、正極と負極及びセパレータが積層されて構成されている。電極組立体3は、絶縁フィルム4に包まれた状態で、ケース2内に収容されている。正極は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された正極活物質層からなる。正極は、金属箔の端部に正極活物質層が形成されていないタブを有する。タブは、正極の上縁部(正極端子2c側の縁部)に設けられており、導電部材を介して正極端子2cに電気的に接続される。負極は、金属箔と、金属箔の少なくとも一面に形成された負極活物質層からなる。負極は、金属箔の端部に負極活物質層が形成されていないタブを有する。タブは、負極の上縁部(負極端子2d側の縁部)に設けられており、導電部材を介して負極端子2dに電気的に接続される。セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。
【0020】
正極、負極は、薄いシート状であり、長方形状とその長方形状の上縁部にタブの部分を有する形状である。セパレータは、薄いシート状又は袋状であり、長方形状である。電極組立体3は、この形状の多数の正極と負極とがセパレータを挟んだ状態で積層されて、上縁部に各電極のタブを有する直方体形状の積層構造体を形成している。この電極組立体3の直方体形状は、ケース2の内部の直方体形状と略同形状であり、大きさが少し小さい。なお、図1図2では、電極組立体3の上縁部のタブを省略して描いている。
【0021】
絶縁フィルム4は、金属製のケース2に電極組立体3が接触することによる短絡を防止するために、ケース2と電極組立体3との間に介在し、ケース2と電極組立体3との間の絶縁を図るためのフィルムである。絶縁フィルム4は、電極組立体3の上面部以外の周囲を隙間なく包む袋状であり、電極組立体3の直方体形状の4つの側面及び下面をそれぞれ覆う各側面部と下面部を有している。この絶縁フィルム4を袋状とする方法については、従来の周知の方法が適用される。絶縁フィルム4の絶縁性を有する材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ナイロンである。ちなみに、絶縁フィルム4は、初期状態(荷重が付加される前)では摩擦係数が低い。
【0022】
電極組立体3をケース2に収容する前に、袋状の絶縁フィルム4で電極組立体3が包まれ、複数の接続テープ5によって電極組立体3が絶縁フィルム4の上部の開口部から抜け出ることを防止している。接続テープ5は絶縁フィルム6の開口部において対向する側面部間に架け渡されて、接続テープ5の端部がその側面部の上端部に貼り付けられる。接続テープ5は、絶縁性を有するとともに粘着性のあるテープであればよい。なお、図2では、接続テープ5を2つ描いているが、3つ以上でもよいし、あるいは、1つでもよい。
【0023】
絶縁フィルム4は、ケース2内で電極組立体3を保持できかつ袋状の絶縁フィルム4に包まれた状態の電極組立体3をケース2内にスムーズに挿入できるように、荷重(外部から圧力)が付加されると粘着力が増加する樹脂を含んでいる。この樹脂は、感圧型の粘着性樹脂であり、例えば、各種高分子エラストマーをベースに必要に応じて粘着付与剤、架橋剤、安定剤、可塑剤等を配合して構成される樹脂である。エラストマーの種類によって、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等のものがある。ゴム系のエラストマーは、例えば、天然ゴム、合成ゴム(SIS、SBR)である。アクリル系のエラストマーは、例えば、アクリル酸エステル系共重合体である。シリコーン系のエラストマーは、例えば、シリコーンゴムである。その他のエラストマーは、例えば、ビニルエーテル共重合体、ウレタン樹脂である。この感圧型の粘着性樹脂は、所定荷重(所定圧力)を所定時間(例えば、1時間、2時間)以上付加されると、荷重が付加される前よりも粘着力が大きくなり、荷重が付加されなくなった後もその大きな粘着力を維持する性質を有している。この所定荷重や所定時間については、絶縁フィルム4で用いられる感圧型の粘着性樹脂の種類によって決まる。
【0024】
図3を参照して、絶縁フィルム4に感圧型の粘着性樹脂を含ませる3つの形態について説明する。図3は、図1の蓄電装置1におけるケース2、絶縁フィルム4、電極組立体3の断面構成を模式的に示す図であり、3つの形態の断面構成を示す。なお、図3では、ケース2、絶縁フィルム4、電極組立体3の断面構成が判る一部分のみを描いている。
【0025】
図3(a)に示す形態の絶縁フィルム4Aの場合、電極組立体3側(袋状の内側)の絶縁フィルム本体4aとケース2側(袋状の外側)の感圧型粘着性樹脂層4bによって構成される。絶縁フィルム本体4aは、絶縁性を有する材料を用いて薄いフィルム状に形成されたものである。感圧型粘着性樹脂層4bは、感圧型の粘着性樹脂を用いて、絶縁フィルム本体4aの表面側に非常に薄くコーティングされた層である。袋状の絶縁フィルム4Aに包まれた状態の電極組立体3がケース2内に収容され、荷重が付加されると、ケース2に接する感圧型粘着性樹脂層4bでの粘着力が大きくなるので、感圧型粘着性樹脂層4bに接するケース2との間の摩擦係数が大きくなる。
【0026】
図3(b)に示す形態の絶縁フィルム4Bの場合、ケース2側(袋状の外側)の絶縁フィルム本体4cと電極組立体3側(袋状の内側)の感圧型粘着性樹脂層4dによって構成される。絶縁フィルム本体4cは、絶縁性を有する材料を用いて薄いフィルム状に形成されたものであり、多孔質である。感圧型粘着性樹脂層4dは、感圧型の粘着性樹脂を用いて、絶縁フィルム本体4cの裏面側に非常に薄くコーティングされた層である。袋状の絶縁フィルム4Bに包まれた状態の電極組立体3がケース2内に収容され、荷重が付加されると、電極組立体3側の感圧型粘着性樹脂層4dでの粘着力が大きくなり、この感圧型粘着性樹脂層4dから粘着力が大きくなった樹脂が絶縁フィルム本体4c内に侵入し、その樹脂が多孔質の絶縁フィルム本体4cの内部を通ってケース2側に到達すると、ケース2との間の摩擦係数が大きくなる。この絶縁フィルム4Bの場合、ケース2側が絶縁フィルム本体4cなので、摩擦係数が低く、袋状の絶縁フィルム4Bに包まれた状態の電極組立体3をケース2内に収容するときにスムーズに挿入できる。
【0027】
図3(c)に示す形態の絶縁フィルム4Cの場合、絶縁フィルム本体4eと多数の感圧型粘着性樹脂粒子4f,・・・によって構成される。絶縁フィルム本体4eは、絶縁性を有する材料を用いて薄いフィルム状に形成されたものであり、多孔質である。感圧型粘着性樹脂粒子4fは、感圧型の粘着性樹脂からなる粒子であり、絶縁フィルム本体4e内に点在される。袋状の絶縁フィルム4Cに包まれた状態の電極組立体3がケース2内に収容され、荷重が付加されると、絶縁フィルム本体4e内の感圧型粘着性樹脂粒子4f,・・・の粘着力がそれぞれ大きくなり、粘着力が大きくなった感圧型粘着性樹脂粒子4f,・・・の一部が多孔質の絶縁フィルム本体4eの内部を通ってケース2側に到達すると、ケース2との間の摩擦係数が大きくなる。この絶縁フィルム4Cの場合、ケース2側が絶縁フィルム本体4e(一部に感圧型粘着性樹脂粒子4fが存在する場合もある)なので、摩擦係数が低く、袋状の絶縁フィルム4Bに包まれた状態の電極組立体3をケース2内に収容するときにスムーズに挿入できる。
【0028】
なお、絶縁フィルム4に感圧型の粘着性樹脂を含ませるのは、絶縁フィルム4の全面に含ませてもいし、あるいは、電極組立体3における正極や負極の積層方向の側面に対向する側面(図2に示す広いほうの側面)にのみ含ませるだけでもよい。ちなみに、上記した従来の蓄電モジュールの場合、この正極や負極の積層方向の側面側を拘束部材で拘束している。
【0029】
この絶縁フィルム4による作用について説明する。袋状の絶縁フィルム4で電極組立体3を包んで、絶縁フィルム4の開口部に接続テープ5,5を架け渡して貼り付ける。この絶縁フィルム4に包まれた電極組立体3をケース2の本体部2aに挿入する。この際、絶縁フィルム4には未だ荷重が付加されていないので、感圧型の粘着性樹脂の粘着力が大きくなっていない。そのため、本体部2aの内面との間の摩擦係数が未だ高くないで、絶縁フィルム4に包まれた電極組立体3を本体部2aに挿入できる。そして、各導電部材を介した各端子2c,2dと電極組立体3の各電極のタブとの接続等を行った後に、本体部2aに蓋部2bを取り付け、電極組立体3がケース2内に収容される。
【0030】
蓄電装置1の出荷前の初期充電工程等において、ケース2の本体部2aにおける積層方向の側面間に所定荷重を所定時間以上付加する。すると、絶縁フィルム4に含まれる感圧型の粘着性樹脂の粘着力が増加し、その荷重を受ける前よりも絶縁フィルム4の粘着力が大きくなる。この大きくなった粘着力により、本体部2aの内面との間の摩擦係数が高くなり、絶縁フィルム4によってケース2に対して電極組立体3が保持され、ケース2内で電極組立体3が動き難くなる(ずれ難くなる)。荷重の付加が終了した後も、その大きくなった粘着力が維持され、ケース2内で電極組立体3が動き難い。
【0031】
この蓄電装置1によれば、荷重が付加されると粘着力が増加する樹脂を絶縁フィルム4に含ませることにより、荷重の付加後には絶縁フィルム4によってケース2内での電極組立体3の動き(ずれ)を抑制できる。なお、荷重が付加される前は、絶縁フィルム4の粘着力が大きくならないので、絶縁フィルム4に包まれた状態の電極組立体3をケース2に挿入できる。
【0032】
また、蓄電装置1によれば、絶縁フィルム4Aのケース2側に感圧型粘着性樹脂層4bが形成されることにより、荷重の付加後にケース2側の感圧型粘着性樹脂層4bの粘着力が大きくなるので、その感圧型粘着性樹脂層4bに接するケース2との間の摩擦係数が大きくなる。
【0033】
また、蓄電装置1によれば、絶縁フィルム4Bの電極組立体3側に感圧型粘着性樹脂層4dが形成されることにより、荷重の付加後に電極組立体3側の感圧型粘着性樹脂層4dの粘着力が大きくなり、その感圧型粘着性樹脂層4dから出た粘着力が大きくなった樹脂がケース2側に到達すると、ケース2との間の摩擦係数が大きくなる。また、この絶縁フィルム4Bの場合、感圧型粘着性樹脂層4dが電極組立体3側なので、荷重の付加前はケース2側の摩擦係数が低く、絶縁フィルム4Bに包まれた状態の電極組立体3をケース2にスムーズに挿入できる。
【0034】
また、蓄電装置1によれば、絶縁フィルム4Cの内部に感圧型粘着性樹脂粒子4fが含まれることにより、荷重の付加後に感圧型粘着性樹脂粒子4fの粘着力が大きくなり、粘着力が大きくなった感圧型粘着性樹脂粒子4fがケース2側に到達すると、ケース2との間の摩擦係数が大きくなる。また、この絶縁フィルム4Cの場合、荷重の付加前はケース2側の摩擦係数が低く、絶縁フィルム4Cに包まれた状態の電極組立体3をケース2にスムーズに挿入できる。
【0035】
なお、複数の蓄電装置1からなる蓄電モジュールの場合、蓄電装置1個々で荷重の付加後は絶縁フィルム4に含まれる感圧型の粘着性樹脂によってケース2内で電極組立体3が動き難い(ずれ難い)ので、従来の蓄電モジュールのように蓄電装置に対する拘束部材による拘束を行わなくてもよい。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0037】
例えば、上記実施形態では角型の蓄電装置(リチウムイオン二次電池)に適用したが、円筒型(捲回体)等の他の形状の蓄電装置にも適用可能である。また、リチウムイオン二次電池以外の蓄電装置にも適用可能である。
【0038】
また、上記実施形態では感圧型の粘着性樹脂を絶縁フィルムに含ませる3つの形態を示したが、これ以外の含ませかたでもよい。また、上記実施形態では感圧型の粘着性樹脂の一例を示したが、これ以外の感圧型の粘着性樹脂でもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…蓄電装置、2…ケース、2a…本体部、2b…蓋部、2c…正極端子、2d…負極端子、3…電極組立体、4(4A〜4C)…絶縁フィルム、4a,4c,4e…絶縁フィルム本体、4b,4d…感圧型粘着性樹脂層、4f…感圧型粘着性樹脂粒子、5…接続テープ。
図1
図2
図3