(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6191621
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び該積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/12 20060101AFI20170828BHJP
H01G 4/232 20060101ALI20170828BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
H01G4/12 349
H01G4/12 352
H01G4/12 364
H01G4/30 301C
H01G4/30 301E
H01G4/30 301B
H01G4/30 311D
H01G4/30 311E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-554476(P2014-554476)
(86)(22)【出願日】2013年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2013084588
(87)【国際公開番号】WO2014104061
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-286814(P2012-286814)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100117260
【弁理士】
【氏名又は名称】福永 正也
(72)【発明者】
【氏名】平尾 尚大
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−155913(JP,A)
【文献】
特開平08−148371(JP,A)
【文献】
特開平05−335175(JP,A)
【文献】
特開2010−041030(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/035461(WO,A1)
【文献】
特開2006−332601(JP,A)
【文献】
特開2002−208533(JP,A)
【文献】
特開2003−101228(JP,A)
【文献】
特開平10−050548(JP,A)
【文献】
特開平09−266131(JP,A)
【文献】
特開2004−228468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/12
H01G 4/232
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック層と、該セラミック層同士の界面のうち、複数の界面に配設された複数の内部電極層とが積層されている積層体と、
該積層体の外表面に配設され、前記積層体の外表面に露出している前記内部電極層の一端部と電気的に接続されている外部電極と
を備える積層セラミック電子部品において、
前記セラミック層は、一端部近傍の厚みが該一端部に近づくにつれて連続的に減少する肉薄部を有しており、
前記内部電極層は、前記外部電極との接続部近傍に、前記内部電極層と前記セラミック層を挟んで配置される隣接した内部電極層の端部に形成された、断面形状がR形状である部分側のみに、前記セラミック層の肉薄部の形状に対応して前記接続部に近づくにつれて厚みが連続的に増大する肉厚部を有しており、
前記内部電極層の前記外部電極と接合していない他端部と隣接する前記肉厚部との最短距離が、前記内部電極層の層間距離以上であることを特徴とする積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記外部電極は、前記積層体の外表面に露出している前記複数の内部電極層の肉厚部が相互に連結し、前記内部電極層を一体化することで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
複数のセラミック層と、該セラミック層同士の界面のうち、複数の界面に配設された複数の内部電極層とが積層されている積層体と、
該積層体の外表面に配設され、前記積層体の外表面に露出している前記内部電極層の一端部と電気的に接続されている外部電極と
を備える積層セラミック電子部品の製造方法において、
前記外部電極と電気的に接続されている、前記内部電極層の一端部に接触する一端部近傍において該一端部に近づくにつれて厚みが連続的に減少する肉薄部を有するようセラミック層を形成する工程と、
前記セラミック層の一端部近傍に形成された前記肉薄部を被覆して、前記肉薄部の形状に対応して一方面側に厚みが連続的に増大する肉厚部を有するように前記セラミック層の上に内部電極層を形成する工程と、
前記セラミック層と前記内部電極層とを、前記内部電極層の肉厚部が外表面に露出し、かつ前記内部電極層の他端部と隣接する前記肉厚部との最短距離が、前記内部電極層の層間距離以上となるように交互に積層して積層体を作製する工程と、
前記積層体の外表面に露出した前記内部電極層の肉厚部と電気的に接続する外部電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記外部電極を形成する工程は、前記内部電極層を形成する工程において、前記セラミック層の一端部を越える余剰部を有する前記内部電極層を形成し、前記積層体を作製する工程において、前記余剰部を連結させることにより、前記複数の内部電極層の肉厚部を相互に連結させて一体化することで外部電極を形成することを特徴とする請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記セラミック層及び前記内部電極層は、インクジェット方式により形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品及び該積層セラミック電子部品の製造方法に関する。特に、積層する内部電極層及び/又はセラミック層を薄膜化した場合であっても、確実に内部電極層と外部電極とを電気的に接続することができる積層セラミック電子部品及び該積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、より一層の小型化、低背化が求められている。それに伴い、内部電極の厚み、内部電極間のセラミック層の厚み等をより薄くする必要がある。
【0003】
従来の積層セラミック電子部品の製造方法は、以下の通りである。まず、セラミックグリーンシート上に、Ni粉末等を含有する導電ペーストを所望のパターンに印刷する。導電ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、その上下に導電ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシートを積層することにより、積層体を作製する。作製された積層体を厚み方向に加圧した後、焼成することによりセラミック焼結体を得る。次に、セラミック焼結体の両端面に外部電極を形成することにより、積層セラミック電子部品を得る。
【0004】
また、特許文献1にも、従来の積層セラミック電子部品の製造方法が開示されている。
図7は、従来の製造方法で製造された積層セラミック電子部品の構成を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、セラミック焼結体2の両端面には、外部電極3、4が形成されている。また、セラミック焼結体2内には、例えばNi粉末を含有する導電ペーストからなる内部電極5がセラミック層を介して重なり合うように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−014634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている積層セラミック電子部品の製造方法では、積層体の焼成にあたり内部電極を酸化膨張させることにより、内部電極をセラミック焼結体の端面に露出させる。しかし、酸化膨張の程度を制御することは困難であり、また、内部電極とセラミック層との焼成収縮率は相違しており、一般的には内部電極の収縮率の方が大きいので、焼成により内部電極がセラミック焼結体の端面から離れる方向に収縮する場合も生じうる。特に、内部電極の厚みが薄い場合には、内部電極はセラミック焼結体の端面からより離れやすく、外部電極との電気的な接続を維持することが難しくなるという問題点があった。
【0007】
つまり、内部電極がセラミック焼結体の端面から離れる方向に大きく収縮した場合には、例えばセラミック焼結体の両端面をバレル研磨により研磨した場合であっても、内部電極がセラミック焼結体の端面から露出しないことも生じうる。この場合、内部電極と外部電極との電気的な接続を維持することができない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、積層する内部電極層及び/又はセラミック層が薄膜化された場合であっても、確実に内部電極層と外部電極とを電気的に接続することができる積層セラミック電子部品及び該積層セラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る積層セラミック電子部品は、複数のセラミック層と、該セラミック層同士の界面のうち、複数の界面に配設された複数の内部電極層とが積層されている積層体と、該積層体の外表面に配設され、前記積層体の外表面に露出している前記内部電極層の一端部と電気的に接続されている外部電極とを備える積層セラミック電子部品において、前記セラミック層は、一端部近傍の厚みが該一端部に近づくにつれて連続的に減少する肉薄部を有しており、前記内部電極層は、前記外部電極との接続部近傍に、
前記内部電極層と前記セラミック層を挟んで配置される隣接した内部電極層の端部に形成された、断面形状がR形状である部分側のみに、前記セラミック層の肉薄部の形状に対応して前記接続部に近づくにつれて厚みが連続的に増大する肉厚部を有しており、前記内部電極層の前記外部電極と接合していない他端部と隣接する前記肉厚部との最短距離が、前記内部電極層の層間距離以上であることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、セラミック層が、一端部近傍において、一端部に近づくにつれて厚みが連続的に減少する肉薄部を有するのに伴い、セラミック層の形状に対応して形成されている内部電極層は、外部電極との接続部近傍に、
内部電極層とセラミック層を挟んで配置される隣接した内部電極層の端部に形成された、断面形状がR形状である部分側のみに、セラミック層の肉薄部の形状に対応して接続部に近づくにつれて厚みが連続的に増大する肉厚部を有している。したがって、外部電極と内部電極層との接触面積が大きくなることから、内部電極層が薄膜化された場合であっても、確実に内部電極層と外部電極とを電気的に接続することが可能となる。また、外部電極との接続部近傍に、単に内部電極層の肉厚部を形成すると、後で示す模式図のように外部電極と接合していない他端部と隣接する内部電極層の肉厚部との最短距離が、内部電極層の層間距離以下となる場合もあり、その際は内部電極の他端部において電界集中が発生し、放電量が増大するおそれがあるが、上記構成では、外部電極と接合していない他端部と隣接する内部電極層の肉厚部との最短距離が、内部電極層の層間距離以上であることにより、内部電極層の他端部において電界集中が生じにくく、放電量が増大するおそれもない。したがって、放電による障害が発生しにくい、信頼性の高い積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0011】
なお、セラミック層が一端部に近づくにつれて厚みが連続的に減少するとは、微小領域における厚みの増減を除き、巨視的な形状において厚みが増加する部分や不連続に変化する部分がないことを意味している。また、内部電極層がセラミック層の形状に対応して一方面側に厚みが連続的に増大するとは、内部電極層がセラミック層の厚みの変化をトレースしながら、一方面側に厚みが連続的に増大することを意味しているが、セラミック層上に形成された内部電極層の上面は、後で示す模式図のように平坦となる必要はなく、上記の効果が得られる範囲において、若干の変動があってもよい。
【0012】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、前記外部電極は、前記積層体の外表面に露出している前記複数の内部電極層の肉厚部が相互に連結し、前記内部電極層
を一体化することで形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成では、内部電極層
を一体化することで外部電極を形成しているため、内部電極層が焼成により収縮した場合であっても、外部電極と確実に電気的に接続された積層セラミック電子部品となる。
【0014】
次に、上記目的を達成するために本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、複数のセラミック層と、該セラミック層同士の界面のうち、複数の界面に配設された複数の内部電極層とが積層されている積層体と、該積層体の外表面に配設され、前記積層体の外表面に露出している前記内部電極層の一端部と電気的に接続されている外部電極とを備える積層セラミック電子部品の製造方法において、
前記外部電極と電気的に接続されている、前記内部電極層の一端部に接触する一端部近傍において該一端部に近づくにつれて厚みが連続的に減少する肉薄部を有するようセラミック層を形成する工程と、前記セラミック層の一端部近傍に形成された前記肉薄部を被覆して、前記肉薄部の形状に対応して一方面側に厚みが連続的に増大する肉厚部を有するように前記セラミック層の上に内部電極層を形成する工程と、前記セラミック層と前記内部電極層とを、前記内部電極層の肉厚部が外表面に露出し、かつ前記内部電極層の他端部と隣接する前記肉厚部との最短距離が、前記内部電極層の層間距離以上となるように交互に積層して積層体を作製する工程と、前記積層体の外表面に露出した前記内部電極層の肉厚部と電気的に接続する外部電極を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
上記構成では、放電による障害が発生しにくい、信頼性の高い積層セラミック電子部品を製造することができる。
【0016】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、前記外部電極を形成する工程は、前記内部電極層を形成する工程において、前記セラミック層の一端部を越える余剰部を有する前記内部電極層を形成し、前記積層体を作製する工程において、前記余剰部を連結させることにより、前記複数の内部電極層の肉厚部を相互に連結させて
一体化することで外部電極
を形成することが好ましい。
【0017】
上記構成では、内部電極層の連結部をそのまま外部電極とすることにより、別途外部電極を形成する工程を省略することができる。
【0018】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、前記セラミック層及び前記内部電極層は、インクジェット方式により形成されていることが好ましい。
【0019】
上記構成では、インクジェット方式によりセラミックインク又は電極インクを積層することができるので、セラミック層の一端部近傍の厚みが連続的に減少する肉薄部を有するように形成し、内部電極層を外部電極との接続部近傍に、セラミック層の肉薄部の形状に対応して接続部に近づくにつれて一方面側に厚みが連続的に増大する肉厚部を有するように形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記構成によれば、セラミック層を、一端部近傍において、一端部に近づくにつれて厚みが連続的に減少する肉薄部を有するように形成することにより、内部電極層は、外部電極との接続部近傍に、セラミック層の肉薄部の形状に対応して接続部に近づくにつれて一方面側に厚みが連続的に増大する肉厚部を有するよう形成される。したがって、外部電極と内部電極層との接触面積が大きくなることから、内部電極層が薄膜化された場合であっても、確実に内部電極層と外部電極とを電気的に接続することが可能となる。また、内部電極層の外部電極と接合していない他端部と隣接する内部電極層の肉厚部との
最短距離が、内部電極層の層間距離以上であることにより、内部電極層の他端部において電界集中が生じにくく、放電量が増大するおそれもない。したがって、放電による障害が発生しにくい、信頼性の高い積層セラミック電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品の構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品の製造工程を模式的に示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品の内部電極層の形成時の状態を示す部分断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品の端部を示す部分断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品の積層体の構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る積層セラミック電子部品の積層体の製造方法を説明するための概略図である。
【
図7】従来の製造方法で製造された積層セラミック電子部品の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態における積層セラミック電子部品及び積層セラミック電子部品の製造方法について、図面を用いて具体的に説明する。以下の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10は、セラミック層11、内部電極層12が交互に積層されており、両側面に外部電極13を設けてある。本実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10は、セラミック層11が一端部近傍において厚みが連続的に減少する肉薄部を有している点に特徴を有する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10の製造工程を模式的に示す概略図である。
【0024】
図2(a)に示すように、まずセラミック層11を、一端部近傍において厚みが連続的に減少する肉薄部を有するように形成する。具体的には、比較的粘度の低いセラミックインクを後述する基板(基材)上に印刷し、乾燥させることにより、セラミック層11を形成する。なお、
図2(a)では、両端部近傍が共に肉薄部となっている。セラミック層11を形成する場合、セラミック層11の厚みを厚くするため、セラミックインクを複数回印刷しても良い。複数回印刷する場合、一回印刷する都度セラミックインクを乾燥させても良いし、特に乾燥させることなく連続して複数回印刷しても良い。
【0025】
セラミックインクの表面張力により、セラミック層11の両端部においては厚みが連続的に減少した肉薄部となる。しかも、セラミックインクの粘度が比較的低いことから、セラミックインクの乾燥時に周縁と中心とで濃度差が生じる、いわゆるコーヒーステイン現象により、セラミックインクが周縁側へと移動するので、結果としてセラミック層11の周縁部が肉厚部になりやすい。もちろん、セラミックインクを吐出して塗布する時に、中央部から周縁部に向かうほどインクの吐出量を少なくする等、印刷時の厚みを調整することで肉薄部を形成しても良い。
【0026】
そして、形成されたセラミック層11の上に、導電性インクを用いて内部電極層12を形成する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10の内部電極層12の形成時の状態を示す部分断面図である。
【0027】
図3に示すように、セラミック層11の一端部近傍に形成された肉薄部を被覆するように導電性インクを吐出して塗布することにより、内部電極層12の厚みがセラミック層11の肉薄部の形状に対応して一方面側に連続的に増大する。すなわち、内部電極層12は、中央部近傍における厚みH2よりも端部における厚みH1の方が大きい肉厚部を有することになる。
【0028】
なお、厚みH1は、内部電極層12が形成されたセラミック層11を樹脂中に包埋し、包埋した状態で内部電極層12の幅方向の中央部まで研磨することにより得られた内部電極層12の断面について、内部電極層12の上面と端部におけるセラミック層11と内部電極層12との境界位置の間隔として定義した端部厚みを、SEM等で観察及び測長することにより確認している。また、厚みH2は、内部電極層12の断面について、内部電極層12の中央部近傍のセラミック層11の上面と内部電極層12の上面との間隔として定義した中央部近傍の厚みを、SEM等で複数箇所(10箇所程度)について観察及び測長した値の平均値として確認している。
【0029】
図2に戻って、
図2(a)に示すように、内部電極層12の一端部側はセラミック層11の肉薄部を被覆するように導電性インクを塗布し、他端部側はセラミック層11の端部に到達しない位置まで導電性インクを塗布し、乾燥させて内部電極層12を形成する。内部電極層12を形成する場合、内部電極層12の厚みを厚くするため、導電性インクを複数回印刷しても良い。内部電極層12の一端部側と他端部側とが交互になるよう、セラミック層11と内部電極層12とを繰り返し積層することにより、
図2(b)に示す未焼成の積層体(グリーンチップ)20を作製する。内部電極層12の一端部側の厚みが積層体の外表面に近づくにつれて連続的に増大しているので、積層体20の外表面に内部電極層12を確実に露出させることができる。
【0030】
さらに、未焼成の積層体20を焼成する。内部電極層12は積層体20の外表面に近づくにつれて厚みが連続的に増大する肉厚部を有しているため、内部電極層12が焼成により収縮した場合であっても、内部電極層12が積層体20の外表面から後退しにくい。したがって、セラミック層11による内部電極層12の遮蔽が生じにくく、外部電極13と確実に電気的に接続することができる。なお、積層体20は必ずしも焼成しなくても良い。
【0031】
そして、
図2(c)に示すように、内部電極層12が露出している焼成後の積層体20の外表面に内部電極層12と電気的に接続されている外部電極13を設けることにより、積層セラミック電子部品10を製造することができる。本実施の形態1では、内部電極層12と外部電極13との接触面積を比較的大きくすることができる。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10の端部を示す部分断面図である。
図4(a)は、内部電極層12が積層体20の外表面に近づくにつれて厚みが増大しているが、連続的ではなく、ある箇所で急激に厚みが増大している場合の、積層セラミック電子部品の部分断面図である。
図4(b)は、本実施の形態1のように、内部電極層12が積層体20の外表面に近づくにつれて厚みが連続的に増大している場合の、積層セラミック電子部品10の部分断面図である。
【0033】
図4(a)に示すように、例えば内部電極層12の厚みを連続的ではなく、ある箇所で急激に増大させることにより内部電極層12と外部電極13との接触面積を大きくする場合、露出していない内部電極層12aの端部と、隣接する内部電極層12bとの距離D2が、内部電極層12a、12bの層間距離D1よりも小さくなる部分が生じうる。これにより、端部41において、距離D2が内部電極層12a、12bの層間距離D1よりも小さくなる部分に電界集中が生じ、放電量が増大するおそれがある。
【0034】
それに対して、
図4(b)に示すように、本実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10では、セラミック層11の一端部近傍に形成された肉薄部の形状、及び露出していない内部電極層12cの端部位置を適切に設計している。すなわち、露出していない内部電極層12cの端部と、隣接する内部電極層12dとの距離D4を、内部電極層12c、12dの層間距離D3以上としている。これにより、端部42において電界集中が生じにくく、放電量が増大するおそれもない。
【0035】
なお、上述した厚みD1〜D4は、積層セラミック電子部品10を樹脂中に包埋し、包埋した状態で内部電極層12の幅方向の中央部まで研磨することにより得られた積層セラミック電子部品10の断面について、内部電極層12c、12d(12a、12b)の層間距離D3(D1)及び内部電極層12c(12a)の端部(外部電極13との接合側)と、隣接する内部電極層12d(12b)との最短距離D4(D2)を、SEM等で観察及び測長することにより確認している。ここで、層間距離D3(D1)は、複数箇所(10箇所程度)で測定を行なった値の最小値である。また、内部電極層12cの端部と、隣接する内部電極層12dとの最短距離D4も、複数箇所(10箇所程度)で内部電極層12c、12dの層間距離D3以上になっていることを確認している。
【0036】
なお、本発明の効果を奏するためには、少なくとも1つの内部電極層12cについて積層セラミック電子部品10の全域において距離D4を距離D3以上にする必要がある。しかし、積層セラミック電子部品10を設計するに際し、部分的に異なる構造を採用しない限り、中央部の断面について観察及び測長することで本発明の効果を奏することが確認できる。
【0037】
また、積層体20の外表面に露出させた内部電極層12を、連結して一体化しても良い。
図5は、本発明の実施の形態1に係る積層セラミック電子部品10の積層体20の構成を示す断面図である。
【0038】
図5に示すように、積層体20の両端面に露出している内部電極層12を、連結して一体化する。このような連結状態は、導電性インクを
図2及び
図3の場合に比べてより多く供給し、セラミック層11の一端部近傍に形成された肉薄部を越える余剰部を有する内部電極層12を形成して、積層体20の作製時に積層体20の両端面における内部電極層12の肉厚部を相互に連結することにより得ることができる。
なお、図5の例では、「余剰部」とは、内部電極層12が延伸する付け根部分に見られる肉厚部と肉厚部との間を連結する部分を意味している。つまり、図5からも明らかなように、上下方向に一体化して肉厚部同士を連結させた余剰部を設けている。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る積層セラミック電子部品は、インクジェット方式によりセラミック層11及び内部電極層12が形成されている点に特徴を有する。
図6は、本発明の実施の形態2に係る積層セラミック電子部品10の積層体20の製造方法を説明するための概略図である。なお、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付することにより、詳細な説明は省略する。
【0040】
図6に示すように、本実施の形態2に係る積層セラミック電子部品10の積層体20は、セラミック層11、内部電極層12を交互に繰り返し積層して作製する。まず
図6(a)に示すように、インクヘッド61を、一の方向(矢印方向)へ移動させながら、セラミックインク62を基板(基材)60上に吐出して塗布し、乾燥させることにより、セラミック層11を形成する。セラミック層11は、セラミックインク62の表面張力により、一端部近傍において厚みが連続的に減少する肉薄部を有するように形成される。なお、
図6(a)では、両端部近傍が共に肉薄部となっている。
【0041】
次に、
図6(b)に示すように、インクヘッド64を、一の方向とは反対の方向(矢印方向)、すなわち
図6(a)とは逆の方向へ移動させながら、導電性インク63をセラミック層11の上に吐出して塗布し、乾燥させる。具体的には、インクヘッド64は、セラミック層11の肉薄部を有する一端部近傍上で導電性インク63の吐出量を多くする、あるいはセラミック層11の肉薄部を有する一端部近傍上で導電性インク63を複数回重ね塗りすることにより、
図3に示すような形状の内部電極層12を形成する。なお、
図6では、インクヘッド61とインクヘッド64とは逆方向に動くように説明しているが、同一方向に動くように構成しても良いことは言うまでもない。
【0042】
そして、
図6(a)と同様にして、インクヘッド61を、一の方向へ移動させながら、セラミックインク62を
図6(b)で形成された内部電極層12の上に吐出することにより、セラミック層11を形成する。内部電極層12は、他端部側ではセラミック層11の端部に到達しない位置までしか導電性インク63が塗布されていないので、新たに形成されたセラミック層11は既に形成されているセラミック層11と導電性インク63が塗布されていない部分において一体化される。
【0043】
セラミック層11は、セラミックインク62の表面張力により、両端部において厚みが連続的に減少する肉薄部を有するように形成される。さらに、
図6(c)に示すように、インクヘッド64を、一の方向とは反対の方向(矢印方向)へ移動させながら、導電性インク63をセラミック層11の上に吐出して塗布する。インクヘッド64は、
図6(b)の場合と同様に、セラミック層11の肉薄部を有する他端部近傍上で導電性インク63の吐出量を多くするか、あるいはセラミック層11の肉薄部を有する一端部近傍上で導電性インク63を複数回重ね塗りすることにより、
図3に示すような形状の内部電極層12をセラミック層11の上にさらに形成する。
【0044】
図4(b)に示すように、本実施の形態2に係る積層セラミック電子部品10でも、セラミック層11の一端部近傍に形成された肉薄部の形状、及び露出していない内部電極層12cの端部位置を適切に設計する。すなわち、露出していない内部電極層12cの端部と、隣接する内部電極層12dとの距離D4を、内部電極層12c、12dの層間距離D3以上としている。これにより、端部42において電界集中が生じにくく、放電量が増大するおそれもない。
【0045】
以上の工程を繰り返すことにより、
図6(d)に示すように、セラミック層11、内部電極層12が交互に繰り返し積層された積層体20が作製される。なお、本実施の形態2では、肉薄部を有するセラミック層11を一層分形成した後、肉薄部の形状に対応した肉厚部を有する内部電極層12を形成している。特にセラミック層11の厚みを厚くするためにセラミックインク62を複数回印刷する場合には、複数回印刷するうちの途中までの印刷を完了した時点で内部電極層12の肉厚部あるいはその一部に相当する導電性インク63を印刷しても良い。
【0046】
その他、上述した実施の形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができることは言うまでもない。例えば、上述した実施の形態1及び2では、内部電極層12の露出している側が一層ごとに交互(互いに反対側)になるよう、セラミック層11と内部電極層12とを積層しているが、二層ずつ交互に、あるいは三層ずつ交互になるように、同じ側に露出している内部電極層12を複数層ずつ交互に積層して積層体20を作製しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10 積層セラミック電子部品
11 セラミック層
12 内部電極層
13 外部電極
20 積層体
60 基板(基材)