(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動制御手段が、前記駆動制御手段の制御周期に対応した周期に同期し、前記外部入力手段、前記外部出力手段および前記通信手段に各処理を実行させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
前記演算処理手段は、演算結果をパラメータとして前記パラメータ手段に格納する手段を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
前記演算処理手段は、前記処理周期に同期して、演算処理の方法を各々定義した少なくとも1つの演算ブロックを実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
前記演算処理手段が実行する演算ブロックは、前記パラメータ手段に格納された固定値データの代わりに前記演算処理手段の演算処理結果を用いて前記駆動制御手段に出力する演算ブロックを含むことを特徴とする請求項6に記載のインバータ制御装置。
前記駆動制御手段は、前記演算処理手段に実行させる各処理を定義した処理構成情報であって、各処理の処理周期を指定する処理構成情報を参照し、当該処理構成情報により指定された処理周期に同期して前記各処理を前記演算処理手段に実行させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
前記駆動制御手段は、前記演算処理手段に実行させる演算処理の種類と数と、予め記憶された演算処理の種類毎の処理時間と、前記処理周期と前記制御周期との比である整数とから、前記演算処理手段の処理の所要時間を演算し、前記所要時間が予め設定された時間を越える場合に警告を出力する機能を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインバータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態であるインバータ制御装置9の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、インバータ制御装置9は、駆動制御手段1、外部入力手段2、外部出力手段3、パラメータ手段4、通信手段5および演算処理手段6を含む。これらの各手段は、インバータ制御装置9に設けられたプロセッサが実行するプログラムである。すなわち、本実施形態によるインバータ制御装置9は、共通の演算リソースを利用して、
図1に示す各手段の処理を実行するものである。
【0014】
好ましい態様では、
図2に示すように、インバータ制御装置9とともに、周辺装置としてのタッチパネル10、PCローダ11が使用される。これらの周辺装置は、インバータ制御装置9のパラメータを設定するための手段として使用される。なお、この周辺装置によるインバータ制御装置のパラメータ設定については後述する。
【0015】
図1において、駆動制御手段1は、入力信号とインバータの運転状態に基づいてインバータの運転を行う手段である。ここで、入力信号には、インバータの負荷であるモータが発生すべきトルクを指示するトルク指令値や回転速度を指示する速度指令値等の運転指令が含まれる。また、インバータの運転とは、具体的にはインバータにおいてモータに接続されたスイッチング素子に与えるゲート信号のPWM(Pulse Width Moduration;パルス幅変調)制御等を指す。インバータ制御装置9に設けられたプロセッサは、所定の制御周期に同期して駆動制御手段1としての処理を実行する。
【0016】
外部入力手段2は、外部から与えられるデジタル信号やアナログ信号を駆動制御手段1への入力信号とする手段である。外部出力手段3は、駆動制御手段1が出力するデジタル信号やアナログ信号を外部に出力する手段である。パラメータ手段4は、駆動制御手段1がインバータの運転の制御のために参照するパラメータを記憶する手段である。このパラメータ手段4は、例えばEEPROM等、電気的に書き換えが可能な不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを含む。通信手段5は、駆動制御手段1へ入力すべき運転指令、駆動制御手段1から得られるインバータの運転状態、出力周波数や電流等の状態量を外部との間で入出力するための通信を行う手段である。
【0017】
演算処理手段6は、外部入力手段2に入力される信号データ、駆動制御手段1から出力される信号データ、パラメータ手段4に記憶された信号データまたは通信手段5によって出力される信号データに対して、立ち上がりエッジや立ち下がりエッジの検出を行うエッジ検出処理、信号遅延処理、論理演算処理、比較処理または四則演算等の数値演算処理を施し、その処理結果を駆動制御手段1や外部出力手段3へ入力信号として供給し、またはパラメータ手段4に格納する手段である。
【0018】
本実施形態において、駆動制御手段1は、演算処理手段6、外部入力手段2、外部出力手段3および通信手段5の時間管理を行い、これらの各手段を制御する処理手段を含む。そして、駆動制御手段1の処理手段は、駆動制御手段1の制御周期の整数倍に設定された処理周期に同期して演算処理手段6の処理を実行させる。
【0019】
図3〜
図5は、本実施形態において演算処理手段6に実行させる処理の例である処理1〜3の構成を示す図である。また、
図6〜
図8は、この処理1〜3の構成を定義した処理構成情報を例示する図である。この処理1〜3の処理構成情報は、図示しないメモリに予め記憶される。駆動制御手段1の処理手段は、この処理構成情報を参照することにより、処理1〜3の各々を各処理毎に設定された処理周期で演算処理手段6に実行させるための制御を行う。
【0020】
図6〜
図8に示すように、処理1〜3を定義する各処理構成情報は、設定情報と、1または複数の演算ブロックとからなる。
【0021】
ここで、各演算ブロックは、演算処理手段6に実行させる演算処理の内容、具体的には演算処理の種類、演算処理の入力データの入力元および演算処理の設定値を定義したものである。1つの処理は、1または複数の演算処理により構成される。1つの処理を定義した処理構成情報は、当該処理を構成する各演算処理についての演算ブロックを含む。
【0022】
1つの演算ブロックは、5個のパラメータを含む。1番目のパラメータは、演算処理の種類を、2番目のパラメータは入力1を、3番目のパラメータは入力2を、4番目のパラメータは設定1を、5番目のパラメータは設定2を定義する。ここで、入力1および2は演算処理に用いる第1および第2の入力データを示す。また、設定1および2は、演算処理の種類によりその定義が変わってくる。例えばREADやWRITEの演算の場合、設定1および2を合わせたものがデータの読み出し先や書き込み先を指定する。また、例えば演算が加算である場合、設定1は加算結果の上限リミッタ、設定2は加算結果の下限リミッタとなる。
【0023】
設定情報は、
処理番号、処理周期、開始ブロック、終了ブロックの4個のパラメータからなる。各処理構成情報における
処理番号は、当該処理構成情報が定義する処理の番号である。また、処理周期は、当該処理構成情報が定義する処理の処理周期が制御周期の何倍であるかを示すパラメータである。本実施形態では、処理周期を制御周期の整数倍に設定する。このため、処理周期のパラメータは整数値となる。ただし、処理周期として0が設定された場合には、その0は、当該処理構成情報が定義する処理を実施しないことを指示する。開始ブロックは、当該処理構成情報が定義する処理における最初の演算ブロックの番号である。終了ブロックは当該処理構成情報が定義する処理における最後の演算ブロックの番号である。
【0024】
本実施形態において、駆動制御手段1の処理手段は、以上のような処理1〜3についての処理構成情報を参照することにより、各制御周期において、いずれの処理のいずれの演算ブロックの演算処理を実行するかを決定し、制御周期の整数倍に設定された処理周期に同期して演算処理手段6に処理1〜3を実行させる。
【0025】
次に
図3〜
図5を参照しつつ、
図6〜
図8に示す処理構成情報により定義された処理1〜3の内容を説明する。
【0026】
図6の処理1の処理構成情報における演算ブロック1では、種類がREADを意味する6000、入力1が入力なしを意味する0、入力2が入力なしを意味する0、設定1が通信手段5の通信データ10を意味する10、設定2が1番目のデータを意味する1となっている。このため、演算処理手段6は、
図3に示すように、演算ブロック1の実行において、通信データ10−1を通信手段5から読み出す。
【0027】
図6の処理1の処理構成情報における演算ブロック2では、種類がREADを意味する6000、入力1が入力なしを意味する0、入力2が入力なしを意味する0、設定1がパラメータ手段4の保持するパラメータ2を意味する2、設定2がその3番目のパラメータを意味する3となっている。このため、演算処理手段6は、
図3に示すように、演算ブロック2の実行において、パラメータ2−3をパラメータ手段4から読み出す。
【0028】
図6の処理1の処理構成情報における演算ブロック3では、種類が加算を意味する1000、入力1が演算ブロック1を意味する1、入力2が演算ブロック2を意味する2、設定1が上限リミッタの値を指定する100、設定2が下限リミッタの値を指定する0となっている。このため、演算処理手段6は、
図3に示すように、演算ブロック3の実行において、上限リミッタを100、下限リミッタを0に設定して、演算ブロック1の出力データと演算ブロック2の出力データの加算を行う。
【0029】
図6の処理1の処理構成情報における演算ブロック4では、種類がWRITEを意味する7000、入力1が演算ブロック3を意味する3、入力2が外部入力手段2の信号1を意味する101となっている。また、設定1および2は、パラメータ手段4の不揮発性メモリに格納されるパラメータ4−1を意味する4および1となっている。このため、演算処理手段6は、
図3に示すように、演算ブロック4の実行において、演算ブロック3の出力データを外部入力手段2の信号1の立ち上がりタイミングにおいてパラメータ手段4の不揮発性メモリにパラメータ4−1として格納する。
【0030】
図6の処理1の処理構成情報における演算ブロック5では、種類がMPXを意味する8000、入力1が演算ブロック3を意味する3、入力2が外部入力手段2の信号2を意味する102、設定1および2がパラメータ2−3を意味する2および3となっている。このため、演算処理手段6は、
図3に示すように、演算ブロック5の実行において、外部入力手段2の信号2が0の場合はパラメータ手段4に記憶されたパラメータ2−3を、0以外の場合は演算ブロック3の出力データを出力する。
【0031】
図7の処理2の処理構成情報における演算ブロック6では、種類がREADを意味する6000、入力1が入力なしを意味する0、入力2が入力なしを意味する0、設定1がパラメータ手段の保持するパラメータ5を意味する2、設定2がその1番目のパラメータを意味する1となっている。このため、演算処理手段6は、
図4に示すように、演算ブロック6の実行において、パラメータ5−1をパラメータ手段4から読み出す。
【0032】
図7の処理2の処理構成情報における演算ブロック7では、種類が加算を意味する1000、入力1が演算ブロック6を意味する6、入力2が演算ブロック8を意味する8、設定1が上限リミッタの値を指定する100、設定2が下限リミッタの値を指定する0となっている。このため、演算処理手段6は、
図4に示すように、演算ブロック7の実行において、上限リミッタを100、下限リミッタを0に設定して、演算ブロック6の出力データと演算ブロック8の出力データの加算を行う。
【0033】
図7の処理2の処理構成情報における演算ブロック8では、種類が
MPXを意味する
8000、入力1が演算ブロック7を意味する7、入力2が外部入力3を意味する103、設定1が設定値0を意味する0、設定2が機能なしを指定する0となっている。このため、演算処理手段6は、
図4に示すように、演算ブロック8の実行において、外部入力3が0のときは演算ブロック7を出力し、外部入力3が0以外の時には設定値0を出力する。
【0034】
図8の処理3の処理構成情報における演算ブロック9では、種類が値の保持を意味する
9000、入力1が外部入力のアナログ1を意味する201、入力2が外部入力4を意味する104、設定1が上限リミッタの値を指定する200、設定2が下限リミッタの値を指定する0となっている。このため、演算処理手段6は、
図5に示すように、演算ブロック9の実行において、外部入力4が0のときは外部入力のアナログ1の値を出力し、外部入力4が0以外のときには前回出力した値を保持して出力する。
【0035】
図8の処理3の処理構成情報における演算ブロック10では、種類が加算を意味する1000、入力1が演算ブロック9を意味する9、入力2が演算ブロック8を意味する8、設定1が上限リミッタの値を指定する200、設定2が下限リミッタの値を指定する0となっている。このため、演算処理手段6は、
図5に示すように、演算ブロック10の実行において、上限リミッタを200、下限リミッタを0に設定して、演算ブロック9の出力データと演算ブロック8の出力データの加算を行う。
【0036】
演算ブロック5の出力データおよび演算ブロック10の出力データは、図示しない他の演算ブロックに引き渡される。この演算ブロック5の出力データを受け取る演算ブロックは、例えば演算ブロック5の出力データをパラメータ2−3としてパラメータ手段4に格納するものであってもよいし、演算ブロック5の出力データに加算等のさらなる演算を施すものであってもよい。前者の場合、処理周期が繰り返される毎に、パラメータ2−3に対して通信手段5の通信データ10−1が加算されることとなる。従って、外部入力手段2や外部出力手段3を利用することなく、外部からの通信データをインバータ制御に反映することが可能である。
【0037】
本実施形態において、駆動制御手段1の処理手段は、処理構成情報の設定情報により制御周期の整数倍に設定された処理同期し、処理1〜3の各々の開始ブロックから終了ブロックまでの演算ブロックの処理を行う。
図9は、駆動制御手段1の処理手段の処理フローを示すフローチャートである。
【0038】
インバータ制御装置9は、駆動制御手段1を実行する制御周期に対応した周期、具体的には制御周期の整数倍の周期に同期し、外部入力手段2、外部出力手段3、パラメータ手段4、通信手段5および演算処理手段6の各処理を実行する。ここで、インバータの運転制御を行う駆動制御手段1は、高速で処理する必要があり、毎回の制御周期で動作させる必要がある。それに対し、外部入力手段2、外部出力手段3、パラメータ手段4および通信手段5は、低速で処理するため、駆動制御手段1が実行される周期から間引いた周期で実行してよい。そして、演算処理手段6は、本来は駆動制御手段1が実行される周期で演算を行えるのが良いが、インバータ制御装置9の演算能力の制約内の実行周期とする必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態において、駆動制御手段1の処理手段は、制御周期が切り換わる回数をカウントし、そのカウント値に基づいて、制御周期の回数nを求める。具体的には、演算処理手段6に実行させる各処理の処理周期が制御周期の何倍であるかを示す各整数の最小公倍数mを求め、制御周期のカウント値をこのmにより除算した余りに1を加えることによりnを求める。この例では、処理1の処理周期が制御周期の1倍、処理2の処理周期が制御周期の2倍、処理3の処理周期が制御周期の4倍であるので、mは1、2、4の最小公倍数である4となる。従って、制御周期のカウント値をm=4で除算した余りに1を加えたものがnとなり、nは1〜4までの値となる。そして、駆動制御手段1の処理手段は、各制御周期において、nに基づき、演算処理手段6に実行させる演算ブロックを決定する。
【0040】
さらに詳述すると、駆動制御手段1の処理手段は、処理1〜3の処理毎に1制御周期当たりの処理ブロック数(端数は切り上げ)を式1に従って算出する。
処理ブロック数=(終了ブロック−開始ブロック+1)/処理周期・・・式1
駆動制御手段1の処理手段は、処理1〜3について算出した各処理ブロック数分に基づき、各制御周期において演算処理手段6に実行させる演算ブロックを決定する。
【0041】
例えば、処理1の場合、設定情報において終了ブロックが5、開始ブロックが1、処理周期が1であるので、処理ブロック数は5となる。従って、駆動制御手段1の処理手段は、n=1〜4の各制御周期において、演算ブロック1から演算ブロック5までの5ブロックの処理を演算処理手段6に実行させる。
【0042】
処理2の場合、設定情報において終了ブロックが8、開始ブロックが6、処理周期が2であるので、処理ブロック数は2となる。そこで、駆動制御手段1の処理手段は、n=1回目の制御周期では演算ブロック6から演算ブロック7までの2ブロックの処理を演算処理手段6に実行させる。次にn=2回目の制御周期では演算ブロック8から2ブロック分の処理を実行させることになるが、演算ブロック8が終了ブロックであるので、演算ブロック8のみ処理を演算処理手段6に実行させる。
【0043】
処理3の場合、設定情報において終了ブロックが10、開始ブロックが9、処理周期が4であるので、処理ブロック数は1となる。そこで、駆動制御手段1の処理手段は、n=1回目の制御周期では演算ブロック9、n=2回目の制御周期は演算ブロック10の処理を演算処理手段6に実行させ、n=3回目と4回目の制御周期では終了ブロックまで達しているため処理を行わせない。
【0044】
駆動制御手段1の処理手段は、以上のようにして、設定情報により制御周期の整数倍に指定された各処理周期に同期して、処理1〜3を演算処理手段6に実行させる。
【0045】
以上のような制御が実施される結果、例えば処理1に着目すると、その実行態様は次のようなものになる。まず、外部入力手段2の信号1が0である期間は、各処理周期(=各制御周期)において演算ブロック1〜5が実行されることにより、パラメータ手段4に記憶されたパラメータ2−3が選択されて出力される(演算ブロック5)。
【0046】
そして、外部入力手段2の信号2が1になると、各処理周期において演算ブロック1〜5が実行されることにより、パラメータ手段4に記憶されたパラメータ2−3と通信手段5のパラメータ10−1とが加算され(演算ブロック1〜3)、加算結果が選択されて出力される(演算ブロック5)。従って、通信手段5のパラメータ10−1が変化すると、その変化が直ちに演算処理手段6の演算処理に反映されることとなる。
【0047】
従来技術の下では、インバータ制御に用いるパラメータを外部からの指令に従って変化させる必要がある場合に、そのパラメータをパラメータ手段4から外部出力手段3を介して外部に読み出し、外部において指令に合わせて加工し、加工後のパラメータを外部入力手段2を介してパラメータ手段4に格納する必要があった。この場合、外部出力手段3、外部入力手段2を利用することによる遅れが生じるため、高速なインバータ制御が困難であった。
【0048】
これに対し、本実施形態では、演算処理手段6が、外部出力手段3および外部入力手段2を利用することなく、パラメータ手段4からパラメータを読み出して何等かの加工を施してインバータ制御に反映する処理を実行する。従って、本実施形態によれば、従来技術に比べて高速なインバータ制御が可能になる。
【0049】
また、本実施形態では、外部入力手段2の信号1が0から1に立ち上がると、その立ち上がり時点における演算ブロック3の出力データ(すなわち、パラメータ2−3に通信手段5の通信パラメータ10−1を加算した結果)がパラメータ4−1としてパラメータ手段4に格納される。
【0050】
従って、例えば電源の瞬断があった場合に外部入力手段2の信号1が0から1に立ち
上がるように構成しておけば、電源の瞬断時における任意のパラメータ(この例ではパラメータ2−3)をパラメータ4−1として保存することができる。
【0051】
また、図示は省略したが、電源の復旧時のパラメータの復旧を実現することも可能である。すなわち、例えば電源が復旧した場合に外部入力手段2の信号1が1から0に立ち下がるように構成するとともに、外部入力手段2の信号1が1から0に立ち下がるときにパラメータ4−1をパラメータ2−3として格納する演算ブロックを設けておくのである。このようにすることで、電源の遮断時におけるパラメータ4−1として保存したパラメータ2−3を電源の復旧時にパラメータ2−3として復旧させることができる。
以上が処理1の実行態様の例である。
【0052】
駆動制御手段1の処理手段は、
図9に示すように、高速性が要求される処理1については制御周期と同じ処理周期に同期して実行させるが、高速性が要求されない処理2、3については制御周期の2倍以上の整数倍の処理周期に同期して実行させる。このようにしている理由は次の通りである。
【0053】
インバータ制御装置9において、インバータの電圧、電流、周波数といった物理量は高速に処理する必要があるので、この処理を行うための処理周期は短くする必要がある。しかし、マンマシンインタフェースの部分はそれほど高速な処理は不要であるので、この処理を行うための処理周期は長くてよい。本実施形態における駆動制御手段1の処理手段は、
図9に示すように、設定情報により制御周期の整数倍に設定された処理周期に同期して各処理を演算処理手段6に実行させるので、処理に要求される高速性に合わせて処理周期を最適化することができる。
【0054】
ただし、処理毎に処理周期や1制御周期当たりの処理ブロック数が異なるため、1制御周期における演算ブロックの処理時間が1制御周期内で許容されている処理時間内に収まるかどうか分からない課題がある。そこで、駆動制御手段1の処理手段において、式2に示す演算を行うことでn=1〜4回目の各制御周期での全演算ブロックの処理時間を求める。
n回目の制御周期における全演算ブロックの処理時間(n)
=Σ(演算ブロックの種類毎の使用回数×演算ブロックの種類毎の処理時間)・・式2
【0055】
この式2において求めるのは、n回目の制御周期において実行する処理1、2、3の演算ブロックの処理時間の総和である。処理1〜3の各々では、複数種類の演算ブロックを実行する。そこで、駆動制御手段1の処理手段は、それらの演算ブロックの中からn回目の制御周期において実行するものを選び、選んだ演算ブロックを種類毎に分類する。そして、演算ブロックの種類毎にn回目の制御周期における使用回数を求め、この使用回数に当該演算ブロックの処理時間を乗算し、n回目の制御周期における演算ブロックの種類毎の総処理時間を算出する。そして、このようにして得られる演算ブロックの種類毎の総処理時間を合計することにより、n回目の制御周期における全演算ブロックの処理時間を算出するのである。
【0056】
式2において、演算ブロックの種類毎の使用回数は、処理1〜3の処理構成情報に含まれる演算ブロックのうちn回目の制御周期において実行する演算ブロックの個数を演算ブロックの種類毎にカウントすることにより求める。また、演算ブロックの種類毎に定められた処理時間は、予めメモリに記憶された値を用いる。
【0057】
駆動制御手段1の処理手段は、この処理時間(n)が、予め設定しておいた処理可能な時間を越えた時に警告を出力する。これによりユーザは処理構成情報の設定の見直しを行い、メモリ内の処理構成情報を妥当な内容に修正することができる。
【0058】
図2に示すように、インバータ制御装置9とともに周辺機器であるタッチパネル10やPCローダ11を用いる態様では、周辺装置により処理構成情報の設定を行えるように構成してもよい。この場合、ユーザが周辺装置を利用して、インバータ制御装置9のメモリ(図示略)に処理構成情報の設定を行うときに、周辺装置が式1および式2を用いて処理時間(n)を算出し、この処理時間(n)が1制御周期内に実行可能な処理時間内に収まっていない場合に警告を行う。このようにすることで、処理構成情報の間違いを見つけ、ユーザに見直しを指示することが可能となる。
【0059】
そして、警告が出た場合には、ユーザは、例えば処理周期の設定を2回から4回に増やし、あるいは演算ブロックの変更を行ってもよい。この場合、周辺装置は、再度、式2の演算を行い、処理時間(n)が1制御周期内に実行可能な処理時間内に収まっているか否かの再判定を行う。従って、処理周期や演算ブロックの修正の妥当性を容易に確認することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動制御手段1としての処理を実行するプロセッサが、駆動制御手段1の制御周期の整数倍に設定された処理周期に同期し、演算処理手段6の処理を実行し、この演算処理手段6の処理の結果が駆動制御手段1に供給されるので、演算処理手段6の処理の結果を駆動制御手段1の処理(すなわち、インバータ運転制御)に高速に反映させることができる。また、駆動制御手段1としての処理を実行するプロセッサが、駆動制御手段1の制御周期に対応した処理周期に同期し、演算処理手段6の処理を実行するので、駆動制御手段1の処理と演算処理手段6の処理を同期させるための特別な仕組みは不要である。従って、簡単な構成で、PLC部分の演算結果をインバータの運転制御に高速に反映させることができるインバータ制御装置を実現することができる。また、本実施形態によれば、外部入力手段2からの信号の変化に応じて、演算処理手段6の演算結果をパラメータ手段4に保存することができる。従って、この保存機能を利用して、例えば電源の瞬断時に演算結果をパラメータ手段4に保存し、電源の復旧時にこの保存した演算結果を読み出して。電源の瞬断前の状態から演算処理を続行する、といった処理を行うことが可能である。また、本実施形態によれば、制御周期の整数倍である任意の周期を処理周期とすることができるので、制御の高速性に関する要求に応じた適切な長さの処理周期を設定し、PLC部分を実現するための演算ブロック群を演算処理手段6に実行させることができる。また、本実施形態によれば、制御周期内において実行すべき演算ブロックの処理時間が1制御期間内に実行可能な処理時間内に収まらない場合に警告が出力されるので、演算処理手段に実行させる処理の構成や処理周期が妥当でない場合に、その旨をユーザに知らせ、処理の構成や処理周期を妥当な内容に修正させることができる。
【0061】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0062】
(1)上記実施形態では、制御周期の整数倍に設定された処理周期に同期して、演算処理手段6に各種の処理を実行させる処理手段が駆動制御手段1に設けられていたが、この処理手段を駆動制御手段1とは別のプログラムとして構成し、インバータ制御装置9のプロセッサに実行させてもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、演算処理手段6に実行させる複数の処理の各々について設定情報により処理周期を指定させた。しかし、そのようにする代わりに、演算処理手段6に実行させる全処理について1種類の処理周期を自動的に設定するようにしてもよい。すなわち、演算処理手段6に実行させる処理の演算ブロック数が少ない場合には、処理周期
を短くし、演算ブロック数が多い場合には処理周期を
長くする、という具合に処理周期を演算ブロック数に応じて決定するのである。
図10はこの処理周期の自動設定の動作を示すフローチャートである。
図10に示す例では、演算処理手段6の処理対象である演算ブロック数がインバータ制御装置9に設けることが可能な演算ブロック数の最大値の1/4以下か否かを判断する。この判断結果が「YES」である場合は制御周期の1回分を演算処理手段6の処理周期とする。この判断結果が「NO」である場合は、演算処理手段6の処理対象である演算ブロック数がインバータ制御装置9に設けることが可能な演算ブロック数の最大値の1/2以下か否かを判断する。この判断結果が「YES」である場合は制御周期の2回分を演算処理手段6の処理周期とする。そして、この判断結果が「NO」である場合は制御周期の4回分を演算処理手段6の処理周期とするのである。
【0064】
この態様によれば、演算処理手段6が使用する演算ブロック数に応じて処理周期が自動的に設定されるので、ユーザは処理周期の設定のための操作から解放される。