(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造方法について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。また、電子部品として積層セラミックコンデンサについて説明するが、電子部品は、コンデンサに限られず、圧電部品、サーミスタまたはインダクタなどでもよい。
【0013】
まず、本実施形態に係る電子部品である積層セラミックコンデンサの構成の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る電子部品の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の電子部品をII−II線矢印方向から見た断面図である。
図3は、
図2の電子部品をIII−III線矢印方向から見た断面図である。
図4は、
図2の電子部品をIV−IV線矢印方向から見た断面図である。
図5は、
図2の電子部品をV−V線矢印方向から見た断面図である。
図1においては、後述する素体の長手方向をL、素体の幅方向をW、素体の厚さ方向をTで示している。
【0014】
図1〜5に示すように、本実施形態に係る電子部品100は、内部導体が埋設された素体110と、素体110の表面上に設けられて内部導体に電気的に接続された外部電極とを備える。
【0015】
素体110は、略直方体状の外形を有する。素体110においては、誘電体層であるセラミック層150と、内部導体である平板状の内部電極140とが交互に積層されている。本実施形態に係る電子部品100においては、素体110の両端部に外部電極が設けられている。
【0016】
外部電極は、素体110の長手方向の一方側の端部に設けられた第1外部電極120、および、素体110の長手方向の他方側の端部に設けられた第2外部電極130を含む。
【0017】
本実施形態に係る素体110においては、セラミック層150と内部電極140との積層方向が、素体110の長手方向Lおよび素体110の幅方向Wに対して直交している。すなわち、セラミック層150と内部電極140との積層方向は、素体110の厚さ方向Tと平行である。
【0018】
素体110は、厚さ方向Tと直交する1対の主面、長手方向Lと直交する1対の端面、および、幅方向Wと直交する1対の側面を有する。上記のように素体110は、略直方体状の外形を有するが、角部に丸みを有していてもよい。また、1対の主面、1対の端面および1対の側面のいずれかの面に、凹凸が形成されていてもよい。
【0019】
以下、各構成について詳細に説明する。
セラミック層150を構成する材料としては、BaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3またはCaZrO
3などを主成分とする誘電体セラミックスを用いることができる。また、これらの主成分に、副成分として、Mn化合物、Co化合物、Si化合物または希土類化合物などが添加された材料を用いてもよい。
【0020】
なお、電子部品が圧電部品である場合、セラミック層150を圧電セラミックスで構成することができる。圧電セラミックスとしては、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系セラミックなどがある。
【0021】
電子部品がサーミスタである場合、セラミック層150を半導体セラミックスで構成することができる。半導体セラミックスとしては、たとえば、スピネル系セラミックなどがある。
【0022】
電子部品がインダクタである場合、セラミック層150を磁性体セラミックスで構成することができる。磁性体セラミックスとしては、たとえば、フェライトセラミックなどがある。
【0023】
内部電極140は、平面視にて略矩形状の第1内部電極141と、平面視にて略矩形状の第2内部電極142とを含む。第1内部電極141と第2内部電極142とは、素体110の厚さ方向Tに沿って等間隔に交互に配置されている。また、第1内部電極141と第2内部電極142とは、セラミック層150を間に挟んで互いに対向するように配置されている。
【0024】
第1内部電極141は、素体110の長手方向の一方側の端部から他方側の端部に向けて延在している。
図3に示すように、第1内部電極141は、素体110の一方側の端面において第1外部電極120と接続されている。
【0025】
第2内部電極142は、素体110の長手方向の他方側の端部から一方側の端部に向けて延在している。
図4に示すように、第2内部電極142は、素体110の他方側の端面において第2外部電極130と接続されている。
【0026】
内部電極140を構成する材料としては、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属、または、これらの金属の少なくとも1種を含む合金、たとえばAgとPdとの合金などを用いることができる。
【0027】
本実施形態においては、外部電極は、素体110の両端部を覆うように設けられた内側外部電極と、この内側外部電極を覆うように設けられた外側外部電極とを含む。
【0028】
内側外部電極を構成する材料としては、半田バリア層として機能する金属であればよく、NiまたはCuなどの金属、または、これらの金属の少なくとも1種を含む合金を用いることができる。
【0029】
外側外部電極を構成する材料としては、半田との濡れ性が良好な金属であればよく、SnまたはAuなどの金属、または、これらの金属の少なくとも1種を含む合金を用いることができる。
【0030】
図2〜5に示すように、第1外部電極120は、第1内側外部電極121と第1外側外部電極122とを含む。第1内側外部電極121は、素体110の長手方向の一方側の端部を覆っている。第1外側外部電極122は、第1内側外部電極121を覆っている。
【0031】
第2外部電極130は、第2内側外部電極131と第2外側外部電極132とを含む。第2内側外部電極131は、素体110の長手方向の他方側の端部を覆っている。第2外側外部電極132は、第2内側外部電極131を覆っている。
【0032】
以下、本実施形態に係る電子部品の製造方法について説明する。
まず、セラミック粉末を含むセラミックペーストを、ダイコータ法、グラビアコータ法またはマイクログラビアコータ法などによりシート状に塗布して乾燥させることにより、セラミックグリーンシートを作製する。
【0033】
作製した複数のセラミックグリーンシートのうちの一部において、セラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法またはグラビア印刷法などにより内部電極形成用の導電ペーストを所定のパターンとなるように塗布する。
【0034】
このようにして、内部電極となる導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートと、導電パターンが形成されていないセラミックグリーンシートとを用意する。なお、セラミックペーストおよび内部電極形成用の導電ペーストには、公知のバインダーおよび溶媒が含まれていてもよい。
【0035】
図6は、内部電極および切断マークとなる導電パターンを形成されたセラミックグリーンシートの外観を示す平面図である。
図6に示すように、セラミックグリーンシート10上に、内部電極となる第1導電パターン11と、切断マークとなる第2導電パターン12とを形成する。切断マークは、ブロック切断用の目印である。
【0036】
本実施形態においては、矩形状の複数の第1導電パターン11を、X方向およびX方向と直交するY方向にマトリックス状に配置している。具体的には、各第1導電パターン11の長手方向がY方向に平行となるように、複数の第1導電パターン11を配置している。
【0037】
また、セラミックグリーンシート10のX方向の両端に位置する1対の矩形状の第2導電パターン12をY方向に間隔を置いて複数対配置している。具体的には、各第2導電パターン12の長手方向がX方向に平行となるように、複数の第2導電パターン12を配置している。各第2導電パターン12は、X方向に並ぶ第1導電パターン11の長手方向の略中央の位置を通過する直線上に配置されている。
【0038】
導電パターンが形成されていない複数枚のセラミックグリーンシート10を積層し、その上に、第1および第2導電パターン11,12が形成された数百枚程度のセラミックグリーンシート10を順次積層し、さらにその上に、導電パターンが形成されていない複数枚のセラミックグリーンシート10を積層することにより、第1ブロックであるマザーブロックを作製する。このように、素体110となる複数のセラミックグリーンシート10が積層されて構成されたマザーブロックを準備する。なお、第1ブロックとして、マザーブロックから切断されて形成された中間ブロックを準備してもよい。この場合、第1ブロックである中間ブロックが切断されることにより、第2ブロックである他の中間ブロックが形成される。
【0039】
図7は、第1および第2導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層した状態を示す平面図である。
図7に示すように、第1および第2導電パターン11,12が形成された複数のセラミックグリーンシート10を順次積層する際には、各層の第1導電パターン11同士が長手方向の略半分だけ重なるように、複数のセラミックグリーンシート10の位置を互いにY方向にずらして積層する。
【0040】
その後、静水圧プレスまたは金型プレスなどの手段により、マザーブロックを積層方向に熱圧着する。熱圧着の際、セラミックグリーンシート10が流動性を有するため、第1導電パターン11の位置がずれることがある。
【0041】
図8は、第1導電パターンの位置ずれが発生したマザーブロックを示す平面図である。以下の
図8〜10,13,15,16においては、セラミックグリーンシート10を透明に図示し、第1導電パターン11のうち、各層の第1導電パターン11同士が重なってコンデンサとして機能する機能領域13のみを図示している。また、各機能領域13の中心点13xを図示している。各機能領域13は、電子部品100において素体110となる部分であるチップに1つずつ含まれる。なお、説明の便宜上、第1導電パターンの位置ずれを顕著に図示しているが、実際には数μm程度の位置ずれである。
【0042】
図8に示すように、第1導電パターン11の位置ずれが発生すると、電子部品100においてチップに含まれる機能領域13の位置がずれる。第1導電パターン11の位置ずれの態様は様々であるが、本実施形態においては、マザーブロックのY方向の両端から中央に向かうに従って、機能領域13がX方向の一方側(
図8中の右側)にずれている。
【0043】
そのため、マザーブロックのY方向の両端に位置する機能領域13の中心点13x同士を結ぶ直線Lxに対して、機能領域13の中心点13xの位置が、マザーブロックのY方向の両端から中央に向かうに従って離れて行っている。
【0044】
本実施形態においては、後述する発泡粘着シート20にマザーブロックを貼り付けた状態でマザーブロックを切断する。ただし、必ずしも発泡粘着シート20にマザーブロックを貼り付けなくてもよく、この場合、吸着保持可能な載置台上でマザーブロックを切断してもよい。
【0045】
ここで、比較例に係るマザーブロックの切断方法について説明する。
図9は、比較例において、発泡粘着シートに貼り付けたマザーブロックを第1の方向に切断した状態を示す平面図である。
【0046】
図9に示すように、比較例に係るマザーブロックの切断方法においては、発泡粘着シート20に貼り付けたマザーブロックを矢印1で示す第1の方向に切断する。このとき、マザーブロックのY方向の各端部側に位置する1対の第2導電パターン12同士を直線状に結ぶ第1切断ライン30にて、マザーブロックおよび発泡粘着シート20を切断する。その他の部分では、1対の第2導電パターン12同士を直線状に結ぶ第2切断ライン31にてマザーブロックのみを切断する。
【0047】
このようにマザーブロックのY方向の両端部を切断することにより、第1切断ライン30にて切断された切断面に、第1導電パターン11において外部電極と接続される部分を露出させることができる。また、第2切断ライン31においては、発泡粘着シート20が切断されていないため、マザーブロックを一体に維持できる。
【0048】
図10は、比較例において、第1の方向に切断したマザーブロックを第2の方向に切断した状態を示す平面図である。
図10に示すように、比較例に係るマザーブロックの切断方法においては、第1切断ライン30にて切断された切断面に露出した第1導電パターン11が第1の方向において各チップの中央に位置するように、第1の方向と交差する矢印2で示す第2の方向にマザーブロックを切断する。
【0049】
具体的には、まず、第1切断ライン30にて切断された両方の切断面を矢印41で示すように画像処理装置40にて撮像して、各切断面に露出している第1導電パターン11の位置を検出する。
【0050】
次に、画像処理装置40によって検出した第1切断ライン30の各切断面の第1導電パターン11の位置に基づいて、第2の方向に延びる第3切断ライン50にてマザーブロックのみを切断する。
【0051】
図11は、比較例において、画像処理装置によって検出した第1切断ラインの各切断面における第1導電パターンと第3切断ラインとの位置関係を示す側面図である。
図11においては、1つのチップのみ図示している。
【0052】
図10,11に示すように、比較例に係るマザーブロックの切断方法においては、画像処理装置40によって検出した第1切断ライン30の各切断面において、第1の方向における一方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン50との間の間隔である第1ギャップG
1aと、第1の方向における他方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン50との間の間隔である第2ギャップG
2aとが略等しくなるように、第3切断ライン50の位置を決定している。
【0053】
上記のように、マザーブロックのY方向の両端に位置する機能領域13の中心点13x同士を結ぶ直線Lxに対して、機能領域13の中心点13xの位置が、マザーブロックのY方向の両端から中央に向かうに従って離れて行っている。そのため、マザーブロックのY方向の中央に位置する機能領域13の中心点13xと直線Lxとは、距離S
1だけ離間している。その結果、マザーブロックのY方向の中央に位置するチップにおいては、第1導電パターン11が偏って位置する。
【0054】
図12は、比較例において、マザーブロックのY方向の中央に位置するチップにおける第1導電パターンと第3切断ラインとの位置関係を示す側面図である。
図12に示すように、マザーブロックのY方向の中央に位置するチップにおいては、第1の方向における一方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン50との間の間隔である第1ギャップG
1bが、第1の方向における他方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン50との間の間隔である第2ギャップG
2bに比較して小さくなっている。
【0055】
このように、内部電極となる第1導電パターン11がチップ内で偏って位置する場合、電子部品100の耐水性が低下する。積層セラミックコンデンサ内に水分が浸入した場合、電気絶縁性が低下して品質が劣化する。そのため、全てのチップにおいて、内部電極となる第1導電パターン11を第1の方向において中央に位置させることが求められる。
【0056】
そこで、本実施形態に係る電子部品の製造方法においては、下記のようにマザーブロックを切断する。
図13は、本実施形態において、マザーブロックを第1の方向に切断して分割した第2ブロックである中間ブロックを、第2の方向に切断した状態を示す平面図である。
【0057】
図13に示すように、本実施形態においては、第1の方向において中間ブロックにチップが2列で並ぶようにマザーブロックを切断する。すなわち、中間ブロックのY方向において第2切断ライン31の両隣に第1切断ライン30を設けている。上記のように、第1切断ライン30にてマザーブロックおよび発泡粘着シート20を切断し、第2切断ライン31にてマザーブロックのみを切断している。
【0058】
このようにマザーブロックを切断して複数の中間ブロックに分割することにより、第1切断ライン30にて切断された切断面に、第1導電パターン11において外部電極と接続される部分を露出させることができる。また、第2切断ライン31においては、発泡粘着シート20が切断されていないため、中間ブロックを一体に維持できる。
【0059】
マザーブロックを第1の方向に切断する際には、マザーブロックのX方向の両端面に露出した1対の第2導電パターン12を図示しない画像処理装置にて撮像して検出する。検出した1対の第2導電パターン12を結ぶように第1切断ライン30を設ける。
【0060】
第2導電パターン12がマザーブロックの端面に露出していない場合には、マザーブロックのX方向の端部を切断して第2導電パターン12を露出させてもよい。また、第2導電パターン12は必ずしも設けられていなくてもよく、この場合には、マザーブロックのX方向の端部を切断して第1導電パターン11を露出させ、第1導電パターン11の機能領域13以外の部分を切断するようにしてもよい。マザーブロックの切断方法としては、押し切り法またはダイシングを用いた切削法などがある。
【0061】
このようにマザーブロックを複数の中間ブロックに分割した後、1つずつ中間ブロックを抜き出す。抜き出した中間ブロックの各々にて、第1切断ライン30にて切断された切断面に露出した第1導電パターン11が第1の方向において各チップの中央に位置するように、第1の方向と交差する矢印2aで示す第2の方向に中間ブロックを切断する。
【0062】
具体的には、まず、第1切断ライン30にて切断された両方の切断面を矢印41で示すように画像処理装置40にて撮像して、各切断面に露出している第1導電パターン11の位置を検出する。
【0063】
次に、画像処理装置40によって検出した第1切断ライン30の各切断面の第1導電パターン11の位置に基づいて、第2の方向に延びる第3切断ライン51にて中間ブロックのみを切断する。これにより、チップを個片化できる。
【0064】
図14は、本実施形態において、画像処理装置によって検出した第1切断ラインの各切断面における導電パターンと第3切断ラインとの位置関係を示す側面図である。
図14においては、1つのチップのみ図示している。
【0065】
図13,14に示すように、本実施形態に係るマザーブロックの切断方法においては、画像処理装置40によって検出した第1切断ライン30の各切断面において、第1の方向における一方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン51との間の間隔である第1ギャップG
1cと、第1の方向における他方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン51との間の間隔である第2ギャップG
2cとが略等しくなるように、第3切断ライン51の位置を決定している。その結果、第3切断ライン51は、第1切断ライン30に対して斜めに交わっている。
【0066】
このように傾斜した第3切断ライン51にて中間ブロックを切断するために、中間ブロックが載置されている載置台は、載置面の面内方向において回転可能に設けられている。すなわち、載置台の回転中心上に中間ブロックが載置された状態において、第3切断ライン51の傾斜角度に対応して載置台が回転することにより、切断刃に対する中間ブロックの向きが傾けられる。
【0067】
本実施形態においては、第1の方向においてチップが2列で並ぶように中間ブロックを構成しているため、全てのチップにて、内部電極となる第1導電パターン11を第1の方向において中央側に寄せて位置させることができる。
【0068】
なお、本実施形態においてはマザーブロックを複数の中間ブロックに分割する際に第2切断ライン31を設けていたが、第2切断ライン31を設けていなくてもよい。この場合、複数の中間ブロックの各々を、第1の方向および第2の方向に切断してチップを個片化する。複数の中間ブロックの各々を第1の方向および第2の方向に切断する際、第1の方向の切断と第2の方向の切断とは、どちらを先に行なってもよい。
【0069】
図15は、第2の方向に切断した中間ブロックを第1の方向に切断してチップを個片化した状態を示す平面図である。
図15に示すように、中間ブロックを第1の方向に切断する際には、中間ブロックのX方向の両端面に露出した1対の第2導電パターン12を矢印43で示すように画像処理装置42にて撮像して検出する。検出した1対の第2導電パターン12を結ぶように第1切断ライン32を設けて、中間ブロックおよび発泡粘着シート20を切断することにより、チップを個片化する。
【0070】
また、第1の方向において中間ブロックにチップが1列で並ぶようにマザーブロックを切断してもよい。ここで、このようにマザーブロックを切断した本実施形態の変形例に係る電子部品の製造方法について説明する。
【0071】
図16は、本実施形態の変形例において、マザーブロックを第1の方向に切断して分割した中間ブロックを、第2の方向に切断した状態を示す平面図である。
【0072】
図16に示すように、本実施形態の変形例においては、第1の方向において中間ブロックにチップが1列で並ぶようにマザーブロックを切断する。すなわち、マザーブロックのY方向において第1切断ライン30を隣接して設けている。
【0073】
このようにマザーブロックを切断して複数の中間ブロックに分割することにより、第1切断ライン30にて切断された切断面に、第1導電パターン11において外部電極と接続される部分を露出させることができる。
【0074】
マザーブロックを複数の中間ブロックに分割した後、1つずつ中間ブロックを抜き出す。抜き出した中間ブロックの各々にて、第1切断ライン30にて切断された切断面に露出した第1導電パターン11が第1の方向において各チップの中央に位置するように、第1の方向と交差する矢印2bで示す第2の方向に中間ブロックを切断する。
【0075】
具体的には、まず、第1切断ライン30にて切断された両方の切断面を矢印41で示すように画像処理装置40にて撮像して、各切断面に露出している第1導電パターン11の位置を検出する。
【0076】
次に、画像処理装置40によって検出した第1切断ライン30の各切断面の第1導電パターン11の位置に基づいて、第2の方向に延びる第3切断ライン52にて中間ブロックのみを切断する。これにより、チップを個片化できる。
【0077】
図17は、本実施形態の変形例において、画像処理装置によって検出した第1切断ラインの各切断面における導電パターンと第3切断ラインとの位置関係を示す側面図である。
図17においては、1つのチップのみ図示している。
【0078】
図16,17に示すように、本実施形態の変形例に係るマザーブロックの切断方法においては、画像処理装置40によって検出した第1切断ライン30の各切断面において、第1の方向における一方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン52との間の間隔である第1ギャップG
1cと、第1の方向における他方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン52との間の間隔である第2ギャップG
2cとが略等しくなるように、第3切断ライン52の位置を決定している。その結果、第3切断ライン52は、第1切断ライン30に対して斜めに交わっている。
【0079】
このように傾斜した第3切断ライン52にて中間ブロックを切断するために、中間ブロックが載置されている載置台は、載置面の面内方向において回転可能に設けられている。すなわち、載置台の回転中心上に中間ブロックが載置された状態において、第3切断ライン52の傾斜角度に対応して載置台が回転することにより、切断刃に対する中間ブロックの向きが傾けられる。
【0080】
本実施形態の変形例においては、第1の方向においてチップが1列で並ぶように中間ブロックを構成しているため、本実施形態に比較して、全てのチップにて内部電極となる第1導電パターン11を第1の方向においてより中央側に寄せて位置させることができる。
【0081】
なお、第1切断ライン30の各切断面において、積層方向に並ぶ第1導電パターン11同士の位置ずれが生じている場合がある。
図18は、第1切断ラインの切断面において、積層方向に並ぶ導電パターン同士の位置ずれが生じている状態を示す断面図である。
図18においては、2つのチップに相当する部分のみ図示している。
【0082】
図18に示すように、第1切断ライン30の各切断面において、積層方向に並ぶ第1導電パターン11同士の位置ずれが生じている場合、第1の方向において隣接する第1導電パターン11同士のうち最も接近している第1導電パターン11同士の中間の位置を通るように第3切断ライン51,52の位置を決定する。
【0083】
この場合、第1の方向において隣接する第1導電パターン11同士のうち最も接近している第1導電パターン11同士の間の間隔2Gminの中間の位置を通る第3切断ライン51,52にて中間ブロックを切断することにより、
図18中の左側に位置するチップにおいては、第1の方向における一方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン51,52との間の間隔である第1ギャップG
1cは間隔Gminとなり、
図18中の右側に位置するチップにおいては、第1の方向における他方側の第1導電パターン11の端部と第3切断ライン51,52との間の間隔である第2ギャップG
2cは間隔Gminとなる。
【0084】
図19は、本実施形態および変形例に係る電子部品の製造方法の構成を示すフローチャートである。
図19に示すように、本実施形態および変形例に係る電子部品の製造方法は、素体110となる複数のセラミックグリーンシート10が積層されて構成されたマザーブロックを準備する工程(S100)と、内部電極において外部電極と接続される部分が切断面に露出するようにマザーブロックを第1の方向に切断して複数の中間ブロックに分割する工程(S110)と、複数の中間ブロックから1つずつ中間ブロックを抜き出す工程(S120)と、抜き出した各中間ブロックにおいて、切断面に露出した内部電極が第1の方向において素体となる部分の中央に位置するように、中間ブロックを第1の方向と交差する第2の方向に切断する工程(S130)とを備える。
【0085】
上記の工程によりチップを個片化することにより、第1ギャップG
1cおよび第2ギャップG
2cを略均等に確保することができる。その結果、電子部品100の耐水性の低下を抑制できる。よって、積層セラミックコンデンサ内に水分が浸入することにより電気絶縁性が低下して品質が劣化することを抑制できる。
【0086】
なお、上記のように個片化したチップを加熱することにより、発泡粘着シート20を発泡させて粘着性を低下させることにより、チップから容易に発泡粘着シート20を剥離することができる。
【0087】
次に、発泡粘着シート20を剥離したチップをバレル研磨して、チップの角部を丸める。ただし、バレル研磨は必ずしも行なわなくてもよい。その後、チップを焼成することにより硬化させて、素体110を作製する。焼成温度は、セラミック材料および導電材料の種類に応じて適宜設定され、たとえば、900℃以上1300℃以下の範囲内で設定される。
【0088】
次に、Niを主成分とする導電性ペーストを素体110の長手方向の両端部に塗布して、たとえば700℃程度の温度において加熱することにより素体110に焼き付けて内側外部電極を形成する。なお、チップに導電性ペーストを塗布した後で焼成することにより、素体110と内側外部電極とを同時に形成してもよい。
【0089】
その後、電気めっきにより内側外部電極上にSnからなる外側外部電極を形成する。具体的には、バレルめっき法により外側外部電極を設ける。内側外部電極が設けられた複数の素体110を収容したバレルをめっき槽内のめっき液中に浸漬した状態で回転させつつ通電することにより、内側外部電極上に外側外部電極を設ける。
【0090】
上記の工程により、電子部品100を製造することができる。本実施形態および変形例に係る電子部品の製造方法によれば、マザーブロックから切り出される複数のチップの各々において内部導体の位置ずれを低減できる。
【0091】
以下、比較例および本実施形態に係る電子部品の製造方法において、ブロックの歪み量およびチップのギャップ量について比較した実験例について説明する。
【0092】
(実験例)
ブロックの歪み量においては、マザーブロック、マザーブロックを2分割して作製された中間ブロック、および、マザーブロックを3分割して作製された中間ブロックの、各ブロックの25箇所について測定した。
【0093】
図20は、ブロックの歪み量を比較したグラフである。
図20においては、縦軸にブロックの歪み量、横軸にブロックの種類を示している。また、
図20においては、測定結果の範囲をエラーバーで示し、測定結果の平均値を棒グラフで示している。
【0094】
なお、ブロックの歪み量は、
図10の距離S
1に相当する値である。すなわち、ブロックの歪み量は、各ブロックのY方向の両端に位置する機能領域13の中心点13x同士を結ぶ直線Lxと、各ブロックのY方向の中央に位置する機能領域13の中心点13xとの距離を測定した値である。
【0095】
図20に示すように、マザーブロックの歪み量の平均値が42μmであったのに対して、同様に作製したマザーブロックを2分割して作製された中間ブロックの歪み量の平均値は19μmであり、同様に作製したマザーブロックを3分割して作製された中間ブロックの歪み量の平均値は12μmであった。この結果から、マザーブロックの分割数が多いほど、中間ブロックの歪み量が低下することが確認された。
【0096】
チップのギャップ量においては、マザーブロック、マザーブロックを2分割して作製された中間ブロック、および、第1の方向においてチップが1列に並ぶようにマザーブロックを分割して作製された中間ブロックの、各ブロックから切り出された25個のチップについて測定した。
【0097】
マザーブロックおよびマザーブロックを2分割して作製された中間ブロックにおいては、Y方向の中央に位置する25個のチップについて、
図12の第1ギャップG
1bと第2ギャップG
2bとを測定した。第1の方向においてチップが1列に並ぶようにマザーブロックを分割して作製された中間ブロックにおいては、25個のチップについて、
図17の第1ギャップG
1cと第2ギャップG
2cとを測定した。
【0098】
図21は、マザーブロックのY方向の中央に位置するチップの第1ギャップおよび第2ギャップの測定値を示すグラフである。
図22は、マザーブロックを2分割して作製された中間ブロックのY方向の中央に位置するチップの第1ギャップおよび第2ギャップの測定値を示すグラフである。
図23は、第1の方向においてチップが1列に並ぶようにマザーブロックを分割して作製された中間ブロックのチップの第1ギャップおよび第2ギャップの測定値を示すグラフである。
図21〜23においては、縦軸にギャップ量、横軸にチップ番号を示している。
【0099】
図21〜23に示すように、マザーブロックの分割数が多いほど、各チップのギャップ量が安定して確保できることが確認された。特に、第1の方向においてチップが1列に並ぶようにマザーブロックを分割して作製された中間ブロックから切り出されたチップにおいては、各チップの第1ギャップG
1cと第2ギャップG
2cとが略同一で安定していた。
【0100】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。