【文献】
Karollina Junka etc,Modification of cellulose Nanofibrils with Luminescent Carbon Dots,BioMACROMOLECULES,米国,2014年 1月23日,15(3),876-881
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記層状珪酸塩は、サポナイト、スティーブンサイト、ヘラクライト、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、マイカ、バイデライト、アイラライト、カネマイト、マガディアイト、及び、ノントライトからなる群から選ばれるいずれか1種以上の化合物からなる請求項1に記載の透明蛍光材。
前記繊維状化合物は、セルロース系天然繊維、タンパク質系天然繊維、及び、化学繊維からなる群から選ばれるいずれか1種以上の繊維からなる請求項1又は2に記載の透明蛍光材。
前記透明蛍光材は、通常空気条件下において、200℃で1時間加熱した後の可視紫外分光光度計による500nmの光線透過率が60%以上である請求項1から7までのいずれか1項に記載の透明蛍光材。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 透明蛍光材]
本発明に係る透明蛍光材は、以下の構成を備えている。
(1)前記透明蛍光材は、
層状珪酸塩からなる珪酸塩シートと、
繊維状化合物と、
ナノグラフェンとを備え、
前記珪酸塩シートの粒子間に、前記繊維状化合物と前記ナノグラフェンとが複合化している膜からなる。
(2)前記透明蛍光材は、全固体に対する前記層状珪酸塩の重量比が80%以上である。
(3)前記透明蛍光材は、可視光線透過率が80%を超えている。
(4)前記透明蛍光材は、蛍光量子収率が1%以上である。
(5)前記透明蛍光材は、自立膜として利用可能な機械的強度を有する。
【0021】
[1.1. 珪酸塩シート]
「層状珪酸塩(いわゆる、粘土)」とは、金属イオン(例えば、Alイオン、Caイオン、Naイオンなど)と珪酸からなるシート(珪酸塩シート)が層状に積層している化合物をいう。層状珪酸塩は、シート間に水、金属イオン、有機物などを容易に取り込むことができる。
「珪酸塩シート」とは、層状珪酸塩を層間剥離させることにより得られるシート状の化合物をいう。層状珪酸塩を水又は有機溶媒に分散させると、膨潤及び層間剥離が起こり、珪酸塩シートの分散液が得られる。珪酸塩シートは、通常、端面部が正に帯電し、平面部が負に帯電している。
【0022】
層状珪酸塩としては、例えば、サポナイト、スティーブンサイト、ヘラクライト、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、マイカ、バイデライト、アイラライト、カネマイト、マガディアイト、ノントライトなどがある。透明蛍光材は、これらのいずれか1種の化合物を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。層状珪酸塩は、天然物又は合成物のいずれであっても良い。
層状珪酸塩は、特に、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライトなどの天然スメクタイト、又は、合成スメクタイトが好適である。
【0023】
層状珪酸塩は、通常、親水性であるが、層状珪酸塩を有機化すると、疎水性にすることができる。層状珪酸塩を有機化する方法としては、イオン交換により層状珪酸塩の層間に有機化剤を導入する方法が挙げられる。層状珪酸塩は、イオン交換性(例えば、モンモリロナイトの場合は、陽イオン交換性)を有しているので、有機化剤と容易にイオン交換することができる。
【0024】
有機化剤としては、例えば、
(a)ジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、
(b)ベンジル基やポリオキシエチレン基を有するアンモニウム塩、
(c)フォスホニウム塩、
(d)イミダゾリウム塩
などがある。
【0025】
珪酸塩シートの大きさは、特に限定されるものではなく、繊維状化合物及びナノグラフェンとの複合体を形成可能な大きさであれば良い。珪酸塩シートの大きさは、製造方法にもよるが、通常、5nm〜2000nm程度である。ここで、「珪酸塩シートの大きさ」とは、珪酸塩シートの平面方向の長さの最大値をいう。
【0026】
[1.2. 繊維状化合物]
「繊維状化合物」とは、有機物又は無機物からなる繊維状の化合物をいう。繊維状化合物は、透明蛍光体に自立膜として使用可能な機械的強度を付与するために用いられる。繊維状化合物は、通常、同一繊維内に負に帯電している部分と、正に帯電している部分とを持つ。
【0027】
繊維状化合物の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。繊維状化合物としては、例えば、
(a)綿、麻、やし、いぐさ、竹などのセルロース系天然繊維、
(b)ウール、シルク、カシミヤ、ダウンなどのタンパク質系天然繊維、
(c)炭素繊維などの化学繊維
などがある。透明蛍光材は、これらのいずれか1種の繊維状化合物を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
【0028】
繊維状化合物の直径及び長さは、珪酸塩シート及びナノグラフェンと複合化が可能な大きさであれば良い。
繊維状化合物の直径は、0.5nm〜100nmが好ましく、さらに好ましくは、1nm〜50nmである。
繊維状化合物の長さは、1nm〜1000nmが好ましく、さらに好ましくは、2nm〜100nmである。
【0029】
[1.3. ナノグラフェン]
[1.3.1. 定義]
本発明において、「ナノグラフェン」とは、炭素の環構造及びsp
2結合性の芳香環で構成された2次元のシート状構造を有するものをいう。ナノグラフェンは、単層のシートからなる場合と、多層のシートからなる場合とがある。
ナノグラフェンは、不可避的不純物としての窒素を0.5wt%未満含有しているもの(狭義の「ナノグラフェン」)でも良く、あるいは、窒素を0.5wt%以上含有しているもの(窒素含有ナノグラフェン)でも良い。
【0030】
PL特性を示すためには、ナノグラフェンは、sp
3型の混成軌道を持つ炭素からなる絶縁性のマトリックス(sp
3マトリックス)中に、sp
2型の混成軌道を持つ炭素からなる微細なクラスター(sp
2クラスター)が埋め込まれた構造を備えている必要があると考えられている。すなわち、PL特性を示すナノグラフェンにおいて、sp
2クラスターは、発光中心として機能すると考えられている。
【0031】
本発明において、「窒素含有ナノグラフェン」とは、ナノグラフェンに意図的に窒素が導入されたものであって、窒素含有量が0.5wt%以上であるものをいう。
本発明において、「窒素が導入されている」とは、
(1)ナノグラフェンを構成する炭素の一部が窒素で置換されていること、
(2)ナノグラフェンのエッジ及び/又は基底面に窒素含有官能基が結合していること、又は、
(2)ナノグラフェンの表面又はシート間に窒素含有化合物が吸着していること、
をいう。
ナノグラフェンに導入された窒素は、置換、結合又は吸着のいずれか1種の形態で存在していても良く、あるいは、2種以上の形態で存在しているものでも良い。
【0032】
ナノグラフェンが窒素を含む場合、窒素は、窒素含有官能基がナノグラフェンを構成する炭素原子に結合する形態で含まれているのが好ましい。
本発明において、「窒素含有官能基」とは、窒素を構成元素として含む官能基をいう。窒素含有官能基としては、アミノ基、イミノ基、N−オキシド基、N−ヒドロキシ基、ヒドラジン基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基などがある。
【0033】
本発明において、「窒素含有化合物」とは、窒素を構成元素として含む化合物であって、水に溶解又は分散可能なものをいう。
窒素含有化合物としては、例えば、
(1)尿素、アンモニア、チオ尿素、ヒドラジン、硝酸エステル、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン、ピリジンN−オキシド、N−ヒドロキシルアルキレンイミン、アジ化ナトリウム、ナトリウムアミド、カルボン酸アジド、
(2)メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミンなどのアルキルアミンやそのハロゲン酸塩、
(3)エチレンジアミン、プロパンジアミンなどのジアミン類、
などがある。
【0034】
[1.3.2. 窒素含有量]
ナノグラフェンに含まれる窒素含有量は、発光効率及び発光波長に影響を与える。一般に、窒素含有量が多くなるほど、発光波長の変化量が大きくなる。このような効果を得るためには、窒素含有量は、0.5wt%以上が好ましい。窒素含有量は、さらに好ましくは、1wt%以上、さらに好ましくは、2wt%以上、さらに好ましくは、5wt%以上である。
一方、窒素含有量が多くなりすぎると、電子状態が大幅に変化し、PL特性が得られない。従って、窒素含有量は、50wt%以下が好ましい。窒素含有量は、さらに好ましくは、40wt%以下、さらに好ましくは、30wt%以下、さらに好ましくは、20wt%以下、さらに好ましくは、10wt%以下である。
【0035】
[1.3.3. 平均質量]
ナノグラフェンの平均質量は、発光効率及び発光波長に影響を与える。ここで、「平均質量」とは、質量スペクトルを測定することにより得られる単位電荷当たりのナノグラフェンの質量の平均値をいう。平均質量とナノグラフェンのサイズには相関があり、平均質量が小さくなるほど、ナノグラフェンのサイズが小さくなることを表す。
【0036】
一般に、ナノグラフェンのサイズが小さくなるほど、量子サイズ効果により、発光波長は短くなる。可視光領域で発光させるためには、ナノグラフェンの平均質量は、500m/z以上が好ましい。平均質量は、さらに好ましくは、1000m/z以上である。
一方、ナノグラフェンのサイズが大きくなりすぎると、可視光領域で発光しなかったり、あるいは、発光中心からの蛍光がシートに再吸収される、いわゆる「消光」が起こるため、発光効率が低下する。従って、ナノグラフェンの平均質量は、50000m/z以下が好ましい。平均質量は、さらに好ましくは、5000m/z以下である。
【0037】
[1.3.4. 平均厚さ]
ナノグラフェンの厚さ(すなわち、シートの積層数)は、発光効率及び発光波長に影響を与える。
単層のナノグラフェンであっても、蛍光体として機能する。単層のナノグラフェンの厚さは、約0.3nmである。すなわち、ナノグラフェンの平均厚さは、0.3nm以上であれば良い。平均厚さは、さらに好ましくは、1nm以上、さらに好ましくは、2nm以上である。
【0038】
ナノグラフェンの厚さが厚くなるほど、発光波長が長くなる。これは、sp
2クラスターのシート積層方向のサイズが大きくなることにより、π−π
*エネルギーギャップが小さくなるためと考えられる。
しかしながら、ナノグラフェンの厚さが厚くなりすぎると、電子構造がバルクに近づくため、効率的な発光が得られない。従って、ナノグラフェンの平均厚さは、50nm以下が好ましい。平均厚さは、さらに好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、10nm以下である。
【0039】
ここで、「ナノグラフェンの平均厚さ」とは、無作為に選んだn個(n≧5)のナノグラフェンの厚さの平均値をいう。
厚さの測定方法としては、
(1)原子間力顕微鏡(AFM)を用いてシートの厚さを直接測定する方法、
(2)透過電子顕微鏡(TEM)写真で観察されるシートの層数から理想的な1層分の厚み(0.34nm)を考慮して厚さを求める方法、
などがある。いずれの方法を用いても、ほぼ同等の結果が得られる。
【0040】
[1.3.5. ナノグラフェンの蛍光量子収率(発光効率)]
上述したナノグラフェンは、1%以上の蛍光量子収率を示す。平均厚さ(シートの層数)、平均サイズ、窒素含有量などを最適化すると、蛍光量子収率はさらに増大する。具体的には、これらを最適化することによって、ナノグラフェンの蛍光量子収率は、7%以上、10%以上、15%以上、あるいは、20%以上となる。
ここで、「蛍光量子収率(発光効率)」とは、吸収された光子数に対する蛍光として発光される光子数の割合をいう。
【0041】
[1.4. 重量比]
本発明に係る透明蛍光材は、層状珪酸塩を主成分とし、透明性が高く、かつ、柔軟性を有する膜である。透明蛍光材は、珪酸塩シートが配向して積層した構造を有する。繊維状化合物とナノグラフェンは、珪酸塩シートの粒子間に複合化されている。高い透光性と高い柔軟性とを持つ透明蛍光材を得るためには、各成分の重量比を最適化する必要がある。
ここで、「重量比」とは、全固体の重量に対する着目している成分の重量の比をいう。
「全固体」とは、透明蛍光体を構成するすべての固体、すなわち、層状珪酸塩、繊維状化合物、及び、ナノグラフェンをいう。
【0042】
層状珪酸塩の重量比が少なすぎると、透光性が低下する。従って、層状珪酸塩の重量比は、80%以上である必要がある。層状珪酸塩の重量比は、さらに好ましくは、85%以上、さらに好ましくは、90%以上である。
一方、層状珪酸塩の重量比が過剰になると、自立膜を形成できない、透光性が低下するという問題がある。従って、層状珪酸塩の重量比は、95%以下が好ましい。層状珪酸塩の重量比は、さらに好ましくは、92.5%以下、さらに好ましくは、90%以下である。
【0043】
繊維状化合物の重量比が少なすぎると、柔軟性が不十分となる。従って、繊維状化合物の重量比は、4%以上が好ましい。
一方、繊維状化合物の重量比が過剰になると、透光性が低下する。従って、繊維状化合物の重量比は、19%以下が好ましい。より好ましくは、9%以上14%以下である。
【0044】
ナノグラフェンの重量比が少なすぎると、発光強度が不十分となる。従って、ナノグラフェンの重量比は、0.01%以上が好ましい。
一方、ナノグラフェンの重量比が過剰になると、透光性が低下する。従って、ナノグラフェンの重量比は、15%以下が好ましい。より好ましくは、0.1%以上5%以下である。
繊維状化合物、ナノグラフェン以外の残部は、珪酸塩シートであることが好ましい。
【0045】
[1.5. 光線透過率]
透明蛍光材は、ナノグラフェンが励起光を吸収し、かつ、蛍光を放出することによって発光する。そのため、透明蛍光材の光線透過率は、高いほど良い。
具体的には、前記透明蛍光材は、可視光線透過率が80%を超えている必要がある。可視光線透過率は、さらに好ましくは、85%以上である。
ここで、「可視光線透過率」とは、分光光度計を用いて測定した可視光領域の透過率をいう。
このような条件を満たす透明蛍光材は、珪酸塩シートの重量比を80%以上95%以下にすることにより得られる。
【0046】
透明蛍光材は、可視紫外分光光度計による500nmの光線透過率が80%以上であるものが好ましい。これは、ナノグラフェンの蛍光波長が400〜600nmであるため、500nm付近の透過率が高い必要があるためである。500nmの光線透過率は、さらに好ましくは、85%%以上である。
このような条件を満たす透明蛍光材は、珪酸塩シートの重量比を80%以上95%以下にすることにより得られる。
【0047】
さらに、透明蛍光材は、通常空気条件下において、200℃で1時間加熱した後の可視紫外分光光度計による500nmの光線透過率が50%以上であるものが好ましい。これは、ナノグラフェンの蛍光波長が400〜600nmであるため、500nm付近の透過率が高い必要があるためである。200℃で1時間加熱した後の500nmの光線透過率は、さらに好ましくは、60%以上である。
このような条件を満たす透明蛍光材は、珪酸塩シートの重量比を80%以上95%以下にすることにより得られる。
【0048】
[1.6. 透明蛍光材の蛍光量子収率(発光効率)]
上述したように、本発明に係る透明蛍光材において、ナノグラフェンが主として発光する。そのため、ナノグラフェンの蛍光量子収率が高くなるほど、透明蛍光材の蛍光量子収率も高くなる。
本発明に係る透明蛍光材は、上述したナノグラフェンを用いており、かつ、ナノグラフェンが高度に分散しているため、1%以上の蛍光量子収率を示す。ナノグラフェンの構造を最適化するとことによって、透明蛍光材の蛍光量子効率は、7%以上、10%以上、15%以上、あるいは、20%以上となる。
【0049】
[1.7. 透明蛍光材の厚さ]
透明蛍光材の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。
一般に、透明蛍光材の厚さが厚くなるほど、機械的強度が向上する。しかしながら、透明蛍光材の厚さが厚くなりすぎると、光線透過率及び柔軟性が低下する。高い光線透過率と高い柔軟性を得るためには、透明蛍光材の厚さは、5mm以下が好ましい。透明蛍光材の厚さは、さらに好ましくは、2mm以下、さらに好ましくは、1mm以下である。
【0050】
透明蛍光材の厚さが薄くなるほど、光線透過率及び柔軟性が向上する。また、本発明に係る透明蛍光材は、基板上に形成された状態でも使用することができる。しかしながら、透明蛍光材の厚さが薄くなりすぎると、機械的強度が低下し、自立膜として利用するのが困難となる。自立膜として使用するためには、透明蛍光材の厚さは、10μm以上が好ましい。透明蛍光材の厚さは、さらに好ましくは、15μm以上、さらに好ましくは、20μm以上である。
【0051】
[1.8. 機械的特性]
本発明に係る透明蛍光材は、繊維状化合物を含んでいるので、自立膜として利用可能な機械的強度を有する。 透明蛍光材の厚さ、繊維状化合物の重量比などを最適化することによって、透明蛍光材の機械的強度は、さらに向上する。
具体的には、製造条件を最適化することによって、曲げ半径4mmで曲げた時にクラックが発生しない透明蛍光材が得られる。
【0052】
[2. 発光デバイス]
本発明に係る透明蛍光材は、蛍光量子効率が高いだけでなく、優れた耐熱性、ガスバリア性、透明性、及び柔軟性を有している。そのため、各種の発光デバイスの発光部材として用いることができる。
本発明が適用される発光デバイスとしては、例えば、
(1)高濃度の照明、
(2)ディスプレイ、
(3)太陽電池(の波長変換材)、
などがある。
【0053】
[3. ナノグラフェンの製造方法]
ナノグラフェン(窒素含有ナノグラフェン)は、
窒素含有化合物を溶解させた水溶液に酸化グラファイト又はグラフェン酸化物を分散させ(分散工程)、
前記水溶液を60℃以上で加熱する(加熱工程)
ことにより製造することができる。
実質的に窒素を含まないナノグラフェンは、窒素含有化合物を用いない以外は窒素含有ナノグラフェンと同様の方法により、製造することができる。
【0054】
[3.1. 分散工程]
まず、窒素含有化合物を溶解させた水溶液に酸化グラファイト又はグラフェン酸化物を分散させる(分散工程)。
【0055】
[3.1.1. 窒素含有化合物]
「窒素含有化合物」とは、上述したように、窒素を構成元素として含む化合物であって、水に溶解又は分散可能なものをいう。出発原料には、いずれか1種の窒素含有化合物を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。
窒素含有化合物は、水に溶解又は分散させた水溶液の状態で使用される。水溶液に含まれる窒素含有化合物の濃度は、特に限定されるものではなく、出発原料の種類や要求される特性などに応じて最適な濃度を選択すればよい。窒素含有化合物の濃度は、通常、0.1〜10mol/Lである。
【0056】
[3.1.2. 酸化グラファイト及びグラフェン酸化物]
「酸化グラファイト」とは、グラファイトを構成するグラフェン層のエッジ及び/又は基底面上に酸素含有官能基(例えば、−COOH基、−OH基、−C−O−C−基など)が結合しているものをいう。酸化グラファイトは、例えば、強酸(濃硫酸)中で酸化剤(過マンガン酸カリウム、硝酸カリウムなど)を用いてグラファイトを酸化させることにより得られる。
【0057】
「グラフェン酸化物」とは、酸化グラファイトの層間を剥離させることにより得られるシート状物質をいう。グラフェン酸化物は、例えば、酸化グラファイトを水溶液中に分散させ、超音波を照射することにより得られる。
本発明において、出発原料には、層間剥離を行う前の酸化グラファイト又は層間剥離させたグラフェン酸化物のいずれか一方を用いても良く、あるいは、双方を用いても良い。
【0058】
酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物は、窒素含有化合物を含む水溶液に添加される。水溶液に含まれる酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物の量は、特に限定されるものではなく、出発原料の種類や要求される特性などに応じて最適な量を選択すればよい。酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物の量は、通常、0.1〜50g/Lである。
【0059】
[3.2. 加熱工程]
次に、窒素含有化合物を分散させた水溶液に酸化グラファイト及び/又はグラフェン酸化物を分散させた後、水溶液を加熱する(加熱工程)。
加熱は、反応速度を速くするために行う。加熱温度が水溶液の沸点を超える場合、加熱は、密閉容器内で行う。
【0060】
加熱温度が低すぎると、現実的な時間内に反応が十分進行しない。従って、加熱温度は、60℃以上である必要がある。加熱温度は、さらに好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上である。
一方、加熱温度が高くなりすぎると、置換や結合した窒素が脱離するおそれがある。また、高価な耐圧容器が必要となり、製造コストが増大する。従って、加熱温度は、200℃以下が好ましい。加熱温度は、さらに好ましくは、180℃以下、さらに好ましくは、160℃以下である。
【0061】
加熱時間は、加熱温度に応じて最適な時間を選択する。一般に、加熱温度が高くなるほど、短時間で反応を進行させることができる。加熱時間は、通常、1〜20時間である。
【0062】
加熱条件を最適化すると、グラフェンナノシートの窒素含有量、平均厚さ、及び平均サイズを制御できる。一般に、加熱温度が高くなるほど、及び/又は、加熱時間が長くなるほど、窒素含有量が減少し、平均厚さが薄くなり、あるいは、平均サイズが小さくなる。
得られたナノグラフェンは、そのまま透明蛍光材の製造に用いても良く、あるいは、必要に応じて、洗浄、ろ過及び/又は透析を行っても良い。
【0063】
[4. 透明蛍光材の製造方法]
本発明に係る透明蛍光材は、
層状珪酸塩、繊維状化合物、及びナノグラフェンを分散媒に分散させ、分散液を調製し(分散液調製工程)、
前記分散液を静置して固形分を膜状に沈積させ(成膜工程)、
前記膜を乾燥させる(乾燥工程)
ことにより製造することができる。
【0064】
[4.1. 分散液調製工程]
まず、層状珪酸塩、繊維状化合物、及びナノグラフェンを分散液に分散させ、分散液を調製する(分散液調製工程)。
分散媒は、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒の混合溶媒の何れであっても良い。層状珪酸塩は、通常、水溶性であるが、層状珪酸塩を有機化することにより疎水性となり、有機溶媒に分散させることができる。分散媒に添加する各原料の量は、目的とする組成を有する透明蛍光材が得られる量とする。
【0065】
原料は、分散媒に同時に添加しても良く、あるいは、段階的に添加しても良い。ナノグラフェンは、通常、水分散液の状態で得られるので、層状珪酸塩及び繊維状化合物を予め分散媒に分散させておき、これとナノグラフェン水分散液とを混合するのが好ましい。層状珪酸塩と繊維状化合物を含む分散液を作製する場合、両者を分散媒に同時に添加しても良く、あるいは、段階的に添加しても良い。
【0066】
例えば、層状珪酸塩として天然又は合成スメクタイトを用いる場合、まず層状珪酸塩に水を加え、振とうし、均一な分散液(A)を得る。この分散液(A)に、適宜、繊維状化合物を加え、振とうし、層状珪酸塩及び繊維状化合物を含む均一な分散液(B)を得る。この分散液(B)とナノグラフェン分散液とを混合、攪拌し、目的の分散液を得る。気泡の少ない膜を得るためには、分散液を調製後、分散液の脱気処理を行うのが好ましい。
【0067】
[4.2. 成膜工程]
次に、前記分散液を静置して固形分を膜状に沈積させる(成膜工程)。
具体的には、分散液をトレイなどの適当な基板表面に塗布し、均一な厚さを有するペースト膜を作製する。塗布後、所定時間静置すると、固形分が膜状に沈積するとともに、分散媒が分離する。分離した分散媒は、トレイから廃棄しても良く、あるいは、そのまま後述する乾燥工程に移行しても良い。
分散液の塗布量、及び分散液中の固形分濃度を制御することにより、透明蛍光材の膜厚を制御することができる。
【0068】
[4.3. 乾燥工程]
次に、沈積した前記膜を乾燥させる(乾燥工程)。
乾燥は、室温で行っても良く、あるいは、加熱下で行っても良い。加熱下で乾燥を行う場合、加熱温度は、特に限定されるものではなく、自立可能な機械的強度を有する膜が得られる条件であればよい。加熱温度は、通常、40〜300℃程度である。
乾燥後、基板から膜を剥離させると、自立膜が得られる。
【0069】
[5. 作用]
図1(a)に、珪酸塩シート−繊維状化合物−ナノグラフェン複合フィルムの模式図を示す。
図1(b)に、珪酸塩シート−繊維状化合物−ナノグラフェン複合フィルムの光学写真を示す。
珪酸塩シートは、通常、端面部が正に帯電し、平面部が負に帯電している。一方、繊維状化合物は、通常、同一繊維内に負に帯電している部分と、正に帯電している部分とを持つ。さらに、ナノグラフェンは、通常、負に帯電している部分を持つが、これにある種の官能基(窒素含有官能基)を導入すると、さらに正に帯電している部分を持つ。
【0070】
このような珪酸塩シート、繊維状化合物、及びナノグラフェンを含む分散液を基材表面に塗布し、溶媒を揮発させると、珪酸塩シートが平行に配向すると同時に、静電的相互作用により、珪酸塩シートの粒子間に繊維状化合物及びナノグラフェンが高濃度に複合化される(
図1(a)参照)。珪酸塩シート、繊維状化合物、及びナノグラフェンが相互に高配向することで、優れた透明性(
図1(b)参照)、耐熱性、蛍光特性、柔軟性を示す。
【0071】
本発明に係る透明蛍光材は、以下のような効果を奏する。
(1)本発明に係る透明蛍光材は、層状珪酸塩、繊維状化合物及びナノグラフェンの複合体からなるため、優れた透明性、耐熱性、耐光性、蛍光量子収率、輝度、及び柔軟性を有する。
(2)本発明に係る透明蛍光材は、珪酸塩シートの粒子間にナノグラフェンが複合化しているため、ナノグラフェンの単分散状態が維持される。その結果、透明蛍光材中に存在するナノグラフェンは、高い蛍光量子収率を保持している。
(3)表面官能基の異なるナノグラフェンを組み合わせることで、単一波長の励起光と波長の異なる複数の蛍光とが混ざり合い、白色光が得られる。
(4)柔軟な透明蛍光材を用いて、発光デバイスを作製することができる。
(5)本発明に係る透明蛍光材は、高濃度の照明やディスプレイなどの光電子デバイスに用いることができる。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
[1. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の作製]
[1.1. ナノグラフェンの作製]
0.1gの酸化グラファイトを28%アンモニア水:5mLに分散させた。得られた水溶液を密閉容器中、120℃で10時間加熱した。加熱後、上澄み溶液から約0.2mg/mL濃度のナノグラフェン水分散溶液を分離・精製した。得られたナノグラフェン水分散溶液は、青色の蛍光を示し、発光効率は約24%であった。
発光効率は、発光効率が既知であるキニーネ硫酸塩(0.5M硫酸水溶液中での発光効率が54%)色素を用いて、該色素水溶液とナノグラフェン水分散液における吸光度と蛍光強度とを比較することで算出した。
【0073】
[1.2. サポナイト−セルロースナノファイバー水分散液の調製]
層状珪酸塩として、0.095gの合成サポナイト(Na
0.33Mg
3Al
0.33Si
3.67O
10(OH)
2)と、2wt%セルロースナノファイバー分散水溶液:0.2mLとを、9.8mLのイオン交換水に加えた。これを回転子とともにガラス製容器に入れ、2時間スターラーを用いて激しく攪拌することで、均一なサポナイト−セルロースナノファイバー水分散液を得た。
【0074】
[1.3. 透明蛍光材の作製]
上記[1.2.]で作製したサポナイト−セルロースナノファイバー水分散液:10mLに、上記[1.1.]で作製したナノグラフェン水分散液:5mLを加えた。得られた混合液を攪拌した後、ポリテトラフルオロエチレンシート上の型に溶液を塗布し、60℃で乾燥することにより、厚さ約40μmのサポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜(CCG_95−4−1)を得た。サポナイトの重量比は95wt%、セルロースナノファイバーの重量比は4wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0075】
[2. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の特性]
図8(a)の左端に、得られた膜にUVランプを用いて波長365nmの紫外線を照射したときの写真を示す。
図8(a)に示すように、得られた膜から青色の強い発光が観測された。
【0076】
可視紫外分光光度計(UV−3600、島津製作所)により、500nmでの光学透過率を測定した。その結果、CCG_95−4−1の500nmでの光学透過率は、89%であった(
図2)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、86%であった(
図3)。
図4に、CCG_95−4−1の蛍光スペクトルを示す。蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった。このときの発光効率は、約25%であった。
さらに、CCG_95−4−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0077】
(実施例2)
[1. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.09gの合成サポナイトと、2wt%セルロースナノファイバー分散水溶液:0.45mLとを、9.55mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜(CCG_90−9−1)を得た。サポナイトの重量比は90wt%、セルロースナノファイバーの重量比は9wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0078】
[2. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の特性]
CCG_90−9−1の500nmでの光学透過率は、91%であった(
図2)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、88%であった(
図3)。
CCG−90−9−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図4)。このときの発光効率は、約24%であった。
さらに、CCG_90−9−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0079】
(実施例3)
[1. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.085gの合成サポナイトと、2wt%セルロースナノファイバー分散水溶液:0.7mLとを、9.3mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜(CCG_85−14−1)を得た。サポナイトの重量比は85wt%、セルロースナノファイバーの重量比は14wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。
生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0080】
[2. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の特性]
CCG_85−14−1の500nmでの光学透過率は、82%であった(
図2)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、81%であった(
図3)。
CCG_85−14−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図4)。このときの発光効率は、約25%であった。
さらに、CCG_85−14−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0081】
(実施例4)
[1. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.08gの合成サポナイトと、2wt%セルロースナノファイバー分散水溶液:0.95mLとを、9.05mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜(CCG_80−19−1)を得た。サポナイトの重量比は80wt%、セルロースナノファイバーの重量比は19wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0082】
[2. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の特性]
CCG_80−19−1の500nmでの光学透過率は、89%であった(
図2)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、81%であった(
図3)。
CCG_80−19−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図4)。このときの発光効率は、約23%であった。
さらに、CCG_80−19−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0083】
(比較例1)
[1. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.075gの合成サポナイトと、2wt%セルロースナノファイバー分散水溶液:1.2mLとを、8.8mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜(CCG_75−24−1)を得た。サポナイトの重量比は75wt%、セルロースナノファイバーの重量比は24wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。
【0084】
[2. サポナイト−セルロースナノファイバー−ナノグラフェン複合膜の特性]
CCG_75−24−1の500nmでの光学透過率は、61%であった(
図2)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、49%であった(
図3)。
CCG_75−24−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図4)。
【0085】
(実施例5)
[1. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.095gの合成サポナイトと、6wt%シルク繊維水分散液:67μLとを、9.93mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜(CSG_95−4−1)を得た。サポナイトの重量比は95wt%、シルク繊維の重量比は4wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0086】
[2. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の特性]
CSG_94−4−1の500nmでの光学透過率は、85%であった(
図5)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、60%であった(
図6)。
図7に、CSG_95−4−1の蛍光スペクトルを示す。蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった。このときの発光効率は、約22%であった。
さらに、CSG_95−4−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0087】
(実施例6)
[1. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.09gの合成サポナイトと、6wt%シルク繊維水分散液:0.15mLとを、9.85mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜(CSG_90−9−1)を得た。サポナイトの重量比は90wt%、シルク繊維の重量比は9wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0088】
[2. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の特性]
CSG_90−9−1の500nmでの光学透過率は、91%であった(
図5)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、76%であった(
図6)。
CSG_90−9−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図7)。このときの発光効率は、約23%であった。
さらに、CSG_90−9−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0089】
(実施例7)
[1. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.085gの合成サポナイトと、6wt%シルク繊維水分散液:0.23mLとを、9.77mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜(CSG_85−14−1)を得た。サポナイトの重量比は85wt%、シルク繊維の重量比は14wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0090】
[2. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の特性]
CSG_85−14−1の500nmでの光学透過率は、89%であった(
図5)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、71%であった(
図6)。
CSG_85−14−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図7)。このときの発光効率は、約22%であった。
さらに、CSG_85−14−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0091】
(実施例8)
[1. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.08gの合成サポナイトと、6wt%シルク繊維水分散液:0.32mLとを、9.68mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜(CSG_89−19−1)を得た。サポナイトの重量比は80wt%、シルク繊維の重量比は19wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。生成した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0092】
[2. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の特性]
CSG_80−19−1の500nmでの光学透過率は、87%であった(
図5)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、67%であった(
図6)。
CSG_80−19−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図7)。このときの発光効率は、約21%であった。
さらに、CSG_85−14−1を曲げ半径4mmで曲げても、クラックは発生せず、何らの欠陥も生じなかった。
【0093】
(比較例2)
[1. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の作製]
層状珪酸塩として、0.075gの合成サポナイトと、6wt%シルク繊維水分散液:0.4mLとを、9.6mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜(CSG_75−24−1)を得た。サポナイトの重量比は75wt%、シルク繊維の重量比は24wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。
精製した複合膜を型から剥離することで、透明度の高い、自立した、フレキシビリティーに優れた膜を得た。
【0094】
[2. サポナイト−シルク繊維−ナノグラフェン複合膜の特性]
CSG_75−24−1の500nmでの光学透過率は、70%であった(
図5)。また、この膜を200℃、1時間加熱した後の500nmでの光学透過率は、25%であった(
図6)。
CSG_75−24−1の蛍光最大波長は420nmであり、青色の発光を示すことがわかった(
図7)。
【0095】
(実施例9)
上記実施例に記載した方法によって作製された透明蛍光材は、輝度が高く、単一励起波長で様々な発光色を示すことが可能である(
図8(a))。そのため、青色発光ダイオード(LED)による励起に合わせて、適当な蛍光波長を有するナノグラフェンを複合化することで、白色光が得られる。本実施例では、青色LEDを励起光として用いたダウンコンバージョン型の白色発光デバイスの作製を行った。
【0096】
図8(b)に、本発明で作製した白色発光デバイスの概略図を示す。本発明では、420nmの青色LED表面に、520nm及び590nmに蛍光最大波長を有するナノグラフェンを複合化した透明蛍光材を塗布することにより作製した。
図8(c)に、作製した白色発光デバイスの発光スペクトル、及びCIE(Commission International de l'Eclairage)色度図を示す。作製した白色発光デバイスのCIE材料(x、y)は、(0.36、0.34)であった。CIE座標は、白色のCIE座標(0.33、0.33)に近い値であり、白色光を発光していることが分かった。
【0097】
(比較例3)
[1. サポナイト−ポリアクリル酸ナトリウム−ナノグラフェン複合膜の作製]
本比較例では、繊維状化合物ではなく、水溶性ポリマーであるポリアクリル酸ナトリウムを用いて、複合膜を作製した。すなわち、層状珪酸塩として、0.09gの合成サポナイトと、ポリアクリル酸ナトリウム:0.009gとを、10mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−ポリアクリル酸ナトリウム−ナノグラフェン複合膜(CAG_90−9−1)を得た。サポナイトの重量比は90wt%、ポリアクリル酸ナトリウムの重量比は9wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。
【0098】
[2. サポナイト−ポリアクリル酸ナトリウム−ナノグラフェン複合膜の特性]
50%湿度下で48時間静置後の500nmでの光学透過率を測定した。
図9に、実施例2及び比較例3で得られた複合膜の透過率スペクトルを示す。
CCG_90−9−1(実施例2)の500nmでの光学透過率は、88%であった。一方、CAG_90−9−1(比較例3)の500nmでの光学透過率は、41%であった。すなわち、ポリアクリル酸ナトリウムを用いた複合膜は、加湿条件下において透明性が著しく低下することがわかった。
【0099】
(比較例4)
[1. サポナイト−カルボキシメチルセルロース−ナノグラフェン複合膜の作製]
本比較例では、繊維状化合物ではなく、水溶性ポリマーであるカルボキシメチルセルロースを用いて、複合膜を作製した。すなわち、層状珪酸塩として、0.09gの合成サポナイトと、カルボキシメチルセルロース:0.009gとを、10mLのイオン交換水に加えた。以下、実施例1と同様にして、厚さ約40μmのサポナイト−カルボキシメチルセルロース−ナノグラフェン複合膜(CMG_90−9−1)を得た。サポナイトの重量比は90wt%、カルボキシメチルセルロースの重量比は9wt%、ナノグラフェンの重量比は1wt%であった。
【0100】
[2. サポナイト−カルボキシメチルセルロース−ナノグラフェン複合膜の特性]
CMG_90−9−1を曲げ半径4mmで曲げたところ、クラックが生じ、破断した。
【0101】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。