特許第6191533号(P6191533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191533
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/14 20060101AFI20170828BHJP
   F04B 39/10 20060101ALI20170828BHJP
   F04B 27/12 20060101ALI20170828BHJP
   F16K 15/02 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   F04B39/14
   F04B39/10 A
   F04B27/12 P
   F16K15/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-90409(P2014-90409)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209785(P2015-209785A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
(72)【発明者】
【氏名】深沼 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】澄川 俊
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−110812(JP,U)
【文献】 実開平01−140960(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3021512(JP,U)
【文献】 特開2012−145215(JP,A)
【文献】 特開2002−031050(JP,A)
【文献】 特開2009−270463(JP,A)
【文献】 特開平04−231691(JP,A)
【文献】 実開昭55−145770(JP,U)
【文献】 特開2002−333074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/14
F04B 27/12
F04B 39/10
F16K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が吐出される吐出室と外部冷媒回路との間の吐出通路に逆止弁を有する圧縮機であって、
前記逆止弁は、前記吐出通路の内部に沿った移動が案内される被案内部を有し、
前記吐出通路には、前記逆止弁が当接する弁座が設けられ、
前記逆止弁の前記吐出通路上の延在方向における両端部には、前記逆止弁の延在方向においていずれの方向に向けて前記逆止弁を前記吐出通路に配置しても、前記弁座に当接されると前記弁座と協働して前記吐出通路を閉鎖可能とする閉鎖部が設けられ、
前記逆止弁の前記弁座からの離間時に、前記吐出通路上の前記逆止弁よりも前記延在方向の一端側の第1空間と、前記吐出通路上の前記逆止弁よりも前記延在方向の他端側の第2空間とを連通させる連通路が、前記逆止弁の内部、及び前記吐出通路と前記逆止弁との間の少なくとも一方に形成されており、
前記連通路は、前記延在方向に対して交差する方向に前記被案内部を貫通する貫通孔を有することを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記被案内部及び前記閉鎖部は円柱形状であり、前記閉鎖部の外径は前記被案内部の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記被案内部及び前記閉鎖部は同心形状に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記被案内部の中心を含み前記延在方向に延びる長孔形状であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記逆止弁は、前記延在方向における前記被案内部の中間点を基準とした対称形状であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記冷媒は二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記逆止弁は、前記吐出室側と前記外部冷媒回路側との差圧のみで作動することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出室と外部冷媒回路との間の吐出通路に逆止弁を有する圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の圧縮室で圧縮された冷媒は、吐出室に吐出されるとともに、吐出室から吐出通路を介して外部冷媒回路に流出する。圧縮機の吐出通路には、圧縮機の運転停止時に、外部冷媒回路から吐出通路を介して吐出室へ冷媒が逆流してしまうことを防止するための逆止弁が設けられている(例えば特許文献1)。
【0003】
図8に示すように、特許文献1の圧縮機100のリヤハウジング100aには、吐出通路101が形成されている。吐出通路101には、円柱状の逆止弁102が収容される収容空間103が形成されている。吐出通路101は、収容空間103を形成する底壁103eに開口するとともに収容空間103と吐出室100dとを連通する第1連通路101aと、収容空間103を形成する側壁103fに開口するとともに外部冷媒回路(図示せず)に繋がる第2連通路101bとを有する。
【0004】
逆止弁102は、大径部104と、大径部104に連続するとともに大径部104よりも小径の小径部105とを有する。小径部105には、径方向に延びるとともに小径部105の外周面に開口する第1導圧孔106が複数形成されている。また、逆止弁102の中心部には、逆止弁102の軸方向に沿って延びる第2導圧孔107が形成されている。第2導圧孔107は、一端が各第1導圧孔106に連通するとともに、他端が大径部104の端面104aに開口している。また、小径部105の端面105aには、底壁103eにおける第1連通路101a周りに当接するとともに、第1連通路101aと収容空間103との間をシールするシール部105sが形成されている。
【0005】
さらに、収容空間103には、大径部104を介して第1連通路101aとは反対側に背圧室108(加圧室)が区画されている。第2連通路101bは、逆止弁102の軸方向において、第1連通路101aと背圧室108との間に配置されている。
【0006】
そして、圧縮機100の運転中においては、圧縮機100の圧縮作用によって圧縮された冷媒が吐出室100dに吐出されて第1連通路101aに流出し、冷媒における吐出圧力が小径部105の端面105aに作用して、逆止弁102が背圧室108に向けて押圧され、シール部105sが底壁103eから離間して逆止弁102が開弁する。逆止弁102が開弁すると、収容空間103を介して第1連通路101aと第2連通路101bとが連通し、吐出通路101を介した吐出室100dから外部冷媒回路への冷媒の排出が許容される。また、収容空間103において、第1連通路101a及び第2連通路101b側と背圧室108とが、各第1導圧孔106及び第2導圧孔107を介して連通しているため、背圧室108の圧力が、背圧として大径部104の端面104aに作用することがなく、逆止弁102の開弁方向への移動がスムーズに行われる。
【0007】
一方、圧縮機100の運転が停止されると、冷媒における吐出圧力が低下するとともに、外部冷媒回路側の圧力が高圧となり、外部冷媒回路から第2連通路101bを介して収容空間103に逆流した冷媒が、各第1導圧孔106及び第2導圧孔107を介して背圧室108に流れ込む。そして、背圧室108に流れ込んだ冷媒の圧力が、大径部104の端面104aに作用して、逆止弁102が第1連通路101aに向けて押圧され、シール部105sが底壁103eに当接して逆止弁102が閉弁する。逆止弁102が閉弁すると、収容空間103を介した第1連通路101aと第2連通路101bとの連通が遮断され、圧縮機100の運転停止時に、外部冷媒回路から吐出通路101を介して吐出室100dへ冷媒が逆流してしまうことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭61−14780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1の逆止弁102においては、第2導圧孔107が、逆止弁102の中心部に形成されている。すなわち、第2導圧孔107は、シール部105sよりも逆止弁102の中心部寄りに形成されている。ここで、例えば、大径部104が第1連通路101a側に位置するとともに、小径部105が背圧室108側に位置するように、逆止弁102が収容空間103に収容された場合を考える。この場合、大径部104の端面104aが底壁103eに当接したとしても、第1連通路101aと第2連通路101bとが、各第1導圧孔106及び第2導圧孔107を介して常に連通してしまうことになる。その結果、圧縮機100の運転停止時において、外部冷媒回路から吐出通路101を介して吐出室100dへ冷媒が逆流してしまうことを、逆止弁102によって防止することができなくなってしまう。
【0010】
したがって、圧縮機100の運転停止時において、外部冷媒回路から吐出通路101を介して吐出室100dへ冷媒が逆流してしまうことを防止するためには、小径部105が第1連通路101a側に位置するとともに、大径部104が背圧室108側に位置するように、逆止弁102を収容空間103に収容する必要がある。つまり、特許文献1の逆止弁102は、収容空間103、すなわち、吐出通路101に対する設置に方向性を有するため、逆止弁の軸方向において予め決められた方向となるように、逆止弁102を吐出通路101に対して設置する必要があり、逆止弁102における吐出通路101に対する組み付けの作業性が悪いという問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、逆止弁における吐出通路に対する組み付けの作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する圧縮機は、冷媒が吐出される吐出室と外部冷媒回路との間の吐出通路に逆止弁を有する圧縮機であって、前記逆止弁は、前記吐出通路の内部に沿った移動が案内される被案内部を有し、前記吐出通路には、前記逆止弁が当接する弁座が設けられ、前記逆止弁の前記吐出通路上の延在方向における両端部には、前記逆止弁の延在方向においていずれの方向に向けて前記逆止弁を前記吐出通路に配置しても、前記弁座に当接されると前記弁座と協働して前記吐出通路を閉鎖可能とする閉鎖部が設けられ、前記逆止弁の前記弁座からの離間時に、前記吐出通路上の前記逆止弁よりも前記延在方向の一端側の第1空間と、前記吐出通路上の前記逆止弁よりも前記延在方向の他端側の第2空間とを連通させる連通路が、前記逆止弁の内部、及び前記吐出通路と前記逆止弁との間の少なくとも一方に形成されており、前記連通路は、前記延在方向に対して交差する方向に前記被案内部を貫通する貫通孔を有する
【0013】
これによれば、逆止弁の弁座からの離間時に、第1空間と第2空間とを連通路を介して連通させることができるため、吐出通路内において第1空間と第2空間とが同じ圧力となり、逆止弁に対して、逆止弁を弁座に向けて押圧する力が作用せず、逆止弁の移動がスムーズに行われる。さらに、逆止弁の吐出通路上の延在方向における両端部に閉鎖部が設けられているため、逆止弁の延在方向においていずれの方向に向けて逆止弁を吐出通路に配置しても、閉鎖部と弁座とが協働して吐出通路を閉鎖することが可能である。したがって、逆止弁において、吐出通路に対する設置の方向性を無くすことができるため、逆止弁を吐出通路に設置する際に、逆止弁における吐出通路に対する設置方向を気にする必要が無く、逆止弁における吐出通路に対する組み付けの作業性を向上させることができる。また、本構成によれば、例えば、連通路が、被案内部の外面に形成される溝を有する場合に比べると、連通路の流路断面積を確保し易くすることができる。
【0014】
上記圧縮機において、前記被案内部及び前記閉鎖部は円柱形状であり、前記閉鎖部の外径は前記被案内部の外径よりも小さいことが好ましい。これによれば、吐出通路と閉鎖部との間に、閉鎖部の周方向に延びる連通路の一部を形成することができるため、例えば、閉鎖部の外面に、連通路の一部として溝を形成する場合に比べると、連通路の流路断面積を確保し易くすることができ、圧縮機の運転効率を向上させることができる。
【0015】
上記圧縮機において、前記被案内部及び前記閉鎖部は同心形状に配置されていることが好ましい。これによれば、被案内部及び閉鎖部が非同心形状に形成されている場合に比べると、逆止弁の製造を容易なものとすることができるとともに、吐出通路に対する弁座の加工を容易なものとすることができる。
【0017】
上記圧縮機において、前記貫通孔は、前記被案内部の中心を含み前記延在方向に延びる長孔形状であることが好ましい。
これによれば、貫通孔の流路断面積をさらに確保し易くすることができる。
【0018】
上記圧縮機において、前記逆止弁は、前記延在方向における前記被案内部の中間点を基準とした対称形状であることが好ましい。
これによれば、逆止弁の加工を容易なものとすることができる。
【0019】
上記圧縮機において、前記冷媒は二酸化炭素であることが好ましい。二酸化炭素は高圧冷媒であるため、吐出通路を細くしなければならず、また、圧縮機全体としては寸法が予め設定されているため、これらの条件下での逆止弁の設計には自由度が無い。しかし、これによれば、逆止弁を吐出通路内に設置することができるため、自由な設計が可能となる。
【0020】
上記圧縮機において、前記逆止弁は、前記吐出室側と前記外部冷媒回路側との差圧のみで作動することが好ましい。
これによれば、逆止弁を作動させるための作動装置を別途設置する必要が無く、構成を簡素化させることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、逆止弁における吐出通路に対する組み付けの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態における可変容量型斜板式圧縮機を示す側断面図。
図2】逆止弁が閉弁している状態を示す部分拡大側断面図。
図3】逆止弁の斜視図。
図4】逆止弁が開弁している状態を示す部分拡大側断面図。
図5】別の実施形態における逆止弁の斜視図。
図6】別の実施形態における逆止弁の斜視図。
図7】別の実施形態における逆止弁周りの部分拡大断面図。
図8】従来例における圧縮機の部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、圧縮機を可変容量型斜板式圧縮機に具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。なお、可変容量型斜板式圧縮機は車両に搭載されている。
図1に示すように、可変容量型斜板式圧縮機10のハウジングHは、シリンダブロック11と、このシリンダブロック11の前端面に接合されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端面に弁・ポート形成体13を介して接合されたリヤハウジング14とから構成されている。ハウジングH内において、シリンダブロック11とフロントハウジング12とで囲まれた空間にはクランク室15が区画されている。また、シリンダブロック11及びフロントハウジング12には、回転軸16が回転可能に支持されるとともに、クランク室15内において、回転軸16にはラグプレート21が一体回転可能に固定されている。
【0024】
クランク室15には、回転軸16から駆動力を得て回転するとともに、回転軸16に対して軸方向へ傾動可能な斜板22が収容されている。斜板22は、クランク室15内において、スライド移動可能に回転軸16に支持されるとともに、この斜板22は押圧ばね25によって傾角が最小になる方向へ付勢されている。ラグプレート21と斜板22との間にはヒンジ機構23が介在されている。そして、斜板22は、押圧ばね25の付勢力、ヒンジ機構23を介したラグプレート21との間でのヒンジ連結、及び回転軸16の支持により、ラグプレート21及び回転軸16と同期回転可能であるとともに、回転軸16の軸方向へのスライド移動を伴いながら回転軸16に対し傾動可能となっている。
【0025】
シリンダブロック11には、複数(図1では一つのみ図示)のシリンダボア11aが回転軸16を取り囲むようにして貫設されるとともに、各シリンダボア11aにはピストン26が往復動可能にそれぞれ収容されている。各シリンダボア11aの両開口は、弁・ポート形成体13及びピストン26によって閉塞されるとともに、各シリンダボア11a内にはピストン26の往復動に応じて体積変化する圧縮室24が区画されている。各ピストン26は、シュー29を介して斜板22の外周部に係留されている。そして、回転軸16の回転にともなう斜板22の回転運動が、シュー29を介してピストン26の往復直線運動に変換される。
【0026】
リヤハウジング14と弁・ポート形成体13との間には、吐出室30が環状に区画されるとともに、この吐出室30の内側に、吸入室31が区画されている。また、弁・ポート形成体13には、吸入室31に連通する吸入ポート31h、及び吸入ポート31hを開閉する吸入弁31vが形成されるとともに、吐出室30に連通する吐出ポート30h、及び吐出ポート30hを開閉する吐出弁30vが形成されている。
【0027】
そして、吸入室31の冷媒としての二酸化炭素は、ピストン26の上死点から下死点への移動により、吸入ポート31h及び吸入弁31vを介してシリンダボア11aに吸入される。シリンダボア11aに吸入された二酸化炭素は、ピストン26の下死点から上死点への移動により所定の圧力にまで圧縮されるとともに、吐出ポート30hから吐出弁30vを押し退けて吐出室30に吐出される。
【0028】
リヤハウジング14には、吐出室30に連通する吐出通路51が形成されている。また、リヤハウジング14には吸入室31に連通する吸入通路31aが形成されている。吐出通路51と、吸入通路31aとは外部冷媒回路40により接続されている。外部冷媒回路40は、吐出通路51に接続された凝縮器41、この凝縮器41に接続された膨張弁42、及び膨張弁42に接続された蒸発器43を備えるとともに、蒸発器43には吸入通路31aが接続されている。そして、可変容量型斜板式圧縮機10は、冷凍サイクルに組み込まれている。
【0029】
クランク室15と吸入室31とは、シリンダブロック11及び弁・ポート形成体13を貫通する抽気通路35により接続されている。リヤハウジング14には、電磁式の容量制御弁50が組み付けられている。容量制御弁50は、吐出室30とクランク室15とを接続する給気通路36中に配置されている。容量制御弁50は電磁弁よりなり、ソレノイド(図示せず)の励磁・消磁によって給気通路36を開閉する。容量制御弁50のソレノイドの励磁・消磁は制御コンピュータによって制御されるとともに、この制御コンピュータにはエアコンスイッチが信号接続されている。
【0030】
そして、容量制御弁50が給気通路36を開閉することで、吐出室30からクランク室15への高圧の二酸化炭素の供給量が変更され、抽気通路35を介したクランク室15から吸入室31への二酸化炭素の排出量との関係から、クランク室15の圧力が変更される。その結果、クランク室15とシリンダボア11aとのピストン26を介した圧力差が変更され、斜板22の傾角が変更されて吐出容量が調節される。
【0031】
図2に示すように、吐出通路51は、吐出室30に連通する連通孔51aと、連通孔51aに連続するとともに連通孔51aよりも拡径する収容孔51bと、収容孔51bに連続するとともに外部冷媒回路40に接続される接続孔51cとから形成されている。連通孔51a及び収容孔51bは、回転軸16の軸方向に沿って延びるとともに、流路断面円孔状に形成されている。収容孔51bにおける連通孔51aとは反対側の端部は、リヤハウジング14の底面に開口している。そして、収容孔51bにおける連通孔51aとは反対側の端部は、封止部材52により封止されている。接続孔51cは、回転軸16の軸方向に対して直交する方向に沿って延びており、収容孔51bにおける連通孔51aとは反対側に連通している。収容孔51bには、吐出通路51を開閉する逆止弁60が設けられている。
【0032】
図3に示すように、逆止弁60の本体部61は、収容孔51bの内部に沿った移動が案内される円柱形状の被案内部62を有する。また、本体部61の収容孔51b上の延在方向における両端部には、被案内部62に連続するとともに被案内部62よりも小径の円柱形状の閉鎖部63,64が設けられている。すなわち、両閉鎖部63,64の外径は被案内部62の外径よりも小さい。また、被案内部62及び両閉鎖部63,64は同心形状に配置されている。被案内部62と一方の閉鎖部63との間には、円環状の第1傾斜部65が形成されるとともに、被案内部62と他方の閉鎖部64との間には、円環状の第2傾斜部66が形成されている。
【0033】
一方の閉鎖部63の第1端面63eは、平坦面状に形成されている。他方の閉鎖部64の第2端面64eは、平坦面状に形成されている。本体部61には、被案内部62を跨いで両閉鎖部63,64に向けて延びるとともに、本体部61の延在方向に対して直交する方向に貫通する貫通孔61hが形成されている。貫通孔61hは、被案内部62の中心を含み本体部61の延在方向に延びる長孔形状である。貫通孔61hにおける一方の閉鎖部63側の端部は、一方の閉鎖部63の外周面に開口している。貫通孔61hにおける他方の閉鎖部64側の端部は、他方の閉鎖部64の外周面に開口している。
【0034】
本体部61は、本体部61の延在方向における被案内部62の中間点C1を基準とした対称形状である。また、本体部61は、被案内部62及び両閉鎖部63,64が一体形成されてなる。
【0035】
図2に示すように、逆止弁60は、一方の閉鎖部63が連通孔51a側に位置するとともに、他方の閉鎖部64が封止部材52側に位置するように、収容孔51bに設けられている。そして、収容孔51bの底部における連通孔51a周りは、一方の閉鎖部63の第1端面63eが当接する弁座51eを形成している。弁座51eは平坦面状である。一方の閉鎖部63の第1端面63eが弁座51eに当接すると、弁座51eは、一方の閉鎖部63と協働して吐出通路51を閉鎖する。すなわち、逆止弁60は、一方の閉鎖部63の第1端面63eが弁座51eに当接すると、吐出通路51を閉鎖する閉弁状態となる。よって、第1端面63eには、弁座51eに当接して吐出通路51を閉鎖する円環状の第1シール部63sが形成されている。
【0036】
収容孔51b内には、一方の閉鎖部63の周囲に円環状の第1通路71が形成されるとともに、他方の閉鎖部64の周囲に円環状の第2通路72が形成されている。第1通路71は、貫通孔61hにおける一方の閉鎖部63側の端部に連通するとともに、第2通路72は、貫通孔61hにおける他方の閉鎖部64側の端部に連通している。
【0037】
エアコンスイッチがONされ、ソレノイドが励磁されると容量制御弁50によって給気通路36の開度が小さくなり、クランク室15の圧力が抽気通路35を介した吸入室31への放圧に基づいて低下していく。この減圧により、斜板22の傾角が大きくなり、可変容量型斜板式圧縮機10では、最小吐出容量を越えた吐出容量で圧縮が行われる。
【0038】
図4に示すように、吐出室30に吐出された二酸化炭素が連通孔51aに流れ込んで、二酸化炭素による吐出圧力が第1端面63eに作用して、本体部61が封止部材52側に向けて移動する。これにより、第1端面63eが弁座51eから離間して、逆止弁60は、吐出通路51を開放する開弁状態となる。
【0039】
そして、二酸化炭素は、連通孔51aから収容孔51b上の逆止弁60よりも延在方向の一端側である第1空間81に流れ込むとともに、第1通路71、貫通孔61h、第2通路72を経由して、収容孔51b上の逆止弁60よりも延在方向の他端側である第2空間82に流れ込む。よって、第1通路71、貫通孔61h及び第2通路72は、第1空間81と第2空間82とを連通する連通路70を形成している。すなわち、連通路70は、逆止弁60の内部に形成される貫通孔61h、及び収容孔51bと逆止弁60との間に形成される第1通路71及び第2通路72によって構成されている。
【0040】
そして、第2空間82に流れ込んだ二酸化炭素は、第2空間82から接続孔51cに流れ込み、接続孔51cから外部冷媒回路40に流出する。外部冷媒回路40に流出した二酸化炭素は、凝縮器41、膨張弁42及び蒸発器43を経由して、吸入通路31aに還流される。
【0041】
一方、制御コンピュータは、エアコンスイッチがOFFされると、容量制御弁50のソレノイドを消磁する。すると、容量制御弁50によって給気通路36が開かれ、吐出室30とクランク室15とが連通される。したがって、吐出室30の高圧な二酸化炭素が給気通路36を介してクランク室15へ供給される。さらに、クランク室15の圧力が抽気通路35を介して吸入室31に抜ける。その結果、クランク室15の圧力とシリンダボア11aの圧力とのピストン26を介した差が変更され、斜板22の傾角が最小となって吐出容量が最小となる。
【0042】
図2に示すように、吐出容量が最小となると、二酸化炭素における吐出圧力が低下するとともに、外部冷媒回路40側の圧力が高圧となり、外部冷媒回路40から接続孔51cを介して第2空間82に二酸化炭素が流れ込む。そして、第2空間82に流れ込んだ二酸化炭素の圧力が、第2端面64eに作用して、本体部61が弁座51eに向けて押圧され、第1端面63eが弁座51eに当接し、第1シール部63sによって吐出通路51が閉鎖される。その結果、外部冷媒回路40から吐出通路51を介して吐出室30へ二酸化炭素が逆流してしまうことが防止される。すなわち、本実施形態の逆止弁60は、吐出室30側と外部冷媒回路40側との差圧のみで作動する。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
逆止弁60の弁座51eからの離間時に、第1空間81と第2空間82とが連通路70を介して連通している。このため、吐出通路51内において第1空間81と第2空間82とが同じ圧力となり、逆止弁60に対して、逆止弁60を弁座51eに向けて押圧する力が作用せず、逆止弁60の移動がスムーズに行われる。
【0044】
ところで、第1端面63eと第2端面64eとの位置関係が、本体部61の延在方向において逆の状態で、逆止弁60を吐出通路51に配置したとする。この場合、逆止弁60は、他方の閉鎖部64の第2端面64eが弁座51eに当接すると、弁座51eは、他方の閉鎖部64と協働して吐出通路51を閉鎖する。すなわち、逆止弁60は、他方の閉鎖部64の第2端面64eが弁座51eに当接すると、吐出通路51を閉鎖する閉弁状態となる。よって、第2端面64eには、弁座51eに当接して吐出通路51を閉鎖可能な円環状の第2シール部64sが形成されている。
【0045】
すなわち、逆止弁60の吐出通路51上の延在方向における両端部には、逆止弁60の延在方向においていずれの方向に向けて逆止弁60を吐出通路51に配置しても、弁座51eに当接されると弁座51eと協働して吐出通路51を閉鎖可能とする閉鎖部63,64が設けられている。このため、逆止弁60の延在方向においていずれの方向に向けて逆止弁60を吐出通路51に配置しても、閉鎖部63,64と弁座51eとが協働して吐出通路51を閉鎖することが可能である。
【0046】
そして、連通路70の一端は、第1端面63eにおける第1シール部63sよりも径方向外側に位置し、他端は、第2端面64eにおける第2シール部64sよりも径方向外側に位置している。よって、第1シール部63s又は第2シール部64sによって吐出通路51を閉鎖したときに、第1空間81と第2空間82とが連通路70を介して連通してしまうことが無く、逆止弁60の機能が損なわれることが無い。
【0047】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)逆止弁60の吐出通路51上の延在方向における両端部には、逆止弁60の延在方向においていずれの方向に向けて逆止弁60を吐出通路51に配置しても、弁座51eに当接されると弁座51eと協働して吐出通路51を閉鎖可能とする閉鎖部63,64が設けられている。さらに、逆止弁60の弁座51eからの離間時に、第1空間81と第2空間82とが連通路70により連通する。これによれば、逆止弁60において、吐出通路51に対する設置の方向性を無くすことができるため、逆止弁60を吐出通路51に設置する際に、逆止弁60における吐出通路51に対する設置方向を気にする必要が無く、逆止弁60における吐出通路51に対する組み付けの作業性を向上させることができる。
【0048】
(2)閉鎖部63,64の外径は被案内部62の外径よりも小さい。これによれば、吐出通路51と閉鎖部63,64との間に、閉鎖部63,64の周方向に延びる連通路70の一部を形成することができるため、例えば、閉鎖部63,64の外面に、連通路70の一部として溝を形成する場合に比べると、連通路70の流路断面積を確保し易くすることができる。その結果、可変容量型斜板式圧縮機10の運転効率を向上させることができる。
【0049】
(3)被案内部62及び閉鎖部63,64は同心形状に配置されている。これによれば、被案内部62及び閉鎖部63,64が非同心形状に形成されている場合に比べると、逆止弁60の製造を容易なものとすることができるとともに、吐出通路51に対する弁座51eの加工を容易なものとすることができる。
【0050】
(4)連通路70は、本体部61の延在方向に対して直交する方向に被案内部62を貫通する貫通孔61hを有する。これによれば、例えば、連通路70が、被案内部62の外面に形成される溝を有する場合に比べると、連通路70の流路断面積を確保し易くすることができる。
【0051】
(5)貫通孔61hは、被案内部62の中心を含み本体部61の延在方向に延びる長孔形状である。これによれば、貫通孔61hの流路断面積をさらに確保し易くすることができる。
【0052】
(6)逆止弁60は、本体部61の延在方向における被案内部62の中間点C1を基準とした対称形状である。これによれば、逆止弁60の加工を容易なものとすることができるとともに、構成を簡素化させることができる。
【0053】
(7)本実施形態では、冷媒は二酸化炭素である。二酸化炭素は高圧冷媒であるため、吐出通路51を細くしなければならず、また、可変容量型斜板式圧縮機10全体としては寸法が予め設定されているため、これらの条件下での逆止弁60の設計には自由度が無い。しかし、本実施形態によれば、逆止弁60を吐出通路51内に設置することができるため、自由な設計が可能となる。
【0054】
(8)逆止弁60は、吐出室30側と外部冷媒回路40側との差圧のみで作動する。これによれば、逆止弁60を作動させるための作動装置を別途設置する必要が無く、構成を簡素化させることができる。
【0055】
(9)第1傾斜部65は、連通孔51aから第1空間81に流れ込む二酸化炭素の圧力を受圧する受圧部として機能する。よって、逆止弁60が封止部材52側に向けて移動し易くなる。また、第2傾斜部66は、外部冷媒回路40から接続孔51cを介して第2空間82に流れ込む二酸化炭素の圧力を受圧する受圧部として機能する。よって、逆止弁60が弁座51eに向けて移動し易くなる。
【0056】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図5に示すように、連通路70が、第1通路71と第2通路72とを連通するとともに本体部61の外周面に形成される複数(図5では二つ図示)の溝73を有していてもよい。なお、溝73の数は特に限定されるものではない。
【0057】
図6に示すように、閉鎖部63,64の外径と被案内部62の外径とが同じであってもよい。そして、逆止弁60の外周面に、第1空間81と第2空間82とを繋ぐ連通路としての溝70Aが形成されていてもよい。溝70Aは、第1端面63eから第2端面64eにかけて延びている。また、図示はしないが、連通路として、第1端面63eから第2端面64eにかけて逆止弁60の延在方向に沿って逆止弁60の内部を延びる貫通孔を形成してもよい。この場合、貫通孔の一端が、第1端面63eにおける第1シール部63sよりも径方向外側に位置し、他端が、第2端面64eにおける第2シール部64sよりも径方向外側に位置している必要がある。
【0058】
図7に示すように、閉鎖部63,64が被案内部62から本体部61の延在方向に離間していくにつれて縮径していく先細り形状であってもよい。この場合、弁座51eは、収容孔51bから連通孔51aに向かうにつれて縮径していく円錐面形状になっており、閉鎖部63,64における先端側の外周面と弁座51eとが当接することで、吐出通路51が閉鎖される。
【0059】
○ 実施形態において、本体部61は、本体部61の延在方向における被案内部62の中間点C1を基準とした非対称形状であってもよい。
○ 実施形態において、被案内部62及び閉鎖部63,64が非同心形状に形成されていてもよい。
【0060】
○ 実施形態において、貫通孔61hは、本体部61の延在方向に対して斜めに交差する方向に延びていてもよい。
○ 実施形態において、本体部61は、被案内部62及び両閉鎖部63,64が一体形成されていなくてもよく、例えば、本体部61の延在方向における被案内部62の中間点C1を基準として、互いに取り外し可能な二つの部品から形成されていてもよい。
【0061】
○ 実施形態において、逆止弁60の材質は特に限定されるものではなく、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やMCナイロン等の樹脂材料であってもよい。また、逆止弁60は、リヤハウジング14の材質の線膨脹係数の近い素材である真鍮系材料や金属材料に樹脂がコートされたものであってもよい。
【0062】
○ 実施形態において、逆止弁60の延在方向は、例えば、回転軸16の軸方向に対して交差する方向であってもよい。
○ 実施形態において、逆止弁60を作動させるための作動装置を別途設置してもよい。
【0063】
○ 実施形態では、可変容量型斜板式圧縮機10に具体化したが、これに限らず、吐出通路に逆止弁を有する圧縮機であれば、圧縮機の種類は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
10…圧縮機としての可変容量型斜板式圧縮機、30…吐出室、40…外部冷媒回路、51…吐出通路、51e…弁座、60…逆止弁、61h…貫通孔、62…被案内部、63,64…閉鎖部、70…連通路、70A…連通路としての溝、81…第1空間、82…第2空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8